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特許7486048加熱体、加熱装置、定着装置および画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】加熱体、加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240510BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20240510BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H05B3/10 A
H05B3/03
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020099343
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193418
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 創
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】南野 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-173652(JP,A)
【文献】特開平06-337605(JP,A)
【文献】特開平04-081877(JP,A)
【文献】特開2011-023178(JP,A)
【文献】実開平04-029192(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/02- 3/18
H05B 3/40- 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に直接または間接的に積層して形成される複数の導体層と、
絶縁材料により形成され、前記導体層同士の間に設けられた絶縁層とを備えた加熱体であって、
前記導体層の少なくとも1つは抵抗発熱体を有し、
前記導体層の少なくとも1つは、前記抵抗発熱体に給電する給電部を有し、
前記導体層同士をつなぐ導体部を有し、
前記給電部を有し、前記抵抗発熱体が設けられない第1導体層と、
前記第1導体層よりも前記基材から遠い側に設けられ、前記抵抗発熱体を有する第2導体層と、
前記第1導体層と前記第2導体層との間に設けられる第1絶縁層と、
前記第2導体層上に形成される第2絶縁層とを備えたことを特徴とする加熱体。
【請求項2】
前記抵抗発熱体を有する第3導体層と、
前記第3導体層上に形成される第3絶縁層とをさらに備えた請求項記載の加熱体であって、
前記第2絶縁層は前記第2導体層と前記第3導体層との間に設けられる加熱体。
【請求項3】
異なる前記抵抗発熱体からなる第1発熱部および第2発熱部と、
前記第1発熱部と接続される第1給電部と、前記第2発熱部と接続される第2給電部と、前記第1発熱部および前記第2発熱部と接続される第3給電部と、を備えた請求項1または2記載の加熱体であって、
前記第1発熱部と前記第1給電部とをつなぐ前記導体部と、前記第2発熱部と前記第2給電部とをつなぐ前記導体部とが、前記加熱体の長手方向に交差する方向の異なる位置に設けられる加熱体。
【請求項4】
前記導体層に設けられた前記抵抗発熱体は、前記加熱体の全ての抵抗発熱体による全発熱領域の長手方向中央位置に対して、その一方側と他方側とで対称に配置される請求項1からいずれか1項に記載の加熱体。
【請求項5】
前記導体層の側面に設けられた前記給電部が給電部材と接触する請求項1からいずれか1項に記載の加熱体。
【請求項6】
前記給電部を有する導体層に対して、積層方向に遠ざかるほど前記抵抗発熱体の長手方向の長さが長くなる請求項1からいずれか1項に記載の加熱体。
【請求項7】
前記給電部の一部に前記絶縁層が形成されない請求項1からいずれか1項に記載の加熱体。
【請求項8】
請求項1からいずれか1項に記載の加熱体を有する加熱装置。
【請求項9】
請求項記載の加熱装置を有し、記録媒体上のトナーを熱により定着させる定着装置。
【請求項10】
請求項に記載の定着装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱体、加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置としての定着装置には、抵抗発熱体を備えた面状の加熱体が設けられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、抵抗発熱体を有する第1発熱シートおよび第2発熱シートと、これらの発熱シートの間に設けられる絶縁シートとを備えた面状発熱体が開示されている。
【0004】
そして上記のような加熱体では、抵抗発熱体と給電部とをつなぐ導体部の発熱量により、加熱体の発熱量が長手方向に不均一になるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱体に長手方向の温度偏差が生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、基材と、前記基材上に直接または間接的に積層して形成される複数の導体層と、縁部材により形成され、前記導体層同士の間に設けられた絶縁層とを備えた加熱体であって、前記導体層の少なくとも1つは抵抗発熱体を有し、前記導体層の少なくとも1つは、前記抵抗発熱体に給電する給電部を有し、前記導体層同士をつなぐ導体部を有し、前記給電部を有し、前記抵抗発熱体が設けられない第1導体層と、前記第1導体層よりも前記基材から遠い側に設けられ、前記抵抗発熱体を有する第2導体層と、前記第1導体層と前記第2導体層との間に設けられる第1絶縁層と、前記第2導体層上に形成される第2絶縁層とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱体の長手方向の温度偏差を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】定着装置の概略構成図である。
図3】定着装置の斜視図である。
図4】定着装置の分解斜視図である。
図5】加熱ユニットの斜視図である。
図6】加熱ユニットの分解斜視図である。
図7】ヒータの分解斜視図である。
図8】ヒータの導体層の構成を示す分解斜視図である。
図9】(a)~(e)は、ヒータの製造過程を示す断面図である。
図10】ヒータへの電力供給を示す図である。
図11】本発明と異なるヒータの斜視図である。
図12図11と異なる実施形態のヒータについて、導体層のみを表示した斜視図である。
図13図12のヒータの層構成を示す図で、(a)図が図12の矢印D1方向から見た図、(b)図が図12の矢印D2方向から見た図である。
図14】(a)~(e)は、図12のヒータの製造過程を示す断面図である。
図15図12と異なる実施形態のヒータについて、導体層のみを表示した斜視図である。
図16図15のヒータの層構成を示す図で、(a)図が図15の矢印D1方向から見た図、(b)図が図15の矢印D2方向から見た図である。
図17図15のヒータについて、各発熱部への電力供給を示す図である。
図18図15と異なる実施形態のヒータについて、導体層のみを表示した斜視図である。
図19図18のヒータの層構成を示す図で、(a)図が図18の矢印D1方向から見た図、(b)図が図18の矢印D2方向から見た図である。
図20図18のヒータについて、各発熱部への電力供給を示す図である。
図21図18と異なる実施形態のヒータについて、導体層のみを表示した斜視図である。
図22図21のヒータの層構成を示す図で、(a)図が図21の矢印D1方向から見た図、(b)図が図21の矢印D2方向から見た図である。
図23図21のヒータについて、各発熱部への電力供給を示す図である。
図24】他の定着装置の構成を示す図である。
図25】別の定着装置の構成を示す図である。
図26】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、各実施形態の説明において、加熱装置の一例として、記録媒体としての用紙に画像を定着する定着装置を説明する。ただし、加熱装置と定着装置が必ずしも同一である必要はなく、定着装置が備えた装置の一つとして加熱装置があってもよい。
【0010】
図1に示すモノクロの画像形成装置1には、感光体ドラム10が設けられている。感光体ドラム10は、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体であり、図の矢印方向に回転する。感光体ドラム10の周囲には、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ7等を備えた現像装置12と、感光体ドラム10の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード13等で構成されている。
【0011】
感光体ドラム10の上方には、露光部が配置されている。露光部が画像データに基づいて発したレーザ光Lbが、ミラー14を介して感光体ドラム10の表面に照射される。
【0012】
また、感光体ドラム10に対向する位置に配置され、転写チャージャを備えた転写手段15が配置されている。転写手段15は、感光体ドラム10表面上の画像を用紙Pに転写する。
【0013】
画像形成装置1の下部には給紙部4が位置しており、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙カセット16や、給紙カセット16から用紙Pを搬送路5へ搬出する給紙ローラ17等からなっている。給紙ローラ17の搬送方向下流側にはレジストローラ18が配置されている。
【0014】
定着装置9は、後述する加熱部材によって加熱される定着ベルト20、その定着ベルト20を加圧可能な加圧ローラ21等を有している。
【0015】
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
【0016】
印刷動作(画像形成動作)が開始されると、まず感光体ドラム10が帯電ローラ11によってその表面を帯電される。そして、画像データに基づいて露光部からレーザービームLbが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム10には、現像装置12から表面部分にトナーが供給され、トナー画像(現像剤像)として可視像化される。そして、転写後の感光体ドラム10に残されたトナー等は、クリーニングブレード13によって取り除かれる。
【0017】
一方、印刷動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部4の給紙ローラ17が回転駆動することによって、給紙カセット16に収容された用紙Pが搬送路5に送り出される。
【0018】
搬送路5に送り出された用紙Pは、レジストローラ18によってタイミングを計られ、感光体ドラム10表面上のトナー画像と向かい合うタイミングで転写手段15と感光体ドラム10との対向部である転写部へ搬送され、転写手段15による転写バイアス印加によりトナー画像が転写される。
【0019】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、加熱されている定着ベルト20と加圧ローラ21とによって加熱および加圧されて、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト20から分離され、定着装置9の下流側に設けられた搬送ローラ対によって搬送され、装置外側に設けられた排紙トレイへと排出される。
【0020】
続いて、定着装置9のより詳細な構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、回転部材あるいは定着部材としての定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する、対向部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱ユニット19と、を備えている。また、加熱ユニット19は、加熱体としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24とを有する。定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、そしてステー24は、図2の紙面に直行する方向(図3の両矢印B方向参照)に延在する。以下、この方向を各部材の長手方向(あるいは加圧ローラ21の軸方向)、そして、定着装置9、加熱ユニット19の長手方向と呼ぶ。また、この長手方向は定着装置9に通紙される用紙の幅方向でもある。ただし、ヒータ22と各部材や装置、ユニットの長手方向が必ずしも一致する必要はない。
【0022】
定着ベルト20は、無端状のベルト部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。定着ベルト20は、ヒータ22に加熱される被加熱部材である。
【0023】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0024】
加圧ローラ21と定着ベルト20は、付勢部材としてのバネによって互いに圧接されている。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。一方、定着ベルト20は、加圧ローラ21の回転に伴って従動回転するように構成されている。定着ベルト20が回転すると、定着ベルト20はヒータ22に対して摺動するため、定着ベルト20の摺動性を高めるために、ヒータ22と定着ベルト20との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
【0025】
ヒータ22は、加圧ローラ21に対応する位置で、定着ベルト20の内周面に対して長手方向にわたって接触している。
【0026】
ヒータ22は、基材50と、抵抗発熱体からなる発熱部60等を有する(詳細な構成は後述する)。発熱部60に通電して発熱させることにより、定着ベルト20をその内側から加熱できる。
【0027】
本実施形態とは異なり、発熱部60を基材50の定着ベルト20側とは反対側(ヒータホルダ23側)に設けてもよい。その場合、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、本実施形態に係るヒータ22の構成において、さらに基材50の定着ベルト20とは反対側(ヒータホルダ23側)の面に、絶縁層を設けてもよい。
【0028】
ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、定着ベルト20への熱伝達効率を高めるには、本実施形態のように、ヒータ22を定着ベルト20に対して直に接触させる方が好ましい。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト20の外周面がヒータ22との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ22が接触する面は定着ベルト20の内周面とすることが望ましい。
【0029】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側壁部に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ22およびヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。
【0030】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
【0031】
印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることで、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送される(図2の矢印A方向参照)ことで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。
【0032】
図3は、定着装置の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
【0033】
図3および図4に示すように、定着装置9の装置フレーム40は、一対の側壁部28と前壁部27とから成る第1装置フレーム25と、後壁部29から成る第2装置フレーム26と、を備えている。一対の側壁部28は、長手方向の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部28によって、定着ベルト20、加圧ローラ21および加熱ユニット19の両端部側が支持される。各側壁部28には、複数の係合突起28aが設けられ、各係合突起28aが後壁部29に設けられた係合孔29aに係合することで、第1装置フレーム25と第2装置フレーム26とが組み付けられる。
【0034】
また、各側壁部28は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、後壁部29側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。この突き当て部側の端部には、加圧ローラ21の回転軸を支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21は、その回転軸の両端部がそれぞれ軸受30に装着されることで、両側壁部28によって回転可能に支持される。
【0035】
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が設けられている。駆動伝達ギヤ31は、加圧ローラ21が両側壁部28に支持された状態で、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載された際、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤと連結し、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。なお、加圧ローラ21に駆動力を伝達する駆動伝達部材としては、駆動伝達ギヤ31のほか、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などであってもよい。
【0036】
加熱ユニット19の長手方向の両端部には、定着ベルト20やヒータホルダ23、ステー24などを支持する一対の両端支持部材32が設けられている。各両端支持部材32には、ガイド溝32aが設けられている。このガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bの縁に沿って進入させることで、両端支持部材32が側壁部28に対して組み付けられる。
【0037】
また、各両端支持部材32と後壁部29との間には、付勢部材としての一対のバネ33が設けられている。各バネ33によってステー24や両端支持部材32が加圧ローラ21側に付勢されることで、定着ベルト20が加圧ローラ21に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部が形成される。
【0038】
また、図4に示すように、第2装置フレーム26を構成する後壁部29の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の長手方向の位置決めがなされる。なお、後壁部29の孔部29bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体の長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
【0039】
図5は、加熱ユニット19の斜視図、図6は、その分解斜視図である。
【0040】
図5および図6に示すように、ヒータホルダ23の定着ベルト側の面(図5および図6における手前側の面)には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状およびサイズに形成されているが、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このように、収容凹部23aがヒータ22よりも若干長く形成されていることで、熱膨張によりヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとが干渉しないように構成されている。また、ヒータ22は、この収容凹部23a内に収容された状態で、給電部材としての後述のコネクタによってヒータホルダ23と一緒に挟まれて保持される。
【0041】
一対の両端支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23およびステー24の両端部側が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その両端部側にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時においては基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力は生じない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0042】
図5および図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5および図6の左側に示される両端支持部材32の嵌合部32eが嵌合することで、ヒータホルダ23と両端支持部材32との長手方向の位置決めがなされる。一方、図5および図6の右側に示される両端支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、両端支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めを長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴ってヒータホルダ23が長手方向へ伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
【0043】
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端部側には、各両端支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは両端支持部材32に突き当たることで両端支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、両端支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが両端支持部材32に対して隙間を介して配置されることで、温度変化に伴ってステー24が長手方向に伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
【0044】
図7に示すように、ヒータ22は、基材50と、基材50上に設けられた基材側絶縁層51と、基材側絶縁層51上に設けられた発熱部60B1、60B2などを有する第1導体層52と、第1導体層52を被覆する第1絶縁層53と、第1絶縁層53上に設けられた発熱部60Aなどを有する第2導体層54と、第2導体層54を被覆する第2絶縁層55とを有している。本実施形態では、定着ベルト20側(ニップ部N側)に向かって、基材50、基材側絶縁層51、第1導体層52(発熱部60B)、第1絶縁層53、第2導体層54(発熱部60A)、第2絶縁層55の順で積層されており、第1導体層52の発熱部60から発された熱は、第1絶縁層53および第2絶縁層55を介して、第2導体層54の発熱部60から発された熱は、第2絶縁層55を介して、それぞれ定着ベルト20へと伝達される(図2参照)。
【0045】
基材50は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成された長手状の板材である。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と第1導体層52との間の基材側絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度むらが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0046】
各絶縁層51,53,55は、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成されている。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミド(PI)等を用いてもよい。
【0047】
図8に示すように、第1導体層52は、抵抗発熱体69からなる第2発熱部60B1、60B2と、給電部(第2給電部)としての第2電極部61B1,61B2と、導体部としての給電線62とを有する。
【0048】
以下、ヒータ22の長手方向Bに交差する方向(本実施形態では、長手方向に直交する方向で、ヒータ22あるいは基材50の厚み方向と異なる方向)をヒータ22あるいは基材50の短手方向Yと称する。また本実施形態では、短手方向Yは、用紙搬送方向(図2の矢印A参照)あるいはその反対方向と同じ方向でもある。
【0049】
図8に示すように、第2導体層54は、抵抗発熱体69からなる第1発熱部60Aと、給電部(第1給電部)としての第1電極部61A1,61A2とを有する。以下、第1発熱部60Aおよび第2発熱部60B1,60B2等を発熱部60、第1電極部61A1,61A2,および、第2電極部61B1,61B2等を電極部61とも呼ぶ。
【0050】
抵抗発熱体69は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成される。抵抗発熱体69の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。
【0051】
給電線62は、抵抗発熱体69よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。給電線62や電極部の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができる。
【0052】
第1電極部61A1、61A2、および、第2電極部61B1,61B2は、後述するコネクタを介して電源64から電力を供給される。第1電極部61A1、61A2に電力を供給することにより、第1発熱部60Aに通電して抵抗発熱体69を発熱させることができる。また、第2電極部61B1、61B2に電力を供給することにより、第2発熱部60B1、60B2に通電して抵抗発熱体69を発熱させることができる。
【0053】
第1電極部61A1と電源64との間には、切替部としてのスイッチ65Aが設けられる。スイッチ65AのONOFFにより、第1発熱部60Aへの電圧の印加の有無を切り替えることができる。また第2電極部61B1と電源64との間には、切替部としてのスイッチ65Bが設けられる。スイッチ65BのONOFFにより、第2発熱部60B1、60B2への電圧の印加の有無を切り替えることができる。
【0054】
図9(a)に示すように、電極部61には給電部材としてのコネクタ70が接続される。
【0055】
コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、ハーネス73とを有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成される。各コンタクト端子72には給電用のハーネス73が接続され、前述した電源64から電力を供給される。
【0056】
本実施形態では、各導体層の側面X1,X2(長手方向両側の側面)を被給電位置として、側面X1、X2にコンタクト端子72が接続される。本実施形態のように側面側での接続とすることで、各電極部が積層方向に露出している必要がない。従って、各導体層のレイアウトの自由度が大きくなり、ヒータ22をより小型化できる。ただし、図9(b)に示すように、第1電極部61A2と第2電極部61B2とを積層方向につなぐ給電線62を設けると共に、第2電極部61B2を長手方向に延長して、部分的に絶縁層53、55から露出させ(言い換えると、第2電極部61B2の積層方向の上部の一部領域に絶縁層を形成せず)、この露出部X3を被給電位置としてコンタクト端子72と接続してもよい。また図9(c)に示すように、第1電極部61A2および第2電極部61B2を長手方向に延長して、部分的に絶縁層53、55から露出させ、この露出部X4、X5を被給電位置としてコンタクト端子72とそれぞれ接続してもよい。
【0057】
図8に示すように、第1発熱部60Aと第2発熱部60B1,60B2とは、長手方向の発熱領域が異なっている。具体的には、第1発熱部60Aは、長手方向の中央側、第2発熱部60B1,60B2は長手方向両端部側に対応する位置にそれぞれ設けられる。
【0058】
スイッチ65AのみをONにすることにより、第1発熱部60Aに電圧を印加し、ヒータ22が、小サイズ(例えばA4サイズで、通紙幅:210mm)の用紙幅に対応した領域で抵抗発熱体69を発熱させることができる。また、スイッチ65Aおよびスイッチ65BをONにすることにより、第1発熱部60Aおよび第2発熱部60B1,60B2に電圧を印加し、ヒータ22が、大サイズの用紙幅に対応した領域で抵抗発熱体69を発熱させることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態のヒータ22は、発熱部60や電極部61、そして給電線62等を設けた導体層を複数の層に分けた積層構成をしている。これにより、各層の面積を小さく抑えることができる。従って、電極部61や給電線62の短手方向の長さを長く、かつ長手方向の長さを短くすることができる。
【0060】
ところで、本実施形態と異なり、同一の層内に発熱部や電源端子、給電線などを全て設けた構成の場合、ヒータを小型化しようとすると、そのレイアウトの制約から給電線を細く長くする必要があり、給電線の抵抗値が上昇してしまう。
【0061】
例えば、図10に示すヒータ22’のように、同一平面内に全ての発熱部60A,60B、電極部61A~61C、そして給電線62A~62Cを設けた場合、各電極部61A~61Cと抵抗発熱体69とをつなぐために、給電線62A~62Cが長く、かつ、細くなってしまう。この場合、給電線62A~62Cの抵抗値の増加により、ヒータ22に通電時の給電線62A~62Cからの発熱量が抵抗発熱体69からの発熱量に対して相対的に大きくなり、無視できなくなる。そして、給電線62A~62Cを流れる電流値が長手方向に異なるため、その発熱量も長手方向にむらがあり、ヒータ22の発熱量に長手方向の偏差が生じる原因となってしまう。そして、ヒータ22の発熱量の長手方向の偏差が、定着装置9が定着動作を行う用紙の画像むらや定着むらの原因となってしまうおそれがある。
【0062】
これに対して本実施形態では、上記のような複層構成により、給電線を太くかつ短くすることができ、その発熱量を相対的に小さくすることができる。従って、ヒータ22の長手方向の温度偏差を抑制できる。これにより、ヒータ22ひいては定着装置9を小型化すると共に、ヒータ22の長手方向の温度偏差によって生じる不具合、具体的には、用紙の画像むらや定着むらを抑制できる。さらに、抵抗発熱体と給電線や電極部との接合部を広くとることができるため、接合部における接合不良を抑止するといった利点を有する。
【0063】
次に、ヒータ22の具体的な製造方法について説明する。
【0064】
まず図11(a)に示すように、基材50表面(ニップ部N側の面)に絶縁性の部材をコーティングする。例えばガラスコーティングを行う。これにより、基材側絶縁層51を形成する。そして図11(b)に示すように、基材側絶縁層51の表面に発熱部、電極部、そして給電線を構成するペースト材料をスクリーン印刷し、第1導体層52を形成する(図11bでは給電線62Cを図示)。次に、図11(c)に示すように、基材側絶縁層51の上部で第1導体層52と同じ高さに絶縁性材料をスコーティングし、その上部および第1導体層52の上部にさらに絶縁性材料をコーティングして第1絶縁層53を形成する。さらに、図11(d)に示すように、第1絶縁層53の表面に発熱部や電極部を構成するペースト材料をスクリーン印刷し、第2導体層54を形成する(図11dでは抵抗発熱体69を図示)。そして、第2導体層54と同じ高さに絶縁性材料をコーティングし、その上部および第1導体層52の上部にさらに絶縁性材料をコーティングして第2絶縁層55を形成する。以上のようにしてヒータ22を製造できる。なお、導体層が3層以上に分かれる場合には、上記のスクリーン印刷によって導体層を形成する工程と、導体層の表面から絶縁性材料をコーティングして絶縁層を形成する工程とを繰り返せばよい。
【0065】
次に、ヒータ22の層構成の変形例について順に説明する。
【0066】
図12は本実施形態のヒータ22について、導体層のみを抜き出して表示した斜視図である。図13は本実施形態のヒータ22の層構成を示す図で、(a)図は図12の矢印D1方向から見た図、(b)図は図12の矢印D2方向から見た図である。ただし、図13は基材や絶縁層についても示している。図12はヒータ22における抵抗発熱体や電極部等の配置を示す図であり、抵抗発熱体の厚みは実際のヒータ22と異なっている。また、各導体層をつなぐ給電線の長さは実際よりも誇張して長く表示している。
【0067】
図12に示すように、本実施形態のヒータ22は、導体層として、第1導体層52と第2導体層54とを有する。第1導体層52には、各電極部61A~61Cが設けられる。第2導体層54には、第1発熱部60Aおよび第2発熱部60Bが設けられる。
【0068】
第1電極部61Aと第1発熱部60Aとは、導体部としての給電線62A1を介して接続され、第1発熱部60Aと第3電極部(第3給電部)61Cとは、導体部としての給電線62A2を介して接続される。また、第2電極部61Bと第2発熱部60Bとは、導体部としての給電線62B1を介して接続され、第2発熱部60Bと第3電極部61Cとは、導体部としての給電線62B2を介して接続される。
【0069】
図13に示すように、前述の実施形態と同様、基材50と第1導体層52との間に基材側絶縁層51が、第1導体層52と第2導体層54との間に第1絶縁層53が、第2導体層54の上部に第2絶縁層55が、それぞれ設けられる。
【0070】
各給電線62は、第1絶縁層53と同じ高さに設けられ、第1導体層52の各電極部61と第2導体層54の各発熱部60とをつないでいる。
【0071】
図12に示すように、長手方向において、第1発熱部60Aは大サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有し、第2発熱部60Bは小サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有する。第1電極部61Aはスイッチ65Aを介して電源64に接続され、第2電極部61Bはスイッチ65Bを介して電源64に接続される。前述の実施形態と同様、各スイッチ65A,65BのONOFFにより、各発熱部60A,60Bへの電圧の印加の有無を切り替え、ヒータ22が、それぞれの用紙幅に対応した発熱部を発熱させることができる。
【0072】
以上のように、本実施形態では、発熱部60と電極部61とを異なる導体層に設け、導体層同士を給電線で接続する構成としている。これにより、各導体層の面積を小さく抑えることができる。また、各電極部61を太く短くすることができ、各給電線62を異なる層をつなぐだけの長さと幅で設ければよい。従って、給電線および電極部の発熱量を相対的に小さく抑えることができ、ヒータ22に生じる長手方向の温度偏差を抑制できる。これにより、ヒータ22ひいては定着装置9を小型化すると共に、ヒータ22の長手方向の温度偏差によって生じる不具合、具体的には、用紙の画像むらや定着むらを抑制できる。
【0073】
図12実施形態のヒータ22について、その製造方法を図14を用いて説明する。図14(a)に示すように、まず基材50表面(ニップ部N側の面)にガラスコーティングを行い、基材側絶縁層51を形成する。そして図14(b)に示すように、基材側絶縁層51の表面に発熱部、電極部を構成するペースト材料をスクリーン印刷し、第1導体層52を形成する(図14bでは第3電極部61Cを図示)。次に、図14(c)に示すように、第1導体層52と同じ高さで、発熱部や電極部等の導体部が設けられていない部分にガラスコーティングを行う。そして、図14(d)に示すように、第1導体層52の上部に給電線(図14dでは給電線62A2および給電線62B2を図示)を構成するペースト材料をスクリーン印刷する。その後、図14(e)に示すように、給電線が設けられた以外の部分にガラスコーティングを行い、第1絶縁層53を形成する。そして、図14(f)に示すように、第1絶縁層53の上に第1発熱部60Aおよび第2発熱部60Bをスクリーン印刷し、第2導体層54を形成する。そして、図14(g)に示すように、第2導体層54と同じ高さにガラスコーティングを行う。最後に、図14(h)に示すように、第2導体層54の上部に第2絶縁層55を形成し、ヒータ22を製造できる。導体層が3層以上の場合には、図14(g)の工程の後、さらに、図14(d)~図14(g)の工程を繰り返すことでヒータ22を製造できる。
【0074】
図15は、次の実施形態のヒータ22について、導体層のみを抜き出して表示した斜視図である。図16は本実施形態のヒータ22の層構成を示す図で、(a)図は図15の矢印D1方向から見た図、(b)図は図15の矢印D2方向から見た図である。また図17は各発熱部への電力供給を示す図である。
【0075】
次の実施形態では、それぞれの発熱部が異なる層に設けられる。具体的には、図15に示すように、第2導体層54に第1発熱部60Aが設けられ、第3導体層56に第2発熱部60Bが設けられる。全ての電極部61A~61Cが第1導体層52に設けられる点は図12の実施形態と同様である。
【0076】
前述の実施形態と同様、第1電極部61Aと第1発熱部60Aとは給電線62A1を介して接続され、第1発熱部60Aと第3電極部61Cとは給電線62A2を介して接続される。また、第2電極部61Bと第2発熱部60Bとは給電線62B1を介して接続され、第2発熱部60Bと第3電極部61Cとは給電線62B2を介して接続される。
【0077】
図16(a)に示すように、給電線62A1は第1絶縁層53~第2導体層54~第2絶縁層55にわたって設けられ、第1導体層52の第1電極部61Aと第3導体層56の第1発熱部60Aとをつなぐ。給電線62B1は第1絶縁層53と同じ高さに設けられ、第1導体層52の第2電極部61Bと第2導体層54の第2発熱部60Bとをつなぐ。また図16(b)に示すように、給電線62A2は第1絶縁層53~第2導体層54~第2絶縁層55にわたって設けられ、第1導体層52の第3電極部61Cと第3導体層56の第1発熱部60Aとをつなぐ。給電線62B2は第1絶縁層53と同じ高さに設けられ、第1導体層52の第3電極部61Cと第2導体層54の第2発熱部60Bとをつなぐ。また、第3導体層56と定着ベルトの内面との間には第3絶縁層57が設けられる。
【0078】
図17に示すように、長手方向において、第1発熱部60Aは大サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有し、第2発熱部60Bは小サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有する。第1電極部61Aはスイッチ65Aを介して電源64に接続され、第2電極部61Bはスイッチ65Bを介して電源64に接続される。前述の実施形態と同様、各スイッチ65A,65BのONOFFにより、各発熱部60A,60Bへの電圧の印加の有無を切り替え、ヒータ22が、それぞれの用紙幅に対応した発熱部を発熱させることができる。
【0079】
本実施形態のように、第1発熱部60Aと第2発熱部60Bとを異なる層に設けることもできる。第1発熱部60Aと第2発熱部60Bとを重ねて配置できることでヒータ22の短手方向の幅を小型化することが可能となる。このように、導体層を複数に分けることで、各導体層の面積を小さく抑えることができる。また、各電極部61を太く短くすることができ、各給電線62を異なる層をつなぐだけの長さと幅で設ければよい。従って、給電線および電極部の発熱量を相対的に小さく抑えることができ、ヒータ22に生じる長手方向の温度偏差を抑制できる。これにより、ヒータ22ひいては定着装置9を小型化すると共に、ヒータ22の長手方向の温度偏差によって生じる不具合、具体的には、用紙の画像むらや定着むらを抑制できる。
【0080】
図18は、次の実施形態のヒータ22について、導体層のみを抜き出して表示した斜視図である。図19は本実施形態のヒータ22の層構成を示す図で、(a)図は図18の矢印D1方向から見た図、(b)図は図18の矢印D2方向から見た図である。また図20は各発熱部への電力供給を示す図である。
【0081】
図18に示すように、本実施形態では、第1発熱部60A,第2発熱部60Bに加えて、第3発熱部60Cが設けられる。
【0082】
第1導体層52には第4電極部61Dおよび第5電極部61Eが設けられる。第2導体層54には第1電極部61Aおよび第2電極部61B、そして第3発熱部60Cが設けられる。第3導体層56には第3電極部61Cが設けられる。第4導体層58には第1発熱部60Aおよび第2発熱部60Bが設けられる。このように本実施形態では、各発熱部60および各電極部が複数の導体層に分かれて配置されている。
【0083】
第4電極部61Dと第3発熱部60Cとは給電線62C1を介して接続され、第3発熱部60Cと第5電極部61Eとは給電線62C2を介して接続される。給電線62C1,62C2は第1絶縁層53と同じ高さに設けられ(図19aおよび図19b参照)、第1導体層52の電極部61D,61Eと第2導体層54の第3発熱部60Cとを接続している。
【0084】
図19(a)に示すように、給電線62A1,62B1は、第2絶縁層55~第3導体層56~第3絶縁層57にわたって設けられ、第2導体層54の第1電極部61A、第2電極部61Bと第4導体層58の第1発熱部60A、第2発熱部60Bとをそれぞれ接続している。図19(b)に示すように、給電線62A2,62B2は、第3絶縁層57と同じ高さに設けられ、第4導体層58の第1発熱部60Aおよび第2発熱部60Bと第3導体層56の第3電極部61Cとを接続している。また、第4導体層58と定着ベルトの内面との間には第4絶縁層59が設けられる。
【0085】
図20に示すように、長手方向において、第1発熱部60Aは大サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有し、第2発熱部60Bは中サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有する。そして、第3発熱部60Cは小サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有する。第1電極部61Aはスイッチ65Aを介して電源64に接続され、第2電極部61Bはスイッチ65Bを介して電源64に接続される。また、第3電極部61Cはスイッチ65Cを介して電源64に接続される。前述の実施形態と同様、各スイッチ65A~65CのONOFFにより、各発熱部60A~60Cへの電圧の印加の有無を切り替え、ヒータ22が、それぞれの用紙幅に対応した発熱部を発熱させることができる。つまり本実施形態では、ヒータ22が3種類の用紙幅に対応した発熱領域を形成することができる。
【0086】
このように、発熱部を3つ設けた構成において、導体層を複数に分けることができる。また、特定の発熱部同士を同じ層に設けたり、違う層に設けることができる。このように、発熱部や電極部の層構成は適宜最適なものを選択することができ、スペースの許す限り、さらに多くの導体層を積層してもよい。
【0087】
本実施形態においても、導体層を複数に分けることで、各導体層の面積を小さく抑えることができる。また、各電極部61を太く短くすることができ、各給電線62を異なる層をつなぐだけの長さと幅で設ければよい。従って、給電線および電極部の発熱量を相対的に小さく抑えることができ、ヒータ22に生じる長手方向の温度偏差を抑制できる。これにより、ヒータ22ひいては定着装置9を小型化すると共に、ヒータ22の長手方向の温度偏差によって生じる不具合、具体的には、用紙の画像むらや定着むらを抑制できる。
【0088】
次の実施形態では、図21に示すように、第1発熱部60A~第3発熱部60Cがそれぞれ異なる層に設けられる。具体的には、第1導体層52に第3発熱部60Cおよび各電極部61A~61Dが設けられる。そして、第2導体層54には第2発熱部60B、第3導体層56には第1発熱部60Aが設けられる。
【0089】
第3発熱部60Cは同じ層に設けられた第4電極部61Dおよび第3電極部61Cに接続される。また前述の実施形態と同様、第1電極部61Aと第1発熱部60Aとは給電線62A1を介して接続され、第1発熱部60Aと第3電極部61Cとは給電線62A2を介して接続される。また、第2電極部61Bと第2発熱部60Bとは給電線62B1を介して接続され、第2発熱部60Bと第3電極部61Cとは給電線62B2を介して接続される。
【0090】
図22(a)に示すように、給電線62A1は、第1絶縁層53~第2導体層54~第2絶縁層55にわたって設けられ、第1導体層52の第1電極部61Aと第3導体層56の第1発熱部60Aとをつなぐ。給電線62B1は第1絶縁層53と同じ高さに設けられ、第1導体層52の第2電極部61Bと第2導体層54の第2発熱部60Bとをつなぐ。図22(b)に示すように、給電線62A2は、第1絶縁層53~第2導体層54~第2絶縁層55にわたって設けられ、第1導体層52の第3電極部61Cと第3導体層56の第1発熱部60Aとをつなぐ。給電線62B2は第1絶縁層53と同じ高さに設けられ、第1導体層52の第3電極部61Cと第2導体層54の第2発熱部60Bとをつなぐ。
【0091】
図23に示すように、本実施形態においても、長手方向において、第1発熱部60Aは大サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有し、第2発熱部60Bは中サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有し、第3発熱部60Cは小サイズの用紙幅に対応した発熱領域を有する。第1電極部61Aはスイッチ65Aを介して電源64に接続され、第2電極部61Bはスイッチ65Bを介して電源64に接続される。また、第3電極部61Cはスイッチ65Cを介して電源64に接続される。前述の実施形態と同様、各スイッチ65A~65CのONOFFにより、各発熱部60A~60Cへの電圧の印加の有無を切り替え、ヒータ22が、それぞれの用紙幅に対応した発熱部を発熱させることができる。つまり本実施形態では、ヒータ22が3種類の用紙幅に対応した、発熱部による発熱領域を形成することができる。
【0092】
本実施形態においても、導体層を複数に分けることで、各導体層の面積を小さく抑えることができる。また、各電極部61を太く短くすることができ、各給電線62を異なる層をつなぐだけの長さと幅で設ければよい。従って、給電線および電極部の発熱量を相対的に小さく抑えることができ、ヒータ22に生じる長手方向の温度偏差を抑制できる。これにより、ヒータ22ひいては定着装置9を小型化すると共に、ヒータ22の長手方向の温度偏差によって生じる不具合、具体的には、用紙の画像むらや定着むらを抑制できる。
【0093】
特に本実施形態では、図21に示すように、ヒータ22を長手方向に切断した断面(短手方向の第1電極部61Aが配置された位置で長手方向に切断した断面)において、ヒータ22の全発熱領域Hの長手方向中央位置H1(本実施形態では、ヒータ22の中央位置および通紙する用紙の中央位置でもある)に対して、ヒータ22がその一方側と他方側とで対称になっている。つまり、ヒータ22の発熱部60、電極部61、給電線62の配置が、中央位置H1に対して一方側と他方側とで対称になっている。これにより、ヒータ22の長手方向一方側と他方側との温度偏差を抑制し、ヒータ22の温度を長手方向により均一化することができる。特に本実施形態では、図23に示すように、発熱部60は、長手方向中央位置に対して一方側と他方側とで対称になっている。これにより、ヒータ22の長手方向一方側と他方側との温度偏差を抑制し、ヒータ22の温度を長手方向により均一化することができる。なお、全発熱領域Hとは、ヒータ22の長手方向において、ヒータ22に設けられた全ての抵抗発熱体69のうち、最も長手方向一方側の位置Haから最も長手方向他方側の位置Hbまでの領域を指す。
【0094】
また各発熱部60を違う層に設ける場合、発熱領域の大きい、言い換えると、長手方向の長さの大きい発熱部60ほど、電極部61が設けられた層よりも積層方向に遠い位置に設けることが好ましい。例えば図21に示すように、ヒータ22の各電極部61A~61Dは第1導体層52の高さに設けられる。これに対して、第1導体層52から離れるほど、第3発熱部60C~第2発熱部60B~第1発熱部60Aとその長手方向の幅は大きくなっていく。これに対して、例えば最も幅の大きい第1発熱部60Aを中間の第2導体層54に設け、第2発熱部60Bを第3導体層56に設けた場合、第2発熱部60Bに接続される給電線62B1,62B2を積層方向に貫通させるためのスペースを、第1発熱部60Aが設けられた第2導体層54に確保する必要がある。すなわち、最も幅の大きい第1発熱部60Aを避けて給電線62B1,62B2を設ける必要があり、ヒータ22がこの分だけ大型化してしまう。従って、本実施形態のように発熱部60の幅を、給電部61から積層方向に離れるほど大きくする構成とすることで、ヒータ22をより小型化できて好ましい。
【0095】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、図24図26に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図24図26に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0096】
まず、図24に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0097】
次に、図25に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図24に示す定着装置9と同じ構成である。
【0098】
最後に、図26に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側に、ニップ形成部材91とステー93とを配置し、これらニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト92と加圧ローラ21との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0099】
これらの定着装置9においても、ヒータ22を前述したような層構成とすることで、ヒータ22を小型化すると共に、ヒータ22の長手方向の発熱量の偏差を抑制できる。
【0100】
また、本発明の加熱体を適用する加熱装置を備えた装置は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなど熱圧着装置のような加熱装置にも適用が可能である。このような装置にも本発明の加熱体を適用することで、加熱体を小型化すると共に、加熱体の長手方向の温度偏差を抑制できる。
【0101】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 画像形成装置
9 定着装置(加熱装置)
19 加熱ユニット
20 定着ベルト(回転部材、定着部材)
21 加圧ローラ(対向部材、加圧部材)
22 ヒータ(加熱体)
31 駆動伝達ギヤ(駆動伝達部材)
40 装置フレーム
50 基材
51,53,55,57,59 絶縁層
52,54,56,58 導体層
60 発熱部
61 電極部(給電部)
62 給電線(導体部)
64 電源
65A~65C スイッチ(切替部)
69 抵抗発熱体
70 コネクタ(給電部材)
A 通紙方向
B 長手方向
H ヒータの全発熱領域
H1 ヒータの中央位置
P 用紙(記録媒体あるいは被加熱物)
Y ヒータの短手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【文献】特開2013-186402号公報
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