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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240510BHJP
   F21V 7/04 20060101ALI20240510BHJP
   F21V 15/01 20060101ALI20240510BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20240510BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240510BHJP
   F21Y 113/13 20160101ALN20240510BHJP
【FI】
F21S2/00 360
F21S2/00 311
F21S2/00 310
F21V7/04 100
F21V15/01 330
H01S5/022
F21Y115:30
F21Y113:13
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020017862
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021125366
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭宏
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-218512(JP,A)
【文献】特開2019-212752(JP,A)
【文献】特開2009-164225(JP,A)
【文献】特開2013-110297(JP,A)
【文献】特開平06-123851(JP,A)
【文献】特開2015-207646(JP,A)
【文献】特開2009-038215(JP,A)
【文献】特開2019-207788(JP,A)
【文献】特開2012-049378(JP,A)
【文献】特開2019-067809(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018102961(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/04
F21V 15/01
H01S 5/022
F21Y 115/30
F21Y 113/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードと、
前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する支持面を有する基板と、
前記支持面に配置された枠体であって、前記レーザダイオードを収容する空間を規定する内壁面、上面および底面を有する枠体と、
前記支持面と前記底面との間に設けられ、前記基板に前記枠体を接合する接合層と、
前記上面に接合されたキャップと、
を備え、
前記内壁面は、前記上面側から前記底面に向かうにつれ前記レーザダイオードから離れるように傾斜する第1傾斜面を有しており、
前記接合層の一部が前記支持面と前記第1傾斜面とを接合し、かつ、前記支持面と前記第1傾斜面との間にフィレットを形成し、
前記フィレットは、前記上面側から前記底面に向かうにつれ前記レーザダイオードに近づくように傾斜する面を有し、
前記第1傾斜面は、前記フィレットで覆われる部分と、前記フィレットで覆われず前記空間に露出する部分と、を有し、
前記基板、前記枠体および前記キャップによって、前記レーザダイオードを収容する前記空間が気密封止される、光源装置。
【請求項2】
前記内壁面は、前記底面側から前記上面に向かうにつれ前記レーザダイオードから離れるように傾斜する第2傾斜面をさらに有している、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第1傾斜面は前記支持面を基準として第1傾斜角度で傾斜し、前記第2傾斜面は前記支持面を基準として前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度で傾斜している、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記接合層は、金属または合金から形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記第1傾斜面は表面に凹凸を有する、請求項1から4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項6】
前記枠体はシリコン、ガラスおよびセラミックのうちのいずれか一つから形成されている、請求項1から5のいずれかに記載の光源装置。
【請求項7】
第1金属膜が前記支持面上に形成され、
第2金属膜が前記底面および前記第1傾斜面上に連続的に形成されており、
前記接合層は、前記第1金属膜と前記第2金属膜とに接している、請求項1から6のいずれかに記載の光源装置。
【請求項8】
前記枠体は、前記内壁面の反対側に位置する外側面を有し、
前記外側面と前記基板の側面とが、同一平面にある、請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記レーザダイオードから出射されるレーザ光を反射させるリフレクタをさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載の光源装置。
【請求項10】
前記キャップは、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光を透過させる透光部を備え、
前記キャップにおける、前記透光部以外の表面は、遮光膜または反射防止膜で覆われている、請求項1から9のいずれかに記載の光源装置。
【請求項11】
前記枠体の前記内壁面の少なくとも一部に、最表面が金である金属膜が設けられている、請求項10に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を囲う枠体の側壁に傾斜面が設けられた光源装置が特許文献1、2に開示されている。枠体は、発光素子を実装する基板とは別の部材であり、金属材料などの接合材を用いて基板に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-183558号公報
【文献】特開2010-40542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板と枠体との接合強度を向上させた光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の光源装置は、非限定的で例示的な実施形態において、レーザダイオードと、前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する支持面を有する基板と、前記支持面に配置された枠体であって、前記レーザダイオードを収容する空間を規定する内壁面、上面および底面を有する枠体と、前記支持面と前記底面との間に設けられ、前記基板に前記枠体を接合する接合層と、を備え、前記内壁面は、前記上面側から前記底面に向かうにつれ前記レーザダイオードから離れるように傾斜する第1傾斜面を有しており、前記接合層の一部が前記支持面と前記第1傾斜面とを接合している。
【発明の効果】
【0006】
本開示の例示的な実施形態によれば、基板と枠体との接合強度を向上させた光源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置が備える、レーザダイオード、保護素子およびリフレクタを実装したサブマウントを例示する模式図である。
図3図3は、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置のYZ平面に平行な断面図である。
図4図4は、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置のXY平面に平行な断面図である。
図5図5は、枠体が有する傾斜面の傾斜角度を説明するための模式図である。
図6図6は、3個のレーザダイオード、3個の保護素子およびリフレクタを実装したサブマウントを例示する模式図である。
図7図7は、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の他の構成例のYZ平面に平行な断面図である。
図8A図8Aは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8B図8Bは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8C図8Cは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8D図8Dは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8E図8Eは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8F図8Fは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8G図8Gは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8H図8Hは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8I図8Iは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8J図8Jは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図8K図8Kは、本開示の例示的な実施形態に係る光源装置の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。
図9A図9Aは、シリコン基板の表面側から見たときの基板に形成された複数の穴を模式的に示す図である。
図9B図9Bは、シリコン基板の裏面側から見たときの基板に形成された複数の穴を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による光源装置は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序等は、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、以下に説明する様々な態様は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
【0009】
図面が示す構成要素の寸法、形状等は、わかり易さのために誇張されている場合があり、実際の光源装置における寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0010】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。
【0011】
図1から図4を参照して、本実施形態に係る光源装置の構成例を説明する。図1は、本実施形態に係る光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。添付の図面において、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。また、説明の便宜上、レーザダイオード50から出射されるレーザ光14の中心軸が破線で示されている。図2は、光源装置100が備える、レーザダイオード50、保護素子60およびリフレクタ70を実装したサブマウント40を例示する模式図である。図3は、光源装置100のYZ平面に平行な断面図である。図3において、レーザダイオード50およびリフレクタ70を含む断面が示されている。図4は、光源装置100のXY平面に平行な断面図である。図4において、レーザダイオード50および保護素子60を含む断面が示されている。
【0012】
光源装置100は、基板10、枠体20、キャップ30、サブマウント40、レーザダイオード50、保護素子60およびリフレクタ70を備える。本実施形態における光源装置100の形状の例は、図に示されるように略直方体である。例えば、光源装置100のX方向におけるサイズは1.0mm~5.0mm程度であり、Z方向におけるサイズは2.0mm~5.0mm程度であり、Y方向における厚さは1.0mm~3.0mm程度であり得る。光源装置100は、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)のような使用者の目に近い位置に表示部を備える表示デバイスに必要とされる小型の光源装置等に好適に利用され得る。
【0013】
基板10は板状の部材であり、レーザダイオード50を直接または間接的に支持する支持面10aを有する。基板10は、セラミックを主材料として形成することができる。なお、セラミックに限らず金属で形成されていてもよい。例えば、セラミックでは窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素等を、金属では銅、アルミニウム、鉄、複合物として銅モリブデン、銅-ダイヤモンド複合材料、銅タングステン等を、その他にシリコンや樹脂等を基板の主材料に用いることができる。
【0014】
基板10は、レーザダイオード50に電気的に接続される導体配線層(不図示)および基板10と枠体20とを接合するための基板側配線である第1金属膜85aを支持面10aに有し得る。導体配線層および第1金属膜85aは、例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、金、銀、白金、チタン、銅、アルミ、ルテニウムなどの金属材料から形成され得る。導体配線層は、各層がビアを介して電気的に接続された多層構造を有し得る。
【0015】
枠体20は、例えば、シリコン、ガラスおよびセラミックのうちのいずれか一つから形成されており、レーザダイオード50を収容する空間を規定する。本実施形態における枠体20のY方向における厚さは、0.5mm以上2.0mm以下であり、例えば0.7mm程度であり得る。枠体20は、レーザダイオード50を囲うように基板10の支持面10a上に配置され、枠体20の底面20aが基板10の支持面10aに接合されている。この接合は、金属などの無機材料、または有機材料の層を介して実現され得る。枠体20の構造および基板10との接合については後で詳しく説明する。
【0016】
キャップ30は、基板10と同様に板状の部材であり、キャップ30の主面30aが枠体20の上面20bに接合されている。このような接合は、金属などの無機材料、また有機材料の層を介して実現され得る。ただし、青色または緑色の光を発するレーザダイオードを用いる場合、レーザ光による集塵の影響を考慮すると有機材料の使用は避けた方が好ましい。キャップ30は、枠体20によって規定される空間内にレーザダイオード50を気密に封止する。気密封止することにより、レーザ光による集塵の影響を抑制することができる。ただし、気密封止することは必須ではない。
【0017】
キャップ30は、リフレクタ70で上方に反射されたレーザ光14を透過する。キャップ30は、例えばガラス、透明セラミック材料から形成され得る。ガラスはサファイアや蛍光体を含有していてもよい。キャップ30のうちのレーザ光を透過する部分以外の表面は遮光膜または反射防止膜で覆われていてもよい。
【0018】
ある態様において、キャップ30は、リフレクタ70で上方に反射されたレーザ光14を透過する透光部(不図示)を一部に有していてもよい。キャップ30において透光部は、レーザ光14を横切る位置に配置される。キャップ30のうちの少なくとも透光部は、例えばガラスまたは透明セラミック材料から形成され得る。キャップ30の透光部以外の部分は、透光部の材料と同じ材料、または異なる材料、例えば基板10の材料と同じセラミック、シリコンから形成され得る。
【0019】
サブマウント40は、基板10の支持面10aに接合されている。この接合は、金属などの無機材料、または有機材料の層を介して実現され得る。ただし、青色または緑色の光を発するレーザダイオードを用いる場合、レーザ光による集塵の影響を考慮すると有機材料の使用は避けることが好ましい。サブマウント40は、レーザダイオード50、保護素子60およびリフレクタ70が配置される実装面40aを有している。レーザダイオード50、保護素子60およびリフレクタ70は、サブマウント40に固定された状態で基板10の支持面10a上に実装されている。ただし、リフレクタ70は、サブマウント40上に実装されている必要はなく、支持面10a上に直接固定されていてもよい。
【0020】
サブマウント40は放熱部材であり、典型的には、直方体の形状を有しているが、これに限定されない。サブマウント40は、レーザダイオードから発生した熱を逃がす役割を果たす。放熱性をより向上させる観点から、サブマウント40は、レーザダイオード50よりも熱伝導率の高い材料から形成されることが好ましい。当該材料に、例えば、AlN、SiC、SiNなどのセラミック材料や、Cu、Al、Ag、Fe、Ni、Mo、Cu、W、およびCuMoからなる群から選択される少なくとも1つを含む金属などが用いられる。
【0021】
レーザダイオード50は、p側電極と、n側電極と、p側半導体層、n側半導体層、およびこれらの層の間に位置する活性層を含む半導体積層構造体(不図示)とを有する。p側電極およびn側電極に電圧を印加して内部に電流を流すことによって、レーザダイオード50の出射端面50eからレーザ光14が出射される。
【0022】
レーザダイオードには、例えば、青色の光を放射するレーザダイオード、緑色の光を放射するレーザダイオード、または、赤色の光を放射するレーザダイオードなどを採用することができる。また、これら以外の光、例えば近赤外線や紫外線を放射するレーザダイオードを採用してもよい。
【0023】
本明細書において、青色の光は、発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光である。緑色の光は、発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光である。赤色の光は、発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光である。
【0024】
青色の光を発するレーザダイオード、または、緑色の光を発するレーザダイオードとして、例えば、窒化物半導体を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色の光を発するレーザダイオードとして、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むもの等が挙げられる。
【0025】
レーザダイオード50から放射されるレーザ光14は、拡がりを有し、レーザ光14の出射端面50eに平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。FFPは、出射端面50eから離れた位置におけるレーザ光14の光強度分布によって規定される。この光強度分布において、ピーク強度値に対して1/e以上の強度を有する部分をビーム断面と呼んでもよい。
【0026】
本実施形態において、レーザダイオード50は、レーザ光14を出射する端面を有する端面出射型であるが、面発光型(VCSEL)であってもよい。レーザ光14は、不図示のレンズを含む光学系によって、コリメートまたは収束され得る。そのような光学系は、光源装置100の内部または外部に設けられ得る。
【0027】
保護素子60の例はツェナーダイオードであり、レーザダイオード50に電気的に並列に接続され、レーザダイオード50に印加され得る逆方向電圧を所定レベル以下に抑える保護回路として機能する。なお、図面において、レーザダイオードと保護素子とを電気的に接続する配線は、図面が煩雑になることを避けるために省略されている。
【0028】
リフレクタ70は、レーザダイオード50から出射されるレーザ光14を上方に反射する立ち上げミラーである。リフレクタ70は、レーザダイオード50から出射されるレーザ光14の一部を光源装置100のキャップ30側に反射する反射面70rを有する。反射面70rはリフレクタ70の傾斜面であり、反射面70rとサブマウント40の実装面40aとがなす角度は例えば45度である。反射面70rの表面には、光反射制御膜が形成され得る。光反射制御膜は、例えば、Ag、Alなどの薄膜金属から形成され得る。または、光反射制御膜は、Ta/SiO、TiO/SiO、Nb/SiOなどから形成された誘電体多層膜であり得る。リフレクタ70のうち、その外形を形成する部分は、母材として、例えばガラスまたは金属から形成され得る。耐熱を考慮すると、母材は熱に強い材料であることが望ましく、例えば、石英もしくはBK7(硼珪酸ガラス)などのガラス、Alなどの金属、またはSiを含み得る。
【0029】
光源装置100は、レーザダイオード50から出射されるレーザ光14の出力をモニタするための、受光素子を有する光検出器(不図示)をさらに備え得る。受光素子の例は、フォトダイオードなどの光電変換素子である。
【0030】
図3から図5を参照して、枠体の構造、および、基板に枠体を接合する接合層を詳細に説明する。枠体20は、底面20a、上面20b、および、レーザダイオード50を収容する空間を規定する内壁面21を有する。内壁面21は第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bを有する。
【0031】
第1傾斜面21aは、内壁面21の周方向に沿って形成された逆テーパ状の傾斜面であり、上面20b側から底面20aに向かうにつれレーザダイオード50から離れるように傾斜している。第2傾斜面21bは、内壁面21の周方向に沿って形成されたテーパ状の傾斜面であり、底面20a側から上面20bに向かうにつれレーザダイオード50から離れるように傾斜している。
【0032】
第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bは内壁面21の周方向に沿って全周にわたって連続的に存在し得る。または、第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bは、内壁面21の周方向に沿って不連続または部分的に存在し得る。傾斜面が内壁面21の全周に対して部分的に存在する比率は、例えば50%以上100%未満であり得る。一例として、内壁面21においてZ方向に平行に延びる傾斜面が存在し、X方向に平行に延びる傾斜面は存在していなくてもよい。このように本開示は、内壁面21の周方向に沿って不連続に傾斜面が存在する態様も含む。
【0033】
レーザダイオードを収容する空間は、枠体20に例えばブラスト処理を行うことによって形成され、その場合において、表面に凹凸を有する傾斜面が内壁面21に形成される。または、例えばレーザ加工装置を用いて内壁面21に傾斜面を形成することができる。また、例えば、枠体の材料がシリコンである場合においてウェットエッチングを行うことによって傾斜面を形成することができる。
【0034】
図5を参照して傾斜面の傾斜角度を説明する。本実施形態における傾斜角度は、傾斜面と基板10の支持面10aとが成す角度で表される。図5に示されるように、第1傾斜面21aは支持面10aを基準として第1傾斜角度αで傾斜し、第2傾斜面21bは支持面10aを基準として第2傾斜角度βで傾斜している。第1傾斜角度αは第2傾斜角度βと同じであってもよいし、異なっていてもよい。ブラスト処理の条件を変えることによって傾斜角度を調節することができる。
【0035】
再び図3および図4を参照する。基板10の支持面10aと枠体20の底面20aとの間に接合層81aが設けられている。接合層81aは基板10と枠体20とを接合し、接合層81aの一部は支持面10aと第1傾斜面21aとを接合している。接合層81aの材料の例は、金属、または半田などの合金である。例えば、基板10に枠体20を半田付けによって接合するとき、溶融した半田の一部を第1傾斜面21aと支持面10aとの間に流れ込ませることで、それが凝固して支持面10aと第1傾斜面21aとを接合する部材として機能する。接合層81aの一部が支持面10aと第1傾斜面21aとを接合することにより、基板10と枠体20との接合強度が向上し得る。基板10と枠体20との接合強度を向上させる部材として接合層81aの一部を利用できるので、製造工程が簡素化され、また、信頼性の向上が見込まれる。
【0036】
本実施形態において、接合層81aの一部は、支持面10aと第1傾斜面21aとの間にフィレット81bを形成している。フィレット81bは第1傾斜面21aと支持面10aとの間に位置している。フィレット81bは、図3においてはX方向に枠体20に沿って形成され、図4においてはZ方向に枠体20に沿って形成されている。上述したとおり、半田付けを行うことによって第1傾斜面21aと支持面10aとの間にフィレット81bを比較的容易に形成することができる。本実施形態におけるフィレット81bのY方向における高さは、例えば0.2mm以上1.0mm以下であり得る。フィレット81bのX方向またはZ方向における幅は例えば0.1mm以上1.0mm以下であり得る。接合層81aの一部をフィレット状に形成することにより、支持面10aおよび第1傾斜面21aに接する接触面積が大きくなるために、基板10と枠体20との接合強度を一層向上させることができる。
【0037】
基板10の材料となり得るセラミックまたは枠体20の材料となり得るシリコンは、溶融金属または合金に対し濡れ性を有しない。そのため、本実施形態において、基板10の支持面10aと、第1傾斜面21aと、枠体の底面20aとに濡れ性を改善する処理がなされている。具体的に説明すると、フィレット81bを含む接合層81aの全体が位置する支持面10a上の領域に第1金属膜85aが形成されている。また、枠体20の底面20aおよび第1傾斜面21a上に第2金属膜85bが連続的に形成されている。接合層81aは第1金属膜85aと第2金属膜85bとに接している。金属膜は、例えばAu、Ti、Ni、Cr、Ptなどの単層膜または多層膜であり得る。第1傾斜面21aの全体に金属膜を形成することが好ましい。ただし、少なくともフィレット81bに接する第1傾斜面21aの領域に金属膜が形成されていればよい。
【0038】
このように、本来、溶融金属または合金に対する濡れ性を有しない部材の表面に濡れ性を改善する処理を行うことによって、基板10および枠体20に対する接合層81aの密着性を向上させることができる。
【0039】
既に説明したとおり、第1傾斜面21aの第1傾斜角度αは第2傾斜面21bの第2傾斜角度βとは異なり得る。第1傾斜角度αを小さく設定することによって、接合層81aの一部、つまりフィレット81bを第1傾斜面21aにより密着させ易くなる。第1傾斜角度αは、例えば35°以上70°以下の範囲に調節され、例えば50°以上70°以下の範囲に調整されることが好ましい。基板10と枠体20との接合強度を向上することができる。一方で、第2傾斜角度βを大きく設定し、第2傾斜面21bによって規定される開口を拡げることによって、枠体20の内壁面21がレーザダイオード50から出射されるレーザ光14を遮ることが抑制される。第2傾斜角度βは、例えば35°以上90°以下の範囲に調節され、例えば70°以上90°以下の範囲に設定されることが好ましい。レーザダイオード50と枠体20の内壁面21との距離を短くすることができ、その結果、光源装置100を小型化することができる。
【0040】
フィレット81bの大きさと、第1傾斜角度αとの間に相関関係が存在する。第1傾斜角度αが小さいと、フィレット81bは大きくなり、第1傾斜角度αが大きいと、フィレット81bは小さくなる。第1傾斜角度αが90°に近づくほど、第1傾斜面21aが内壁面21に存在しない状態に近づく。第1傾斜角度αが小さくなるほど、フィレット81bと第1傾斜面21aとの接合面積は大きくなる。第1傾斜角度αをより小さい角度に調整できれば、支持面10aと第1傾斜面21aとの間に位置するフィレット81bを大きくすることが可能となり、基板10と枠体20の接合強度を向上させることが可能となる。
【0041】
本開示の光源装置は1個のレーザダイオードに限らず、複数のレーザダイオードを備えていてもよい。図6において、3個のレーザダイオード50a、50b、50c、3個の保護素子60a、60bおよび60cを実装したサブマウント40が示されている。保護素子60a、60bおよび60cは、レーザダイオード50a、50bおよび50cにそれぞれ電気的に並列に接続されているが、レーザダイオードと保護素子とを電気的に接続する配線は、図面が煩雑になることを避けるために省略されている。保護素子60a、60bおよび60cは、レーザダイオード50a、50bおよび50cに印加され得る逆方向電圧を所定レベル以下にそれぞれ抑えることができる。
【0042】
図6に示す光源装置において、例えば、レーザダイオード50aは青色の光を放射し、レーザダイオード50bは緑色の光を放射し、レーザダイオード50cは赤色の光を放射する。レーザダイオードの配置はこの例に限られず、例えば、赤色の光を放射するレーザダイオード50aと緑色の光を放射するレーザダイオード50cとの間に青色の光を放射するレーザダイオード50bを配置してもよい。このように、3個のレーザダイオードを1パッケージに実装することによって、例えばRGBの三原色のレーザダイオードを備える小型の光源装置が提供される。
【0043】
図7を参照して、本実施形態に係る光源装置の他の構成例を説明する。図7は光源装置200のYZ平面に平行な断面図である。図7において、レーザダイオード50およびリフレクタ70を含む断面が示されている。
【0044】
図7に例示される光源装置200において、枠体20の内壁面21は第1傾斜面21aを有しているが、第2傾斜面21bを有していない。このように、本開示の光源装置は、少なくとも第1傾斜面を有していればよく、第2傾斜面を必ずしも必要としない。支持面10aと第1傾斜面21aとの間にフィレット81bを形成することにより、基板10と枠体20との接合強度を向上させることが可能となる。また、内壁面21は第1傾斜面21aと第2傾斜面21bとの間にさらなる傾斜面を有していてもよい。
【0045】
図8Aから図8K図9を参照して、光源装置100の製造方法の例を説明する。図8Aから図8Kは、光源装置100の製造方法に含まれる製造工程を説明するための工程断面図である。図9Aは、基板101の表面101a側から見たときの複数の穴121を模式的に示す図である。図9Bは、基板101の裏面101b側から見たときの複数の穴122を模式的に示す図である。図9Aおよび図9Bにおいて、基板101の中心の領域に行および列方向に形成された複数の穴が示されている。以下、ブラスト処理を行うことによって第1傾斜面21aおよび第2傾斜面21bを枠体20に形成する例を説明する。
【0046】
先ず、例えばシリコンの基板101を準備する。基板101の厚さは、例えば0.7mmである。
【0047】
図8Aに示されるように、基板101の表面101aにブラスト用のドライフィルムレジスト102をラミネートする。次に、基板101の表面101aにおける特定の位置に穴を開けるためのパターンを有するマスクをドライフィルムレジスト102の上に置き、露光装置を用いて紫外線で照射する。マスクパターンは複数の開口を有し、その開口の形状は、例えば矩形である。ただし、その形状は矩形に限定されず、例えば円または楕円などであってもよい。紫外線で照射した後、現像液を用いて現像することにより、図8Bに示されるように基板101の表面101aに所望のレジストパターン103を形成する。
【0048】
図8Cに示されるように、ブラスト用ノズルを用いて基板101の表面101aに投射材である砂等の研磨剤104を空気圧で衝突させることによって、表面101aに穴121を形成する。ブラスト処理の条件を変えることによって穴121の表面の傾斜角度を制御することができる。表面101aにおいてレジストパターン103が存在しない部分には、シリコンが削れることで穴121が形成され、レジストパターン103が存在する部分には、マスクされることによって穴121が形成されない。ブラスト処理を所定時間において行った結果、表面101aを基準として第1傾斜角度αで傾斜した、凹凸を有する第1傾斜面21aが穴121の表面に形成される。
【0049】
図9Aに示されるように、基板101の表面101aに垂直な方向から見たときの穴121の形状は、マスクが有する開口の形状に整合し、例えば矩形である。その場合、穴121のサイズは、例えば、X方向において0.5mm以上4.0mm以下であり、Z方向において1.5mm以上4.0mm以下であり得る。穴121の角は曲面を有していてもよい。
【0050】
図8Dに示されるように、ブラスト処理を行った後、スプレーノズルを用いて基板101の表面101aを剥離液に浸漬することによって、表面101aからレジストパターン103を剥離する。以上の工程を経て、複数の穴121が表面101aに形成された基板101が得られる。
【0051】
次に、図8Eに示されるように、基板101の上下を反転させ、表面101aの反対側に位置する裏面101bにブラスト用のドライフィルムレジスト102をラミネートする。裏面101bにおける特定の位置に穴を開けるためのパターンを有するマスクをドライフィルムレジスト102の上に置き、露光装置を用いて紫外線で照射する。このマスクパターンとして、表面101aに穴121を開けるために用いるマスクと同じものを用いることができる。同じマスクを用いることによって、表面101aに穴121が形成された位置に対応した裏面101bにおける位置に、穴121の開口と同程度のサイズの開口を有する穴を開けることが可能となる。ただし、この工程において用いるマスクは、表面101aに穴121を開けるために用いるマスクとは異なっていてもよい。紫外線で照射した後、現像液を用いて現像することにより、図8Fに示されるように基板101の裏面101bに所望のレジストパターン103を形成する。
【0052】
図8Gに示されるように、ブラスト用ノズルを用いて基板101の裏面101bに研磨剤104を空気圧で衝突させることによって、裏面101bに穴122を形成する。ブラスト処理の条件を変えることによって穴122の表面の傾斜角度を制御することができる。ブラスト処理を所定時間において行った結果、裏面101bを基準として第2傾斜角度βで傾斜した、凹凸を有する第2傾斜面21bが穴122の表面に形成される。穴121と穴122とが繋がり、これによって貫通孔120が基板101に形成される。
【0053】
図9Bに示されるように、基板101の裏面101bに垂直な方向から見たときの穴122の形状は、マスクが有する開口の形状に整合し、例えば矩形である。その場合、穴122のサイズは、例えば、X方向において0.5mm以上4.0mm以下であり、Z方向において1.5mm以上4.0mm以下であり得る。穴122の角は曲面を有していてもよい。
【0054】
図8Hに示されるように、ブラスト処理を行った後、スプレーノズルを用いて基板101の裏面101bを剥離液に浸漬することによって、裏面101bからレジストパターン103を剥離する。以上の工程を経て、複数の貫通孔120が形成された基板101が得られる。複数の貫通孔120のそれぞれの内壁面は、逆テーパ状の第1傾斜面21aおよびテーパ状の第2傾斜面21bを有する。以降、複数の貫通孔120が形成された基板101を枠体20のベース110と記載する。
【0055】
図8Iに示されるように、各々がレーザダイオード50およびリフレクタ70を実装した複数のサブマウント40を基板10の支持面10aにおける特定の座標位置に接合する。特定の座標位置は、基板10をベース110に接合するときに、ベース110が有する複数の貫通孔120の位置に整合する位置である。また、必要に応じてサブマウント40またはレーザダイオード50と基板10とを導電性ワイヤーを介して電気的に結線する。
【0056】
基板10の支持面10aにおけるベース110に接合する領域に金属膜を形成することによって、濡れ性を改善する処理を行う。また、図8Hに示されるベース110の底面110aと第1傾斜面21aとに金属膜を形成することによって、濡れ性を改善する処理を行う。このとき、第2傾斜面21bにも金属膜を形成してもよい。
【0057】
図8Jに示されるように、それぞれのサブマウント40が、対応する貫通孔120に収納されるように、基板10とベース110とを接合層で接合する。このとき、支持面10aと第1傾斜面21aとの間にフィレット81bが形成される。また、キャップ30は、基板10とベース110とを接合する前にベース110に接合されてもよく、基板10とベース110とを接合した後にベース110に接合されてもよい。このように、複数の貫通孔120をキャップ30で封止できていればよく、キャップ30をベース110に接合する順序は問わない。
【0058】
図8Kに示されるように、基板10およびキャップ30を貼り合わせたベース110をデバイス単位にダイシング等により分割することによって、複数の光源装置100が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の光源装置は、ヘッドマウントディスプレイなどの光源等に好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0060】
10・・・基板、20・・・枠体、21a・・・第1傾斜面、21b・・・第2傾斜面、30・・・キャップ、40・・・サブマウント、50・・・レーザダイオード、60・・・保護素子、70・・・リフレクタ、81a・・・接合層、81b・・・フィレット、85a・・・第1金属膜、85b・・・第2金属膜、100、200・・・光源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図8K
図9A
図9B