(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ペレットの製造方法、スクリュー、および、押出機
(51)【国際特許分類】
B29B 7/48 20060101AFI20240510BHJP
B29B 7/42 20060101ALI20240510BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20240510BHJP
B29C 48/04 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/59 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/505 20190101ALI20240510BHJP
【FI】
B29B7/48
B29B7/42
B29B7/84
B29C48/04
B29C48/40
B29C48/395
B29C48/59
B29C48/505
(21)【出願番号】P 2019112957
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】内田 英明
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-121837(JP,A)
【文献】特開昭54-127977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/48
B29B 7/42
B29B 7/84
B29C 48/04
B29C 48/40
B29C 48/395
B29C 48/59
B29C 48/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、前記シリンダー内に挿通しているスクリューとを有する押出機を用いてペレットを製造する方法であって、
前記シリンダーは、フィード部と、前記フィード部よりも下流側にあるベント部とを有し、
前記フィード部より、熱可塑性樹脂
100質量部に対し、粉体
50質量部超と強化繊維
40質量部超を含む原料を供給して、溶融混練して、押出することを含み、
前記スクリューは、前記ベント部に対応する位置に、フライトの最外径をDとした場合に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有する、ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記スクリューは、さらに、前記フィード部から供給された原料を下流側に搬送させるための搬送部に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有する、請求項1に記載のペレットの製造方法。
【請求項3】
前記原料は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、粉体を50
質量部超200質量部
以下含む、請求項1または2に記載のペレットの製造方法。
【請求項4】
前記粉体がマイカを含む、請求項3に記載のペレットの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のペレットの製造方法。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である、請求項5に記載のペレットの製造方法。
【請求項7】
押出の際の押出量が210kg/時間以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のペレットの製造方法。
【請求項8】
押出機のトルクが55%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレットの製造方法、スクリュー、および、押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、押出機を用いて、ベース樹脂にフィラー(充填剤)や添加剤を配合したものを供給し、溶融混練することが行われている。
具体的には、特許文献1には、シリンダーと、前記シリンダー内に挿通される二軸スクリューとを備える押出機を用いた押出成形方法であって、前記二軸スクリューには、前記シリンダーに設けられるフィード部から供給される原料を下流側に搬送する搬送部が設けられ、前記原料は、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドXDの少なくとも1つ100重量部と、吸湿性フィラー5~400重量部とを含み、前記搬送部のスクリュー構成は、フライトの最外径をDとした場合に、リードが1.0D以上2.5D以下、スクリュー長が3.0D以上10D以下の1条のフルフライトスクリューとされることを特徴とするエンジニアプラスチックスの押出し成形方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、押出機を用いた溶融混練方法は検討されているが、本発明者が検討を行ったところ、押出機のベント部の真空に引いている部分で、脱気や低沸点成分の放出が適切に行われず、樹脂などが上がってきてしまうベントアップと呼ばれる現象が生じることがあることが分かった。また、ベントアップを抑制するためには、押出量(吐出量)を低くすることも考えられるが、生産性に劣るという傾向にある。
本発明は、かかる課題を解決するものであって、押出量を高く維持しつつ、かつ、ベントアップが生じにくい、ペレットの製造方法、ならびに、スクリューおよび押出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、シリンダーのベント部に対応する位置のスクリューに、特定のフライトを採用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>シリンダーと、前記シリンダー内に挿通しているスクリューとを有する押出機を用いてペレットを製造する方法であって、前記シリンダーは、フィード部と、前記フィード部よりも下流側にあるベント部とを有し、前記フィード部より、熱可塑性樹脂を含む原料を供給して、溶融混練して、押出することを含み、前記スクリューは、前記ベント部に対応する位置に、フライトの最外径をDとした場合に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有する、ペレットの製造方法。
<2>前記スクリューは、さらに、前記フィード部から供給された原料を下流側に搬送させるための搬送部に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有する、<1>に記載のペレットの製造方法。
<3>前記原料は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、粉体を50~200質量部含む、<1>または<2>に記載のペレットの製造方法。
<4>前記粉体がマイカを含む、<3>に記載のペレットの製造方法。
<5>前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載のペレットの製造方法。
<6>前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である、<5>に記載のペレットの製造方法。
<7>押出の際の押出量が210kg/時間以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のペレットの製造方法。
<8>押出機のトルクが55%以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のペレットの製造方法。
<9>シリンダーのベント部に対応する位置に、フライトの最外径をDとした場合に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有するスクリュー。
<10>さらに、搬送部に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有する、<9>に記載のスクリュー。
<11>二軸押出機に用いる、<9>または<10>に記載のスクリュー。
<12>シリンダーと、前記シリンダー内に挿通しているスクリューとを有する押出機であって、前記シリンダーは、フィード部と、前記フィード部よりも下流側にあるベント部とを有し、前記スクリューは、シリンダーと、前記シリンダー内に挿通している<9>~<11>のいずれか1つに記載のスクリューとを有する、押出機。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、押出量を高くしつつ、かつ、ベントアップが生じにくい、ペレットの製造方法、ならびに、スクリューおよび押出機を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、アンダーカットを有する半角1条フルフライトの一例を模式的に示した図である。
【
図2】
図2は、本発明のスクリューを有する押出機を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のペレットの製造方法は、シリンダーと、前記シリンダー内に挿通しているスクリューとを有する押出機を用いてペレットを製造する方法であって、前記シリンダーは、フィード部と、前記フィード部よりも下流側にあるベント部とを有し、前記フィード部より、熱可塑性樹脂を含む原料を供給して、溶融混練して、押出することを含み、前記スクリューは、前記ベント部に対応する位置に、フライトの最外径をDとした場合に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有することを特徴とする。
フライト側部にアンダーカット(曲面状の窪み)を設けることにより、隣り合うフライトの間に形成される流通スペースがより一段と広くなり、押出量が多くても、ベントアップを起こりにくくすることができる。さらに、フィードネックも抑制可能になる。
熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練すると、ベントアップが起きやすい。ベントアップを抑制するには、溶融樹脂の押出量を減らすことが考えられるが、生産効率の観点から望ましくない。そして、本発明者が検討を行ったところ、スクリューのベント部に対応する位置に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライト(以下、「半角1条フルフライト」ということがある)を用いることとした。
さらに、本発明者が検討を行ったところ、熱可塑性樹脂と粉体を含む原料を溶融混練して押出した場合に、特に、ベントアップが起きやすいことが分かった。すなわち、熱可塑性樹脂とマイカなどの粉体を押出機で溶融混練すると、粉体が抱き込んでいる空気や水分、低揮発成分が、原料の食い込みを妨害し、ベントアップを引き起こすことを見出した。そして、上記半角1条フルフライトを用いることにより、粉体を含む溶融樹脂を用いても、ベントアップも効果的に抑制しうることを見出した。
【0010】
図1はリードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライト(半角1条フルフライト)の一例を模式的に示した図であって、
図1(a)は、スクリューの原料の流れ方向に対し、横方向から見た模式図であり、
図1(b)はスクリューの原料の流れ方向の断面の模式図である。
図1の実施形態では、二軸押出機に用いる場合を示しており、
図1(b)では2本のスクリューが記載されている(
図1(a)ではスクリューは1本のみ示している。)。
図1において、10はスクリューを、11はフルフライトを、12はスクリューの軸を、13はアンダーカットを示している。Dはフライトの最外径を、Fwはフライトの幅を、Fdはフライトの高さを、Pはピッチを示している。
図1(a)におけるX-X線が、スクリューの中心軸であり、
図1(b)において、+で表される部分、すなわち、
図1(b)の符号12に相当する部分である。本発明のスクリューにおいては、リード、すなわち、1回転で進む距離が1.0D以上2.5D以下(好ましくは1.1D以上2.4D以下、より好ましくは1.25D~2.0D)であり、1条、すなわち、1回転でピッチの間隔だけ原料が進む。そのため、スクリュー中を原料が搬送・溶融混練されるに際し、
図1(b)に示すように、アンダーカット13により、空気や水分、低揮発成分等の流路が確保され、原料中の空気や水分、低揮発成分等をベント部から適切に逃すことが可能になったと推測される。上記アンダーカット13は、半角一条フルフライトでは、
図1(b)の面からみると、ほぼ直線上にカットされているように見える。このような形状とすることにより、より効果的に水分、低揮発成分や空気の放出が可能になる。
【0011】
図2は、本発明のスクリューを有する押出機を模式的に示す概略図であって、20は押出機を、21はフィード部を、22はベント部を、23はシリンダーを、24はスクリューを示している。また、25は第一搬送部(半角1条)を、26は第一混練部を、27は第二搬送部(半角1条)を、28は第二混練部を、29は第三搬送部(2条)を、30は第三混練部を、31はベンド部搬送部(半角1条)を、32は第四搬送部(2条)をそれぞれ示している。また、33は熱可塑性樹脂等の投入口(ホッパー)の位置を、34は粉体投入口(図示せず)の位置を、35はガラス繊維投入口(図示せず)の位置を、36は余分な空気や水分、低揮発成分の放出口の位置(ベント口)をそれぞれ示している。
押出機20の内部には、シリンダー23と、前記シリンダー内に挿通しているスクリュー24とが設けられている。
図2では、二軸押出機の断面図である。シリンダー23は、フィード部21と、フィード部21よりも下流側にあるベント部22とを有する。
図2では、熱可塑性樹脂を含む原料は、フィード部21から供給され、第一搬送部25を経て、第一混練部26へ搬送される。フィード部21のシリンダーは振動が加えられることが好ましく、振幅は0.005~0.2mm、振動速度は0.3mm/秒~5mm/秒であることがより好ましい。振動を加えることにより、粉体に含まれる水成分に起因する原料や溶融樹脂の加水分解を抑制できる。原料は、第一搬送部25を経て、第一混練部26で混練される。第一混練部26で原料は加熱されるが、第一搬送部25でも予備加熱されていてもよい。加熱温度は、原料の主成分となる熱可塑性樹脂の融点やガラス転移温度などを基準に設定することができる。原料が結晶性熱可塑性樹脂を含む場合、結晶性熱可塑性樹脂の融点+1~50℃であることが好ましい。第一混練部26で溶融混練された原料は、さらに後から供給される樹脂に押される。
図2では、さらに、粉体が投入され、第二搬送部(半角1条)27を経て第二混練部28に供給され、さらに、ガラス繊維が投入され第三搬送部(2条)29を経て第三混練部30に供給される。そして、さらに下流にあるベンド部搬送部(半角1条)31に搬送される。
図2では、スクリューの下流側のベンド部搬送部(半角1条)31に相当する位置にベント部22が設けられ、かかるベント部22で真空引きされ、余分な空気や水分、低揮発成分が放出される。本発明では、かかるベント部22に対応する位置のスクリュー(ベンド部搬送部(半角1条)31)に、半角1条フルフライトを用いている。そのため、空気や水分、低揮発成分の流路が十分に確保され、空気や水分、低揮発成分が適切にベント部から放出される。半角1条フルフライトのスクリュー長さは、3D~10Dが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
図2では、ベンド部搬送部(半角1条)31で余分な空気や水分、低揮発成分を放出した後、最も下流側の第四搬送部(2条)32に送られ、原料は、ダイス(図示せず)を経由してシリンダー20の外部に押し出される。
図2において、フィード部21は1つであってもよいし、2つ以上あってもよく、2つが好ましい。また、強化繊維を含むペレットを製造する場合、強化繊維は、別途、サイドフィードしてもよい。また、
図2では、搬送部と混練部が複数回設けられているが、1回であってもよいし、
図2より多い数であってもよい。
さらに、本発明では、フィード部21から供給された下流側に搬送させるための第一搬送部25にも、半角1条フルフライトを有することが好ましい。このような構成とすることにより、フィードネックもより効果的に抑制することができる。フィード部21から供給された原料を下流側に搬送させるための第一搬送部25に設ける半角1条フルフライトの好ましい範囲は、ベント部に対応する位置に設ける半角1条フルフライトと同じである。しかしながら、フィード部21から供給された原料を下流側に搬送させるための第一搬送部25に設ける半角1条フルフライトと、ベント部に対応する位置に設ける半角1条フルフライト(
図2ではベンド部搬送部(半角1条)31)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0012】
本発明で用いるアンダーカットを有する半角1条フルフライトのフィラメント幅(例えば、
図1のFw)は、0.5D~0.9Dであることが好ましく、0.7D~0.85Dであることがより好ましい。また、本発明で用いる半角1条フルフライトのフィラメント深さ(例えば、
図1のFd)は、0.1D~0.25Dであることが好ましく、0.15D~0.2Dであることがより好ましい。また、本発明で用いる半角1条フルフライトの長さが、3.0D~10.0Dであることが好ましく、4.0D~8.0Dであることがより好ましい。さらに、本発明で用いる半角1条フルフライトの最外径(例えば、
図1のD)は、15~150mmであることが好ましく、30~75mmであることがより好ましい。
押出機、スクリューおよびフライトの詳細は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特開2014-121837号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0013】
次に、原料について説明する。
本発明で用いる原料は、熱可塑性樹脂を含む。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、および、熱可塑性ポリイミド樹脂から選択されることが好ましい。これらの中でも、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0014】
ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合、ジアミンと二塩基酸の重縮合により得られる酸アミドを構成単位とする高分子であり、具体的には、ポリアミド6、11、12、46、66、610、612、6I、6/66、4T、6T/6I、6/6T、66/6T、66/6T/6I、9T、10T、ポリアミドMX、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド等が挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸成分、「T」はテレフタル酸成分を示す。また、ポリアミド樹脂としては、特開2011-132550号公報の段落番号0011~0013の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0015】
特に、本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも1種に由来する。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸などが好適に使用でき、アジピン酸およびセバシン酸がより好ましく、アジピン酸がさらに好ましい。
【0016】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0017】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸類の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0018】
本発明で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるとは、これらの成分がポリアミド樹脂の主成分であることを意味する。これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0019】
原料中、熱可塑性樹脂(好ましくはポリアミド樹脂)の量は、30~99質量%であることが好ましい。特に、原料が強化繊維を含む場合、熱可塑性樹脂の量は、30~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。さらに、原料が粉体を含む場合、熱可塑性樹脂の量は、30~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。さらにまた、原料が強化繊維と粉体を含む場合、熱可塑性樹脂の量は、30~50質量%であることが好ましい。
原料は、熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい、2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0020】
原料は、熱可塑性樹脂に加え、粉体を含むことが好ましい。粉体を含む原料では、特に、ベントアップが起こりやすかったが、本発明では、スクリューに半角1条フルフライトを用いることにより、効果的にベントアップを抑制することが可能になる。
粉体は、粉状の原料である限り、特に定めるものではなく、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよい。
無機化合物の粉体としては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウム、クレー、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム等が挙げられ、マイカが好ましい。後述する添加剤でも、粉体の状態で配合されるものは、本発明における粉体とする。
原料は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、粉体を50質量部以上含むことが好ましく、60質量部以上含むことがより好ましく、65質量部以上含むことがさらに好ましい。また、粉体は、原料中、熱可塑性樹脂100質量部に対し、200質量部以下含むことが好ましく、150質量部以下含むことがより好ましく、100質量部以下含むことがさらに好ましい。
原料は、粉体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい、2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
原料は、また、強化繊維を含んでいてもよい。
強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることがより好ましく、ガラス繊維の少なくとも1種であることが特に好ましい。
強化繊維は、数平均繊維長(あるいは数平均粒子径)が10mm以下、さらには、5mm以下のものが好ましい。具体的には、強化繊維はチョップドストランドおよびミルドファイバーが好ましい。
【0022】
本発明で用いる強化繊維は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。このような処理剤としては、集束剤や表面処理剤が例示され、特許第4894982号公報の段落番号0093および0094に記載のものが好ましく採用され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
原料は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、強化繊維を、40質量部以上含むことが好ましく、50質量部以上含むことがより好ましく、55質量部以上含むことがさらに好ましい。また、強化繊維は、原料中、熱可塑性樹脂100質量部に対し、200質量部以下含むことが好ましく、150質量部以下含むことがより好ましく、100質量部以下含むことがさらに好ましい。
原料は、強化繊維を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい、2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0023】
原料は、上記以外の成分(添加剤)を含んでいてもよい。
添加剤としては、核剤、離型剤、着色剤、難燃助剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、着色剤等の添加剤が挙げられる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130~0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
上記熱可塑性樹脂、粉体および強化繊維以外の成分の総量は、原料の0~20質量%であることが好ましい。前記下限値は、0.1質量%以上であることが好ましい。また、上限値としては、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。これらの添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
核剤としては、タルクおよび炭酸カルシウムが好ましく、タルクがより好ましい。
核剤の平均粒径は、下限値が、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。核剤の平均粒径は、上限値が、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、28μm以下であることが一層好ましく、15μm以下であることがより一層好ましく、10μm以下であることがさらに一層好ましい。
原料が核剤を含む場合、その総量は、0.1~2質量%であることが好ましい。
【0025】
離型剤(滑剤)としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族カルボン酸アミド、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
離型剤の詳細は、特開2017-115093号公報の段落0034~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0026】
原料が離型剤を含む場合、その総量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.05~5質量部であることが好ましく、0.1~4質量部であることがより好ましく、0.2~3質量部であることがさらに好ましい。
原料は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
着色剤としては、無機顔料(カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。
原料が着色剤を含む場合、その総量は、原料の0.01~10質量%であることが好ましい。着色剤は1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法で得られるペレットの長さ(最も長い部分の数平均長さ)は、2~6mmであることが好ましい。また、ペレットの径(最も短い部分の円相当直径、数平均径)は、1~4mmであることが好ましい。
【0029】
本明細書では、また、シリンダーのベント部に対応する位置に、フライトの最外径をDとした場合に、リードが1.0D以上2.5D以下であり、アンダーカットを有する1条フルフライトを有するスクリューを開示する。これらのスクリューの好ましい範囲は、上述のスクリューと同様である。
本明細書では、また、シリンダーと、前記シリンダー内に挿通しているスクリューとを有する押出機であって、前記シリンダーは、フィード部と、前記フィード部よりも下流側にあるベント部とを有し、前記スクリューは、シリンダーと、前記シリンダー内に挿通している本発明のスクリューとを有する、押出機を開示する。
【0030】
本発明の製造方法および押出機では、押出の際の押出量が、通常、190kg/時間以上であり、210kg/時間以上とすることもでき、さらには、260kg/時間以上、特には、350kg/時間以上とすることができる。本発明では、ベントアップやフィードネックを効果的に抑制できるので、押出量を高くすることができる。特に、原料が粉体を含む場合、ベントアップが起きやすく、押出量を高くしにくかったが、本発明では、半角フルフライトを用いることにより、ベントアップを回避できる。押出量の上限は、例えば、500kg/時間以下が実際的である。
【0031】
また、本発明の製造方法および押出機では、押出機のトルクが、通常、50%以上であり、55%以上とすることができ、さらには、59%以上とすることもできる。本発明では、ベントアップやフィードネックを効果的に抑制できるので、トルクを高くすることができる。トルクの上限は、例えば、90%以下が実際的である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0033】
<ポリアミド樹脂>
MXD6:ポリメタキシリレンアジパミド、三菱ガス化学社製、MXナイロン#6000
PA66:東レ社製、CM3001-N
<核剤>
5000A:タルク、林化成社製、ミクロンホワイト5000A
<強化繊維>
T-275H:円形断面を有するガラス繊維、数平均繊維径10.5±1.0μm、Eガラス、日本電気硝子株式会社製
<粉体>
325HK:マイカ、イメリス スペシャリティージャパン社製、Suzorite 325HK
<離型剤>
StBa:ステアリン酸バリウム、東京化成工業社製
<着色剤>
CBMB:カーボンブラック:三菱ケミカル社製、カーボンブラック#45(ファーネスブラック、DBP吸収量53g/100cm3)
【0034】
<スクリュー>
半角1条:スクリューのフライト最外径(D)5.8cm、リードが9cm、スクリュー長が18cmであり、アンダーカットを有するフルフライト1条
2条:スクリューのフライト最外径(D)5.8cm、リードが7.5cm、スクリュー長が15cmのフルフライト2条(アンダーカットなし)
【0035】
実施例1~3、比較例1~4
後述する下記表1に示す各成分(組成1または組成2)であって、強化繊維以外の成分を表1に示す割合(単位は、質量部である)をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした。
二軸押出機(製造元:東芝機械、品番:TEM58SS)の搬送部および/またはベント部に対応する位置に、表2に示すフライトを備えたスクリューを配置し、そのスクリュー根元から、二軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(製造元:クボタ、品番:CE-W-3)を用いて、前記ドライブレンドした原料を投入した。また、強化繊維については、振動式カセットウェイングフィーダ(製造元:クボタ、品番:CE-V-1B)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入した。
シリンダー温度は、280℃とした。
表2に示す条件(押出量、スクリュー回転数、トルク、温度)で溶融混練し、押出しして、ペレットを得た。
このときの、フィードネックの有無およびベントアップの有無について確認した。具体的には、以下の基準に従い、目視で確認した。
【0036】
<ベントアップ基準>
A:ベントアップが認められない
B:ベントアップがやや認められるが許容レベルである
C:ベントアップがBよりも認められる
<フィードネック基準>
A:フィードネックが認められない
B:フィードネックがやや認められるが許容レベルである
C:フィードネックがBよりも認められる
【0037】
【0038】
【0039】
上記結果から明らかなとおり、スクリューが押出機のベント部に対応する位置に、半角1条のフルフライトを有する場合、ベントアップ、さらには、フィードネックが認められなかった(実施例1~3)。一方、スクリューが押出機のベント部に対応する位置に通常の2条のフルフライトを有する場合、ベントアップが起こってしまった(比較例1、3、4)。また、比較例2では、スクリューが押出機のベント部に対応する位置に通常の2条のフルフライトを有していても、ベントアップを抑制できたが、押出量を上げると、ベントアップが起きてしまった。
【符号の説明】
【0040】
10 スクリュー
11 フルフライト
12 スクリューの軸
13 アンダーカット
20 押出機
21 フィード部
22 ベント部
23 シリンダー
24 スクリュー
25 第一搬送部(半角1条)
26 第一混練部
27 第二搬送部(半角1条)
28 第二混練部
29 第三搬送部(2条)
30 第三混練部
31 ベンド部搬送部(半角1条)
32 第四搬送部(2条)
33 ホッパー
34 粉体投入口の位置
35 ガラス繊維投入口の位置
36 ベント口