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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】エッチングまたは堆積のための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/14 20060101AFI20240510BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20240510BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20240510BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C23C16/14
C23C16/02
H01L21/285 C
H01L21/302 104Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022543417
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 US2021013731
(87)【国際公開番号】W WO2021146623
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】62/961,939
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ロバート エル., ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】エルメルト, デービッド エム.
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-523292(JP,A)
【文献】国際公開第2019/213207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/14
C23C 16/02
H01L 21/285
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ゾーン内で、
(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl 、および、
(ii)還元ガス
に、Al 、TiN、HfO 、ZrO 、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜を含む基板を暴露することであって、
前記反応ゾーン内の圧力は0.5トールから500トールであり、基板温度は200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは0.001から1リットル毎分であり、WOCl の濃度は1000ppmより大であり、前駆体アンプル温度は10℃から180℃であり、
以て、Al 、TiN、HfO 、ZrO 、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜がエッチングされる、基板を暴露することを含む方法。
【請求項2】
反応ゾーン内で、
(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、
(ii)還元ガス
に、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Cu、Ru、Ir、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む基板を暴露することであって、
前記反応ゾーン内の圧力は0.5トールから500トールであり、基板温度は200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは0.001から1リットル毎分であり、WOClの濃度は1000ppm未満であり、前駆体アンプル温度は10℃から180℃であり、
以て、タングステンが、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Cu、Ru、Ir、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む前記基板の表面上へと堆積される、基板を暴露することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、WOClを使用する、マイクロ電子デバイス上に存在する、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、および、それらの組み合わせ、および、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステンを含んでいる所定の材料のエッチング、ならびに、タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、アルミニウム、アルミナ、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、および二酸化ケイ素膜を含んでいる所定の材料上へのタングステンの堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ原子層エッチングを利用する、多くのマイクロ電子デバイス上にキャパシタ膜として出現するアルミナ(Al)表面のエッチングにおける、少なからぬ関心が存在する。現在のプロセスは、一般的には、複数のステップを要し、複雑でありコストがかかる。加えて、一般的にアルミナ膜の表面上での、金属の核形成、および、対応する堆積は、困難であることが判明しており、成功したときでさえ、これらの2つの材料の間の付着は、決して満足のゆくものではなかった。その上、既存の方法は、一般的には、アルミナ表面上でのタングステンのコンフォーマルな被覆性をもたらさない。種々の基板へのタングステン金属の堆積が、接点、相互接続、核形成層、シード層の用途に対して、および、ハードマスク用途に対して望まれ得る。これらの可能な用途のすべてに対して、堆積される膜の中での均一性を伴う高純度金属が、堆積される膜に対して最も高いレベルの性能を達成することに向けて望ましい。
【発明の概要】
【0003】
一般的に、本開示は、(a)Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、もしくはTiNの膜のエッチング、または、(b)Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、Ir、SiN、TiN、TaN、WN、およびSiOから選定される膜の表面上へのタングステンの堆積のための方法であって、膜がエッチングされる、または、タングステンが膜の表面上へと堆積される、異種プロセス条件のもとで、還元ガスの存在下で、WOClに前記膜を暴露することを含む、方法を提供する。主としてのエッチングプロセス、または、主としての堆積プロセスの間の偏りは、1)基板の温度(すなわち、(Tsub))を変動させることにより制御され、2)前駆体蒸気圧力、堆積(またはエッチング)圧力の操作を使うこと、もしくは、直接的に濃度の操作を使うことのいずれかで、WOCl前駆体の気相濃度により制御され、および/または、3)WOCl蒸気に暴露されている基板のタイプにより制御され得る。
【0004】
したがって、1つの態様において、本開示は、
(a)基板を制御可能にエッチングするための異種プロセス条件の第1のセットであって、基板は、Al、TiN、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜を含む、第1のセット、または、
(b)タングステンを基板の表面上へと制御可能に堆積させるための異種プロセス条件の第2のセットであって、基板は、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む、第2のセット
のもとで、反応ゾーン内で、WOClおよび還元ガスに基板を暴露すること
を含む方法を提供する。
【0005】
別の態様において、本開示は、
反応ゾーン内で、(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、(ii)還元ガスに、Al、TiN、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜を含む基板を暴露することであって、反応ゾーン内の圧力は約0.5から500トールであり、基板温度は約200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は約0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは約0.001から1リットル毎分であり、反応ゾーン内のWOClの濃度は1000ppmより大であり、前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃であり、以て、Al、TiN、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜を含む基板がエッチングされる、基板を暴露すること
を含む方法を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、
反応ゾーン内で、(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、(ii)還元ガスに、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む基板を暴露することであって、反応ゾーン内の圧力は約0.5トールから500トールであり、基板温度は約200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は約0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは約0.001から1リットル毎分であり、WOClの濃度は1000ppm未満であり、前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃であり、以て、タングステンが、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む基板の表面上へと堆積される、基板を暴露すること
を含む方法を提供する。
【0007】
別の態様において、本開示は、
反応ゾーン内で、(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、(ii)共反応物還元ガスに、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、Cu、Ir、SiN、TiN、およびSiO膜から選択される膜を含む基板を暴露することであって、反応ゾーン内の圧力は約0.5トールから500トールであり、基板温度は約200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は約0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは約0.001から1リットル毎分であり、WOClの濃度は、より少ない1000ppmであり、前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃であり、以て、タングステンが、W、Mo、Co、Ru、Cu、Ir、および、他の適した金属導体膜などの金属導体膜上へと選択的に堆積されるが、窒化物および/または誘電体酸化物膜上へは堆積されない、基板を暴露すること
を含む方法を提供する。
【0008】
本開示は、付随する図面と結び付いた、様々な例示的な実施形態の、後に続く説明の考察において、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】化学蒸気エッチング(CVE)プロセスにおけるAlエッチ速度(Å/分)対基板温度(℃)のプロットである。
図2】430、475、および520℃の温度におけるTiNのエッチ速度のプロットである。TiNエッチ速度(Å/サイクル)は、パルス化学蒸気エッチング(パルスCVE)プロセスにおけるサイクルの数に対してプロットされる。
図3】前駆体としてWOClを使用する、430、475、および520℃の温度におけるTiN上でのタングステン堆積のプロットである。このデータは、80トール圧力、アルゴンキャリアガスの100sccm、および、2000sccmのH流れのパルス化学蒸気堆積条件を使用して生成された。Å単位のタングステン堆積が、サイクルの数に対してプロットされる。
図4】前駆体としてWOClを使用する、窒化チタン上でのタングステンのパルス化学蒸気堆積(パルスCVD)を例示する図である。Å単位のタングステン堆積が、前駆体に対する、秒単位のパルス「オン時間」に対してプロットされた。
図5】前駆体としてWOClを使用する、パルスCVD条件に対する、窒化チタン基板の暴露に対するパルス「オフ時間」の影響を例示する図である。他の条件は、80トール圧力、100sccmにおけるアルゴンキャリアガス、および、1000sccmの継続的なH流れを含んでいた。窒化チタンエッチ速度は、パルス「オフ時間」に対してプロットされる。
図6】本開示の方法を実践するための原子層堆積(ALD)プロセスの単純化された描写の図である。
図7】本開示の方法を実践するための化学蒸気堆積(CVD)プロセスの単純化された描写の図である。
図8】本開示の方法を実践するための「パルスCVD」プロセスの単純化された描写の図である。
図9】本開示の方法を遂行するための適した反応チャンバの単純化された描写の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、様々な修正および代替的形式を受け入れられるが、それらの細部は、図面において例の態により示されており、詳細に説明されることになる。しかしながら、意図は、本開示の態様を、説明される個別の例示的な実施形態に制限することではないことが理解されるべきである。むしろ、意図は、本開示の趣旨および範囲の中に入る、すべての修正、均等物、および代替案を扱うことである。
【0011】
本明細書、および、添付される特許請求の範囲において使用される際、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が別段に明確に定めない限り、複数の参照対象を含んでいる。本明細書、および、添付される特許請求の範囲において使用される際、用語「または」は、一般的には、内容が別段に明確に定めない限り、「および/または」を含んでいる、その用語の語意において用いられる。
【0012】
用語「約」は、一般的には、(例えば、同じ機能または結果を有する)列挙される値と均等と考えられる数の範囲を指す。多くの実例において、用語「約」は、最も近い有効数字に丸められる数を含んでいることがある。
【0013】
端点を使用して表現される数値範囲は、その範囲の中に包含されるすべての数を含んでいる(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含んでいる)。
【0014】
上記で指摘されたように、第1の態様において、本開示は、
(a)AlもしくはTiNを含む基板膜を制御可能にエッチングするためのプロセス条件の第1のセット、または、
(b)タングステンを基板の表面上へと制御可能に堆積させるためのプロセス条件の第2のセットであって、基板は、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される、第2のセット
のもとで、反応ゾーン内で、WOClおよび還元ガスに基板を暴露すること
を含む方法を提供する。
【0015】
一般的に、上記で言及されたプロセス条件は、化学蒸気堆積および原子層堆積に共通の条件である。この事項において、圧力は、一般的には約1トールから約80トールであり、温度は、約350℃から約750℃である。WOCl前駆体材料が、水素などの共反応物還元ガスと一緒に、アルゴン、ヘリウム、または窒素などの不活性キャリアガスとともに、所望の基板を伴う反応チャンバ内へと送り込まれる。共反応物還元ガスは、前駆体材料と反応して、中間化合物および/または反応副生物を生成するために、システム内へと導入されるガスである。膜は、CVD、パルスCVD、および/またはALD反応プロセスの使用により、堆積され、またはエッチングされ得る。
【0016】
共反応物還元ガスは、CVD/ALDの当該技術において知られているものから選定され得、H、NH、ヒドラジンおよびアルキル化ヒドラジン(N、CHHNNH、CHHNNHCHなど)を含んでいる。
【0017】
所定の実施形態において、方法は、単一のフェーズにおいて処され、基板は、選定される膜のエッチング、または、選定される膜上でのタングステンの堆積のいずれかを成し遂げるために、制御可能な条件のもとで、選定される期間の時間の間処置される。所定の実施形態およびプロセス条件において、エッチングが最初に起こり、堆積が後に続く。
【0018】
他の実施形態において、反応は、パルス送出プロセスにおいて処され得る。このプロセスにおいて、順次処理ステップは、一般的には「パルス」またはサイクルと呼称される。そのようなプロセスは、前駆体化学物質の制御される自己制限表面反応に基づく。気相反応は、基板を前駆体と、交互に、および順次接触させることにより回避される。プロセス反応物は、例えば、反応物パルスどうしの間に、過剰な反応物および/または反応物副生物を反応チャンバから除去することにより、適時に、および、基板表面上で互いから分離される。一部の実施形態において、前駆体は、チャンバ内へとパルス送出され、一方で、共反応物還元ガスは、反応器内へと継続的に流される。この実施形態は、「パルスCVD」モードと称されることになる。一部の実施形態において、1つまたは複数の基板表面は、2つ以上のプロセス前駆体または反応物と、交互に、および順次接触させられる。基板表面を蒸気相反応物と接触させることは、反応物蒸気が、制限または制御される期間の時間の間、基板表面と接触していることを意味する。換言すれば、基板表面は、制限される期間の時間の間、プロセス前駆体に暴露されることが理解され得る。
【0019】
薄膜を成長させるために使用することができる反応器が、本明細書において説明される堆積に対して使用され得る。そのような反応器は、「パルス送出される」様式において前駆体(例えば、WOCl)および共反応物(すなわち、還元ガス)を提供するための適切な機器および手段を装備させられる、ALD反応器、および無論のこと、CVD反応器を含んでいる。所定の実施形態に従って、反応器におけるシャワーヘッドが、さらには、ウェハへのWOCl前駆体の均一な送り出しをもたらすために使用され得る。使用され得る適した反応器の例は、市販で入手可能な機器、および自作の反応器を含んでおり、CVD、パルスCVD、および/またはALDの当業者には知られているであろう。例示的な反応器が、図9において示される。
【0020】
手短に言えば、上記で論述された所望の膜を含む基板は、一般的には約0.5から500トールの圧力において、200℃から1000℃の範囲に及ぶ適した堆積またはエッチング温度に加熱される。他の実施形態において、温度は、約350℃から700℃、または、400℃から600℃である。堆積またはエッチング温度は、一般的には、WOCl前駆体の熱的分解温度より下に、ならびに、反応物の凝縮を回避するのに、および、所望の表面反応の活性化のための十分なエネルギーをもたらすのに十分に高く維持される。基板の表面は、WOCl前駆体と接触させられる。所定の実施形態において、WOCl前駆体のパルスは、基板を内包する反応空間に提供される。他の実施形態において、基板は、WOCl前駆体を内包する反応空間に動かされる。プロセス条件は、一般的には、約1モノレイヤより多くないWOCl前駆体が、自己制限様式において基板表面上で吸着されるように選択される。適切な接触時間が、特定のプロセス条件、基板、および反応器構成に基づいて、熟練者により、たやすく決定され得る。過剰なWOCl前駆体および反応副生物が、あるならば、不活性ガスによってパージすること、還元ガスによってパージすることによって、または、第1の反応物の存在から基板を除去することによってなどで、基板表面から除去される。
【0021】
パージすることは、プロセス前駆体および/またはプロセス副生物が、吸引ポンプによってチャンバを排気することによって、および/または、反応器の内側のガスをアルゴン、ヘリウム、もしくは窒素などの不活性ガスによって置換することによって、および/または、反応器の内側のガスを水素などの還元ガスによって置換することによってなどで、基板表面およびプロセスチャンバから除去されることを意味する。所定の実施形態において、パージング時間は、約0.05から120秒、約0.05から10の間、または、約0.05秒から2秒の間である。しかしながら、きわめて高いアスペクト比構造、または、他の複雑な表面モフォロジ構造にわたる、高度にコンフォーマルな段差被覆性に直面する場合など、必要ならば、他のパージ時間が利用され得る。
【0022】
一部の実施形態において、各サイクルの各フェーズは、一般的には自己制限である。過剰の反応物前駆体が、敏感な構造表面を飽和させるために、各フェーズにおいて供給される。表面飽和は、すべての利用可能な反応性部位(例えば、物理的サイズまたは「立体障害」制約に左右される)の反応物占有を確実にし、かくして、優れた段差被覆性を確実にする。典型的には、1未満の分子層の材料が、各サイクルによって堆積され、しかしながら、一部の実施形態において、1より多い分子層が、各サイクル中に堆積される。
【0023】
過剰な反応物を除去することは、反応空間の内容物の一部を排気すること、および/または、反応空間をヘリウム、窒素、アルゴン、もしくは別の不活性ガスによってパージすることを含んでいることがある。一部の実施形態において、パージすることは、還元ガスによって実行され得る。所定の実施形態において、パージすることは、反応性ガスの流れを遮断し、一方で、不活性キャリアガスまたは還元ガスを反応空間に流すことを継続することを含み得る。別の実施形態において、パージステップは、過剰な反応物を表面から除去するための吸引ステップを用い得る。所定の実施形態において、WOCl前駆体が、約0.05から約20秒の期間の間、基板/膜を内包する反応チャンバ内へとパルス送出され、次いで、パルス送出されない間、キャリアガスおよび共反応物還元ガスが、反応器内へと継続的に流され、かくして、過剰な前駆体を反応チャンバからパージする働きをする。別個の実施形態において、前駆体が、反応チャンバ内へとパルス送出され、次いでパージされ、還元ガスが、反応器内へとパルス送出され、次いでパージされ、このサイクルが、堆積されるタングステン膜の所望の厚さを達成するために、または、暴露される膜の所望の厚さをエッチングにより除去するために繰り返される。
【0024】
本開示の方法において、前駆体WOClの使用は、後に続く条件を伴う薄膜タングステン堆積に向けて偏らせられる:
・圧力 => 0.5トールから500トール、
・温度 => 200℃から1000℃、
・H流れ速度 => 0.1から10リットル毎分、
・キャリアガス流れ => 0.001から1リットル毎分、および、
・前駆体アンプル温度 => 10℃から180℃。
【0025】
様々な基板上へのタングステンの堆積は、直接的には、本明細書において[WOCl]と表現されるWOCl前駆体の濃度、基板独自性、および基板温度に依存する。一般的に、ただし厳密に言えばということではなく、WOClの<1000ppmの濃度が、本明細書において論述されるようなCVDプロセスにおけるタングステン膜成長を成し遂げるために要される。
【0026】
加えて、または代替案として、本開示の方法に従って、WOClは、後に続く条件のもとでの基板エッチングに向けて偏らせられる:
・圧力 => 0.5トールから500トール、
・温度 => 200℃から1000℃、
・H流れ速度 => 0.1から10リットル毎分、
・キャリアガス流れ => 0.001から1リットル毎分、および、
・前駆体アンプル温度 => 10℃から180℃。
【0027】
様々な基板のエッチングは、直接的には、前駆体[WOCl]の濃度、基板独自性、および基板温度に依存する。一般的に、ただし厳密に言えばということではなく、継続的な暴露モード(すなわち、CVE=化学蒸気エッチング)プロセスにおいて、[WOCl]の濃度>1000ppmである。前駆体の濃度は、[WOCl]、基板材料、および基板温度の組み合わせに依存する。
【0028】
さらに、加えて、または代替案として、本開示の方法に従って、タングステンは、反応ゾーン内で、(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、(ii)共反応物還元ガスに、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、Cu、Ir、SiN、TiN、およびSiO膜から選択される膜を含んでいる基板を暴露することであって、後に続く条件:
・反応ゾーン内の圧力は約0.5トールから500トールである、
・基板温度は約200℃から1000℃である、
・還元ガス流れ速度は約0.1から10リットル毎分である、
・キャリアガス流れは約0.001から1リットル毎分である、
・[WOCl]の濃度は、より少ない1000ppmである、および、
・前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃である、
のもとで行う、基板を暴露することにより、金属導体膜上へと選択的に堆積される。
【0029】
そのようなプロセス条件の結果として、以て、タングステンは、W、Mo、Co、Ru、Cu、Ir、および、他の適した金属導体膜などの金属導体膜上へと選択的に堆積したが、窒化物および/または誘電体酸化物膜上へは堆積しなかった。
【0030】
実施例
【0031】
実施例1~5において、それらの実施例の結果は上記の表1においてまとめられているが、測定を、X線蛍光(XRF)を使用する前および後に講じた。正(+)数は、タングステン膜堆積を指示し、負数(-)は、基板膜エッチングを表す。これらの実験において、WOClアンプル温度を90℃にセットし、Arキャリアガス流れを100sccm(標準立方センチメートル毎分、すなわち、流れ速度)にセットし、WOClをおおよそ600秒の間基板に暴露した。表において確認され得るように、Alが、より高い温度における、指摘された競合するタングステン堆積プロセスの欠如に起因して、この考究において最も高いエッチ速度毎分の暴露を有した。加えて、エッチ速度は、前駆体[WOCl]濃度、基板独自性、およびTsub(すなわち、基板温度)に依存的であったことが観察され得る。より高い前駆体濃度、および、より高い基板温度が、基板エッチングにつながり、一方で、タングステン堆積は、前駆体の濃度が、基板のエッチングを成し遂げるにはあまりにも低かったときに観察された。タングステン堆積は、550℃(16Å/分)および650℃(206Å/分)において起こることが観察され、一方で、基板エッチングは、400℃(1.5Å/分)において起こった。これらのタングステン堆積実施例において、結果的に生じる膜の抵抗率が、タングステン基板上で11.5μΩ-cmほどに(実施例3)、および、26.7μΩ-cmのTiN基板上で、低いことが見いだされた。加えて、高い前駆体濃度は、タングステン基板上での柱状結晶成長、すなわち、孤立粒、および、より高いTsubにおける、より高い抵抗率(19μΩ-cm)につながることが示された。
【0032】
表1におけるデータにより指摘され得るように、窒化物および/または誘電体酸化物膜上へのタングステン堆積の代わりの、タングステン、または、Mo、Co、Ru、Ir、およびCuなどの他の適した金属導体膜上へのタングステン金属の選択的な堆積が、堆積中のプロセス条件の注意深い制御により達成され得る。一部の実施形態において、選択的な堆積より前の、基板のプリエッチングが、接触抵抗および薄膜付着特質を高めるために用いられ得る。理論に縛られることを望むものではないが、窒化物および/または誘電体酸化物膜上へのタングステン堆積の代わりの、Mo、Co、Ru、Ir、およびCuなどの他の適した金属導体膜上へのタングステン金属の選択的な堆積が、さらには、堆積中のプロセス条件の注意深い制御により達成され得る。

【0033】
実施例6~10において、それらの実施例の結果は表2においてまとめられているが、アルゴンキャリアガスの流れ速度を100sccmに、Hガスの流れ速度を2000sccmにセットし、タングステンCVD堆積時間を600秒の間とセットした。表2におけるデータから、WOClが、試験された条件の大部分のもとで窒化チタンをエッチングしたことが観察され得る。窒化チタンエッチングの速度/程度は、より高いTsubに対して増大し、一方で、タングステン堆積は、より低い前駆体濃度において、650℃において起こったのみであることが、さらには観察され得る。

【0034】
実施例11~20において、それらの実施例の結果は表3aおよび3bにおいてまとめられているが、アルゴンキャリアガスを100sccmにおいて利用し、さもなければ、表3aにおいて、Hガスを(追加的なアルゴンガスを伴わずに)2000sccmの速度において導入した。表3bにおいて、アルゴンパージガスを(追加的なHガスを伴わずに)100sccmの速度におけるアルゴンキャリアガスに加えて2000sccmの速度において導入した。一般的に、Alは、H共反応物ガス流れを使用するときより、Ar内で低速の速度においてエッチングする。このデータは、さらには、Alが、低いチャンバ圧力(より高いWOCl濃度)と組み合わされた低い基板温度条件において、Hを伴うより、アルゴン内で急速にエッチングされたことを示し得る。
【0035】
実施例21から25は、SiOをエッチングすることの試行に関係する。結果は表4においてまとめられている。これらの実験において、アルゴンキャリアガスを100sccmにおいて利用し、Hガスを2000sccmにおいて利用した。タングステン堆積は、より低い前駆体濃度において、650℃において起こったのみである。抵抗率は、近似的に18μΩ-cmであった。いかなる温度においても、[WOCl]<1000ppmに対してSiOエッチングは観察されなかった。理論に縛られることを望むものではないが、エッチングプロセスの仕組みに基づいて、SiOのエッチングは、WOCl前駆体のより高い濃度において、一部の実施例において、低速で起こり得ることが確信される。
【0036】
実施例26ないし34において、それらの実施例の結果は上記の表5において示されているが、80トールの前駆体チャンバ圧力、100sccmにおけるアルゴンキャリアガス、2000sccmにおけるHガス(継続的)を利用するパルスCVD条件に、窒化チタン基板をさらした。WOCl前駆体のパルス送出は、40秒サイクル間隔において1秒の間であった。WOCl前駆体に対するパルスサイクルの数は、それぞれ1、5、10、15、および25サイクルであった。このデータは、このパルスCVDプロセスにおける窒化チタンエッチ速度が、最初のサイクルにおいて相当なものであり、>5サイクルに対して劇的に降下することを示す。サイクルの数が10サイクルを過ぎて増大される際、タングステン堆積が起こり始める。加えて、より低い基板温度(430℃)が、最初のサイクルに対して約10パーセントだけ窒化チタンエッチ速度を増大した。
【0037】
実験35ないし37において、それらの実験の結果は表6においてまとめられているが、80トールのチャンバ圧力、および、100sccmのアルゴンキャリアガス速度を含んでいる、WOClを前駆体として利用するパルス化学蒸気堆積条件を使用して、データを生成した。実施例35~37において、Hガスを2000sccmの一定速度において反応器チャンバに注入した。実施例35ないし37において、WOCl前駆体「オン時間」を増大することが、10秒オン時間に対して30パーセント、窒化チタンエッチ速度を増大した。加えて、タングステン堆積速度が、15サイクルランに対してオン時間とともに増大する。注記:TiNの増大される損失は、タングステン膜を通るx線信号の損失に起因し得る。
【0038】
表7における実施例は、100sccmにおけるアルゴンキャリアガス、2000sccmにおけるH(継続的)、ならびに、それぞれ600、600、300、300、および300sのタングステン堆積を利用するCVD条件のもとでの窒化チタン基板のエッチングを表す。このデータは、増大する前駆体(WOCl)濃度がエッチ速度を増大することを例示し、前駆体濃度は、チャンバ圧力を減少すること、共反応物還元ガスを減少すること、および/または、アンプル温度を増大することにより増大され得る。
【0039】
実施例42ないし47の各々において、それらの実施例のデータは表8aおよび8bにおいてまとめられているが、前駆体はWOClであり、Hガス流れ速度は2000sccmであり、タングステン堆積時間は300sであり、チャンバ圧力は10トールであり、結果的に生じたタングステン厚さは0.0Åであった。表8aにおけるデータは、窒化チタンエッチ速度が、10トールの圧力において、質量輸送制限レジーム(mass transport limited regime)において進行する反応に起因して、Tsubとともに変化しなかったことを示す。表8bは、前駆体キャリアガスを増大することが、前駆体濃度および窒化チタンエッチ速度を増大することを示し、かくして、エッチングが、430℃において質量輸送速度制限されたことを示す。加えて、窒化チタンエッチングは、10トールの圧力において質量輸送制限され、80トールの圧力において表面反応速度が制限された。
【0040】
実施例48ないし50(ALEプロセス)の各々において、それらの実施例のデータは表9においてまとめられているが、前駆体はWOClであり、Arキャリアガス流れ速度は200sccmであり、Hガス流れ速度は2000sccmであり、アルゴンパージガス流れ速度は500sccmであり、タングステン堆積時間は60サイクルであり、基板温度は520℃であった。このデータは、窒化チタン上でのタングステン堆積速度が、(80トールから20トールへの)圧力における減少(すなわち、WOCl濃度における増大)とともに減少することを示す。加えて、TiNエッチ速度は、圧力における減少とともに増大し、しかしながら、40トールが、堆積とエッチングとの間の変わり目を指し示すものであり得る。抵抗率は、これらのプロセス条件のもとで堆積された薄いタングステン膜に対して非常に良好であった。このデータは、さらには、基板エッチングおよび堆積が、実験条件を変化させることなく起こり得、リアルタイムで競合的であり得ることを例示する。
【0041】
実施例51ないし52の各々において、それらの実施例のデータは表10においてまとめられているが、前駆体はWOClであり、アルゴンキャリアガス流れ速度は200sccmであり、Hガス流れ速度は2000sccmであり、アルゴンパージガス流れ速度は500sccmであり、タングステン堆積時間は60サイクルであり、圧力は20トールであり、基板温度は520℃であった。このデータは、WOCl「オン時間」を増大することが、窒化チタン基板に対するタングステン堆積速度および窒化チタンエッチ速度の両方を増大することを論証する。タングステン抵抗率は、これらのプロセス条件のもとでわずかな変動を示した。
【0042】
実施例53および54において、それらの実施例のデータは表11においてまとめられているが、前駆体はWOClであり、Arキャリアガス流れ速度は200sccmであり、Hガス流れ速度は2000sccmであり、アルゴンパージガス流れ速度は500sccmであり、圧力は20トールであり、基板温度は520℃であった。このデータは、タングステンの層を窒化チタン上で堆積させるための約30サイクル核形成遅延が存在することを示す。加えて、堆積速度は、表面がタングステンによって被覆される後のサイクルの数とともに増大している。エッチ速度は、さらには表面がタングステンによって次第に被覆されるので、時間とともに減少する。観察されたタングステン抵抗率は、これらの薄いタングステン膜に対して良好であった。
【0043】
実施例55ないし57の各々において、それらの実施例のデータは表12においてまとめられているが、前駆体はWOClであり、Arキャリアガス流れ速度は200sccmであり、Hガス流れ速度は1000sccmであり、アルゴンパージガス流れ速度は500sccmであり、Al基板温度は650℃であった。実施例55を40サイクルの間履行し、実施例56および57を30サイクルの間履行した。このデータは、タングステン堆積速度が、圧力における減少とともに減少し、一方で、Alエッチ速度が増大することを示す。予測され得るように、抵抗率は、より薄いタングステン膜、不完全な被覆性および最適化されないモフォロジの結果のために増大する。
【0044】
実施例58ないし60の各々において、それらの実施例のデータは表13においてまとめられているが、前駆体はWOClであり、Hガス流れ速度は1000sccmであり、Al基板温度は650℃であった。このデータは、タングステン堆積速度およびAlエッチ速度の両方が、より低いアルゴンキャリアガス流れ、および、増大されるアルゴンパージガス流れとともに減少することを示す。抵抗率は、約23から59μΩ-cmまで変動した。
【0045】
実施例61ないし63の各々において、それらの実施例のデータは表14においてまとめられているが、前駆体はWOClであり、Arキャリアガス流れ速度は50sccmであり、Hガス流れ速度は1000sccmであり、アルゴンパージガス流れ速度は700sccmであり、Al基板温度は650℃であった。このデータは、タングステン堆積速度は、Al表面がタングステンによって次第に被覆された様態になるので、サイクルの数とともに増大することを示す。さらにはAlエッチ速度における増大が存在するが、その増大は、Alの上部上のタングステン膜によるx線吸収に起因し得る。抵抗率は、薄いタングステン膜におけるピンホールまたはボイドにおける低減に起因して、予測されるように、増大されるタングステン膜厚さとともに減少する。
【0046】
付着試験ASTM D 3359-02結果は、650℃において堆積された、窒化チタン基板上の132Å膜、および、アルミナ基板上の100Åタングステン膜に対して、優れた付着を、すなわち、基板からの剥離がないことを示した。
【0047】
添付の図面、および、上記で論述された実験データを参照すると、図1は、Alエッチ速度(Å/分)対基板温度(℃)のプロットである。このデータは、Alエッチ速度が、アルゴンのみと反応することと比較して、Hと共反応するときに、約2倍であることを例示する。加えて、エッチ速度は、圧力における減少とともに減少した。より低い圧力はWOClの濃度を増大し、そのことはエッチングを増大するはずである。このデータは、堆積が基板温度とともに増大しており、かくして、反応速度が制限されること、およびさらには、滞留時間がエッチ速度を支配していることを指示する。(表1を確認されたい。)
【0048】
図2は、430、475、および520℃の温度におけるTiNのエッチ速度のプロットである。TiNエッチ速度(Å/サイクル)は、サイクルの数に対してプロットされる。さらには表1および2において提供されるデータを確認されたい。このデータは、40秒全サイクル時間に対する1秒WOClパルスに対する、80トール圧力、Arキャリアガスの100sccm、および、2000sccm共反応物のH流れのパルス化学蒸気堆積条件を使用して生成された。430および475℃の基板温度のデータは、質量移動速度制限プロセスにおける動作を例示するものであり、なぜならば、エッチ速度は基板温度とともに増大しないからである。加えて、エッチングの量は、最初のサイクルにおいて起こり、次の5サイクルにわたって減る、エッチングの最も大きい一部分によって制限される。
【0049】
図3は、前駆体としてWOClを使用する、430、475、および520℃の温度におけるTiN上でのタングステン堆積のプロットである。このデータは、80トール圧力、アルゴンキャリアガスの100sccm、および、2000sccmのH流れのパルス化学蒸気堆積条件を使用して生成された。タングステン堆積(Å)が、サイクルの数に対してプロットされる。このデータは、タングステン堆積が、475℃および520℃動作温度に対しては5サイクル後に起こるが、430℃動作温度に対しては(10サイクル後の)より多い時間を要することを例示し、そのことは、基板温度に依存的な核形成遅延を指示するものである。
【0050】
図4は、前駆体としてWOClを使用する、窒化チタン上でのタングステンのパルスCVD堆積を例示する。Å単位のタングステン堆積が、前駆体に対する、秒単位のパルス「オン時間」に対してプロットされた。このデータは、タングステン堆積が、前駆体の10秒オン時間に対して有意に(約6x)増大したことを例示する。パルスCVD条件は、80トール圧力、100sccmにおけるアルゴンキャリア、2000sccmのH流れ(継続的)を含んでいた。これらの条件のもとで、および、430℃の基板温度(Tsub)によって、タングステン堆積は観察されなかったが、窒化チタン膜エッチングは観察された。(表6を確認されたい。)
【0051】
図5は、前駆体としてWOClを使用する、パルスCVD条件に対する、窒化チタン基板の暴露に対するパルス「オフ時間」の影響を例示する。他の条件は、80トール圧力、100sccmにおけるアルゴンキャリアガス、および、1000sccmの継続的なH流れを含んでいた。窒化チタンエッチ速度は、パルス「オフ時間」に対してプロットされる。オフ時間が増大される際、アンプル温度が、アンプルを通る、より少ないAr流れからの減少される冷却に起因して増大し、かくして、前駆体濃度が増大する。このプロットは、さらには、窒化チタンエッチ速度がWOCl前駆体濃度に直接的に依存的であることを例示し、加えて、タングステンは、短い暴露(5サイクル)に起因して、この実例において堆積されなかった。
【0052】
図6は、本開示の方法を実践するための「ALD」(または、エッチングの事例においては「ALE」)プロセスの単純化された描写である。WOClおよび共反応物(すなわち、還元ガス)は、サイクル時間の小部分の間「オン」でパルス送出される。吸引または不活性ガスパージが、前駆体パルスと共反応物パルスとの間に起こる。サイクルは、特定の膜厚さを生み出す(または、所望の量のエッチングを達成する)のに必要ないくつかの回数に対して繰り返される。
【0053】
図7は、本開示の方法を実践するための「CVD」(または、エッチングの事例においては「CVE」)プロセスの単純化された描写である。WOClおよび共反応物は、両方が、所望の量の堆積(またはエッチング)が起こるまで、反応ゾーン内へと継続的に送り込まれる。
【0054】
図8は、本開示の方法を実践するための「パルスCVD」(または、エッチングの事例においては「CVE」)プロセスの単純化された描写である。WOCl前駆体は、「オフ」期間が後に続く所与の期間の時間の間、パルスをなして反応ゾーン内へと注入され、一方で、共反応物は、反応ゾーン内へと継続的に送り込まれる。この方式において、共反応物は、パルス送出が「オフ」であるときに、これらの期間中に、前駆体を反応ゾーンから必然的にパージする。
【0055】
図9は、本開示のプロセスを遂行するための適した反応チャンバの単純化された描写である。
【0056】
本開示の他の態様は、後に続くものを含んでいる。
【0057】
態様1は、
(a)基板を制御可能にエッチングするためのプロセス条件の第1のセットであって、基板は、Al、TiN、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、Ir、Cu、SiO、およびSiN膜から選定される膜を含む、第1のセット、
(b)タングステンを基板の表面上へと制御可能に堆積させるためのプロセス条件の第2のセットであって、基板は、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、Ir、Cu、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む、第2のセット、または、
(c)タングステンを、金属導電W、Mo、Co、Ru、Ir、Cu、基板上へと選択的に堆積させるが、近隣の窒化物もしくは誘電体酸化物膜上へは堆積させないためのプロセス条件の第3のセット
のもとで、反応ゾーン内で、WOClおよび還元ガスに基板を暴露することを含む方法である。
【0058】
態様2は、プロセス条件の第1のセットが、約200℃から約1000℃の基板温度範囲、約800ppmから約20,000ppmのWOCl濃度、および、約0.5から約500トールの圧力を含む、態様1の方法である。
【0059】
態様3は、プロセス条件の第2のセットが、約200℃から約1000℃の基板温度範囲、約5ppmから約1200ppmのWOCl濃度、および、約0.5から約500トールの圧力を含む、態様1の方法である。
【0060】
態様4は、還元ガスが、水素、ヒドラジン、またはアルキル化ヒドラジンから選定される、態様1の方法である。
【0061】
態様5は、還元ガスが水素であり、水素が、約0.1から約10リットル毎分の速度において反応ゾーン内へと送り込まれる、態様2または3の方法である。
【0062】
態様6は、反応ゾーン内で、(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、(ii)還元ガスに、Al、TiN、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜を含む基板を暴露することであって、反応ゾーン内の圧力は約0.5から500トールであり、基板温度は約200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は約0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは約0.001から1リットル毎分であり、反応ゾーン内のWOClの濃度は1000ppmより大であり、前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃であり、以て、Al、TiN、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、およびSiN膜から選定される膜を含む基板がエッチングされる、基板を暴露することを含む方法である。
【0063】
態様7は、反応ゾーン内のWOClの濃度が約1000ppmから約10,000ppmである、態様6の方法である。
【0064】
態様8は、前記基板が、WOCl前駆体および還元ガスの継続的な流れに暴露される、態様6の方法である。
【0065】
態様9は、前記基板が、還元ガスの継続的な流れに暴露され、一方で、WOCl前駆体が、あらかじめ決定された期間の時間の間、反応ゾーン内へとパルス送出される、態様6の方法である。
【0066】
態様10は、WOCl前駆体が、所望の量のエッチングが基板上で起こるまで、0.05から約120のオフ期間が後に続く、および、所望の数のパルスに対して繰り返される、0.05から約20秒の期間の間、反応ゾーン内へとパルス送出される、態様9の方法である。
【0067】
態様11は、WOCl前駆体が、1から約60のオフ期間が後に続く、0.1から約10秒の期間の間、反応ゾーン内へとパルス送出される、態様9の方法である。
【0068】
態様12は、基板がAl膜である、態様9の方法である。
【0069】
態様13は、前記基板が、順次、
(i)WOCl前駆体に暴露され、後に続くのが、
(ii)吸引または不活性ガスによりパージすることであり、後に続くのが、
(iii)還元ガスへの暴露であり、後に続くのが、
(iv)吸引または不活性ガスによりパージすること、および、基板上での所望の量のエッチングが起こるまで、(i)ないし(iv)のシーケンスを繰り返すことである、態様6の方法である。
【0070】
態様14は、反応ゾーン内のWOCl前駆体の濃度が約2000ppmから約5000ppmである、態様6の方法である。
【0071】
態様15は、基板温度が約300℃から約450℃である、態様6の方法である。
【0072】
態様16は、
反応ゾーン内で、
(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、
(ii)還元ガス
に、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む基板を暴露することであって、
反応ゾーン内の圧力は約0.5トールから500トールであり、基板温度は約200℃から1000℃であり、還元ガス流れ速度は約0.1から10リットル毎分であり、キャリアガス流れは約0.001から1リットル毎分であり、WOClの濃度は1000ppm未満であり、前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃であり、
以て、タングステンが、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、SiN、TiN、およびSiO膜から選定される膜を含む基板の表面上へと堆積される、基板を暴露することを含む方法である。
【0073】
態様17は、反応ゾーン内のWOClの濃度が約75ppmから約1000ppmである、態様16の方法である。
【0074】
態様18は、前記基板が、順次、
(i)WOCl前駆体に暴露され、後に続くのが、
(ii)吸引または不活性ガスによりパージすることであり、後に続くのが、
(iii)還元ガスへの暴露であり、後に続くのが、
(iv)吸引または不活性ガスによりパージすること、および、基板上でのタングステンの所望の量の堆積が起こるまで、(i)ないし(iv)のシーケンスを繰り返すことである、態様16の方法である。
【0075】
態様19は、前記暴露は、前記基板が、WOCl前駆体および還元ガスの継続的な流れに暴露される場合のものである、態様16の方法である。
【0076】
態様20は、前記暴露は、前記基板が、還元ガスの継続的な流れに暴露され、一方で、WOCl前駆体が、あらかじめ決定された期間の時間の間、反応ゾーン内へとパルス送出される場合のものである、態様16の方法である。
【0077】
態様21は、WOCl前駆体が、所望の量のタングステン堆積が基板上で起こるまで、1から約60秒のオフ期間が後に続く、および、所望の数のパルスに対して繰り返される、0.1から約10秒の期間の間、反応ゾーン内へとパルス送出される、態様20の方法である。
【0078】
態様22は、反応ゾーン内のWOCl前駆体の濃度が約100ppmから約800ppmである、態様16の方法である。
【0079】
態様23は、基板温度が約550℃から約700℃である、態様16の方法である。
【0080】
態様24は、反応ゾーン内で、(i)前駆体アンプルから送り出されるキャリアガスと一緒のWOCl、および、(ii)共反応物還元ガスに、Al、HfO、ZrO、W、Mo、Co、Ru、Cu、Ir、SiN、TiN、およびSiO膜から選択される膜を含んでいる基板を暴露することであって、約0.5トールから500トールの反応ゾーン内の圧力、約200℃から1000℃の基板温度、約0.1から10リットル毎分の還元ガス流れ速度、約0.001から1リットル毎分のキャリアガス流れ、より少ない1000ppmの[WOCl]の濃度を含んでいる処理条件のもとで行う、基板を暴露することを含む、タングステンを金属導体膜上へと選択的に堆積させる方法であって、前駆体アンプル温度は約10℃から約180℃であり、
タングステンは、W、Mo、Co、Ru、Cu、Ir、および、他の適した金属導体膜などの金属導体膜上へと選択的に堆積されるが、窒化物および/または誘電体酸化物膜上へは堆積されない、方法である。
【0081】
態様25は、それぞれ、約10Åから約50Åの厚さを有する、および、約100から約50μΩ-cmの抵抗率を有するタングステン膜である。
【0082】
態様26は、それぞれ、約50Åから約200Åの厚さを有する、および、約50から約13μΩ-cmの抵抗率を有するタングステン膜である。
【0083】
態様27は、200Åより大きい厚さを有する、および、約15μΩ-cm未満の抵抗率を有するタングステン膜である。
【0084】
かくして本開示のいくつもの例示的な実施形態を説明したが、当業者は、なおも他の実施形態が、本明細書に添付の特許請求の範囲内で考え出され使用され得ることを容易に理解するであろう。本文書により扱われる本開示の数多くの利点が、上述の説明において論述された。しかしながら、本開示は、多くの側面において、単に例示的であることが理解される。変更が、本開示の範囲をはみ出すことなく、詳細においてなされ得る。本開示の範囲は、当然ながら、添付の特許請求の範囲が表現される文言において定義される。
図1
図2
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