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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240510BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240510BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240510BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L33/00 H
H01L33/48
H01L21/56 R
H01L21/56 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022072565
(22)【出願日】2022-04-26
(65)【公開番号】P2023161917
(43)【公開日】2023-11-08
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】萬藤 元章
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-110875(JP,A)
【文献】特開2009-070880(JP,A)
【文献】特開2011-096929(JP,A)
【文献】特開2020-150202(JP,A)
【文献】特開2012-204768(JP,A)
【文献】特開2013-247194(JP,A)
【文献】特開昭55-59739(JP,A)
【文献】特開2019-33124(JP,A)
【文献】特表2019-536264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/56
H01L21/60 -21/607
H01L33/00
H01L33/48 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが下面を有する複数の半導体構造体、および、前記複数の半導体構造体を前記下面側から支持する第1支持体を含む第1集合体であって、各半導体構造体は、前記下面に設けられた電極を有する第1集合体を準備する工程(A)と、
前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を液体の支持媒体に浸漬させる工程(B)と、
前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を液体の前記支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により前記支持媒体を固化させる工程(C)と、
前記第1集合体から前記第1支持体を分離することにより、固化された前記支持媒体から前記電極の下面を露出させ、前記支持媒体および前記複数の半導体構造体を含む第2集合体を得る工程(D)と、
前記第2集合体の前記複数の半導体構造体の前記電極の前記下面を、配線基板上の接合部材に接触させる工程(E)と、
前記接合部材により前記複数の半導体構造体を前記配線基板に接合する工程(F)と
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(E)と前記工程(F)との間に、前記第2集合体から前記支持媒体を除去する工程(G)をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(F)の後に、前記第2集合体から前記支持媒体を除去する工程(G)をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(G)は、1気圧よりも低い気圧下で実行される、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(G)は、1気圧よりも低い気圧下で実行される、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(E)および前記工程(F)は、1気圧よりも低い気圧下で実行される、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(E)および前記工程(F)は、1気圧よりも低い気圧下で実行される、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(G)は、昇華により前記支持媒体を除去する工程を含む、請求項2から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記工程(D)と前記工程(E)との間に、前記電極の前記下面から酸化膜を除去する工程(E1)をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(E)の前に、
前記配線基板の所定の箇所に前記接合部材を配置する工程(E2)と、
前記接合部材の配置後に前記接合部材の表面から酸化膜を除去する工程(E3)と
をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(B)は、上面を有する支持部材上に配置された液体の前記支持媒体に、前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を浸漬させる工程を含み、
前記工程(C)は、前記支持部材の前記上面上の前記支持媒体を冷却し、前記支持媒体を固化させる工程を含み、
前記工程(D)は、前記支持部材上に固定された固化された前記支持媒体から前記電極の前記下面を露出させる工程を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記工程(B)において、液体の前記支持媒体と前記支持部材との間にシートが介在されており、
前記工程(C)と前記工程(E)との間に、前記シートから前記第2集合体を分離する工程(H)をさらに備える、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記複数の前記半導体構造体のそれぞれは、少なくとも発光素子を含んでいる、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発光ダイオード(LED)のダイのような半導体構造体を含む装置の製造においては、複数の半導体構造体を相異なる支持体の間で(例えば複数の粘着テープの間で)載せ換える場面が多く存在する。このとき、複数の半導体構造体を第1の支持体から第2の支持体に一括して移動させることもある(以下、このような工程を「転写」と呼ぶことがある)。
【0003】
下記の特許文献1は、冷却による水分の凝結および凍結を利用して複数の半導体チップを初期支持体に固定した状態での、これら半導体チップに貼付されていたフィルムの剥離を提案している。特許文献1に記載の技術は、氷を介した固定により、半導体チップの裏面からのフィルムの剥離を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-536264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の製造をより効率的に行えると有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態による半導体装置の製造方法は、それぞれが下面を有する複数の半導体構造体、および、前記複数の半導体構造体を前記下面側から支持する第1支持体を含む第1集合体であって、各半導体構造体は、前記下面に設けられた電極を有する第1集合体を準備する工程(A)と、前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を液体の支持媒体に浸漬させる工程(B)と、前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を液体の前記支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により前記支持媒体を固化させる工程(C)と、前記第1集合体から前記第1支持体を分離することにより、固化された前記支持媒体から前記電極の下面を露出させ、前記支持媒体および前記複数の半導体構造体を含む第2集合体を得る工程(D)と、前記第2集合体の前記複数の半導体構造体の前記電極の前記下面を、配線基板上の接合部材に接触させる工程(E)と、前記接合部材により前記複数の半導体構造体を前記配線基板に接合する工程(F)とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、半導体装置の製造をより効率的に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法の概略を示すフローチャートである。
図2】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図3】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図4】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図5】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図6】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図7】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図8】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図9】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図10】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図11】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図12】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図13】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図14】第1集合体の半導体構造体に適用可能な光源の外観の一例を示す模式的な底面斜視図である。
図15図14に示す平面Σで光源を切断したときに現れる断面の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による半導体装置の製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下に説明する各実施形態は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
【0010】
図面が示す構成要素の寸法、形状などは、分かりやすさのために誇張されている場合があり、実際の半導体装置における寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。以下では、切断面の後方にある部分の図示を省略した、切断面のみを示す端面図を断面図として示して本開示の実施形態を説明する場合がある。
【0011】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置を分かりやすさのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」などの用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置などにおいて、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面などが0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面などが90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0012】
図1は、本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法の概略を示すフローチャートである。図1に例示する製造方法は、複数の半導体構造体および第1支持体を含む第1集合体を準備する工程(ステップS1)と、第1集合体の半導体構造体を液体の支持媒体に浸漬させる工程(ステップS2)と、半導体構造体を支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により支持媒体を固化させる工程(ステップS3)と、第1集合体から第1支持体を分離することにより、固化された支持媒体および半導体構造体を含む第2集合体を得る工程(ステップS4)と、第2集合体の半導体構造体の電極の下面を配線基板上の接合部材に接触させる工程(ステップS5)と、接合部材により半導体構造体を配線基板に接合する工程(ステップS6)とを含む。半導体装置の製造方法は、これらの工程により完結している必要はない。半導体装置は、複数の半導体構造体を配線基板に接合した後にさらに他の工程が実行されることにより完成されることもある。
【0013】
以下では、半導体装置として、発光素子をその一部に含む発光装置を例にとり、それら発光装置の例示的な製造方法を説明する。以下の説明から明らかになるように、本開示の実施形態は、発光装置の製造に限定されず、半導体構造体を含む種々の装置の製造に適用可能である。
【0014】
(第1集合体を準備する工程)
まず、複数の半導体構造体および第1支持体を含む第1集合体を準備する(図1のステップS1)。図2に示す第1集合体100は、第1支持体110と、第1支持体110の上面110aに配置された複数の半導体構造体120とを含む。なお、図2には、説明の便宜のために、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印をあわせて図示している。本開示の他の図面においてもこれらの方向を示す矢印を図示することがある。
【0015】
図2に示す例において、第1支持体110は、支持層111と、支持層111上の接着層112とを有する。第1支持体110の例は、ダイシングテープおよびバックグラインドテープなどの樹脂テープである。支持層111の材料の例は、ポリオレフィンなどの樹脂である。接着層112の材料としては、例えば、アクリル樹脂を用いることができる。
【0016】
複数の半導体構造体120のそれぞれは、上面120aと、上面120aとは反対側に位置する下面120bとを有する。図2に示すように、各半導体構造体120は、下面120bに設けられた電極20を有する。ここでは、半導体構造体120として、LEDのベアチップを例示する。あるいは、LEDのベアチップをその一部に含む光源を半導体構造体120に適用してもよい。後述するように、そのような光源は、ベアチップ上に蛍光体層を配置した構成を有し得る。光源は、ベアチップを樹脂などによって封止した、いわゆるLEDパッケージなどであってもよい。
【0017】
図2に例示する構成において、各半導体構造体120の電極20の下面20bは、第1支持体110の接着層112に接している。すなわち、第1集合体100中の第1支持体110は、複数の半導体構造体120を下面120b側から支持する。なお、電極20のおおむね全体が接着層112に埋め込まれることにより、半導体構造体120の下面120bの全体が接着層112の表面に接することもあり得る。接着層112による第1支持体110への半導体構造体120の固定は、一時的な固定である。
【0018】
第1支持体110上の複数の半導体構造体120の配置は、一次元であってもよいし、二次元であってもよい。複数の半導体構造体120は、例えば、第1支持体110上に行列状に(すなわち、複数の行および列に)配置され得る。図2では、複数の半導体構造体120のうち、図のX方向に沿って配置された5つを代表して示している。図のXY面内のある方向に注目したとき、第1支持体110上の複数の半導体構造体120の配置は、一定間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。
【0019】
(半導体構造体を液体の支持媒体に浸漬させる工程)
次に、第1集合体100の半導体構造体120を液体の支持媒体に浸漬させる(図1のステップS2)。例えば、図3に示すように、上面300aを有する支持部材300を準備し、支持部材300の上面300a上に液体の支持媒体140を配置する。
【0020】
また、図3に示すように、図2に示す状態から上下を反転させた状態で第1集合体100を支持部材300の上方に配置する。支持部材300の上面300a上への支持媒体140の配置、および、支持部材300の上方への第1集合体100の配置は、いずれが先に実行されてもよい。
【0021】
支持部材300の上方への第1集合体100の配置の後、半導体構造体120の上面120aを支持部材300の上面300a上の支持媒体140に対向させた状態で、第1集合体100を支持部材300に向かって下降させる。第1集合体100の下降により、図4に示すように、第1集合体100の複数の半導体構造体120を液体の支持媒体140に浸漬させることができる。
【0022】
液体の支持媒体140の典型例は、純水である。純水に代えて、水とアルコールの混合物(例えばエタノール水溶液)などを支持媒体140に適用することも可能である。水に混合される物質が水よりも低い沸点を有すると、後の工程において支持媒体140を除去する際に有益である。
【0023】
図4に示す例では、半導体構造体120の上面120aが支持部材300の上面300aに接する位置まで第1集合体100を下降させている。この例では、液体の支持媒体140は、第1支持体110の上面110aに接している。
【0024】
本実施形態において、複数の半導体構造体120のそれぞれは、少なくとも電極20の下面20bが第1支持体110に固定された状態にある。そのため、第1支持体110上の複数の半導体構造体120のX方向およびY方向における配置が、液体の支持媒体140への浸漬に起因して大きく変わってしまうことはない。なお、半導体構造体120の上面120aが支持部材300の上面300aに接する位置まで第1集合体100を下降させた後で、支持部材300の上面300a上に液体の支持媒体140を配置することにより、液体の支持媒体140への半導体構造体120の浸漬を実行してもよい。この場合も、各半導体構造体120の電極20の下面20bが第1支持体110に固定されていることにより、液体の支持媒体140への浸漬による、複数の半導体構造体120の第1支持体110上における配置の大きな変動を抑制できる。
【0025】
(冷却により支持媒体を固化させる工程)
第1支持体110中の複数の半導体構造体120を液体の支持媒体140に浸漬させた後、半導体構造体120を液体の支持媒体140に浸漬させた状態で、冷却によって支持媒体140を固化させる(図1のステップS3)。上述したように、複数の半導体構造体120のそれぞれは、少なくとも電極20の下面20bが第1支持体110に固定された状態にある。そのため、支持媒体140の固化によって支持媒体140の体積が変化しても、第1支持体110上の複数の半導体構造体120のX方向およびY方向における配置が大きく変わることを抑制できる。
【0026】
支持媒体140の冷却は、例えば、支持部材300の冷却により実行できる。図3および図4に例示する構成において、支持部材300は、内部に流路FL1を有する冷却プレートである。流路FL1は、冷媒を循環可能に構成される。流路FL1内の冷媒の循環により、支持部材300の上面300a上に配置された支持媒体140を冷却できる。
【0027】
(支持媒体および半導体構造体を含む第2集合体を得る工程)
支持媒体140の固化後、第1集合体100から第1支持体110を分離する。第1集合体100からの第1支持体110の分離により、固化された支持媒体140と、複数の半導体構造体120とを含む第2集合体200が得られる(図1のステップS4)。
【0028】
ここでは、図5に模式的に示すように、第1支持体110としての樹脂テープを、固化された支持媒体140の表面および半導体構造体120の電極20の下面20bから剥離している。ここでは、支持部材300上の支持媒体140は、固化により支持部材300の上面300aに固定された状態にある。そのため、支持媒体140の表面からの第1支持体110の分離(例えば剥離)は、比較的に容易である。
【0029】
複数の半導体構造体120からの第1支持体110の分離により、各半導体構造体120の電極20の下面20bが、固化された支持媒体140から露出される。第1支持体110の剥離に先立っては、紫外線の照射などによる、接着層112の粘着力の低下が実行され得る。
【0030】
ここでは、複数の半導体構造体120は、固化された支持媒体140に保持されることより、支持部材300上におけるこれらの素子間の相対的な配置が固定された状態にある。そのため、第1支持体110上の配置を大きく変えることなく、第1支持体110を半導体構造体120から分離できる。
【0031】
(半導体構造体の電極を配線基板上の接合部材に接触させる工程)
次に、図6に示すように、複数の半導体構造体120を実装するための配線基板400を準備する。配線基板400は、少なくともその上面400aに所定の配線410を有する。配線基板400は、片面基板および両面基板のいずれであってもよい。配線基板400の典型例は、フレキシブルプリント基板(FPC基板)またはガラスエポキシ基板である。配線基板400は、購入によって準備されてもよい。
【0032】
配線基板400の準備後、配線基板400の配線410上の所定の箇所、典型的には、半導体構造体120を載置するための各ランド上に接合部材40を配置する。接合部材40の例は、Auスタッドバンプまたははんだバンプである。後述するように、接合部材40として、フラックスレスのはんだバンプが適用されることもある。接合部材40の材料として、導電ペーストを用いてもよい。配線410上に配置される接合部材40の体積は、複数の接合部材40の高さがおおむね等しくなるように調整され得る。
【0033】
配線410上に接合部材40が配置された配線基板400の準備後、第2集合体200の半導体構造体120の電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させる(図1のステップS5)。まず、支持部材300の上面300aから第2集合体200を分離する。支持部材300から分離された第2集合体200を配線基板400上に移動させ、図7に示すように、第2集合体200中の半導体構造体120の電極20を配線基板400上の接合部材40に対向させる。図7に示すように、このとき、隣り合う2つの半導体構造体120間には固体の支持媒体140が位置している。すなわち、複数の半導体構造体120は、支持媒体140によって保持された状態にある。本開示に実施形態によれば、半導体構造体120間の配置を維持したまま複数の半導体構造体120を一括してハンドリング可能である。
【0034】
次に、半導体構造体120の電極20を配線基板400上の接合部材40に対向させた状態で、第2集合体200を配線基板400に向かって下降させる。図7に模式的に示すように、第2集合体200が配線基板400の上方に配置された状態において、半導体構造体120の電極20のそれぞれは、配線410上の対応する接合部材40のおおむね直上に位置する。第2集合体200の下降により、図8に示すように、各半導体構造体120の電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させることができる。
【0035】
(半導体構造体を配線基板に接合する工程)
その後、接合部材40により複数の半導体構造体120を配線基板400に接合する(図1のステップS6)。この接合の工程は、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程を含み得る。ここでは、図9に模式的に示すように、第2集合体200の上面200a側に圧盤(押さえ板)600を配置している。
【0036】
さらに、液化または気化により、第2集合体200から支持媒体140を除去する。あるいは、支持媒体140の昇華により支持媒体140を除去してもよい。支持媒体140の除去により、第2集合体200のうち複数の半導体構造体120を圧盤600と配線基板400との間に残すことができる。
【0037】
図10に模式的に示すように、配線基板400に向けて第2集合体200に圧力を加えながら(図10中に矢印Psで模式的に示す)、支持媒体140の除去を実行してもよい。配線基板400に向けた第2集合体200への加圧により、圧盤600と配線基板400との間における、半導体構造体120のXY面内での移動を抑制し得る。すなわち、支持媒体140の除去後にも、第2集合体200における半導体構造体120間の相対的な配置を維持し得る。支持媒体140の除去に関する他の例の詳細については、後述する。
【0038】
ここでは、配線基板400に向けて第2集合体200に圧力を加えた状態で、超音波振動の印加またはリフローなどによる加熱により、接合部材40を融解させる。その後の冷却により、半導体構造体120が接合部材40を介して配線基板400の配線410に電気的および機械的に接続される。配線基板400のへの半導体構造体120の実装により、図11に示すように、配線基板400、接合部材40および複数の半導体構造体120を含む半導体装置500(ここでは発光装置)が得られる。必要に応じて、半導体構造体120への透光性部材(例えば蛍光体層)の配置などの付加的な工程がさらに実行され得る。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態では、第1集合体100中の半導体構造体120を液体の支持媒体140に浸漬させて、支持媒体140を冷却により固化させている。そのため、第1集合体100からの第1支持体110の除去後にも、半導体構造体120間の相対的な位置関係が維持される。さらに、固化後の支持媒体140によって半導体構造体120が保持されるので、第1集合体100中の半導体構造体120の配列を維持したままの、複数の半導体構造体120の一括したハンドリングが可能になる。したがって、第1支持体110上の配列そのままの状態で、複数の半導体構造体120を配線基板400に実装できる。すなわち、第1支持体110上での半導体構造体120の間隔を維持したまま複数の半導体構造体120を配線基板400に接続できる。このように、本開示の実施形態によれば、複数の半導体構造体120の転写が容易となり、複数の半導体装置の製造をより効率的に行い得る。
【0040】
図3を参照しながら説明したように、上述の例では、支持部材300の上面300aに液体の支持媒体140を配置し、上面300a上の支持媒体140に第1集合体100の複数の半導体構造体120を浸漬させている。支持部材300の上面300a上への液体の支持媒体140の配置は、例えば、適当な高さの枠を支持部材300の上面300aに配置し、枠内に液体の支持媒体140を注入することにより実行できる。
【0041】
支持部材300の上面300a上への液体の支持媒体140の配置に先立ち、図12に例示するように、支持部材300の上面300aにシート330を配置しておいてもよい。すなわち、複数の半導体構造体120を液体の支持媒体140に浸漬させる工程は、液体の支持媒体140と支持部材300との間にシート330を介在させる工程を含み得る。
【0042】
シート330には、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム、または、紙などを適用し得る。支持部材300の上面300aにシート330をあらかじめ配置しておくことにより、液体の支持媒体140の固化後における、支持部材300からの第2集合体200の分離を容易として、支持部材300上からの複数の半導体構造体120の移動を容易とできる。
【0043】
支持部材300は、上述の流路FL1に加えて、真空引きのための付加的な流路FL2をさらに有していてもよい。支持部材300がこのような構造を有することにより、シート330または複数の半導体構造体120をバキュームチャックにより上面300a上に一時的に固定できる。図13に模式的に示すように、固化された支持媒体140の表面および半導体構造体120の電極20の下面20bからの第1支持体110の分離は、バキュームチャックによりシート330を支持部材300の上面300a上に吸着した状態で実行され得る。
【0044】
支持部材300は、冷却プレートおよびポーラス板の積層構造を有していてもよい。この場合、ポーラス板を介したバキュームチャックが可能であり、ポーラス板の上面が支持部材300の上面300aを構成する。
【0045】
なお、支持部材300から第2集合体200を分離した際に、第2集合体200とともにシート330が支持部材300から分離され、第2集合体200上に残ることがある。この場合、続く工程の実行前に、第2集合体200上からシート330を除去しておくことが好ましい。
【0046】
第2集合体200の形での複数の半導体構造体120の移動後における、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程は、1気圧よりも低い気圧下、例えば、3600Pa以下、好ましくは620Pa以下の気圧下で実行されてもよい。例えば室温(ここでは27℃とする)下において周囲を減圧することにより、露点温度を低下させることができる。すなわち、1気圧よりも低い気圧下で支持媒体140の除去を実行することにより、空気中の水分の半導体構造体120表面での凝結を抑制する効果が得られる。周囲の減圧は、支持媒体140の半導体構造体120表面での凝結を抑制しながらの支持媒体140の除去にも有利である。また、支持媒体140の蒸発を利用する場合には、より早く第2集合体200から支持媒体140を除去し得る。第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程は、例えば、図9および図10に示される工程に含まれてもよい。
【0047】
複数の半導体構造体120の電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させる工程(図7図10参照)、および、接合部材40により半導体構造体120を配線基板400に接合する工程(図11参照)を、1気圧よりも低い気圧下で実行してもよい。これらの工程を1気圧よりも低い気圧下で実行することにより、空気中の水分の半導体構造体120表面での凝結を抑制し得る。
【0048】
さらに、冷却により支持媒体140を固化させる工程、および、第2集合体200を得る工程(図5参照)を、1気圧よりも低い気圧下で実行してもよい。複数の半導体構造体120の周囲の気体の圧力を低下させるタイミングは、複数の半導体構造体120の支持媒体140への浸漬の工程よりも後であれば任意であってよい。
【0049】
複数の半導体構造体120の支持媒体140への浸漬よりも後の工程、例えば、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程は、620Pa以下の真空下で実行されてもよい。支持媒体140の昇華を利用して第2集合体200から支持媒体140を除去してもよい。
【0050】
特に、液体の支持媒体140を固化させる工程以降の工程を真空下で実行することは、複数の半導体構造体120の一括したハンドリングに有利である。上述したように、本実施形態は、複数の半導体構造体120を第2集合体200の形でハンドリングする工程を含んでいる。例えば支持媒体140として水を採用した場合、室温下では、第2集合体200中の支持媒体140が次第に液化することにより、複数の半導体構造体120の長時間のハンドリングが難しくなることがあり得る。
【0051】
これに対し、例えば支持媒体140として水を用いた場合、室温下であっても、3600Pa以下の気圧下、好ましくは620Pa以下程度の真空下であれば、支持媒体140を構成する分子の散逸は、昇華により生じる。減圧を伴わない場合と比較して、支持媒体140が液化しにくくなることで、複数の半導体構造体120のハンドリングを有利に行い得る。
【0052】
なお、はんだバンプは、セルフアラインメントの効果が期待できるという点でAuバンプよりも有利である反面、低圧化では、フラックス中の酸または塩がはんだ表面に絶縁物として凝集することがある。その意味で、フラックス入りはんだは、真空下での利用に適当ではない。そのため、複数の半導体構造体120の電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させる工程(図7図10参照)、および、接合部材40により半導体構造体120を配線基板400に接合する工程(図11参照)において、接合部材40としてはんだを用い、配線基板400への半導体構造体120の接合を真空下で実行する場合には、フラックスレスのはんだを選択することが有益である。ただし、この場合、フラックスによる、電極20の表面および/または配線410の表面の酸化膜の除去の効果が得られないので、配線基板400の配線410上への接合部材40の配置などに先立ち、酸化膜の除去のための工程を実行すると有利である。
【0053】
例えば、半導体構造体120の電極20を配線基板400上の接合部材40に接触させる工程は、配線基板400の準備後、配線基板400の所定の箇所への接合部材40の配置の前に、配線410の表面から酸化膜を除去する工程を含んでいてもよいし、配線基板400の所定の箇所に接合部材40を配置した後に、接合部材40の表面から酸化膜を除去する工程を含んでいてもよい。半導体構造体120の電極20と、配線基板400の配線410との間の接合に先立つ、酸化膜の除去は、フラックスを含有しないはんだなどの材料を接合部材40に適用した、半導体構造体120の実装を可能にする。
【0054】
同様に、半導体構造体120の電極20と、配線基板400の配線410との間の接合に先立ち、半導体構造体120の電極20の下面20bからの酸化膜の除去を実行してもよい。電極20表面の酸化膜の除去の工程は、第1集合体100から第1支持体110を分離して、固化された支持媒体140から電極20の下面20bを露出させた後であって、電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させる前に実行すればよい。
【0055】
酸化膜の除去は、配線410の表面および/または電極20の下面20bに対するプラズマ処理により実行され得る。プラズマ処理には、水素プラズマまたはアルゴンプラズマを適用し得る。水蒸気を利用したアクアプラズマ(登録商標)を酸化膜除去に適用してもよい。配線410の表面および/または電極20の下面20bに対するプラズマ処理は、真空下で実行され得る。配線410の表面および/または電極20の下面20bからの酸化膜の除去は、熱解離を利用して実行されてもよい。
【0056】
上述の各例では、接合部材40による半導体構造体120の配線基板400への接合の工程の前に、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程を実行している。しかしながら、第2集合体200からの支持媒体140の除去のタイミングは、これらの例に限定されず、以下に説明するように、接合部材40により複数の半導体構造体120を配線基板400に接合する工程の後であってもよい。
【0057】
気化、昇華などを利用した、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程と、配線基板400への複数の半導体構造体120の接合の工程は、いずれが先に実行されてもよい。ここでは、第2集合体200を得た後、図8に示す例と同様に、第2集合体200中の半導体構造体120の電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させる。そして、その状態のまま、超音波接合またはリフローなどにより、複数の半導体構造体120の、接合部材40を介した配線基板400への接合を実行する。ここでは、圧盤600による第2集合体200への加圧(図9参照)を省略可能である。
【0058】
複数の半導体構造体120と配線基板400との間の接合の実行後、配線基板400上から支持媒体140を除去する。支持媒体140の除去は、支持媒体140の液化または蒸発により実行され得る。支持媒体140の除去により、図11に示す例と同様の半導体装置500が得られる。
【0059】
支持媒体140の除去は、1気圧よりも低い気圧下で実行されてもよい。1気圧よりも低い気圧下で支持媒体140を除去することにより、空気中の水分の半導体構造体120表面での凝結を抑制して、配線基板400上の半導体構造体120を効率的に乾燥し得る。
【0060】
周囲の雰囲気を620Pa以下の真空として、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程を実行してもよい。支持媒体140は、昇華により第2集合体200から除去されてもよい。
【0061】
配線基板400上からの支持媒体140の除去の工程だけでなく、その前の工程、例えば、半導体構造体120の電極20の下面20bを配線基板400上の接合部材40に接触させる工程から、周囲の雰囲気を1気圧よりも低い気圧としてもよい。言い換えれば、電極20の下面20bを接合部材40に接触させる工程と、接合部材40により半導体構造体120を配線基板400に接合する工程とを、1気圧よりも低い気圧下で実行してもよい。この場合にも、半導体構造体120表面での水分の凝結を有利に回避し得る。
【0062】
冷却により固化された支持媒体140から電極20の下面20bを露出させた後、電極20の下面20bを接合部材40に接触させる工程の実行前に、配線410の表面および/または電極20の下面20bからの酸化膜の除去を実行してもよい。酸化膜の除去により、フラックスを含有しない材料を接合部材40に適用した、半導体構造体120の配線基板400への実装を実現し得る。
【0063】
このように、本開示の実施形態において、第2集合体200からの支持媒体140の除去の工程は、接合部材40による半導体構造体120の配線基板400への接合の工程の前および後のいずれのタイミングで実行されてもかまわない。いずれの順序を採用した場合も、第1支持体110上における間隔を大きく変化させることなく、複数の半導体構造体120を配線基板400に実装できる。なお、図1に示すステップS1、すなわち、第1集合体100の準備の段階から、全体の工程を真空下で実行してもかまわない。
【0064】
ここで、半導体構造体120の構成の他の例を説明する。図14および図15は、第1集合体100の半導体構造体120に適用可能な光源の例示的な構成を示す。図14は、そのような光源を上面とは反対側から見たときの外観の一例を示す。図15は、図14に示す、光源の上面に垂直な平面Σで光源を切断したときに現れる断面を模式的に示す。
【0065】
図15に示す光源130は、発光素子32と、透光性部材34と、透光性部材34上に位置する第1光反射層36と、発光素子32の下面32b側に位置する第2光反射層38とを含む。
【0066】
発光素子32は、下面32bに一対の電極20を有する。電極20は、複数の層を含む積層構造を有し得る。図15に示す例では、電極20は、銅などから形成された柱状の第1導電部材3と、第1導電部材3のうち第2光反射層38から露出された部分を覆う金属層4とを含んでいる。金属層4は、例えばニッケルおよび金の積層膜である。
【0067】
図14および図15に示す例では、光源130の上面130aとは反対側の下面に相当する、第2光反射層38の下面38bに電極20の金属層4が現れている。言い換えれば、電極20の下面20bは、第2光反射層38から露出されている。
【0068】
発光素子32は、下面32bとは反対側の上面32aを有する。発光素子32の典型例は、LEDである。発光素子32は、サファイアまたは窒化ガリウムなどの透光性の支持基板と、支持基板上の半導体積層体と、半導体積層体に電気的に接続された一対の電極20とを有し得る。発光素子32が支持基板を有する場合、支持基板の主面のうち、半導体積層体が配置された主面とは反対側の主面が、発光素子32の上面32aを構成する。
【0069】
半導体積層体は、n型半導体層およびp型半導体層と、これらに挟まれた発光層とを含む。発光層は、ダブルヘテロ接合または単一量子井戸(SQW)などの構造を有していてもよいし、多重量子井戸(MQW)のようにひとかたまりの活性層群をもつ構造を有していてもよい。半導体積層体は、可視光または紫外光を発光可能に構成されている。このような発光層を含む半導体積層体は、例えばInxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)を含み得る。
【0070】
半導体積層体は、n型半導体層とp型半導体層との間に1つ以上の発光層を含む構造を有していてもよいし、n型半導体層と発光層とp型半導体層とを順に含む構造が複数回繰り返された構造を有していてもよい。半導体積層体が複数の発光層を含む場合、半導体積層体は、発光ピーク波長が異なる発光層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ発光層を含んでいてもよい。なお、発光ピーク波長が同じとは、数nm程度のばらつきがある場合も含む。各発光層は、発光ピーク波長が異なる複数の活性層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ複数の活性層を含んでいてもよい。
【0071】
透光性部材34は、発光素子32の上面32aと、側面32cの少なくとも一部とを覆う。第1光反射層36は、透光性部材34の上面34a上に配置されることにより、発光素子32の上面32aの上方に位置する。第1光反射層36の上面36aは、光源130の上面130aを構成する。ここでは、光源130の上面130aとしての上面36aは、上面視において矩形状を有している。上面36aの矩形状の一辺の長さは、例えば850μm程度であり得る。
【0072】
[透光性部材34]
透光性部材34は、発光素子32の上面32a上と、側面32cの少なくとも一部上とに位置する。発光素子32が複数の側面32cを有する場合、透光性部材34は、各側面32c(例えば4つの側面32cのそれぞれ)の一部または全部を覆う。
【0073】
透光性部材34の材料には、透明な樹脂を母材として含む樹脂材料を適用できる。透光性部材34の母材として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂もしくはポリノルボルネン樹脂、または、これらの2種以上を含む材料を用いてもよい。
【0074】
透光性部材34は、発光素子32の発光ピーク波長を有する光に対して、例えば60%以上の透過率を有する。光の取出し効率を高める観点から、発光素子32の発光ピーク波長における透光性部材34の透過率が70%以上であると有益であり、80%以上であるとより有益である。
【0075】
透光性部材34は、蛍光体などの波長変換材料を含有し得る。例えば、発光素子32に青色LEDを用い、発光素子32からの青色光の一部を波長変換して黄色光を発する波長変換材料を透光性部材34に含有させ得る。この場合、透光性部材34を通過した青色光と、透光性部材34に含まれる波長変換材料から発せられた黄色光との混色によって、白色光が得られる。
【0076】
透光性部材34に含有させる波長変換材料には、公知の蛍光体を適用できる。蛍光体の例は、KSF系蛍光体(例えばKSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えばK(Si,Al)F:Mn)などのフッ化物系蛍光体およびCASNなどの窒化物系蛍光体(例えばCaAlSiN:Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)、YAG系蛍光体(例えばY(Al,Ga)12:Ce)、βサイアロン蛍光体(例えば(Si,Al)(O,N):Eu)などである。KSF系蛍光体、KSAF系蛍光体およびCASNは、青色光を赤色光に変換する波長変換材料の例であり、YAG系蛍光体は、青色光を黄色光に変換する波長変換材料の例である。βサイアロン蛍光体は、青色光を緑色光に変換する波長変換材料の例である。蛍光体は、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えばCsPb(F,Cl,Br,I))、または、量子ドット蛍光体(例えばCdSe、InP、AgInSまたはAgInSe)であってもよい。透光性部材34は、二酸化チタン、酸化ケイ素の粒子などの光拡散材をさらに含有していてもよい。
【0077】
第1光反射層36は、透光性部材34の上面34a上に配置され、典型的には、上面34aの全体を覆う。発光素子32の上面32aの上方に第1光反射層36を配置することにより、発光素子32から上方に向けて出射された光の少なくとも一部を第1光反射層36で反射させることができる。第1光反射層36と透光性部材34との界面での反射により、主に光源130の側方に光を取り出すことが可能になり、また、発光素子32の光軸上の輝度を抑えることができる。
【0078】
第1光反射層36の材料には、例えば、白色の樹脂材料を用いることができる。白色の樹脂材料は、典型的には、母材と、光反射性のフィラーとを含む。本明細書において、「光反射性」とは、発光素子32の発光ピーク波長における反射率が60%以上であることを指す。第1光反射層36の反射率は、光源130の用途によって適宜に調整され得る。第1光反射層36は、発光素子32から出射された光を適度に反射させ、発光素子32直上の輝度を適度に低下できればよい。第1光反射層36が発光素子32からの光を完全に遮蔽することは、必須ではない。
【0079】
第1光反射層36の母材の例は、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)などである。光反射性のフィラーとしては、金属の粒子、または、母材よりも高い屈折率を有する無機材料もしくは有機材料の粒子を用いることができる。光反射性のフィラーの例は、銀もしくはアルミニウムなどの金属の粒子、二酸化チタン、酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムもしくは硫酸バリウムの粒子、または、酸化イットリウムおよび酸化ガドリニウムなどの各種希土類酸化物の粒子などである。
【0080】
第1光反射層36は、白色の樹脂層に限定されない。第1光反射層36は、Ag膜もしくはAl膜などの金属膜または誘電体多層膜などの反射膜であってもよい。第1光反射層36は、白色の樹脂層と反射膜との複合体であってもよい。例えば、第1光反射層36は、白色の樹脂層と金属膜との複合体であってもよい。
【0081】
第2光反射層38は、発光素子32の下面32b側に位置し、発光素子32の下面32bのうち電極32eの配置された領域以外の領域と、透光性部材34の下面とを覆う。第2光反射層38は、例えば、第1光反射層36と同様に、母材と、光反射性のフィラーとを含有する。光源130が第2光反射層38を有することにより、発光素子32の下面32b側からの光の漏れを低減でき、光の取出し効率の低下を回避し得る。
【0082】
なお、半導体構造体120として用いられる光源130が、透光性部材34、第1光反射層36および第2光反射層38のすべてを有していることは、本開示の実施形態において必須ではない。例えば、発光素子32の下面32b側に位置する第2光反射層38が省略されることがあり得る。光源130から透光性部材34が省略されてもよい。この場合、第1光反射層36は、発光素子32の上面32aに直接に接する。さらにこの場合において、第2光反射層38が省略されてもよい。すなわち、発光素子32と、発光素子32の上面32a上の第1光反射層36とから構成される光源を半導体構造体120として用いてもよい。ベアチップ上に蛍光体層を配置した光源を半導体構造体120として用いてもよい。
【0083】
本発明の実施形態は、以下の半導体装置の製造方法を含む。
【0084】
[項1]
それぞれが下面を有する複数の半導体構造体、および、前記複数の半導体構造体を前記下面側から支持する第1支持体を含む第1集合体であって、各半導体構造体は、前記下面に設けられた電極を有する第1集合体を準備する工程(A)と、
前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を液体の支持媒体に浸漬させる工程(B)と、
前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を液体の前記支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により前記支持媒体を固化させる工程(C)と、
前記第1集合体から前記第1支持体を分離することにより、固化された前記支持媒体から前記電極の下面を露出させ、前記支持媒体および前記複数の半導体構造体を含む第2集合体を得る工程(D)と、
前記第2集合体の前記複数の半導体構造体の前記電極の前記下面を、配線基板上の接合部材に接触させる工程(E)と、
前記接合部材により前記複数の半導体構造体を前記配線基板に接合する工程(F)と
を含む、半導体装置の製造方法。
【0085】
[項2]
前記工程(E)と前記工程(F)との間に、前記第2集合体から前記支持媒体を除去する工程(G)をさらに備える、項1に記載の半導体装置の製造方法。
【0086】
[項3]
前記工程(F)の後に、前記第2集合体から前記支持媒体を除去する工程(G)をさらに備える、項1に記載の半導体装置の製造方法。
【0087】
[項4]
前記工程(G)は、1気圧よりも低い気圧下で実行される、項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【0088】
[項5]
前記工程(E)および前記工程(F)は、1気圧よりも低い気圧下で実行される、項4に記載の半導体装置の製造方法。
【0089】
[項6]
前記工程(G)は、昇華により前記支持媒体を除去する工程を含む、項2から5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0090】
[項7]
前記工程(D)と前記工程(E)との間に、前記電極の前記下面から酸化膜を除去する工程(E1)をさらに備える、項1から6のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0091】
[項8]
前記工程(E)の前に、
前記配線基板の所定の箇所に前記接合部材を配置する工程(E2)と、
前記接合部材の配置後に前記接合部材の表面から酸化膜を除去する工程(E3)と
をさらに備える、項1から7のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0092】
[項9]
前記工程(B)は、上面を有する支持部材上に配置された液体の前記支持媒体に、前記第1集合体の前記複数の半導体構造体を浸漬させる工程を含み、
前記工程(C)は、前記支持部材の前記上面上の前記支持媒体を冷却し、前記支持媒体を固化させる工程を含み、
前記工程(D)は、前記支持部材上に固定された固化された前記支持媒体から前記電極の前記下面を露出させる工程を含む、項1から8のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0093】
[項10]
前記工程(B)において、液体の前記支持媒体と前記支持部材との間にシートが介在されており、
前記工程(C)と前記工程(E)との間に、前記シートから前記第2集合体を分離する工程(H)をさらに備える、項9に記載の半導体装置の製造方法。
【0094】
[項11]
前記複数の前記半導体構造体のそれぞれは、少なくとも発光素子を含んでいる、項1から10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示の実施形態は、発光装置の製造に限定されず、半導体構造体を含む種々の装置の製造に適用可能である。本開示の実施形態は、複数の半導体構造体の所定の配置での一括した転写を容易にする。本開示の実施形態によれば、それぞれが半導体構造体を含む複数の半導体装置をより効率的に製造可能である。
【符号の説明】
【0096】
20…半導体構造体の電極、20b…電極の下面、40…接合部材、100…第1集合体、110…第1支持体、120…半導体構造体、120b…半導体構造体の下面、140…支持媒体、200…第2集合体、400…配線基板
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