(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ブロックゲージを用いたセットアップ方法
(51)【国際特許分類】
B24B 47/22 20060101AFI20240510BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240510BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240510BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B24B47/22
B24B7/04 A
B23Q17/22 D
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020054018
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 真人
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058160(JP,A)
【文献】特開2008-087104(JP,A)
【文献】特開2017-193043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 47/22
B24B 7/04
B23Q 17/22
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、加工具を用いて該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工具を該保持面に垂直な方向に移動させる移動手段と、を備える加工装置において、
該加工具を該チャックテーブルに接近させて、該保持面と該加工具の先端との間の距離を測定することによって、該保持面に該加工具の先端が接触する際の該加工具の位置を記憶させるセットアップ方法であって、
該移動手段を用いて該加工具を該チャックテーブルに接近する方向に移動させることにより、該保持面と該加工具の先端との間に隙間を形成して、該隙間に進入可能な
予め厚み
が定められた第1ブロックゲージと、該隙間に進入できない該第1ブロックゲージより厚い
予め厚み
が定められた第2ブロックゲージとを用いて該隙間に該第1ブロックゲージが進入可能で該第2ブロックゲージが進入できないことを確認する確認工程と、
該第2ブロックゲージと該第1ブロックゲージとの厚み差の半分の距離だけ、該加工具を該保持面に接近させて該保持面と該加工具の先端との間に第2隙間を形成する第2隙間形成工程と、
該第2隙間形成工程によって形成した該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できれば該加工具の位置を記憶部に記憶させて、該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できなければ該確認工程にて位置付けられた該加工具の位置を該記憶部に記憶させる記憶工程と、
を備えるセットアップ方法。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、加工具を用いて該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工具を該保持面に垂直な方向に移動させる移動手段と、を備える加工装置において、
該加工具を該チャックテーブルに接近させて、該保持面と該加工具の先端との間の距離を測定することによって、該保持面に該加工具の先端が接触する際の該加工具の位置を記憶させるセットアップ方法であって、
該移動手段を用いて該加工具を該チャックテーブルに接近する方向に移動させることにより、該保持面と該加工具の先端との間に隙間を形成して、該隙間に進入可能な予め厚みが定められた第1ブロックゲージと、該隙間に進入できない該第1ブロックゲージより厚い予め厚みが定められた第2ブロックゲージとを用いて該隙間に該第1ブロックゲージが進入可能で該第2ブロックゲージが進入できないことを確認する確認工程と、
該第2ブロックゲージと該第1ブロックゲージとの厚み差の半分の距離だけ、該加工具を該保持面に接近させて該保持面と該加工具の先端との間に第2隙間を形成する第2隙間形成工程と、
該第2隙間形成工程によって形成した該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できれば、その位置から、
また、該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できなければ、直前に該加工具を該保持面に接近させた移動距離だけ該加工具を該保持面から遠ざけた位置から、
直前に該加工具を該保持面に接近させた移動距離の半分の距離だけ該加工具を該保持面に接近させることと、該加工具を該保持面に接近させた後の該保持面と該加工具の先端との間に該第1ブロックゲージが進入可能か否かを確認することとを
、該保持面と該加工具の先端との間に該第1ブロックゲージが進入できなくなるまで繰り返
し、
最後に該保持面と該加工具の先端との間に該第1ブロックゲージが進入できたときの該加工具の位置を、該記憶部に記憶させる記憶工程と、
を備えるセットアップ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックゲージを用いたセットアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削砥石を用いてチャックテーブルの保持面に保持された被加工物を研削する研削加工では、チャックテーブルの保持面に研削砥石の下面を接触させた際の研削砥石の高さを加工装置に記憶させるセットアップを行う。セットアップにおいて記憶された研削砥石の高さと、被加工物の厚みとを用いることによって、保持面に保持された被加工物の上面に研削砥石の下面が接触する位置である研削開始位置へ素早く研削砥石を位置付けることができる。
セットアップでは、特許文献1に開示のように、保持面と研削砥石の下面との間に予め厚みがわかっているブロックゲージを進入させて、ブロックゲージが辛うじて進入できる隙間になったときの研削砥石の高さ位置を装置に記憶させており、記憶される研削砥石の位置には、作業者の違い等による、ばらつきが生まれる場合がある。このばらつきを小さくするために、所定の厚みのブロックゲージにもう一段厚みを厚くしたブロックゲージを連接させて形成した少なくとも二段の階段を有する階段状のブロックゲージを用いてセットアップを行っている。
【0003】
セットアップにおいては、例えば、階段状のブロックゲージの一段目が保持面と研削砥石の下面との隙間には進入できるが、二段目が該隙間に進入できないときの研削砥石の高さを記憶させる。
これによって、どの作業者がセットアップを行っても一段目と二段目との高さの差の間に研削砥石の高さが記憶されることになるので、作業者の違いによって記憶される研削砥石の位置が大きく異なる位置になることが防止できる。しかし、その高さの差の範囲において作業者によって記憶される研削砥石の高さに、ばらつきがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記憶される研削砥石の高さにばらつきがあると、研削砥石の下面が被加工物の上面に接触するまでに無駄な時間がかかるばかりでなく、研削砥石を研削開始位置に位置づけた際に被加工物の上面に研削砥石の下面が接触して、被加工物が破損することとなる。
従って、ブロックゲージを用いたセットアップには、誤差をできる限り小さくするという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、加工具を用いて該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工具を該保持面に垂直な方向に移動させる移動手段と、を備える加工装置において、該加工具を該チャックテーブルに接近させて、該保持面と該加工具の先端との間の距離を測定することによって、該保持面に該加工具の先端が接触する際の該加工具の位置を記憶させるセットアップ方法であって、該移動手段を用いて該加工具を該チャックテーブルに接近する方向に移動させることにより、該保持面と該加工具の先端との間に隙間を形成して、該隙間に進入可能な予め厚みが定められた第1ブロックゲージと、該隙間に進入できない該第1ブロックゲージより厚い予め厚みが定められた第2ブロックゲージとを用いて該隙間に該第1ブロックゲージが進入可能で該第2ブロックゲージが進入できないことを確認する確認工程と、該第2ブロックゲージと該第1ブロックゲージとの厚み差の半分の距離だけ、該加工具を該保持面に接近させて該保持面と該加工具の先端との間に第2隙間を形成する第2隙間形成工程と、該第2隙間形成工程によって形成した該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できれば該加工具の位置を記憶部に記憶させて、該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できなければ該確認工程にて位置付けられた該加工具の位置を該記憶部に記憶させる記憶工程と、を備えるセットアップ方法である。
本発明は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、加工具を用いて該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工具を該保持面に垂直な方向に移動させる移動手段と、を備える加工装置において、該加工具を該チャックテーブルに接近させて、該保持面と該加工具の先端との間の距離を測定することによって、該保持面に該加工具の先端が接触する際の該加工具の位置を記憶させるセットアップ方法であって、該移動手段を用いて該加工具を該チャックテーブルに接近する方向に移動させることにより、該保持面と該加工具の先端との間に隙間を形成して、該隙間に進入可能な予め厚みが定められた第1ブロックゲージと、該隙間に進入できない該第1ブロックゲージより厚い予め厚みが定められた第2ブロックゲージとを用いて該隙間に該第1ブロックゲージが進入可能で該第2ブロックゲージが進入できないことを確認する確認工程と、該第2ブロックゲージと該第1ブロックゲージとの厚み差の半分の距離だけ、該加工具を該保持面に接近させて該保持面と該加工具の先端との間に第2隙間を形成する第2隙間形成工程と、該第2隙間形成工程によって形成した該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できれば、その位置から、また、該第2隙間に該第1ブロックゲージが進入できなければ、直前に該加工具を該保持面に接近させた移動距離だけ該加工具を該保持面から遠ざけた位置から、直前に該加工具を該保持面に接近させた移動距離の半分の距離だけ該加工具を該保持面に接近させることと、該加工具を該保持面に接近させた後の該保持面と該加工具の先端との間に該第1ブロックゲージが進入可能か否かを確認することとを、該保持面と該加工具の先端との間に該第1ブロックゲージが進入できなくなるまで繰り返し、最後に該保持面と該加工具の先端との間に該第1ブロックゲージが進入できたときの該加工具の位置を、該記憶部に記憶させる記憶工程と、を備えるセットアップ方法である。
【発明の効果】
【0007】
本セットアップ方法を用いることによって、機械的に保持面と加工具の先端との間隔を狭めることができる。これにより、異なる作業者がセットアップを行うことによって生じるセットアップ誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】階段ブロックゲージを用いてセットアップを行う様子を側方からみた断面図である。
【
図4】(a)は、加工具の先端が第1高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図であり(b)は、加工具の先端が第2高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図である。
【
図5】加工具を移動させた際の加工具の先端の高さ位置と、チャックテーブルの保持面と加工具の先端との間の距離の関係を表す表である。
【
図6】(a)は、加工具の先端が第2高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図であり(b)は、加工具の先端が第3高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図である。
【
図7】(a)は、加工具の先端が第3高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図であり(b)は、加工具の先端が第4高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図である。
【
図8】(a)は、加工具の先端が第3高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図であり(b)は、加工具の先端が第5高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図である。
【
図9】(a)は、加工具の先端が第5高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図であり(b)は、加工具の先端が第6高さ位置に位置づけられている様子を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置
図1に示す加工装置1は、加工手段3を用いて被加工物13を加工する加工装置である。以下、加工装置1について説明する。
【0010】
図1に示すように、加工装置1は、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0011】
コラム11の-Y方向側の側面には、加工手段3を昇降可能に支持する移動手段4が配設されている。加工手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円環状のマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された加工具34とを備えている。
加工具34は、例えば研削ホイールであり、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状の複数の研削砥石340とを備えている。研削砥石340の先端342は、被加工物13に接触する研削面となっている。
【0012】
移動手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、Z軸モータ42の回転量の測定・制御等を行うエンコーダ420と、内部のナットがボールネジ40に螺合して側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され加工手段3を支持するホルダ44とを備えている。
【0013】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている加工手段3の加工具34が保持面200に垂直な方向(Z軸方向)に移動することとなる。
【0014】
エンコーダ420には、加工具34の高さ位置を記憶する記憶部421が接続されている。エンコーダ420によって測定されるZ軸モータ42の回転量は、加工具34のZ軸方向の移動量に換算されて、記憶部421に記憶されることとなる。
移動手段4のZ軸方向の移動量の最小分解能は、例えば0.1μmとする。
【0015】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は円板状の吸引部20と吸引部20を支持する環状の枠体21とを備えている。吸引部20の上面は被加工物13が保持される保持面200であり、枠体21の上面210は保持面200に面一に形成されている。
保持面200には図示しない吸引手段等が接続されている。保持面200に被加工物13が載置されている状態で、図示しない吸引手段等を用いて吸引力を発揮させることにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて、保持面200に被加工物13を吸引保持することができる。
【0016】
チャックテーブル2の周囲にはカバー27及びカバー27に伸縮自在に連結された蛇腹28が配設されている。例えば、チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー27がチャックテーブル2とともにY軸方向に移動して蛇腹28が伸縮することとなる。
【0017】
加工装置1のチャックテーブル2の保持面200上には、階段ブロックゲージ8を載置可能である。階段ブロックゲージ8は、厚み811を有する第1ブロックゲージ81と、第1ブロックゲージ81に連接され第1ブロックゲージ81より厚み差61だけ厚い厚み821を有する第2ブロックゲージ82とを備えている。第1ブロックゲージ81の厚み811は、例えば2μmとし、厚み差61は、例えば20μmとする。
なお、階段ブロックゲージ8は、第1ブロックゲージ81の上に厚み差61の厚みのブロックゲージを積み重ねて第2ブロックゲージ82の厚み821を形成してもよい。
移動手段4を用いた加工具34のチャックテーブル2に接近する方向への移動により、保持面200と加工具34の先端342との間に形成された隙間への、階段ブロックゲージ8の進入を試みることによって、加工具34の先端342と保持面200との間に、第1ブロックゲージ81及び第2ブロックゲージ82がそれぞれ進入可能かどうかを確認することができる。
【0018】
チャックテーブル2は、
図2に示すように、枠体21を支持する基台22と、基台22を支持する3本の支持柱23(
図2において2本が図示されている)とを備えている。
基台22の下部には、Z軸方向の回転軸25を軸にして基台22を回転させる回転手段24が連結されている。回転手段24に駆動されて基台22が回転軸25を軸にして回転すると、基台22に支持されているチャックテーブル2が回転軸25を軸にして回転する構成となっている。
【0019】
加工装置1は、Y軸方向に延設された内部ベース100を備えている。内部ベース100の上には、チャックテーブル2をY軸方向に移動させるY軸移動手段5が配設されている。
Y軸移動手段5は、Y軸方向の回転軸55を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設されたガイドレール51と、底部に連結されたナット54がボールネジ50に螺合して、ガイドレール51に沿ってY軸方向に往復移動する可動板53とを備えている。可動板53の上には支持柱23が立設されており、可動板53は、支持柱23を介してチャックテーブル2を支持している。
また、Y軸移動手段5は、回転軸55を軸にしてボールネジ50を回転させる図示しないY軸モータ等を備えている。
図示しないY軸モータ等に駆動されてボールネジ50が回転すると、可動板53がガイドレール51に案内されてY軸方向に移動するとともに、支持柱23を介して支持されているチャックテーブル2がY軸方向に移動することとなる。
【0020】
加工装置1を用いて被加工物13を研削加工する際には、まず、被加工物13をチャックテーブル2の保持面200に載置して、図示しない吸引源等を作動させる。これにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて、被加工物13が保持面200に吸引保持される。
【0021】
そして、被加工物13が保持面200に吸引保持されている状態で、Y軸移動手段5を用いてチャックテーブル2を+Y方向に移動させて、加工手段3の下方に位置付ける。
次いで、回転手段24を用いて回転軸25を軸にしてチャックテーブル2を回転させることにより、保持面200に保持されている被加工物13を回転させるとともに、スピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
【0022】
被加工物13が回転軸25を軸にして回転しており、かつ、研削砥石340が回転軸35を軸にして回転している状態で、移動手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に下降させて、研削砥石340の先端342を被加工物13の上面130に接触させる。先端342が被加工物13の上面130に接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させることによって被加工物13が研削される。
【0023】
2 ブロックゲージを用いたセットアップ方法
(1)確認工程
上記の階段ブロックゲージ8を用いて、加工装置1の加工具34の高さ位置を記憶部421に記憶させるセットアップ方法について、以下に説明する。階段ブロックゲージ8を用いたセットアップは、
図3に示すフローチャートに従って行われる。
【0024】
まず、
図1に示した移動手段4を用いて加工具34をチャックテーブル2に接近する方向(-Z方向)に移動させる。
これにより、
図4(a)に示すように、加工具34の先端342の高さ位置が第1高さ位置71に位置づけられて、保持面200と加工具34の先端342との間に第1隙間91が形成される。第1隙間91は、例えば18.4μmとする。
【0025】
保持面200と加工具34の先端342との間に第1隙間91を形成した後、第1隙間91に階段ブロックゲージ8を進入させる。これにより、第1ブロックゲージ81は第1隙間91に進入可能であるのに対して、第2ブロックゲージ82は第1隙間91に進入できないことを確認する。
【0026】
ここで、形成された隙間に階段ブロックゲージ8が進入したときに、該隙間に第1ブロックゲージ81だけでなく第2ブロックゲージ82も進入できる場合には、該隙間から一旦階段ブロックゲージ8を抜去してから、さらに加工具34をチャックテーブル2に接近させて保持面200と加工具34の先端342との間の隙間の大きさを調整した後、再び階段ブロックゲージ8を隙間に進入させて第2ブロックゲージ82が進入できるかどうかを確認する。
確認工程では、例えば上記の調整を、保持面200と加工具34の先端342との間の隙間が、該隙間に第1ブロックゲージ81は進入できるが、第2ブロックゲージ82は進入できない大きさになるまで繰り返し行い、該隙間に第1ブロックゲージ81は進入できるが、第2ブロックゲージ82は進入できないことを確認して終了する。
【0027】
(2)記憶工程
(イ)繰り返し工程
確認工程の終了後、第1隙間91に進入している階段ブロックゲージ8を第1隙間91から抜去する。そして、
図4(b)に示すように、第2ブロックゲージ82と第1ブロックゲージ81との厚み差61の半分の距離62(10μm)だけ加工具34を保持面200に接近させる。これにより、加工具34の先端342が第2高さ位置72に位置づけられて、保持面200と加工具34の先端342との間に第2隙間92が形成される。ここで、第2隙間92は、第1隙間91である18.4μmから距離62である10μmを差し引いた8.4μmである。
図5には、加工具34を保持面200に段階的に接近させていったときの加工具34の先端432の高さ位置と、チャックテーブル2の保持面200と加工具34の先端342との間の距離との関係を表す表が示されている。
【0028】
加工具34を保持面200に接近させた後、第1ブロックゲージ81が進入できるかどうかを確認する。第2隙間92が第1ブロックゲージ81の厚み811よりも大きいため、
図4(b)に示すように、第2隙間92に第1ブロックゲージ81を進入させることができる。
【0029】
加工具34が位置付けられた第2高さ位置72が、
図6(a)に示すように、第1ブロックゲージ81の上面810の高さ位置700から、距離63だけ高い高さ位置である段差四半位置702よりも高い高さ位置であるとする。距離63は、移動距離62の半分の距離であり、厚み差61の4分の1にあたる5μmとする。
【0030】
加工具34の先端342が第2高さ位置72に位置づけられている状態から、直前に加工具34を保持面200に接近させた際の加工具34の移動距離62の半分の距離63である5μmだけ、加工具34を保持面200に接近させる。これにより、
図6(b)に示すように、加工具34の先端342は第3高さ位置73に位置づけられて、保持面200と加工具34の先端342との間に第3隙間93が形成される。
ここで、第3隙間93は、第2隙間92である8.4μmから距離62である5μmを差し引いた3.4μmである。
【0031】
その後、第3隙間93に第1ブロックゲージ81が進入可能か否かを確認する。第3隙間93が第1ブロックゲージ81の厚み811よりも大きいため、
図6(b)に示すように、第3隙間93に第1ブロックゲージ81を進入させることができる。
【0032】
第3高さ位置73は、
図7(a)に示すように、第1ブロックゲージ81の上面810の高さ位置700から、距離64だけ高い高さ位置である段差八分位置703よりも高い高さ位置であるとする。
上記繰り返し工程の後、加工具34の先端342が第3高さ位置73に位置づけられている状態から、直前に加工具34を保持面200に接近させた際の加工具34の移動距離63の半分の距離であり、厚み差61の8分の1にあたる距離64である2.5μmだけ、加工具34を保持面200に接近させる。これにより、
図7(b)に示すように、加工具34の先端342は第4高さ位置74に位置づけられて、保持面200と加工具34の先端342との間に第4隙間94が形成される。
ここで、第4隙間94は、第3隙間93である3.4μmから距離64である2.5μmを差し引いた0.9μmである。
【0033】
その後、第8隙間98に第1ブロックゲージ81が進入可能か否かを確認する。第4隙間94は、第1ブロックゲージ81の厚み811よりも小さいため、
図7(b)に示すように、第4隙間94に第1ブロックゲージ81を進入させることができない。
【0034】
(ロ)離間工程
第1ブロックゲージ81を進入させることができない場合には、直前に加工具34を保持面200に接近させた距離64だけ加工具34を保持面200から遠ざける。これにより、
図8(a)に示すように、加工具34の先端342が第3高さ位置73に戻される。
【0035】
(ハ)第2繰り返し工程
(甲)下降ステップ
そして、離間工程の後、加工具34の先端342が第3高さ位置73に位置づけられている状態で、直前に加工具34を接近させた距離64の半分の距離65である1.25μmの小数第2位を切り上げた1.3μmだけ、加工具34を下降させる。
これにより、
図8(b)に示すように、加工具34の先端342が第5高さ位置75に位置づけられて、保持面200と加工具34の先端342との間に第5隙間95が形成される。第5隙間95は、第3隙間93である3.4μmから1.3μmを差し引いた2.1μmである。
【0036】
(乙)判断ステップ
下降ステップの後、加工具34の先端342と保持面200との間に第1ブロックゲージ81が進入可能か否かを判断する。
第5隙間95は第1ブロックゲージ81の厚み811よりも大きいため、第1ブロックゲージ81を加工具34の先端342と保持面200との間に進入させることができる。
【0037】
次いで、再び下降ステップを行う。すなわち、
図9(a)に示すように、保持面200と加工具34の先端342との間に第5隙間95が形成されている状態で、直前に加工具34を保持面200に接近させた距離65の半分の距離66である0.65μmの小数第2位を切り上げた0.7μmだけ加工具34を下降させる。これにより、
図9(b)に示すように、加工具34の先端342が第6高さ位置76に位置づけられて、保持面200と加工具34の先端342との間に第6隙間96が形成される。第6隙間96は、第5隙間95である2.1μmから0.7μmを差し引いた1.4μmである。
【0038】
その後、再び判断ステップを行う。すなわち、加工具34の先端342と保持面200との間に第1ブロックゲージ81が進入可能か否かを判断する。第6隙間96は第1ブロックゲージ81の厚み811よりも小さいため、第1ブロックゲージ81を加工具34の先端342と保持面200との間に進入させることができない。よって、第2繰り返し工程を終了する。
【0039】
そして、第2繰り返し工程終了直後の加工具34の高さ位置である第6高さ位置76から、直前に加工具34を保持面200に接近させた移動距離、すなわち距離66だけ加工具34を上昇させて、保持面200から加工具34を遠ざけたときの加工具34の高さ位置である第5高さ位置95を記憶部421に記憶させる。
【0040】
本セットアップ方法を用いて、セットアップを行うことによって、およそ機械的に保持面200と加工具34の先端342との間隔を狭めることができる。これにより、異なる作業者がセットアップを行うことによって生じるセットアップ誤差を小さくすることができる。また、加工具34の下降量を、第2ブロックゲージ82の厚み821の半分、4分の1、8分の1、・・・と、徐々に小さくしていくため、セットアップの誤差をより小さくすることができる。
また、保持面200と加工具34の先端342との間隔を狭めることにより、被加工物13の研削加工時に、加工具34を被加工物13の上面130に接近させ始めてから、加工具34の先端342が被加工物13の上面130に接触するまでの時間を短縮することができる。これにより、研削加工にかかる時間を削減することが可能となる。
なお、階段ブロックゲージ8の取り扱いを容易にするため、一段目、すなわち第一ブロックゲージ81の厚み811を、2μmではなく、例えば5.00mmとしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1:加工装置 10:ベース 100:内部ベース 11:コラム
2:チャックテーブル 20:吸引部 200:保持面
21:枠体 210:枠体上面 22:基台 23:支持柱
24:回転手段 25:回転軸 27:カバー 28:蛇腹
3:加工手段 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:加工具 340:研削砥石 342:加工具の先端(研削面)
341:ホイール基台 35:回転軸
4:移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール
42:Z軸モータ 420:エンコーダ 43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:Y軸移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 53:可動板
54:ナット 55:回転軸 421:記憶部 8:階段ブロックゲージ
81:第1ブロックゲージ 810:第1ブロックゲージの上面
82:第2ブロックゲージ 820:第2ブロックゲージの上面
13:被加工物 130:被加工物の上面
811:第1ブロックゲージの厚み 821:第2ブロックゲージの厚み
61~66:加工具の移動距離 71~76:加工具の先端の高さ位置
700:第1ブロックゲージの上面の高さ位置 701:段差真中位置
702:段差四半位置 703:段差八分位置
91~96:保持面と加工具の先端のとの間の隙間