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特許7486885高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システム
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  • 特許-高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システム 図1
  • 特許-高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システム
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
C08F2/01
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023508025
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 KR2022008729
(87)【国際公開番号】W WO2022265478
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0079644
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080343
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0074623
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ギュンヒョク・アン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジェ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・イ
(72)【発明者】
【氏名】ギチョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・クワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】キュンフン・ミン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-067404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029546(US,A1)
【文献】国際公開第2017/115861(WO,A1)
【文献】特開2003-082107(JP,A)
【文献】特開2007-002067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の本体と、
前記本体の下部に位置し、下へいくほどその直径が減少する吐出部と、
上部に位置し、本体に連結されて単量体組成物が投入される入口と、
前記吐出部の下部に位置し、含水ゲル重合体が排出される出口と、
前記出口を開けたり閉じたりする排出バルブと、
を含み、
前記本体の直径(D1)に対する本体の高さと吐出部の高さとの和(H1)の比(H1/D1)は2~4であり、
前記吐出部の中心角は、50°~70°である、高吸水性樹脂用連続重合反応器。
【請求項2】
量体組成物は、設定された流量で入口を通して連続的に投入され、前記排出バルブは、設定された流量と同じ流量の含水ゲル重合体が出口を通して連続的に排出されるように出口の開度率を調節する、請求項1に記載の高吸水性樹脂用連続重合反応器。
【請求項3】
前記排出バルブは、出口を閉じて、単量体組成物が投入され始めた時点から設定された時間が経過したり、設定された体積の単量体組成物が投入されると出口を開ける、請求項2に記載の高吸水性樹脂用連続重合反応器。
【請求項4】
前記単量体組成物は、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂用連続重合反応器。
【請求項5】
酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤が貯蔵される第1ベッセルと、
重合開始剤の一部が貯蔵される第2ベッセルと、
重合開始剤の他の一部が貯蔵される第3ベッセルと、
酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤、重合開始剤が混合された単量体組成物が投入され、上部に位置した入口と、単量体組成物が重合されて形成された含水ゲル重合体が排出され、下部に位置した出口とを含む連続重合反応器と、
量体組成物を投入するように前記入口に連結された供給導管と、
前記第1ベッセルを前記供給導管と選択的に連結する第1供給バルブと、
前記第2ベッセルを前記供給導管と選択的に連結する第2供給バルブと、
前記第3ベッセルを前記供給導管と選択的に連結する第3供給バルブと、
出口を開けたり閉じたりする排出バルブと、
前記第1、第2、第3供給バルブと排出バルブの作動を制御する制御器と、
を含み、
前記制御器は、入口を通して設定された流量の単量体組成物が連続的に投入されるように第1、第2、第3供給バルブを制御し、設定された流量と同じ流量の含水ゲル重合体が連続的に排出されるように排出バルブを制御し、
前記連続重合反応器は、円筒形の本体と、前記本体の下部に位置し、下へいくほどその直径が減少する吐出部とを含み、
前記本体の直径(D1)に対する本体の高さと吐出部の高さとの和(H1)の比(H1/D1)は2~4であり、
前記吐出部の中心角は、50°~70°である、連続重合反応システム。
【請求項6】
前記制御器は、出口を閉じるように排出バルブを制御し、第1、第2、第3供給バルブを開けて、単量体組成物が入口を通して連続的に投入される、請求項5に記載の連続重合反応システム。
【請求項7】
前記制御器は、単量体組成物が投入され始めた時点から設定された時間が経過したり、設定された体積の単量体組成物が投入されると出口を開けるように排出バルブを制御する、請求項6に記載の連続重合反応システム。
【請求項8】
第1、第2、第3ベッセルは、連続重合反応器から第3、第2、第1ベッセルの順に配置される、請求項に記載の連続重合反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年6月18日付の韓国特許出願第10-2021-0079644号、2021年6月21日付の韓国特許出願第10-2021-0080343号、および2022年6月20日付の韓国特許出願第10-2022-0074623号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システムに関し、より詳しくは、生産性を向上させることができ、物性の再現性が高い高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システムに関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(super absorbent polymer;SAP)は、アクリル酸と苛性ソーダとを反応させて製造する白色粉末状の高分子物質であり、SAPの自重の5百倍から1千倍程度の水分を吸収することができる。高吸水性樹脂は水を吸収すればゼリーに似た形に変形し、外部からある程度の圧力が加えられても水を排出せずに貯蔵できる機能を有する合成高分子物質である。
【0004】
高吸水性樹脂分子は網模様の網状構造を有しており、分子間の多くの孔によって水をよく吸収することができる。水と高吸水性樹脂の内部のイオン濃度の差によって、水は高吸水性樹脂の内部に移動(浸透圧現象によって)する。水分子が高吸水性樹脂の内部に流入すれば、内部に固定された陰イオンが反発力によって一定の空間を占めようとしながら、高分子鎖の空間が膨張して水をより多く吸収(静電的反発力)できるようになるのである。
【0005】
このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始めて、現在は、子供用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料として幅広く使用されている。
【0006】
高吸水性樹脂は、重合反応器で重合反応を経て得られた含水ゲル(hydrogel)または含水ゲル状重合体(hydrogel polymer)を乾燥および粉砕した後、粉末状の製品として市販される。
【0007】
従来技術によれば、バッチ式重合反応器を用いて含水ゲルまたは含水ゲル状重合体を得ていた。しかし、バッチ式重合反応器は、単量体組成物の投入後重合反応が完了するまで相当の時間を待ってはじめて含水ゲルまたは含水ゲル状重合体を得ることができた。したがって、バッチ式重合反応器では十分な生産量を得ることが難しかった。
【0008】
このような生産量不足を克服するために、複数のバッチ式重合反応器を用いることができるが、複数の重合反応器を設けるためのより大きな空間が必要であり、各バッチ式重合反応器で得られた含水ゲルまたは含水ゲル状重合体の間に物性の差が発生することがあった。
【0009】
この背景技術部分に記載された事項は発明の背景に対する理解を増進させるために作成されたものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術でない事項を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施例は、単量体組成物の投入と生産された含水ゲルまたは含水ゲル状重合体の排出が同時に行われることによって生産性を向上させることができ、物性の再現性が高い高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応器は、円筒形の本体と、前記本体の下部に位置し、下へいくほどその直径が減少する吐出部と、上部に位置し、本体に連結されて単量体組成物が投入される入口と、前記吐出部の下部に位置し、含水ゲル重合体が排出される出口と、前記出口を開けたり閉じたりする排出バルブとを含み、前記本体の直径(D1)に対する本体の高さと吐出部の高さとの和(H1)の比(H1/D1)は2~4であってもよい。
【0012】
前記単量体組成物は、設定された流量で入口を通して連続的に投入され、前記排出バルブは、設定された流量と同じ流量の含水ゲル重合体が出口を通して連続的に排出されるように出口の開度率を調節することができる。
【0013】
前記排出バルブは、出口を閉じて、最終単量体組成物が投入され始めた時点から設定された時間が経過したり、設定された体積の最終単量体組成物が投入されると出口を開けることができる。
【0014】
本発明の他の実施例による連続重合反応システムは、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤が貯蔵される第1ベッセルと、重合開始剤の一部が貯蔵される第2ベッセルと、重合開始剤の他の一部が貯蔵される第3ベッセルと、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤、重合開始剤が混合された単量体組成物が投入され、上部に位置した入口と、最終単量体組成物が重合されて形成された含水ゲル重合体が排出され、下部に位置した出口とを含む連続重合反応器と、単量体組成物を投入するように前記入口に連結された供給導管と、前記第1ベッセルを前記供給導管と選択的に連結する第1供給バルブと、前記第2ベッセルを前記供給導管と選択的に連結する第2供給バルブと、前記第3ベッセルを前記供給導管と選択的に連結する第3供給バルブと、出口を開けたり閉じたりする排出バルブと、前記第1、第2、第3供給バルブと排出バルブの作動を制御する制御器とを含み、前記制御器は、入口を通して設定された流量の最終単量体組成物が連続的に投入されるように第1、第2、第3供給バルブを制御し、設定された流量と同じ流量の含水ゲル重合体が連続的に排出されるように排出バルブを制御することができる。
【0015】
前記制御器は、出口を閉じるように排出バルブを制御し、第1、第2、第3供給バルブを開けて、最終単量体組成物が入口を通して連続的に投入される。
【0016】
前記制御器は、最終単量体組成物が投入され始めた時点から設定された時間が経過したり、設定された体積の単量体組成物が投入されると出口を開けるように排出バルブを制御することができる。
【0017】
第1、第2、第3ベッセルは、連続重合反応器から第3、第2、第1ベッセルの順に配置される。
【0018】
前記連続重合反応器は、円筒形の本体と、前記本体の下部に位置し、下へいくほどその直径が減少する吐出部とを含み、前記本体の直径(D1)に対する本体の高さと吐出部の高さとの和(H1)の比(H1/D1)は2~4であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によれば、単量体の組成物の投入と生産された含水ゲルまたは含水ゲル状重合体の排出が同時に行われることによって生産性を向上させることができ、均一な物性の高吸水性樹脂を作製することができる。
【0020】
また、生産性の向上によって複数の重合反応器を用いる必要がなく、これによって大きな設備空間を必要とせず、品質管理が便利になる。
【0021】
さらに、重合反応器の高さと直径の比率を最適化することによって、高吸水性樹脂の物性を向上させることができる。
【0022】
その他、本発明の実施例によって得られるか予測される効果については、本発明の実施例に関する詳細な説明で直接的または暗示的に開示する。つまり、本発明の実施例により予測される多様な効果については、後述する詳細な説明内で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書の実施例は類似の参照符号が同一または機能的に類似の要素を指し示す添付した図面と結びつけた以下の説明を参照してより良く理解されるであろう。
【0024】
図1】本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応システムの概略図である。
図2】本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応器の概略図である。
【0025】
上記で参照された図面は必ずしも縮尺に合わせて示されたものではなく、本発明の基本原理を例示する多様な好ましい特徴のやや簡略な表現を提示することが理解されなければならない。例えば、特定の寸法、方向、位置、および形状を含む本発明の特定の設計の特徴が特定の意図された応用と使用環境によって一部決定されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで使用される用語は単に特定の実施例を説明するための目的であり、本発明を制限することが意図されない。ここで使用されるように、単数形態は、文脈上明示的に異なって表示されない限り、複数形態をさらに含むことが意図される。「含む」、「含む…」、「含有する」および/または「含有する…」という用語は、本明細書で使用される場合、言及された特徴、整数、段階、作動、構成要素および/またはコンポーネントの存在を特定するが、他の特徴、整数、段階、作動、構成要素、コンポーネントおよび/またはこれらのグループの1つ以上の存在または追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。ここで使用されるように、用語「および/または」は、これに関連して並べられた項目の任意の1つまたはすべての組み合わせを含む。
【0027】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態のものを意味し、すべての水分含有量の範囲または粒径の範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル状重合体と称することができる。
【0028】
また、「高吸水性樹脂」は、文脈により、前記重合体またはベース樹脂自体を意味するか、または前記重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するもので使用される。
【0029】
追加的に、下記の方法またはこれらの態様の1つ以上は、少なくとも1つ以上の制御器によって実行できることが理解される。「制御器」という用語は、メモリおよびプロセッサを含むハードウェア装置を称することができる。メモリは、プログラム命令を格納するように構成され、プロセッサは以下により詳しく説明される1つ以上のプロセスを行うためにプログラム命令を実行するように特別にプログラミングされる。制御器は、ここで記載されたように、ユニット、モジュール、部品、装置、またはこれと類似しているものの作動を制御することができる。また、以下の方法は、当業者によって認識されるように、1つ以上の他のコンポーネントと共に制御器を含む装置によって実行できることが理解される。
【0030】
また、本開示の制御器は、プロセッサによって実行される実行可能なプログラム命令を含む非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体として実現される。コンピュータで読取可能な記録媒体の例は、ROM、RAM、コンパクトディスク(CD)ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、フラッシュドライブ、スマートカードおよび光学データ記憶装置を含むが、これらに限定されるものではない。コンピュータ読取可能記録媒体はさらに、コンピュータネットワーク全般にわたって分散してプログラム命令が、例えば、テレマティクスサーバ(telematics server)または制御器領域ネットワーク(Controller Area Network;CAN)のような分散方式で格納および実行可能である。
【0031】
本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システムは、単量体組成物の投入と生産された含水ゲルまたは含水ゲル状重合体の排出が同時に行われることによって生産性を向上させることができ、均一な物性の高吸水性樹脂を作製することができる。
【0032】
以下、本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応器およびこれを含む連続重合反応システムを、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
本発明の実施例による高吸水性樹脂の製造装置は、重合反応器と、細切装置と、乾燥機と、粉砕装置と、表面架橋装置とを含む。
【0034】
前記重合反応器は、内部架橋剤、および重合開始剤の存在下、単量体組成物の重合反応を起こして含水ゲル状重合体を形成する。
【0035】
前記重合反応は、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤が架橋重合された重合体を形成する反応である。
【0036】
架橋重合体を構成する前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であってもよい。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物であってもよい。
【0037】
[化1]
-COOM
【0038】
前記化学式1において、Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、Mは、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0039】
好ましくは、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。その他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが使用できる。
【0040】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基を有する。従来の高吸水性樹脂の製造では、前記酸性基の少なくとも一部が中和剤によって中和された単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成した。具体的には、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、重合開始剤および中和剤を混合する段階で前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基の少なくとも一部が中和された。
【0041】
しかし、本発明の一実施形態によれば、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基が中和されていない状態で重合を先に行って重合体を形成する。
【0042】
酸性基が中和されていない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体(例、アクリル酸)は、常温で液体状態であり、溶媒(水)と混和性(miscibility)が高くて単量体組成物で混合溶液の状態で存在する。しかし、酸性基が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体は、常温で固体状態であり、溶媒(水)の温度に応じて異なる溶解度を有し、低温であるほど溶解度が低くなる。
【0043】
このように酸性基が中和されていない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基が中和された単量体より溶媒(水)に対する溶解度または混和度が高くて低い温度でも析出せず、このため、低温で長時間重合をするのに有利である。これによって前記酸性基が中和されていない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体を用いて長時間重合を行って、より高分子量を有し、分子量分布が均一な重合体を安定的に形成することができる。
【0044】
また、より長い鎖の重合体の形成が可能であり、重合や架橋化が不完全で架橋化されない状態で存在する水可溶成分の含有量が減少する効果を達成することができる。
【0045】
さらに、このように単量体の酸性基が中和されていない状態で重合を先に行って重合体を形成し、中和後、界面活性剤の存在下で細粒化するか、細粒化と同時に前記重合体に存在する酸性基を中和させると、界面活性剤が前記重合体の表面に多量に存在して重合体の粘着性を低下させる役割を十分に果たすことができる。
【0046】
前記単量体組成物中の、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節可能であり、約20~約60重量%、または約40~約50重量%にしてもよい。
【0047】
本明細書で使用する用語「内部架橋剤」は、後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別するために使用する用語で、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合の間に架橋結合を導入して、架橋構造を含む重合体を形成する役割を果たす。
【0048】
前記段階での架橋は、表面または内部の区別なく行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が進行する場合、最終的に製造された高吸水性樹脂粒子の表面は、表面架橋剤によって新しく架橋された構造を含むことができ、高吸水性樹脂粒子の内部は、前記内部架橋剤によって架橋された構造がそのまま維持できる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前記内部架橋剤として多官能アクリレート系化合物、多官能アリル系化合物、または多官能ビニル系化合物のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0050】
多官能アクリレート系化合物の非制限的な例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、およびグリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0051】
多官能アリル系化合物の非制限的な例として、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ブタンジオールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、およびグリセリントリアリルエーテルなどが挙げられ、単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0052】
多官能ビニル系化合物の非制限的な例として、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールジビニルエーテル、ジペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、およびグリセリントリビニルエーテルなどが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して使用することができる。好ましくは、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルを使用することができる。
【0053】
前述した多官能アリル系化合物、または多官能ビニル系化合物は、分子内に含まれる2以上の不飽和基が水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合、あるいは他の内部架橋剤の不飽和結合とそれぞれ結合して、重合過程で架橋構造を形成することができ、分子内にエステル結合(-(C=O)O-)を含むアクリレート系化合物とは異なり、前述した重合反応後の中和過程でも架橋結合をより安定的に維持することができる。
【0054】
これによって、製造される高吸水性樹脂のゲル強度が高くなり、重合後の吐出過程で工程安定性が高まり、水可溶分の量を最小化することができる。
【0055】
このような内部架橋剤の存在下での前記水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合は、重合開始剤、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの存在下で行われる。
【0056】
前記単量体組成物において、このような内部架橋剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~5重量部使用できる。例えば、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上かつ、5重量部以下、または3重量部以下、または2重量部以下、または1重量部以下、または0.7重量部以下で使用できる。前記内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらず適正水準以上の強度の実現が難しく、前記内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の実現が難しいことがある。
【0057】
このような内部架橋剤を用いて形成された重合体は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体が重合されて形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋される形態の3次元網状構造を有する。このように、重合体が3次元網状構造を有する場合、内部架橋剤によって追加架橋されない2次元線状構造の場合に比べて、高吸水性樹脂の諸物性である保水能および加圧吸水能が顕著に向上できる。
【0058】
本発明の実施例による重合反応器10は、熱重合方式を利用した連続重合反応器10である。連続重合反応器10およびこれを含む連続重合反応システムは後述する。
【0059】
通常の高吸水性樹脂の製造方法において、重合方法は、重合エネルギー源により、大きく熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)などの撹拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行させる場合、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で行われるか、底の平らな容器で行われてもよい。
【0060】
一方、このような重合方法は、大体短い重合反応時間(例えば、1時間以下)により重合体の分子量が大きくなく、広い分子量分布を有する重合体が形成される。
【0061】
一方、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器または底の平らな容器で光重合を進行させる場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状の重合体が得られ、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度または注入量に応じて異なるが、通常約0.5~約5cmの厚さで得られる。
【0062】
しかし、シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、生産性のためにシート状の重合体の厚さを厚くする場合には、重合反応が全厚にわたって均等に起こらず高品質の重合体の形成が難しくなる。
【0063】
また、前記コンベヤベルトを備えた反応器撹拌軸を有する反応器での重合は、重合結果物が移動しながら新しい単量体組成物が反応器に供給されて連続式で重合が行われるので、重合率が互いに異なる重合体が混合され、これによって単量体組成物全体において均一な重合が行われにくくて、全体的な物性低下が生じうる。
【0064】
しかし、本発明の一実施形態によれば、連続重合反応器10およびこれを含む連続重合反応システムにより重合を進行させることによって、重合率が異なる重合体が混合される恐れが少なく、これによって均一な品質を有する重合体が得られる。
【0065】
一方、本発明の一実施形態による連続重合反応器10での重合は、熱重合方法を利用することによって、前記重合開始剤は、熱重合開始剤を使用する。
【0066】
前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著の「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」、p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0067】
このような重合開始剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、2重量部以下で使用できる。つまり、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量に抽出されうるので、好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下しうるので、好ましくない。
【0068】
一方、本発明の一実施形態では、前記開始剤とレドックス(Redox)カップルをなす還元剤と共に投入して重合を開始することができる。
【0069】
具体的には、前記開始剤と還元剤は、重合体溶液に投入された時、互いに反応してラジカルを形成する。
【0070】
形成されたラジカルは単量体と反応し、前記開始剤と還元剤との間の酸化-還元反応は反応性が非常に高いので、微量の開始剤および還元剤だけが投入されても重合が開始され、工程温度を高める必要がなくて低温重合が可能であり、重合体溶液の物性変化を最小化させることができる。
【0071】
前記酸化-還元反応を利用した重合反応は、常温(25℃)付近またはそれ以下の温度でも円滑に起こることができる。一例として、前記重合反応は、5℃以上25℃以下、または5℃以上20℃以下の温度で行われる。
【0072】
本発明の一実施形態において、前記開始剤として過硫酸塩系開始剤を使用する場合、還元剤は、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na);テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);硫酸鉄(II)とEDTAとの混合物(FeSO/EDTA);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(Sodium formaldehyde sulfoxylate);およびジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテート(Disodium2-hydroxy-2-sulfinoacteate)からなる群より選択された1種以上が使用できる。
【0073】
一例として、開始剤として過硫酸カリウムを使用し、還元剤としてジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテートを使用するか;開始剤として過硫酸アンモニウムを使用し、還元剤としてテトラメチルエチレンジアミンを使用するか;開始剤として過硫酸ナトリウムを使用し、還元剤としてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを使用することができる。
【0074】
本発明の他の実施形態において、前記開始剤として過酸化水素系開始剤を使用する場合、還元剤は、アスコルビン酸(Ascorbic acid);スクロース(Sucrose);亜硫酸ナトリウム(NaSO)、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na);テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);硫酸鉄(II)とEDTAとの混合物(FeSO/EDTA);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(Sodium formaldehyde sulfoxylate);ジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテート(Disodium2-hydroxy-2-sulfinoacteate);およびジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルホアセテート(Disodium2-hydroxy-2-sulfoacteate)からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0075】
前記単量体組成物は、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0076】
そして、前記単量体を含む単量体組成物は、例えば、水などの溶媒に溶解した溶液状態であってもよく、このような溶液状態の単量体組成物中の固形分含有量、つまり、単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節可能である。例えば、前記単量体組成物中の固形分含有量は、10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であってもよい。
【0077】
この時使用可能な溶媒は、上述した成分を溶解できればその構成の限定なく使用可能であり、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
このような方法で得られた重合体は、未中和状態のエチレン系不飽和単量体を用いて重合することによって、先に説明したように、高分子量を有し、分子量分布が均一な重合体を形成することができ、水可溶成分の含有量が減少できる。
【0079】
このような方法で得られた重合体は、含水ゲル重合体の状態で、含水率が30~80重量%であってもよい。例えば、前記重合体の含水率は、30重量%以上、または45重量%以上、または50重量%以上であり、80重量%以下、または70重量%以下、または60重量%以下であってもよい。
【0080】
前記重合体の含水率が過度に低い場合、後の粉砕段階で適切な表面積を確保しにくくて効果的に粉砕されないことがあり、前記重合体の含水率が過度に高い場合、後の粉砕段階で受ける圧力が増加して所望の粒度まで粉砕させにくいことがある。
【0081】
一方、本明細書全体において、「含水率」は、重合体の全体重量に対して占める水分の含有量であり、重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によりクラム状態の重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含む40分に設定して、含水率を測定する。
【0082】
以下、図1および図2を参照して、本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応器10およびこれを含む連続重合反応システムをより詳しく説明する。
【0083】
図1は、本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応システムの概略図であり、図2は、本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応器の概略図である。
【0084】
図1に示されているように、本発明の実施例による高吸水性樹脂用連続重合反応システムは、第1、第2、第3ベッセル100、110、120と、連続重合反応器10とを含む。
【0085】
第1、第2、第3ベッセル100、110、120は、供給導管104を介して連続重合反応器10に連結されて、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤、重合開始剤などを供給導管104を通して連続重合反応器10に供給する。
【0086】
第1ベッセル100には、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤が設定された比率で混合されており、前記第1ベッセル100の下端には第1供給バルブ102が備えられて、第1ベッセル100と供給導管104とを連結したり、連結解除することができる。例えば、第1ベッセル100には、単量体として酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和と、内部架橋剤、溶媒が貯蔵されている。
【0087】
第2ベッセル110には、重合開始剤の一部が設定された比率で混合されており、前記第2ベッセル110の下端には第2供給バルブ112が備えられて、第2ベッセル110と供給導管104とを連結したり、連結解除することができる。例えば、第2ベッセル110には熱重合開始剤の一部が貯蔵されている。
【0088】
第3ベッセル120には、重合開始剤の他の一部が設定された比率で混合されており、前記第3ベッセル120の下端には第3供給バルブ122が備えられて、第3ベッセル120と供給導管104とを連結したり、連結解除することができる。例えば、第3ベッセル120には熱重合開始剤の他の一部が貯蔵されている。追加的に、酸化-還元触媒剤などの添加剤が貯蔵されていてもよい。
【0089】
一つの例において、第1、第2、第3ベッセル100、110、120は、連続重合反応器10から第3、第2、第1ベッセル120、110、100の順に配置される。つまり、第1ベッセル100は、連続重合反応器10から最も遠く配置され、第3ベッセル120は、連続重合反応器10に最も近く配置され、第2ベッセル110は、第1ベッセル100と第3ベッセル120との間に配置される。したがって、第1ベッセル100から酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤などの単量体組成物が供給導管104に供給されると、第2ベッセル110は、重合開始剤の一部を前記単量体組成物に混合し、第3ベッセル120は、重合開始剤の他の一部を最終的に前記単量体組成物に混合して、最終単量体組成物が連続重合反応器10に供給されて重合反応が起こる。
【0090】
前記供給導管104にはポンプ106が配置されて、連続重合反応器10に酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、溶媒、内部架橋剤、重合開始剤、添加剤などの供給を円滑にする。
【0091】
図2に示されているように、本発明の実施例による連続重合反応器10は、最終単量体組成物が供給導管104から供給され、重合反応で形成された含水ゲル状重合体を排出するようになっている。このために、連続重合反応器10の上部には前記供給導管104に連結された入口12が形成され、連続重合反応器10の下部には出口14が形成され、前記出口14には排出バルブ16が設けられている。また、前記連続重合反応器10の上部にはその直径が概ね一定の円筒形の本体17が形成され、前記本体17の下部には前記出口14に向かってその直径が次第に減少する吐出部18が形成される。
【0092】
前記排出バルブ16は、最終単量体組成物が連続重合反応器10に供給された時点から設定された時間が経過するまでは閉じられており、前記設定された時間が経過した後には開けられる。つまり、第3ベッセル120から重合開始剤の他の一部が供給導管104に供給されて最終単量体組成物が混合されると、重合反応が起こり始める。重合反応が起こり始めた前記最終単量体組成物は連続重合反応器10に供給され、前記連続重合反応器10で前記設定された時間重合反応が進行して含水ゲル状重合体に形成される。以後、排出バルブ16は、連続重合反応器10の出口14を開けて、形成された含水ゲル状重合体を排出する。したがって、前記設定された時間は、最終単量体組成物が混合された時点から含水ゲル状重合体に重合が完了した時点までの時間間隔を意味する。
【0093】
また、排出バルブ16は、入口12を通して連続重合反応器10に供給された最終単量体組成物の流量と同じ流量の含水ゲル状重合体が、出口14を通して排出されるように出口14の開口量を調節することができる。
【0094】
この目的のために、前記第1、第2、第3供給バルブ102、112、122と排出バルブ16は、制御器130に電気的に連結可能である。つまり、制御器130は、第1供給バルブ102に信号を送って設定された流量の単量体組成物が供給導管104に供給されるように制御し、第2供給バルブ112に信号を送って供給導管104に供給される単量体組成物の流量に応じた、設定された比率の重合開始剤の一部が供給導管104に供給されるように制御し、第3供給バルブ122に信号を送って供給導管104に供給される単量体組成物の流量に応じた、設定された比率の重合開始剤の他の一部が供給導管104に供給されるように制御して、設定された流量の最終単量体組成物が連続重合反応器10に供給されるように制御する。この時、制御器130は、出口14を閉じるように排出バルブ16を制御する。
【0095】
また、設定された流量の最終単量体組成物が連続重合反応器10に供給され始めた時点から設定された時間が経過すると、制御器130は、設定された流量と同じ流量の含水ゲル状重合体が出口14を通して排出されるように排出バルブ16を介して出口14の開口量を調節する。
【0096】
一方、制御器130は、設定された時間の代わりに設定された体積に基づいて排出バルブ16を開ける時点を判断することができる。つまり、体積は、流量と時間との積で表現可能なため、設定された体積の最終単量体組成物が連続重合反応器10に供給されると、制御器130は、設定された時間が経過したと判断し、排出バルブ16を開けることができる。
【0097】
連続重合反応器10内に均一な最終単量体組成物の濃度勾配を得るためには、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比が2~4の範囲内に設定されなければならない。つまり、2≦H1/D1≦4である。ここで、連続重合反応器10の直径(D1)は、本体17の直径を示し、連続重合反応器10の高さ(H1)は、本体17の高さ(H2)と吐出部18の高さ(H3)との和と同一である。また、吐出部18の中心角(θ1)は、約50°~約70°であってもよい。
【0098】
もし、H1/D1が2より小さければ、出口14に排出できる含水ゲル状重合体の流量が大きく、排出バルブ16を介した出口14の開口量の調節が難しいことがあり、溶液層が薄いので、最終単量体組成物の温度が急激に上昇して、重合反応時に副反応が発生し、これによって保水能に対して水可溶成分が増加することがある。
【0099】
もし、H1/D1が4より大きければ、連続重合反応器10の下部の溶液の温度が上部の溶液の温度より高くて連続重合反応器10の上部に上昇するので、同一の濃度で同一の時間重合反応を進行させることが難しい。これによって、新しく投入された上部の溶液が重合反応の進行する下部の溶液と混合されて重合反応が十分に行われないことがある。したがって、水可溶成分が保水能に対して増加しうる。
【0100】
したがって、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比が2~4の範囲内に設定することによって、均一な濃度で重合反応を進行させることができ、これによって均一な物性の高吸水性樹脂を作製することができる。
【0101】
以後、前記製造された重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させる段階と、界面活性剤の存在下、前記重合体を細粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階と、前記含水高吸水性樹脂粒子を乾燥して、乾燥高吸水性樹脂粒子を製造する段階と、前記乾燥高吸水性樹脂粒子を粉砕して高吸水性樹脂粒子を製造する段階などとを行って高吸水性樹脂を製造することができる。
【0102】
<実施例>
実施例1
連続重合反応器10の直径(D1)が140mmであり、本体17の高さ(H2)が350mmであり、吐出部18の高さ(H3)が61mmであり、吐出部18の中心角(θ1)が60°である5.4Lの体積の連続重合反応器10の出口14を閉じて、ポンプ106を用いて最終単量体組成物を連続重合反応器10に、アクリル酸100gあたり、蒸留水約330g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.35g、アスコルビン酸0.015g、硫酸鉄0.00015gの比率で供給した。最終単量体組成物の供給は、連続重合反応器10の体積の80%(4.32L)が満たされるまで継続した。
【0103】
入口12を通して前記比率の最終単量体組成物を連続重合反応器10に供給すると同時に、排出バルブ16を介して出口14を開けて含水ゲル重合体を排出した。この時、0.7L/hrの流量で最終単量体組成物が連続重合反応器10に供給され、0.7L/hrの流量で含水ゲル重合体が連続重合反応器10から排出された。
【0104】
連続重合反応器10から排出された含水ゲル重合体は、細切、乾燥、粉砕、表面架橋などを経て高吸水性樹脂に製造された。
【0105】
6時間ごとに高吸水性樹脂のサンプルを抽出して保水能(CRC)と水可溶成分(EC)を測定して偏差を計算した。保水能(CRC)と水可溶成分の偏差はそれぞれ2%程度であった。
【0106】
参照として、測定は、ASTM規格の篩で分級した300μm~400μmの粒径を有する高吸水性樹脂サンプルを用い、保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)は、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP241.3により測定し、水可溶成分(EC、Extractable Contents)は、EDANA法WSP270.3の方法により1時間膨潤後の水可溶成分で測定した。
【0107】
比較例1
実施例1と同じ大きさのバッチ式重合反応器の出口を閉じて、ポンプを用いて最終単量体組成物をバッチ式重合反応器に、アクリル酸100gあたり、蒸留水約330g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.35g、アスコルビン酸0.015g、硫酸鉄0.00015gの比率で供給した。最終単量体組成物の供給は、バッチ式重合反応器の体積の80%(4.32L)が満たされるまで継続した。
【0108】
その後、最終単量体組成物の投入を中止し、6時間重合反応を進行させた。
【0109】
6時間経過後、出口を開けて、含水ゲル重合体を排出し、細切、乾燥、粉砕、表面架橋などを経て高吸水性樹脂に製造された。前記過程を繰り返して高吸水性樹脂のサンプルを抽出し、保水能と水可溶成分を測定して偏差を計算した。保水能と水可溶成分の偏差はそれぞれ5%程度であった。
【0110】
実施例1と比較例1から分かるように、単量体組成物の投入と含水ゲル状重合体の排出が同時に行われる連続重合反応器10を用いると、保水能と水可溶成分の偏差が減少できる。これによって、均一な物性の高吸水性樹脂を作製することができる。
【0111】
実施例2~実施例5および比較例2および比較例3
連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を調整し、実施例1と同様の高吸水性樹脂の製造方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0112】
より具体的には、実施例2によれば、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を2に設定し、出口14を閉じた後、実施例1と同じ比率の最終単量体組成物を連続重合反応器10の体積の80%が満たされるまで連続重合反応器10に供給した。その後、設定された流量の最終単量体組成物を供給すると同時に、出口14を開けて、前記設定された流量と同じ流量の含水ゲル重合体が出口14に排出されるようにした。
【0113】
連続重合反応器10から排出された含水ゲル重合体は、細切、乾燥、粉砕、表面架橋などを経て高吸水性樹脂に製造された。
【0114】
6時間ごとに高吸水性樹脂のサンプルを抽出して保水能と水可溶成分を測定して偏差を計算した。
【0115】
実施例3によれば、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を2.7に設定し、実施例2と同一の工程を行った。
【0116】
実施例4によれば、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を3.0に設定し、実施例2と同一の工程を行った。
【0117】
実施例5によれば、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を4.0に設定し、実施例2と同一の工程を行った。
【0118】
比較例2によれば、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を1.5に設定し、実施例2と同一の工程を行った。
【0119】
比較例3によれば、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を4.5に設定し、実施例2と同一の工程を行った。
【0120】
実施例2~5と比較例2および3の保水能(CRC)、保水能の偏差、水可溶成分(EC)、水可溶成分の偏差は、表1の通りである。
【0121】
【表1】
【0122】
表1から分かるように、連続重合反応器10を用いても連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を2より小さかったり、4より大きく設定すれば、保水能と水可溶成分の偏差が増加しうる。特に、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を2より小さかったり、4より大きく設定すれば、保水能の偏差と水可溶成分の偏差がそれぞれ4%程度と大きい。しかし、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を2~4に設定すれば、保水能の偏差と水可溶成分の偏差がそれぞれ2%未満と小さい。したがって、均一な物性の高吸水性樹脂を作製するためには、連続重合反応器10を用い、連続重合反応器10の直径(D1)に対する高さ(H1)の比を2~4に設定しなければならない。
【0123】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の実施例から当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって容易に変更され、均等と認められる範囲のすべての変更を含む。
図1
図2