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特許7486062露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240510BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240510BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G01B11/00 A
H01L21/68 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023079813
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2022068007の分割
【原出願日】2013-10-02
(65)【公開番号】P2023101546
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2012219952
(32)【優先日】2012-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-317431(JP,A)
【文献】特開2009-252986(JP,A)
【文献】特開2010-062210(JP,A)
【文献】特開2011-049557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系の光軸と垂直な所定面内で直交する第1、第2方向と、前記第1、第2方向と直交する第3方向と、を含む6自由度方向に可動で前記基板を保持するテーブルと、前記テーブルを非接触で支持する本体部と、を有するステージと、
前記投影光学系が配置される露光ステーションと異なる計測ステーションに配置され、前記第3方向に関する前記基板の位置情報を検出する検出系と、
前記露光ステーションおよび前記計測ステーションで前記本体部を移動する平面モータを有し、前記6自由度方向に関して前記テーブルを移動する駆動系と、
前記投影光学系の下端部を実質的に囲むように配置される、それぞれ反射型格子が形成される4つの部分を有するスケール部材と、
前記テーブルに設けられる4つのヘッド群を有し、前記露光ステーションにおいて、前記4つの部分の3つまたは4つとそれぞれ対向する前記4つのヘッド群の3つまたは4つによって、前記6自由度方向に関する前記テーブルの位置情報を計測するエンコーダシステムと、
前記基板の露光動作に先立ち前記検出系による前記基板の検出動作が行われるとともに、前記露光動作において、前記検出系の検出情報と前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記基板のフォーカス・レベリング制御が行われるように前記駆動系を制御する制御装置と、を備え、
前記4つのヘッド群はそれぞれ、複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドはそれぞれ、前記反射型格子に対してその下方から計測ビームを照射し、
前記エンコーダシステムは、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記複数のヘッドによって前記所定面内で互いに直交する2方向の少なくとも一方に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報を計測し、
前記制御装置は、前記露光動作において、前記4つの部分でそれぞれ、前記4つのヘッド群で取得される前記差分データに基づいて、前記所定面と平行な方向に関する前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差を補償する露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記4つのヘッド群は、前記2方向の一方に関して離れて配置され、それぞれ前記2方向の他方に関して前記位置情報を計測可能な2つのヘッド群と、前記2方向の他方に関して離れて配置され、それぞれ前記2方向の一方に関して前記位置情報を計測可能な2つのヘッド群と、を有する露光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の露光装置において、
前記4つのヘッド群は、前記所定面内の第1方向に関して、前記投影光学系の下端部が配置される前記スケール部材の開口の幅より広い間隔で配置される2つのヘッド群と、前記所定面内で前記第1方向と直交する第2方向に関して、前記2つのヘッド群から、前記開口の幅より広い距離離れて配置される2つのヘッド群と、を有し、
前記2方向は、前記所定面内の回転方向に関して前記第1、第2方向と45度異なる露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記2つのヘッド群はその一方が前記2方向の一方に関して前記位置情報を計測可能、かつ他方が前記2方向の他方に関して前記位置情報を計測可能である露光装置。
【請求項5】
請求項1に記載の露光装置において、
前記複数のヘッドは、前記2方向の一方に関して前記位置情報を計測可能かつ前記2方向の他方に関して互いに位置が異なる少なくとも2つのヘッドを含む露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置において、
前記複数のヘッドは、前記2方向の一方に関して前記少なくとも2つのヘッドの一部または全部と位置が異なる少なくとも1つのヘッドを含む露光装置。
【請求項7】
請求項1に記載の露光装置において、
前記計測ステーションに配置される、前記スケール部材と異なるスケール部材を、さらに備え、
前記異なるスケール部材は、それぞれ反射型格子が形成される、前記4つの部分と異なる4つの部分を有し、
前記エンコーダシステムは、前記計測ステーションにおいて、前記4つのヘッド群のうち、前記異なるスケール部材と対向する少なくとも3つのヘッド群によって前記テーブルの位置情報を計測するとともに、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記複数のヘッドによって前記2方向の少なくとも一方に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報を計測し、
前記制御装置は、前記異なる4つの部分でそれぞれ、前記計測ステーションで取得される、前記一方の方向に関する差分データに基づいて、前記所定面と平行な方向に関する前記異なるスケール部材の前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差を補償する露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置において、
前記投影光学系を支持するメトロロジーフレームを、さらに備え、
前記スケール部材と前記異なるスケール板は同一平面内に実質的に配置されるように、前記メトロロジーフレームに吊り下げ支持される露光装置。
【請求項9】
請求項7に記載の露光装置において、
前記複数のヘッドはそれぞれ、前記2方向の一方と、前記第3方向と、に関して、前記位置情報を計測し、
前記エンコーダシステムは、前記計測ステーションにおいて、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記第3方向に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報を計測し、
前記制御装置は、前記異なる4つの部分でそれぞれ、前記計測ステーションで取得される、前記第3方向に関する差分データに基づいて、前記第3方向に関する前記異なるスケール部材の前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差を補償する露光装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の露光装置において、
前記複数のヘッドはそれぞれ、前記2方向の一方と、前記第3方向と、に関して、前記位置情報を計測し、
前記エンコーダシステムは、前記露光ステーションにおいて、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記第3方向に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報を計測し、
前記制御装置は、前記4つの部分でそれぞれ、前記露光ステーションで取得される、前記第3方向に関する差分データに基づいて、前記第3方向に関する前記スケール部材の前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差を補償する露光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の露光装置において、
前記2方向は、前記所定面内の回転方向に関して前記第1、第2方向と45度異なる露光装置。
【請求項12】
デバイス製造方法であって、
請求項1~9のいずれかに記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項13】
投影光学系を介して照明光で基板を露光する露光方法であって、
前記投影光学系の光軸と垂直な所定面内で直交する第1、第2方向と、前記第1、第2方向と直交する第3方向と、を含む6自由度方向に可動で前記基板を保持するテーブルと、前記テーブルを非接触で支持する本体部と、を有するステージを、前記投影光学系が配置される露光ステーションと異なる計測ステーションに配置することと、
前記計測ステーションに配置される検出系によって、前記第3方向に関する前記基板の位置情報を検出することと、
前記基板の露光動作が行われるように前記ステージを前記露光ステーションに配置することと、
前記露光動作において、前記テーブルに設けられる4つのヘッド群を有するエンコーダシステムによって、前記6自由度方向に関する前記テーブルの位置情報を計測するとともに、前記検出系の検出情報と前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記基板のフォーカス・レベリング制御が行われるように前記テーブルを移動することと、を含み、
前記露光動作において、前記ステージは、前記投影光学系の下端部を実質的に囲むように配置される、それぞれ反射型格子が形成される4つの部分を有するスケール部材の下方で移動され、
前記エンコーダシステムは、前記4つの部分の3つまたは4つとそれぞれ対向する前記4つのヘッド群の3つまたは4つによって、前記6自由度方向に関する前記テーブルの位置情報を計測し、前記4つのヘッド群はそれぞれ、複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドはそれぞれ、前記反射型格子に対してその下方から計測ビームを照射し、
前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記複数のヘッドによって前記所定面内で互いに直交する2方向の少なくとも一方に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報が計測され、
前記露光動作において、前記4つの部分でそれぞれ、前記4つのヘッド群で取得される前記差分データに基づいて、前記所定面と平行な方向に関する前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差が補償される露光方法。
【請求項14】
請求項13に記載の露光方法において、
前記計測ステーションにおいて、前記ステージは、それぞれ反射型格子が形成される、前記4つの部分と異なる4つの部分を有し、前記スケール部材と異なるスケール部材の下方で移動され、前記4つのヘッド群のうち、前記異なるスケール部材と対向する少なくとも3つのヘッド群によって前記テーブルの位置情報が計測されるとともに、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記複数のヘッドによって前記2方向の少なくとも一方に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報が計測され、
前記異なる4つの部分でそれぞれ、前記計測ステーションで取得される、前記一方の方向に関する差分データに基づいて、前記所定面と平行な方向に関する前記異なるスケール部材の前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差が補償される露光方法。
【請求項15】
請求項14に記載の露光方法において、
前記複数のヘッドはそれぞれ、前記2方向の一方と、前記第3方向と、に関して、前記位置情報を計測し、
前記計測ステーションにおいて、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記第3方向に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報が計測され、
前記異なる4つの部分でそれぞれ、前記計測ステーションで取得される、前記第3方向に関する差分データに基づいて、前記第3方向に関する前記異なるスケール部材の前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差が補償される露光方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記複数のヘッドはそれぞれ、前記2方向の一方と、前記第3方向と、に関して、前記位置情報を計測し、
前記露光ステーションにおいて、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記第3方向に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報が計測されるとともに、前記4つの部分でそれぞれ、前記露光ステーションで取得される、前記第3方向に関する差分データに基づいて、前記第3方向に関する前記スケール部材の前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差が補償される露光方法。
【請求項17】
デバイス製造方法であって、
請求項13~15のいずれか一項に記載の露光方法を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、特に、半導体素子などのマイクロデバイス(電子デバイス)を製造するリソグラフィ工程で用いられる露光装置及び露光方法、並びに前記露光装置又は露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが、主として用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、半導体素子の高集積化によるデバイスパターンの微細化に伴い、高い重ね合わせ精度(位置合わせ精度)が要求されるようになってきた。このため、パターンが形成されるウエハ又はガラスプレート等の基板の位置計測にも一層高い精度が要求されるようになってきた。
【0004】
かかる要求に応える装置として、例えば特許文献1には、基板テーブル上に搭載された複数のエンコーダタイプのセンサ(エンコーダヘッド)を用いる位置計測システムを備えた露光装置が提案されている。この露光装置では、エンコーダヘッドは、基板テーブルに対向して配置されたスケールに計測ビームを照射し、スケールからの戻りビームを受光することによって、基板テーブルの位置を計測する。
【0005】
しかるに、特許文献1に記載の位置計測システムを備えた露光装置は、スケールが有するグレーティングの格子ピッチ及び格子形状、すなわちグリッドが、長期にわたり「全く変動しないこと」が高精度な露光を実現するための前提となっている。また、グリッドが変動しても、露光結果に基づいて、その変動を監視する以外にその変動を監視する手段がない。
【0006】
しかしながら、現在の露光装置のウエハステージに要求されている位置決め誤差の許容値がnmレベルであることを考えると、グリッドがnmレベルで見て長期に渡って変動しないとは考え難い。
【0007】
また、300ミリウエハ時代から450ミリウエハ時代への移行が目前に迫っており、450ミリウエハ対応の露光装置になると、ウエハステージが大型化する反面、位置決め誤差の許容値は現在より厳しくなる(あるいは現在と同程度となる)ものと考えられる。450ミリウエハ対応の露光装置に上記特許文献1に記載の位置計測システムをそのまま用いることは、ウエハの大型化に伴うスケール(グレーティング)のさらなる大型化を考えても、現実問題としては困難であると考えられる。
【0008】
同様の問題は、例えば特許文献2などに開示されるエンコーダシステムを備える露光装置でも生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2006/0227309号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情の下になされたもので、その第1の態様によれば、投影光学系を介して照明光で基板を露光する露光装置であって、前記投影光学系の光軸と垂直な所定面内で直交する第1、第2方向と、前記第1、第2方向と直交する第3方向と、を含む6自由度方向に可動で前記基板を保持するテーブルと、前記テーブルを非接触で支持する本体部と、を有するステージと、前記投影光学系が配置される露光ステーションと異なる計測ステーションに配置され、前記第3方向に関する前記基板の位置情報を検出する検出系と、前記露光ステーションおよび前記計測ステーションで前記本体部を移動する平面モータを有し、前記6自由度方向に関して前記テーブルを移動する駆動系と、前記投影光学系の下端部を実質的に囲むように配置される、それぞれ反射型格子が形成される4つの部分を有するスケール部材と、前記テーブルに設けられる4つのヘッド群を有し、前記露光ステーションにおいて、前記4つの部分の3つまたは4つとそれぞれ対向する前記4つのヘッド群の3つまたは4つによって、前記6自由度方向に関する前記テーブルの位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記基板の露光動作に先立ち前記検出系による前記基板の検出動作が行われるとともに、前記露光動作において、前記検出系の検出情報と前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記基板のフォーカス・レベリング制御が行われるように前記駆動系を制御する制御装置と、を備え、前記4つのヘッド群はそれぞれ、複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドはそれぞれ、前記反射型格子に対してその下方から計測ビームを照射し、前記エンコーダシステムは、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記複数のヘッドによって前記所定面内で互いに直交する2方向の少なくとも一方に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報を計測し、前記制御装置は、前記露光動作において、前記4つの部分でそれぞれ、前記4つのヘッド群で取得される前記差分データに基づいて、前記所定面と平行な方向に関する前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差を補償する露光装置が、提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、デバイス製造方法であって、第1の態様に係る露光装置を用いて基板を露光することと、前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、投影光学系を介して照明光で基板を露光する露光方法であって、前記投影光学系の光軸と垂直な所定面内で直交する第1、第2方向と、前記第1、第2方向と直交する第3方向と、を含む6自由度方向に可動で前記基板を保持するテーブルと、前記テーブルを非接触で支持する本体部と、を有するステージを、前記投影光学系が配置される露光ステーションと異なる計測ステーションに配置することと、前記計測ステーションに配置される検出系によって、前記第3方向に関する前記基板の位置情報を検出することと、前記基板の露光動作が行われるように前記ステージを前記露光ステーションに配置することと、前記露光動作において、前記テーブルに設けられる4つのヘッド群を有するエンコーダシステムによって、前記6自由度方向に関する前記テーブルの位置情報を計測するとともに、前記検出系の検出情報と前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記基板のフォーカス・レベリング制御が行われるように前記テーブルを移動することと、を含み、前記露光動作において、前記ステージは、前記投影光学系の下端部を実質的に囲むように配置される、それぞれ反射型格子が形成される4つの部分を有するスケール部材の下方で移動され、前記エンコーダシステムは、前記4つの部分の3つまたは4つとそれぞれ対向する前記4つのヘッド群の3つまたは4つによって、前記6自由度方向に関する前記テーブルの位置情報を計測し、前記4つのヘッド群はそれぞれ、複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドはそれぞれ、前記反射型格子に対してその下方から計測ビームを照射し、前記4つのヘッド群でそれぞれ、前記複数のヘッドによって前記所定面内で互いに直交する2方向の少なくとも一方に関して前記位置情報の差分データが取得されるように前記位置情報が計測され、前記露光動作において、前記4つの部分でそれぞれ、前記4つのヘッド群で取得される前記差分データに基づいて、前記所定面と平行な方向に関する前記反射型格子に起因するグリッド変動によるグリッド誤差が補償される露光方法が、提供される。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、デバイス製造方法であって、第3の態様に係る露光方法を用いて基板を露光することと、前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2】投影光学系の周囲に配置されるエンコーダシステムの構成を示す図である。
図3】アライメント系の周囲に配置されるエンコーダシステムの構成を示す図である。
図4】ウエハテーブル上面の第1象限のコーナー部分に配置される第1ヘッド群に属する3つのヘッドの配置の一例を説明するための図である。
図5】ウエハステージを一部破砕して示す拡大図である。
図6】ウエハステージ上のエンコーダヘッドの配置を示す図である。
図7】ウエハテーブル上面の第1象限のコーナー部分に配置された第1ヘッド群の配置及び計測方向を示す図である。
図8図8(A)~図8(C)は、それぞれ、ウエハテーブル上面の第3象限のコーナー部分に配置された第3ヘッド群、ウエハテーブル上面の第2象限のコーナー部分に配置された第2ヘッド群、及びウエハテーブル上面の第4象限のコーナー部分に配置された第4ヘッド群の配置及び計測方向を示す図である。
図9図1の露光装置におけるステージ制御に関連する制御系の主要な構成を示すブロック図である。
図10】エンコーダヘッド及びスケール板の配置とエンコーダシステムの計測領域との関係を示す図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、それぞれ各ヘッド群に属するヘッドの他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図1図10に基づいて説明する。
【0016】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわち、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行なう。
【0017】
露光装置100は、照明系10、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハWが載置されるウエハステージWST1、WST2を含むウエハステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。
【0018】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系とを含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステム)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0019】
レチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図9参照)によって、XY平面内で微少駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面直交方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0020】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報(θz方向の位置(θz回転量)の情報を含む)は、図1に示される、移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)に測長ビームを照射するレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。なお、レチクルRの少なくとも3自由度方向の位置情報を計測するために、レチクル干渉計16の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されているエンコーダシステムを用いても良い。
【0021】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方(-Z側)に配置され、不図示のボディの一部を構成するメインフレーム(メトロロジーフレーム)に保持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、該鏡筒40に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを有している。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)からなる屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の、前記照明領域IARに共役な領域(露光領域)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWST1又はWST2との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0022】
なお、メインフレームは、従来用いられている門型、及び例えば米国特許出願公開第2008/0068568号明細書などに開示される吊り下げ支持型のいずれであっても良い。
【0023】
鏡筒40の-Z側端部の周囲には、例えば鏡筒40の下端面とほぼ同一面となる高さで、スケール板21がXY平面に平行に配置されている。スケール板21は、本実施形態では図2に示されるように、例えばL字状の4つの部分(部品)21、21、21、21から構成され、その中央に形成される例えば矩形の開口21a内に鏡筒40の-Z側端部が挿入されている。ここで、スケール板21のX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれa及びb、開口21aのX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれai及びbiである。
【0024】
スケール板21から+X方向に離間した位置には、図1に示されるように、スケール板21とほぼ同一平面上にスケール板22が、配置されている。スケール板22も、図3に示されるように、例えばL字状の4つの部分(部品)22、22、22、22から構成され、その中央に形成される例えば矩形の開口22a内に後述するアライメント系ALGの-Z側端部が挿入されている。スケール板22のX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれa及びb、開口22aのX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれai及びbiである。なお、本実施形態ではX軸及びY軸方向に関してスケール板21、22の幅、及び開口21a、22aの幅をそれぞれ同一としたが、必ずしも同一の幅とする必要はなく、X軸及びY軸方向の少なくとも一方に関してその幅を異ならせても良い。
【0025】
本実施形態では、スケール板21、22は、投影ユニットPU及びアライメント系ALGを支持する不図示のメインフレーム(メトロロジーフレーム)に吊り下げ支持されている。スケール板21、22の下面(-Z側の面)には、X軸を基準とする-45度方向(Y軸を基準とする-135度方向)を周期方向とする所定ピッチ、例えば1μmの格子と、X軸を基準とする45度方向(Y軸を基準とする-45度方向)を周期方向とする所定ピッチ、例えば1μmの格子とから成る反射型の2次元グレーティングRG(図2図3及び図5参照)が形成されている。ただし、2次元グレーティングRG及び後述するエンコーダヘッドの構成上、スケール板21、22を構成する部分21~21、22~22のそれぞれの外縁近傍には幅tの非有効領域が含まれる。スケール板21、22の2次元グレーティングRGは、それぞれ、少なくとも露光動作時及びアライメント(計測)時におけるウエハステージWST1、WST2の移動範囲をカバーしている。
【0026】
ウエハステージ装置50は、図1に示されるように、床面上に複数(例えば3つ又は4つ)の防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたステージベース12、ステージベース12上に配置されたウエハステージWST1、WST2、ウエハステージWST1、WST2を駆動するウエハステージ駆動系27(図1では一部のみ図示、図9参照)、及びウエハステージWST1、WST2の位置を計測する計測系等を備えている。計測系は、図9に示される、エンコーダシステム70、71及びウエハレーザ干渉計システム(以下、ウエハ干渉計システムと略称する)18等を備えている。なお、エンコーダシステム70、71及びウエハ干渉計システム18については、さらに後述する。ただし、本実施形態では、ウエハ干渉計システム18は必ずしも設けなくても良い。
【0027】
ステージベース12は、図1に示されるように、平板状の外形を有する部材からなり、その上面は平坦度が高く仕上げられ、ウエハステージWST1、WST2の移動の際のガイド面とされている。ステージベース12の内部には、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14aを含むコイルユニットが、収容されている。
【0028】
なお、ステージベース12とは別にこれを浮上支持するための別のベース部材を設けて、ステージベース12を、ウエハステージWST1、WST2の駆動力の反力の作用により、運動量保存則に従って移動するカウンターマス(反力キャンセラ)として機能させても良い。
【0029】
ウエハステージWST1は、図1に示されるように、ステージ本体91と、該ステージ本体91の上方に配置され、Z・チルト駆動機構32a(図1では不図示、図9参照)によって、ステージ本体91に対して非接触で支持されたウエハテーブルWTB1とを有している。同様に、ウエハステージWST2は、図1に示されるように、ステージ本体91と、該ステージ本体91の上方に配置され、Z・チルト駆動機構32b(図1では不図示、図9参照)によって、ステージ本体91に対して非接触で支持されたウエハテーブルWTB2とを有している。
【0030】
本実施形態では、ウエハステージWST2とウエハステージWST1とは、同様に構成されているので、以下では、ウエハステージWST1を代表的に取り上げて説明する。
【0031】
ウエハテーブルWTB1は、Z・チルト駆動機構32aによって、電磁力等の上向きの力(斥力)と、自重を含む下向きの力(引力)との釣り合いを3点で調整することで、非接触で支持されるとともに、少なくともZ軸方向、θx方向、及びθy方向の3自由度方向に微小駆動される。ステージ本体91の底部には、スライダ部91aが設けられている。スライダ部91aは、XY平面内でXY二次元配列された複数の磁石から成る磁石ユニットと、該磁石ユニットを収容する筐体と、該筐体の底面の周囲に設けられた複数のエアベアリングとを有している。磁石ユニットは、前述のコイルユニットとともに、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示される電磁力(ローレンツ力)駆動による平面モータ30を構成している。なお、平面モータ30としては、ローレンツ力駆動方式に限らず、可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。
【0032】
ウエハステージWST1は、上記複数のエアベアリングによってステージベース12上に所定のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、平面モータ30によって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。従って、ウエハテーブルWTB1(ウエハW)は、ステージベース12に対して、6自由度方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(以下、X,Y,Z,θx,θy,θz)と略記する)に駆動可能である。
【0033】
コイルユニットを構成する各コイル14aに供給される電流の大きさ及び方向が、主制御装置20によって制御される。本実施形態では、図9に示されるように、ウエハステージWST1及びWST2をそれぞれ駆動する共通の固定子(コイルユニット)を有する一対の平面モータ30と、ウエハステージWST1及びWST2がそれぞれ備えるZ・チルト駆動機構32a、32bとを含んで、ウエハステージ駆動系27が構成されている。なお、平面モータ30はムービングマグネット方式に限らず、ムービングコイル方式でも良い。また、平面モータ30として、磁気浮上方式の平面モータを用いても良い。この場合、前述のエアベアリングを設けなくても良い。また、平面モータ30によってウエハステージWST1を6自由度方向に駆動することとしても良い。また、ウエハテーブルWTB1を、X軸方向、Y軸方向、θz方向のうちの少なくとも一方向に微動可能としても良い。すなわち、ウエハステージWST1を粗微動ステージにより構成しても良い。
【0034】
ウエハテーブルWTB1上には、不図示のウエハホルダを介してウエハWが載置され、不図示のチャック機構によって例えば真空吸着(又は静電吸着)され、固定されている。図示は省略されているが、ウエハテーブルWTB1上には、後述する一対のレチクルアライメント系13A、13B及びアライメント系ALGのそれぞれにより検出される一対の第1基準マーク、及び第2基準マーク等の複数の基準マークが形成された1つ又は複数の基準マーク部材が設けられている。
【0035】
エンコーダシステム70、71は、それぞれ、投影光学系PL直下の領域を含む露光時移動領域とアライメント系ALG直下の領域を含む計測時移動領域とにおけるウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める(計測する)。ここで、エンコーダシステム70、71の構成等について詳述する。なお、露光時移動領域(第1移動領域)は、投影光学系PLを介してウエハの露光が行われる露光ステーション(第1領域)内で、露光動作中にウエハステージが移動される領域であり、その露光動作は、例えばウエハ上でパターンを転写すべき全てのショット領域の露光だけでなく、その露光のための準備動作(例えば、前述の基準マークの検出)なども含む。計測時移動領域(第2移動領域)は、アライメント系ALGによるウエハのアライメントマークの検出によってその位置情報の計測が行われる計測ステーション(第2領域)内で、計測動作中にウエハステージが移動される領域であり、その計測動作は、例えばウエハの複数のアライメントマークの検出だけでなく、アライメント系ALGによる基準マークの検出(さらには、Z軸方向に関するウエハの位置情報(段差情報)の計測)なども含む。
【0036】
ウエハテーブルWTB1、WTB2には、それぞれ図2及び図3の平面図に示されるように、上面の中心(ウエハWの中心に一致)を原点として、第1象限、第2象限、第3象限及び第4象限の各コーナーの部分のそれぞれに、第1エンコーダヘッド群61、第2エンコーダヘッド群61、第3エンコーダヘッド群61、及び第4エンコーダヘッド群61が配置されている。なお、以下では、エンコーダヘッド群をヘッド群と略記する。第1ヘッド群61は、ウエハテーブルWTB1、WTB2上面の+X側かつ+Y側のコーナー部分に配置された3つのエンコーダヘッド(以下、適宜、ヘッドと略称する)60、601a、601b、を含む。3つのヘッド60、601a、601bは、本実施形態では、直角三角形の各頂点位置に配置されている。より具体的には、ヘッド60は、ウエハテーブルWTB1、WTB2上面の+X側かつ+Y側の角(頂点)の近傍に設けられている。ヘッド601aは、図4に拡大して示されるように、ヘッド60の設置位置から-X方向にΔxだけずれた点に配置されている。また、ヘッド601bは、ヘッド60の設置位置から-Y方向にΔyだけずれた点に配置されている。
【0037】
図2(又は図3)に戻り、第2ヘッド群61は、ウエハテーブルWTB1、WTB2上面の-X側かつ+Y側のコーナー部分に配置された3つのヘッド60、602a、602bを含む。3つのヘッド60、602a、602bは、本実施形態では、ウエハテーブルWTB1、WTB2上に、その上面の中心(上述の原点)を通るY軸に平行な直線(センターライン)に関して、3つのヘッド60、601a、601bと対称となる配置で設けられている。
【0038】
第3ヘッド群61は、ウエハテーブルWTB1、WTB2上面の-X側かつ-Y側のコーナー部分に配置された3つのヘッド60、603a、603bを含む。3つのヘッド60、603a、603bは、本実施形態では、ウエハテーブルWTB1、WTB2上に、その上面の中心に関して、3つのヘッド60、601a、601bと対称(点対称)となる配置で設けられている。
【0039】
第4ヘッド群61は、ウエハテーブルWTB1、WTB2上面の+X側かつ-Y側のコーナー部分に配置された3つのヘッド60、604a、604bを含む。3つのヘッド60、604a、604bは、本実施形態では、ウエハテーブルWTB1、WTB2上に、その上面の中心を通るX軸に平行な直線(センターライン)に関して、3つのヘッド60、601a、601bと対称となる配置で設けられている。
【0040】
図2に示されるように、ヘッド60、60間のX軸方向の離間距離とヘッド60、60間のX軸方向の離間距離は互いに等しくAである。また、ヘッド60、60間のY軸方向の離間距離とヘッド60、60間のY軸方向の離間距離は互いに等しくBである。これらの離間距離A、Bは、スケール板21の開口21aの幅ai、biよりも大きい。厳密には、前述の非有効領域の幅tを考慮して、A≧ai+2t、B≧bi+2tである。ヘッド60~60、601a~604a、及び601b~604bのそれぞれは、図5にヘッド60を代表的に採り上げて示されるように、ウエハテーブルWTB1、WTB2に形成されたZ軸方向の所定深さの穴の内部にそれぞれ収容されている。
【0041】
第1ヘッド群61に属するヘッド60、601a、601bは、図6及び図7に示されるように、X軸を基準として135度(-45度)の方向及びZ軸方向を計測方向とする2次元ヘッドである。同様に、第3ヘッド群61に属するヘッド60、603a、603bは、図6及び図8(A)に示されるように、X軸を基準として135度(-45度)の方向及びZ軸方向を計測方向とする2次元ヘッドである。
【0042】
第2ヘッド群61に属するヘッド60、602a、602bは、図6及び図8(B)に示されるように、X軸を基準として45度(-135度)の方向及びZ軸方向を計測方向とする2次元ヘッドである。同様に、第4ヘッド群61に属するヘッド60、604a、604bは、図6及び図8(C)に示されるように、X軸を基準として45度(-135度)の方向及びZ軸方向を計測方向とする2次元ヘッドである。
【0043】
第1ヘッド群61に属するヘッド(60、601a、601b)、第2ヘッド群61に属するヘッド(60、602a、602b)、第3ヘッド群61に属するヘッド(60、603a、603b)、及び第4ヘッド群61に属するヘッド(60、604a、604b)は、図2及び図5から明らかなように、それぞれ、対向するスケール板21の部分21、21、21、21、又はスケール板22の部分22、22、22、22の表面に形成された2次元グレーティングRGに計測ビーム(図5中の符号MB参照)を照射し、2次元グレーティングRGからの反射・回折ビームを受光することにより、それぞれの計測方向についてのウエハテーブルWTB1、WTB2(ウエハステージWST1、WST2)の位置情報を計測する。ここで、ヘッド60、601a、601b、60、602a、602b、60、603a、603b、60、604a及び604bのそれぞれとして、例えば米国特許第7,561,280号明細書に開示される変位計測センサヘッドと同様の構成のセンサヘッドを用いることができる。
【0044】
上述のようにして構成されたヘッド60、601a、601b、60、602a、602b、60、603a、603b、60、604a及び604bのそれぞれでは、計測ビームの空気中での光路長が極短いため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。ただし、本実施形態では、光源及び光検出器は各ヘッドの外部、具体的には、ステージ本体91の内部(又は外部)に設けられ、光学系のみが各ヘッドの内部に設けられている。そして、光源及び光検出器と、光学系とは、不図示の光ファイバを介して光学的に接続されている。ウエハテーブルWTB1(又はWTB2)の位置決め精度を向上させるため、ステージ本体91とウエハテーブルWTB1(又はWTB2)との間で、レーザ光等を空中伝送しても良い。
【0045】
ウエハステージWST1、WST2が前述の露光時移動領域内に位置する際には、第1ヘッド群61に属するヘッド60、601a、601bは、スケール板21(の部分21)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21の表面(下面)に形成されたX軸を基準として135度の方向、すなわちX軸を基準として-45度の方向(以下、適宜、-45度方向又はα方向と称する)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の-45度方向(α方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、701a、701b、及び71、711a、711b図9参照)を構成する。
【0046】
ウエハステージWST1、WST2が前述の露光時移動領域内に位置する際には、第2ヘッド群61に属するヘッド60、602a、602bは、スケール板21(の部分21)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21の表面(下面)に形成されたX軸を基準として-135度の方向、すなわちX軸を基準として45度の方向(以下、適宜、45度方向又はβ方向と称する)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の45度方向(β方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、702a、702b、及び71、712a、712b図9参照)を構成する。
【0047】
ウエハステージWST1、WST2が前述の露光時移動領域内に位置する際には、第3ヘッド群61に属するヘッド60、603a、603bは、スケール板21(の部分21)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21の表面(下面)に形成された-45度方向(α方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の-45度方向(α方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、703a、703b、及び71、713a、713b図9参照)を構成する。
【0048】
ウエハステージWST1、WST2が前述の露光時移動領域内に位置する際には、第4ヘッド群61に属するヘッド60、604a、604bは、スケール板21(の部分21)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21の表面(下面)に形成された45度方向(β方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の45度方向(β方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、704a、704b、及び71、714a、714b図9参照)を構成する。
【0049】
また、ウエハステージWST1、WST2が前述の計測時移動領域内に位置する際には、第1ヘッド群61に属するヘッド60、601a、601bは、スケール板22(の部分22)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板22の表面(下面)に形成された-45度方向(α方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の-45度方向(α方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、701a、701b、及び71、711a、711b図9参照)を構成する。
【0050】
ウエハステージWST1、WST2が前述の計測時移動領域内に位置する際には、第2ヘッド群61に属するヘッド60、602a、602bは、スケール板22(の部分22)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板22の表面(下面)に形成された45度方向(β方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の45度方向(β方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、702a、702b、及び71、712a、712b図9参照)を構成する。
【0051】
ウエハステージWST1、WST2が前述の計測時移動領域内に位置する際には、第3ヘッド群61に属するヘッド60、603a、603bは、スケール板22(の部分22)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板22の表面(下面)に形成された-45度方向(α方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の-45度方向(α方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、703a、703b、及び71、713a、713b図9参照)を構成する。
【0052】
ウエハステージWST1、WST2が前述の計測時移動領域内に位置する際には、第4ヘッド群61に属するヘッド60、604a、604bは、スケール板22(の部分22)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板22の表面(下面)に形成された45度方向(β方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1、WTB2の45度方向(β方向)及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70、704a、704b、及び71、714a、714b図9参照)を構成する。
【0053】
上述の説明からわかるように、本実施形態では、スケール板21、22のどちらに計測ビーム(計測光)を照射するか、すなわち、ウエハステージWST1、WST2が前述の露光時移動領域、計測時移動領域のいずれの領域内にあるかにかかわらず、ウエハステージWST1上のヘッド60、601a、601b、60、602a、602b、60、603a、603b、60、604a及び604bは、計測ビーム(計測光)を照射しているスケール板とともに、それぞれ2次元エンコーダ70、701a、701b、70、702a、702b、70、703a、703b、70、704a、704bを構成し、ウエハステージWST2上のヘッド60、601a、601b、60、602a、602b、60、603a、603b、60、604a及び604bは、計測ビーム(計測光)を照射しているスケール板とともに、それぞれ2次元エンコーダ71、711a、711b、71、712a、712b、71、713a、713b、71、714a、714bを構成するものとしている。
【0054】
2次元エンコーダ(以下、適宜、エンコーダと略称する)70、701a、701b、70、702a、702b、70、703a、703b、70、704a、704b、71、711a、711b、71、712a、712b、71、713a、713b、71、714a、714bそれぞれの計測値は、主制御装置20(図9参照)に供給される。主制御装置20は、エンコーダ70~70又はエンコーダ71~71のうち、2次元グレーティングRGが形成されたスケール板21(を構成する部分21~21)の下面に対向する少なくとも3つのエンコーダ(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのエンコーダ)の計測値に基づいて、投影光学系PL直下の領域を含む露光時移動領域内でのウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める。
【0055】
主制御装置20は、ウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報に計測用いられた少なくとも3つのエンコーダのヘッドが属する少なくとも3群の全てのヘッドの計測値を用いて、例えば露光中を含み、露光時移動領域内をウエハテーブルWTB1、WTB2が移動中に、スケール板21の2次元グレーティングRGの変動に対応する露光時座標系のグリッド(グリッド誤差)のキャリブレーション(これについては、後述する)を実行する。
【0056】
同様に、主制御装置20は、エンコーダ70~70又はエンコーダ71~71のうち、2次元グレーティングRGが形成されたスケール板22(を構成する部分22~22)の下面に対向する少なくとも3つのエンコーダ(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのエンコーダ)の計測値に基づいて、アライメント系ALG直下の領域を含む計測時移動領域内でのウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報を求める。
【0057】
主制御装置20は、ウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報に計測用いられた少なくとも3つのエンコーダのヘッドが属する少なくとも3群の全てのヘッドの計測値を用いて、例えばアライメント中を含み、計測時移動領域内をウエハテーブルWTB1、WTB2が移動中に、スケール板22の2次元格子RGの変動に対応する計測時座標系のグリッド(グリッド誤差)のキャリブレーション(これについては、後述する)を実行することとしても良い。
【0058】
また、本実施形態の露光装置100では、ウエハステージWST1、WST2(ウエハテーブルWTB1、WTB2)の位置は、ウエハ干渉計システム18(図9参照)によって、エンコーダシステム70、71とは独立して、計測可能である。ウエハ干渉計システム18の計測値は、例えばエンコーダシステム70、71の出力異常時のバックアップ用などとして補助的に用いられる。なお、ウエハ干渉計システム18の詳細は省略する。
【0059】
アライメント系ALGは、図1に示されるように、投影光学系PLの+X側に所定間隔を隔てて配置されたオフアクシス方式のアライメント系である。本実施形態では、アライメント系ALGとして、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式のアライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系ALGからの撮像信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20(図9参照)に供給される。
【0060】
なお、アライメント系ALGとしては、FIA系に限らず、例えばコヒーレントな検出光をマークに照射し、そのマークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはマークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。アライメント系ALGとして、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される、複数の検出領域を有するアライメント系を採用しても良い。
【0061】
この他、本実施形態の露光装置100には、アライメント系ALGと一緒に計測ステーションに配置され、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図9参照)が設けられている。多点AF系AFによる計測動作はその少なくとも一部がアライメント系ALGによるマーク検出動作と並行して行われるとともに、前述のエンコーダシステムによってその計測動作中にウエハテーブルの位置情報が計測される。多点AF系AFの検出信号は、AF信号処理系(不図示)を介して主制御装置20に供給される(図9参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号と前述のエンコーダシステムの計測情報に基づいて、ウエハW表面のZ軸方向の位置情報(段差情報/凹凸情報)を検出し、露光動作ではその事前検出情報と前述のエンコーダシステムの計測情報(Z軸、θx及びθy方向の位置情報)とに基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、露光ステーション内で投影ユニットPUの近傍に多点AF系を設け、露光動作時にウエハ表面の位置情報(凹凸情報)を計測しつつウエハテーブルを駆動して、ウエハWのフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。
【0062】
露光装置100では、さらに、レチクルRの上方に、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに開示される露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)方式の一対のレチクルアライメント系13A、13B(図1では不図示、図9参照)が設けられている。レチクルアライメント系13A、13Bの検出信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20に供給される。なお、レチクルアライメント系に代えて、ウエハステージWST上に設けられた不図示の空間像計測器を用いてレチクルアライメントを行っても良い。
【0063】
図9には、露光装置100のステージ制御に関連する制御系が一部省略して、ブロック図にて示されている。この制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する。
【0064】
上述のようにして構成された露光装置100では、デバイスの製造に際し、主制御装置20により、ウエハがローディングされたウエハステージWST1、WST2の一方を計測ステーション(計測時移動領域)内で移動して、アライメント系ALG及び多点AF系によるウエハの計測動作が実行される。すなわち、計測時移動領域内でウエハステージWST1、WST2の一方に保持されたウエハWに対して、アライメント系ALGを用いたマーク検出、いわゆるウエハアライメント(例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)と、多点AF系を用いたウエハの面情報(段差/凹凸情報)の計測とが行われる。その際、エンコーダシステム70(エンコーダ70~70)又はエンコーダシステム71(エンコーダ71~71)により、ウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報が求められる(計測される)。なお、ウエハアライメントの開始前又は終了後に、主制御装置20により、アライメント系ALGを用いて、ウエハステージWST1、WST2の一方に設けられた基準マーク部材上の第2基準マークの位置が計測されている。そして、ウエハアライメントの結果として算出されたウエハW上の複数のショット領域の配列座標は、第2基準マークを基準とする配列座標に置き換えられている。
【0065】
ウエハアライメントなどの計測動作後、一方のウエハステージ(WST1又はWST2)は露光時移動領域に移動し、主制御装置20により、レチクルアライメント系13A、13B、ウエハテーブル(WTB1又はWTB2)上の基準マーク部材(不図示)などを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順で、レチクルパターンの投影中心と一対の第1基準マークの中心との位置関係を求めるレチクルアライメント等が行われる。
【0066】
そして、主制御装置20により、そのレチクルアライメントの結果とウエハアライメントの結果として得られた第2基準マークを基準とする複数のショット領域の配列座標とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われ、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、レチクルステージRSTとウエハステージWST1又はWST2との同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWST1又はWST2をショット領域の露光のための加速開始位置に移動させるショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すことで行われる。露光動作時には、エンコーダシステム70(エンコーダ70~70)又はエンコーダシステム71(エンコーダ71~71)により、一方のウエハテーブル(WTB1又はWTB2)の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報が求められる(計測される)。
【0067】
また、本実施形態の露光装置100は、2つのウエハステージWST1、WST2を備えている。そこで、一方のウエハステージ、例えばウエハステージWST1上にロードされたウエハに対してステップ・アンド・スキャン方式の露光を行うのと並行して、他方のウエハステージWST2上に載置されたウエハに対してウエハアライメントなどを行う、並行処理動作が行われる。
【0068】
本実施形態の露光装置100では、前述の通り、主制御装置20は、露光時移動領域内及び計測時移動領域内のいずれにおいても、エンコーダシステム70(図9参照)を用いて、ウエハテーブルWTB1の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める(計測する)。また、主制御装置20は、露光時移動領域内及び計測時移動領域内のいずれにおいても、エンコーダシステム71(図9参照)を用いて、ウエハテーブルWTB2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める(計測する)。
【0069】
ここで、エンコーダシステム70、71によるXY平面内の3自由度方向(X軸方向、Y軸方向及びθz方向(X,Y,θz)とも略記する))の位置計測の原理などについてさらに説明する。ここでは、エンコーダヘッド60~60又はエンコーダ70~70の計測値は、エンコーダヘッド60~60又はエンコーダ70~70のZ軸方向でない計測方向の計測値を意味する。
【0070】
本実施形態では、前述のようなエンコーダヘッド60~60及びスケール板21の構成及び配置を採用したことにより、露光時移動領域内ではエンコーダヘッド60~60のうちの少なくとも3つが、常時、スケール板21(の対応する部分21~21)に対向する。
【0071】
図10には、ウエハステージWST1上のエンコーダヘッド60~60及びスケール板21の各部分21~21の配置とエンコーダシステム70の計測領域A~Aとの関係が示されている。図10では、ウエハテーブルWTB1の6自由度方向の位置情報の計測に用いられるヘッド60、60、60、及び60のみが図示されている。なお、ウエハステージWST2はウエハステージWST1と同様に構成されているので、ここではウエハステージWST1についてのみ説明する。
【0072】
ウエハテーブルWTB1の中心(ウエハの中心に一致)が、露光時移動領域内で、かつ露光中心(露光領域IAの中心)Pに対して+X側かつ+Y側の領域(露光中心Pを原点とする第1象限内の領域(ただし、領域Aを除く))である第1領域A内に位置する場合、ウエハステージWST1上のヘッド60、60、60がそれぞれスケール板21の部分21、21、21に対向する。第1領域A内では、ヘッド60、60、60(エンコーダ70,70,70)から有効な計測値が主制御装置20に送られる。なお、以下の説明中のウエハステージWST1、WST2の位置は、そのウエハステージの中心(ウエハテーブルの中心及びウエハの中心にそれぞれ一致)の位置を意味する。すなわち、ウエハステージWST1、WST2の中心の位置と記述する代わりに、ウエハステージWST1、WST2の位置と記述する。
【0073】
同様に、ウエハステージWST1が、露光時移動領域内で、かつ露光中心Pに対して-X側かつ+Y側の領域(露光中心Pを原点とする第2象限内の領域(ただし、領域Aを除く))である第2領域A内に位置する場合、ヘッド60、60、60がそれぞれスケール板21の部分21、21、21に対向する。ウエハステージWST1が、露光時移動領域内で、かつ露光中心Pに対して-X側かつ-Y側の領域(露光中心Pを原点とする第3象限内の領域(ただし、領域Aを除く))である第3領域A内に位置する場合、ヘッド60、60、60がそれぞれスケール板21の部分21、21、21に対向する。ウエハステージWST1が、露光時移動領域内で、かつ露光中心Pに対して+X側かつ-Y側の領域(露光中心Pを原点とする第4象限内の領域(ただし、領域Aを除く))である第4領域A内に位置する場合、ヘッド60、60、60がそれぞれスケール板21の部分21、21、21に対向する。
【0074】
本実施形態では、図10に示されるように、ウエハステージWST1が、露光中心Pを中心とする十字状の領域A(露光中心Pを通るY軸方向を長手方向とする幅A-ai-2tの領域とX軸方向を長手方向とする幅B-bi-2tの領域とを含む領域(以下、第0領域と呼ぶ))内に位置する場合、ウエハステージWST1上の4つのヘッド60~60がスケール板21(対応する部分21~21)に対向する。従って、第0領域A内では、ヘッド60~60(エンコーダ70~70)から有効な計測値が主制御装置20に送られる。なお、本実施形態では上記条件(A≧ai+2t、B≧bi+2t)に加えて、パターンが形成されるウエハ上のショット領域のサイズ(W、L)を考慮して、条件A≧ai+W+2t、B≧bi+L+2tを加えても良い。ここで、W、Lは、それぞれ、ショット領域のX軸方向の幅、Y軸方向の長さである。W、Lは、それぞれ、走査露光区間の距離、X軸方向へのステッピングの距離に等しい。
【0075】
主制御装置20は、ヘッド60~60(エンコーダ70~70)の計測値に基づいて、ウエハステージWST1のXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。ここで、エンコーダ70~70の計測値(それぞれC~Cと表記する)は、ウエハステージWST1の位置(X,Y,θz)に対して、次式(1)~(4)のように依存する。
【0076】
=-(cosθz+sinθz)X/√2
+(cosθz-sinθz)Y/√2+√2psinθz…(1)
=-(cosθz-sinθz)X/√2
-(cosθz+sinθz)Y/√2+√2psinθz…(2)
= (cosθz+sinθz)X/√2
-(cosθz-sinθz)Y/√2+√2psinθz…(3)
= (cosθz-sinθz)X/√2
+(cosθz+sinθz)Y/√2+√2psinθz…(4)
ただし、pは、図6に示されるように、ウエハテーブルWTB1(WTB2)の中心からのヘッド60~60それぞれのX軸及びY軸方向に関する距離である。
【0077】
主制御装置20は、ウエハステージWST1の位置する領域A~Aに応じてスケール板21に対向する3つのヘッド(エンコーダ)を特定し、それらの計測値が従う式を上式(1)~(4)から選択して連立方程式を組み、3つのヘッド(エンコーダ)の計測値を用いて連立方程式を解くことにより、ウエハステージWST1のXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。例えば、ウエハステージWST1が第1領域A内に位置する場合、主制御装置20は、ヘッド60、60、60(エンコーダ70,70,70)の計測値が従う式(1)、(2)、及び(4)から連立方程式を組み、式(1)、(2)、及び(4)それぞれの左辺に各ヘッドの計測値を代入して連立方程式を解く。
【0078】
なお、ウエハステージWST1が第0領域A内に位置する場合、主制御装置20は、ヘッド60~60(エンコーダ70~70)から任意の3つを選択すれば良い。例えば、ウエハステージWST1が第1領域から第0領域に移動した後では、第1領域に対応するヘッド60、60、60(エンコーダ70,70,70)を選択すると良い。
【0079】
主制御装置20は、上の算出結果(X,Y,θz)に基づいて、露光時移動領域内でウエハステージWST1を駆動(位置制御)する。
【0080】
ウエハステージWST1が、計測時移動領域内に位置する場合、主制御装置20は、エンコーダシステム70(エンコーダ70~70)を用いて3自由度方向(X,Y,θz)の位置情報を計測する。ここで、計測原理等は、露光中心Pがアライメント系ALGの検出中心に、スケール板21(の部分21~21)がスケール板22(の部分22~22)に置き換わる以外、ウエハステージWST1が先の露光時移動領域内に位置する場合と同様である。
【0081】
さらに、主制御装置20は、ウエハステージWST1、WST2の位置に応じて、スケール板21、22に対向するヘッド60~60のうちの3つを、少なくとも1つが異なる3つに切り換えて使用する。ここで、エンコーダヘッドを切り換える際には、例えば米国特許出願公開第2008/0094592号明細書などに開示されているように、ウエハステージの位置の計測値の連続性を保証するためのつなぎ処理が行われる。また、本実施形態では、例えば米国特許出願公開第2011/0053061号明細書に開示されている方法と同様の方法で、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時におけるヘッド60~60の切り換えとつなぎ処理が行われる。
【0082】
次に、エンコーダシステム70、71による3自由度方向(Z,θx,θy)の位置計測の原理などについてさらに説明する。ここでは、エンコーダヘッド60~60又はエンコーダ70~70の計測値は、エンコーダヘッド60~60又はエンコーダ70~70のZ軸方向の計測値を意味する。
【0083】
本実施形態では、前述のようなエンコーダヘッド60~60及びスケール板21の構成及び配置を採用したことにより、露光時移動領域内では、ウエハステージWST1(WST2)の位置する領域A~Aに応じて、エンコーダヘッド60~60のうちの少なくとも3つがスケール板21(の対応する部分21~21)に対向する。スケール板21に対向するヘッド(エンコーダ)から有効な計測値が主制御装置20に送られる。
【0084】
主制御装置20は、エンコーダ70~70の計測値に基づいて、ウエハステージWST1(WST2)の位置(Z,θx,θy)を算出する。ここで、エンコーダ70~70のZ軸方向に関する計測値(前述のZ軸方向ではない計測方向、すなわちXY平面内の一軸方向についての計測値C~Cと区別して、それぞれ、D~Dと表記する)は、ウエハステージWST1(WST2)の位置(Z,θx,θy)に対して、次式(5)~(8)のように依存する。
【0085】
=-ptanθy+ptanθx+Z …(5)
= ptanθy+ptanθx+Z …(6)
= ptanθy-ptanθx+Z …(7)
=-ptanθy-ptanθx+Z …(8)
ただし、pは、ウエハテーブルWTB1(WTB2)の中心からのヘッド60~60のX軸及びY軸方向に関する距離(図6参照)である。
【0086】
主制御装置20は、ウエハステージWST1(WST2)の位置する領域A~Aに応じて3つのヘッド(エンコーダ)の計測値の従う式を上式(5)~(8)から選択し、選択した3つの式から構成される連立方程式に3つのヘッド(エンコーダ)の計測値を代入して解くことにより、ウエハステージWST1(WST2)の位置(Z,θx,θy)を算出する。例えば、ウエハステージWST1(又はWST2)が第1領域A内に位置する場合、主制御装置20は、ヘッド60、60、60(エンコーダ70,70,70)(又はヘッド60,60,60(エンコーダ71,71,71)の計測値が従う式(5)、(6)、及び(8)から連立方程式を組み、式(5)、(6)、及び(8)それぞれの左辺に計測値を代入して解く。
【0087】
なお、ウエハステージWST1(又はWST2)が第0領域A内に位置する場合、ヘッド60~60(エンコーダ70~70)(又はヘッド60~60(エンコーダ71~71))から任意の3つを選択し、選択した3つのヘッドの計測値が従う式から組まれる連立方程式を用いれば良い。
【0088】
主制御装置20は、上の算出結果(Z,θx,θy)と前述の段差情報(フォーカスマッピングデータ)とに基づいて、露光時移動領域内でウエハステージWST1(又はWST2)をフォーカス・レベリング制御する。
【0089】
ウエハステージWST1(又はWST2)が、計測時移動領域内に位置する場合、主制御装置20は、エンコーダシステム70又は71を用いて3自由度方向(Z,θx,θy)の位置情報を計測する。ここで、計測原理等は、露光中心がアライメント系ALGの検出中心に、スケール板21(の部分21~21)がスケール板22(の部分22~22)に置き換わる以外、ウエハステージWST1が先の露光時移動領域内に位置する場合と同様である。主制御装置20は、エンコーダシステム70又は71の計測値に基づいて、ウエハステージWST1又はWST2をフォーカス・レベリング制御する。なお、計測時移動領域(計測ステーション)では必ずしもフォーカス・レベリングを行わなくても良い。すなわち、マーク位置及び段差情報(フォーカスマッピングデータ)の取得を行っておき、その段差情報から段差情報取得時(計測時)のウエハステージのZ・チルト分を差し引くことで、ウエハステージの基準面、例えば上面を基準とする段差情報得て置く。そして、露光時には、この段差情報とウエハステージ(の基準面)の3自由度方向(Z,θx,θy)の位置情報とに基づいて、フォーカス・レベリングが可能になるからである。
【0090】
さらに、主制御装置20は、ウエハステージWST1、WST2の位置に応じて、スケール板21、22に対向するヘッド60~60のうちの3つを、少なくとも1つが異なる3つに切り換えて使用する。ここで、エンコーダヘッドを切り換える際には、ウエハステージWST1(又はWST2)の位置の計測値の連続性を保証するため、前述と同様のつなぎ処理が行われる。
【0091】
次に、本実施形態に係る露光装置100で、上述した一連のシーケンスの実行中に実行される、露光時座標系のグリッド変動量の補正(較正)について、説明する。ここでは、ウエハステージWST1が、露光時移動領域を移動する場合について説明する。
【0092】
このグリッド変動量の補正(較正)は、主制御装置20により、前述したようにしてウエハテーブルWTB1の6自由度方向の位置制御が、エンコーダ70~70の中から選択された3つのエンコーダの計測値に基づいて行われるのと並行して、実行される。
【0093】
主制御装置20は、例えば露光中などに、例えば第1ヘッド群61に属するヘッド60、601a、601bが、スケール板21の対応する部分21に対向した状態で、ウエハステージWST1がX軸方向に関してΔx移動する度に、例えばヘッド60、601a、(エンコーダ70、701a)のα方向の計測値を取り込み、次式(9)で表される差分データ、すなわちα方向のグリッド(αグリッド)のX位置に応じたずれΔα/δxを、順次積算する。これにより、離散的なαグリッド変動量のX軸方向に関する分布を求めることができる。
Δα/δx=ζ(x-Δx,y)-ζ(x,y)……(9)
【0094】
また、主制御装置20は、例えば露光中などに、例えば第1ヘッド群61に属するヘッド60、601a、601bが、スケール板21の対応する部分21に対向した状態で、ウエハテーブルWTB1がY軸方向に関してΔy移動する度に、例えばヘッド60、601b、(エンコーダ70、701b)のα方向の計測値を取り込み、次式(10)で表される差分データ、すなわちαグリッドのY位置に応じたずれΔα/δyを、順次積算する。これにより、離散的なαグリッドの変動量のY軸方向に関する分布を求めることができる。
Δα/δy=ζ(x,y-Δy)-ζ(x,y)……(10)
【0095】
主制御装置20は、上述した離散的なαグリッド変動量のX軸方向に関する分布、及び離散的なαグリッドの変動量のY軸方向に関する分布から、関数ζ(x,y)で表される、2次元グレーティングRGの第1象限部分(スケール板21の第1部分21)に発生したドリフト(αグリッドの変動)を補正するためのα補正マップを得ることができる。
【0096】
主制御装置20は、例えば露光中などに、例えば第3ヘッド群61に属するヘッド60、603a、603bが、スケール板21の対応する部分21に対向した状態で、ウエハステージWST1がX軸方向に関してΔx移動する度に、例えばヘッド60、603a(エンコーダ70、703a)のα方向の計測値を、取り込み、式(9)と同様の差分データを、順次積算するとともに、ウエハステージWST1がY軸方向に関してΔy移動する度に、例えばヘッド60、603b(70、703b)のα方向の計測値を、取り込み、式(10)と同様の差分データを、順次積算する。そして、主制御装置20は、上述した差分データの積算から得られた離散的なαグリッド変動量のX軸方向に関する分布、及び離散的なαグリッドの変動量のY軸方向に関する分布から、関数(ζ(x,y)とする)で表される、2次元グレーティングRGの第3象限部分(スケール板21の第3部分21)に発生したドリフト(αグリッドの変動)を補正するためのα補正マップを得る。
【0097】
主制御装置20は、例えば露光中などに、例えば第2ヘッド群61に属するヘッド60、602a、602bが、スケール板21の対応する部分21に対向している状態で、ウエハステージWST1がX軸方向に関してΔx移動する度に、例えばヘッド60、602a(エンコーダ70、702a)のβ方向の計測値を、取り込み、次式(11)で表される差分データを、順次積算するとともに、ウエハステージWST1がY軸方向に関してΔy移動する度に、例えばヘッド60、602b(70、702b)のβ方向の計測値を、取り込み、次式(12)で表される差分データを、順次積算する。そして、主制御装置20は、上述の差分データの積算から得られた離散的なβグリッド変動量のX軸方向に関する分布、及び離散的なβグリッドの変動量のY軸方向に関する分布から、関数ζ(x,y)で表される、2次元グレーティングRGの第2象限部分(スケール板21の第2部分21)に発生したドリフト(βグリッドの変動)を補正するためのβ補正マップを得る。
Δβ/δx=ζ(x-Δx,y)-ζ(x,y)……(11)
Δβ/δy=ζ(x,y-Δy)-ζ(x,y)……(12)
【0098】
主制御装置20は、例えば露光中などに、例えば第4ヘッド群61に属するヘッド60、604a、604bが、スケール板21の対応する部分21に対向している状態で、ウエハステージWST1がX軸方向に関してΔx移動する度に、例えばヘッド60、604a(エンコーダ70、704a)のβ方向計測値を、取り込み、式(11)と同様の差分データを、順次積算するとともに、ウエハステージWST1がY軸方向に関してΔy移動する度に、例えばヘッド60、604b(70、704b)のβ方向の計測値を、取り込み、式(12)と同様の差分データを、順次積算する。そして、主制御装置20は、上述の差分データの積算から得られた離散的なβグリッド変動量のX軸方向に関する分布、及び離散的なβグリッドの変動量のY軸方向に関する分布から、関数(ζ(x,y)とする)で表される、2次元グレーティングRGの第4象限部分(スケール板21の第4部分21)に発生したドリフト(βグリッドの変動)を補正するためのβ補正マップを得る。
【0099】
主制御装置20は、例えば露光中などに、上述したα補正マップ及びβ補正マップと同様にして、Z補正マップも作成する。
【0100】
すなわち、主制御装置20は、例えば露光中などに、例えば第1ヘッド群61に属するヘッド60、601a、601bが、スケール板21の対応する部分21に対向している状態で、ウエハステージWST1がX軸方向に関してΔx移動する度に、例えばヘッド60、601a(エンコーダ70、701a)のZ軸方向の計測値を、取り込み、次式(13)で表される差分データを、順次積算するとともに、ウエハステージWST1がY軸方向に関してΔy移動する度に、例えばヘッド60、601b(70、701b)のZ軸方向の計測値を、取り込み、次式(14)で表される差分データを、順次積算する。そして、主制御装置20は、上述の差分データの積算から得られた離散的なZグリッド変動量のX軸方向に関する分布、及び離散的なZグリッドの変動量のY軸方向に関する分布から、関数η(x,y)で表される、2次元グレーティングRGの第1象限部分(スケール板21の第1部分21)に発生したZグリッドの変動(ドリフト)を補正するためのZ補正マップを得る。
ΔZ/δx=η(x-Δx,y)-η(x,y)……(13)
ΔZ/δy=η(x,y-Δy)-η(x,y)……(14)
【0101】
主制御装置20は、例えば露光中などに、第2、第3及び第4ヘッド群に属するヘッドについても、スケール板21に対向している状態で、ウエハステージWST1がΔx移動する度、Δy移動する度に上記と同様の差分データの取り込み及び積算を行い、ドリフト形状(Zグリッドの変動)を表す関数(それぞれη(x,y)、η(x,y)、η(x,y)とする)を復元するとともに、Z補正マップを得る。
【0102】
主制御装置20は、上記のウエハテーブルWTBの6自由度方向の位置計測と並行して、上記の差分計測を繰り返し行なって、エンコーダシステム70の座標系のグリッド誤差の更新を行う。以下では、このグリッド誤差の更新を、エンコーダシステム70の座標系のリフレッシュとも称する。
【0103】
前述の如く、主制御装置20は、例えば露光時には、ウエハステージWST1の位置に応じて、スケール板21に対向するヘッド60~60のうちの3つを、少なくとも1つが異なる3つに切り換えて使用する。すなわち、主制御装置20は、ヘッド60~60のうちの3つ(エンコーダ70~70のうちの3つ)により求められたウエハテーブルWTB1の位置情報に基づいてウエハテーブルWTB1を駆動するとともにウエハテーブルWTB1の位置に応じてウエハテーブルWTB1の位置情報の算出に用いられる3つのヘッドの少なくとも1つを、ウエハテーブルWTB1の位置情報の算出に用いられていない別のヘッド群に属するヘッドに切り換える。主制御装置20は、この切り換えに伴って、スケール板21の2次元グレーティングRGの上述したグリッド誤差の較正のための、前記差分のデータの取り込みの対象を、別のヘッド群に切り換える。本実施形態では、ウエハテーブルWTBの位置計測に用いられるヘッドの切り換えと同時に、前述した差分計測に用いられる冗長ヘッドの切り換えが行われる。
【0104】
主制御装置20は、ウエハステージWST2が、露光時を含み、露光時移動領域を移動中には、エンコーダシステム71の座標系のリフレッシュを、上記と同様にして行う。
【0105】
ところで、露光中は、ショットマップに従ってウエハステージWST1、WST2の移動が行われ、限られたエリアしかウエハステージWST1、WST2が通過しないので、取得できる差分データが少ない。そこで、主制御装置20は、上述したエンコーダシステム70、71の座標系のリフレッシュに際し、前述のように差分データの積算によりグリッド変動の低次成分である一次成分、例えばスケーリング(α、βグリッド)、及び曲がり(Zグリッド)のみを、リアルタイムで補正するようにしている。
【0106】
そして、差分データの積算値を監視し、低次成分(一次成分)の変動量(補正量)が予め定めた第1の量より大きくなった場合に、より詳細な補正を行うこととしている。ここで、より詳細な補正とは、例えば、ウエハステージWST1、WST2を、それらの有効ストロークのほぼ全域で移動させて、前述の差分データの取得を行うことで、より多くの差分データを取得し、その多くの差分データに基づき、スケール板21の2次元グレーティングRGのより広い範囲に渡って行われる、前述と同様のグリッド変動量(誤差)の補正、又は、次に説明するのと同様の手法で行われる、少なくとも2次成分まで対象としたα、β及びZグリッドの変動量の補正を意味する。
【0107】
低次成分(1次成分)の変動量(補正量)が第1の量より大きい予め定めた第2の量より大きい場合には、主制御装置20は、より高次の成分まで対象とした補正を行う必要がある旨を、例えば表示等によりオペレータに通知する。この通知に応答して、オペレータからより高次の補正が指示された場合、主制御装置20は、設計値通りの配置で複数の基準マークが形成された基準ウエハ(その表面にレジストが塗布されている)をウエハテーブルWTB1又はWTB2上に搭載し、複数のマークが所定の位置関係で配置された計測用レチクルをレチクルステージRST上に搭載する。そして、例えばステップ・アンド・リピート方式(又はステップ・アンド・スキャン方式)で露光を行う。露光終了後、主制御装置20は、その露光後の基準ウエハを、例えば露光装置100にインラインにて接続されているコータ・デベロッパに搬送するとともに、現像を指示する。そして、コータ・デベロッパにより、基準ウエハの現像が終了した旨の通知を受け取ると、主制御装置20は、現像後の基準ウエハを再びウエハテーブルWTB1又はWTB2上に搭載し、その基準ウエハ上に形成されたレジスト像から成るマークの対応する基準マークに対する位置を、例えばアライメント系ALGで順次検出する。そして、その検出結果に基づいて、より高次の成分まで対象としたα、β及びZグリッドの変動量の補正を行う。
【0108】
この他、例えばオペレータは、前述した低次成分(1次成分)の変動量(補正量)に閾値(例えば、第2の量より大きい予め定めた第3の量)を設定しておき、主制御装置20が、低次成分の変動量が閾値を超えるか否かを監視し、変動量(補正量)が閾値を超えた場合に、グリッドのメンテナンスが必要である旨を、オペレータに通知するように設定しておいても良い。すなわち、前述した低次成分の変動量(補正量)をグリッドのメンテナンス要否を判断するためのモニター指標として活用しても良い。
【0109】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、例えば、露光中など露光時移動領域にウエハステージWST1(又はWST2)があるとき、主制御装置20により、エンコーダシステム70のエンコーダ70~70のうちの3つ(又はエンコーダシステム71のエンコーダ71~71のうちの3つ)にて求められた6自由度方向の位置情報に基づいてウエハテーブルWTB1又はWTB2(ウエハステージWST1又はWST2)が駆動される。そして、このウエハテーブルWTB1又はWTB2(ウエハステージWST1又はWST2)の駆動と並行して、主制御装置20により、第1ヘッド群61、第2ヘッド群61、第3ヘッド群61及び第4ヘッド群61のうち、スケール板21に対向しているヘッド群では、それぞれに属する1つの基準となる1つのヘッド60と2つのヘッド60ia及び60ib(i=1~4)それぞれとの計測方向(α方向及びZ方向、又はβ方向及びZ方向)に関する計測値の差分のデータが、取り込まれ、その取り込まれた差分のデータに基づいて、スケール板21の下面に形成された2次元グレーティングRGの4つの部分21~21にそれぞれ対応する部分について、計測方向(α方向及びZ方向、又はβ方向及びZ方向)に関するグリッドの変動量を監視することが可能になる。また、主制御装置20により、そのグリッド誤差(特に低次の成分)の較正(補正)、すなわちエンコーダシステム70、71の座標系のリフレッシュがリアルタイムで行われる。従って、露光装置100によると、スケール板21の下面に形成された2次元グレーティングRGを計測面とするエンコーダシステム70又は71により、ウエハステージWST1又はWST2の露光時移動領域内での6自由度方向の位置を、長期に渡って精度良く計測するとともに制御することができ、ひいてはレチクルRのパターンをウエハW上の複数のショット領域に精度良く転写することが可能になる。
【0110】
本実施形態に係る露光装置100では、主制御装置20により、エンコーダシステム70、71の座標系のリフレッシュが露光の際などにリアルタイムで実行される。このため、仮に450ミリウエハに対応するため、ウエハステージWST1、WST2とともにスケール板21(2次元グレーティングRG)がさらに大型化した場合であってもウエハテーブルWTB1又はWTB2の露光時移動領域内での6自由度方向の位置を、長期に渡って精度良く計測することが可能になる。
【0111】
また、露光装置100では、主制御装置20が、ウエハアライメント計測(アライメント系ALGによるマーク検出)及びこれと並行して行われるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(段差情報/凹凸情報)の検出時など計測時移動領域内でウエハステージWST1又はWST2が移動中にも、エンコーダシステム70、71の座標系のリフレッシュをリアルタイムで実行することができる。かかる場合には、EGA等のウエハアライメントの精度及び走査露光中のウエハWのフォーカス・レベリング制御精度を、長期に渡って高精度で維持することが可能になる。
【0112】
さらに、本実施形態に係る露光装置100では、ヘッド60~60の配置間隔A、Bは、それぞれ、スケール板21、22の開口の幅ai、biとショット領域のサイズW、Lとの和よりも大きく定められている。これにより、ウエハを露光するためにウエハを保持するウエハステージWST1、WST2を走査(等速)駆動する間に、ヘッド60~60を切り換えることなしにウエハステージWST1、WST2の位置情報を計測することができる。従って、精度良くパターンをウエハ上に形成することができ、特に第2層目(セカンドレイヤ)以後の露光に際しては重ね合わせ精度を高精度に維持することが可能となる。
【0113】
なお、上記実施形態中の説明では、ウエハテーブル上面の4隅に設けられたウエハテーブルの位置計測用の4つのヘッド60、60、60、60が、上述の配置条件を満足するとしたが、各ヘッド群61(i=1~4)に属するヘッド60ia、60ib及び60の配置(図2参照)から明らかなように、ヘッド601a、602a、603a、604a、及びヘッド601b、602b、603b、604bも上述と同様の配置条件を満足している。
【0114】
なお、上記実施形態では、スケール板21、22が、それぞれ4つの部分から構成され、これに対応してウエハステージWST1、WST2上に4つのヘッド群61~61が設けられる場合について説明したが、これに限らず、スケール板21、22は、単一の部材によって構成されていても良い。この場合、2次元グレーティングRGは、大面積の単一の2次元グレーティングであっても良い。かかる場合において、ウエハステージWST1、WST2の移動ストロークが十分大きい場合には、ヘッド60とともに、ウエハステージWST1、WST2の所定自由度、例えば6自由度の位置計測が可能となる2つのヘッド(例えばヘッド60~60のうちの2つ)に加え、第1ヘッド群61に属する2つの冗長ヘッド601a、601bのみを設けても良い。
【0115】
また、上記実施形態で説明した各ヘッド群に属するヘッドの配置は、一例に過ぎない。例えば、第1ヘッド群に属するヘッドの配置として、例えば図11(A)に示されるような配置を採用しても良い。この場合、座標系のリフレッシュに際し、前述のドリフト形状(α、β、Zグリッドの変動)を表す関数として、x、yの関数ではなくα、βの関数を仮定することで、上記実施形態と同様にして座標系のリフレッシュを行うことができる。
【0116】
あるいは、第1ヘッド群61に属するヘッドの配置として、例えば図11(B)に示されるような配置を採用しても良い。この場合、ヘッド60、601a、601bの計測方向が、X軸方向及びZ軸方向の2方向となっている。従って、第1ヘッド群61に属するヘッドが対向するスケール板21の第1部分には、少なくともX軸方向を周期方向とする一次元又は2次元のグレーティングが設けられる。第1ヘッド群に属するヘッドの配置として、図11(A)又は図11(B)に示される配置が採用される場合、第2、第3、第4ヘッド群にそれぞれ属するヘッドの配置として、図11(A)又は図11(B)に示される配置と、ウエハテーブル中心に関して点対称又は中心を通るX軸又はY軸に平行な直線に関して線対称な配置(ただし、第2、第3、第4ヘッド群のうち少なくとも1つの群に属するヘッドのXY平面内の計測方向は、第1ヘッド群に属するヘッドの計測方向と直交する)が採用される。
【0117】
なお、これまでは、各ヘッド群にそれぞれ3つのヘッドが属する場合について説明したが、これに限らず、各ヘッド群にそれぞれ2つのヘッドが属していても良い。例えば、2つのヘッドの計測方向に、X軸方向及びY軸方向少なくとも1方向が含まれる場合には、これら2つのヘッドは、例えば図11(B)中のヘッド601a、601bと同様に、X軸及びY軸に交差する方向に離れて配置されていることが望ましい。また、2つのヘッドの計測方向に前述のα方向及びβ方向の少なくとも1方向が含まれる場合には、これら2つのヘッドは、例えば図11(A)中のヘッド601a、601bと同様に、α方向及びβ方向に交差するX軸方向(又はY軸方向)に離れて配置されていることが望ましい。
【0118】
あるいは、各ヘッド群にそれぞれ4つ以上のヘッドが属していても良い。この場合も、各ヘッド群に属する全てのヘッドが同一直線上に位置しないようなヘッドの配置が採用される。この場合、前述の露光時座標系のリフレッシュに際し、各ヘッド群に属する、ウエハテーブルの6自由度方向の位置情報の計測に用いられる1つの基準となるヘッドと残りのヘッドそれぞれとの共通の計測方向に関する計測値の差分のデータを取得しても良いし、各ヘッド群に属する全ての異なるヘッド同士の前記共通の計測方向に関する差分のデータを取得しても良い。要は、各ヘッド群に属する、前記位置情報の計測に用いられる1つの基準となるヘッドと残りのヘッドのうち少なくとも2つのヘッドそれぞれとの前記共通の計測方向に関する計測値の差分のデータを含む各ヘッド群に属する異なるヘッド同士の前記共通の計測方向に関する差分のデータを取得し、その取得した差分のデータに基づいて、スケール板21(2次元グレーティングRG)の共通の計測方向に関するグリッドの変動量を監視し、グリッド誤差を較正できれば良い。
【0119】
各ヘッド群にそれぞれ4つ以上のヘッドが属している場合、座標系のリフレッシュ時に、X軸又はY軸方向に関して、一度により多くの差分データを得ることができるので、2次以上の所定次数の成分までも対象としたグリッド変動量(グリッド誤差)の較正を、リアルタイムに行うこととしても良い。そして、この場合、前述した、「より詳細なグリッド誤差の補正」の一態様として、その所定次数より高次の成分までも対象としたグリッド変動量(グリッド誤差)の較正を、例えば前述と同様に基準ウエハ等を用いて行うようにしても良い。
【0120】
なお、上記実施形態では、各ヘッド群にそれぞれ属する3つのヘッドのうち、1つの基準となるヘッドの計測値のみが、ウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向の位置の算出に用いられる場合について説明したが、これに限らず、各ヘッド群にそれぞれ属する3つのヘッドのうちの少なくとも2つの計測値を、ウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向の位置の算出に用いることとしても良い。例えば、各ヘッド群にそれぞれ属する3つのヘッドの計測値の平均をウエハテーブルWTB1、WTB2の6自由度方向の位置の算出に用いることとしても良い。かかる場合には、平均化効果により、より精度の高い位置計測が可能になる。
【0121】
また、上記実施形態では、各ヘッドとして、XY平面内の一方向及びZ軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッドが用いられ、かつその2方向について、露光時座標系のグリッド誤差の較正(補正)が行われる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、XY平面内の一方向及びZ軸方向のうちの1つの方向に関して露光時座標系のグリッド誤差の較正(補正)が行われることとしても良い。また、各ヘッドとして、XY平面内の直交2方向及びZ軸方向を計測方向とする3次元ヘッドを用いても良い。あるいは、例えばヘッド60ia、60ibとして、2次元ヘッド又は3次元ヘッドから成るヘッド60の2つ又は3つの計測方向のうちの少なくとも1つの計測方向を、共通の計測方向とする、1次元ヘッド又は2次元ヘッドを用いても良い。XY平面内の1軸方向を計測方向とする1次元ヘッドを用いる場合、これと組み合わせて、Z軸方向を計測方向とする非エンコーダ方式の面位置センサを採用しても良い。
【0122】
なお、上記実施形態では、スケール板21、22の部分21~21、22~22のそれぞれの下面に2次元グレーティングRGが形成された場合について例示したが、これに限らず、対応するエンコーダヘッド60~60の計測方向(XY平面内での一軸方向)のみを周期方向とする1次元グレーティングが形成された場合においても、上記実施形態は適用可能である。
【0123】
また、上記実施形態では、ウエハステージWST1、WST2上にヘッドが搭載され、ウエハステージWST1、WST2の外部にスケール板21、22(2次元グレーティングRG)が配置されたエンコーダシステムを備える露光装置について説明したが、これに限らず、ウエハステージの外部、例えば上方(又は下方)に複数のヘッドが設けられ、これに対向してウエハステージの上面(又は下面)にグレーティングなどの計測面が設けられたタイプのエンコーダシステムを備える露光装置、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される露光装置などにも適用することが可能である。
【0124】
なお、上記実施形態では、露光装置がスキャニング・ステッパである場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に上記実施形態を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計によりステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンのウエハ上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0125】
また、上記実施形態では露光装置100が、2つのウエハステージを備えたツインステージ型の露光装置である場合について例示したが、これに限らず、例えば、米国特許出願公開第2007/0211235号明細書及び米国特許出願公開第2007/0127006号明細書などに開示されるようにウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置、又はウエハステージを1つのみ備えるシングルステージ型の露光装置に上記実施形態を適用しても良い。
【0126】
また、上記実施形態の露光装置を、例えば国際公開第99/49504号、米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される液浸型としても良い。
【0127】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0128】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0129】
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、そのステージの位置をエンコーダを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0130】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。
【0131】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0132】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0133】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0134】
半導体などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、上記実施形態の露光装置で、マスクに形成されたパターンをウエハ等の物体上に転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハ(物体)を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置及び露光方法が用いられるので、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。
【0135】
また、上記実施形態の露光装置(パターン形成装置)は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上説明したように、本発明の露光装置及び露光方法は、物体を露光するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、半導体素子又は液晶表示素子などの電子デバイスを製造するのに適している。
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