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特許7486877リチウム二次電池用正極活物質、この製造方法、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、この製造方法、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、この製造方法、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240513BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240513BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240513BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/505
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020556267
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2019005631
(87)【国際公開番号】W WO2019216694
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-10-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2018-0054292
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ギ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】セ・ファン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ボム・チョ
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・チェ
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩田 淳
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1849719(KR,B1)
【文献】国際公開第2017/095133(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/061654(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/00-10/0587
H01M11/00-11/86
C01G53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均組成が下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含み、前記リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガン含量より少ない正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属酸化物は、ニッケルが粒子の中心から表面まで漸進的に減少し且つコバルト及びマンガンが粒子の中心から表面まで漸進的に増加する濃度勾配を有し、
前記正極活物質は、1次粒子が凝集されてなる2次粒子の形態であり、
前記正極活物質の表面の少なくとも8箇所の地点でTEM分析を介して測定したc軸方向と測定地点における粒子の中心から表面に向かう粒子成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率が60%以上であり、
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
前記化学式1において、
0≦a≦0.3、0.65≦x<1、0<y≦0.35、0<z≦0.35、0≦w≦0.02、y<zであり、
は、Al、Zr、Mg、Zn、Y、Fe及びTiからなる群から選択された少なくとも一つである、正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属酸化物のコバルト:マンガンのモル比が1:1超過1:10以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質は、表面部に前記正極活物質の中心から表面方向に成長した柱状構造の1次粒子を含む、請求項1または2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属の総モル数に対してコバルトを15モル%以下で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属の総モル数に対してマンガンを20モル%以上35モル%未満で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質を製造するための正極物質の製造方法であって、
ニッケル原料物質を含む第1遷移金属含有溶液と、
前記第1遷移金属含有溶液と異なる遷移金属濃度を有し、且つ、ニッケル原料物質、コバルト原料物質及びマンガン原料物質を含む第2遷移金属含有溶液とを準備する段階、
前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液の混合比率を漸進的に変化させながら、前記第1遷移金属含有溶液と第2遷移金属含有溶液とを混合して正極活物質前駆体を製造する段階、及び
前記正極活物質前駆体及びリチウム含有原料物質を混合して焼成し、正極活物質を合成する段階、を含み、
前記正極活物質前駆体を製造する段階は、混合溶液内のニッケル含量が減少するに伴い、pHが漸進的に低くなるように調節される、正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記第1遷移金属含有溶液のニッケル:コバルト:マンガンのモル比が(80~100):(0~10):(0~20)である、請求項6に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記第2遷移金属含有溶液のニッケル:コバルト:マンガンのモル比が(50~80):(10~30):(10~35)である、請求項6に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記pHは、pH13からpH9の範囲で漸進的に減少する、請求項6から8のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記正極活物質前駆体及び前記リチウム含有原料物質の混合時、ドーピング元素M原料物質をさらに加え、Mは、Al、Zr、Mg、Zn、Y、Fe及びTiからなる群から選択された少なくとも一つである、請求項6から9のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年5月11日付韓国特許出願第2018-0054292号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、前記正極活物質の製造方法、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が常用化されて広く用いられている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が主に用いられており、この中でも作用電圧が高く、容量特性に優れたリチウムコバルト酸化物(LiCoO)が主に用いられている。しかし、前記リチウムコバルト酸化物は、脱リチウムによる結晶構造の不安定化によって熱的特性が劣悪であり、高価であるため電気自動車などのような中大型電池の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
最近、前記リチウムコバルト酸化物を代替し、電気自動車のような中大型電池に適用するための材料としてLiNiO、LiMnO、LiMn、及びLiFePOなどの多様なリチウム遷移金属酸化物が開発されている。しかし、前記LiNiOは、簡単な固相反応では合成が困難であり、LiCoOに比べて熱的安定性及びサイクル特性が低いという短所がある。LiMnO及びLiMnもLiCoOに比べて容量が小さく、高温特性が低いという問題点がある。特に、LiMnの場合、安価の製品が一部商品化されているが、Mn3+による構造変形(Jahn‐Teller distortion)のため寿命特性が良くない。LiFePOは、現在、ハイブリッド自動車(hybrid electric vehicle,HEV)用として多くの研究が行われているが、低いイオン伝導度のため他の分野への適用は困難な実情である。
【0006】
このような事情により、リチウムコバルト酸化物を代替するための正極活物質として最近最も脚光を浴びている材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物[Li(NiCoMn)O、前記o、p、qは、それぞれ独立して酸化物組成元素の原子分率であって、0<o≦1、0<p≦1、0<q≦1、o+p+q=1である]である。
【0007】
最近、電気自動車に対する関心が高くなるに伴い、コバルト原材料の価格上昇も重要な問題として台頭している。前記コバルト原材料は、引き続いて価格が上昇するものと予想され、これによってコバルトの含量を低減させた正極活物質の開発が要求されている。
【0008】
しかし、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、同一のニッケル含量を有するとき、コバルトの含量が減少するに伴い、放電容量及び出力特性が減少されるという問題点がある。したがって、既存の出力特性を維持しながらも、容量の減少が少なく、コバルトの含量が低減された正極材の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような問題点を解決するために、本発明の第1技術的課題は、相対的に少ないコバルト含量を有しながらも、優れた出力特性を有する正極活物質を提供することである。
【0010】
本発明の第2技術的課題は、構造安定性に優れ、リチウムの移動度が改善されたコバルト低減正極活物質を提供することである。
【0011】
本発明の第3技術的課題は、前記正極活物質の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の第4技術的課題は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供することである。
【0013】
本発明の第5技術的課題は、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、平均組成が下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含み、前記リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガン含量より少ない正極活物質であって、前記リチウム遷移金属酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンのうち少なくともいずれか一つが粒子の中心から表面まで漸進的に変化する濃度勾配を有し、前記正極活物質は、1次粒子が凝集されてなる2次粒子の形態であり、前記正極活物質の表面の少なくとも8箇所の地点でTEM分析を介して測定したc軸方向と測定地点の粒子の成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率が60%以上である正極活物質を提供する:
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
前記化学式1において、0≦a≦0.3、0.65≦x<1、0<y≦0.35、0<z≦0.35、0≦w≦0.02、y<zであり、Mは、Al、Zr、Mg、Zn、Y、Fe及びTiからなる群から選択された少なくとも一つである。
【0015】
また、本発明は、ニッケル原料物質を含む第1遷移金属含有溶液及び前記第1遷移金属含有溶液と異なる遷移金属濃度を有し、且つ、ニッケル原料物質、コバルト原料物質及びマンガン原料物質を含む第2遷移金属含有溶液を準備する段階;前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液の混合比率を漸進的に変化させながら、前記第1遷移金属含有溶液と第2遷移金属含有溶液とを混合して正極活物質前駆体を製造する段階;及び前記正極活物質前駆体及びリチウム含有原料物質を混合して焼成し、正極活物質を合成する段階;を含み、前記正極活物質前駆体を製造する段階は、前記混合溶液内のニッケル含量が減少するに伴い、pHが漸進的に低くなるように調節されるものである、正極活物質の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、本発明に係る正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0017】
また、本発明は、本発明に係る正極を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の正極活物質のように活物質粒子内で遷移金属が濃度勾配を有し、表面での結晶のc軸方向と粒子成長方向が特定の角度を満たす比率が高い場合、コバルト含量の低下による出力特性の低下が最小化され、少ない量のコバルトを用いても優れた出力特性を得ることができる。
【0019】
本発明によれば、リチウム遷移金属酸化物のうちコバルトの含量をマンガンの含量より少なく維持することにより、これを含む二次電池の生産費用を低減させることができる。
【0020】
また、前記リチウム遷移金属酸化物に含まれる遷移金属うち少なくともいずれか一つが粒子の中心から表面まで漸進的に変化する濃度勾配を有することにより、高容量特性を有しながらも構造安定性が向上するので、これを電池への適用時に電池の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で製造した正極活物質の表面TEM写真及び制限視野回折パターン(selected area diffraction pattern,SADP)を介して確認した正極活物質の表面の結晶構造の回折パターンである。
図2】比較例1で製造した正極活物質の表面TEM写真及びSADPを介して確認した正極活物質の表面の結晶構造の回折パターンである。
図3】比較例2で製造した正極活物質の表面TEM写真及びSADPを介して確認した正極活物質の表面の結晶構造の回折パターンである。
図4】実施例1及び比較例1で製造した二次電池の充放電プロファイルのグラフである。
図5】実施例1及び比較例1~2で製造した二次電池の300サイクルの間の容量維持率及び抵抗増加率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0024】
正極活物質
従来、リチウム二次電池の正極活物質としては、作用電圧が高く、容量特性に優れたリチウムコバルト系酸化物が用いられたが、前記リチウムコバルト系酸化物は、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため熱的特性が劣化し、高価であるため中大型デバイスの動力源として大量使用するには限界があった。前記リチウムコバルト系酸化物を代替するためにリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物を用いたが、前記リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物の場合、製造コストを低減するためにコバルトの含量を減少するに伴い、放電容量及び出力特性が減少されるという問題点があった。
【0025】
よって、本発明者らは、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物に含まれる金属元素のうち少なくともいずれか一つが粒子の中心から表面まで漸進的に変化する濃度勾配を有し、粒子表面でTEM分析を介して測定したc軸方向と測定地点の粒子の成長方向が特定の角度をなすように制御することにより、リチウム遷移金属酸化物内のリチウムイオンの移動性が改善され、コバルトの含量を減少させても、これを電池への適用時に放電容量及び出力特性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
以下、本発明に係る正極活物質に対して具体的に説明する。
【0027】
本発明に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含み、前記リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガン含量より少ない正極活物質であって、前記リチウム遷移金属酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンのうち少なくともいずれか一つが粒子の中心から表面まで漸進的に変化する濃度勾配を有し、前記正極活物質は、1次粒子が凝集されてなる2次粒子の形態であり、前記正極活物質の表面の少なくとも8箇所の地点でTEM分析を介して測定したc軸方向と測定地点の粒子の成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率が60%以上であるものである。
【0028】
具体的に、本発明に係る正極活物質は、平均組成が下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含むものである:
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
前記化学式1において、
0≦a≦0.3、0.65≦x<1、0<y≦0.35、0<z≦0.35、0≦w≦0.02、y<zであり、
は、Al、Zr、Mg、Zn、Y、Fe及びTiからなる群から選択された少なくとも一つである。
【0029】
具体的に、前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属元素の総モル数に対して、ニッケルの含量が60モル%以上100モル%未満で含んでよい。このとき、前記リチウム遷移金属酸化物内のニッケルの含量が前記範囲を外れる場合、正極活物質の容量が減少し、高容量を必要とする電気化学素子に適用できないという問題点がある。前記範囲内でニッケルの含量が高いほど、これを含む電池は高容量特性を示すものであり得る。但し、ニッケルの含量が高いほど、コバルト及び/又はマンガンの含量は相対的に減少することとなり、これによって充放電効率などが低下し得る。よって、前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属元素の総モル数に対して、ニッケルの含量が好ましくは65モル%から75モル%になるように含んでよい。
【0030】
また、前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属元素の総モル数に対して、マンガンの含量が0モル%超過35モル%以下、好ましくは15モル%から35モル%、最も好ましくは20モル%以上35モル%未満で含んでよい。このとき、前記マンガンの含量が前記範囲を外れる場合、高容量を発現するのに問題が発生し得る。
【0031】
また、前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属元素の総モル数に対して、コバルトの含量が0モル%超過35モル%以下、好ましくは0モル%超過20モル%以下、最も好ましくは0モル%超過15モル%以下で含んでよい。このとき、前記コバルトの含量が前記範囲を外れてコバルトの含量が35モル%を超過する場合、高含量のコバルトによって原料物質の費用が全体的に増加し、可逆容量が多少減少する問題点が発生する可能性があり、コバルトの含量が0モル%である場合、十分なレート特性及び出力特性を示すことができないという問題点がある。
【0032】
本発明によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、マンガンの含量がコバルトの含量より多いものであってよい。例えば、マンガンの含量がコバルトの含量より少ないか同一である場合、コバルト原料の値の上昇による製造コストの増加、寿命の低下、抵抗増加率の増加、及びガス発生量の増加などの問題があり得る。
【0033】
具体的に、前記リチウム遷移金属酸化物は、コバルト:マンガンのモル比が1:1超過1:10以下、好ましくは1:1超過1:5以下、さらに好ましくは1:1超過1:3以下であってよい。例えば、前記リチウム遷移金属酸化物のうちコバルト:マンガンのモル比が1:1超過1:10以下である場合、相対的にコバルトを低含量で含むことによって、費用増加を抑制するだけでなく、寿命特性、抵抗特性及びガス発生量を改善することができる。
【0034】
前記正極活物質は、必要に応じて選択的にドーピング元素Mによってドーピングされてよい。
【0035】
前記ドーピング元素Mは、正極活物質の構造安定性の向上に寄与できるものであれば、特に制限されずに用いられてよく、例えば、Al、Zr、Mg、Zn、Y、Fe及びTiからなる群から選択された少なくとも一つのものであってよい。
【0036】
前記ドーピング元素Mは、リチウムを除いた遷移金属の総モル数に対して、2モル%以下、好ましくは1モル%から2モル%で含まれてよい。例えば、前記ドーピング元素Mが前記含量範囲で含まれる場合、正極活物質の表面と内部に前記ドーピング元素Mが均一に含まれ、これによって正極活物質の構造安定性が向上するので出力特性が向上することができる。
【0037】
また、前記正極活物質は、1次粒子が凝集されてなる2次粒子の形態である。具体的に、前記正極活物質は、表面部に前記正極活物質の中心から表面方向に成長した柱状構造(columnar structure)の1次粒子を含むものであってよい。
【0038】
前記正極活物質は、表面部に前記正極活物質の中心から表面方向に成長した柱状構造の1次粒子を含むことにより、前記正極活物質表面でのリチウムイオンの移動性が向上するので、電池への適用時に初期容量特性及び出力特性が向上することができる。
【0039】
前記柱状構造は、縦横比が2から5、好ましくは3から5であってよい。前記柱状構造の縦横比が前記範囲を満たす場合、容量、寿命及び抵抗増加率を改善することができる。
【0040】
また、本発明に係る正極活物質は、層状構造を有するリチウム遷移金属酸化物を含むものである。例えば、前記正極活物質表面の少なくとも8箇所の地点でTEM分析を介して測定したc軸方向と測定地点の粒子成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率が60%以上であってよい。
【0041】
層状結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、c軸方向と85゜から95゜を満たす面方向に沿ってリチウムイオンの移動がなされる。
【0042】
したがって、正極活物質表面でリチウム遷移金属酸化物粒子の成長方向と、c軸方向と85゜から95゜を満たす面の方向(lithium path direction)がずれて、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の成長方向と、c軸方向と85゜から95゜を満たす比率が60%未満である場合、正極活物質内部で脱離されたリチウムイオンの移動が表面で遮断され、リチウムの移動性が低下し得る。しかし、本発明の正極活物質は、粒子の成長方向と測定されたc軸方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率が60%以上で高いため、正極活物質内部で脱離されたリチウムイオンが正極活物質外部に容易に移動することができるので、リチウムの移動性が優れて現われる。
【0043】
このとき、前記正極活物質の結晶構造は、正極活物質を切断してTEMを用いて観察し、これを高速フーリエ変換(fast Fourier transform,FFT)または制限視野回折パターン(selected area diffraction pattern,SADP)などを介して正極活物質のc軸方向を観察することができる。
【0044】
また、前記正極活物質に含まれるニッケル、コバルト及びマンガンのうち少なくとも一つは、正極活物質粒子の中心から粒子表面まで漸進的に変化する濃度勾配を示しながら増加または減少してよい。このとき、前記遷移金属の濃度勾配の傾きは一定であってよい。前記正極活物質内に含まれたニッケル、コバルト及びマンガンは、それぞれ独立して一つの濃度勾配の傾き値を有してよい。
【0045】
具体的に、前記正極活物質内に含まれたニッケルは、正極活物質粒子の粒子中心から粒子表面まで漸進的に減少する濃度勾配を有してよい。このとき、前記ニッケルの濃度勾配の傾きは、正極活物質の粒子の中心から表面まで一定であってよい。このように、正極活物質の粒子中心ではNiの濃度が高濃度を維持し、粒子表面に行くほど濃度が減少する濃度勾配で存在する場合、粒子の中心には、ニッケルを高含量で含むので正極活物質の高容量特性を維持することができ、粒子の表面には、ニッケルを低含量で含むことによりNiの触媒作用による表面反応性を低減するので、正極活物質の構造的安定性を改善することができる。
【0046】
また、前記正極活物質内に含まれたマンガン及びコバルトのうち少なくとも一つは、正極活物質の粒子の中心から表面に行くほど漸進的に増加する濃度勾配を有してよい。この場合、正極活物質の粒子の中心でマンガン及び/又はコバルトの濃度が低濃度を維持し、正極活物質の粒子の表面に行くほどマンガン及び/又はコバルトの濃度が相対的に増加するため、優れたレート特性及び寿命特性を具現することができる。
【0047】
例えば、従来、コバルトの含量がマンガンの含量より少ない正極活物質の場合、放電容量が低下し得る。しかし、本願発明のようにコバルトの含量がマンガンの含量より少ない正極活物質が濃度勾配を有することにより、放電容量の低下を抑制することができ、これによって低温特性及び高温寿命特性の低下もまた防止することができる。
【0048】
本発明でのように正極活物質粒子内の位置に応じて遷移金属の濃度が連続的に変化する濃度勾配で存在することにより、正極活物質粒子の中心から表面に至るまで急激な相境界領域が存在しないため、結晶構造が安定化されて熱安定性が増加することになり、これを二次電池への適用時に高容量、高寿命及び熱安定性を示すことができる。また、コバルトの含量が低くなっても、容量及び出力特性が維持され得る。前記遷移金属の濃度勾配の傾きが一定である場合、構造安定性改善の効果がさらに向上することができる。また、濃度勾配を介して正極活物質粒子内での各遷移金属の濃度を異ならせることで、当該遷移金属の特性を容易に活用して正極活物質の電池性能改善の効果をさらに向上させることができる。
【0049】
本発明において、「遷移金属の濃度が漸進的に変化(増加または減少)する濃度勾配を示す」とは、遷移金属の濃度が粒子全体に亘って漸進的に変化する濃度分布で存在するということを意味する。
【0050】
また、本発明において、リチウム複合金属酸化物の粒子内での金属の濃度勾配構造及び濃度は、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer,EPMA)、誘導結合プラズマ‐原子放出分光法(Inductively Coupled Plasma‐Atomic Emission Spectrometer,ICP‐AES)、または飛行時間型二次イオン質量分析機(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry,ToF‐SIMS)などの方法を用いて確認することができ、具体的にはリチウム複合金属酸化物の粒子に対してX線光電子分光法(XPS)を用いてアルゴンガスで1000秒間に亘ってエッチングを行い、エッチング開始時点からエッチング時間による元素検出量を分析することにより測定することができる。
【0051】
前記のように、本発明に係る正極活物質は、コバルトの含量を低減させても、正極活物質の結晶が粒子の表面と特定の角度をなすc軸方向を60%以上有し、濃度勾配を有することにより、容量特性及び出力特性の低下なしに、低コストで電気化学的特性に優れた正極活物質を提供できるものである。
【0052】
正極活物質の製造方法
次に、本発明に係る正極活物質の製造方法に対して説明する。
【0053】
具体的に、本発明に係る正極活物質を製造するため、ニッケル原料物質を含む第1遷移金属含有溶液、及び前記第1遷移金属含有溶液と異なる遷移金属濃度を有し、且つ、ニッケル原料物質、コバルト原料物質及びマンガン原料物質を含む第2遷移金属含有溶液を準備する段階;前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液の混合比率を漸進的に変化させながら、前記第1遷移金属含有溶液と第2遷移金属含有溶液とを混合して正極活物質前駆体を製造する段階;及び前記正極活物質前駆体及びリチウム含有原料物質を混合して焼成し、正極活物質を合成する段階;を含む。このとき、前記正極活物質前駆体を製造する段階は、前記混合溶液内のニッケル含量が減少するに伴い、pHが漸進的に低くなるように調節されるものである。
【0054】
具体的に、本発明に係る正極活物質を製造するため、先ず、ニッケル原料物質を含む第1遷移金属含有溶液、及び前記第1遷移金属含有溶液と異なる遷移金属濃度を有し、且つ、ニッケル原料物質、コバルト原料物質及びマンガン原料物質を含む第2遷移金属含有溶液を準備する。
【0055】
前記第1遷移金属含有溶液は、必要に応じて選択的に、コバルト原料物質またはマンガン原料物質のうち少なくともいずれか一つをさらに含んでよい。
【0056】
例えば、前記第1遷移金属含有溶液は、ニッケル原料物質を溶媒、具体的には、水または水と均一に混合可能な有機溶媒(アルコールなど)と水の混合物に添加して製造してもよく、またはニッケル原料物質を含む水溶液を製造した後、これを混合して用いてもよい。このとき、前記第1遷移金属含有溶液は、ニッケル:コバルト:マンガンの比率が(80~100):(0~10):(0~20)、好ましくは(90~100):(0~5):(0~10)になるようにそれぞれの金属原料物質を混合する。
【0057】
前記第2遷移金属含有溶液は、ニッケル原料物質、コバルト原料物質及びマンガン原料物質を含み、前記第1金属含有溶液と同一の方法で製造されてよい。このとき、前記第2遷移金属含有溶液は、ニッケル:コバルト:マンガンの比率が(50~80):(10~30):(10~35)、好ましくは(50~60):(20~30):(15~35)になるようにそれぞれの金属原料物質を混合する。
【0058】
このとき、前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液のいずれもマンガン原料物質の含量がコバルト原料物質の含量よりさらに高いものであってよい。これによって、製造される正極活物質前駆体粒子は、粒子全体に亘ってマンガンの含量がコバルトの含量より高く、コバルト原料物質を少なく含むことによって製造コストを節減することができる。
【0059】
前記ニッケル、コバルト及びマンガンの原料物質としては、それぞれの金属元素含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハライド、水酸化物、またはオキシ水酸化物などが用いられてよく、水など前記溶媒に溶解され得るものであれば、特に制限されずに用いられてよい。
具体的に、ニッケル原料物質としては、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩またはニッケルハロゲン化物などを挙げることができ、これらのうち1種以上の混合物が用いられてよい。
【0060】
また、前記コバルト原料物質としては、Co(OH)、CoOOH、CoSO、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HOまたはCo(SO・7HOなどを挙げることができ、これらのうち1種以上の混合物が用いられてよい。
【0061】
また、前記マンガンの原料物質としては、Mn、MnO、及びMnなどのマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン及び脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化物、そして塩化マンガンなどを挙げることができ、これらのうち1種以上の混合物が用いられてよい。
【0062】
次いで、前記第1遷移金属含有溶液及び前記第2遷移金属含有溶液の混合比率を漸進的に変化させながら、前記第1遷移金属含有溶液と第2遷移金属含有溶液とを混合して正極活物質前駆体を製造する。
【0063】
前記正極活物質前駆体を製造する段階で、前記混合溶液内のニッケル含量の減少によってpHが漸進的に低くなるように調節するものであってよい。
【0064】
例えば、前記pHは、前記混合溶液内のニッケル含量の減少によってpH13からpH9、好ましくはpH12.5からpH9、最も好ましくはpH12からpH10の範囲で漸進的に低くなるものであってよい。前記のように正極活物質前駆体の製造時、ニッケル含量の減少によってpHが漸進的に低くなるように調節する場合、最終的に製造される正極活物質粒子表面でのc軸方向を効果的に制御することができる。
【0065】
具体的には、前記のようにpHを調節しながら製造された正極活物質は、正極活物質の表面の少なくとも8箇所の地点でTEM分析を介して測定したc軸方向と測定地点の粒子成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率が60%以上になるように形成されてよい。
【0066】
より具体的に、前記正極活物質前駆体の製造時、反応初期には、pH11からpH13、好ましくはpH11からpH12、pH11.5からpH12、最も好ましくはpH11.7からpH12で反応させて正極活物質前駆体粒子核を形成し、反応後半には、アンモニウムイオン錯体形成剤及び塩基性水溶液の添加量を調節することにより、pH9からpH11、好ましくはpH10からpH11、pH10.5からpH11、最も好ましくはpH10.8からpH11で反応させて正極活物質前駆体粒子を成長させる。これによって、前記正極活物質前駆体粒子は、1次粒子が凝集された2次粒子の形態を示すだけでなく、表面部に前記正極活物質の中心から表面方向に成長した柱状構造の1次粒子を含むものであってよい。
【0067】
例えば、正極活物質前駆体の製造時、粒子全般にわたってpHを変更することなくpHが同一である場合、共沈反応の間引き続きリチウム遷移金属酸化物の核が形成され、これによって1次粒子の成長が低下し、柱状構造を有する1次粒子の比率が低くなり得る。これによって、pHを変更することなく製造した正極活物質前駆体粒子は、1次粒子が配向性を有さずに凝集された形態の2次粒子形態を有し得る。また、低いpHで粒子の核を成長した後、相対的に高いpHで粒子を成長させる場合、粒子の大きさ分布が増加するため、1次粒子の不均一を引き起こし得る。
【0068】
前記正極活物質前駆体の製造時、反応初期には、第1遷移金属含有溶液のみが存在する状態で反応が行われるので、最初に作製される前駆体粒子は、第1遷移金属含有溶液の組成を有することとなり、その後、前記第1遷移金属含有溶液と第2遷移金属含有溶液の比率が漸進的に変化しながら混合されるので、前記前駆体粒子の組成も前駆体粒子の中心から表面に行くほど漸次的に第2遷移金属含有溶液の組成に漸進的に変化することとなる。
【0069】
例えば、前記第1遷移金属含有溶液は、ニッケルの含量が高く、マンガン及び/又はコバルトの含量は低くし、前記第2遷移金属含有溶液は、前記第1遷移金属含有溶液に比べてニッケルの含量が低く、マンガン及び/又はコバルトの含量を高くして反応させる場合、ニッケルの濃度は、活物質粒子の中心から粒子表面の方向まで連続的な濃度勾配を有しながら減少し、マンガン及びコバルトの濃度は、それぞれ独立して粒子の中心から粒子表面方向まで連続的な濃度勾配を有しながら増加する形態の前駆体粒子を製造することができる。
【0070】
したがって、前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液の組成、混合速度及び混合比率を調節することで、製造される前駆体粒子が所望の位置で所望の組成を有するように前駆体粒子の濃度勾配を調節することができ、このときの濃度勾配の傾きもまた調節することができる。
【0071】
また、前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液を連続的に混合することで、一つの共沈反応工程で粒子の中心から表面に行くほど金属の濃度が連続的な濃度勾配を有する沈殿物を得ることができ、この際に生成される活物質前駆体内での金属の濃度勾配とその傾きは、第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液の組成と混合供給比率によって容易に調節され得る。
【0072】
また、粒子内の遷移金属元素の濃度勾配は、反応速度または反応時間を制御することで形成可能である。特定の金属の濃度が高い高密度状態を作るためには、反応時間を長くし、反応速度を下げることが好ましく、特定の金属の濃度が低い低密度状態を作るためには、反応時間を短くし、反応速度を増加させることが好ましい。
【0073】
次いで、前記正極活物質前駆体及びリチウム含有原料物質を混合して焼成し、正極活物質を合成する。
【0074】
前記リチウム含有原料物質は、リチウムソースを含む化合物であれば特に限定されず、好ましくは、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、LiNO、CHCOOLi及びLi(COO)からなる群から選択される少なくとも一つを用いてよい。
【0075】
前記リチウム含有原料物質の使用量は、最終製造される正極活物質でのリチウムと金属の含量によって決定されるものであってよく、具体的には、リチウム含有原料物質内に含まれるリチウムと正極活物質用前駆体内に含まれる遷移金属元素とのモル比(リチウム/金属元素のモル比)が1.0から1.3、好ましくは1.0から1.2となる量で用いられてよい。
【0076】
前記正極活物質前駆体及びリチウム含有原料物質の混合時、必要に応じて選択的にドーピング元素M原料物質(このとき、Mは、Al、Zr、Mg、Zn、Y、Fe及びTiからなる群から選択された少なくとも一つである)をさらに含んでよい。
【0077】
前記のようにドーピング元素M原料物質をさらに含む場合、前記ドーピング元素M原料物質は、正極活物質前駆体の総モル数に対して、前記ドーピング元素M原料物質が2モル%以下、好ましくは1から2モル%となるように含まれるものであってよい。
【0078】
次いで、前記混合物を780℃から900℃、好ましくは800℃から880℃、より好ましくは810℃から870℃で20時間から25時間焼成して正極活物質を製造する。前記温度範囲で焼成を行うことにより、結晶性が向上し、構造的安定性が向上した正極活物質を製造することができる。
【0079】
二次電池用正極
次に、本発明に係る正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0080】
具体的に、前記二次電池用正極は、正極集電体、前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、本発明に係る正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0081】
このとき、前記正極活物質は前述したところと同一なので、具体的な説明を省略し、以下残りの構成に対してのみ具体的に説明する。
【0082】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用されてよい。
【0083】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、導電材及び必要に応じて選択的にバインダを含んでよい。
【0084】
このとき、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80から99重量%、より具体的には85から98.5重量%の含量で含まれてよい。前記含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができる。
【0085】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1から15重量%で含まれてよい。
【0086】
前記バインダは、正極活物質の粒子等間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を担う。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して0.1から15重量%で含まれてよい。
【0087】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除き、通常の正極製造方法によって製造されてよい。具体的に、前記正極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造してよい。
【0088】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダを溶解または分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0089】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0090】
二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタなどであってよく、より具体的にはリチウム二次電池であってよい。
【0091】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含み、前記正極は、前記で説明したところと同一なので、具体的な説明を省略し、以下残りの構成に対してのみ具体的に説明する。
【0092】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含んでよい。
【0093】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0094】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0095】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダ及び導電材を含む。
【0096】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインタカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが全て使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0097】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80重量%から99重量%で含まれてよい。
【0098】
前記バインダは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1重量%から10重量%で添加される。このようなバインダの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブタジエンゴム、ニトリル‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などを挙げることができる。
【0099】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全重量を基準に10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されてよい。
【0100】
例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されてよい。
【0101】
前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布し乾燥するか、または前記負極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0102】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池で分離膜として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が使用されてよく、選択的に単層または多層構造で使用されてよい。
【0103】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0104】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0105】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオン等が移動することができる媒質役割が可能なものであれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは炭素数2から20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線形カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1から約1:9の体積比で混合して使用するのが電解液の性能に優れて表れ得る。
【0106】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが用いられてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0M範囲内で使用するのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0107】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1から5重量%で含まれてよい。
【0108】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0109】
これによって、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0110】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられてよい。
【0111】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0112】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用され得るだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0113】
以下、本発明を具体的に説明するために実施形態を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施形態は、いくつか異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施形態に限定されるものに解釈されてはならない。本発明の実施形態は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0114】
実施例1
(正極活物質の製造)
NiSO及びMnSOをニッケル:マンガンのモル比が95:5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第1遷移金属含有溶液を準備した。
【0115】
また、NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が59:12.5:28.5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第2遷移金属含有溶液を準備した。
【0116】
前記第1遷移金属含有溶液が入っている容器と第2遷移金属含有溶液が入っている容器を53℃に設定された250Lの反応器に連結した。更に、25%濃度のNaOH溶液と、15%濃度のNHOH水溶液を準備し、それぞれ前記反応器に連結した。
【0117】
次いで、前記反応器に脱イオン水55Lを入れた後、窒素ガスを前記反応器に200L/分の速度でパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に造成した。その後、前記反応器に25%濃度のNaOHを50mL投入し、53℃で280rpmの速度で撹拌し、pH11.9を維持するようにした。
【0118】
その後、第1遷移金属含有溶液と第2遷移金属含有溶液を100体積%:0体積%から0体積%:100体積%の比率に変化させながら、前記反応器にそれぞれ63mL/minの速度で投入した。これと同時に、前記反応器にNaOH水溶液及びNHOH水溶液の投入速度を調節し、反応器内のpHをpH11.9から10.8に漸進的に低くし、24時間共沈反応させて正極活物質前駆体粒子を沈澱させた。沈澱された正極活物質前駆体粒子を分離し、110℃で12時間乾燥して粒子の中心から表面までニッケル、コバルト及びマンガンが漸進的に変化し、Ni0.7CO0.1Mn0.2(OH)で表される正極活物質前駆体を製造した。
【0119】
前記で収得した正極活物質前駆体、LiCO及びドーピング元素Zr、Alを1:1.03:0.01:0.01のモル比率で混合し、酸素雰囲気下830℃で10時間焼成して、粒子の中心から表面までニッケル、コバルト及びマンガンが漸進的に変化する濃度勾配を有し、Zrが2,000ppm、Alが1,000ppmでドーピングされた正極活物質を製造した。
【0120】
(正極の製造)
前記で製造された正極活物質、デンカブラック導電材、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)バインダを95:2.5:2.5の重量比で混合し、これをN‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記で製造された正極スラリーをアルミニウムホイルに塗布した後、ロールプレスを行い、120℃で12時間乾燥して正極を製造した。
【0121】
(負極の製造)
負極活物質として天然黒鉛、カーボンブラック導電材、及びスチレン‐ブタジエンゴム(SBR)バインダを96:2:2の重量比で混合して負極スラリーを製造した。これを銅ホイル上に塗布し、110℃で2時間真空乾燥して負極を製造した後、ロールプレスを行った。
【0122】
(二次電池の製造)
前記で製造した正極、負極と、厚さ20μmのポリエチレン分離膜(F20BHE、東燃社)を用いて通常の方法でコインセル形態の電池を製造した後、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネートを1:1(体積%)で混合した溶媒に、1MのLiPFを溶解させた電解液を注入し、コインセル形態のリチウム二次電池を製造した。
【0123】
実施例2
正極活物質の製造時、NiSO及びMnSOをニッケル:マンガンのモル比が95:5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第1遷移金属含有溶液を準備し、さらに、NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が55:20.5:24.5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第2遷移金属含有溶液を準備した。前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液を用いて、平均組成がNi0.65Co0.15Mn0.2(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0124】
実施例3
正極活物質の製造時、NiSO及びMnSOをニッケル:マンガンのモル比が95:5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第1遷移金属含有溶液を準備し、さらに、NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が55:13.5:31.5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第2遷移金属含有溶液を準備した。前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液を用いて、Ni0.65Co0.10Mn0.25(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0125】
実施例4
正極活物質の製造時、NiSO及びMnSOをニッケル:マンガンのモル比が95:5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第1遷移金属含有溶液を準備し、さらに、NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が55:17:28となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第2遷移金属含有溶液を準備した。前記第1遷移金属含有溶液及び第2遷移金属含有溶液を用いて、Ni0.65Co0.125Mn0.225(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0126】
比較例1
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が70:10:20となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の遷移金属含有溶液を準備した。
【0127】
53℃に設定された250Lの反応器に前記遷移金属含有溶液を63mL/min投入しながら、NaOH水溶液及びNHOH水溶液をそれぞれ35mL/min及び50mL/minの速度でそれぞれ投入し、pH11.2で24時間共沈反応させて正極活物質前駆体粒子を沈澱させた。前記で沈澱された正極活物質前駆体を用いることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及び二次電池を製造した。
【0128】
比較例2
反応全体に亘って反応器内のpHをpH11.2に維持することを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及び二次電池を製造した。
【0129】
比較例3
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が65:15:20となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の遷移金属含有溶液を準備し、これを用いて、Ni0.65Co0.15Mn0.20(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記比較例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0130】
比較例4
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が65:12.5:22.5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の遷移金属含有溶液を準備し、これを用いて、Ni0.65Co0.125Mn0.225(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記比較例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0131】
比較例5
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が65:20:15となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の遷移金属含有溶液を準備し、これを用いて、Ni0.65Co0.20Mn0.15(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記比較例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0132】
比較例6
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が65:17.5:17.5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の遷移金属含有溶液を準備し、これを用いて、Ni0.65Co0.175Mn0.175(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記比較例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0133】
比較例7
NiSO及びMnSOをニッケル:マンガンのモル比が95:5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第1遷移金属含有溶液を準備した。
【0134】
また、NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が55:27.5:17.5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第2遷移金属含有溶液を準備した。
【0135】
前記実施例1と同様の方法を用いて、粒子の中心から表面までNi、Co及びMnが漸進的に変化する濃度勾配を有し、粒子全体の平均組成がNi0.65Co0.20Mn0.15(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0136】
比較例8
NiSO及びMnSOをニッケル:マンガンのモル比が95:5となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第1遷移金属含有溶液を準備した。
【0137】
また、NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が55:24:21となるようにする量で、水中で混合して2.3M濃度の第2遷移金属含有溶液を準備した。
【0138】
前記実施例1と同様の方法を用いて、粒子の中心から表面までNi、Co及びMnが漸進的に変化する濃度勾配を有し、粒子全体の平均組成がNi0.65Co0.175Mn0.175(OH)である正極活物質前駆体を製造し、これを用いることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含む正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0139】
実験例1:正極活物質の表面特性確認
前記実施例1及び比較例1及び2で製造した正極活物質粒子を切断して透過電子顕微鏡(TEM)を用いて正極活物質の断面を撮影し、前記正極活物質の表面の結晶構造を制限視野回折パターン(selected area diffraction pattern,SADP)を介して確認した。
【0140】
図1図2及び図3は、それぞれ実施例1、比較例1~2で製造した正極活物質のTEM写真及びSADPである。
【0141】
図1に示すように、前記実施例1で製造した正極活物質の場合、表面部に前記正極活物質の中心から表面方向に成長した柱状構造の1次粒子を含むことを確認することができる。また、正極活物質表面でのリチウムイオンの移動性を確認するため、正極活物質表面の8箇所の地点でTEM分析を行った。より具体的に、層状構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、c軸方向(図1の暗色矢印)と85゜から95゜を満たす面方向(図1の明色矢印)に沿ってリチウムイオンの移動がなされるようになるところ、このような図1の明色矢印をリチウム移動方向という。したがって、測定された粒子の成長方向と、c軸方向がなす角度が85゜から95゜を満たす粒子の比率が60%以上で高い場合(すなわち、図1のリチウム移動方向と、粒子の成長方向が±5゜範囲内で一致する場合)、前記正極活物質表面でのリチウムイオンの移動性に優れるものであることが確認できる。
【0142】
図1に示すように、正極活物質表面の8箇所の地点でTEM分析結果(図1のTEM写真内の1~8の実線で示した粒子を測定する)、測定されたc軸方向(図1の暗色矢印)と測定地点の粒子の成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす粒子は、図1の表示地点のうち、粒子1、3、4、5及び6であった。一方、図1で測定した粒子のうち、粒子2の場合、スピネル構造を示し、粒子7及び8の粒子成長方向は、c軸方向と85゜から95゜をなすことができなかった。すなわち、前記実施例1で製造した正極活物質の場合、表面の8箇所の地点で測定されたc軸方向と測定地点の粒子成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率は62.5%であった。
【0143】
その反面、図2に示すように、前記比較例1で製造した正極活物質の場合、1次粒子が凝集された2次粒子の形態ではあるが、表面部で1次粒子形状が不規則に現われることが確認できる。また、正極活物質表面の8箇所の地点でTEM分析を介してc軸方向を測定した結果、測定された8箇所の地点のうち6箇所の地点でスピネル構造が現われた。一方、層状構造が現れた2箇所の地点のうち一つの地点でのみ粒子成長方向とc軸方向(図2の暗色矢印)がなす角度が85゜から95゜を満たすものと示された(図2のTEM写真内の8箇所の地点のうち粒子7のみ一致する)。すなわち、前記比較例1で製造した正極活物質の場合、表面の8箇所の地点で測定されたc軸方向と測定地点の粒子成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率は12.5%であった。前記スピネル構造の場合、層状結晶構造に比べてリチウム含量が低くなるため、容量及び寿命特性が低下する。
【0144】
また、図3に示すように、前記比較例2で製造した正極活物質の場合、1次粒子が凝集された2次粒子の形態ではあるが、前駆体の製造時、pHを調節しなかったため反応の間の粒子核の形成比率が増加し、正極活物質表面部に前記正極活物質の中心から表面方向に成長した柱状構造を有する1次粒子の比率が低かった。また、正極活物質表面の8箇所の地点でのTEM分析結果、測定された地点のうち5箇所の地点で測定された粒子はスピネル構造を示し、残りの3箇所の地点のうち1箇所の地点で測定した粒子のみがc軸方向と測定地点の粒子の成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たした(図3のTEM写真内の8箇所の地点のうち粒子8のみ一致する)。すなわち、前記比較例2で製造した正極活物質の場合、表面の8箇所の地点で測定されたc軸方向と測定地点の粒子成長方向がなす角度が85゜から95゜を満たす比率は12.5%であった。
【0145】
実験例2:二次電池の充放電効率
前記実施例1~4及び比較例1~6で製造した二次電池に対して充放電効率評価を行い、その結果を下記表1に示した。
【0146】
具体的に、前記実施例1~4及び比較例1~6で製造した二次電池をそれぞれ0.1Cの定電流で4.30Vとなるまで充電し、その後20分間放置した後、0.1Cの定電流で3.0Vまで放電して1サイクル目で充放電特性を観察し、その結果を下記表1及び図4に示した。
【0147】
【表1】
【0148】
前記表1の実施例1、比較例1~2の結果及び図4を参照すれば、同一のニッケル含量を含む正極活物質の場合、濃度勾配及び表面に存在する1次粒子の成長方向と特定の角度をなすc軸方向を60%以上有する実施例1の場合、濃度勾配及び特定の配向性を示さない比較例1、及び濃度勾配は有するが特定の配向性を示さない比較例2に比べて、効率が改善されたことが確認できた。
【0149】
また、前記表1の実施例2~4及び比較例3~6の結果を参照すれば、同一のニッケル含量に比べてリチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より少なく、濃度勾配を有しない比較例3~4で製造した二次電池の場合、コバルト含量の減少によって容量が減少したことが確認できた。その反面、実施例2~4のようにリチウム遷移金属酸化物内のコバルトの含量がマンガンの含量より少ないとしても、濃度勾配及び特定の配向性を有する正極活物質を用いて製造した二次電池は、リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より多いか、同一の比較例4~5の二次電池に対して同等水準以上の効率を有することが確認できた。
【0150】
実験例3:二次電池の出力特性確認
前記実施例1~2及び比較例1~6で製造したリチウム二次電池の低温(-10℃)出力特性を確認した。具体的に、前記実施例1~2及び比較例1~6で製造したリチウム二次電池を常温(25℃)で0.33C定電流で充電させた後、22.5分間0.4C定電流で放電させ、1,350秒間の電圧降下を測定し、これを下記表2に示した。
【0151】
【表2】
【0152】
前記表2の実施例1、比較例1~2を参照すれば、同一組成に比べて濃度勾配及び表面に存在する1次粒子の成長方向と特定の角度をなすc軸方向を60%以上有する正極活物質を含む実施例1の場合、濃度勾配及び表面に存在する粒子成長方向がc軸と特定の角度を有しない比較例1の正極活物質を含む二次電池、及び濃度勾配は有するが表面に存在する1次粒子の成長方向とc軸方向が特定の角度を有しない比較例2の正極活物質を含む二次電池に比べて、電圧降下率が低いことが確認できた。
【0153】
一方、実施例2及び比較例3~6のように、同一のニッケル含量を含む正極活物質において、リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より多い比較例5に比べ、リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より少なく、濃度勾配を有しない比較例3~4は、コバルト含量の減少によって電圧降下率もまた高いことが確認できた。
【0154】
その反面、リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より少ないが、濃度勾配及び表面に存在する粒子成長方向がc軸と特定の角度をなす実施例2の場合、コバルト含量が低下しても、1次粒子の均一性により電圧降下率は同一のニッケル含量を含む比較例5、及び同一組成を有する比較例3に比べて優れていることが確認できた。
【0155】
実験例4:二次電池の高温寿命特性及び抵抗特性評価
前記実施例1~4及び比較例1~8で製造した正極を含む二次電池の寿命特性及び抵抗特性を測定した。具体的に、前記実施例1~4及び比較例1~8で製造した二次電池を、それぞれ45℃で1Cの定電流で4.25Vまで3Cカットオフ(cut off)で充電した。その後、1C定電流で3.0Vになるまで放電をした。前記充電及び放電挙動を1サイクルとし、このようなサイクルを300回繰り返して行った後、前記実施例1~4及び比較例1~8による二次電池のサイクルによる容量維持率及び抵抗増加率を測定した。前記寿命特性の場合、300サイクル目での容量を初期容量で割った後、100を掛けてその値を計算しており、前記抵抗特性の場合、300サイクル目での抵抗を初期抵抗で割った後、100を掛けてその値を計算した後、これを下記表3及び図5に示した。
【0156】
【表3】
【0157】
前記表3の実施例1、比較例1~2の結果及び表5に示すように、同一のニッケル含量を含む正極活物質において、実施例1で製造した二次電池が、同一のニッケル含量を含むがリチウム遷移金属酸化物が濃度勾配を示さない比較例1、及びリチウム遷移金属酸化物の製造時にpHを調節しないため特定の配向性を有しない比較例6に比べて、寿命特性及び抵抗特性が改善されたことが確認できた。
【0158】
また、同一のニッケル含量を含む実施例2~4及び比較例3~8で製造した二次電池の場合、リチウム遷移金属酸化物内のコバルトの含量がマンガンの含量より少ないか同一であり、濃度勾配を示さない比較例3~4及び6に比べて寿命特性及び抵抗特性が改善されたことが確認できた。また、リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より多いが濃度勾配を示さない比較例5に比べても、寿命特性及び抵抗特性が改善されることが確認できた。
【0159】
一方、リチウム遷移金属酸化物内のコバルト含量がマンガンの含量より多いか同一であり、濃度勾配を有する比較例7及び8の二次電池、特にコバルトの含量が最も高い比較例7よりは寿命特性が劣化したが、前記実施例2~4で製造した二次電池の場合、特定の配向性を示すことによりリチウムイオンの移動性が容易になるため、比較例7~8に比べて抵抗特性は改善されることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5