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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240509BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240509BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
B32B27/30 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022185795
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2018025306の分割
【原出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2023024446
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2017037344
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】永安 智
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政大
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122054(JP,A)
【文献】特開2005-049698(JP,A)
【文献】特開2015-052765(JP,A)
【文献】特表2014-505274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、
重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、
導電層とがこの順に積層された光学積層体であって、
前記粘着層は、イオン性化合物を含み、
前記重合性化合物は、2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含み、該オキセタン化合物の含有量は、硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して40質量部以上90質量部以下である、光学積層体。
【請求項2】
前記第1硬化物層の厚みは、0.1~15μmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1硬化物層を構成する硬化物は、前記重合性化合物を含む硬化性組成物の光硬化物である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記偏光フィルムの第1硬化物層とは反対側の面に、第2硬化物層と保護フィルムとが積層された、請求項1~のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項5】
前記保護フィルムの透湿度は、温度23℃、相対湿度55%において、1200g/(m・24時間)以下である、請求項に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネル等に利用される光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介して、保護フィルムが積層された光学積層体が知られている。このような光学積層体を構成するために用いられる接着剤として、例えば特許文献1には、脂肪族エポキシと、脂環式エポキシ及び/又はオキセタンと、光重合開始剤とを含む光カチオン硬化型接着剤(硬化性組成物)が記載されており、これを硬化させた硬化物が接着剤として機能している。
【0003】
近年、酸化インジウムスズ(ITO)薄膜等の透明導電膜が表示装置において広く使用されている。例えば、前記透明導電膜は、インプレーンスイッチング(IPS)方式等の液晶セルを用いた液晶表示装置の、液晶セルを構成する透明基板の液晶層と接する側とは反対側に形成され、帯電防止層とすることが知られている。また、前記透明導電膜が透明樹脂フィルム上に形成された透明導電性フィルムは、タッチパネルの電極基板に用いられ、例えば、携帯電話や携帯用音楽プレイヤー等に用いる液晶表示装置や画像表示装置と当該タッチパネルを組み合わせて用いる入力装置が広く普及してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-063397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光学積層体の偏光フィルム側に、粘着剤層を介して、ITO層等の導電層を積層した場合、偏光フィルムに含まれる二色性色素が粘着剤層を比較的透過しやすく、導電層まで移動する場合があり、感知不良等の誤作動を生じさせる場合がある。このような偏光フィルムからの二色性色素の移動は、特に高温高湿の環境下において顕著となるため、高温高湿の環境下においても偏光フィルムに含まれる二色性色素が、粘着剤層を介して、導電層へ移行する事による導電層の劣化を防止できる光学積層体が必要とされる。
【0006】
従って、本発明の目的は、偏光フィルムに含まれる二色性色素の導電層への移行を有効に抑制し、導電層の劣化を防止できる光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の好適な態様[1]~[6]を提供するものである。
[1]ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、導電層とがこの順に積層された光学積層体であって、
前記第1硬化物層は、下記式(1)で表される吸光度上昇率が30%以下である、光学積層体。
吸光度上昇率(%)=(浸漬後Abs(360nm)-浸漬前Abs(360nm))/浸漬前Abs(360nm)×100 (1)
[式中、浸漬後Abs(360nm)は、温度23℃、相対湿度60%の大気中で、50%ヨウ化カリウム水溶液に硬化物を100時間浸漬させた後の360nmにおける吸光度を示し、浸漬前Abs(360nm)は、50%ヨウ化カリウム水溶液に硬化物を浸漬させる前の360nmにおける吸光度を示す]
[2]ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、導電層とがこの順に積層された光学積層体であって、
前記重合性化合物は、2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含み、該オキセタン化合物の含有量は、硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して40質量部以上である、光学積層体。
[3]第1硬化物層の厚みは、0.1~15μmである、[1]又は[2]に記載の光学積層体。
[4]第1硬化物層を構成する硬化物は、前記重合性化合物を含む硬化性組成物の光硬化
物である、[1]~[3]のいずれかに記載の光学積層体。
[5]前記偏光フィルムの第1硬化物層とは反対側の面に、第2硬化物層と保護フィルムとが積層された、[1]~[4]のいずれかに記載の光学積層体。
[6]前記保護フィルムの透湿度は、温度23℃、相対湿度55%において、1200g
/(m・24時間)以下である、[5]に記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学積層体は、偏光フィルムに含まれる二色性色素の導電層への移動を抑制し、導電層の腐食を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の光学積層体の一態様である構成を示す断面図を表す。
図2】本発明の光学積層体の一態様である構成を示す断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0011】
本発明の光学積層体の一実施態様における構成を図1に基づいて説明すると、本発明の光学積層体10は、偏光フィルム1の一方の面に、第1硬化物層2と、粘着層3と、導電層4とがこの順に積層された構造を有する。必要に応じて、偏光フィルム1の第1硬化物層とは反対側の面に、第2硬化物層5を介して保護フィルム6が備えられてもよい。また、図1の実施態様では、光学積層体10の導電層4が基板Xに積層されている。
【0012】
また、本発明の光学積層体は、第1硬化物層2と粘着層3との間に第1保護フィルム7を有してもよい。この実施態様を図2に示す。光学積層体10には、必要に応じて、偏光フィルム1の第1硬化物層2とは反対側の面に、第2硬化物層5を介して第2保護フィルム6が備えられていてもよい。また、図2の実施態様では、光学積層体10の導電層4が基板Xに積層されている。
以下、本発明の光学積層体の各構成成分について詳細に説明する。
【0013】
[第1硬化物層]
本発明の光学積層体は、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物(以下、硬化性組成物(1)という場合がある。)の硬化物から構成される第1硬化物層を有する。
【0014】
第1硬化物層は、下記式(1)で表される吸光度上昇率が30%以下である。
吸光度上昇率(%)=(浸漬後Abs(360nm)-浸漬前Abs(360nm))/浸漬前Abs(360nm)×100 (1)
[式中、浸漬後Abs(360nm)は、温度23℃、相対湿度60%の大気中で、50%ヨウ化カリウム水溶液に硬化物を100時間浸漬させた後の360nmにおける吸光度を示し、浸漬前Abs(360nm)は、50%ヨウ化カリウム水溶液に硬化物を浸漬させる前の360nmにおける吸光度を示す]
【0015】
第1硬化物層は、50%ヨウ化カリウム水溶液に100時間浸漬させても、前記式(1)で表される吸光度上昇率が30%以下である。これは第1硬化物層のヨウ素(二色性色素)に対する吸収性が比較的低いことを示す。このため、本発明の光学積層体は、偏光フィルムに含まれるヨウ素(二色性色素)の第1硬化物層への移動を有効に抑制することができ、ヨウ素(二色性色素)による導電層(例えばITO層)の腐食を防止することが可能である。さらに光学積層体の光学性能を維持することもできる。
【0016】
前記式(1)で表される吸光度上昇率は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。吸光度上昇率が上記値以下であると、上述のように偏光フィルムに含まれるヨウ素(二色性色素)の第1硬化物層への移動をより有効に抑制することができ、導電層の腐食及び光学積層体の光学性能の低下をより効果的に防止することが可能である。
【0017】
硬化性組成物(1)に含まれる重合性化合物は、第1硬化物層を構成する硬化物を形成できれば、特に限定されない。重合性化合物の例としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、水溶性樹脂組成物、水分散性樹脂組成物等が挙げられ、これらの中でもプロセスの簡素化の観点より、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましく、特にエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等を含む(メタ)アクリレート化合物、アクリルアミド化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物が好ましい。
【0018】
好ましい態様において、第1硬化物層を構成する硬化物は、重合性化合物を含む硬化性組成物の光硬化物である。このため、前記重合性化合物は光硬化性化合物が好ましい。
【0019】
重合性化合物は、分子内に2つ以上のオキセタニル基(オキセタン環)を有するオキセタン化合物(以下、「オキセタン化合物(A)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。
【0020】
オキセタン化合物(A)は、分子内に2つ以上のオキセタニル基を有する化合物であり、脂肪族化合物、脂環式化合物又は芳香族化合物であってよい。オキセタン化合物(A)としては、具体的には、1,4-ビス〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(キシリレンビスオキセタンとも呼ばれる)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。これらのオキセタン化合物(A)は、それぞれ単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。オキセタン化合物(A)を含むことにより架橋密度が高く緻密な硬化物を得ることができる。架橋密度が高い硬化物層を偏光フィルムの一方の面に設けることにより、偏光フィルムからの二色性色素の移動を効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
オキセタン化合物(A)の含有量は、硬化性組成物(1)に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、例えば40質量部以上であり、好ましくは45質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。また、オキセタン化合物(A)の含有量は、硬化性組成物(1)に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、特に好ましくは65質量部以下である。また、前記オキセタン化合物(A)の含有量は、これらの下限値と上限値の組み合わせであってもよく、硬化性組成物(1)に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは40質量部~65質量部、より好ましくは45質量部~60質量部であってもよい。
また、オキセタン化合物(A)の含有量は、前記硬化性組成物(1)の総量100質量部に対して、例えば35質量部以上であり、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。前記オキセタン化合物(A)の含有量が上記値以上であると、偏光フィルムに含まれる二色性色素の第1硬化物層への移動をより効果的に抑制することができ、導電層の腐食及び光学積層体の光学性能の低下をより効果的に防止することが可能である。
【0022】
重合性化合物は、さらにエポキシ化合物(B)を含むことが好ましい。エポキシ化合物は、好ましくは、(B1)2つ以上のエポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物(以下、「脂肪族エポキシ化合物(B1)」と称する場合がある)、(B2)2つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物(以下、「脂環式エポキシ化合物(B2)」と称する場合がある)、及び(B3)1つ以上の芳香環を有する芳香族エポキシ化合物(以下、「芳香族エポキシ化合物(B3)」と称する場合がある)から選択される少なくとも1種である。
【0023】
前記脂肪族エポキシ化合物(B1)は、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に少なくとも2つ以上有する化合物である。脂肪族エポキシ化合物(B1)としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0024】
脂肪族エポキシ化合物(B1)を含む場合、偏光フィルムと保護フィルム又は粘着層の間との接着性の観点から、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する2官能のエポキシ化合物(脂肪族ジエポキシ化合物ともいう)が好ましく、下記式(I)で表される脂肪族ジエポキシ化合物がより好ましい。硬化性組成物が下記式(I)で表される脂肪族ジエポキシ化合物を脂肪族エポキシ化合物(B1)として含むことにより、粘度が低く、塗布し易い硬化性組成物を得ることができる。
【0025】
【化1】
式(I)中、Zは炭素数1~9のアルキレン基、炭素数3もしくは4のアルキリデン基、2価の脂環式炭化水素基、又は式-C2m-Z-C2n-で示される2価の基を表す。-Z-は、-O-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-SO-又はCO-を表し、m及びnは各々独立に1以上の整数を表す。ただし、m及びnの合計は9以下である。
【0026】
2価の脂環式炭化水素基は、例えば、炭素数4~8の2価の脂環式炭化水素基であってよく、例えば下記式(I-1)で示される2価の残基等が挙げられる。
【0027】
【化2】
【0028】
式(I)で示される化合物の具体例としては、アルカンジオールのジグリシジルエーテル;繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;脂環式ジオールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0029】
前記式(I)で示される化合物を形成し得るジオール(グリコール)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等のアルカンジオール;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のオリゴアルキレングリコール;
シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等が挙げられる。
【0030】
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(B1)としては、粘度が低く、塗布しやすい硬化性組成物となし得るとの観点から、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが好ましい。光学性能を維持できる点では、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(B1)としては、1種の脂肪族エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
硬化性組成物(1)が脂肪族エポキシ化合物(B1)を含む場合、脂肪族エポキシ化合物(B1)の含有量は、硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは3~30質量部、さらに好ましくは5~20質量部、特に7~15質量部である。脂肪族エポキシ化合物(B1)の含有量が上記範囲にあると、硬化性組成物(1)の粘度が低く、塗布しやすい組成物とすることができる。
【0032】
前記脂環式エポキシ化合物(B2)は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に2つ以上有する化合物である。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(a):
【化3】
で示される構造における橋かけの酸素原子-O-を意味する。上記式(a)中、mは2~5の整数である。
【0033】
上記式(a)における(CH中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基2つ以上が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物(B2)となり得る。(CH中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
【0034】
中でも、硬化物のガラス転移温度が高く、また偏光フィルムと保護フィルムとの間の接着性に優れる観点から、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(a)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(a)においてm=4のもの〕を有する脂環式エポキシ化合物が好ましく、下記式(II)で表される脂環式ジエポキシ化合物がより好ましい。硬化性組成物(1)が下記式(II)で表される脂環式ジエポキシ化合物を化合物(B2)として含むことにより、硬化性組成物が硬化した後の硬化物層は、弾性が高くなり、偏光フィルムの熱収縮による割れを抑えることができる。
【0035】
【化4】
式(II)中、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、前記アルキル基が炭素数3以上である場合は脂環式構造を有していてもよい。前記炭素数1~6のアルキル基は直鎖又は分枝アルキル基であってよく、脂環式構造を有するアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0036】
式(II)中、Xは酸素原子、炭素数1~6のアルカンジイル基又は下記式(IIa)~(IId):
【化5】
のいずれかで示される2価の基を表す。
炭素数1~6のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,2-ジイル基等が挙げられる。
【0037】
式(II)中のXが、前記式(IIa)~(IId)のいずれかで示される2価の基である場合、各式におけるY~Yは各々独立に炭素数1~20のアルカンジイル基であり、前記アルカンジイル基が炭素数3以上である場合は脂環式構造を有していてもよい。
a及びbは各々独立に0~20の整数を表す。
【0038】
式(II)で示される化合物としては、例えば以下のA~Gの化合物が挙げられる。なお、その後に示す化学式A~Gは、それぞれ化合物A~Gに対応するものである。
【0039】
A:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
B:3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート
C:エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
D:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート
E:ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル) アジペート
F:ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)
G:エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)
【0040】
【化6】
【0041】
本発明において、脂環式エポキシ化合物(B2)としては、入手が容易であるとの観点から、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましい。また、導電層の腐食を効果的に抑制できるという観点から、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が好ましい。特に3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物とを組み合わせて脂環式エポキシ化合物(B2)として使用すると、導電層の腐食
をより効果的に抑制することができる。脂環式エポキシ化合物(B2)として、1種の脂環式エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
硬化性組成物(1)が脂環式エポキシ化合物(B2)を含む場合、脂環式エポキシ化合物(B2)の含有量は、硬化性組成物(1)に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは3~70質量部、より好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは20~55質量部、特に好ましくは25~50質量部である。脂環式エポキシ化合物(B2)の含有量が上記範囲にあると、紫外線等の活性エネルギー線の照射による硬化が速やかに進行し、十分な硬さの硬化物層を容易に形成することができる。
【0043】
前記芳香族エポキシ化合物(B3)は、分子内に1つ以上の芳香環を有する化合物であり、具体的には、例えば以下のようなものが挙げられる。
フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の少なくとも1つの芳香環を有する1価フェノール又は、そのアルキレンオキシド付加物のモノ/ポリグリシジルエーテル化物、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらにさらにアルキレンオキシドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物やエポキシノボラック樹脂;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2つ以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル;
ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2つ以上有する芳香族化合物のモノ/ポリグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2つ以上のカルボン酸を有する多塩基酸
芳香族化合物のグリシジルエステル;
安息香酸やトルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル;
スチレンオキシド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等。
【0044】
芳香族エポキシ化合物(B3)を含む場合、硬化性組成物の低粘度化の観点から、フェノール類のグリシジルエーテル、アルコール性水酸基を2つ以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物、多価フェノール類のグリシジルエーテル化物、安息香酸類のグリシジルエステル、多塩基酸類のグリシジルエステル、スチレンオキシド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物の群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、硬化性組成物の硬化性を向上させることから、芳香族エポキシ化合物(B3)としては、エポキシ当量が80~500であるものが好ましい。
芳香族エポキシ化合物(B3)として、1種の芳香族エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
芳香族エポキシ化合物(B3)としては、市販品を用いることができ、例えば、デナコールEX-121、デナコールEX-141、デナコールEX-142、デナコールEX-145、デナコールEX-146、デナコールEX-147、デナコールEX-201、デナコールEX-203、デナコールEX-711、デナコールEX-721、オンコートEX-1020、オンコートEX-1030、オンコートEX-1040、オンコートEX-1050、オンコートEX-1051、オンコートEX-1010、オンコートEX-1011、オンコート1012(以上、ナガセケムテックス社製);オグソールPG-100、オグソールEG-200、オグソールEG-210、オグソールEG-250(以上、大阪ガスケミカル社製);HP4032、HP4032D、HP4700(以上、DIC社製);ESN-475V(新日鉄住金化学社製);エピコートYX8800、jER828EL(三菱化学社製);マープルーフG-0105SA、マープルーフG-0130SP(日油社製);エピクロンN-665、エピクロンHP-7200(以上、DIC社製);EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、XD-1000、NC-3000、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、NC-7000L(以上、日本化薬社製);アデカグリシロールED-501、アデカグリシロールED-502、アデカグリシロールED-509、アデカグリシロールED-529、アデカレジンEP-4000、アデカレジンEP-4005、アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4901(以上、ADEKA社製);TECHMORE VG-3101L、EPOX-MKR710、EPOX-MKR151(以上、プリンテック社製)等が挙げられる。
【0046】
前記硬化性組成物は芳香族エポキシ化合物(B3)を含むことにより、硬化性組成物が疎水性の樹脂となり、これにより得られる硬化物層も疎水性となる。このため、高温高湿下において外部からの水分の侵入を防ぎ、偏光フィルムに含まれる二色性色素(ヨウ素)の移動を効果的に抑制することができる。
【0047】
硬化性組成物(1)に芳香族エポキシ化合物(B3)を含む場合、芳香族エポキシ化合物(B3)の含有量は、前記硬化性組成物(1)に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは1~70質量部、より好ましくは5~60質量部、さらに好ましくは7~55質量部、特に好ましくは10~50質量部である。芳香族エポキシ化合物(B3)の含有量が上記範囲にあると、硬化物層の疎水性を向上でき、硬化物層に対する二色性色素(ヨウ素)の透過性を低下させることができる。
【0048】
硬化性組成物(1)が、オキセタン化合物(A)及び脂環式エポキシ化合物(B2)を含有する場合、オキセタン化合物(A)の含有量(WA)に対する脂環式エポキシ化合物(B2)の含有量(WB2)の質量比(WB2/WA)は、0.05~1.5であることが好ましい。
硬化性組成物(1)が、オキセタン化合物(A)及び脂肪族エポキシ化合物(B1)を含有する場合、オキセタン化合物(A)の含有量(WA)に対する脂肪族エポキシ化合物(B1)の含有量(WB1)の質量比(WB1/WA)は、0.1~0.5であることが好ましい。
硬化性組成物(1)が、オキセタン化合物(A)及び芳香族エポキシ化合物(B3)を含有する場合、オキセタン化合物(A)の含有量(WA)に対する芳香族エポキシ化合物(B1)の含有量(WB3)の質量比(WB3/WA)は、0.1~1.5であることが好ましい。
【0049】
硬化性組成物(1)は、オキセタン化合物(A)及びエポキシ化合物(B)以外の重合性化合物を含有していてもよい。具体的には、脂肪族モノエポキシ化合物、脂環式モノエポキシ化合物等が挙げられる。
【0050】
硬化性組成物(1)に含まれる重合性化合物の含有量は、硬化性組成物(1)の総質量100質量部に対して、好ましくは80~100質量部、より好ましくは90~99.5質量部、さらに好ましくは95~99質量部である。重合性化合物の含有量が上記範囲にあると、偏光フィルムに含まれる二色性色素の第1硬化物層への移動をより効果的に抑制することができる。
【0051】
硬化性組成物は、通常、重合を開始させるための重合開始剤を含有する。重合開始剤は、光重合開始剤(例えば光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤)であっても、熱重合開始剤であってもよい。例えば、硬化性組成物が前記オキセタン化合物(A)やエポキシ化合物(B)等を重合性化合物として含む場合、重合開始剤に光カチオン重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0052】
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、重合
性化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体等を挙げることができる。
【0053】
芳香族ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはジフェニルヨードニウムカチオンを挙げることができる。芳香族スルホニウム塩は、トリアリールスルホニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはトリフェニルスルホニウムカチオンや4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドカチオン等を挙げることができる。芳香族ジアゾニウム塩は、ジアゾニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはベンゼンジアゾニウムカチオンを挙げることができる。また、鉄-アレーン錯体は、典型的にはシクロペンタジエニル鉄(II)アレーンカチオン錯塩である。
【0054】
上に示したカチオンは、アニオン(陰イオン)と対になって光カチオン重合開始剤を構成する。光カチオン重合開始剤を構成するアニオンとしては、特殊リン系アニオン[(Rf)PF6-n、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF 、ヘキサフルオロアンチモネートアニオンSbF 、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネートアニオンSbF(OH)、ヘキサフルオロアーセネートアニオンAsF 、テトラフルオロボレートアニオンBF 、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンB(C 等が挙げられる。中でも、重合性化合物の硬化性及び得られる硬化物層の安全性の観点から、光カチオン重合開始剤が特殊リン系アニオン[(Rf)PF6-n、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF であることが好ましい。
【0055】
光カチオン重合開始剤は、1種を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物をもたらすことができるため好ましい。
【0056】
硬化性組成物(1)における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、通常、0.5~10質量部であり、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。重合開始剤の含有量が前記範囲内であると、重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる硬化物から構成される硬化物層に高い機械的強度や接着強度を与えることができる。一方で、その量が過度に多くなると、光カチオン重合開始剤からの生成物が偏光フィルムを構成するポリビニルアルコールの水酸基と反応して、偏光フィルムの光学性能を低下させるおそれがある。
【0057】
本発明において、硬化性組成物(1)は、必要に応じて硬化性組成物に一般的に用いられる添加剤を含むことができる。そのような添加剤としては、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、重合促進剤(ポリオール等)、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、色素、帯電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0058】
増感剤としては、例えば光増感剤が挙げられる。光増感剤は、光カチオン重合開始剤が示す極大吸収波長よりも長い波長に極大吸収を示し、光カチオン重合開始剤による重合開始反応を促進させる化合物である。また、光増感助剤は、光増感剤の作用を一層促進させる化合物である。保護フィルムの種類によっては、このような光増感剤、さらには光増感助剤を配合することが好ましい。これらの光増感剤、光増感助剤を配合することにより、UV透過性の低いフィルムを使用した場合においても、所望の性能を有する硬化物を形成する事ができる。
【0059】
光増感剤は、例えば380nmよりも長い波長の光に極大吸収を示す化合物であることが好ましい。かかる光増感剤としては、以下に記載のアントラセン系化合物等が挙げられる。
9,10-ジメトキシアントラセン、
9,10-ジエトキシアントラセン、
9,10-ジプロポキシアントラセン、
9,10-ジイソプロポキシアントラセン、
9,10-ジブトキシアントラセン、
9,10-ジペンチルオキシアントラセン、
9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、
9,10-ビス(2-メトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(2-エトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(2-ブトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(3-ブトキシプロポキシ)アントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジイソプロポキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジブトキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジペンチルオキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジヘキシルオキシアントラセン。
【0060】
硬化性組成物(1)は、重合性化合物及び重合開始剤、並びに必要に応じて添加剤を混合して得られる。第1硬化物層は硬化性組成物(1)を、偏光フィルム上に、又は第1保護フィルムを用いる場合にはこの第1保護フィルム上に塗布し、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより塗布した硬化性組成物を硬化させて形成することができる。
【0061】
硬化性組成物(1)の塗工には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。硬化性組成物(1)を硬化させる際の光源としては、活性エネルギー線の光源が挙げられる。活性エネルギー線の光源は、例えば、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよい。特に波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを挙げることができる。
【0062】
硬化性組成物(1)を硬化させる際の光照射強度は、組成物ごとに異なるが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が0.1~1000mW/cmであることが好ましい。硬化性組成物(1)の硬化の際の光照射強度が小さすぎると、反応が十分に進行するまでに要する時間が長くなり、逆に光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び硬化性組成物(1)の重合時の発熱によって、貼着されるフィルムの劣化を生じる可能性がある。硬化性組成物(1)の硬化の際の光照射時間は、組成物ごとに制御されるものであって特に限定されないが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10~5000mJ/cmとなるように設定することが好ましい。積算光量が小さすぎると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる硬化が不十分になる可能性がある。また、積算光量が大きすぎると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
【0063】
なお、活性エネルギー線の照射によって硬化性組成物を硬化させる場合、例えば、偏光フィルムの偏光度、透過率及び色相、並びに保護フィルム及び光学層を構成する各種フィルムの透明性といった、光学積層体の諸機能が低下しない条件で硬化を行なうことが好ましい。
【0064】
本発明の光学積層体において、第1硬化物層の厚みは、特に制限はないが、好ましくは0.1~15μmであり、より好ましくは0.5~10μmであり、さらに好ましくは0.5~7μmである。第1硬化物層の厚みが下限値以上であると、二色性色素の移動を有効に抑制することができ、上記上限値以下であると、硬化性組成物を十分に硬化させることができる。
【0065】
本発明の光学積層体は、第1硬化物層の前記吸光度上昇率が30%であり、二色性色素に対する吸収性が比較的低い。通常、高温高湿環境下においては、外部からの水分の浸入により二色性色素の移動は加速され得るが、本発明の光学積層体においては偏光フィルムに含まれる二色性色素の第1硬化物層への移動を効果的に抑制することができる。このため、高温高湿環境下におかれても、導電層の腐食を効果的に防止することができるとともに、光学性能を維持することもできる。さらに、光学積層体を構成する粘着層が、例えば帯電防止剤などとしてイオン性化合物を含む場合に、粘着層中に存在するイオン性化合物が光学積層体を構成する保護フィルムを透過して、偏光フィルムへと移動し、偏光フィルム中の二色性色素と相互作用を引き起こして光学積層体の光学性能を低下させることがある。本発明の光学積層体は、偏光フィルムと粘着層の間に前記第1硬化物層が存在するため、粘着層からのイオン性化合物の移動を効果的に抑制することができ、これにより光学積層体の光学性能の低下を防止することができる。
なお、第1硬化物層は、偏光フィルムと保護フィルム又は粘着層とを接着する接着剤層としての役割も果たす。その場合、特に、イオン化合物等が透過しやすい保護フィルムにおいても光学積層体の光学性能の低下を防止する事ができる。
【0066】
〔粘着層〕
粘着層を構成する粘着剤としては、従来公知の粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂などをベースポリマーとして有する粘着剤を用いることができる。また、エネルギー線硬化型粘着剤、熱硬化型粘着剤などであってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、リワーク性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。
【0067】
本発明において粘着層がアクリル系樹脂を含む場合、そのアクリル系樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。中でも粘着性及びリワーク性の観点から、本発明の光学積層体に含まれる粘着層が下記アクリル樹脂(P)を含むことが好ましい。
【0068】
アクリル樹脂(P)は、下記式(III):
【化7】
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~14のアルキル基を表す〕
で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)に由来する構造単位を主成分とし、さらに、極性官能基を有する不飽和単量体(P2)(以下、「極性官能基含有単量体」と称する場合がある)に由来する構造単位を含むアクリル樹脂である。
ここで、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、この他、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
【0069】
式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-オクチル、及びアクリル酸ラウリルなどの直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸イソオクチルなどの分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、及びメタクリル酸ラウリルなどの直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸イソオクチルなどの分枝状のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル等が挙げられる。
これらの中でもアクリル酸n-ブチルが好ましく、具体的には、アクリル樹脂(P)を構成する全単量体の総量に対して、アクリル酸n-ブチルが50質量%以上であることが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)は、それぞれ単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
極性官能基含有単量体(P2)において、極性官能基としては、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基をはじめとする複素環基などが挙げられる。極性官能基含有単量体(P2)は、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物である。その例として、アクリル酸、メタクリル酸、及びβ-カルボキシエチルアクリレートなどの遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-又は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、及びジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する不飽和単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及び2,5-ジヒドロフランなどの複素環基を有する不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの複素環とは異なるアミノ基を有する不飽和単量体などを挙げることができる。これらの極性官能基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を用いてもよい。
【0071】
極性官能基含有単量体(P2)は、水酸基を有する不飽和単量体であることが好ましい。また、水酸基を有する不飽和単量体に加えて、他の極性官能基を有する不飽和単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体を併用するのも有効である。
【0072】
アクリル樹脂(P)において、前記式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)に由来する構造単位は、アクリル樹脂(P)を構成する全構造単位の総量100質量部に対して、例えば50~100質量部である。極性官能基含有単量体(P2)に由来する構造単位は、アクリル樹脂(P)を構成する全構造単位の総量100質量部に対して例えば0.1~20質量部である。
【0073】
アクリル樹脂(P)は、前記式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)及び極性官能基含有単量体(P2)とは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。これらの例としては、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環とを有する不飽和単量体(P3)(以下、「芳香環含有単量体」と称する場合がある)に由来する構造単位、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位などを挙げることができる。
【0074】
分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環とを有する不飽和単量体(芳香環含有単量体)(P3)は、オレフィン性二重結合を含む基として(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。その例として、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレートなどを挙げることができるが、中でも式(IV):
【化8】
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは1~8の整数であり、Rは水素原子、炭素数1~9のアルキル基、炭素数7~11のアラルキル基又は炭素数6~10のアリール基を表す〕
で示される芳香環含有(メタ)アクリル化合物が好ましい。
【0075】
炭素数1~9のアルキル基としては、メチル、ブチル、ノニルなどが挙げられる。炭素数7~11のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどが挙げられる。炭素数6~10のアリール基としては、フェニル、トリル、ナフチルなどが挙げられる。
【0076】
式(IV)で示される芳香環含有(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-フェノキシエトキシ)エチル、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2-(o-フェニルフェノキシ)エチルなどを挙げることができる。これらの芳香環含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を組み合せて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル〔前記式(IV)において、R=H、n=1の化合物〕、(メタ)アクリル酸2-(o-フェニルフェノキシ)エチル〔前記式(IV)において、R=o-フェニル、n=1の化合物〕、又は(メタ)アクリル酸2-(2-フェノキシエトキシ)エチル〔前記式(IV)において、R=H、n=2の化合物〕が、アクリル樹脂(P)を構成する芳香環含有単量体(P3)の1つとして好適である。
【0077】
分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位における脂環式構造とは、炭素数が、通常5以上、好ましくは5~7のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有するアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、α-エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられ、脂環式構造を有するメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられる。
【0078】
スチレン系単量体の具体例としては、スチレンのほか、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、及びオクチルスチレンのなどのアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、及びヨードスチレンのなどのハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0079】
ビニル系単量体の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、及びラウリン酸ビニルのなどの脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニルや臭化ビニルのなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンのなどのハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、及びビニルカルバゾールのなどの含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンのなどの共役ジエン単量体;さらには、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0080】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の具体例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などを挙げることができる。
【0081】
式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)及び極性官能基含有単量体(P2)とは異なる単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。粘着剤に含まれる場合、アクリル樹脂(P)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)及び極性官能基含有単量体(P2)とは異なる単量体に由来する構造単位は、アクリル樹脂(P)を構成する全構造単位の総量100質量部に対して、通常0~30質量部である。
【0082】
粘着剤組成物を構成する樹脂成分は、前記式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)及び極性官能基含有単量体(P2)に由来する構造単位を含むアクリル樹脂を2種類以上含むものであってもよい。また、アクリル樹脂(P)に、それとは異なるアクリル樹脂、例えば、式(III)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を有し、極性官能基を含まないアクリル樹脂などを混合して用いてもよい。式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)及び極性官能基含有単量体(P2)に由来する構造単位を含むアクリル樹脂(P)は、粘着層に含まれるアクリル系樹脂の総量100質量部に対して、例えば70質量部以上であってよい。
【0083】
式(III)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(P1)及び極性官能基含有単量体(P2)を含む単量体混合物の共重合体であるアクリル樹脂(P)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが100万~200万の範囲であることが好ましい。標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲内であると、高温高湿下での接着性が向上し、導電層と粘着層との間に剥がれや浮きが生じる可能性が低くなる傾向にあり、さらにリワーク性が向上する傾向にある。また、偏光フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動しやすくなり、例えば光学積層体を液晶セルに貼合した場合、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白ヌケや色ムラが抑制される傾向にある。
【0084】
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnで表される分子量分布は、3~7の範囲であることが好ましい。分子量分布Mw/Mnが3~7の範囲であると、液晶表示パネル又は液晶表示装置が高温にさらされた場合でも、白ヌケなどの不具合の発生を抑制することができる。
【0085】
また、前記アクリル樹脂(P)は、粘着性発現の観点から、そのガラス転移温度が-10~-60℃の範囲にあることが好ましい。樹脂のガラス転移温度は一般に、示差走査熱量計により測定することができる。
【0086】
アクリル樹脂(P)は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、公知の各種方法によって製造することができる。アクリル樹脂(P)の製造においては、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤の含有量は、アクリル樹脂の製造に用いられる全ての単量体の合計100質量部に対して、0.001~5質量部であることが好ましい。
【0087】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが用いられる。光重合開始剤として、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトンなどを挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、及び2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、及び(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過酸化水素などの無機過酸化物などを挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども、重合開始剤として使用し得る。
【0088】
アクリル樹脂(P)の製造方法としては、溶液重合法が特に好ましい。溶液重合法の具体例を挙げて説明すると、所望の単量体及び有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下で熱重合開始剤を添加して、40~90℃、好ましくは50~80℃で3~10時間攪拌する方法を挙げることができる。また、反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的又は間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類;プロピルアルコールやイソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンなどのケトン類等を用いることができる。
【0089】
本発明の光学積層体に含まれる粘着層は、アクリル樹脂(P)と架橋剤とを併用して構成されることが好ましい。架橋剤としては、例えばアクリル樹脂(P)中の特に極性官能基含有単量体(P2)に由来する構造単位と反応し、アクリル樹脂を架橋させる化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物などが例示される。これらのうち、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物及びアジリジン系化合物は、アクリル樹脂(P)中の極性官能基と反応し得る官能基を分子内に少なくとも2個有する。
【0090】
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート系化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート系化合物を二量体、三量体等にしたものも粘着剤に用いられる架橋剤となり得る。2種以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
【0091】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0092】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン トリス-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン トリス-β-アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0093】
金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、及びジルコニウムのなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0094】
これらの架橋剤の中でも、イソシアネート系化合物、とりわけ、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート若しくはヘキサメチレンジイソシアネート、又はこれらのイソシアネート系化合物を、グリセロールやトリメチロールプロパンのなどのポリオールに反応せしめたアダクト体や、これらのイソシアネート系化合物を二量体、三量体等にしたもの、これらのイソシアネート系化合物を混合したものなどが、好ましく用いられる。極性官能基含有単量体(P2)が、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる極性官能基を有する場合は特に、架橋剤として少なくとも1種のイソシアネート系化合物を用いることが好ましい。中でも好適なイソシアネート系化合物として、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、及びトリレンジイソシアネートの三量体、また、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、及びヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が挙げられる。
【0095】
本発明の光学積層体を構成する粘着層において、架橋剤は、アクリル樹脂(P)100質量部に対して、例えば0.01~10質量部であってよい。架橋剤の量が前記範囲内であると、粘着層の耐久性が向上する傾向にあり、また液晶表示パネルの白ヌケが目立たな
くなる傾向にあることから好ましい。
【0096】
本発明において粘着層を構成する粘着剤には、シラン系化合物を含有させることが好ましく、とりわけ、架橋剤を配合する前のアクリル樹脂にシラン系化合物を含有させておくことが好ましい。シラン系化合物はガラスに対する粘着力を向上させるため、シラン系化合物を含むことにより、表示パネルに対する高い接着力を確保することができる。
【0097】
シラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。これらのシラン系化合物は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
シラン系化合物は、シリコーンオリゴマータイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(モノマー)-(モノマー)コポリマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのなどの、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;
メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及びメルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのなどの、メルカプトメチル基含有のコポリマー;
3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのなどの、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのなどの、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及びビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのなどの、ビニル基含有のコポリマー;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのなどの、アミノ基含有のコポリマーなど。
【0099】
これらのシラン系化合物は、多くの場合液体である。粘着剤におけるシラン系化合物の配合量は、アクリル樹脂(P)100質量部(2種類以上用いる場合はその合計量)に対して、例えば0.01~10質量部であってよい。アクリル樹脂(P)100質量部に対するシラン系化合物の量が前記範囲にあると、粘着層と基板(又は液晶セル)との密着性が向上することから好ましく、また、粘着層からシラン系化合物のブリードアウトが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0100】
粘着層はイオン性化合物を含有してもよい。イオン性化合物は帯電防止剤として機能することができる。特に、アクリル樹脂(P)が前記式(IV)で示される芳香環含有(メタ)アクリル化合物を含み、式(IV)中のnが2以上である場合には、白ヌケの抑制に有効であり、この単量体が共重合されたアクリル樹脂を含む粘着剤中にイオン性化合物を配合することにより、白ヌケ抑制効果を付与しながら良好な帯電防止性も付与することができる。ここでいうイオン性化合物とは、カチオンとアニオンの組合せで存在する化合物であり、カチオン及びアニオンはそれぞれ、無機のものであっても有機のものであってもよいが、アクリル樹脂(P)との相溶性の観点からは、カチオン及びアニオンの少なくとも一方が有機基を含むイオン性化合物であることが好ましい。
【0101】
イオン性化合物を構成する無機カチオンの例としては、リチウムカチオン〔Li〕、ナトリウムカチオン〔Na〕、カリウムカチオン〔K〕、セシウムカチオン〔Cs〕等のアルカリ金属イオン;ベリリウムカチオン〔Be2+〕、マグネシウムカチオン〔Mg2+〕、カルシウムカチオン〔Ca2+〕等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。中でも、耐金属腐食性の観点から、リチウムカチオン〔Li〕、カリウムカチオン〔K〕又はナトリウムカチオン〔Na〕を用いることが好ましく、耐久性の観点からは、カリウムカチオン〔K〕を用いることがさらに好ましい。
【0102】
イオン性化合物を構成する有機カチオンの例としては、下記式(V):で示されるピリジニウム系カチオン、下記式(VI)で示される4級アンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0103】
【化9】
【0104】
式(V)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R10は、炭素数1~16のアルキル基を表す。式(VI)中、R11は炭素数1~12のアルキル基を表し、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数6~12のアルキル基を表す。
【0105】
上記式(V)で示されるピリジニウム系カチオンは、総炭素数が8以上、とりわけ10以上であることが、アクリル樹脂(P)との相溶性の観点から好ましい。またその総炭素数は、36以下、さらには30以下であるのが好ましい。式(V)で示されるピリジニウム系カチオンの中でも、ピリジン環の4-位の炭素原子に結合するRがアルキル基であり、ピリジン環の他の炭素原子に結合するR、R、R及びRがそれぞれ水素原子であるものが好ましいカチオンの1つである。
【0106】
式(V)で示されるピリジニウム系カチオンの具体例としては、N-メチル-4-ヘキシルピリジニウムカチオン、N-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、N-ブチル-2,4-ジエチルピリジニウムカチオン、N-ブチル-2-ヘキシルピリジニウムカチオン、N-ヘキシル-2-ブチルピリジニウムカチオン、N-ヘキシル-4-メチルピリジニウムカチオン、N-ヘキシル-4-エチルピリジニウムカチオン、N-ヘキシル-4-ブチルピリジニウムカチオン、N-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、N-オクチル-4-エチルピリジニウムカチオン、N-オクチルピリジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0107】
上記式(VI)で示されるアンモニウムカチオンは、総炭素数が20以上、さらには22以上であることが、アクリル樹脂(P)との相溶性の観点から好ましい。またその総炭素数は36以下、さらには30以下であることが好ましい。
【0108】
式(VI)で示されるテトラアルキルアンモニウムカチオンの具体例としては、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、トリヘキシルメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリデシルメチルアンモニウムカチオン、トリヘキシルエチルアンモニウムカチオン、トリオクチルエチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0109】
一方、イオン性化合物を構成するアニオンの例としては、クロライドアニオン〔Cl〕、ブロマイドアニオン〔Br〕、ヨーダイドアニオン〔I〕、テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4-〕、ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔AlCl 〕、テトラフルオロボレートアニオン〔BF 〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF 〕、パークロレートアニオン〔ClO 〕、ナイトレートアニオン〔NO 〕、アセテートアニオン〔CHCOO〕、トリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、メタンスルホネートアニオン〔CHSO 〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF 〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF 〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF 〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF 〕、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF) 〕(nは1~3程度)、チオシアンアニオン〔SCN〕、ジシアナミドアニオン〔(CN)〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CFSO)(CFCO)N〕等が挙げられる。
【0110】
イオン性化合物の具体例は、上記したカチオンとアニオンの組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオンとアニオンの組合せであるイオン性化合物としては、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウム ヘキサフルオロホスフェート、リチウム ヨーダイド(ヨウ化リチウム)、リチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、ナトリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ナトリウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ナトリウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、 カリウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-ブチル-2-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-ヘキシル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N-ブチル-2-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N-ヘキシル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム パークロレート、N-ブチル-2-メチルピリジニウム パークロレート、N-ヘキシル-4-メチルピリジニウム パークロレート、N-オクチル-4-メチルピリジニウム パークロレート、テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリヘキシルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラヘキシルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリブチルメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリヘキシルメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリオクチルメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、テトラヘキシルアンモニウム パークロレート、トリブチルメチルアンモニウム パークロレート、トリヘキシルメチルアンモニウム パークロレート、トリオクチルメチルアンモニウム パークロレート等が挙げられる。
【0111】
これらのイオン性化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。イオン性化合物を含有する場合、その量は、アクリル樹脂(P)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部であってよい。
【0112】
本発明において、粘着層はさらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、アクリル樹脂以外の樹脂などを含有してもよい。粘着剤に多官能性アクリレート等の紫外線硬化性化合物と光開始剤を配合し、粘着層形成後に紫外線を照射して硬化させることで、より硬い粘着層とすることも有用である。これは粘着剤内に第2架橋構造を具現し、耐熱試験時等の耐久性を向上する役割をする。また、粘着剤に架橋剤とともに架橋触媒を併用すれば、粘着層を短時間の熟成で調製することができ、得られる光学積層体において、粘着層と第1硬化物層又は第1保護フィルムとの間の浮きや剥がれが発生したり、粘着層内で発泡が起こったりすることを抑制でき、リワーク性も良好となることがある。
【0113】
架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂、及びメラミン樹脂などのアミン系化合物などを挙げることができる。粘着剤に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0114】
さらに、微粒子を含有させて光散乱性を示す粘着層とすることもできる。また粘着層には、酸化防止剤や紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
【0115】
粘着層は、例えば上述したような粘着剤を有機溶剤溶液とし、それを積層しようとするフィルム又は層(例えば偏光フィルム等)上にダイコーターやグラビアコーターなどによって塗布し、乾燥させる方法によって設けることができる。また、離型処理が施されたプラスチックフィルム(セパレートフィルムと呼ばれる)上に形成されたシート状粘着剤を、積層しようとするフィルム又は層に転写する方法によっても設けることができる。粘着層の厚みについては、特に制限はないが、2~40μmの範囲内であることが好ましく、5~35μmの範囲内であることがより好ましく、10~30μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0116】
粘着層は、その貯蔵弾性率が23~80℃において0.10~5.0MPaであることが好ましく、0.15~1.0MPaであることがより好ましい。23~80℃における貯蔵弾性率が0.10MPa以上であると、光学積層体を含む液晶表示パネルが高温などにさられた際の光学積層体の収縮による白ヌケを抑制できるため好ましい。また、5MPa以下であると粘着力の低下による耐久性の低下が起こりにくいため好ましい。ここで、「23~80℃において0.10~5.0MPaの貯蔵弾性率を示す」とは、この範囲のいずれの温度においても、貯蔵弾性率が上記範囲の値をとることを意味する。貯蔵弾性率は通常、温度上昇に伴って漸減するので、23℃及び80℃における貯蔵弾性率がいずれも上記範囲に入っていれば、この範囲の温度において、粘着層が上記範囲の貯蔵弾性率を示すとみることができる。なお、粘着層の貯蔵弾性率は、市販の粘弾性測定装置、例えば、REOMETRIC社製の粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDA II」により測定することができる。
【0117】
[導電層]
本発明の光学積層体に含まれる導電層は、例えば導電性の透明金属酸化物層であってもよく、金属配線層であってもよい。このような導電層は、例えば、アルミニウム、銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、白金、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛、チタン、パラジウム、インジウム及びこれらの2種以上の金属を含有する合金から選択される少なくとも1種の金属元素を含む層であってもよい。これらのうち、導電層は、導電性の観点から、好ましくはアルミニウム、銅、銀及び金から選択される少なくとも1種の金属元素を含む層であってもよく、導電性及びコストの観点から、より好ましくはアルミニウム元素を含む層であってもよい。なお、銅を含む層である場合、光の反射を防止する観点から、黒化処理を施してもよい。黒化処理とは、導電層の表面を酸化させてCuO又はCuOを析出させることである。また、導電層は、例えば、金属銀、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、グラフェン、酸化亜鉛、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)を含む層であってもよい。
【0118】
導電層(図1及び図2における導電層4)は例えば、基板(図1及び図2における基板X)上に設けられる。基板上に導電層を形成する方法としては、例えばスパッタリング法などが挙げられる。基板は、タッチ入力素子に含まれる液晶セルを構成する透明基板であってもよく、ガラス基板であってもよい。透明基板は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、環状オレフィンコポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリスチレン、二軸延伸ポリスチレン等で形成されていてもよい。ガラス基板は、例えばソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等で形成されていてもよい。導電層は、基板の全面に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0119】
導電性の透明金属酸化物層としては、例えばITO(錫ドープ酸化インジウム)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等の透明電極層が挙げられる。
【0120】
金属配線層としては、例えば、細線の金属配線層であるメタルメッシュ、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤーをバインダー中に添加した層などが挙げられる。なお、メタルメッシュとは、金属配線で形成された二次元の網目状構造を示す。メタルメッシュの開口部(配線間の開口部又は網の目)の形状は、特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)、円形、楕円形、不定形であってもよく、それぞれの開口部は同一又は異なっていてもよい。好ましい態様では、メタルメッシュの開口部の形状はそれぞれ同じ形状であり、かつ正方形又は長方形である。
【0121】
導電層が金属配線層(特にメタルメッシュ)である場合、例えば基板X上の平面の縦横方向に所定の間隔をあけて金属配線を配置してもよい。この際に、前記開口部は樹脂(接着剤等)で充填してもよく、樹脂(接着剤等)の中に金属配線層を埋め込んでもよい。なお、樹脂等を用いる場合、導電層(導電層4)は、金属配線と樹脂(接着剤)の両方で構成されている。
【0122】
金属配線(特にメタルメッシュ)の線幅は通常10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。金属配線層の線幅はこれらの上限値と下限値の組み合わせであってもよく、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~3μmである。
【0123】
導電層(導電性の透明金属酸化物層又は金属配線層)の厚みは、特に限定されないが、通常10μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下であり、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。導電層の厚みはこれらの上限値と下限値の組み合わせであってもよく、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.05~1μmである。なお、導電層が金属配線層であり、金属配線層が樹脂(接着剤等)と金属配線の両方で構成されている場合、導電層の厚みは樹脂を含む厚みである。
【0124】
導電層の調製方法は特に限定されず、金属箔のラミネーションであってもよく、真空蒸着法、スパッタリング法、湿式コーティング、イオンプレーティング法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、電解メッキ、無電解メッキにより形成されたものであってもよいが、好ましくはスパッタリング法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法により形成された導電層であり、より好ましくはスパッタリングにより形成された導電層である。
【0125】
導電層(例えばメタルメッシュ)は、例えばタッチパネルにおいて、透明基板をタッチした際に信号を発生させ、集積回路等にタッチ座標を伝える機能を有していてもよい。
【0126】
本発明の光学積層体は、前記偏光フィルムの一方の面に、前記第1硬化物層、前記粘着層がこの順に積層された積層体を、基板上に形成された導電層に貼合(又は積層)して得ることができる。
【0127】
導電層(例えば導電性の透明金属酸化物層、金属配線層等)を備える光学積層体は、タッチパネル機能を有するタッチ入力式液晶表示装置等に利用することができるため有用であるものの、偏光フィルムに含まれる二色性色素(ヨウ素)が導電層に移動して導電層が腐食されやすい。特にメタルメッシュ等の金属配線層を使用した場合、線幅が狭いため導電層がより腐食されやすくなる。しかし、本発明の光学積層体は、第1硬化物層を備えるため、二色性色素の導電層への移動を有効に抑制し、導電層の腐食を効果的に防止することができる。
【0128】
〔偏光フィルム〕
本発明の光学積層体を構成する偏光フィルムは、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有するフィルムであって、本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素、好ましくはヨウ素を含有させ、吸着配向させたフィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体等)が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド
類等が挙げられる。
【0129】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常、85~100モル%であり、98モル%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、及びポリビニルブチラール等を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常、1000~10000であり、1500~5000が好ましい。
【0130】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したフィルムを、偏光フィルムの原反フィルムとして用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、延伸のしやすさを考慮すれば、例えば10~150μmであり、好ましくは15~100μmであり、より好ましくは20~80μmである。
【0131】
偏光フィルムは、通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着したポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
【0132】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前に行なってもよいし、染色と同時に行なってもよいし、又は染色の後に行なってもよい。一軸延伸を染色の後で行なう場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行なってもよいし、ホウ酸処理中に行なってもよい。これらの複数の段階で一軸延伸を行なうことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、偏光フィルムの変形を抑制する観点から、好ましくは8倍以下、より好ましくは7.5倍以下、さらに好ましくは7倍以下である。また、延伸倍率は、偏光フィルムとしての機能を発現させる観点からは、4.5倍以上であることが好ましい。
【0133】
本発明においては、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。前記水溶液におけるヨウ素の含有量は、通常、水100質量部あたり0.01~1質量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、通常、水100質量部あたり0.5~20質量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1800秒である。
【0134】
ヨウ素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行なうことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部、好ましくは5~12質量部である。本発明においては、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60~1200秒、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、より好ましくは60~80℃である。
【0135】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、たとえば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行なうことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃であり、浸漬時間は、通常1~120秒である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行なうことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃、好ましくは40~95℃、より好ましくは50~90℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒、好ましくは120~600秒である。
【0136】
このようにポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素、好ましくはヨウ素による染色、及びホウ酸処理が施され、偏光フィルムが得られる。偏光フィルムの厚みは、例えば5~40μmとすることができる。
【0137】
〔第2硬化物層〕
本発明の光学積層体は、偏光フィルムの前記第1硬化物層とは反対側の面に、硬化性組成物の硬化物から構成される第2硬化物層を備えていてもよい。第2硬化物層を構成する硬化性組成物は、偏光フィルムや第2保護フィルムとの接着性に応じて適宜選択でき、上述の第1硬化物層を構成する硬化性組成物の範囲に含まれる組成物であってもよく、当該分野で既知の光硬化性接着剤等であってもよい。上述の第1硬化物層を構成する硬化性組成物の範囲に含まれる組成物を用いる場合、光学積層体を構成する第1硬化物層の硬化性組成物と同じ組成の硬化性組成物を第2硬化物層に使用してもよく、異なる組成の硬化性組成物を第2硬化物層に使用してもよい。
【0138】
当該分野で既知の光硬化性接着剤としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤などの混合物や光硬化性アクリル樹脂と光ラジカル重合開始剤などの混合物が挙げられる。第2硬化物層を構成する硬化物を形成する硬化性組成物は、例えば国際公開第2014/129368号に記載される、光硬化性成分及び光カチオン重合開始剤を含む光硬化性接着剤を用いることができる。
【0139】
第2硬化物層は、光学積層体の第1硬化物層が積層された面とは反対側の面に、第2硬化物層を構成する硬化性組成物を公知の方法により塗布し、硬化させることで形成することができる。第2硬化物層を構成する硬化性組成物の塗工方式は、例えば、硬化性組成物(1)の塗工と同様の塗工方式が挙げられる。
【0140】
第2硬化物層を構成する硬化性組成物として、光硬化性組成物又は既知の光硬化性接着剤を用いる場合には、活性エネルギー線を照射することによって硬化性組成物又は硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましい。
【0141】
第2硬化物層を構成する硬化性組成物への光照射強度は、該硬化性組成物の組成によって適宜選択でき、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度は、好ましくは0.1~1000mW/cmである。第2硬化物層を構成する硬化性組成物への光照射時間は、硬化させる硬化性組成物によって適宜選択すればよく、上記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が好ましくは10~5000mJ/cmとなるように設定される。
【0142】
なお、活性エネルギー線の照射によって硬化性組成物を硬化させる場合、例えば、偏光フィルムの偏光度、透過率及び色相、ならびに保護フィルム及び光学層を構成する各種フィルムの透明性といった、光学積層体の諸機能が低下しない条件で硬化を行なうことが好ましい。第2硬化物層の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、0.1~10μmである。
【0143】
〔保護フィルム〕
一実施態様において、本発明の光学積層体は、前記偏光フィルムの一方の面に第1硬化物層を介して積層された第1保護フィルム(図2に示される7)を有する。また、一実施態様において、本発明の光学積層体は、前記偏光フィルムのもう一方の面(第1硬化物層2とは反対側の面)に、第2硬化物層を介して積層された第2保護フィルム(図1及び2に示される6)を有する。偏光フィルムの収縮及び膨張防止、温度、湿度、紫外線等による偏光フィルムの劣化防止に寄与する観点から、一実施態様において、本発明の光学積層体は前記第1保護フィルムを有する。一方、光学積層体の薄型化の観点から、一実施態様において、本発明の光学積層体は前記第1保護フィルムを含まない。本発明における第1硬化物層は保護フィルムに代えて偏光フィルムの劣化防止にも寄与するため、偏光フィルムの劣化防止及び光学積層体の薄型化をバランスよく達成する観点からは、本発明の光学積層体が第1保護フィルムを含まないことが好ましい。
【0144】
保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性等に優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン;エチレン・プロピレン共重合体のようなポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーのブレンド物なども保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂による硬化物層として形成することもできる。中でもイソシアネート架橋剤との反応性を有する水酸基を有するものが好ましく、特にセルロース系ポリマーが好ましい。
本発明の光学積層体において、第1保護フィルムと第2保護フィルムとは同じ材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。
【0145】
第2保護フィルムの透湿度は、温度23℃、相対湿度55%において、好ましくは1200g/(m・24時間)以下であり、より好ましくは800g/(m・24時間)以下であり、さらに好ましくは600g/(m・24時間)以下であり、特に好ましくは400g/(m・24時間)以下であり、最も好ましくは200g/(m・24時間)以下である。第2保護フィルムの透湿度が上記値以下であると、高温高湿下において外部からの水分の浸入を防ぎ、偏光フィルムに含まれる二色性色素(ヨウ素)の移動が加速されるのを防ぐことができるため、導電層の腐食及び光学特性の劣化をより効果的に防止することができる。一方、本発明の光学積層体は第1硬化物層を有するため、第2保護フィルムが上記透湿度を満たさなくても、偏光フィルムに含まれる二色性色素(ヨウ素)の移動を抑制し、導電層の劣化及び光学特性の劣化を防止可能である。
【0146】
保護フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、第1保護フィルム及び第2保護フィルムはいずれも、通常5~500μmであり、好ましくは1~300μm、より好ましくは5~200μm、さらに好ましくは10~100μmである。また、保護フィルムは、光学補償機能を付加させた保護フィルム等から構成されていてもよい。
【0147】
本発明の光学積層体において、第1硬化物層は偏光フィルムから粘着層への二色性色素の移動、及び粘着層から偏光フィルムへのイオン性化合物の移動を効果的に抑制することができるため、光学積層体を構成する第1保護フィルムの材料についての選択範囲が広がる。すなわち、イオン性化合物を透過しにくい保護フィルムを用いる必要がなく、イオン性化合物を透過しやすい一般的に安価な構成の保護フィルムを用いて光学積層体を構成することが可能となる。これにより生産コストを安くできるなど、本発明の光学積層体は工業的な観点においても有利である。
【0148】
図1及び図2に示される本発明の光学積層体は、偏光フィルムに直接第1硬化物層が積層されているが、偏光フィルムと第1硬化物層との間、或いは、第1硬化物層と粘着剤層との間にプライマー層が備えられていてもよい。プライマー層を形成する材料としては、例えばウレタンオリゴマー等の各種ポリマー類、金属酸化物のゾル、シリカゾル等が挙げられる。プライマー層は、保護フィルムよりも厚みが薄く、例えば0.01~3μm、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.5~1μmである。
【0149】
また、本発明の光学積層体は、偏光フィルムと第1硬化物層との間に、接着剤層を介して保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムとしては、例えば上記に例示の第1保護フィルム又は第2保護フィルムと同様の保護フィルムが挙げられる。保護フィルムの厚みも第1保護フィルム又は第2保護フィルムと同様に、通常5~500μmである。
【0150】
本発明の光学積層体は、偏光フィルムと第1硬化物層との間に保護フィルムを備えていなくても、第1硬化物層が効果的に二色性色素の移動を防ぐことができる。このため、本発明の光学積層体は、偏光フィルムに直接第1硬化物層が積層されている態様、又は偏光フィルムにプライマー層を介して第1硬化物層が積層されている態様、又は第1硬化物層にプライマー層を介して粘着剤層が積層されている態様が好ましい。
【0151】
本発明の光学積層体は、必要に応じて、さらに、位相差フィルム、視角補償フィルム及び輝度向上フィルム等の光学層を積層していてもよい。本発明の光学積層体において光学層は、当該分野で既知の材料を用いて形成することができる。
【0152】
本発明の光学積層体は、公知の方法で製造することができる。例えば、第2保護フィルムに硬化性組成物を塗布して第2硬化組成物層を形成し、前記第2硬化組成物層に偏光フィルムを貼合し積層体を作製する。第1保護フィルムを含まない光学積層体の場合、剥離性フィルム上に硬化性組成物(1)を塗布して第1硬化組成物層を形成し、その塗工面に前記積層体の偏光フィルム側を貼合する。次いで、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して第2硬化組成物層及び第1硬化組成物層を硬化させて第2硬化物層及び第1硬化物層を形成する。その後、剥離性フィルムを剥がし、第1硬化物層上に粘着層を形成する。そして、例えば基板上に積層された導電層に粘着剤層を貼合すればよい。一方、第1保護フィルムを含む光学積層体の場合、保護フィルム上に硬化性組成物(1)を塗布して第1硬化組成物層を形成し、その塗工面に前記積層体の偏光フィルム側を貼合した後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して第1硬化組成物層を硬化させて第1硬化物層を形成し、次いで、第1保護フィルム上に粘着層を形成する。そして、例えば基板上に積層された導電層に粘着剤層を貼合すればよい。
【0153】
硬化性組成物を塗工した際の厚みムラを軽減させ、且つ、光学積層体の薄型化を両立させる観点から、上記のようにセパレートフィルム(剥離フィルム)を用いて積層体を形成することができる。例えば、偏光フィルムと第1硬化物層からなる積層体は、偏光フィルムの一方の面に第1硬化物層を介してセパレートフィルム(剥離フィルム)を積層し、活性エネルギー線等により、第1硬化物層を硬化させた後に、セパレートフィルム(剥離フィルム)を剥離することにより形成することができる。
【0154】
本発明は、上述した構成を有する光学積層体、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、導電層とがこの順に積層された光学積層体(一実施態様において図1及び図2で示される光学積層体)であって、
前記重合性化合物は、2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含み、該オキセタン化合物の含有量は、硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して40質量部以上である、光学積層体を包含する。2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を所定量以上含むと、架橋密度が高く緻密な第1硬化物層を形成できるため、偏光フィルムに含まれる二色性色素(ヨウ素)の第1硬化物層への移動を有効に抑制することができ、二色性色素(ヨウ素)による導電層の腐食及び光学性能の低下を効果的に防止することが可能となる。なお、このような光学積層体については、第1硬化物層の吸光度上昇率が30%以下であってもなくてもよい。好ましい態様においては、2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物は、上述のオキセタン化合物(A)であり、第1硬化物層の硬化物を形成する硬化性組成物に含まれる成分や含有量(好ましい成分や含有量も含む)も上述のものと同じである。また光学積層体に含まれる偏光フィルム、粘着層、及び導電層も上述のものと同じである。
【0155】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、導電層とがこの順に積層された光学積層体であって、第1硬化物層の水接触角が90°以上である光学積層体は、第1硬化物層の優れた疎水性に起因して、二色性色素(ヨウ素)の移動が顕著となる高温高湿環境下においても、二色性色素の移動を有効に抑制し、導電層の腐食及び光学性能の低下を効果的に防止することができる。
【0156】
本発明において、第1硬化物層の水接触角は、例えば90°以上であり、好ましくは95°以上、より好ましくは100°以上である。水接触角が上記値以上であると、高温高湿下においても、第1硬化物層への二色性色素の移動を有効に抑制し、導電層の腐食及び光学性能の低下を効果的に防止することができる。
【0157】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、導電層とがこの順に積層された光学積層体であって、第1硬化物層の30℃における貯蔵弾性率が1500MPa以上である光学積層体は、架橋密度が比較的高いことに起因して、二色性色素(ヨウ素)に対するバリア性が高く、第1硬化物層への二色性色素(ヨウ素)の移動を有効に抑制し、導電層の腐食及び光学性能の低下を効果的に防止することができる。
【0158】
第1硬化物層の30℃における貯蔵弾性率は、例えば1500~3500MPa、好ましくは1800~3500MPa、より好ましくは2000~3500MPa、さらに好ましくは2500~3500MPaである。弾性率が上記下限値以上であると、第1硬化物層への二色性色素(ヨウ素)の移動をより有効に抑制し、導電層の腐食及び光学性能の低下をより効果的に防止することができる。
【0159】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物(1)の硬化物から構成される第1硬化物層と、粘着層と、導電層とがこの順に積層された光学積層体であって、第1硬化物層のガラス転移温度が90℃以上である光学積層体は、架橋密度が比較的高いことに起因して、二色性色素(ヨウ素)に対するバリア性が高く、第1硬化物層への二色性色素(ヨウ素)の移動を有効に抑制し、導電層の腐食及び光学性能の低下を効果的に防止することができる。
【0160】
第1硬化物層のガラス転移温度は、例えば90~180℃、好ましくは100~180℃、より好ましくは120~180℃、さらに好ましくは150~180℃である。弾性率が上記下限値以上であると、第1硬化物層への二色性色素(ヨウ素)の移動をより有効に抑制し、導電層の腐食及び光学性能の低下をより効果的に防止することができる。
【実施例
【0161】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
【0162】
[実施例1]
1.第1硬化物層を構成する硬化性組成物(I)の調製
下記表1の組成に従い、各成分を混合して、製造例1~製造例31の硬化性組成物(I)を調製した。
【0163】
2.第1硬化物層の吸光度上昇率の評価(ヨウ素イオン吸収性評価)
厚さ50μmのシクロオレフィン系フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン(株)製〕の片面に、製造例1の硬化性組成物(I)を、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が約30μmとなるように塗工した。その塗工面に、厚さ50μmのシクロオレフィン系フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン(株)製〕を貼合し、積層体を作製した。前記積層体のシクロオレフィン系フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」を使用〕を用いて280nm~320nmの積算光量が1000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、硬化性組成物(I)を硬化させ、第1硬化物層の両側にシクロオレフィン系フィルムが積層された積層体を得た。得られた積層体の両側のシクロオレフィン系フィルムを剥離して、硬化性組成物(I)の硬化物(第1硬化物層)を単離し、評価用サンプルとした。
評価用サンプルを、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、「UV2450」)を用いて360nmにおける吸光度を測定した。この吸光度を浸漬前吸光度とする。
次に、評価用サンプルを温度23℃、相対湿度60%の大気中で、50%ヨウ化カリウム水溶液に100時間浸漬させた。評価用サンプルを取り出し、純水にて表面をふき取った後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、「UV2450」)を用いて360nmにおける吸光度を測定した。この吸光度を浸漬後吸光度とする。
得られた吸光度を用いて、下記式で表される吸光度上昇率(%)を算出した。結果を表1に示す。また、同様にして、製造例2~31の硬化性組成物(I)から形成されたそれぞれの硬化層の吸光度上昇率を求めた。結果を表1に示す。
吸光度上昇率(%)=(浸漬後吸光度(360nm)-浸漬前吸光度(360nm))/浸漬前吸光度(360nm)×100 (1)
【0164】
【表1】
【0165】
表1における各成分を以下に示す。
<脂環式エポキシ化合物(B2)>
B2-1:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「セロキサイド 2021P」(商品名)、ダイセル化学(株)製) B2-2:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(「EHPE3150」(商品名)、ダイセル化学(株)製)
<脂肪族エポキシ化合物(B1)>
B1-1:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、(「EX-214」(商品名)、ナガセケムテックス(株)製)
B1-2:シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(「EX-216」(商品名)、ナガセケムテックス(株)製)
B1-3:シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(「EX-411」(商品名)、ナガセケムテックス(株)製)
<芳香族エポキシ化合物(B3)>
B3-1:レソルシノールジグリシジルエーテル(「EX-201」(商品名)、ナガセケムテックス(株)製)
B3-2:ビスAタイプエポキシ樹脂(「jER828EL」(商品名)、三菱化学(株)製)
B3-3:2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1、1-ビス[4-([2、3-エポキシプロポキシ]フェニル]エチル]フェニル]プロパン(「TECHMORE VG3101L」(商品名)、(株)プリンテック製)
<オキセタン化合物(A)>
A1-1:ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(「OXT-221」(商品名)、東亞合成(株)製)
A1-2:キシリレンビスオキセタン(「OXT-121」(商品名)、東亞合成(株)製)
<オキセタン化合物(a)>
a1-1:2-エチルヘキシルオキセタン(「OXT-212」(商品名)、東亞合成(株)製、オキセタニル基を1つ有する化合物)
a1-2:3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT-101」(商品名)、東亞合成(株)製、オキセタニル基を1つ有する化合物)
<アクリル化合物>
P1-1:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(「A-DCP」(商品名)、新中村化学(株)製)
P1-2:ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレート(「A-DOG(商品名)」、新中村化学(株)製)
<重合開始剤>
G1-1:光カチオン重合開始剤:トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネート50溶液(「CPI-100P」(商品名)、サンアプロ(株)製)
G1-2:光ラジカル重合開始剤:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(「ダロキュア1173」(商品名)、BASFジャパン(株)製)
<レベリング剤>
S1-1:シリコーン系レベリング剤(「SH710」(商品名)、東レ・ダウコーニング(株)製)
【0166】
3.偏光フィルムの作製
厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製、「クラレポバール KL318」(商品名):カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。さらに、26℃の純水で20秒間洗浄し、65℃で乾燥した後、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向した厚さ7μmの偏光フィルム(1)を得た。
【0167】
4.水系接着剤の調製
純粋100質量部、ポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製、「クラレポバール KL318」(商品名):カルボキシル基変性ポリビニルアルコール)3.0質量部、及び水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス(株)製、「スミレーズレジン 650」(商品名)、固形分濃度30%の使用液)1.5質量部を混合し、水系接着剤(1)を調製した。なお、「スミレーズレジン 650」の質量部は固形分の質量を示している。
【0168】
5.積層体(1)の作製
偏光フィルム(1)の一方の面に、水系接着剤(1)を塗布し、表面がハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルム((株)トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム製、「25KCHC-TC」(商品名)、厚み32μm)にケン化処理を施した後、ハードコート処理されていない面を、水系接着剤(1)を介して偏光フィルムと貼合した。これを60℃で6分間乾燥し、片面に保護フィルムを有する積層体(1)を作製した。
【0169】
6.積層体(2)の作製
厚さ50μmのシクロオレフィン系フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン(株)製〕の片面に、硬化性組成物(I)を、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が約3μmとなるように塗工した。その塗工面に、積層体(1)の偏光フィルム側を貼合し、積層体を作製した。前記積層体のシクロオレフィン系フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」を使用〕を用いて280nm~320nmの積算光量が200mJ/cmとなるように紫外線を照射し、硬化性組成物(I)を硬化させ、その後シクロオレフィン系フィルムを剥離した。保護フィルム/水系接着剤/偏光子フィルム/硬化性組成物(I)の硬化物(第1硬化物層)からなる積層体(2)を作製した。
【0170】
7.積層体(3)の作製
アクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を調製し、このアクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔リンテック(株)製、「SP-PLR382050」(商品名)、剥離フィルムと称する〕の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、乾燥させて、剥離フィルム付きシート状粘着剤を作製した。次いで、積層体(2)の第1硬化物層側に、得られたシート状粘着剤の剥離フィルムとは反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層を設けた積層体(3)を得た。この積層体は粘着剤層の上に、剥離フィルムが貼合された構成になっている。
【0171】
アクリル系粘着剤としては、以下のものを含有する。
<ベースポリマー>
ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸及びヒドロキシエチルアクリレートの共重合体
〈イソシアネート系架橋剤〉
トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)(「コロネートL」(商品名)、東ソー株式会社製)
〈シランカップリング剤〉
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、液体(「KBM-403」(商品名)、信越化学工業(株)製)
〈帯電防止剤〉
1-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロフォスフェート、下式(III)で示される化合物。
【化10】
【0172】
8.ITO腐食性評価
無アルカリガラスの一方の面に、スパッタリング法によりITO膜を形成し、ITO膜を有するガラスを作製した。このITO薄膜を有するガラスを25mm×25mmに切断し、ITO薄膜上の中央部を、低抵抗率計(「ロレスタAX MCP-T370」、三菱化学アナリテック製)を用いて測定し、これを「初期抵抗値」とした。次いで、積層体(3)を15mm×15mmに切断したものを、積層体(3)の粘着剤層とITO薄膜とが接触するように貼り合わせた後、温度50℃、圧力5kg/cm(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施し、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。これを評価用サンプルとした。その後、この評価用サンプルを、80℃、相対湿度90%の環境に72時間投入した後取り出し、積層体(3)を剥した。次いで、ITO薄膜上をタノールにより洗浄し、上記と同様の装置を用いて測定したものを「耐久後抵抗値」とした。上述のように測定した「初期抵抗値」及び「耐久後抵抗値」から、下記式によりITO抵抗値上昇率を算出し、以下の評価基準でITO腐食性を評価した。結果を表2に示す。表2中の数字は、下記式における上昇率の値を示す。
抵抗値上昇率(%)=(耐久後抵抗値―初期抵抗値)/初期抵抗値×100
【0173】
◎:抵抗値上昇率が20%以下
○:抵抗値上昇率が20%を超え30%未満
×:抵抗値上昇率が30%以上
【0174】
9.積層体の耐久性評価
積層体(3)を30mm×30mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥した後、積層体(3)の粘着剤層側を無アルカリガラス〔コーニング社製、「EAGLE XG」〕に貼合した。このサンプルに、温度50℃、圧力5kg/cm(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。次いで、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、「UV2450」)にオプションアクセサリーの「偏光フィルム付フィルムホルダー」をセットして、波長380~700nmの範囲における積層体の透過軸方向と吸収軸方向の透過スペクトルを測定し、それらをもとに、偏光度Py(単位:%)を求めた。この偏光度を初期Pyとした。さらに、80℃で相対湿度90%の環境下に24時間静置した後の偏光度を測定し、この偏光度を試験後Pyとした。これらを基に、下記式により偏光度変化ΔPyを算出した。結果を表1に示す。
ΔPy=試験後Py-初期Py
【0175】
[実施例2~22及び比較例1~9]
製造例2~31の硬化性組成物(I)を用いて、実施例1と同様にして第1硬化物層及び積層体(3)を得た。得られた積層体(3)を用いて、実施例1と同様の方法により、ITO抵抗値上昇率及び偏光度変化ΔPyを算出した。これらの結果を表2に示す。
【表2】
【0176】
表2に示されるように、実施例1~22は、第1硬化物層の吸光度上昇率が30%以下である光学積層体が、高温高湿下に長時間おかれてもITOの腐食を効果的に抑制できることを示す。特に実施例4~20及び実施例22は、第1硬化物層の吸光度上昇率が20%以下である光学積層体が、ITOの腐食をより効果的に抑制できることを示す。また、実施例1~22は、吸光度上昇率が30%以下である光学積層体が、耐久性に優れ、高温高湿下においても光学性能を維持できることを示す。
【0177】
表2に示されるように、実施例1~22は、第1硬化物層が2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を、全重合性化合物の総量100質量部に対して40質量部以上含む硬化物層である光学積層体がITOの腐食をより効果的に抑制できることを示す。
【符号の説明】
【0178】
1…偏光フィルム、2…第1硬化物層、3…粘着層、4…導電層、5…第2硬化物層、6…第2保護フィルム、7…第1保護フィルム、10…光学積層体、X…基板
図1
図2