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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】積層型撮像素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240510BHJP
   H10K 30/60 20230101ALI20240510BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20240510BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H10K30/60
H10K39/32
H04N25/70
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019233720
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021009987
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019120942
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】高木 友望
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】大竹 浩
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-055252(JP,A)
【文献】特開2018-019068(JP,A)
【文献】特開2011-253861(JP,A)
【文献】特開2006-066535(JP,A)
【文献】特開2009-123780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H10K 30/60
H10K 39/32
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方からの光を受光し得るように回路基板の上方に複数の有機光電変換膜を積層してなる撮像素子の製造方法であって、
複数の前記有機光電変換膜の各々の下部に位置する、当該有機光電変換膜に対応する画素電極と、前記回路基板を含む読出し回路部とを接続する際に、
前記回路基板の上方に、少なくとも2種類以上の互いに高さの異なる導体間パス電極の各々を形成しこの後、これらの導体間パス電極の各々に対応する前記画素電極の一部を該導体間パス電極の上部を覆うように形成して、対応する前記画素電極と前記読出し回路部が導通し得るように形成する第1工程と、
前記第1工程において形成された前記導体間パス電極の各々に対応させて、前記画素電極上に、前記有機光電変換膜および共通電極をこの順に積層するとともに、下部に位置する前記有機光電変換膜に対応する前記共通電極と、当該有機光電変換膜の上方に隣接した前記有機光電変換膜に対応する前記画素電極との間に介在する絶縁膜を形成する第2工程と、
をこの順に行
前記導体間パス電極の周囲が絶縁性の保護層で覆われた状態に形成する工程を、当該導体間パス電極に対応する前記有機光電変換膜と前記共通電極を積層する工程より前に行うとともに、
前記第2工程の後に、前記少なくとも2種類以上の互いに高さの異なる導体間パス電極上に形成された、前記有機光電変換膜および前記共通電極を、前記有機光電変換膜を溶剤で除去することにより、リフトオフに係る工程を行う、
ことを特徴とする積層型撮像素子の製造方法。
【請求項2】
上方からの光を受光し得るように回路基板の上方に複数の有機光電変換膜を積層してなる撮像素子の製造方法であって、
複数の前記有機光電変換膜の各々の下部に位置する、当該有機光電変換膜に対応する画素電極と、前記回路基板を含む読出し回路部とを接続する際に、
前記回路基板の上方に、導体間パス電極を形成しこの後、前記画素電極の一部を該導体間パス電極の上部を覆うように形成して、この導体間パス電極に対応する前記画素電極と前記読出し回路部が導通し得るように形成する第1工程と、
前記第1工程において形成された前記導体間パス電極に対応させて、前記画素電極上に、前記有機光電変換膜および共通電極をこの順に積層する第2工程と、
をこの順に行う有機光電変換部製造工程群をn回(nは以上の整数)に亘って実行するとともに、
つの前記有機光電変換部製造工程群を実行する間において、下部に位置する前記有機光電変換膜に対応する前記共通電極と、当該有機光電変換膜の上方に隣接した前記有機光電変換膜に対応する前記画素電極との間に介在する絶縁膜を形成する工程を行
前記導体間パス電極の周囲が絶縁性の保護層で覆われた状態に形成する工程を、当該導体間パス電極に対応する前記有機光電変換膜と前記共通電極を積層する工程より前に行うとともに、
k回目(kは正の整数である。以下同じ。)の前記第2工程を行った後で、k+1回目の前記第1工程を行う前に、前記導体間パス電極上に形成された、前記有機光電変換膜および前記共通電極を、前記有機光電変換膜を溶剤で除去することにより、リフトオフに係る工程を行う、
ことを特徴とする積層型撮像素子の製造方法。
【請求項3】
前記保護層を、下部よりも上部の方が前記有機光電変換膜側に張り出してなる2段構造に作成するとともに、該2段構造の該下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように作成することを特徴とする請求項1または2に記載の積層型撮像素子の製造方法。
【請求項4】
前記2段構造の前記下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜上に形成された前記共通電極の上面の高さ位置よりも上方となるように作成することを特徴とする請求項に記載の積層型撮像素子の製造方法。
【請求項5】
前記回路基板の光入射側にCMOSイメージセンサを配設する工程を実行することを特徴とする請求項1からのうちいずれか1項に記載の積層型撮像素子の製造方法。
【請求項6】
前記複数の有機光電変換膜が、R光用、G光用およびB光用の各色光域に感度を有する少なくとも3層の前記有機光電変換膜であることを特徴とする請求項1からのうちいずれか1項に記載の積層型撮像素子の製造方法。
【請求項7】
上方からの光を受光し得るように回路基板の上方に有機光電変換膜を備えてなる積層型撮像素子であって、
前記回路基板を含む読出し回路部と導通する第1下部電極と、
該第1下部電極上に順次積層された有機光電変換膜、共通電極、絶縁膜および第2下部電極と、
前記回路基板と該第2下部電極の間であって、前記有機光電変換膜と干渉しない位置に設けられた絶縁材料からなる保護層と、
前記有機光電変換膜を通過することなく該保護層を通過して、前記第2下部電極と前記読出し回路部を電気的に接続する導体間パス電極とを備え、
前記保護層は、下部よりも上部の方が、対応する前記有機光電変換膜側に張り出した2段構造となるように形成されるとともに、該2段構造の該下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように形成されてなることを特徴とする積層型撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型撮像素子およびその製造方法に関し、詳しくは、積層された各有機光電変換膜を駆動する画素電極等を回路基板に接続するための電極を形成する積層型撮像素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
垂直色分離型の撮像素子は、従来のカラーフィルタを用いた単板式のカラー撮像素子とは異なり、固有の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換膜を3層(RGB)重ねた構造を備えている。一般に垂直色分離型の撮像素子は、入射光を効率よく利用することができるため、高解像度・高感度な小型カラーカメラへの適用が期待されている。有機光電変換膜を用いた垂直色分離型の撮像素子として、これまで種々のデバイス構造が提案されている。
【0003】
この中で、有機光電変換膜を3層重ね、各有機光電変換膜の画素電極を回路基板上の読出し回路と接続して動作するデバイス構成が知られている(下記特許文献1を参照)。現在のSiプロセスでは微小で高性能な読出し回路を容易に形成できるため、このような技術を用い、RGB各光電変換膜の画素電極から、有機光電変換膜を貫通する貫通電極を通して、Si基板に収容した読出し回路に接続することにより、各画素の信号を読出すことが可能となる。
【0004】
一方、透明な酸化物半導体TFTを各光電変換膜に形成し、各々の光電変換膜で生じた電荷を独立に読出す手法も提案されている(下記特許文献2、3等を参照)。
さらに、上層の有機光電変換膜の画素電極を基板表面部に形成された信号読出し回路に接続するために、有機光電変換膜積層型撮像素子の下層の有機光電変換膜を貫通し、画素電極と信号読出し回路の接続部に接続される有機光電変換膜用の貫通電極、およびこの貫通電極の周りに被覆される絶縁材を、製造の容易性を考慮して、有機光電変換膜の形成よりも先に形成し、その後に、有機光電変換膜、光電変換膜を挟む共通電極、絶縁膜を積層する手法も提案されている(下記特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-311647号公報
【文献】特開2005-51115号公報
【文献】特許第5102692号公報
【文献】特開2005-303263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の技術において、フォトリソグラフィー等によるパターニングを行った場合、特に、有機光電変換膜を上下に貫通する貫通電極を形成する際に、有機光電変換膜が薬品等によりダメージを受けやすく、光電変換膜の特性が大幅に劣化する。
また、特性に優れた酸化物半導体TFTを形成するためには、高温プロセスが必要となるが、特許文献2、3に記載の技術においては、製造時に高温加熱が特性向上のために必要な酸化物半導体TFTを各有機光電変換膜に形成している。そのため、酸化物半導体TFTの形成中に有機光電変換膜が熱で劣化しないようにする必要があることから、十分な加熱処理を行うことができず、TFTの特性を十分良好なものにすることができないという課題がある。
さらに、特許文献4に記載の技術においては、縦方向(積層方向)配線である、有機光電変換膜の貫通電極の形成工程において、レジストのパターニング処理、膜剥離処理、さらには光電変換膜直上に配される電極のパターニング処理を行う際に、その処理に用いられる溶媒によって有機光電変換膜が劣化しやすい、という課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、有機光電変換膜が、積層プロセスでパターニングや膜剥離を行う場合に用いられる薬品や溶媒等によりダメージを受けず、かつ、その製造工程で高温加熱処理を不要とすることで、有機光電変換膜の特性劣化を抑制し得る積層型撮像素子およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明の積層型撮像素子の製造方法は以下のような構成とされている。
すなわち、本発明に係る第1の積層型撮像素子の製造方法は、
上方からの光を受光し得るように回路基板の上方に複数の有機光電変換膜を積層してなる撮像素子の製造方法であって、
複数の前記有機光電変換膜の各々の下部に位置する、当該有機光電変換膜に対応する画素電極と、前記回路基板を含む読出し回路部とを接続する際に、
前記回路基板の上方に、少なくとも2種類以上の互いに高さの異なる導体間パス電極の各々を形成しこの後、これらの導体間パス電極の各々に対応する前記画素電極の一部を該導体間パス電極の上部を覆うように形成して、対応する前記画素電極と前記読出し回路部が導通し得るように形成する第1工程と、
前記第1工程において形成された前記導体間パス電極の各々に対応させて、前記画素電極上に、前記有機光電変換膜および共通電極をこの順に積層するとともに、下部に位置する前記有機光電変換膜に対応する前記共通電極と、当該有機光電変換膜の上方に隣接した前記有機光電変換膜に対応する前記画素電極との間に介在する絶縁膜を形成する第2工程と、
をこの順に行
前記導体間パス電極の周囲が絶縁性の保護層で覆われた状態に形成する工程を、当該導体間パス電極に対応する前記有機光電変換膜と前記共通電極を積層する工程より前に行うとともに、
前記第2工程の後に、前記少なくとも2種類以上の互いに高さの異なる導体間パス電極上に形成された、前記有機光電変換膜および前記共通電極を、前記有機光電変換膜を溶剤で除去することにより、リフトオフに係る工程を行う、
ことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の第2の積層型撮像素子の製造方法は、
上方からの光を受光し得るように回路基板の上方に複数の有機光電変換膜を積層してなる撮像素子の製造方法であって、
複数の前記有機光電変換膜の各々の下部に位置する、当該有機光電変換膜に対応する画素電極と、前記回路基板を含む読出し回路部とを接続する際に、
前記回路基板の上方に、導体間パス電極を形成しこの後、前記画素電極の一部を該導体間パス電極の上部を覆うように形成して、この導体間パス電極に対応する前記画素電極と前記読出し回路部が導通し得るように形成する第1工程と、
前記第1工程において形成された前記導体間パス電極に対応させて、前記画素電極上に、前記有機光電変換膜および共通電極をこの順に積層する第2工程と、
をこの順に行う有機光電変換部製造工程群をn回(nは以上の整数)に亘って実行するとともに、
つの前記有機光電変換部製造工程群を実行する間において、下部に位置する前記有機光電変換膜に対応する前記共通電極と、当該有機光電変換膜の上方に隣接した前記有機光電変換膜に対応する前記画素電極との間に介在する絶縁膜を形成する工程を行
前記導体間パス電極の周囲が絶縁性の保護層で覆われた状態に形成する工程を、当該導体間パス電極に対応する前記有機光電変換膜と前記共通電極を積層する工程より前に行うとともに、
k回目(kは正の整数である。以下同じ。)の前記第2工程を行った後で、k+1回目の前記第1工程を行う前に、前記導体間パス電極上に形成された、前記有機光電変換膜および前記共通電極を、前記有機光電変換膜を溶剤で除去することにより、リフトオフに係る工程を行う、
ことを特徴とするものである。
【0010】
上述した各製造方法において、前記導体間パス電極の周囲を絶縁性の保護層で覆う工程を、当該導体間パス電極に対応する前記有機光電変換膜と前記共通電極を積層する工程より前に行うことが好ましい。
また、前記保護層を、下部よりも上部の方が前記有機光電変換膜側に張り出してなる2段構造に作成するとともに、該2段構造の該下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように作成することが好ましい。
さらに、前記2段構造の該下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜上に形成された前記共通電極の上面の高さ位置よりも上方となるように作成することがより好ましい。
また、前記回路基板の光入射側にCMOSイメージセンサを配設する工程を実行することができる。
他方、前記複数の有機光電変換膜を、R光用、G光用およびB光用の各色光域に感度を有する少なくとも3層の前記有機光電変換膜とすることもできる。
【0011】
また、本発明に係る積層型撮像素子は、
上方からの光を受光し得るように回路基板の上方に有機光電変換膜を備えてなる積層型撮像素子であって、
前記回路基板を含む読出し回路部と導通する第1下部電極と、
該第1下部電極上に順次積層された有機光電変換膜、共通電極、絶縁膜および第2下部電極と、
前記回路基板と該第2下部電極の間であって、前記有機光電変換膜と干渉しない位置に設けられた絶縁材料からなる保護層と、
前記有機光電変換膜を通過することなく該保護層を通過して、前記第2下部電極と前記読出し回路部を電気的に接続する導体間パス電極とを備え、
前記保護層は、下部よりも上部の方が、対応する前記有機光電変換膜側に張り出した2段構造となるように形成されるとともに、該2段構造の該下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように形成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層型撮像素子の製造方法により作成された積層型撮像素子によれば、有機光電変換膜内を貫通する貫通電極を用いることなく、この有機光電変換膜が配設されない位置に、かつこの有機光電変換膜の形成に先立って、画素電極と信号読出し回路を接続する導体間パス電極を形成するようにしているので、有機光電変換膜が、製造プロセスで膜のパターニングを行う際に用いられる薬品等により受けるダメージを低減することができる。
これにより、有機光電変換膜を含む光電変換部よりも下方に配された回路基板で、有機光電変換膜の信号読出しを可能とし得る有機光電膜積層型の撮像素子を有機光電変換膜の劣化を抑制しつつ製造することができる。
【0013】
また、本発明の第1の積層型撮像素子の製造方法においては、有機光電変換膜の形成に先立って、少なくとも2種類以上の互いに高さの異なる導体間パス電極の各々を形成し、複数層の有機光電変換膜に対応する導体間パス電極を一時に形成することができるので、微細加工が必要な導体間パス電極の形成時において、薬品、溶剤あるいは加熱処理を用いる場合に、有機光電変換膜がダメージを被る虞を大幅に低減することができる。
【0014】
他方、第2の積層型撮像素子の製造方法においては、各有機光電変換膜の形成に先立って、対応する導体間パス電極を形成する処理を、1層ずつ行っているので、画素電極(下部電極)のパターニングは平坦な面で行うことが可能となり、製造時の作業性が向上する。また、有機光電変換膜への若干のダメージを許容することが可能な場合には、表面研磨等の処理を施すことも可能である。
さらに、本発明に係る積層型撮像素子においては、保護層を、下部よりも上部の方が、対応する前記第1有機光電変換膜側に張り出してなる2段構造となるように形成されるとともに、該2段構造の該下部の最上部の位置が前記有機光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように形成されている。これにより、保護層の上部構造が顎状となって張り出すことにより下部構造部分の側面部分への、光電変換膜材料や電極材料の付着が阻止され(さらには材料照射流が遮ぎられ)、有機光電変換膜と下部構造部分の側面部分とが接触し難くなり、これにより、パターンを導体間パス電極(貫通電極)の各列毎にストライプ状あるいは島状に分断することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態(実施例1、実施例2)に係る積層型撮像素子の製造方法により製造された積層型撮像素子の概念的な断面構造を示す概略断面図である。
図2】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1:(a)~(b))を示す概略図である。
図3】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2:(c)~(d))を示す概略図である。
図4】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その3:(e)~(g))を示す概略図である。
図5】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その4:(h)~(j))を示す概略図である。
図6】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その5:(k)~(l))を示す概略図である。
図7】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その6:(m)~(n))を示す概略図である。
図8】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その7:(o)~(p))を示す概略図である。
図9】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その8:(q)~(s))を示す概略図である。
図10】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その9:(t)~(u))を示す概略図である。
図11】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その10:(v)~(x))を示す概略図である。
図12】実施例1の変更例に係る積層型撮像素子の製造方法の一部の工程((a)~(c))を示す概略図である。
図13】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その4:(g)~(i))を示す概略図である。
図14】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その5:(j)~(k))を示す概略図である。
図15】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その6:(l)~(n))を示す概略図である。
図16】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その7:(o)~(p))を示す概略図である。
図17】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その8:(q)~(r))を示す概略図である。
図18】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その9:(s)~(t))を示す概略図である。
図19】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その10:(u)~(w))を示す概略図である。
図20】本発明の第1の実施形態(実施例1、実施例2)に係る、図1に示す積層型撮像素子とは異なる積層型撮像素子の概念的な断面構造を示す概略断面図である。
図21】本発明の第2の実施形態(実施例3)に係る積層型撮像素子の概念的な断面構造を示す概略断面図である。
図22】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1:(a)~(d))を示す概略図である。
図23】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2:(e)~(h))を示す概略図である。
図24】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その3:(i)~(k))を示す概略図である。
図25】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その4:(l)~(n)を示す概略図である。
図26】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その5:(o)~(p)を示す概略図である。
図27】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その6:(q)~(s))を示す概略図である。
図28】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その7:(t)~(v))を示す概略図である。
図29】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その8:(w)~(y))を示す概略図である。
図30】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その9:(z)~(α))を示す概略図である。
図31】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その10:(β)~(γ))を示す概略図である。
図32】実施例3の変更例に係る積層型撮像素子の製造方法の一部の工程(その11:(δ)~(ζ))を示す概略図である。
図33】本発明の第2の実施形態(実施例3)に係る、図21に示す積層型撮像素子とは異なる積層型撮像素子の概念的な断面構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る積層型撮像素子、およびその製造方法について図面を用いて説明する。
[第1の実施形態]
まず、図1に示す第1の実施形態に係る積層型撮像素子を製造する方法に関し、実施例1および実施例2の代表的な2つの方法が挙げられるので、以下、これら2つの実施例を順に説明する。
【0017】
図1は実施例1および実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法により製造された積層型撮像素子1の概略断面図を示すものである。ただし、図1は、実施例1に係る積層型撮像素子1の積層構造を説明の便宜のため概念的に示すものであるから、実際に製造された積層型撮像素子1とは、整合していない部分がある(図20図21および図33の積層型撮像素子301、501、601において同じ)。
【0018】
図1に示す積層型撮像素子1は、光電変換部4が読出し回路部3(回路基板2の上部に読出し回路12および各接続電極23、33、43を備えてなる)上に形成されてなり、光電変換部4が、第1有機光電変換膜20を含む第1有機光電変換部、第2有機光電変換膜30を含む第2有機光電変換部、および第3有機光電変換膜40を含む第3有機光電変換部からなる3層構造の撮像素子(RGBカラー画像撮像素子)とされており、図中上方から光が入射するように構成されている。
【0019】
また、各有機光電変換膜20、30、40は各々、対応する接続電極(第1接続電極23、第2接続電極33、第3接続電極43)と接続される。各有機光電変換膜20、30、40は各々、対応する下部電極(本実施例における下部電極は、画素電極として機能するものを意味する)21、31、41と対応する上部電極24、34、44に挟まれた構造とされ、上部電極24、34、44は共通電極として素子の側面から外部に取り出すことが可能な構造である(したがって、本願明細書では上部電極を共通電極とも称する)。
【0020】
第1下部電極21は下部絶縁膜17を介して回路基板2上に形成されており、下部絶縁膜17の開口を通して第1接続電極23と導通している。なお、下部絶縁膜17は薄く形成されているため、画素電極の成膜時に導通を取ることが可能であり、メッキ等の手法によって必ずしも埋めることは必要とされない。また各導体間パス電極(第1導体間パス電極32、第2導体間パス電極42)は対応する保護層(第1保護層25、第2保護層35)の厚み方向全長に亘って埋め込まれた状態とされており、第1導体間パス電極32は第2下部電極31と、第2導体間パス電極42は第3下部電極41と接続されている。
【0021】
図1に示すように、本実施例の積層型撮像素子1においては、有機光電変換膜20、30が配置されていない位置において、上方の下部電極31、41と下方の接続電極33、43を接続するように導体間パス電極32、42が形成されており、これら導体間パス電極32、42の周囲を絶縁性の保護層25、35で覆う構成とされている。
なお、導体間パス電極32、42の配設位置は種々選択可能であり、保護層25、35の形成材料としても、絶縁性を有するものであれば種々選択可能である。
【0022】
<実施例1>
以下、実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法について図2~11を用いて工程順に説明する。
実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法は、有機光電変換膜20、30、40の形成に先立って、これら2層の有機光電変換膜20、30に対応する、2種類の互いに高さの異なる導体間パス電極32、42を一体的に形成するものである。これにより、微細加工が必要な導体間パス電極の形成時において、薬品、溶剤あるいは加熱処理を用いる場合の有機光電変換膜が被るダメージを大幅に低減することができる。
【0023】
図2および図3に第1下部電極21の形成プロセスを示す。まず図2(a)に示すように回路基板2の上部に、画素毎に、読出し回路12、第1接続電極23、第2接続電極33、および第3接続電極43を形成し、これら各部材を被覆するようにして、回路基板2の上面に下部絶縁膜17を形成する(図2(b))。
【0024】
ここで下部絶縁膜17は、第1下部電極21と読出し回路12との絶縁性を確保するための薄膜である。下部絶縁膜17の形成材料としては、絶縁性を有するものであれば、有機、無機、それらをハイブリッドした材料等の、既知の種々の材料を用いることが可能であるが、パターニングを適切に行える材料であることが肝要である。
【0025】
次に下部絶縁膜17にフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングを行い、所定位置に下地透孔112を形成する(図3(c))。この下地透孔112は、第1接続電極23の直上に形成される。次に、電極材料(金属や有機導電膜材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等)を成膜し、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行い、第1下部電極21を形成する(図3(d))。
【0026】
ここでは、第1下部電極21は下地透孔112を覆うようにパターニングされており、下地透孔112を介して第1接続電極23と電気的に導通している。なお、第1下部電極21を構成する材料は金属や金属酸化物(例えばITO等の透明電極材料も含まれる:以下、単に金属酸化物と称する)、有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能であるが、透明であることが望ましい。
【0027】
図4は第1導体間パス電極32を形成する手法を示すものである。なお、第1導体間パス電極32は、第2下部電極31と接続する電極であり、第3下部電極41と接続する第2導体間パス電極42は第1導体間パス電極32とは別体とされたものであるが、後述するように、第2導体間パス電極42の下方の半分は第1導体間パス電極32と、図4に示す製造プロセスにて同時に形成される。
【0028】
すなわち、まず、第1導体間パス電極32の周囲を絶縁するための第1保護層25を成膜し(図4(e))、フォトリソグラフィー法等によりパターニングを行い、第1透孔(第1保護層25の厚み方向全長に亘って開孔された孔部)122を形成する(図4(f))。第1透孔122は、回路基板2上の第2接続電極33および第3接続電極43の直上に形成される。
【0029】
次に第1透孔122に電極材料を埋め込み、第1導体間パス電極32を形成する(図4(g))。電極材料に金属を用いる際には、めっき法等の既知の技術により形成することができる。また導電性高分子材料等を用いる場合には、溶液を注入して乾燥させることで形成可能である。なお、何れの場合も表面の研磨やパターニング等、既知の作成技術により容易に形成することが可能である。なお、第2導体間パス電極42の下方の半分(下半部分)も第1導体間パス電極32と同時に形成される。
【0030】
図5および図6を用いて、2段構成の導体間パス電極32、42を形成する手法を示す。すなわち、第1保護層25の上部に第2保護層35を成膜し(図5(h))、第1透孔122の場合と同様の工程(フォトリソグラフィー法等)を用いて、各第1透孔122と連通するように各第2透孔132を形成する(図5(i))。このとき第2透孔132は2段の導体間パス電極42における下半部分と上方の半分(上半部分)とを接続させるため、所定の第2導体間パス電極42の下半部分の最上面が表面に露出するように開口部を設ける。次に第2透孔132の上半部分を第1透孔122と同様の既知の技術を用いて電極材料で埋めることにより、連通する2つの透孔122、132の長さと略同じ長さの第2導体間パス電極42を形成する(図5(j))。なお、第2導体間パス電極42の上半分の電極材料は、図4に示す工程で形成した下半分の電極材料と同じ材料を適用してもよいし、異なる材料を適用してもよい。この結果、第1導体間パス電極32と第2導体間パス電極42が保護層25、35内に交互に配列されることになる。
【0031】
次に図6(k)に示すように、第2導体間パス電極42の上部の第2保護層35をフォトリソグラフィー法等の既知の技術を適用してパターニングにより開孔し、第1導体間パス電極32の上端面を露出させる。さらにフォトリソグラフィー法等を用いて第2保護層35、および第1保護層25を順次パターニングし、第1下部電極21を露出させるとともに、2段構造の導体間パス電極32、42を形成する(図6(l))。
【0032】
なお、ここでは第1導体間パス電極32および第2導体間パス電極42は、第1保護層25および第2保護層35により繋がった位置関係とされており、第1下部電極21の上部の空間部は、上方から見るとストライプ状となっているが、第1導体間パス電極32と第2導体間パス電極42は、このような位置関係以外の配置とされていてもよい。
【0033】
また、上記では、図6(l)の構造を形成する際に、第1導体間パス電極32の上表面を露出させた後に第1下部電極21の上部をパターニングする順番で説明したが、先に第1下部電極21の上部をパターニングした後に、第1導体間パス電極32の上表面を露出させて同様な構造を形成してもよい。
【0034】
なお、図4図6に示す製造プロセスにおいては、第1導体間パス電極32と第2導体間パス電極42を順次形成する方法で説明しているが、図12に示すように、第2導体間パス電極42の高さまで保護層225を形成して第2接続電極33、および第3接続電極43の上部に透孔222を形成し(図12(a))、この後、導体間パス電極232を形成し(図12(b))、第1導体間パス電極32の上部と第1下部電極21の上部を順次パターニングして図12(c)の構造を形成する手法を適用することもできる。この手法では一度に、第1導体間パス電極32と第2導体間パス電極42を合わせた導体間パス電極232を形成することができるが、導体間パス電極232と保護層225を同時にエッチングする必要が生じる。
【0035】
図7および図8に第1層目の第1有機光電変換膜20を形成する手法を示す。図6(l)に示す構造の上部に第1有機光電変換膜20を成膜する(図7(m))。この製造プロセスにおいては、所定の有機材料を蒸着等の成膜法で形成することにより、この有機材料が第1下部電極21の上方に形成された開口部(この開口部(溝部)は、本実施例においてはストライプ状とされ、画素開口部とも称する)と、導体間パス電極32、42が露出した保護層25、35の上面(保護層上部と呼ぶ)に成膜されるため、画素開口部と保護層上部とで不連続となりパターニングされることとなる。
【0036】
次に第1上部電極24を、既知の成膜手法を用いて形成することにより、第1有機光電変換膜20と同様に、画素開口部と保護層上部とで不連続となりパターニングされる(図7(n))。第1上部電極24は金属や有機導電膜、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等の既知の材料を適用することが可能であるが、透明であることが望ましい。また、第1有機光電変換膜20にダメージを与えない成膜技術を適用することが望ましい。
【0037】
さらに、第1絶縁膜27を、第1導体間パス電極32とほぼ同じ高さとなるように成膜する(図8(o))。これにより、その後の製造プロセスにおいて、第1保護層25の上部の積層膜(第1有機光電変換膜20、第1上部電極24および第1絶縁膜27)を適切に除去することができるとともに、この積層膜を除去した後に、第1導体間パス電極32と第2下部電極31との段差を小さくして、これら第1導体間パス電極32と第2下部電極31(図9(q)を参照)の接続を円滑に行うことが可能となる。
【0038】
第1絶縁膜27の材料としては、無機材料、有機材料、それらのハイブリッド材料等の絶縁性を有する種々の既知の材料を用いることが可能であるが、第1有機光電変換膜20を保護する役割を担うため、耐溶剤性に優れた材料とすることが望ましい。なお成膜方法としては、第1絶縁膜27の材料に応じ、種々の適切な既知の成膜方法を用いることができる。
【0039】
次に、前述したように、第1保護層25の上方の第1有機光電変換膜20、第1上部電極24および第1絶縁膜27をエッチング等の膜除去手法により除去する(図8(p))。
このとき画素開口部とその周囲は全て第1絶縁膜27で覆われるため、画素開口部に成膜された第1有機光電変換膜20は第1絶縁膜27により保護され、溶液等によるパターニング耐性を得ることが可能となる。したがって、第1保護層25の上部の第1有機光電変換膜20を溶剤等で除去してリフトオフを行うことにより、第1有機光電変換膜20上の第1上部電極24と第1絶縁膜27も同時に除去することが可能である。
【0040】
図9および図10に第2層目の第2有機光電変換膜30を形成する手法を示す。図9(q)に示すように、第1絶縁膜27の上部に、上述した第1下部電極21の場合と同様に、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行って第2下部電極31を形成する。第2下部電極31の一部は第1導体間パス電極32の上部を覆うように形成され、第1導体間パス電極32を介して回路基板2上の第2接続電極33と接続する。
ここで第2下部電極31は第1下部電極21の上方に形成され、望ましくは図面上方向から見たときに、第1層目と第2層目の画素位置が互いに一致することが望ましい。第2下部電極31を構成する材料としては、金属や有機導電性材料、導電性を示す有機・無機ハイブリッド材料等の種々の材料を用いることが可能であるが、透明であることが望ましい。
【0041】
次に、第1層目の第1有機光電変換膜20と同様に、第2層目の第2有機光電変換膜30を積層し(図9(r))、次に第2上部電極34を積層し(図9(s))、次に第2絶縁膜37を積層する(図10(t))。第2絶縁膜37は第2導体間パス電極42とほぼ同じ高さとなるように成膜することが望ましい。これにより、その後の製造プロセスで、第2保護層35の上部の積層膜(第2有機光電変換膜30、第2上部電極34および第2絶縁膜37)を適切に除去することができるとともに、この積層膜を除去した後に、第2導体間パス電極42と第3下部電極41との段差を小さくして、これら第2導体間パス電極42と第3下部電極41の接続を円滑に行うことが可能となる(図11(v)を参照)。
なお、第2層目の第2有機光電変換膜30および第2上部電極34の材料や成膜方法等は適宜選択することが可能である。
【0042】
次に、前述したように、上述した第2保護層35の上部の積層膜を適切な膜除去手法により除去することにより、第2導体間パス電極42を露出させる(図10(u))。このとき第2導体間パス電極42が形成されている第2保護層35の上部以外は全て第2絶縁膜37で覆われるため、画素領域(第2下部電極31が形成された領域)に成膜された第2有機光電変換膜30は第2絶縁膜37により保護され、溶液等によるパターニング耐性を得ることが可能となる。したがって、第2保護層35の上部の第2有機光電変換膜30を溶剤等で除去してリフトオフを行うことにより、第2有機光電変換膜30上の第2上部電極34と第2絶縁膜37も同時に除去することが可能である。
【0043】
図11に第3層目の第3有機光電変換膜40を形成する手法を示す。図11(v)に示すように、第2絶縁膜37の上部に、上述した各下部電極21、31の場合と同様に、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行って第3下部電極41を形成する。第3下部電極41の一部は第2導体間パス電極42の上部を覆うように形成され、第2導体間パス電極42を介して回路基板2上の第3接続電極43と接続する。このような3層構造の場合は、第1下部電極21、第2下部電極31および第3下部電極41は、図面上方向から見た画素位置が互いに重なるように構成することが望ましい。第3下部電極41を構成する材料としては、金属や有機導電性材料、導電性を示す有機・無機ハイブリッド材料等の種々の材料を用いることが可能であるが、透明であることが望ましい。
【0044】
次に、第1層目および第2層目の有機光電変換膜20、30と同様に、第3有機光電変換膜40を積層し(図11(w))、次に第3上部電極44を積層する(図11(x))。本実施例では、第3有機光電変換膜40に対応する導体間パス電極を形成する必要がないため、第3有機光電変換膜40と第3上部電極44をパターニングすることは必要とされない。
上述した一連の製造プロセスにより図1に示す3層構造の積層型撮像素子1を作成することが可能となる。なお、第3層目の第3有機光電変換膜40や第3上部電極44の材料や成膜方法等は適宜選択することが可能である。
【0045】
なお、図2図12に示す層構成では、積層構造の理解を容易とするため、側面部分が絶縁膜27、37で覆われていない状態を示しているが、側面も絶縁膜27、37で覆うことにより側面からの溶液の浸入も防ぐことができ、望ましい。ただし、これらの側面部分が露出する態様であったとしても、画素が形成されている領域がこれらの側面部分から十分離れた位置に配されている場合は、画素への溶液によるダメージを十分小さいものとすることができる。
なお、第3上部電極44の上部に形成され得る保護層等の、上記されていないその他の構成については、一般的に用いられる膜形成技術により容易に形成することが可能である。
【0046】
<実施例2>
以下、実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法について工程順に説明する。
なお、実施例2に係る製造方法も、実施例1に係る製造方法の工程の図2~4に示す工程を最初に行うものであって、互いに重複するものであるから、本実施例においては、図2~4に示す各工程についての説明を省略する。また、本実施例においては、図1~4に示す各部材について、その各部材の各符号の後にaを加えたもので読み替えるものとする。したがって、実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法についての説明は、図2~4に示す工程の次の工程から、図13~19を用いて工程順に説明する。
【0047】
実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法は、実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法とは異なり、有機光電変換膜20a、30aの各々の形成に先立って、各導体間パス電極32a、42aを層毎に形成する。すなわち、第1導体間パス電極32aを形成した後、第1有機光電変換膜20aを形成することによって第1層を作成し、次に、第2導体間パス電極42aを形成した後、第2有機光電変換膜30aを形成することによって第2層を作成する、というように、1層ずつ作成する点で、上記実施例1の製造方法とは相違する(ただし、第2導体間パス電極42aの下半部分は、第1導体間パス電極32aと同時に形成される)。
これにより、各下部電極31a、41aのパターニングは平坦な面で行うことが可能となり、製造時の作業性が向上する。また、各有機光電変換膜20a、30aへのダメージを許容することができれば、表面研磨等の処理を施すことも可能である。
【0048】
実施例2に係る製造方法においては、まず、前述したように、実施例1における図2~4(図2(a)~図4(f))に示す工程と同様の工程を行う。
続いて、第1保護層25aに既知のフォトリソグラフィー法等の成膜手法を適用し、画素領域部分の第1保護層25aをパターニングして除去することにより、第1下部電極21aを露出させる(図13(g))。これにより、第1層目における第1有機光電変換膜20aの厚み方向全長に亘って埋め込まれる第1導体間パス電極32aが形成される。
なお、図13では、第1下部電極21aが形成されている画素領域部分、および第1保護層25a部分はストライプ状となっているが、素子構造に応じて異なる形状としても良い。例えば、第1保護層25a部分がストライプ状ではなく、互いに分離した島状とされていてもよい。
【0049】
図13(h)、(i)に、第1層目の第1有機光電変換膜20aを形成する手法を示す。
図13(g)に示す構造の上部に第1有機光電変換膜20aを成膜する(図13(h))。この製造プロセスにおいては、所定の有機材料を蒸着等の成膜法で形成することにより、この有機材料が第1下部電極21aの上方に形成された開口部(この開口部(溝部)は、本実施例においてはストライプ状とされ、画素開口部とも称する)と、導体間パス電極32a、42aが露出した第1保護層25aの上面(保護層上部と称する)に成膜されるため、画素開口部と保護層上部とで不連続となりパターニングされることとなる。
【0050】
次に第1上部電極24aを、既知の成膜手法により形成することにより、第1有機光電変換膜20aと同様に画素開口部と保護層上部とで不連続となりパターニングされる(図13(i))。第1上部電極24aは金属や有機導電膜、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等の既知の材料を適用することが可能であるが、透明であることが望ましい。また、第1有機光電変換膜20aにダメージを与えない成膜技術を適用することが望ましい。
さらに、第1絶縁膜27aを第1導体間パス電極32aとほぼ同じ高さとなるように成膜する(図14(j))。これにより、その後の製造プロセスにおいて、第1保護層25aの上部の積層膜(第1有機光電変換膜20a、第1上部電極24aおよび第1絶縁膜27a)を適切に除去することができるとともに、この積層膜を除去した後に、第1導体間パス電極32aと第2下部電極31aとの段差を小さくして、これら第1導体間パス電極32aと第2下部電極31a(図15(l)を参照)の接続を円滑に行うことが可能となる。
【0051】
第1絶縁膜27aの形成材料としては、無機材料、有機材料、それらのハイブリッド材料等の絶縁性を有する種々の既知の材料を用いることが可能であるが、第1有機光電変換膜20aを保護する役割を担うため、耐溶剤性に優れた材料とすることが望ましい。なお成膜方法としては、第1絶縁膜27aの材料に応じ、種々の適切な既知の成膜方法を用いることができる。
次に、前述したように、第1保護層25aの上方の第1有機光電変換膜20a、第1上部電極24aおよび第1絶縁膜27aをエッチング等の膜除去手法により除去する(図14(k))。
【0052】
このとき画素開口部とその周囲は全て第1絶縁膜27aで覆われるため、画素開口部に成膜された第1有機光電変換膜20aは第1絶縁膜27aにより保護され、溶液等によるパターニング耐性を得ることが可能となる。したがって、第1保護層25aの上部の第1有機光電変換膜20aを溶剤等で除去してリフトオフを行うことにより、第1有機光電変換膜20a上の第1上部電極24aと第1絶縁膜27aも同時に除去することが可能である。
【0053】
図15および図16に第2層目の第2導体間パス電極42aを形成する手法を示す。図15(l)に示すように、第1絶縁膜27aの上部に、上述した第1下部電極21aの場合と同様に、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行って第2下部電極31aを形成する。第2下部電極31aの一部は第1導体間パス電極32aの上部を覆うように形成され、第2下部電極31aは、第1導体間パス電極32aを介して回路基板2a上の第2接続電極33aと接続する。
【0054】
ここで第2下部電極31aは第1下部電極21aの上方に形成され、望ましくは図面上方向から見たときに、第1層目と第2層目の画素位置が互いに一致することが望ましい。
また、第2下部電極31aを構成する材料としては、金属や有機導電性材料、導電性を示す有機・無機ハイブリッド材料等の種々の材料を用いることが可能であるが、透明であることが望ましい。
【0055】
次に、第2下部電極31aを形成した第1絶縁膜27aの上部(第1導体間パス電極32aの上端面上)に、第2保護層35aを成膜し(図15(m))、第1透孔122aと同様の工程(フォトリソグラフィー法等)により第2透孔132aを開孔する(図15(n))。
このとき第2透孔132aは、第2導体間パス電極42aの下半部分が露出するように形成する。次に第2透孔132aを、第1透孔122aと同様の既知の技術を用いて電極材料で埋めることにより、第2導体間パス電極42aを形成する(図16(o))。ここで第2導体間パス電極42aの形成材料としては、図4を用いて説明した、第2導体間パス電極32aの下半分の電極材料と同じ材料を用いても、異なる材料を用いてもかまわない。
【0056】
次に、フォトリソグラフィー法等の成膜手法を適用し、第2保護層35aをパターニングし、第2下部電極31aを露出させるとともに、第2層目の第2有機光電変換膜30aの、その厚み方向の全長に亘って埋め込まれる第2導体間パス電極42aの上半分部分を形成する(図16(p))。なお、ここでは各第2導体間パス電極42aは、第1保護層25aおよび第2保護層35aにより直線状に配列された位置関係とされており、第2下部電極31aの上部の空間部は、上方から見るとストライプ状となっているが、これら各第2導体間パス電極42aは、このような位置関係以外の配置とされていてもよい。
【0057】
次に、図17および図18に第2層目の第2有機光電変換膜30aを形成する方法を示す。第1層目の第1有機光電変換膜20aと同様に、第2有機光電変換膜30aを図16(p)に示す構造の上に積層し(図17(q))、この第2有機光電変換膜30a上に第2上部電極34aを積層し(図17(r))、この第2上部電極34a上に第2絶縁膜37aを積層する(図18(s))。第2絶縁膜37aは第2導体間パス電極42aとほぼ同じ高さとなるように成膜することが望ましい。このように成膜することにより、その後の製造プロセスにおいて、第2保護層35aの上部の積層膜(第2有機光電変換膜30a、第2上部電極34aおよび第2絶縁膜37a)を適切に除去することができるとともに、この積層膜を除去した後に、第2導体間パス電極42aと第3下部電極41aとの段差を小さくして、これら第2導体間パス電極42aと第3下部電極41aの接続を円滑に行うことが可能となる(図19(u)を参照)。なお第2層目の第2有機光電変換膜30aおよび第2上部電極34aの材料や成膜方法等は適宜選択することが可能である。
【0058】
次に、前述したように、上述した第2保護層35aの上部の積層膜を適切な膜除去手法により除去することにより、第2導体間パス電極42aを露出させる(図18(t))。このとき第2導体間パス電極42aが形成されている第2保護層35aの上部以外は全て第2絶縁膜37aで覆われるため、画素領域(第2下部電極31aが形成された領域)に成膜された第2有機光電変換膜30aは第2絶縁膜37aにより保護され、溶液等によるパターニング耐性を得ることが可能となる。したがって、第2保護層35aの上部の第2有機光電変換膜30aを溶剤等で除去してリフトオフを行うことにより、第2有機光電変換膜30a上の第2上部電極34aと第2絶縁膜37aも同時に除去することが可能である。
【0059】
図19に第3層目の第3有機光電変換膜40aを形成する手法を示す。図19(u)に示すように、第2絶縁膜37aの上部に、上述した各下部電極21a、31aの場合と同様に、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行って第3下部電極41aを形成する。第3下部電極41aの一部は第2導体間パス電極42aの上部を覆うように形成され、第2導体間パス電極42aを介して回路基板2a上の第3接続電極43aと接続する。このような3層構造の場合は、第1下部電極21a、第2下部電極31aおよび第3下部電極41aは、図面上方向から見た画素位置が互いに重なるように構成することが望ましい。第3下部電極41aを構成する材料としては、金属や有機導電性材料、導電性を示す有機・無機ハイブリッド材料等の種々の材料を用いることが可能であるが、透明であることが望ましい。
【0060】
次に、第1層目および第2層目の有機光電変換膜20a、30aと同様に、第3有機光電変換膜40aを積層し(図19(v))、次に第3上部電極44aを積層する(図19(w))。本実施例では、第3有機光電変換膜40aに対応する導体間パス電極は形成する必要がないため、第3有機光電変換膜40aと第3上部電極44aをパターニングすることは必要とされない。
上述した一連の製造プロセスにより図1に示す3層構造の積層型撮像素子1を作成することが可能となる。なお、第3層目の第3有機光電変換膜40aや第3上部電極44aの材料や成膜方法等は適宜選択することが可能である。
【0061】
なお、図2図4、および図13図19に示す層構成では、積層構造の理解を容易とするため、側面部分が絶縁膜27a、37aで覆われていない状態を示しているが、側面も絶縁膜27a、37aで覆うことにより側面からの溶液の浸入も防ぐことができ、望ましい。ただし、これらの側面部分が露出する態様であったとしても、画素が形成されている領域がこれらの側面部分から十分離れた位置に配されている場合は、画素への溶液によるダメージを十分小さいものとすることができる。
なお、第3上部電極44aの上部に形成され得る保護層等の、上記されていないその他の構成については、一般的に用いられる膜形成技術により容易に形成することが可能である。
【0062】
[第1の実施形態に係る変更態様]
本発明の第1の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法としては、上述した実施例1、2のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、上記積層型撮像素子をカラー画像撮像素子に適用した場合には、上述した、3つの有機光電変換膜を積層した構成のものを製造する方法に替えて、図20に示すように、2つの有機光電変換膜320、330と1つのCMOSイメージセンサ310を積層した構成のものを製造する方法とすることも可能である。
【0063】
図20に示す、2つの有機光電変換膜320、330と1つのCMOSイメージセンサ310を積層した構成の積層型撮像素子301の製造方法については、上述した実施例1および実施例2の各変更態様として、以下に順に説明する。また、それらの実施例の変更態様の前提として、それらの実施例の変更態様により製造される積層型撮像素子301の変更態様についても説明する。
なお、図20に示す変更態様の積層型撮像素子301は、図1に示す第1の実施形態の積層型撮像素子1と、主に2点において相違している。
【0064】
まず、第1の相違点は、第3層目の第3有機光電変換膜40に替えてCMOSイメージセンサ310が用いられている点であり、図面上の具体的な構造としては、図1における読出し回路12が、図20におけるCMOSイメージセンサ310に置き替えられている。
また第2の相違点は、第1上部電極324を回路基板302と接続させるために、上部導体間パス電極322および上部接続電極353が設けられている点である。
【0065】
したがって、保護層325、335の厚み方向全長に亘って埋め込まれる、高さの異なる2つの導体間パス電極332、342を形成する、上述した実施例1、2の製造方法の基本的な考え方は、図20の積層型撮像素子の製造方法においても同じであり、具体的な構成も大部分はそのまま適用することができるため、以下では、実施例1および実施例2の変更態様として、上述した実施例1および実施例2とは相違する部分についてのみ説明する。
【0066】
<積層型撮像素子の変更態様>
図20は第1の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法により製造された積層型撮像素子301の概略断面図を示す。この積層型撮像素子301は、回路基板302上に、CMOSイメージセンサ310、第1有機光電変換膜320、第2有機光電変換膜330を積層した構造の積層型撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)301である。ここで第1上部電極324は上部導体間パス電極322、上部接続電極353および第1導体間パス電極332を介して第2接続電極333に接続する構成となっている。
【0067】
すなわち、第1絶縁膜327には、その厚み方向全長に亘って埋め込まれた上部導体間パス電極(フォトリソグラフィーによるパターニング(開孔)、および、めっき法を用いて形成可能)322が配されており、上部接続電極(導電材料(金属や有機導電膜)の成膜法およびパターニングを用いて形成可能)353を介して、第1導体間パス電極332と接続している。上部接続電極353の上部には中間絶縁膜427が形成され、第2下部電極331との絶縁性が確保されている。その他の構成は、図1に示す積層型撮像素子1と基本的に同様である。
【0068】
<実施例1の変更態様>
次に、実施例1の変更態様に係る積層型撮像素子301の製造方法について説明する。
回路基板302上への、下部絶縁膜317、第1下部電極321、第1有機光電変換膜320、第1上部電極324、第1絶縁膜327、第1導体間パス電極332、第2導体間パス電極342、および各保護層325、335の形成は、図2図8に示された製造プロセスと同様にして形成されるため、省略する。
【0069】
次に第1絶縁膜327について、フォトリソグラフィー法等の成膜手法を用いてパターニングを行い、上部導体間パス電極322を埋め込むための透孔を設ける。
次に透孔を電極材料で埋めて上部導体間パス電極322を形成する。上部導体間パス電極322の材料は金属や有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能である。上部導体間パス電極322の構成材料としては、電極材料に金属を用いる際には、めっき法等の既知の技術により形成することができる。また導電性高分子材料等を用いる場合には、溶液を注入して乾燥させることで形成可能である。なお、何れの場合も表面の研磨やパターニング等、既知の作成技術により容易に形成することが可能である。
【0070】
次に上部接続電極353を形成する。上述の上部導体間パス電極322を形成する際に表面に付着する電極材料をフォトリソグラフィー法等でパターニングすることにより形成することも可能であるが、電極材料を成膜後に同様にフォトリソグラフィー法等でパターニングすることにより形成してもよい。その形成材料としては金属や有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能である。
【0071】
さらに絶縁性を有する中間絶縁膜427を第2導体間パス電極342とほぼ同じ高さまで積層することにより、外見上、図10(u)に示す形態と同様の形態とされる。中間絶縁膜427を形成した直後においては、中間絶縁膜427は第2導体間パス電極342の周囲を取り囲むように配された第2保護層335の上部にも積層された状態となっている。第2保護層335の上部に積層された中間絶縁膜427の除去手法としては、研磨によって平坦化する手法や、フォトリソグラフィー法等によるパターニングにより除去する手法等が可能である。
その後、第2下部電極331、第2有機光電変換膜330、第2上部電極334を順次積層するが、図19に示す、3層目の製造工程と同様とされるため、省略する。
【0072】
<実施例2の変更態様>
次に、実施例2の変更態様に係る積層型撮像素子301aの製造方法について説明する。なお、本実施例においては、図20に示す各部材については、その各部材の各符号の後にaを加えたもので読み替えるものとする。また図20では中間絶縁膜427と第2保護層335は分離した構造となっているが、本変更態様では一体化した構造となるため、ここでは第2保護層335aで統一する。
また、回路基板302a上への、下部絶縁膜317a、第1下部電極321a、第1有機光電変換膜320a、第1上部電極324a、第1絶縁膜327a、第1導体間パス電極332a、第2導体間パス電極342a、および各保護層325aの形成は、図2図4図13、および図14に示された製造プロセスと同様にして形成されるため、省略する。
【0073】
次に第1絶縁膜327aについて、フォトリソグラフィー法等の成膜手法を用いてパターニングを行い、上部導体間パス電極322aを形成するための透孔を設ける。
次に透孔を電極材料で埋めて上部導体間パス電極322aを形成する。上部導体間パス電極322aの材料は金属や有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能である。上部導体間パス電極322aの構成材料としては、電極材料に金属を用いる際には、めっき法等の既知の技術により形成することができる。めっき法を適用した場合、表面の平坦性が確保されているため、下地の有機層にダメージが生じない程度に第1絶縁膜327aの上部に付着した金属を研磨により除去することも可能である。また導電性高分子材料等を用いる場合には、溶液を注入して乾燥させることで形成可能である。なお、何れの場合も表面の研磨やパターニング等、既知の作成技術により容易に形成することが可能である。
【0074】
次に上部接続電極353aを形成する。上述の上部導体間パス電極322aを形成する際に表面に付着する電極材料をフォトリソグラフィー法等でパターニングすることにより形成することも可能であるが、電極材料を成膜後に同様にフォトリソグラフィー法等でパターニングすることにより形成してもよい。その形成材料としては金属や有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能であり、各々適切な既知のパターニング方法で形成することが可能である。
【0075】
続いて第2保護層335aおよび第2導体間パス電極342aを形成する。これらの製造工程は図15(m)~図16(o)と同様の製造工程であるため、説明を省略する。ただし、この第2保護層335aは上部接続電極353aと第2下部電極331aとの絶縁性を確保するために形成されるものであり、絶縁性が確保される範囲おいて、第2保護層335aの膜厚を薄くすることができる。その場合は、第2導体間パス電極342aを図16(o)に示す工程を用いて形成する必要は必ずしもなく、第2下部電極331aを図3(d)に示す工程と同様に、第2導体間パス電極342aの上部(図3(c)の下地透孔112に対応)に形成することにより、第2透孔132aを電極材料で埋めることで、第2下部電極331aと第2導体間パス電極342aの導通を図ることが可能である。
【0076】
その後、第2下部電極331a、第2有機光電変換膜330a、第2上部電極334aを順次積層するが、図19に示す、第3層目の製造工程と同様とされるため、省略する。
【0077】
[第2の実施形態]
次に、図21に示す第2の実施形態に係る、積層型撮像素子およびその製造方法に関し、代表的な実施例である実施例3を用いて説明する。
<実施例3>
この実施例3の積層型撮像素子は、上述した実施例1、2により製造された積層型撮像素子と同様の特徴を有するほか、この実施例1、2により製造された積層型撮像素子における、第1保護層25に替えて、第1下部壁構造551および第1上部壁構造552からなる2段壁構造を、第2保護層35に替えて、第2下部壁構造571および第2上部壁構造572からなる2段壁構造を設けている点に特徴を有している。
【0078】
ところで、上述した実施例1、2の技術により製造された積層型撮像素子においては、光電変換膜材料や電極材料を蒸着やスパッタ等の手法を用いて成膜していく際に、これらの材料が、導体間パス電極(貫通電極)を上下方向に埋設した保護層の側壁部にも付着していくと、パターンを導体間パス電極(貫通電極)の各列毎にストライプ状等に分断していくことが困難となる。
【0079】
この問題を解決するために、上記保護層が基板に向かうにしたがってテーパー形状(逆テーパー形状)になるように形成する手法が知られているが、このような保護層の側面構造は極めて微小であるため、そこに連続的なテーパー形状を形成することは、実際には、製造技術的に困難である。
【0080】
そこで、本実施例においては、このような実施例1、2の問題をも解決し得るように、各導体間パス電極(貫通電極)を囲む保護層の各々を、横方向の幅が、下部よりも上部の方が大きい2段構造(上部が顎状に張り出す構造)とし、かつ、下部構造部分の最上部の位置が光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように形成している。
これにより、保護層の上部構造が顎状となって張り出すことにより下部構造部分の側面部分への、光電変換膜材料や電極材料の付着が阻止され(さらには材料照射流が遮ぎられ)、有機光電変換膜と下部構造部分の側面部分とが接触し難くなり、これにより、パターンを導体間パス電極(貫通電極)の各列毎にストライプ状または島状に分断することが容易となる。
【0081】
一方、実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法は、各導体間パス電極(貫通電極)を囲む保護層の各々を、横方向の幅が、下部よりも上部の方が大きい2段構造(上部が顎状に張り出す構造)とし、かつ、下部構造部分の最上部の位置が光電変換膜の上面の高さ位置よりも上方となるように形成することを容易とするものであり、その概要は、以下のような工程順で行われる。
【0082】
すなわち、上記保護層の2段構造のうち下部構造をフォトリソグラフィー等で、ストライプ状に形成した後に、下部構造が形成されていない部分に、樹脂を注入することによりダミー層を形成する。次に、上記下部構造およびダミー層上に(下部構造と同様の材料でもよい)上部構造形成膜を成膜し、その後、パターニングを行うことにより上部構造を形成する。その後、この上下2段構造の保護層の内部を上下に貫通するように形成された透孔に電極材料を注入して導体間パス電極を形成するとともに、上記下部構造が形成されていない部分に配されたダミー層を除去することで、内部に導体間パス電極を配設した2段構造の保護層(以下、2段壁構造と称する。上記下部構造および上記上部構造は、以下、下部壁構造および上部壁構造と称する。)が形成される。また、配設する導体間パス電極の数に応じて、繰り返し2段壁構造を形成する工程を実行する。
【0083】
その他の、主な製造工程は上記実施例1、2の製造工程と同様であり、実施例3に係るこのような製造工程を実行することにより、ストライプ状の2段壁構造で、列状の導体間パス電極毎に確実に分離された積層型撮像素子を容易に製造することが可能である。
【0084】
前述したように、図21は実施例3に係る積層型撮像素子501の概略断面図を示すものであり、図1の実施例1、2に係る積層型撮像素子1における対応する部材に付した符号に500を加えた符号を付して表したものである。ただし、図21は、実施例3に係る積層型撮像素子501の積層構造を説明の便宜のため概念的に示すものであるから、実際に製造された積層型撮像素子501とは整合していない部分がある(図33の積層型撮像素子601において同じ)。
【0085】
図21に示す積層型撮像素子501は、光電変換部504が読出し回路部503(回路基板502の上部に読出し回路512および各接続電極523、533、543を備えてなる)上に形成されてなり、光電変換部504が、第1有機光電変換膜520を含む第1有機光電変換部、第2有機光電変換膜530を含む第2有機光電変換部、および第3有機光電変換膜540を含む第3有機光電変換部からなる3層構造の積層型撮像素子(RGBカラー画像撮像素子)とされており、図中上方から光が入射するように構成されている。
【0086】
また、各有機光電変換膜520、530、540は各々、対応する接続電極(第1接続電極523、第2接続電極533、第3接続電極543)と接続される。各有機光電変換膜520、530、540は各々、対応する下部電極(本実施例における下部電極は、画素電極として機能するものを意味する)521、531、541と対応する上部電極524、534、544に挟まれた構造とされ、上部電極524、534、544は共通電極として素子の側面から外部に取り出すことが可能な構造である(したがって、本願明細書では上部電極を共通電極とも称する)。
【0087】
第1下部電極521は下部絶縁膜517を介して回路基板502上に形成されており、下部絶縁膜517の開口を通して第1接続電極523と導通している。なお、下部絶縁膜517は薄く形成されているため、画素電極の成膜時に導通を取ることが可能であり、メッキ等の手法によって必ずしも埋めることは必要とされない。また各導体間パス電極(第1導体間パス電極532、第2導体間パス電極542)は対応する保護層(第1下部壁構造551および第1上部壁構造552、ならびに第2下部壁構造571および第2上部壁構造572)の厚み方向全長に亘って埋め込まれた状態とされており、第1導体間パス電極532は第2下部電極531と、第2導体間パス電極542は第3下部電極541と接続されている。
【0088】
図21に示すように、本実施例の積層型撮像素子501においては、有機光電変換膜520、530が配置されていない位置において、上方の下部電極531、541と下方の接続電極533、543を接続するように導体間パス電極532、542が形成されており、これら導体間パス電極532、542の周囲を絶縁性の保護層(第1下部壁構造551および第1上部壁構造552、ならびに第2下部壁構造571および第2上部壁構造572)で覆う構成とされている。
なお、導体間パス電極532、542の配設位置は種々選択可能であり、保護層(第1下部壁構造551および第1上部壁構造552、ならびに第2下部壁構造571および第2上部壁構造572)の形成材料としても、絶縁性を有するものであれば種々選択可能である。
【0089】
上述したように、実施例3の積層型撮像素子501においては、導体間パス電極532、542を埋設した保護層が、下部壁構造551、571と上部壁構造552、572を積み重ねた2段壁構造とされている点に特徴を有している。
具体的には、導体間パス電極532を保護する構造は、横幅が小さい下部壁構造551上に横幅が大きい上部壁構造552が積層され、上部壁構造552の一部(第1有機光電変換膜520側部分)が下部壁構造551から顎状に張り出した形状とされている。また、導体間パス電極542を保護する構造は、下方部分と上方部分が、別の2段壁構造により保護されている。すなわち、下方部分を保護する構造は、上述した導体間パス電極532を保護する構造と同じであるが、上方部分を保護する構造は、横幅が小さい下部壁構造571上に横幅が大きい上部壁構造572が積層され、上部壁構造572の一部(第2有機光電変換膜530側部分)が下部壁構造571から顎状に張り出した形状とされている。
【0090】
このように上部壁構造552、572は、下部壁構造551、571より横幅が大きく形成されており、これにより有機光電変換膜520、530および上部電極524、534のパターニングを的確に行うことができるようになっている。すなわち、上部壁構造552、572が顎状となって張り出すことにより下部壁構造551、571の側面部分への光電変換膜材料や電極材料の付着が阻止され(さらには材料照射流が遮ぎられ)、有機光電変換膜と下部構造部分の側面部分とが接触し難くなり、これにより、パターンを導体間パス電極(貫通電極)の各列毎にストライプ状または島状に分断することが容易となる。
【0091】
なお、第1絶縁膜527および第2絶縁膜537は、図1に示された、実施例1、2のものとは異なり、下部壁構造551、571の側面部分に接触する位置まで入り込んでおり、この部分で有機光電変換膜520、530を保護する構成とされている。この構成および効果は、各下部壁構造551、571の最上部位置が、対応する有機光電変換膜520、530の上面(さらには、対応する上部電極524、534の上面)よりも高い位置に設けられることにより、担保されている。
【0092】
次に、実施例3に係る、積層型撮像素子の製造方法について、図22~32を用いて順に説明するが、実施例1、2と重複する詳細な説明については、煩を避けるため省略することもある。
まず、図22に第1下部電極521の形成プロセスを示す。まず図22(a)に示すように回路基板502の上部に、画素毎に、読出し回路512、第1接続電極523、第2接続電極533、および第3接続電極543を形成し、これら各部材を被覆するようにして、回路基板502の上面に下部絶縁膜517を形成する。
【0093】
ここで下部絶縁膜517は、第1下部電極521と読出し回路512との絶縁性を確保するための薄膜である。下部絶縁膜517の形成材料としては、実施例1、2と同様である。
【0094】
次に下部絶縁膜517にフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングを行い、所定位置に下地透孔612を形成する(図22(b))。この下地透孔612は、第1接続電極523の直上に形成される。次に、電極材料(金属や有機導電膜材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等)を成膜し、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行い、第1下部電極521を形成する(図22(c))。
【0095】
ここでは、第1下部電極521は下地透孔612を覆うようにパターニングされており、下地透孔612を通して第1接続電極523と電気的に導通している(図22(d))。なお、第1下部電極521を構成する材料としては、実施例1、2と同様である。
【0096】
続いて、第1保護層として機能する、第1下部壁構造551および第1上部壁構造552からなる2段壁構造を形成する。この形成手法としては、既知のフォトリソグラフィー法等の成膜手法を適用し、画素領域部分の第1下部壁構造551および第1上部壁構造552をパターニングして除去することにより、第1下部電極521を露出させる(図23(f)、図25(l))。
【0097】
すなわち、まず、下部絶縁膜517および第1下部電極521上に第1下部壁構造551の材料を成膜する(図23(e))。
続いて、第1下部壁構造551をパターニングすることにより画素領域部分の第1下部壁構造551を除去する(図23(f))。
【0098】
次に、図23(f)の工程で除去した第1下部壁構造551部分を、ダミー層としての第1犠牲層561により埋めるようにする(図23(g))。第1犠牲層561は適宜、周知の塗布材料などにより形成する。また、第1犠牲層561の上面は上記第1下部壁構造551の上面と同じ高さとなるように形成することが好ましい。なお、第1犠牲層561を成膜した後に、この上面と第1下部壁構造551の上面を、同様に研磨して同様の高さとなるように平坦化してもよい。
【0099】
この後、第1下部壁構造551と第1犠牲層561上に、第1上部壁構造552の材料を成膜する(図23(h))。
続いて、第1下部壁構造551と第1上部壁構造552が積み重ねられた部分に第1導体間パス電極532、および第2導体間パス電極542の下方部分を収納するための第1透孔522を、例えばフォトリソグラフィー法などを用いることにより開設する(図24(i))。
【0100】
次に、第1透孔522を導体間パス電極材料により埋めることにより、第1導体間パス電極532、および第2導体間パス電極542の下方部分を形成する(図24(j))。
続いて、第1上部壁構造552をパターニングすることにより画素領域部分の第1上部壁構造552を除去する(図24(k))。このとき、第1上部壁構造552によって第1下部壁構造551の上面が覆われるように、かつ第1上部壁構造552の横方向の幅(画素領域方向に延びる長さ)が、第1下部壁構造551の横方向の幅(画素領域方向に延びる長さ)よりも長くなるようにパターニングを行う。
【0101】
次に、第1犠牲層561を、適宜エッチング法などを用いて除去する(図25(l))。ウェットエッチング法を用いる場合は、各壁構造551、552、各導体間パス電極532、542、下部絶縁膜517、さらには第1下部電極521の各材料にダメージを与えないエッチング液を使用する。なお、第1犠牲層561の除去後、下部絶縁膜517および第1下部電極521の表面を紫外線洗浄や溶液などを用いて適宜クリーニングすることが望ましい。
なお、図25(l)においては、第1下部電極521が形成されている画素領域部分、および第1下部壁構造551と第1上部壁構造552からなる保護層部分はストライプ状となっているが、素子構造に応じて異なる形状としても良い。例えば、上記保護層部分がストライプ状ではなく、互いに分離した島状とされていてもよい。
【0102】
この後、第1有機光電変換膜520を成膜する(図25(m))。このとき、成膜処理において、成膜材料の照射流は、第1下部壁構造551上に顎状に張り出し、いわば傘の役割を担う第1上部壁構造552によって、第1下部壁構造551の側面に向かう流れが遮蔽され、第1下部壁構造551の側面に付着することが防止される。これにより、第1有機光電変換膜520を、第1上部壁構造552の上面に堆積した第1有機光電変換膜520と完全に分離させることができるため、画素領域部分でのパターニングが可能となる。
【0103】
次に、第1有機光電変換膜520上に第1上部電極524を成膜する。第1上部電極524も第1有機光電変換膜520とほぼ同様の横幅を有するようにして、第1下部壁構造551との間に、間隙が形成されるようにパターニングを行う(図25(n))。
【0104】
この後、第1上部電極524上に第1絶縁膜527を成膜する(図26(o))。塗布可能な流動性のある材料を用いることにより、第1下部壁構造551と第1有機光電変換膜520との間隙にも入り込んで、溝侵入部527aが形成され、この溝侵入部527aによって側面を覆うことにより第1有機光電変換膜520を保護することができる。なお、第1絶縁膜527を無機材料により成膜する場合には、第1下部壁構造551と第1有機光電変換膜520との間隙に入り込むことはないので、溝侵入部527aは形成されないが、第1上部壁構造552と同じ高さまで第1絶縁膜527を成膜することにより、第1有機光電変換膜520や第1上部電極524を完全に覆って、薬品などから保護することができる。これにより、その上部の電極の形成時にパターニングを行うことも可能となる。
【0105】
次に、第1上部壁構造552上に堆積した第1有機光電変換膜520を除去することにより、その第1有機光電変換膜520上に堆積した第1上部電極524や第1絶縁膜527も同時に除去することができる(リフトオフ)(図26(p))。なお、本実施例の製造プロセスにおいても、第1絶縁膜527により第1有機光電変換膜520は保護されているため、第1有機光電変換膜520のエッチング液などによるダメージを防止することができる。
【0106】
以上に説明した製造工程により、第1段目構造部分の製造が終了する。
続いて、第2段目構造部分の製造について説明するが、第1段目構造部分の製造と類似しているので、図27(q)~図31(γ)を用い、要点のみを簡単に説明する。
【0107】
まず、第1絶縁膜527および第1上部壁構造552上に第2下部壁構造571の材料を成膜する(図27(q))。
続いて、第2下部壁構造571をパターニングすることにより画素領域部分の第2下部壁構造571を除去する(図27(r))。
【0108】
次に、図27(r)の工程で除去した第2下部壁構造571部分を、ダミー層としての第2犠牲層581により埋めるようにする(図27(s))。第2犠牲層581は適宜、周知の塗布材料などにより形成する。また、第2犠牲層581の上面は上記第2下部壁構造571の上面と同じ高さとなるように形成することが好ましい。なお、第2犠牲層581を成膜した後に、第2犠牲層581と第2下部壁構造571の各上面を同様に研磨して同様の高さとなるように平坦化してもよい。
【0109】
この後、第2下部壁構造571と、第2犠牲層581上に、第2上部壁構造572の材料を成膜する(図28(t))。
続いて、第2下部壁構造571と第2上部壁構造572が積み重ねられた部分に第2導体間パス電極542の上方部分を収納するための第2透孔582を、第2導体間パス電極542の上方に、例えばフォトリソグラフィー法などを用いることにより開設する(図28(u))。
【0110】
次に、第2透孔582を導体間パス電極材料により埋めることにより、第2導体間パス電極542の上方部分を形成する(図28(v))。
続いて、第2上部壁構造572をパターニングすることにより画素領域部分の第2上部壁構造572を除去する(図29(w))。このとき、第2上部壁構造572によって第2下部壁構造571の上面が覆われるように、かつ第2上部壁構造572の横方向の幅(画素領域方向に延びる長さ)が、第2下部壁構造571の横方向の幅(画素領域方向に延びる長さ)よりも長くなるようにパターニングを行う。
【0111】
次に、第2犠牲層581を、適宜エッチング法などを用いて除去する(図29(x))。ウェットエッチング法を用いる場合は、各壁構造571、572、各導体間パス電極532、542、第1保護膜527、第1上部壁構造552の各材料にダメージを与えないエッチング液を使用する。なお、第2犠牲層581の除去後、第1絶縁膜527および第1上部壁構造552の表面を紫外線洗浄や溶液などを用いて適宜クリーニングすることが望ましい。
【0112】
この後、第1絶縁膜527および第1上部壁構造552上に第2下部電極531を成膜する(図29(y))。
なお、図29(x)においては、第2下部電極531が形成されている画素領域部分、および第2下部壁構造571と第2上部壁構造572からなる保護層部分はストライプ状となっているが、これらの領域の下層に位置する層形状に応じて、ストライプ状とは異なる形状としても良い。
【0113】
この後、第2有機光電変換膜530を成膜する(図30(z))。
次に、第2有機光電変換膜530上に第2上部電極534を成膜する。第2上部電極534も第2有機光電変換膜530とほぼ同様の横幅を有するようにして、第2下部壁構造571との間に、間隙が形成されるようにパターニングを行う(図30(α))。
このとき、成膜処理において、成膜材料の照射流は、第2下部壁構造571上に顎状に張り出し、いわば傘の役割を担う第2上部壁構造572によって、第2下部壁構造571の側面に向かう流れが遮蔽され、第2下部壁構造571の側面に付着することが防止される。これにより、第2有機光電変換膜530を、第2上部壁構造572の上面に堆積した第2有機光電変換膜530と完全に分離させることができるため、画素領域部分でのパターニングが可能となる。
【0114】
この後、第2上部電極534上に第2絶縁膜537を成膜する(図31(β))。塗布可能な流動性のある材料を用いることにより、第2下部壁構造571と第2有機光電変換膜530との間隙にも入り込んで、溝侵入部537aが形成され、この溝侵入部537aによって覆うことにより第2有機光電変換膜530を保護することができる。なお、第2絶縁膜537を無機材料により成膜する場合には、第2下部壁構造571と第2有機光電変換膜530との間隙に入り込むことはないので、溝侵入部537aは形成されないが、第2上部壁構造572と同じ高さまで第2絶縁膜537を成膜することにより、第2有機光電変換膜530や第2上部電極534を完全に覆って、薬品などから保護することができる。これにより、その上部の電極形成時にパターニングを行うことも可能となる。この点も上記実施例1、2と同様である。
【0115】
次に、第2上部壁構造572上に堆積した第2有機光電変換膜530を除去することにより、その第2有機光電変換膜530上に堆積した第2上部電極534や第2絶縁膜537も同時に除去することができる(リフトオフ)(図31(γ))。なお、上記実施例1、2と同様に、本実施例の製造プロセスにおいても、第2絶縁膜537により第2有機光電変換膜530は保護されているため、第2有機光電変換膜530のエッチング液などによるダメージを防止することができる。
【0116】
図32に第3層目の第3有機光電変換膜540を形成する手法を示す。図32(δ)に示すように、第2絶縁膜537の上部に、上述した各下部電極521、531の場合と同様に、フォトリソグラフィー法等を適用したパターニングを行って第3下部電極541を形成する。第3下部電極541の一部は第2導体間パス電極542上部を覆うように形成され、第2導体間パス電極542を介して回路基板502上の第3接続電極543と接続する。このような3層構造の場合は、第1下部電極521、第2下部電極531および第3下部電極541は、図面上方向から見た画素位置が互いに重なるように構成することが望ましい。第3下部電極541を構成する材料としては、金属や有機導電性材料、導電性を示す有機・無機ハイブリッド材料等の種々の材料を用いることが可能であるが、透明であることが望ましい。
【0117】
次に、第1層目および第2層目の有機光電変換膜520、530と同様に、第3有機光電変換膜540を積層し(図32(ε))、次に第3上部電極544を積層する(図32(ζ))。
本実施例では、第3有機光電変換膜540に対応する導体間パス電極は形成する必要がないため、第3有機光電変換膜540と第3上部電極544をパターニングすることは必要とされない。
【0118】
上述した一連の製造プロセスにより図21に示す3層構造の積層型撮像素子501を作成することが可能となる。なお、第3層目の第3有機光電変換膜540や第3上部電極544の材料や成膜方法等は適宜選択することが可能である。
また図26(p)の工程の後に、図29(y)で形成する第2下部電極531を、第2下部壁構造571等の層よりも先に形成しても良い。その場合は、第2下部電極531のパターニングを容易に行うことができる。
【0119】
[第2の実施形態に係る変更態様]
本発明の第2の実施形態に係る積層型撮像素子およびその製造方法としては、上述した実施例3のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、上記積層型撮像素子をカラー画像撮像素子に適用した場合には、上述した、3つの有機光電変換膜を積層した構成のものを製造する方法に替えて、図33に示すように、2つの有機光電変換膜620、630と1つのCMOSイメージセンサ610を積層した構成のものを製造する方法とすることも可能である。
【0120】
図33に示す、2つの有機光電変換膜620、630と1つのCMOSイメージセンサ610を積層した構成の積層型撮像素子601およびその製造方法については、上述した実施例3の変更態様として、以下に説明する。
なお、図33に示す変更態様の積層型撮像素子601は、図21に示す実施例3の積層型撮像素子501と、主に3点において相違している。
【0121】
まず、第1の相違点は、第3層目の第3有機光電変換膜540に替えてCMOSイメージセンサ610が用いられている点であり、図面上の具体的な構造としては、図21における読出し回路512が、図33におけるCMOSイメージセンサ610に置き替えられている。
また第2の相違点は、第1上部電極624を回路基板602と接続させるために、上部導体間パス電極622および上部接続電極653が設けられている点である。
さらに、第3の相違点は、第2導体間パス電極642の上方部を取り囲む保護層635が、図21における第2下部壁構造471および第2上部壁構造472のように2段壁構造とされておらず1段とされている点のみにおいて相違している。
【0122】
したがって、下部壁構造551、571および上部壁構造552、572からなる2段構造の保護層部の厚み方向に埋め込まれた、高さの異なる2つの導体間パス電極532、542を形成する、との上述した実施例3の基本的な考え方は、図33の積層型撮像素子601およびその製造方法においても同じであり、具体的な構成も大部分はそのまま適用することができる。したがって、以下の実施例3の変更態様については、上述した実施例3と同様の部分については、省略することもある。
【0123】
<積層型撮像素子の変更態様>
図33は実施例3の変更態様に係る積層型撮像素子601の概略断面図を示す。この積層型撮像素子601は、回路基板602上に、CMOSイメージセンサ610、第1有機光電変換膜620、第2有機光電変換膜630を積層した構造の積層型撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)601である。ここで第1上部電極624は上部導体間パス電極622、上部接続電極653および第1導体間パス電極632を介して第2接続電極633に接続する構成となっている。
【0124】
すなわち、第1絶縁膜627には、その厚み方向全長に亘って埋め込まれた上部導体間パス電極(フォトリソグラフィーによるパターニング(開孔)、および、めっき法を用いて形成可能)622が配されており、上部接続電極(導電材料(金属や有機導電膜)の成膜法およびパターニングを用いて形成可能)653を介して、第1導体間パス電極632と接続している。上部接続電極653の上部には保護層635が形成され、第2下部電極631との絶縁性が確保されている。その他の構成は、図21に示す積層型撮像素子1と基本的に同様である。
【0125】
<積層型撮像素子の製造方法の変更態様>
次に、実施例3の変更態様に係る積層型撮像素子601の製造方法について説明する。
また、回路基板602上への、下部絶縁膜617、第1下部電極621、第1有機光電変換膜620、第1上部電極624、第1絶縁膜627、第1導体間パス電極632、第2導体間パス電極642、および下部壁構造651、上部壁構造652の形成は、図22(a)~図26(p)に示された製造プロセスと同様にして形成されるため、省略する。
【0126】
次に、第1絶縁膜627について、フォトリソグラフィー法等の成膜手法を用いてパターニングを行い、上部導体間パス電極622を形成するための透孔を設ける。
次に透孔を電極材料で埋めて上部導体間パス電極622を形成する。上部導体間パス電極622の材料は金属や有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能である。上部導体間パス電極622の構成材料としては、電極材料に金属を用いる際には、めっき法等の既知の技術により形成することができる。めっき法を適用した場合、表面の平坦性が確保されているため、下地の有機層にダメージが生じない程度に第1絶縁膜627の上部に付着した金属を研磨により除去することも可能である。また導電性高分子材料等を用いる場合には、溶液を注入して乾燥させることで形成可能である。なお、何れの場合も表面の研磨やパターニング等、既知の作成技術により容易に形成することが可能である。
【0127】
次に、上部接続電極653を形成する。上述の上部導体間パス電極622を形成する際に表面に付着する電極材料をフォトリソグラフィー法等でパターニングすることにより形成することも可能であるが、電極材料を成膜後に同様にフォトリソグラフィー法等でパターニングすることにより形成してもよい。その形成材料としては金属や有機導電性材料、導電性を有する有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能であり、各々適切な既知のパターニング方法で形成することが可能である。
続いて第2保護層635および第2導体間パス電極642を形成する。これらの製造工程は図15(m)~図16(o)と同様の製造工程であるため、説明を省略する。
【0128】
この後、保護層635上に第2下部電極631を成膜して、この第2下部電極631が第2導体間パス電極642と電気的に接続されるように構成される。
なお、第2下部電極631が形成されている画素領域部分、および保護層635部分はストライプ状となっているが、これらの領域よりも下層の層形状に応じて、ストライプ状とは異なる形状としても良い。
【0129】
次に、第2下部電極631上に第2有機光電変換膜630を成膜する。
この後、第2有機光電変換膜630上に第2上部電極634を成膜する。
本実施例では、第2有機光電変換膜630に対応する導体間パス電極は形成する必要がないため、第2有機光電変換膜630と第2上部電極634をパターニングすることは必要とされない。
【0130】
上述した一連の製造プロセスにより、実施例3の積層型撮像素子601を作成することが可能となる。
【0131】
<その他の変更態様>
上記第1および第2の実施形態および、これら第1および第2の実施形態の変更態様により製造された積層型撮像素子においては、3層構成の有機光電変換膜または、2層構成の有機光電変換膜およびCMOSイメージセンサとの3つの光電変換要素を有しているが、これに替えて、4つ以上の有機光電変換要素を有するようにしてもよく、例えば、G光用に2つ以上の有機光電変換膜を、R光用とB光用に各々1つの有機光電変換膜を割り当てるようにしてもよい。
【0132】
なお、本発明の積層型撮像素子およびその製造方法は、上記第1および第2の実施形態および、これら第1および第2の実施形態の変更態様で説明した態様のみならず、有機光電変換膜自体を貫通させることなく、有機光電変換膜の上下に位置する電極と、回路基板の電極との間に、電気的なパスを形成することが要求される素子に対して広く適用することができる。例えば、図1および図21に示す積層型撮像素子の上部電極を回路基板と接続する構成とされるような積層型撮像素子においては各々、図20および図33に示す上部導体間パス電極、上部接続電極、および第2導体間パス電極を形成する工程を適用することで製造することができる。また、例えば、図1および図21に示す積層型撮像素子において、全ての上部接続電極を回路基板から接続する構成とされるような積層型撮像素子においては、第3上部電極の上部に絶縁膜を設けて上部導体間パス電極と上部接続電極を形成する構成とし、高さの異なる導体間パス電極を、例えば5種類形成することで、有機光電変換膜を駆動する各電極を各々回路基板の所定の電極に接続することができる(2つの下部電極と3つの上部電極各々に対して導体間パス電極を形成する)。
【0133】
また、上記第2の実施形態および、この第2の実施形態の変更態様においては、有機光電変換膜や電極を保護するために、導体間パス電極を、下部壁構造および上部壁構造からなる2段壁構造の保護層部で覆うようにしているが、上部壁構造の下部壁構造からの張出し量は、適宜設定し得る。要は、有機光電変換膜や電極を成膜する際に、その材料が、有機光電変換膜や電極の側面と対向する、下部壁構造の側面に付着するのを阻止して、不測の導通状態が生じるのを防止することができればよい。
また、上記有機光電変換膜を下層に用い、光入射側の最上層は無機光電変換膜としたハイブリッドのデバイス構成とすることも可能である。
また、有機光電変換膜を1層だけ用い、上部電極を、上述した第2導体間パス電極タイプの電極を用いて回路基板に電気的に接続するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0134】
1、301、501、601 積層型撮像素子
2、2a、302、502、602 回路基板
3、303、503、603 読出し回路部
12、512 読出し回路
4、304、504、604 光電変換部
17、17a、317、517、617 下部絶縁膜
20、20a、320、520、620 第1有機光電変換膜
21、21a、321、521、621 第1下部電極
23、23a、323、523、623 第1接続電極
24、24a、324、524、624 第1上部電極
25、25a、325 第1保護層
27、27a、327、527、627 第1絶縁膜
30、30a、330、530、630 第2有機光電変換膜
31、31a、331、531、631 第2下部電極
32、32a、332、532、632 第1導体間パス電極
33、33a、333、533、633 第2接続電極
34、34a、334、534、634 第2上部電極
35、35a、335 第2保護層
37、37a、537 第2絶縁膜
40、40a、540 第3有機光電変換膜
41、41a、541 第3下部電極
42、42a、342、542、642 第2導体間パス電極
43、43a、343、543、643 第3接続電極
44、44a、544 第3上部電極
112 下地透孔
122、122a 第1透孔
132、132a 第2透孔
222 透孔
225、635 保護層
232 導体間パス電極
310、610 CMOSイメージセンサ
322、622 上部導体間パス電極
353、653 上部接続電極
427 中間絶縁膜
522 第1透孔
527a、537a、627a 溝侵入部
551 第1下部壁構造
552 第1上部壁構造
561 第1犠牲層
571 第2下部壁構造
572 第2上部壁構造
581 第2犠牲層
651 下部壁構造
652 上部壁構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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