(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】木質バイオマス燃料発電システム及び木質バイオマス燃料発電方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/04 20060101AFI20240513BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F23G5/04 D ZAB
F23L15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018213060
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-09-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広地 芳一
(72)【発明者】
【氏名】上田 毅
(72)【発明者】
【氏名】宮内 博之
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊朗
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】間中 耕治
【審判官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145293(JP,A)
【文献】特開2012-83031(JP,A)
【文献】特開平6-82002(JP,A)
【文献】特開平10-339416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231247(US,A1)
【文献】特開2013-117336(JP,A)
【文献】特開2016-173245(JP,A)
【文献】特表2018-524551(JP,A)
【文献】特開2010-223572(JP,A)
【文献】特開2006-213580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/04
F23L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマスを燃料として用いて発電を行う木質バイオマス燃料発電システムであって、
燃料を乾燥させる乾燥機と、
燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、
前記乾燥機によって乾燥した前記燃料を、前記燃焼用空気を用いて燃焼させるボイラーと、
前記ボイラーによって加熱された蒸気により駆動される少なくとも1つの発電用蒸気タービンと、
を備え、
前記発電用蒸気タービンは、前記ボイラーから供給された前記蒸気によって駆動される高圧蒸気タービンと、前記ボイラーから前記高圧蒸気タービンを介して供給された前記蒸気によって駆動される多段抽気型の低圧蒸気タービンと、を含み、
前記低圧蒸気タービンが駆動される前記蒸気は、前記高圧蒸気タービンが駆動される前記蒸気よりも低圧であり、
前記乾燥機は、前記
低圧蒸気タービンから取り出された第1の抽出蒸気の熱により前記燃料を乾燥させ、
前記空気予熱器は、前記
低圧蒸気タービンから
前記第1の抽出蒸気とは異なる抽気ラインを通して取り出され、且つ前記第1の抽出蒸気よりも高温の第2の抽出蒸気の熱により前記燃焼用空気を予熱することを特徴とする木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項2】
乾燥用空気を供給する送風機と、
前記第1の抽出蒸気および前記乾燥用空気の熱交換により、前記乾燥機に導入される前記乾燥用空気を加熱する熱交換器と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項3】
前記乾燥機に導入される前記乾燥用空気の温度が120℃~150℃の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項4】
前記乾燥機は、前記燃料を収容すると共に前記乾燥用空気が導入される収容容器と、前記燃料の水分を含む前記乾燥用空気を前記収容容器から排出するベントとを備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項5】
前記空気予熱器から前記ボイラーに導入される前記燃焼用空気の温度が200℃~250℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項6】
前記発電用蒸気タービンに付設された復水器を更に備え、
前記乾燥機において前記燃料の乾燥に用いられた前記第1の抽出蒸気が、前記復水器に循環されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項7】
前記燃料は、前記乾燥機による乾燥前に40~50重量%の水分を含み、かつ前記乾燥機による乾燥後に20重量%以下の水分を含むことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の木質バイオマス燃料発電システム。
【請求項8】
木質バイオマスを燃料として用いて発電を行う木質バイオマス燃料発電方法であって、
燃料を乾燥させる乾燥工程と、
燃焼用空気を予熱する空気予熱工程と、
前記乾燥工程によって乾燥した前記燃料を、
ボイラーによって前記燃焼用空気を用いて燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程における燃焼熱によって加熱された蒸気により少なくとも1つの発電用蒸気タービンを駆動する発電工程と、
を有し、
前記発電用蒸気タービンは、前記ボイラーから供給された前記蒸気によって駆動される高圧蒸気タービンと、前記ボイラーから前記高圧蒸気タービンを介して供給された前記蒸気によって駆動される多段抽気型の低圧蒸気タービンと、を含み、
前記低圧蒸気タービンが駆動される前記蒸気は、前記高圧蒸気タービンが駆動される前記蒸気よりも低圧であり、
前記乾燥工程では、前記
低圧蒸気タービンから取り出された第1の抽出蒸気の熱により前記燃料を乾燥させ、
前記空気予熱工程では、前記
低圧蒸気タービンから
前記第1の抽出蒸気とは異なる抽気ラインを通して取り出され、且つ前記第1の抽出蒸気よりも高温の第2の抽出蒸気の熱により前記燃焼用空気を予熱することを特徴とする木質バイオマス燃料発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質チップ及び木質ペレットなどの木質バイオマスを燃料として用いて発電を行う木質バイオマス燃料発電システム及び木質バイオマス燃料発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室効果ガスの排出抑制などの観点から、化石燃料に代えて、エネルギー源として永続的に利用できると考えられる再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、及びバイオマス等)を利用した発電システムの導入が進められている。特に、木質バイオマスは、太陽光や風力のような気象条件による変動がないという利点を有していることから、近年、木質バイオマスを燃料として用いて発電を行う木質バイオマス発電システムが注目されている。
【0003】
木質バイオマス発電システムでは、ボイラーでの燃焼効率を高めるために、燃料として用いる木質バイオマスに含まれる水分量を前処理等によって低く抑えることが望ましい。そこで、例えば、ボイラーの火炉内で燃焼させる石炭の副燃料として使用するバイオマス燃料の乾燥方法であって、火炉内で発生した燃焼排ガスを抽出し、これを、火炉内に供給する前のバイオマス燃料を乾燥させるための熱源として使用し、その使用後の燃焼排ガスを冷却して水分を回収した後に燃焼用空気に混合して火炉内に供給する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のような従来技術では、燃料(木質バイオマス)の乾燥に比較的高温(例えば、350~400℃)の燃焼排ガスを使用し、さらに、その使用後の燃焼排ガスを冷却して水分を回収した後に燃焼用空気に混合して火炉内に供給するため、燃料の乾燥や燃焼用に利用した燃焼排ガス(燃焼熱)は発電には直接利用されず、発電に寄与しない熱エネルギーの割合が増大するという問題がある。特に、木質バイオマスを発電システムの主燃料として用いる場合や、比較的大きな発電出力を必要とする場合には、そのような問題はより顕著になる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、木質バイオマスの燃焼熱を効率的に利用することを可能とする木質バイオマス燃料発電システム及び木質バイオマス燃料発電方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面では、木質バイオマスを燃料として用いて発電を行う木質バイオマス燃料発電システム(1)であって、燃料を乾燥させる乾燥機(11)と、燃焼用空気を予熱する空気予熱器(32)と、前記乾燥機によって乾燥した前記燃料を、前記燃焼用空気を用いて燃焼させるボイラー(31)と、前記ボイラーによって加熱された蒸気により駆動される少なくとも1つの発電用蒸気タービン(101、102)と、を備え、前記乾燥機は、前記発電用蒸気タービンから取り出された第1の抽出蒸気の熱により前記燃料を乾燥させ、前記空気予熱器は、前記発電用蒸気タービンから取り出され、且つ前記第1の抽出蒸気よりも高温の第2の抽出蒸気の熱により前記燃焼用空気を予熱することを特徴とする。
【0008】
これによると、発電用蒸気タービンから抽出された異なる温度の複数の抽出蒸気を、それぞれ木質バイオマスの乾燥および木質バイオマスを燃焼させる燃焼用空気の予熱に用いることにより、システム内において木質バイオマスの燃焼熱を効率的に利用することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の側面では、乾燥用空気を供給する送風機(12)と、前記第1の抽出蒸気および前記乾燥用空気の熱交換により、前記乾燥機に導入される前記乾燥用空気を加熱する熱交換器(13)と、を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
これによると、簡易な構成により、発電用蒸気タービンから抽出された抽出蒸気を木質バイオマスの乾燥に用いることができる。
【0011】
本発明の第3の側面では、前記乾燥機に導入される前記乾燥用空気の温度が120℃~150℃の範囲内にあることを特徴とする。
【0012】
これによると、乾燥用空気を適切な温度範囲(120℃~150℃)に設定することにより、木質バイオマスの乾燥用に抽出蒸気を効率的に利用することが可能となる。
【0013】
本発明の第4の側面では、前記乾燥機は、前記燃料を収容すると共に前記乾燥用空気が導入される収容容器(22)と、前記燃料の水分を含む前記乾燥用空気を前記収容容器から排出するベント(23)とを備えたことを特徴とする。
【0014】
これによると、送風機から供給される乾燥用空気を用いる簡易な構成により、木質バイオマスを効率的に乾燥させることが可能となる。
【0015】
本発明の第5の側面では、前記空気予熱器から前記ボイラーに導入される前記燃焼用空気の温度が200℃~250℃の範囲内にあることを特徴とする。
【0016】
これによると、燃焼用空気を適切な温度範囲(200℃~250℃)に設定することにより、燃焼用空気の予熱用に抽出蒸気を効率的にすることが可能となる。
【0017】
本発明の第6の側面では、前記発電用蒸気タービンは、より高圧の前記蒸気によって駆動される高圧蒸気タービン(101)と、前記高圧蒸気タービンを介して供給されたより低圧の前記蒸気によって駆動される低圧蒸気タービン(102)を含み、前記第1及び第2の抽出蒸気は、前記低圧蒸気タービンから取り出されることを特徴とする。
【0018】
これによると、高圧蒸気タービン及び低圧蒸気タービンを利用して発電を行う一方で、低圧蒸気タービンから抽出された異なる温度の複数の抽出蒸気において、より低温の蒸気を木質バイオマスの乾燥に利用し、かつより高温の蒸気を燃焼用空気の予熱に利用することにより、木質バイオマスの燃焼熱をより効率的に利用することが可能となる。
【0019】
本発明の第7の側面では、前記発電用蒸気タービンに付設された復水器(104)を更に備え、前記乾燥機において前記燃料の乾燥に用いられた前記第1の抽出蒸気が、前記復水器に循環されることを特徴とする。
【0020】
これによると、簡易な構成により、木質バイオマスの乾燥に用いた抽出蒸気を有効利用することが可能となる。
【0021】
本発明の第8の側面では、前記燃料は、前記乾燥機による乾燥前に40~50重量%の水分を含み、かつ前記乾燥機による乾燥後に20重量%以下の水分を含むことを特徴とする。
【0022】
これによると、木質バイオマスの乾燥前後の水分含有率を適切な範囲に設定することにより、木質バイオマスの乾燥および燃焼を効率的に実施することが可能となる。
【0023】
本発明の第9の側面では、木質バイオマスを燃料として用いて発電を行う木質バイオマス燃料発電方法であって、燃料を乾燥させる乾燥工程と、燃焼用空気を予熱する空気予熱工程と、前記乾燥工程によって乾燥した前記燃料を、前記燃焼用空気を用いて燃焼させる燃焼工程と、前記燃焼工程における燃焼熱によって加熱された蒸気により少なくとも1つの発電用蒸気タービン(101、102)を駆動する発電工程と、を有し、前記乾燥工程では、前記発電用蒸気タービンから取り出された第1の抽出蒸気の熱により前記燃料を乾燥させ、前記空気予熱工程では、前記発電用蒸気タービンから取り出され、且つ前記第1の抽出蒸気よりも高温の第2の抽出蒸気の熱により前記燃焼用空気を予熱することを特徴とする。
【0024】
これによると、発電用蒸気タービンから抽出された異なる温度の複数の抽出蒸気を、それぞれ木質バイオマスの乾燥および木質バイオマスを燃焼させる燃焼用空気の予熱に用いることにより、木質バイオマスの燃焼熱を効率的に利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明によれば、木質バイオマスの燃焼熱を効率的に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る木質バイオマス燃料発電システムの全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の木質バイオマス燃料発電システム及びその発電方法に関する実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は実施形態に係る木質バイオマス燃料発電システム1の概要を示す全体構成図である。
【0029】
木質バイオマス燃料発電システム1(以下、発電システム1という。)は、木質バイオマス(すなわち、木質チップ及び木質ペレットなどの木材由来の有機性資源(化石燃料を除く))を燃料とし、これを燃焼させることにより発電を行う。この発電システム1は、燃料を受け入れる受入設備2、燃料を燃焼させる燃焼設備3、及び燃焼設備3で発生する燃焼熱を利用して発電を行う発電設備4を備える。
【0030】
なお、発電システム1は、上記設備2-4に限らず、他の公知の設備(例えば、集塵設備、水処理設備)を備えることが可能である。また、発電システム1は、主燃料として木質バイオマスを使用するが、必要に応じて木質バイオマスに他の公知の燃料(化石燃料を含む)を副燃料として混合して使用することも可能である。
【0031】
次に、発電システム1における受入設備2の詳細について説明する。受入設備2は、燃料貯蔵庫9及び第1コンベヤ10、ならびに燃料を乾燥するための乾燥機11及び乾燥用送風機12を備える。
【0032】
燃料貯蔵庫9は、燃料運搬用の車両等(図示せず)から燃料を受け入れた燃料を貯蔵する。また、第1コンベヤ10は、燃料貯蔵庫26から排出される燃料を乾燥機11(後述する受入ホッパー21)に搬送する。
【0033】
乾燥機11は、受入ホッパー21、収容容器22、及びベント23を備える。また、乾燥機11には、収容容器22と乾燥用送風機12との間に配置された熱交換器13が付設されている。
【0034】
受入ホッパー21は、第1コンベヤ10によって搬送された燃料を受け入れる。この燃料は、木質チップ、木質ペレットその他の木質バイオマスのうちの1つか、またはそれらを複数混合したものである。木質ペレット(乾燥前)の水分含有率は、通常は10~15重量%程度である。また、木質チップ(乾燥前)の水分含有率は、通常は40~50重量%程度である。
【0035】
一般に、木質バイオマスの価格については、その水分含有率が高くなると、より安価となる傾向がある。したがって、発電システム1では、受入設備2で受け入れる木質バイオマス(乾燥前)の水分含有率を比較的高い範囲(例えば、40~50重量%)で適切に設定(制御)することにより、燃料の取得コストを低減することができる。
【0036】
収容容器22は、受入ホッパー21により受け入れられた燃料を収容する。収容容器22は、後述する乾燥用空気を内部に流通させることにより、収容した燃料を乾燥させる処理を行う。収容容器22での乾燥処理は、バッチ式で実施され、その底部から乾燥後の燃料が間歇的に排出される。ただし、収容容器22の乾燥処理は、連続式で実施することもできる。また、収容容器22は、燃料の乾燥を促進するための装置(例えば、収容した燃料を撹拌するための撹拌装置)を更に備えることができる。
【0037】
収容容器22における乾燥処理後の燃料の水分含有率は、例えば、20重量%以下とすることが好ましい。発電システム1では、受入設備2における木質バイオマスの乾燥後の水分含有率を適切な範囲(ここでは、20重量%以下)に設定(制御)することにより、木質バイオマスの乾燥及び燃焼設備3での燃焼を効率的に実施することが可能となる。
【0038】
ベント23は、燃料から除去された水分を含む収容容器22内の乾燥用空気を外部に排出する。
【0039】
乾燥用送風機12は、燃料を収容した収容容器22に対して乾燥用空気(ここでは、大気)を供給する。熱交換器13は、乾燥用送風機12から送出される乾燥用空気(常温)を、後に詳述する蒸気との熱交換により所定の温度まで加熱する。なお、乾燥用送風機12及び熱交換器13は、収容容器22と一体に設けてもよい。
【0040】
収容容器22に供給される乾燥用空気(加熱後)の温度は、120~150℃の範囲で設定(制御)することが好ましい。乾燥用空気の温度を120℃以上とすることで、燃料の乾燥不良を抑制することができ、また、乾燥用空気の温度を150℃以下とすることで、木質バイオマスの熱分解等を抑制することができる。
【0041】
また、受入設備2は、乾燥した燃料をボイラー31に供給するための第2コンベヤ25を備える。
【0042】
第2コンベヤ25は、乾燥機11から排出される燃料(乾燥後)を燃焼設備3(後述する燃料フィーダ51)に搬送する。
【0043】
なお、発電システム1では、1つの燃焼設備3に対して複数の受入設備2を設けることもできる。その場合、例えば、複数の受入設備2で互いに異なる燃料(例えば、比較的水分の高い木質チップ、比較的水分の低い木質ペレット)を受け入れ、燃焼設備3の稼働状況に応じて各受入設備2から燃焼設備3への燃料の供給量(各受入設備2間の供給割合)を調整することができる。これにより、燃焼設備3に供給する燃料の水分や発熱量の調整が容易となり、また、乾燥機11による乾燥処理の自由度も高まる。
【0044】
次に、発電システム1における燃焼設備3の詳細について説明する。燃焼設備3は、ボイラー31及び空気予熱器32を備える。
【0045】
ボイラー31は、燃焼室41、ボイラー本体42、サイクロン43、対流伝熱室44、シールポット45、及びFBHE(流動床式熱交換器)46を備える。
【0046】
燃焼室41は、受入設備2から供給された燃料を、空気予熱器32から供給される燃焼用空気によって燃焼させる。燃焼室41には、燃料フィーダ51が付設されている。燃料フィーダ51は、乾燥機11から第2コンベヤ25によって搬送された燃料を燃焼室41に供給する。燃焼室41で発生した排ガス(燃焼ガス)は、燃焼室41の上部に連なるボイラー本体42に送られる。
【0047】
また、燃焼室41には、補助燃料(ここでは、軽油)が貯留された燃料タンク52が付設されている。燃料タンク52の補助燃料は、ポンプ53により補助燃料供給ラインL1を通してバーナ54に供給される。バーナ54は、ボイラー31の起動時に、空気予熱器32から供給される燃焼用空気によって補助燃料を燃焼させ、これにより、燃料(木質バイオマス)を着火させる。なお、バーナ54は、ボイラー31の起動時に限らず、燃焼室41における燃料の燃焼状態に応じて適宜使用可能である。
【0048】
ボイラー本体42は、蒸発管61及び3次過熱器62を備える。蒸発管61は、ボイラー31に付設された蒸気ドラム63との間で蒸気を循環させる循環ラインL2に設置されている。また、3次過熱器62は、蒸気ドラム63から発電設備4(後述する高圧蒸気タービン101)に蒸気を供給する主蒸気ラインL3に設置されている。それら蒸発管61及び3次過熱器62を流れる蒸気は、ボイラー本体42を流れる排ガスとの熱交換によって加熱される。ボイラー本体42を通過した排ガスは、ボイラー本体42の下流側に連なるサイクロン43に送られる。
【0049】
サイクロン43は、排ガスの除塵(排ガスに含まれる飛灰の分離)を行う。また、サイクロン43は、主蒸気ラインL3に設置された1次過熱器65を備える。1次過熱器65を流れる蒸気は、サイクロン43を流れる排ガスとの熱交換によって加熱される。サイクロン43で除塵された排ガスは、その上部の出口管に連なる対流伝熱室44に送られる。一方、サイクロン43で排ガスから分離された飛灰を含む流れは、シールポット45に導入される。
【0050】
対流伝熱室44は、2次過熱器71、再熱器72、及びそれらの下流側に配置された節炭器73を備える。2次過熱器71は、主蒸気ラインL3に設置されている。また、再熱器72は、後述する高圧蒸気タービン101からの排出蒸気を低圧蒸気タービン102に供給するための排出蒸気ラインL4に設置されている。それら2次過熱器71、再熱器72、及び節炭器73を流れる蒸気は、対流伝熱室44を流れる排ガスとの熱交換によって加熱される。対流伝熱室44を通過した排ガスは、排出通路75を介して空気予熱器32に送られる。
【0051】
シールポット45では、主として飛灰からなる流れが飛灰輸送管81を介してFBHE46に送られる一方、主としてガスからなる流れがガス循環管82を介して燃焼室41に循環される。
【0052】
FBHE46は、主蒸気ラインL3に設置された4次過熱器85を備える。4次過熱器85を流れる蒸気は、飛灰輸送管81からの流れ(主として飛灰からなる)との熱交換により加熱される。
【0053】
このような構成により、蒸気ドラム63から発電設備4に供給される蒸気は、主蒸気ラインL3に設置された1次過熱器65、2次過熱器71、3次過熱器62、及び4次過熱器85を順に通過することにより加熱される。これにより、ボイラー31で発生した燃焼熱を発電設備4で利用することが可能となる。
【0054】
空気予熱器32は、第1伝熱管91及び第2伝熱管92が設けられた予熱器本体90を備える。第1伝熱管91及び第2伝熱管92は、燃焼設備3で使用される燃焼用空気を、予熱器本体90を流れる排ガスとの熱交換によってそれぞれ加熱する。第1燃焼用送風機93は、第1燃焼用空気ラインL5を介して第1伝熱管91に対して燃焼用空気を供給する。また、第2燃焼用送風機94は、第2燃焼用空気ラインL6を介して第2伝熱管92に対して燃焼用空気を供給する。
【0055】
また、空気予熱器32には、第1伝熱管91と第1燃焼用送風機93との間に配置された第1補助予熱器95が付設されている。第1補助予熱器95は、第1燃焼用送風機93から送出される燃焼用空気を、後に詳述する蒸気との熱交換により所定の温度まで加熱する。第1補助予熱器95で加熱された燃焼用空気は、第1伝熱管91において更に加熱された後、第1燃焼用空気ラインL5を介して燃焼室41に供給される。
【0056】
同様に、空気予熱器32には、第2伝熱管92と第2燃焼用送風機94との間に配置された第2補助予熱器96が付設されている。第2補助予熱器96は、第2燃焼用送風機94から送出される燃焼用空気を、後に詳述する蒸気との熱交換により所定の温度まで加熱する。第2補助予熱器96で加熱された燃焼用空気は、第2伝熱管92において更に加熱された後、第2燃焼用空気ラインL6を介してバーナ54に供給される。第2燃焼用送風機94による燃焼用空気の供給は、バーナ54の不使用時には停止することができる。
【0057】
空気予熱器32によって加熱された(すなわち、燃焼室41に供給される)燃焼用空気の温度は、200~250℃に設定(制御)することが好ましい。これにより、後述する低圧蒸気タービン102から抽出される比較的低温の蒸気を利用してボイラー31の効率を高めることができる。
【0058】
なお、図示は省略するが、ボイラー31(燃焼室41、対流伝熱室44、及びFBHE46等)及び空気予熱器32から排出される焼却灰や飛灰は、灰処理設備に送られる。また、空気予熱器32から排出される排ガスは、排ガス処理装置(窒素酸化物除去装置)や集塵器等を通って煙突から放散される。
【0059】
次に、発電システム1における発電設備4の詳細について説明する。
【0060】
発電設備4は、高圧蒸気タービン101、低圧蒸気タービン102、発電機103、復水器104、脱気器105、及び給水加熱器群(第1~第5給水加熱器106a~106e)を備える。
【0061】
高圧蒸気タービン101は、主蒸気ラインL3を介してボイラー31から供給される蒸気によって駆動される。高圧蒸気タービン101から抽気ラインL7を介して抽気された蒸気は、第4及び第5給水加熱器106d、106eに順に導入された後、脱気器105に送られる。
【0062】
一方、高圧蒸気タービン101の排出蒸気の一部は、上述の再熱器72が設けられた排出蒸気ラインL4を介して低圧蒸気タービン102に供給される。また、高圧蒸気タービン101の排出蒸気の一部は、排出蒸気ラインL4から分岐した分岐ラインL8を介して第4給水加熱器106dに導入された後、脱気器105に送られる。なお、高圧蒸気タービン101における抽気の位置や数は、上述の例に限らず変更することが可能である。
【0063】
低圧蒸気タービン102は、排出蒸気ラインL4を介して高圧蒸気タービン101から供給される蒸気によって駆動される。低圧蒸気タービン102は、多段抽気型の蒸気タービンであり、第1~第4抽気ラインL9a~L9dを介して異なる圧力の蒸気が抽出される。
【0064】
低圧蒸気タービン102から抽気された最も圧力の高いの高圧段(第1段)の蒸気は、第1抽気ラインL9aを介して脱気器105に送られる。また、次に圧力の高い第1の中圧段(第2段)の蒸気は、第2抽気ラインL9bを介して第3給水加熱器106c、第2給水加熱器106b、及び第1給水加熱器106aに順に導入される。また、次に圧力の高い第2の中圧段(第3段)の蒸気は、第3抽気ラインL9cを介して第2給水加熱器106b及び第1給水加熱器106aに順に導入される。最も圧力の低い低圧段(第4段)の蒸気は、第4抽気ラインL9dを介して第1給水加熱器106aに導入される。第1給水加熱器106aに導入された蒸気は、復水ラインL10を介して復水器104に送られる。なお、低圧蒸気タービン102における抽気の位置や数は、上述の例に限らず変更することが可能である。
【0065】
発電設備4には、第4抽気ラインL9dから分岐する乾燥空気用蒸気ラインL11及び第2抽気ラインL9bから分岐する加熱空気用蒸気ラインL12が設けられている。
【0066】
乾燥空気用蒸気ラインL11には、上述の熱交換器13が設けられており、乾燥空気用蒸気ラインL11の下流端は復水ラインL10に接続されている。これにより、乾燥空気用蒸気ラインL11を流れる蒸気(第1の抽出蒸気)は、ポンプ111により熱交換器13に導入された後、復水器104に送られる。乾燥空気用蒸気ラインL11を流れる蒸気の温度は、上述のように熱交換器13から収容容器22に供給される乾燥用空気の温度を120℃~150℃の範囲とすることが可能なように設定することが好ましい。
【0067】
加熱空気用蒸気ラインL12には、上述の第1補助予熱器95及び第2補助予熱器96が設けられており、加熱空気用蒸気ラインL12の下流端は脱気器105に接続されている。加熱空気用蒸気ラインL12を流れる蒸気(第2の抽出蒸気)は、ポンプ112により第1補助予熱器95及び第2補助予熱器96にそれぞれ導入された後、復水器104に送られる。加熱空気用蒸気ラインL12を流れる蒸気の温度は、上述のように空気予熱器32から燃焼室41に供給される燃焼用空気の温度を200~250℃を範囲とすることが可能なように設定することが好ましい。なお、第2補助予熱器96は、加熱空気用蒸気ラインL12の中間部に設けられたバイパスラインL12aに設けられている。
【0068】
復水器104は、第1再加熱ラインL13を介して脱気器105に接続されている。第1再加熱ラインL13の流れ(飽和水)は、ポンプ115により第1~第3給水加熱器106a~106cに順に送られ、それら第1~第3給水加熱器106a~106cにおいて低圧蒸気タービン102からの蒸気との熱交換によって順に加熱された後、脱気器105に供給される。
【0069】
脱気器105は、第2再加熱ラインL14を介して蒸気ドラム63に接続されている。第2再加熱ラインL14の流れは、ポンプ116により第4及び第5給水加熱器106d、106eに順に送られ、それら第4及び第5給水加熱器106d、106eにおいて高圧蒸気タービン101からの蒸気との熱交換によって順に加熱された後、蒸気ドラム63に供給される。
【0070】
発電機103は、高圧蒸気タービン101及び低圧蒸気タービン102(発電用蒸気タービン)の駆動軸に連結されており、それらによって駆動される。発電システム1における発電用蒸気タービンの出力は、比較的高く設定することが好ましく、例えば、50MW~100MW程度に設定するとよい。
【0071】
このように、発電システム1では、低圧蒸気タービン102から抽出された異なる温度の複数の抽出蒸気を、それぞれ木質バイオマスの乾燥および木質バイオマスを燃焼させる燃焼用空気の予熱に用いることにより、システム内において木質バイオマスの燃焼熱を効率的に利用することが可能となる。その結果、発電システム1では、木質バイオマスの乾燥や燃焼用空気の予熱にボイラーの排ガスを利用する場合や、蒸気ドラムの蒸気をそのまま(すなわち、発電用蒸気タービンを介することなく)利用する場合と比べて、ボイラーのコンパクト化や、システムの運転コストを低減することが可能となる。
【0072】
また、発電システム1では、複数の発電用蒸気タービンを利用して発電を行う一方で、より低圧の蒸気タービンから抽出された異なる温度の複数の抽出蒸気において、より低温の蒸気を木質バイオマスの乾燥に利用し、かつより高温の蒸気を燃焼用空気の予熱に利用することにより、木質バイオマスの燃焼熱をより効率的に利用することが可能となる。
【0073】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上述の実施形態に示した本発明に係る木質バイオマス燃料発電システム及び木質バイオマス燃料発電方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【0074】
例えば、上述の例では、第4抽気ラインL9dの蒸気を乾燥用空気の加熱用の蒸気として利用し、第2抽気ラインL9bの蒸気を燃焼用空気の予熱用の蒸気として用いたが、これにかぎらず、低圧蒸気タービン102における抽気の位置や数の変更に応じて他の蒸気を乾燥用空気の加熱用の蒸気または燃焼用空気の予熱用の蒸気として用いることができる。
【0075】
また、発電システム1では、複数の抽気ラインからの蒸気を、乾燥用空気の加熱用の蒸気または燃焼用空気の予熱用の蒸気として使用可能な構成とし、加熱または予熱の程度に応じてそれら複数の抽気ラインからの蒸気の供給量(供給バランス)を制御してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 :木質バイオマス燃料発電システム
2 :受入設備
3 :燃焼設備
4 :発電設備
9 :燃料貯蔵庫
10 :第1コンベヤ
11 :乾燥機
12 :乾燥用送風機
13 :熱交換器
21 :受入ホッパー
22 :収容容器
23 :ベント
25 :第2コンベヤ
31 :ボイラー
32 :空気予熱器
41 :燃焼室
42 :ボイラー本体
43 :サイクロン
44 :対流伝熱室
45 :シールポット
51 :燃料フィーダ
52 :燃料タンク
53 :ポンプ
54 :バーナ
61 :蒸発管
62 :3次過熱器
63 :蒸気ドラム
65 :1次過熱器
71 :2次過熱器
72 :再熱器
73 :節炭器
75 :排出通路
81 :飛灰輸送管
82 :ガス循環管
85 :4次過熱器
90 :予熱器本体
91 :第1伝熱管
92 :第2伝熱管
93 :第1燃焼用送風機
94 :第2燃焼用送風機
95 :第1補助予熱器
96 :第2補助予熱器
101:高圧蒸気タービン
102:低圧蒸気タービン
103:発電機
104:復水器
105:脱気器
106a~106e:第1~第5給水加熱器