(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240513BHJP
C08F 4/04 20060101ALI20240513BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240513BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08F4/04
B01J20/26 D
B01J20/30
(21)【出願番号】P 2023504858
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2022001592
(87)【国際公開番号】W WO2022169227
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0015453
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0012653
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】セリン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・フン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュニル・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ホヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・イ
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-143903(JP,A)
【文献】特開平1-234402(JP,A)
【文献】特許第5099899(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08F 4/04
B01J 20/26
B01J 20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ系重合開始剤
、ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriamine pentaacetic acid)
および光重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン性不飽和単量体および内部架橋剤を架橋重合して含水ゲル重合体を得る段階;および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;を含み、
前記光重合開始剤は、前記水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して、10ppmw~500ppmwで含まれ、
前記光重合開始剤は、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上の化合物を使用することができ、そのうち、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、およびエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートからなる群より選択される1種以上であり、
前記アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸を1:2~1:10の重量比で含む、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸は1:3~1:7の重量比で含まれる、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記アゾ系重合開始剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して500ppmw~1,500ppmwで含まれる、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ジエチレントリアミン五酢酸は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して1,000ppmw~5,000ppmwで含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記アゾ系重合開始剤は、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)および4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))からなる群より選択される1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選択される1種以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記内部架橋剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して、500ppmw~1,500ppmwで含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ベース樹脂粉末は、EDENA法 WSP241.2により測定される遠心分離保水能(CRC)が45.0g/g以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ベース樹脂粉末2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させ、40℃のオーブンで24時間膨潤させた後、前記膨潤した前記ベース樹脂粉末を引張圧縮試験装置を用いて測定されたゲル強度が0.30N以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年2月3日付の韓国特許出願第10-2021-0015453号および2022年1月27日付の韓国特許出願第10-2022-0012653号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、架橋重合段階で特定の重合開始剤とキレート剤を組み合わせて使用することによって、優れた吸収性能とともに適正なゲル強度を有する高吸水性樹脂をより生産的に製造することができる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で名付けられている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料として幅広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収力を示す必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出ないなどの優れた加圧下吸収性能および水を吸収して体積膨張(膨潤)した状態でも形態をよく維持して優れた通液性(permeability)を示す必要がある。
【0005】
これに加えて、前記高吸水性樹脂は、おむつなどの衛生材に含まれたとき、使用者の体重によって加圧された環境でも、小便などを最も広く拡散させる必要がある。これにより、衛生材吸収層の全面積に含まれた高吸水性樹脂粒子を全体的に活用して衛生材の吸収性能および吸収速度をより向上させることができる。また、このような加圧下拡散特性により、一度高吸水性樹脂に吸収された小便などが再び染み出ることを抑制するおむつのリウエット(rewet)特性をより向上させることができ、これと共におむつの漏水抑制特性を向上させることができる。
【0006】
従来はおむつなど衛生材のデザイン自体を変更して小便などを広く拡散させる特性の改善が試みられた。例えば、衛生材にADL(Acquisition Distribution Layer)などを導入するか、または吸収チャンネルを活用する方法などによって、小便などの拡散特性を改善する方案が試みられたことがある。しかし、このような衛生材自体のデザイン変更による拡散特性の改善は不十分であった。
【0007】
一方、高吸水性樹脂の吸収能や吸収速度などの吸収に関連する物性を向上させるために表面架橋、発泡などの多様な後処理工程を行うか、または各種添加剤を使用することになるが、このような吸収能を形成させる過程で、樹脂の架橋密度が低下して十分なゲル強度を実現できず、また、添加剤などが脱離して製品の適用の際に皮膚に発疹などの使用者の着用感が低下する問題が発生した。
【0008】
そこで、既存の優れた吸収物性を維持しながらも、適正なゲル強度を実現可能な高吸水性樹脂を製造できる研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、製造過程中の架橋重合段階で特定の重合開始剤とキレート剤を特定の含有量比率で組み合わせて使用することによって、優れた吸収性能と共に適正なゲル強度を有する高吸水性樹脂をより生産的に製造できる高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriamine pentaacetic acid)の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン性不飽和単量体および内部架橋剤を架橋重合して含水ゲル重合体を得る段階;および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;を含み、
前記アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸は1:2~1:10の重量比で含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、新規な架橋構造で適正な架橋密度を実現することによって、優れた吸収性能と適正なゲル強度を有する高吸水性樹脂をより生産的に製造できる高吸水性樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0013】
単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0014】
第1、第2、第3などの用語は多様な構成要素を説明するために用いられ、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0015】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0016】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン性不飽和単量体が重合した状態であることを意味し、すべての水分含量の範囲または粒径の範囲を包括し得る。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称し、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と称する。
【0017】
また、本明細書で使用される用語「架橋重合体」は、前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン性不飽和単量体が架橋重合されたことを意味し、前記「ベース樹脂粉末」は、このような架橋重合体を含む物質を意味する。
【0018】
また、用語「高吸水性樹脂」は、前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン性不飽和単量体が重合した架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0019】
(高吸水性樹脂の製造方法)
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、特定の含有量比率を満たすアゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriamine pentaacetic acid)の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン性不飽和単量体および内部架橋剤を架橋重合して含水ゲル重合体を得る段階;および前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階を含む。
【0020】
高吸水性樹脂の基本的な吸収能を向上させるために表面架橋、発泡などの多様な後処理工程を行うか、または各種添加剤を使用することになるが、このような過程で、樹脂の架橋密度が低下して十分なゲル強度を実現できず、また、添加剤などが脱離して製品の適用の際に皮膚に発疹などの使用者の着用感が低下する問題が発生した。
【0021】
そこで、本発明者は、架橋重合段階で特定の重合開始剤とキレート剤を組み合わせて使用する場合、上述した問題なく、樹脂中に新規な架橋構造が均一に形成され、優れた吸収性能と適正なゲル強度を同時に有する高吸水性樹脂をより生産的に製造できることを発見して本発明を完成した。
【0022】
以下、発明の実施形態により高吸水性樹脂の製造方法を各段階別により詳しく説明する。
【0023】
(架橋重合段階)
まず、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、特定の含有量比率を満たすアゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriamine pentaacetic acid)の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン性不飽和単量体および内部架橋剤を架橋重合して含水ゲル重合体を得る段階を含む。
【0024】
ここで、前記架橋重合段階においては、上述した成分以外に高吸水性樹脂の製造に通常用いられる成分を含む単量体組成物の架橋重合で行うことができる。
【0025】
まず、前記架橋重合段階においては、アゾ系重合開始剤の存在下で行われ、これと共に、キレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriamine pentaacetic acid、DTPA)と特定の含有量比率で組み合わせて使用され、重合過程で新規な架橋構造を導入して、ベース樹脂粉末の優れた吸収物性と高いゲル強度を同時に実現することができ、これにより、最終的に製造される高吸水性樹脂の物性を顕著に改善することができる。
【0026】
具体的には、前記アゾ系重合開始剤は、単量体の架橋反応を開始する成分としてラジカルの安定性に優れ、過硫酸塩系重合開始剤に比べて長鎖構造の重合体を形成することが容易である。特に、ジエチレントリアミン五酢酸を組み合わせて使用の際、金属による連鎖移動反応(chain transfer)を効果的に防止することによって、長くかつ均一な高分子鎖を形成することができ、したがって、実際に衛生用品などに適用され、優れた吸収物性とゲル強度を同時に実現することができる。
【0027】
前記ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriamine pentaacetic acid、DTPA)はキレート剤として、上述したアゾ系重合開始剤と組み合わせて使用され、重合体に重合過程で新規な架橋構造を導入して、ベース樹脂粉末の優れた吸収物性と高いゲル強度を同時に実現することができ、したがって、最終的に製造される高吸水性樹脂の物性を顕著に改善することができる。
【0028】
具体的には、前記ジエチレントリアミン五酢酸は、前記アゾ系重合開始剤と一緒に重合過程で添加される場合、5つの-COOH構造で重合過程で金属イオンが連鎖移動反応(chain transfer)することを効果的に防止することによって、他のキレート剤に比べて均一で長い鎖構造を形成することが容易である。特に、重合工程に一緒に用いられ、脱離現象が発生しないので好ましい。
【0029】
特に、前記アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸は1:2~1:10の重量比で含まれる。上記含有量の範囲で含まれることによって、目的とする新規の架橋構造を形成して、ベース樹脂粉末の優れた吸収物性と高いゲル強度を同時に実現することができ、したがって、最終的に製造される高吸水性樹脂の物性を顕著に改善することができる。
【0030】
一方、前記アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸が上記重量比の範囲を外れて、アゾ系重合開始剤1重量部に対してジエチレントリアミン五酢酸が2重量部未満で含まれる場合、目的とする均一な架橋構造を達成しにくく、例えば、アゾ系重合開始剤の含有量が相対的に多過ぎる場合、重合体中の鎖長さが短くなり、目的とする構造を実現しにくい。また、アゾ系重合開始剤1重量部に対してジエチレントリアミン五酢酸が10重量部を超えて含まれる場合、さらに副反応が発生する恐れがあり、これによって吸収能が低下することがある。
【0031】
好ましくは、前記アゾ系重合開始剤およびジエチレントリアミン五酢酸は1:3~1:7の重量比で含まれる。このような重量比で含まれる場合、組み合わせによるシナジー効果を極大化できるので、好ましい。
【0032】
前記アゾ系重合開始剤の具体的な例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)および4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))からなる群より選択される1種以上が挙げられ、好ましくは、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)が用いられる。
【0033】
前記アゾ系重合開始剤の含有量は特に限定されないが、水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して、500ppmw~1,500ppmwで含まれ、好ましくは、600ppmw~900ppmwまたは700ppmw~850ppmwで含まれる。これは、通常用いられる重合開始剤に比べて微量で、本発明では上述したジエチレントリアミン五酢酸と組み合わせて使用され、微量でも目的とする効果を実現することができる。
【0034】
前記ジエチレントリアミン五酢酸の含有量は特に限定されないが、水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して、1,000ppmw~10,000ppmwで含まれ、好ましくは、3,000ppmw~9,000ppmwまたは3,500ppmw~7,500ppmwで含まれる。上記含有量の範囲内でアゾ系開始剤と組み合わせて使用され、目的とする効果を実現するのに好適である。
【0035】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常用いられる任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、下記化学式1で表される化合物であり得る:
【0036】
[化学式1]
R1-COOM1
【0037】
前記化学式1中、
R1は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M1は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0038】
好ましくは、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上であり得る。このように水溶性エチレン性不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができるため有利である。その他にも前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0039】
ここで、前記水溶性エチレン性不飽和単量体は酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものである。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。
【0040】
この時、前記単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性によって異なるが、中和度が過度に高いと中和した単量体が析出して重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸水性が大きく落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことができる。
【0041】
前記一実施形態の高吸水性樹脂において、前記含水ゲル重合体は、炭素数8~12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される1種以上の内部架橋剤の存在下で、前記単量体は架橋重合された高分子であり得る。
【0042】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン性不飽和単量体の重合時の架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤を単独使用または2以上併用することができ、これらに限定されるものではない。好ましくは、この中でエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用することができる。
【0043】
前記単量体組成物において、このような内部架橋剤は、前記水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して500ppmw~1,500ppmwで使用される。これにより、含水ゲル重合体およびベース樹脂粉末の内部架橋度を調節することができ、高吸水性樹脂の吸収性能および通液性などを最適化することができる。ただし、前記内部架橋剤の含有量が多すぎると、高吸水性樹脂の基本的な吸収性能が低下する。
【0044】
その他にも、前記単量体組成物には必要に応じて光重合開始剤、発泡剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0045】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上の化合物を使用することができる。また、そのうち、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0046】
前記光重合開始剤は、前記水溶性エチレン性不飽和単量体の重量に対して、10ppmw~500ppmwで含まれ、好ましくは、50ppmw~300ppmwまたは50ppmw~100ppmwで含まれる。前記光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量で抽出されるので好ましくない。逆に、前記光重合開始剤の濃度が上記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなり、樹脂の物性が低下するので好ましくない。
【0047】
そして、このような単量体組成物は、上述した単量体、重合開始剤、キレート剤、内部架橋剤などの原料物質を溶媒に溶解させた溶液の形態で準備する。
【0048】
この時、使用可能な溶媒としては、上述した原料物質を溶解させ得るものであればその構成の限定なく使用することができる。例えば、前記溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0049】
そして、前記単量体組成物の重合による含水ゲル状重合体の形成は通常の重合方法で行うことができ、その工程は特に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は、重合エネルギー源の種類によって大きく熱重合と光重合に分けられるが、前記熱重合を行う場合にはニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行うことができ、光重合を行う場合は移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行うことができる。
【0050】
一例として、攪拌軸が備えられたニーダーなどの反応器に前記単量体組成物を投入し、そこに熱風を供給するか、または反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル状重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数ミリメートル~数センチメートルの粒子で得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体は、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様な形態で得られるが、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0051】
さらに、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合にはシート状の含水ゲル状重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって異なるが、シート全体を均等に重合し、かつ生産速度などを確保するために、通常0.5~5cmの厚さに調節することが好ましい。
【0052】
上記のような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は40~80重量%であり得る。一方、「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量であって、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃で約40分間維持して含水率を測定する。
【0053】
(乾燥、粉砕および分級段階)
次に、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、製造された含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階をさらに含む。
【0054】
具体的には、上記で得られた含水ゲル重合体を乾燥する段階を行う。必要に応じて、前記乾燥段階の効率を高めるために乾燥前に前記含水ゲル重合体を粗粉砕(チョッピング)する段階をさらに経ることができる。
【0055】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕装置の群より選択されるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0056】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル重合体の粒径が2mm~10mmとなるように粉砕することができる。粒径を2mm未満に粉砕することは、含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることがある。一方、粒径を10mm超で粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0057】
上記のように粗粉砕されるか、あるいは粗粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約150℃~250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみが乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することがあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は約150℃~200℃の温度で、さらに好ましくは、約150℃~190℃の温度で行うことができる。
【0058】
乾燥時間は、工程効率などを考慮して20分~90分間行うことができるが、これに限定されない。
【0059】
一方、前記乾燥段階は、上述した温度の範囲内で多段階工程で行うことができる。
【0060】
前記乾燥段階の乾燥方法もまた、含水ゲル重合体の乾燥工程で通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して使用することができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。熱風供給の場合、上下に風量転移が可能なオーブンを用いる方法によって行うことができる。
【0061】
このような乾燥段階の進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であり得る。
【0062】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0063】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が150~850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、上述した例に限定されるものではない。
【0064】
そして、このような粉砕段階後に最終的に製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径によって分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が150μm~850μmである重合体を分級し、このような粒径を有する重合体粉末に対してのみ表面架橋反応段階を経て製品化することができる。より具体的には、前記分級が行われたベース樹脂粉末は150μm~850μmの粒径を有し、300μm~600μmの粒径を有する粒子を50重量%以上含み得、150μm未満の粒径を有する微粉が3重量%未満であり得る。
【0065】
上記製造方法により製造されたベース樹脂粉末は、EDENA法WSP241.2により測定された遠心分離保水能(CRC)が45.0g/g以上、好ましくは、45.0g/g~48.0g/g、46.0g/g~47g/gであり得る。前記遠心分離保水能の具体的な測定方法は、後述する実験例でより詳しく説明する。
【0066】
上記製造方法により製造されたベース樹脂粉末は、前記ベース樹脂粉末2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させ、40℃のオーブンで24時間膨潤させた後、前記膨潤した高吸水性樹脂を引張圧縮試験装置を用いて測定したゲル強度は0.30N以上である。ここでアスコルビン酸塩水は、0.9wt%NaClおよび0.005wt%アスコルビン酸(L-Ascorbic acid)水溶液を意味する。
【0067】
前記ゲル強度は、小便、体液などに含まれるL-アスコルビン酸(L-Ascorbic acid)成分に対する分解抵抗性を示す指標であり、ゲル強度の具体的な測定方法は、後述する実験例でより詳しく説明する。
【0068】
好ましくは、0.30N以上、より好ましくは0.30N~0.50Nである。前記ゲル強度の具体的な測定方法は、後述する実験例でより詳細に説明する。
【0069】
(表面架橋段階)
また、上述した分級工程まで経てベース樹脂粉末を製造した後には表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理しながら表面架橋する段階をさらに含む。
【0070】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂粉末の表面に架橋反応を誘導することで、架橋されずに表面に残っている水溶性エチレン性不飽和単量体の不飽和結合が前記表面架橋剤によって架橋され、表面架橋密度が高くなる高吸水性樹脂が形成される。
【0071】
具体的には、表面架橋剤の存在下で熱処理工程で表面架橋層が形成され、前記熱処理工程は表面架橋密度、すなわち、外部架橋密度は増加する反面、内部架橋密度は変化がなく、製造された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂は内部より外部の架橋密度が高い構造を有する。
【0072】
前記表面架橋段階において、表面架橋剤以外にアルコール系溶媒および水を含む表面架橋剤組成物を使用することができる。
【0073】
また、前記表面架橋剤組成物に含まれる表面架橋剤としては、従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特に制限なくすべて使用することができる。例えば、前記表面架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択される1種以上のポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択される1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含むことができる。好ましくは、上述した内部架橋剤と同じものを使用することができ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル系化合物を使用することができる。
【0074】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.001~2重量部で使用することができる。好ましくは、0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.02重量部以上であり、0.5重量部以下、0.3重量部以下の含有量で使用することができる。表面架橋剤の含有量の範囲を上述した範囲に調節することで優れた吸収性能および通液性などの諸般物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0075】
また、前記表面架橋剤は、これを含む表面架橋剤組成物の状態でベース樹脂粉末に添加されるが、このような表面架橋剤組成物の添加方法についてはその構成の限定はない。例えば、表面架橋剤組成物とベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、またはベース樹脂粉末に表面架橋剤組成物を噴射する方法、連続して運転されるミキサーにベース樹脂粉末と表面架橋剤組成物を連続して供給して混合する方法などを使用することができる。
【0076】
そして、前記表面架橋剤組成物は、媒質として水および/または親水性有機溶媒をさらに含むことができる。したがって、表面架橋剤などをベース樹脂粉末上に均一に分散できる利点がある。この時、水および親水性有機溶媒の含有量は、表面架橋剤の均一な溶解/分散を誘導し、ベース樹脂粉末の凝集現象を防止すると同時に、表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的としてベース樹脂粉末100重量部に対する添加比率を調節して適用することができる。
【0077】
前記表面架橋段階は、110℃~200℃、あるいは110℃~150℃の温度で30分以上熱処理して行うことができる。より具体的には、前記表面架橋は、上述した温度を最高反応温度として、該最高反応温度で、30分~80分、あるいは40分~70分間熱処理して表面架橋反応を行うことができる。
【0078】
このような表面架橋工程の条件(特に、昇温条件および反応最高温度での反応条件)を満たすことにより、より優れた加圧通液性などの物性を適切に満たす高吸水性樹脂を製造することができる。
【0079】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、または熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱油などの昇温した流体などを使用することができるが、これらに限定されず、また、供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0080】
また、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は通液性などの追加的な向上のために、表面架橋時に硫酸アルミニウム塩などのアルミニウム塩以外の多様な多価金属塩をさらに使用することができる。このような多価金属塩は、最終的に製造された高吸水性樹脂の表面架橋層上に含まれる。
【0081】
(高吸水性樹脂)
発明の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂の製造方法により製造された高吸水性樹脂を提供する。上述した一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法により製造された高吸水性樹脂は適正な架橋密度で、優れた吸収性能と適正なゲル強度を実現することができる。
【0082】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示したものに過ぎず、発明の権利範囲はこれによって定まるものではない。
【0083】
[実施例]
実施例1
(重合段階)撹拌機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸500g、内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテル1,500ppmw(アクリル酸100重量部に対して)、光開始剤であるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド80ppmw(アクリル酸100重量部に対して)を添加して溶解した後、31.5%水酸化ナトリウム溶液627gを添加して水溶性不飽和単量体水溶液を製造した(中和度:70mol%、固形分含有量:44.9重量%)。前記水溶性不飽和単量体水溶液の温度が中和熱によって上昇した後、40℃になると、該混合液を熱重合開始剤である2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩750ppmw(アクリル酸100重量部に対して)とキレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)5,000ppmwが入っている容器に入れた後、1分間紫外線を照射(照射量:10mV/cm2)してUV重合を行い、含水ゲル状重合体シートを得た。
【0084】
(チョッピング段階)得られた含水ゲル状重合体シートを孔径(hole size)が16mmであるチョッパー(chopper)を用いて粉砕物(crumb)を製造した。
【0085】
(乾燥段階)次に、前記粉砕物(crumb)を上下に風量転移が可能なオーブンで乾燥した。前記乾燥は多段階で行い、具体的には、エアフロ―オーブン(air flow oven)を用いて150℃で5分、150℃で8分、170℃で5分、175℃で5分、180℃で5分、160℃で5分間行った。前記乾燥工程を経てベース樹脂粉末を得た。
【0086】
実施例2~実施例4および比較例1~比較例7
重合段階で使用される成分および含有量を下記表1の通り使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0087】
比較例8
(重合段階)撹拌機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸500g、内部架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテル1,500ppmw(アクリル酸100重量部に対して)、光開始剤であるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド80ppmw(アクリル酸100重量部に対して)を添加して溶解した後、31.5%水酸化ナトリウム溶液627gを添加して水溶性不飽和単量体水溶液を製造した(中和度:70mol%、固形分含有量:44.9重量%)。前記水溶性不飽和単量体水溶液の温度が中和熱によって上昇した後、40℃になると、該混合液を熱重合開始剤である2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩750ppmw(アクリル酸100重量部に対して)が入っている容器に入れた後、1分間紫外線を照射(照射量:10mV/cm2)してUV重合を行い、含水ゲル状重合体シートを得た。
【0088】
(チョッピング段階)孔径(hole size)が16mmであるチョッパー(chopper)で上記で得られた含水ゲル状重合体シートとキレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)3,000ppmwを投入して粉砕物(crumb)を製造した。
【0089】
(乾燥段階)次に、前記粉砕物(crumb)を上下に風量転移が可能なオーブンで乾燥した。前記乾燥は多段階で行い、具体的には、エアフロ―オーブン(air flow oven)を用いて150℃で5分、150℃で8分、170℃で5分、175℃で5分、180℃で5分、160℃で5分間行った。前記乾燥工程を経てベース樹脂粉末を得た。
【0090】
【0091】
[実験例]
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂組成物に対して、次のような方法で物性を評価し、その結果を表2に示す。
【0092】
特に表記しない限り、下記物性評価は全て常温(25±1℃)で行い、生理食塩水または塩水は0.9wt%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味し、アスコルビン酸塩水は0.9wt%塩化ナトリウム(NaCl)および0.005wt%アスコルビン酸水溶液を意味する。
【0093】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity、g/g)
実施例および比較例により製造したベース樹脂粉末中の150μm~850μmの粒径を有するものを取り、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格のEDANA WSP241.2に従って無荷重下吸収倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。
【0094】
具体的には、前記サンプルW0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離装置を用いて250gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、当該サンプルを用いずに同じ操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて以下の数式1によりCRC(g/g)を算出した。
【0095】
[数式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0096】
(2)ゲル強度(N)
実施例および比較例により製造したベース樹脂粉末中の150μm~850μmの粒径を有するものを取り、高吸水性樹脂2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させ、40℃のオーブンで24時間膨潤させた後、前記膨潤したベース樹脂粉末を引張圧縮試験装置を用いてゲル強度を測定した。
【0097】
具体的には、前記膨潤したベース樹脂粉末を引張圧縮試験装置である、デジタルフォースゲージFGP-2を用いて測定し、ティップ(tip)が貫通(penetration)しながらティップ(tip)に加わる力(N)のピーク(peak)値を下記の条件により3回測定した後、その算術平均値をゲル強度(単位:N)とする。
【0098】
Tip size:terminal diameter 10±0.1mm
Beaker size:50±0.1mm
Penetation speed:500±0.5mm/min
【0099】
【0100】
上記表2で確認できるように、重合段階でアゾ系重合開始剤とジエチレントリアミン五酢酸を組み合わせて使用した場合、重合体に適正な架橋密度を実現してベース樹脂粉末の優れた吸収性能とゲル強度を同時に実現することができることを確認した。したがって、最終的に製造される高吸水性樹脂の物性を顕著に改善することができた。
【0101】
DTPAを使用しないか、またはアゾ系重合開始剤の代わりに硫酸塩系重合開始剤を使用した比較例の場合、ゲル強度が実施例に比べて顕著に低下する問題が発生した。DTPAの代わりに他のキレート剤を使用する場合、目的とする程度のゲル強度と遠心分離保水能を同時に実現しにくいことを確認することができた。
【0102】
アゾ系重合開始剤とジエチレントリアミン五酢酸の使用含量比率が本発明の範囲を外れる比較例6および比較例7の場合、均一で長鎖構造を形成しにくく、したがって、吸収性能とゲル強度を同時に優れた範囲で実現しにくいことを確認することができた。
【0103】
ジエチレントリアミン五酢酸を重合段階ではなく、重合後のチョッピング段階で含む比較例8の場合、実施例に比べてゲル強度が顕著に低下することを確認することができた。