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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20240510BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20240510BHJP
   C25D 7/12 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
C25D17/06 F
C25D17/06 H
C25D21/00 D
C25D7/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024516908
(86)(22)【出願日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2023043414
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】富田 正輝
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-49495(JP,A)
【文献】特開2002-38297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0116440(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0144912(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/12
17/00 - 17/28
21/00
H01L 21/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留するとともに、アノードが配置されためっき槽と、
カソードとしての基板を前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、
前記めっき槽の内部における前記アノードよりも上方且つ前記基板よりも下方の領域に配置されて、前記めっき液を撹拌するように構成された、パドルと、
前記めっき槽の内部における前記パドルよりも上方且つ前記めっき液の液面よりも下方の領域に配置されるとともに、前記めっき槽の外周壁と前記基板ホルダとの間の領域に配置された、液はね抑制板と、
前記液はね抑制板を上下方向に移動可能に支持するように構成された、支持部材と、を備える、めっき装置。
【請求項2】
前記液はね抑制板は、前記パドルによって撹拌された前記めっき液からの力を受けた場合に弾性変形可能な弾性材料で構成された弾性部位を備えている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記液はね抑制板は、複数の貫通孔を有する、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記めっき槽の前記外周壁における前記基板ホルダに対向する部分、及び、前記基板ホルダにおける前記外周壁に対向する部分に設けられた、複数の突起をさらに備える、請求項1に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっき処理を施すように構成されためっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽と、カソードとしての基板をアノードに対向するように保持する基板ホルダと、めっき槽の内部におけるアノードよりも上方且つ基板よりも下方の領域に配置されてめっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7079388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来のめっき装置において、パドルによってめっき液が撹拌された場合に、めっき槽のめっき液がはね上がる現象(「めっき液の液はね」と称する)が生じるおそれがある。従来のめっき装置は、めっき液の液はねを抑制するという観点において、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、めっき液の液はねを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を貯留するとともに、アノードが配置されためっき槽と、カソードとしての基板を前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、前記めっき槽の内部における前記アノードよりも上方且つ前記基板よりも下方の領域に配置されて、前記めっき液を撹拌するように構成された、パドルと、前記めっき槽の内部における前記パドルよりも上方且つ前記めっき液の液面よりも下方の領域に配置されるとともに、前記めっき槽の外周壁と前記基板ホルダとの間の領域に配置された、液はね抑制板と、前記液はね抑制板を上下方向に移動可能に支持するように構成された、支持部材と、を備える。
【0007】
この態様によれば、パドルによってめっき液が撹拌されて、めっき液が流動した場合に、支持部材によって支持された液はね抑制板が、このめっき液の流動の抵抗になることができる。これにより、めっき液の液はねを抑制することができる。
【0008】
(態様2)
上記の態様1において、前記液はね抑制板は、前記パドルによって撹拌された前記めっき液からの力を受けた場合に弾性変形可能な弾性材料で構成された弾性部位を備えていてもよい。
【0009】
この態様によれば、パドルによってめっき液が撹拌された場合に、液はね抑制板の弾性部位が弾性変形することで、めっき液の運動エネルギを減少させることができる。これにより、めっき液の液はねを効果的に抑制することができる。
【0010】
(態様3)
上記の態様1又は態様2において、前記液はね抑制板は、複数の貫通孔を有していてもよい。
【0011】
(態様4)
上記の態様1~態様3のいずれか1態様は、前記めっき槽の前記外周壁における前記基板ホルダに対向する部分、及び、前記基板ホルダにおける前記外周壁に対向する部分に設けられた、複数の突起をさらに備えていてもよい。
【0012】
この態様によれば、複数の突起がめっき液の流動の抵抗となることができる。これにより、めっき液の液はねを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図3】実施形態に係るめっきモジュールの構成を示す模式図である。
図4】実施形態に係る基板がめっき液に浸漬された状態を示す模式図である。
図5】実施形態に係るパドル及び駆動装置を説明するための模式図である。
図6】実施形態に係るめっき液の供給からめっき処理の開始までの一連の動作を説明するためのフロー図である。
図7】実施形態に係るめっき槽におけるめっき液の液面の近傍領域の模式的な拡大断面図である。
図8図8(A)は実施形態に係る液はね抑制板の模式的な平面図である。図8(B)は実施形態に係る液はね抑制板の他の一例を模式的に示す平面図である。
図9図9(A)、図9(B)、及び、図9(C)は、実施形態の変形例1に係る液はね抑制板を説明するための模式的な平面図である。
図10】実施形態の変形例2に係る液はね抑制板を説明するための模式的な断面図である。
図11】実施形態の変形例3に係る液はね抑制板を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、構成要素の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0015】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図(上面図)である。図1及び図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0016】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0017】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0018】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0019】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0020】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0021】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0022】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0023】
なお、図1図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、図1図2の構成に限定されるものではない。
【0024】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000におけるめっきモジュール400の構成を示す模式図である。具体的には、図3は、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の状態におけるめっきモジュール400を模式的に図示している。図4は、基板Wfがめっき液Psに浸漬された状態を示す模式図である。
【0026】
図3及び図4に例示するめっき装置1000は、一例として、基板Wfの面方向を水平方向にした状態でめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置(いわゆる、カップ式のめっき装置)である。
【0027】
図3及び図4に例示するめっき装置1000のめっきモジュール400は、めっき槽10と、オーバーフロー槽20と、基板ホルダ30と、パドル70と、を備えている。また、めっきモジュール400は、図3に例示するように、回転機構40と、傾斜機構45と、昇降機構50と、を備えていてもよい。
【0028】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底壁10aと、この底壁10aの外周縁から上方に延在する外周壁10bとを有しており、この外周壁10bの上部が開口している。なお、めっき槽10の外周壁10bの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周壁10bは、一例として円筒形状を有している。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。
【0029】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、めっき液Psには所定の添加剤が含まれていてもよい。
【0030】
めっき槽10の内部には、アノード11が配置されている。アノード11の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード11の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0031】
図3図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方には、イオン抵抗体12が配置されていてもよい。具体的には、図4の一部拡大図に例示するように、イオン抵抗体12は、複数の孔12a(細孔)を有する多孔質の板部材によって構成されている。孔12aは、イオン抵抗体12の下面と上面とを連通するように設けられている。
【0032】
このイオン抵抗体12は、アノード11とカソードとしての基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている。本実施形態のように、めっき槽10にイオン抵抗体12が配置されることで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。
【0033】
図3図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方且つイオン抵抗体12よりも下方の箇所には、膜16が配置されていてもよい。この場合、めっき槽10の内部は、膜16によって、膜16よりも下方のアノード室17aと、膜16よりも上方のカソード室17bとに区画される。アノード11はアノード室17aに配置され、イオン抵抗体12や基板Wfはカソード室17bに配置される。膜16は、めっき液Psに含まれる金属イオンを含むイオン種が膜16を通過することを許容しつつ、めっき液Psに含まれる非イオン系のめっき添加剤が膜16を通過することを抑制するように構成されている。このような膜16として、例えばイオン交換膜を用いることができる。
【0034】
めっき槽10には、めっき槽10にめっき液Psを供給するための供給口が設けられている。具体的には、本実施形態に係るめっき槽10の外周壁10bには、アノード室17aにめっき液Psを供給するための第1供給口13aと、カソード室17bにめっき液Psを供給するための第2供給口13bと、が設けられている。
【0035】
また、めっき槽10には、アノード室17aのめっき液Psをめっき槽10の外部に排出するための第1排出口14aが設けられている。第1排出口14aから排出されためっき液Psは、ポンプ(図示せず)によって圧送されて、再び、第1供給口13aからアノード室17aに供給される。
【0036】
オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外側に配置された、有底の容器によって構成されている。オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外周壁10bの上端を超えためっき液Ps(すなわち、めっき槽10からオーバーフローしためっき液Ps)を一時的に貯留するために設けられている。オーバーフロー槽20に貯留されためっき液Psは、第2排出口14bから排出された後に、ポンプ(図示せず)によって圧送されて、再び、第2供給口13bからカソード室17bに供給される。
【0037】
基板ホルダ30は、カソードとしての基板Wfを、基板Wfの被めっき面Wfaがアノード11に対向するように保持している。本実施形態において、基板Wfの被めっき面Wfaは、具体的には、基板Wfの下方側を向いた面(下面)に設けられている。
【0038】
基板ホルダ30は、回転機構40に接続されていている。回転機構40は、基板ホルダ30を回転させるための機構である。図3に例示されている「R1」は、基板ホルダ30の回転方向の一例である。回転機構40としては、公知の回転モータ等を用いることができる。傾斜機構45は、回転機構40及び基板ホルダ30を傾斜させるための機構である。昇降機構50は、上下方向に延在する支軸51によって支持されている。昇降機構50は、基板ホルダ30、回転機構40及び傾斜機構45を上下方向に昇降させるための機構である。昇降機構50としては、直動式のアクチュエータ等の公知の昇降機構を用いることができる。
【0039】
制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサ801や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置802等を備えている。制御モジュール800は、記憶装置802に記憶されたプログラムの指令に基づいて、プロセッサ801が作動することで、めっきモジュール400の動作を制御する。
【0040】
図5は、パドル70及び後述する駆動装置90を説明するための模式図である。図4及び図5を参照して、パドル70は、めっき槽10の内部におけるアノード11よりも上方且つ基板Wfよりも下方の領域に配置されている。具体的には、本実施形態に係るパドル70は、アノード11よりも上方に配置されたイオン抵抗体12と基板Wfとの間に配置されている。
【0041】
図5を参照して、パドル70は、駆動装置90によって駆動されて、めっき液Psを撹拌するように構成された「撹拌部材」である。本実施形態に係る駆動装置90は、一例として、制御モジュール800の指示を受けて、パドル70を、アノード11(又は、基板Wf)に平行な方向で「第1方向(1st)」、及び、第1方向とは反対の「第2方向(2nd)」に交互に駆動する。すなわち、本実施形態に係るパドル70は、第1方向及び第2方向に往復移動する。
【0042】
なお、このような駆動装置90のメカニカルな機構自体は、公知技術を適用することができる。具体的には、本実施形態に係る駆動装置90は、電動機91と、パドル70に接続されるとともに電動機91の回転運動を直進往復運動に変換してパドル70に伝達するように構成された動力変換機構92と、を備えている。
【0043】
なお、第1方向や第2方向は上述した方向に限定されるものではない。また、パドル70の往復移動方向に垂直な方向を「第3方向(3rd)」と称する。また、図5には、パドル70の中心軸線として、第3方向に延在する第1中心軸線XL1と、パドル70の往復移動方向に延在する第2中心軸線XL2と、が例示されている。
【0044】
なお、パドル70は、少なくともめっき液Psを撹拌するときに、めっき槽10の内部に配置されていればよく、めっき槽10の内部に常に配置されている必要はない。例えば、パドル70の駆動が停止されてパドル70によるめっき液Psの撹拌が行われない場合には、パドル70はめっき槽10の外部に配置された構成とすることもできる。
【0045】
パドル70の具体的な構成は、めっき液Psを撹拌できるものであればよく、特に限定されるものではないが、図5に例示するパドル70は、一例として、ハニカム構造を有するハニカム構造部71と、このハニカム構造部71の第3方向の端部に接続された一対の外枠(第1外枠72a及び第2外枠72b)と、を備えている。第1外枠72a及び第2外枠72bの具体的な構造は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る第1外枠72a及び第2外枠72bは、一例として、平板状の部材によって構成されている。第1外枠72a及び第2外枠72bの少なくとも一方は、駆動装置90に接続されている。
【0046】
ハニカム構造部71は、梁部材73によって区画された多角形の孔74を複数有している。本実施形態に係る孔74は、ハニカム構造部71の上面と下面とを連通するように、上下方向に貫通している。また、ハニカム構造部71は、第1方向を向いた第1外周壁75と、第2方向を向いた第2外周壁76とを備えている。第1外周壁75及び第2外周壁76は、梁部材73によって構成されている。
【0047】
孔74の多角形の具体的な形状は、特に限定されるものではなく、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等、種々のN角形(Nは3以上の自然数)を用いることができる。本変形例では、多角形の一例として、六角形が用いられている。
【0048】
一例として、図5に例示するパドル70は、平面視で、第3方向に沿ってハニカム構造部71の「パドル幅D1(パドル70の往復移動方向の長さ)」が変化する部分を有している。具体的には、パドル70は、第3方向で中央部のパドル幅D1が第3方向で端部のパドル幅D1よりも広い形状を有している。換言すると、パドル70は、第3方向で端部よりも中央側の部分が、この端部よりも第1方向及び第2方向に突出した形状を有している。
【0049】
この構成によれば、例えば、パドル70における中央部のパドル幅D1が端部のパドル幅D1と同じ場合に比較して、パドル70が一定距離移動したときのパドル70が撹拌可能なエリアを広くすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るパドル70は、一例として、第2中心軸線XL2を挟んで線対称(左右対称)の形状を有している。
【0051】
また、本実施形態に係るパドル70のハニカム構造部71は、第1方向を向いた第1外周壁75と、第2方向を向いた第2外周壁76とを備えている。第1外周壁75及び第2外周壁76は、梁部材73によって構成されている。
【0052】
パドル70の具体的な製造手法は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係るパドル70は、一例として、3Dプリンター等の公知の立体印刷機を用いて製造することができる。
【0053】
なお、パドル70の構成は、めっき液Psを撹拌することができるものであれば、上述した構成に限定されるものではなく、公知の他の構成(例えば、特許文献1に例示されているような種々の構成)であってもよい。この他の一例を挙げると、パドル70は、ハニカム構造部71に代えて、第3方向に直線状に延在する複数の梁部材を備えていてもよい。
【0054】
図6は、本実施形態に係るめっき液の供給からめっき処理の開始までの一連の動作を説明するためのフロー図である。まず、めっき槽10にめっき液Psを供給する(ステップS10)。具体的には、アノード11及びイオン抵抗体12がめっき液Psに浸漬するように、めっき槽10にめっき液Psを供給する。より具体的には、本実施形態では、第1供給口13a及び第2供給口13bからめっき液Psをめっき槽10に供給する。
【0055】
次いで、基板Wfをめっき液Psに浸漬させる(ステップS20)。具体的には、本実施形態では、昇降機構50が基板ホルダ30を下降させることで、基板Wfの少なくとも被めっき面Wfaをめっき液Psに浸漬させる。
【0056】
次いで、駆動装置90がパドル70の駆動を開始させることで、パドル70によるめっき液Psの撹拌を開始させる(ステップS30)。
【0057】
次いで、通電装置(図示せず)によってアノード11と基板Wfとの間に電気を流すことで、基板Wfへのめっき処理を開始させる(ステップS40)。これにより、基板Wfの被めっき面Wfaへのめっき皮膜の形成が開始される。具体的には、本実施形態では、このステップS40に係る基板Wfへのめっき処理の実行中においても、ステップS30に係るパドル70によるめっき液Psの撹拌は行われている(すなわち、めっき液Psを撹拌しつつ、被めっき面Wfaへのめっき皮膜の形成が行われている)。
【0058】
なお、制御モジュール800は、上述したステップS20の実行時、又は、ステップS30の実行時、又は、ステップS40の実行時に、基板ホルダ30の回転を開始させることが好ましい。これにより、少なくともステップS40に係るめっき処理時に基板ホルダ30を回転させることができる。
【0059】
なお、パドル70がめっき液Psを撹拌する時期は、上述した時期に限定されるものではない。例えば、ステップS10とステップS20との間の時期(すなわち、めっき槽10にめっき液Psが供給された後であって、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の時期)においても、パドル70によってめっき液Psを撹拌してもよい。
【0060】
図7は、めっき槽10におけるめっき液Psの液面Lsの近傍領域(図4のA1部分)の模式的な拡大断面図である。図7に例示するように、本実施形態に係るめっき装置1000は、液はね抑制板60と、支持部材82と、をさらに備えている。
【0061】
液はね抑制板60は、めっき槽10の内部におけるパドル70よりも上方、且つ、めっき液Psの液面Lsよりも下方の領域に配置されるとともに、めっき槽10の外周壁10bと基板ホルダ30との間の領域(隙間)に配置されている。具体的には、液はね抑制板60は、後述する支持部材82のばね部材80によって、上方側から吊るされるように支持されている。液はね抑制板60は、パドル70によってめっき液Psが撹拌された場合に、この撹拌されためっき液Psの流動に対する抵抗となることで、めっき液Psの液はねを抑制するように構成された板部材である。
【0062】
図8(A)は、液はね抑制板60の模式的な平面図である。図8(B)は、液はね抑制板60の他の一例を模式的に示す平面図である。図8(A)に例示するように、液はね抑制板60は、円環状の部材によって構成されていてもよい。この場合、液はね抑制板60は、平面視で、基板ホルダ30とめっき槽10の外周壁10bとの間に設けられた環状の隙間に、全体的に配置される。
【0063】
あるいは、図8(B)に例示するように、液はね抑制板60は、めっき槽10の内部に、部分的に配置されていてもよい。この場合、めっき装置1000は、液はね抑制板60を複数個有していてもよい。具体的には、図8(B)に例示する2つの液はね抑制板60は、平面視で円弧形状を呈しており、めっき槽10の外周壁10bと基板ホルダ30との間の領域に部分的に配置される。
【0064】
なお、本実施形態において、液はね抑制板60には、後述する貫通孔61は形成されていない。
【0065】
図7を参照して、支持部材82は、液はね抑制板60を上下方向に移動可能に支持するように構成されている。具体的には、本実施形態に係る支持部材82は、ばね部材80と、支持板85と、を備えている。
【0066】
ばね部材80は、その下端が液はね抑制板60の上面に接続し、その上端が後述する支持板85に接続されている。なお、ばね部材80の個数は1つでもよく、複数でもよい。本実施形態に係るばね部材80の個数は、一例として、複数である。また、本実施形態に係るばね部材80は、一例として、コイル状のばね部材(すなわち、コイルばね)によって構成されている。但し、ばね部材80の具体的な種類は、コイルばねに限定されるものではなく、例えば、板状のばね(板ばね)等であってもよい。
【0067】
支持板85は、ばね部材80を支持するための部材である。具体的には、本実施形態に係る支持板85は、めっき槽10の所定箇所(本実施形態では一例として外周壁10b)に接続されており、ばね部材80を上方側から支持している。
【0068】
パドル70によってめっき液Psが撹拌されてめっき液Psが流動した場合、このめっき液Psからの力を受けて、液はね抑制板60は、上下方向に移動する(図7では、液はね抑制板60の移動方向が「矢印(mv)」で例示されている)。本実施形態に係るばね部材80は、主として、液はね抑制板60の上下方向の移動を減衰させるために設けられている。
【0069】
支持部材82の具体的な配置態様は、特に限定されるものではないが、一例を挙げると、パドル70がめっき液Psを撹拌していない状態で、支持部材82によって支持された液はね抑制板60が水平になるように、支持部材82が配置されていることが好ましい。実際、図7に例示する液はね抑制板60は、液はね抑制板60の下面の面方向が水平方向に延在するように、支持部材82によって支持されている。
【0070】
また、めっき装置1000が複数のばね部材80を有する場合、複数のばね部材80のばね定数(N/mm)は同じであってもよい。あるいは、複数のばね部材80の一部に、他のばね部材80とは異なるばね定数を有するものを含んでいてもよい。すなわち、この場合、複数のばね部材80は、第1のばね定数を有する少なくとも1つのばね部材80と、第2のばね定数を有する少なくとも1つのばね部材80とを含んでいてもよい。
【0071】
また、基板ホルダ30とめっき槽10の外周壁10bとの間の領域において、液はねが特に生じやすい箇所がある場合には、この液はねが特に生じやすい箇所に配置されたばね部材80のばね定数を他の箇所に配置されたばね部材80のばね定数よりも小さくしてもよい。この構成によれば、液はねが特に生じやすい箇所における液はね抑制板60の上下方向の移動量を大きくすることができる。これにより、液はねを効果的に抑制することができる。
【0072】
図7に例示するように、めっき装置1000は、複数の突起130をさらに備えていていもよい。具体的には、図7に例示するように、複数の突起130は、めっき槽10の外周壁10bにおける基板ホルダ30に対向する部分、及び、基板ホルダ30における外周壁10bに対向する部分に設けられていてもよい。
【0073】
より具体的には、本実施形態に係る複数の突起130は、パドル70によってめっき液Psが撹拌されてめっき液Psが流動した場合に、このめっき液Psの流動の抵抗となるように設けられている。これにより、複数の突起130は、いわゆる「ラビリンス流路」を構成している。具体的には、本実施形態に係る複数の突起130は、一例として、上下方向に段違いに配置されることで、ラビリンス流路を構成している。
【0074】
また、複数の突起130の各々は、基板ホルダ30や外周壁10bの周方向に所定距離延在した「板状の突起」によって構成されていてもよい。具体的には、この場合、複数の突起130(板状の突起)は、基板ホルダ30及び外周壁10bの全周に亘って設けられていてもよく(すなわち、円環状に設けられていてもよく)、あるいは、基板ホルダ30及び外周壁10bの一部のみに(つまり部分的に)設けられていてもよい。
【0075】
以上説明したような本実施形態によれば、上述したような液はね抑制板60と支持部材82とを備えているので、パドル70によってめっき液Psが撹拌されて、めっき液Psが流動した場合に、支持部材82によって支持された液はね抑制板60が、このめっき液Psの流動の抵抗になることができる。これにより、めっき液Psの液はねを抑制することができる。これにより、めっき液Psの液はねに起因して、めっき装置1000に不具合が生じることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、上記のようにめっき液Psの液はねを抑制することができるので、めっき槽10の外周壁10bの高さを高くしなくても(すなわち、めっき槽10の外周壁10bの高さが低くても)、めっき液Psの液はねを抑制することができる。これにより、めっき装置1000の小型化を図りつつ、めっき液Psの液はねを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、上述したような複数の突起130を備えているので、この複数の突起130も、めっき液Psの流動の抵抗となることができる。これにより、めっき液Psの液はねを効果的に抑制することができる。
【0078】
なお、めっき装置1000は、上述した複数の突起130を備えていない構成とすることもできる。
【0079】
(変形例1)
図9(A)~図9(C)は、実施形態の変形例1に係る液はね抑制板60を説明するための模式的な平面図である。具体的には、図9(A)~図9(C)に例示する本変形例に係る液はね抑制板60は、図8(A)に例示したA2部分を拡大して模式的に図示している。
【0080】
図9(A)~図9(C)に例示するように、液はね抑制板60は、複数の貫通孔61を有していてもよい。具体的には、この複数の貫通孔61は、液はね抑制板60を上下方向に貫通するように構成されている。
【0081】
貫通孔61の具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、図9(A)に例示するように、円形の孔であってもよい。具体的には、この図9(A)に例示する液はね抑制板60の貫通孔61は、いわゆるパンチング加工によって製造されたパンチング孔によって構成されていてもよい。
【0082】
あるいは、図9(B)に例示するように、貫通孔61は、スリット状の孔であってもよい。
【0083】
あるいは、図9(C)に例示するように、液はね抑制板60は、複数の線部材62が網状に編まれた部材によって構成されていてもよい。この場合、互いに隣接する線部材62によって囲まれた領域(すなわち、網の目)に、貫通孔61が設けられている。
【0084】
(変形例2)
図10は、実施形態の変形例2に係る液はね抑制板60を説明するための模式的な断面図である。具体的には、図10は、液はね抑制板60が弾性変形した様子の一例を図示している。液はね抑制板60は、パドル70によって撹拌されためっき液Psからの力を受けた場合に弾性変形可能な弾性材料によって構成された弾性部位63を備えていてもよい。
【0085】
具体的には、液はね抑制板60は、その全体が弾性部位63によって構成されていてもよく、その一部に弾性部位63を備えていてもよい。本変形例に係る液はね抑制板60は、一例として、その全体が弾性部位63によって構成されている。
【0086】
本変形例によれば、パドル70によってめっき液Psが撹拌された場合に、液はね抑制板60の特に弾性部位63が弾性変形することで、めっき液Psの運動エネルギを減少させることができる。これにより、めっき液Psの液はねを効果的に抑制することができる。
【0087】
(変形例3)
図11は、実施形態の変形例3に係る液はね抑制板60を説明するための模式的な断面図である。前述した実施形態(例えば図7を参照)において、液はね抑制板60の外周側面は、めっき槽10の外周壁10bに接触しているが、この構成に限定されるものではない。図11に例示する本変形例のように、液はね抑制板60の外周側面65(これは、液はね抑制板60の側面のうち、めっき槽10の外周壁10bに対向する側面である)は、めっき槽10の外周壁10bに接触していない構成とすることもできる。
【0088】
具体的には、図11に例示する本変形例に係る液はね抑制板60は、液はね抑制板60の外周側面65とめっき槽10の外周壁10bとの間に、隙間Gpが設けられている。
【0089】
なお、この隙間Gpは、液はね抑制板60の周方向に全体的(すなわち連続的)に設けられていてもよく、あるいは、部分的(すなわち断続的)に設けられていてもよい。
【0090】
本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例によれば、液はね抑制板60の動作域の自由度を高くすることが容易にできる。すなわち、液はね抑制板60がより自由に動くことが容易にできる。これにより、めっき液Psの液はねを効果的に抑制することができる。
【0091】
なお、前述した変形例1(図9(A)~図9(C))や変形例2(図10)に係る液はね抑制板60も、本変形例と同様に、液はね抑制板60の外周側面とめっき槽10の外周壁10bとの間に隙間Gpが設けられていてもよい。
【0092】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 めっき槽
10b 外周壁
11 アノード
30 基板ホルダ
60 液はね抑制板
61 貫通孔
63 弾性部位
70 パドル
82 支持部材
130 突起
1000 めっき装置
Ls めっき液の液面
Ps めっき液
Wf 基板
【要約】
めっき液の液はねを抑制することができる技術を提供する。
めっき装置1000は、めっき液Psを貯留するとともに、アノード11が配置されためっき槽10と、カソードとしての基板Wfをアノードに対向するように保持する基板ホルダ30と、めっき槽の内部におけるアノードよりも上方且つ基板よりも下方の領域に配置されて、めっき液を撹拌するように構成された、パドル70と、めっき槽の内部におけるパドルよりも上方且つめっき液の液面Lsよりも下方の領域に配置されるとともに、めっき槽の外周壁10bと基板ホルダとの間の領域に配置された、液はね抑制板60と、液はね抑制板を上下方向に移動可能に支持するように構成された、支持部材82と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11