(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/08 20060101AFI20240513BHJP
C08G 77/10 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08G77/08
C08G77/10
(21)【出願番号】P 2021113895
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 将史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓真
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-179232(JP,A)
【文献】特表2016-531183(JP,A)
【文献】Krzysztof KAZMIERSKI et al.,Polymer Preprints,Cationic Ring Opening Polymerization of Cyclotrisiloxanes with Mixed Siloxane Units,ACS Div. Polym.Chem.,1998年,39(1),pp.439-440
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/04
C08G 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(2)
【化1】
(式(2)中、R
2
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基である。)
で表されるオルガノシロキサンと、
(B)下記一般式(3)
【化2】
(式(3)中、R
3
はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、dは3もしくは4である。また、(B)の環状シロキサンのうち、少なくとも75mol%は下記一般式(4)で示される環状シロキサンである。)
【化3】
(式(4)中、R
4
はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、Phはフェニル基を示し、dは上記と同じである。)
で示される環状シロキサンとを
(C)ブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程を有することを特徴とする、
下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン
【化4】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、Phはフェニル基を示し、aは2以上の数、bは2以上の数、cは1以上の数で、かつ、5≦a+b+c≦500である。)
であって、重量平均分子量700以下の低分子シロキサンの含有率が10質量%以下であり、かつ、ジフェニルシロキシ単位全体における、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合が5mol%以下である
オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
ブレンステッド酸触媒が、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから選択される、請求項
1に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
(A)一般式(2)で表されるオルガノシロキサンと、(B)一般式(3)で示される環状シロキサンとを(C)ブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程における反応温度が6℃以上30℃以下であることを特徴とする、請求項
1または
2に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン及びその製造方法に関し、特に、ジフェニルシロキシ単位含有オルガノポリシロキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリジメチルシロキサンにジフェニルシロキシ単位を導入することによって、有機樹脂との相溶性や、粘度、耐熱性が向上することが知られている。
【0003】
ジフェニルシロキシ単位含有オルガノポリシロキサンを製造する方法として、原料としてジフェニルシロキシ単位含有環状シロキサンを、触媒としてアルカリ金属触媒やケイ酸塩触媒等を使用する平衡共重合法が公知である。しかし、平衡共重合法ではシロキサン配列が制御されていないため、反応副生物としてジフェニルシロキシ単位が連続した、ヘキサフェニルシクロトリシロキサンやオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物が生成し、これを留去することが困難であるため問題となっていた。
【0004】
近年、配列が制御されたオルガノポリシロキサンの製造方法として、グアニジン塩基を触媒として利用する開環重合法が報告されている(特許文献1)。該開環重合法では、オルガノシロキサンのブロックコポリマーが得られるが、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列がブロック構造に含まれるため、重合中の副反応によって、留去困難なフェニル環状化合物が生成する可能性がある。
また、ルイス酸性ホウ素化合物を触媒として利用する方法(特許文献2、特許文献3)も報告されている。このルイス酸性ホウ素化合物を触媒として利用する方法では、試薬の投入順序に応じて、配列が厳密に制御されたオルガノポリシロキサンが得られるが、原料のジヒドロシランが低沸点、低引火点であるため、安全性の点で問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018-051792号
【文献】国際公開第2018-159756号
【文献】特開2020-012007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シロキサン配列におけるジフェニルシロキシ単位の配列を制御し、ジフェニルシロキシ単位含有シロキサンが連続した配列の割合を低く抑えた、オルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ブレンステッド酸触媒を利用する平衡共重合によって、ジフェニルシロキシ単位含有シロキサンが連続した配列の割合を低く抑えたオルガノポリシロキサンを合成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記のオルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供する。
【0009】
<1>
下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン
【化1】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、Phはフェニル基を示し、aは2以上の数、bは2以上の数、cは1以上の数で、かつ、5≦a+b+c≦500である。)
であって、重量平均分子量700以下の低分子シロキサンの含有率が10質量%以下であり、かつ、ジフェニルシロキシ単位全体における、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合が5mol%以下であることを特徴とするオルガノポリシロキサン。
<2>
<1>に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法であって、
(A)下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、R
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基である。)
で表されるオルガノシロキサンと、
(B)下記一般式(3)
【化3】
(式(3)中、R
3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、dは3もしくは4である。また、(B)の環状シロキサンのうち、少なくとも75mol%は下記一般式(4)で示される環状シロキサンである。)
【化4】
(式(4)中、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、Phはフェニル基を示し、dは上記と同じである。)
で示される環状シロキサンとを
(C)ブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程を有することを特徴とするオルガノポリシロキサンの製造方法。
<3>
ブレンステッド酸触媒が、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから選択される、<2>に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
<4>
(A)一般式(2)で表されるオルガノシロキサンと、(B)一般式(3)で示される環状シロキサンとを(C)ブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程における反応温度が6℃以上30℃以下であることを特徴とする、<2>または<3>に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、ジフェニルシロキシ単位含有シロキサンが連続した配列の割合を低く抑えたオルガノポリシロキサンを製造できる。また、ヘキサフェニルシクロトリシロキサンやオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどの、ジフェニルシロキシ単位が連続した環状化合物がほとんど生成しないため、精製が容易になる。また、配列が制御されることで分子間力が向上し、耐熱性に優れたオルガノポリシロキサンが得られる。したがって、本発明のオルガノポリシロキサンは、電子機器、電気機械、自動車、化粧品などに利用されるシリコーンオイル、シリコーンゴム等に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
[オルガノポリシロキサン]
本発明のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示されるものである。
【化5】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、Phはフェニル基を示し、aは2以上の数、bは2以上の数、cは1以上の数で、かつ、5≦a+b+c≦500である。)
【0013】
上記式(1)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。炭素数2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
上記式(1)中、aは2以上、好ましくは2~12の数、bは2以上、好ましくは2~498、より好ましくは4~250の数、cは1以上、好ましくは1~100の数で、5≦a+b+c≦500であり、5≦a+b+c≦250が好ましい。a+b+cが500より大きいと、粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0015】
本発明のオルガノポリシロキサンの粘度は、10mm2/s~20,000mm2/sが好ましく、50mm2/s~10,000mm2/sがより好ましく、100mm2/s~5,000mm2/sが最も好ましい。
本明細書において、粘度は、JIS Z 8803:2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計を用いて測定した25℃における測定値である。
【0016】
上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンにおける、重量平均分子量700以下の低分子シロキサンの含有率は10質量%以下であり、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、下記条件によるポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析による値である。
【0017】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のTHF溶液)
【0018】
上記式(1)のジフェニルシロキシ単位全体における、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合は5mol%以下であり、3mol%以下が好ましく、1mol%以下がより好ましい。5mol%を超えると、副生物として、ジフェニルシロキシ単位が連続した、ヘキサフェニルシクロトリシロキサンやオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物が生成する可能性がある。
ここで、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合とは、29Si-NMRにおける、隣接位がジフェニルシロキシ基であるジフェニルシロキシ単位に由来するピークの積分面積を、ジフェニルシロキシ単位由来のピークの積分面積で割った値として求めた値である。
【0019】
具体的には、例えば、上記式(1)のシロキサンがトリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体M
2D
mD
2Φ
n(Dはジメチルシロキシ単位を示し、D
2Φはジフェニルシロキシ単位を示し、m、nは1以上の数)であるとき、
29Si-NMRを測定すると、10ppm付近に隣接位がD
2Φである、M単位由来のピーク1が検出され、8ppm付近に隣接位がDである、M単位由来のピーク2が検出され、-20~-22ppm付近にD単位由来のピーク3が検出され、-47ppm付近に隣接位がMまたはD
2Φである、D
2Φ単位由来のピーク4が検出され、-48ppm付近に隣接位がDである、D
2Φ単位由来のピーク5が検出される。
ここで、ピーク1、ピーク4及びピーク5の積分面積をそれぞれx、y、zとすると、隣接位がジフェニルシロキシ基であるジフェニルシロキシ単位に由来するピークの積分面積は(y-x)、ジフェニルシロキシ単位由来のピークの積分面積は(y+z)で表される。したがって、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合pは下記式から求められる。
【数1】
【0020】
[オルガノポリシロキサンの製造方法]
本発明のオルガノポリシロキサンの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、(A)下記一般式(2)で示されるオルガノシロキサンと、(B)下記一般式(3)で示される環状シロキサンとを(C)ブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程を有することを特徴とする。
【化6】
(式(2)中、R
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基である。)
【化7】
(式(3)中、R
3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、dは3もしくは4である。また、上記(B)の環状シロキサンのうち、少なくとも75mol%は下記一般式(4)で示される環状シロキサンである。)
【化8】
(式(4)中、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される基であり、Phはフェニル基を示し、dは上記と同じである。)
【0021】
上記式(2)中、R2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、フェニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。炭素数2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0022】
上記式(3)中、R3は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、フェニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;などが挙げられる。炭素数2~10のアルケニル基としては、ビニル基及びアリル基等が挙げられる。中でもアルキル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0023】
上記式(4)中、R4は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、(メタ)アクリロキシプロピル基及び(メタ)アクリロキシメチル基から選択される。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。炭素数2~10のアルケニル基としては、ビニル基及びアリル基等が挙げられる。中でもアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0024】
本明細書において、ブレンステッド酸触媒とは、反応系中でブレンステッド酸を生じさせることが可能な化合物(触媒)をいう。
本発明の製造方法で使用されるブレンステッド酸触媒としては、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。これらのブレンステッド酸触媒の中でも、トリフルオロメタンスルホン酸が最も好ましい。
【0025】
本発明の製造方法において、式(2)の化合物に対する、式(3)(式(4)を含む)の化合物のモル比は、1~166倍が好ましく、1~83倍がより好ましい。また、式(3)の化合物中の式(4)の化合物の含有率は、75~100mol%が好ましく、90~100mol%がより好ましい。(4)の化合物の含有率が75mol%を下回ってしまうと、配列制御による分子間力の向上効果が少なくなり、耐熱性が発現しない場合がある。
【0026】
本発明の製造方法において、ブレンステッド酸触媒の使用量(質量)は特に限定されず、目的に応じて適宜選択され、上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンと、上記式(2)で示される環状シロキサンの総使用量(総質量)に対して、100~50,000ppmが好ましく、250~25,000ppmがより好ましく、500~10,000ppmが最も好ましい。上記範囲内であれば、効率よく反応を進めることができる。
【0027】
本発明の製造方法において、(A)一般式(2)で表されるオルガノシロキサンと、(B)一般式(3)で示される環状シロキサンとを(C)ブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程における反応温度は6℃以上30℃以下が好ましく、15℃以上25℃以下がより好ましく、20℃以上25℃以下が最も好ましい。反応温度が30℃を超えてしまうと、フェニル基の脱離等の、望まない副反応が進行する場合がある。
【0028】
本発明の製造方法において、反応時間、使用する溶媒等の反応条件は特に限定されない。反応時間は、1~60時間が好ましく、2~48時間がより好ましく、4~24時間が最も好ましい。溶媒は使用してもしなくてもよいが、使用する場合はオクタン、デカンなどの飽和炭化水素が好ましい。
【0029】
本発明の製造方法において、(C)ブレンステッド酸触媒の存在下での反応終了後、得られた沈殿物を濾別する工程を有していてもかまわない。該沈殿物を濾別する工程は、公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されない。
【0031】
実施例で記載した重量平均分子量及び数平均分子量は、下記条件によるポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析による値である。
また、低分子シロキサン含有率は、重量平均分子量700以下のピーク面積を、全てのピーク面積の総和で割った値から算出した。
【0032】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のTHF溶液)
【0033】
粘度はJIS Z 8803:2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計を用いて測定した25℃における測定値である。また、屈折率(nD)は、JIS K 0062:1992記載のアッベ屈折計を用いて測定した25℃における測定値である。
【0034】
<実施例1>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ヘキサメチルジシロキサン21.7g、2,2,4,4-テトラメチル-6,6-ジフェニルシクロトリシロキサン278.3g、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、20℃で4時間反応を行った。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)3.6gを加えて、20℃で2時間撹拌を行い、白色沈殿物を加圧濾過によって濾別した。得られた粗生成物を内温160℃、3mmHgで減圧留去することで下記物性を有する無色透明液体を得た。
粘度:410mm2/s、屈折率:1.5074、数平均分子量:2,400、重量平均分子量:3,430、低分子シロキサン含有率4質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合:1.3mol%。
【0035】
<実施例2>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン24.7g、2,2,4,4-テトラメチル-6,6-ジフェニルシクロトリシロキサン275.3g、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、20℃で4時間反応を行った。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)3.6gを加えて、20℃で2時間撹拌を行い、白色沈殿物を加圧濾過によって濾別した。得られた粗生成物を内温160℃、3mmHgで減圧留去することで下記物性を有する無色透明液体を得た。
粘度:380mm2/s、屈折率:1.5094、数平均分子量:2,100、重量平均分子量:3,360、低分子シロキサン含有率4質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合:0.4mol%。
【0036】
<実施例3>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン18.2g、2,2,4,4-テトラメチル-6,6-ジフェニルシクロトリシロキサン281.8g、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、20℃で4時間反応を行った。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)3.6gを加えて、20℃で2時間撹拌を行い、白色沈殿物を加圧濾過によって濾別した。得られた粗生成物を内温160℃、3mmHgで減圧留去することで下記物性を有する無色透明液体を得た。
粘度:320mm2/s、屈折率:1.5084、数平均分子量:2,030、重量平均分子量:3,200、低分子シロキサン含有率6質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合:0.4mol%。
【0037】
<実施例4>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、1,3-ビス(アクリロキシメチル)テトラメチルジシロキサン38.1g、2,2,4,4-テトラメチル-6,6-ジフェニルシクロトリシロキサン261.9g、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、20℃で4時間反応を行った。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)3.6gを加えて、20℃で2時間撹拌を行い、白色沈殿物を加圧濾過によって濾別した。得られた粗生成物を内温160℃、3mmHgで減圧留去することで下記物性を有する無色透明液体を得た。
粘度:340mm2/s、屈折率:1.5094、数平均分子量:2,000、重量平均分子量:3,150、低分子シロキサン含有率7質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合:2.1mol%。
【0038】
<実施例5>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ヘキサメチルジシロキサン1.8g、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルー8,8-ジフェニルシクロテトラシロキサン28.2g、トリフルオロメタンスルホン酸0.3gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、20℃で4時間反応を行った。その後、キョーワード500SH(協和化学工業社製)1.8gを加えて、20℃で2時間撹拌を行い、白色沈殿物を加圧濾過によって濾別した。得られた粗生成物を内温190℃、3mmHgで減圧留去することで下記物性を有する無色透明液体を得た。
粘度:300mm2/s、屈折率:1.4897、数平均分子量:3,310、重量平均分子量:5,360、低分子シロキサン含有率9質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合:0.7mol%。
【0039】
<比較例1>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン24.7g、オクタメチルシクロテトラシロキサン117.8g、オクタフェニルシクロテトラシロキサン157.5g、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、20℃で4時間反応を行ったが、オクタフェニルシクロテトラシロキサンの開環重合が進行しなかった。
【0040】
<比較例2>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン24.7g、オクタメチルシクロテトラシロキサン117.8g、オクタフェニルシクロテトラシロキサン157.5g、水酸化カリウムを3質量%含有するカリウムシリコネート(信越化学工業社製)2.0gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、130℃で4時間反応を行った。その後、2-クロロエタノールで中和し、低沸点成分を留去することで下記物性を有する無色透明液体を得た。
粘度:340mm2/s、屈折率:1.5010、数平均分子量:2,690、重量平均分子量:3,850、低分子シロキサン含有率23質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合は50mol%であった。
【0041】
<比較例3>
温度計、撹拌装置及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン24.7g、2,2,4,4-テトラメチル-6,6-ジフェニルシクロトリシロキサン275.3g、水酸化カリウムを3質量%含有するカリウムシリコネート(信越化学工業社製)2.0gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、130℃で4時間反応を行った。その後、2-クロロエタノールで中和し、低沸点成分を留去することで無色透明液体を得た。
粘度:9,630mm2/s、屈折率:1.5015、数平均分子量:11,730、重量平均分子量:20,640、低分子シロキサン含有率27質量%、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合は49mol%であった。
【0042】
[耐熱性試験]
実施例1で得られた、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合が1.3mol%の、両末端トリメチルシリル基封鎖型オルガノポリシロキサンの耐熱性試験を実施した。比較対象は、実施例1と同様のシロキサン組成で、ジフェニルシロキシ単位が連続した配列の割合が40~50mol%の、KF-54(信越化学工業社製)を使用した。空気雰囲気下、300℃で12時間加熱したのちの重量減量率を算出したところ、KF-54は25%であったのに対し、実施例1のオルガノポリシロキサンは20%であった。