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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】加熱用チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20240513BHJP
   A21D 13/22 20170101ALI20240513BHJP
【FI】
A23G1/32
A21D13/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019171460
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021045101
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 まどか
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有紗
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/121327(WO,A1)
【文献】特開2014-050324(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141733(WO,A1)
【文献】特開2015-023814(JP,A)
【文献】特開2016-214267(JP,A)
【文献】特開2004-222571(JP,A)
【文献】特開2000-270774(JP,A)
【文献】特開2014-230490(JP,A)
【文献】特開2017-029115(JP,A)
【文献】七訂 食品成分表 2016 本表編,2016年04月01日,p.184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレート中の油脂含有量が20~38質量%、チョコレート中の乳糖含有量が5~28質量%、糖質中の乳糖含有量が23.0~50質量%である加熱用チョコレートであって、糖質中の乳糖含有量に対するチョコレート中のレシチン含有量の比が0.018以上である加熱用チョコレート(ただし、下記油脂性菓子生地、下記チョコレートA及び下記チョコレートBを除く)。
油脂性菓子生地:下記ベース生地90重量部に、下記添加物質10重量部を混合した油脂性菓子生地。
ベース生地:カカオマスを6重量%、全粉乳を26重量%、砂糖を44.4重量%、ココアバターを23重量%、レシチンを0.6重量%含有するベース生地。
添加物質:イソマルツロース-水和物、マンニトール、還元パラチノース又はスクロース。
チョコレートA:カカオマスを10質量部、全脂粉乳を15質量部、ソルビトールを2質量部、イソマルツロースを2質量部、砂糖を40質量部、乳糖を6質量部、油脂を25質量部、レシチンを0.4質量部配合したチョコレート。
チョコレートB:カカオマスを10質量部、全脂粉乳を15質量部、ソルビトールを3質量部、イソマルツロースを3質量部、砂糖を40質量部、乳糖を4質量部、油脂を25質量部、レシチンを0.4質量部配合したチョコレート。
【請求項2】
チョコレート中のレシチン含有量が0.3~4質量%である請求項1に記載の加熱用チョコレート。
【請求項3】
チョコレート中の糖質含有量が40~65質量%である請求項1又は請求項2に記載の加熱用チョコレート。
【請求項4】
前記加熱用チョコレートがソフトチョコレートである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の加熱用チョコレート。
【請求項5】
前記加熱用チョコレートがベーカリー食品用生地と共に加熱される請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の加熱用チョコレート。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の加熱用チョコレートを加熱して得られる加熱チョコレート。
【請求項7】
前記加熱チョコレートがベーカリー食品用生地と共に加熱された請求項6に記載の加熱チョコレート。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、加熱して得られるベーカリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用チョコレートに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、菓子の中でも一般消費者に広く好まれている商品である。チョコレートには、様々な食感の商品が存在しており、板チョコのような硬いチョコレート以外に、軟らかくてクリーム状のチョコレートが存在する。軟らかくてクリーム状のチョコレートは、通常、ソフトチョコレートと呼ばれている。ソフトチョコレートとしては、特許文献1~4等のソフトチョコレートが提案されている。
【0003】
ソフトチョコレートは、軟らかくするために、比較的多量の液状油が配合されている。そのため、ソフトチョコレートは、油脂が分離しやすいという問題があった。
【0004】
また、ソフトチョコレートは、ベーカリー食品と組み合わせて使用されることが多い。ソフトチョコレートがベーカリー食品と組み合わせて使用される場合、ソフトチョコレートは加熱前のベーカリー食品用生地と共に加熱されることが多い。ソフトチョコレートが加熱前のベーカリー食品用生地と共に加熱される場合、加熱後のソフトチョコレートは硬くてガリガリになることがあった。更に、ソフトチョコレートが加熱前のベーカリー食品用生地と共に加熱される場合、加熱後のソフトチョコレートはベーカリー食品に染み込んだり、ベーカリー食品の外に染み出してしまうことがあった。そのため、ベーカリー食品用生地と共に加熱されて使用されるソフトチョコレートは、耐熱性を有することが必要であった。
【0005】
以上のようなことから、油脂が分離しにくい及び耐熱性を有するソフトチョコレートの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-4657号公報
【文献】特開2003-313582号公報
【文献】特開2006-115724号公報
【文献】特開2008-228641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、油脂が分離しにくい及び耐熱性を有するソフトチョコレートに適した加熱用チョコレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、チョコレート中の油脂含有量、糖質中の乳糖含有量及び糖質中の乳糖含有量に対するチョコレート中のレシチン含有量の比を特定値とすることにより、本課題が解決できることが見いだされた。これにより、本発明が完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明は、チョコレート中の油脂含有量が20~38質量%、チョコレート中の乳糖含有量が5~28質量%、糖質中の乳糖含有量が23.0~50質量%である加熱用チョコレートであって、糖質中の乳糖含有量に対するチョコレート中のレシチン含有量の比が0.018以上である加熱用チョコレート(ただし、下記油脂性菓子生地、下記チョコレートA及び下記チョコレートBを除く)である。
油脂性菓子生地:下記ベース生地90重量部に、下記添加物質10重量部を混合した油脂性菓子生地。
ベース生地:カカオマスを6重量%、全粉乳を26重量%、砂糖を44.4重量%、ココアバターを23重量%、レシチンを0.6重量%含有するベース生地。
添加物質:イソマルツロース-水和物、マンニトール、還元パラチノース又はスクロース。
チョコレートA:カカオマスを10質量部、全脂粉乳を15質量部、ソルビトールを2質量部、イソマルツロースを2質量部、砂糖を40質量部、乳糖を6質量部、油脂を25質量部、レシチンを0.4質量部配合したチョコレート。
チョコレートB:カカオマスを10質量部、全脂粉乳を15質量部、ソルビトールを3質量部、イソマルツロースを3質量部、砂糖を40質量部、乳糖を4質量部、油脂を25質量部、レシチンを0.4質量部配合したチョコレート。
本発明の第2の発明は、チョコレート中のレシチン含有量が0.3~4質量%である第1の発明に記載の加熱用チョコレートである。
本発明の第3の発明は、チョコレート中の糖質含有量が40~65質量%である第1の発明又は第2の発明に記載の加熱用チョコレートである。
本発明の第4の発明は、前記加熱用チョコレートがソフトチョコレートである第1の発明~第3の発明のいずれか1つの発明に記載の加熱用チョコレートである。
本発明の第5の発明は、前記加熱用チョコレートがベーカリー食品用生地と共に加熱される第1の発明~第4の発明のいずれか1つの発明に記載の加熱用チョコレートである。
本発明の第6の発明は、第1の発明~第5の発明のいずれか1つの発明に記載の加熱用チョコレートを加熱して得られる加熱チョコレートである。
本発明の第7の発明は、前記加熱チョコレートがベーカリー食品用生地と共に加熱された第6の発明に記載の加熱チョコレートである。
本発明の第8の発明は、第1の発明~第5の発明のいずれか1つの発明に記載の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、加熱して得られるベーカリー食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、油脂が分離しにくい及び耐熱性を有するソフトチョコレートに適した加熱用チョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の油脂含有量が20~38質量%、糖質中の乳糖含有量が5~50質量%である加熱用チョコレートであって、糖質中の乳糖含有量に対するチョコレート中のレシチン含有量の比が0.018以上である。
【0012】
本発明でチョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上で規定されたチョコレートに限定されない。本発明でチョコレートとは、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含有しない食品のことである。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、好ましくは水分が3質量%以下である。
【0013】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の油脂含有量が20~38質量%であり、好ましくは23~36質量%であり、より好ましくは25~34質量%である。チョコレート中の油脂含有量が前記範囲であると、油脂が分離しにくい加熱用チョコレートが得られる。なお、本発明で油脂は、チョコレートに含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分である。例えば、チョコレートがカカオマス、全脂粉乳、油脂aを含む場合、油脂は、カカオマスに含まれるココアバターと、全脂粉乳に含まれる乳脂と、油脂aとの混合油である。すなわち、本発明で油脂は、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)を含む。
【0014】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートの製造に使用される油脂は、一般的にチョコレートの製造に使用される食用油脂であれば、特に制限されない。チョコレートの製造に使用される食用油脂としては、例えば、ココアバター、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)等が挙げられる。これらの食用油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。
【0015】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の油脂の固体脂含量が好ましくは10℃で1~40%、20℃で1~25%、30℃で0~15%あり、より好ましくは10℃で2~25%、20℃で2~20%、30℃で0~10%あり、さらに好ましくは10℃で2~20%、20℃で2~10%、30℃で0~5%ある。
【0016】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の糖質含有量が好ましくは40~65質量%であり、より好ましくは43~63質量%であり、さらに好ましくは45~60質量%である。なお、本発明で糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。
【0017】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類、デキストリンであり、より好ましくは砂糖、乳糖、デキストリンである。
【0018】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の乳糖含有量が好ましくは3~30質量%であり、より好ましくは5~28質量%であり、さらに好ましくは7~25質量%である。
【0019】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の砂糖含有量が好ましくは25~55質量%であり、より好ましくは28~52質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%である。
【0020】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、糖質中の乳糖含有量が5~50質量%であり、好ましくは12~48質量%であり、より好ましくは14~43質量%である。糖質中の乳糖含有量が前記範囲であると、耐熱性を有する加熱用チョコレートが得られる。なお、本発明で糖質中の乳糖含有量とは、チョコレートに含まれる糖質中の乳糖の含有量のことである(例えば、チョコレートが砂糖を25質量%、乳糖を25質量%含有する場合、糖質中の乳糖含有量は50質量%である。)。また、本発明でチョコレートが耐熱性を有するとは、チョコレートをベーカリー食品用生地と共に加熱した場合に、チョコレートの性状の変化、チョコレートのベーカリー食品への染み出しが少ないことである。また、本発明でベーカリー食品用生地は、穀粉、油脂組成物、砂糖、乳製品、卵、食塩、水等の原料を捏ね上げることで得られる焼成等の加熱前の生地のことである。
【0021】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中のレシチン類含有量が好ましくは0.3~4質量%であり、より好ましくは0.5~2質量%であり、さらに好ましくは0.5~1質量%である。なお、本発明でレシチン類は、レシチンの他に、リゾレシチン、酵素分解レシチン等のレシチンを加工して得られる加工レシチンを含む。
【0022】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートの製造に使用されるレシチン類は、好ましくはレシチンであり、より好ましくは大豆レシチンである。
【0023】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、糖質中の乳糖含有量に対するチョコレート中のレシチン含有量の比(チョコレート中のレシチン含有量/糖質中の乳糖含有量)が0.018以上であり、好ましくは0.018~0.100であり、より好ましくは0.020~0.080である。糖質中の乳糖含有量に対するチョコレート中のレシチン含有量の比が前記範囲であると、耐熱性を有する加熱用チョコレートが得られる。
【0024】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート中の無脂カカオ固形分含有量が好ましくは3~25質量%であり、より好ましくは5~23質量%であり、さらに好ましくは7~20質量%である。なお、本発明で無脂カカオ固形分とは、カカオ豆、カカオニブ、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ分から油脂、水分を除いた固形分のことである。また、チョコレート中の無脂カカオ固形分含有量は、カカオ分を配合することで調整することができる。
【0025】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、油脂、糖質、レシチン類、カカオ分以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0026】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、従来公知のチョコレートの製造方法で製造することができる。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、例えば、油脂、砂糖、乳化剤等を原料とし、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造される。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。
【0027】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、加熱して使用される。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、チョコレート自体を加熱して使用することができる。また、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、ベーカリー食品用生地と共に加熱して使用することもできる。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、好ましくはベーカリー製品生地と共に加熱して使用される。加熱用チョコレートを加熱する手段としては、焼成、蒸す、揚げる(フライ)、マイクロ波(電子レンジ)等が挙げられる。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートを加熱する手段は、好ましくは焼成である。
【0028】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、油脂が分離しにくい及び耐熱性を有するソフトチョコレートに適している。従って、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、好ましくはソフトチョコレートである。なお、本発明でソフトチョコレートとは、25℃での性状が、可塑性があって、カスタードクリームのようなクリーム状で、軟らかいチョコレートのことである。ソフトチョコレートは、一般的にチョコレートクリームと呼ばれることもある。
【0029】
本発明の実施の形態の加熱用チョコレートは、好ましくはノンテンパリング型チョコレートである。
【0030】
本発明の実施の形態の加熱チョコレートは、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートを加熱して得られるチョコレートである。本発明で加熱チョコレートとは、チョコレートを加熱して得られる加熱済のチョコレートのことである。本発明の実施の形態の加熱チョコレートは、チョコレート自体を加熱することで得られる。また、本発明の実施の形態の加熱チョコレートは、チョコレートをベーカリー食品用生地と共に加熱することでも得られる。本発明の実施の形態の加熱チョコレートは、好ましくはベーカリー食品用生地と共に加熱されたチョコレートである。
【0031】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、加熱して得られる。なお、本発明でベーカリー食品とは、ベーカリー食品用生地を、加熱することで得られるベーカリー食品のことである。
チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせる手段としては、包む、巻く、混合、接着、被覆、挟む、注入、埋没、トッピング等が挙げられる。また、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを加熱する手段としては、焼成、蒸す、揚げる(フライ)、マイクロ波(電子レンジ)等が挙げられる。本発明の実施の形態の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを加熱する手段は、好ましくは焼成である。
【0032】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、例えば、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン等の焼き菓子、バターケーキ類(パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等)、スポンジケーキ類(ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキ等)、シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフル等の洋生菓子、菓子パン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン等のパンである。本発明の実施の形態のベーカリー食品は、好ましくはクッキー、パイである。
【0033】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて加熱すること以外、従来公知のベーカリー食品の製造方法で製造することができる。
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態の加熱用チョコレートと、ベーカリー食品用生地とを組み合わせて、好ましくは140~210℃、8~45分間加熱し、より好ましくは150~200℃、10~40分間加熱することで製造する。
【0034】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、チョコレートが耐熱性を有する。
【実施例
【0035】
次に実施例により本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0036】
〔チョコレートの評価1〕
表1に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した。得られた全てのチョコレートは、25℃での性状が、可塑性があって、カスタードクリームのようなクリーム状で、軟らかく、ソフトチョコレートであった。また、得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
各チョコレートを5℃、15℃、25℃で60日間保存し、油脂の分離の有無を評価した。評価結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から分かるように、実施例のチョコレートは、油脂の分離が無いか、25℃で油脂の分離が若干あっても問題ない程度だった。
一方、表1から分かるように、比較例のチョコレートは、25℃で油脂の分離があった。
【0039】
〔チョコレートの評価2〕
表2~3に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した。得られた全てのチョコレートは、25℃での性状が、可塑性があって、カスタードクリームのようなクリーム状で、軟らかく、ソフトチョコレートであった。また、得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
各チョコレート8gをクッキー生地(クッキー生地は、無塩バター85.5g、上白糖85.5g、全卵34.2g、アーモンドプードル34.2g、薄力粉159.6g、ベーキングパウダー1.14g、食塩0.58gの配合で、シュガーバッター法により調製した。)12gで包餡し、オーブン(上火170℃、下火160℃)で16分間焼成することで、チョコレート入りクッキーを製造した。焼成後のチョコレート入りクッキーのチョコレートの性状及びチョコレートのクッキーへの染み出しを下記評価基準により評価した。チョコレートの性状及びチョコレートのクッキーへの染み出しの評価結果が共に○又は△の場合、チョコレートは耐熱性を有すると判断した。評価結果を表2~3に示した。
【0040】
<チョコレートの性状の評価基準>
○:チョコレートが軟らかい。
△:チョコレートが少し硬くなっている。
×:チョコレートが硬くてガリガリになっている。
【0041】
<チョコレートの染み出しの評価基準>
○:チョコレートがほとんど染み出していない。
△:チョコレートが少し染み出している。
×:チョコレートがかなり染み出している。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表2~3から分かるように、実施例のチョコレートは耐熱性を有していた。
一方、表2から分かるように、比較例のチョコレートは耐熱性を有していなかった。
【0045】
〔チョコレートの評価3〕
表4に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した。得られた全てのチョコレートは、25℃での性状が、可塑性があって、カスタードクリームのようなクリーム状で、軟らかく、ソフトチョコレートであった。また、得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
各チョコレート8gをクッキー生地(クッキー生地は、無塩バター85.5g、上白糖85.5g、全卵34.2g、アーモンドプードル34.2g、薄力粉159.6g、ベーキングパウダー1.14g、食塩0.58gの配合で、シュガーバッター法により調製した。)12gで包餡し、オーブン(上火170℃、下火160℃)で16分間焼成することで、チョコレート入りクッキーを製造した。焼成後のチョコレート入りクッキーのチョコレートの性状及びチョコレートのクッキーへの染み出しを上記評価基準により評価した。チョコレートの性状及びチョコレートのクッキーへの染み出しの評価結果が共に○又は△の場合、チョコレートは耐熱性を有すると判断した。評価結果を表4に示した。
6cm×15cmにカットした市販の冷凍パイ生地に、各チョコレート10gを絞り、冷凍パイ生地を半分に折り畳み、オーブン(上火190℃、下火180℃)で33分間焼成することで、チョコレート入りパイを製造した。焼成後のチョコレート入りパイのチョコレートの性状及びチョコレートのパイへの染み出しを上記評価基準により評価した。チョコレートの性状及びチョコレートのパイへの染み出しの評価結果が共に○又は△の場合、チョコレートは耐熱性を有すると判断した。評価結果を表4に示した。
【0046】
【表4】
【0047】
表4から分かるように、実施例のチョコレートは耐熱性を有していた。
一方、表4から分かるように、比較例のチョコレートは耐熱性を有していなかった。
【0048】
〔チョコレートの評価4〕
表5~6に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した。得られた全てのチョコレートは、25℃での性状が、可塑性があって、カスタードクリームのようなクリーム状で、軟らかく、ソフトチョコレートであった。また、得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
6cm×15cmにカットした市販の冷凍パイ生地に、各チョコレート10gを絞り、冷凍パイ生地を半分に折り畳み、オーブン(上火190℃、下火180℃)で33分間焼成することで、チョコレート入りパイを製造した。焼成後のチョコレート入りパイのチョコレートの性状及びチョコレートのパイへの染み出しを上記評価基準により評価した。チョコレートの性状及びチョコレートのパイへの染み出しの評価結果が共に○又は△の場合、チョコレートは耐熱性を有すると判断した。評価結果を表5~6に示した。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
表5~6から分かるように、実施例のチョコレートは耐熱性を有していた。
一方、表5~6から分かるように、比較例のチョコレートは耐熱性を有していなかった。
【0052】
〔チョコレートの評価5〕
表7に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した。得られた全てのチョコレートは、25℃での性状が、可塑性があって、カスタードクリームのようなクリーム状で、軟らかく、ソフトチョコレートであった。また、得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
各チョコレート8gをクッキー生地(クッキー生地は、無塩バター85.5g、上白糖85.5g、全卵34.2g、アーモンドプードル34.2g、薄力粉159.6g、ベーキングパウダー1.14g、食塩0.58gの配合で、シュガーバッター法により調製した。)12gで包餡し、オーブン(上火170℃、下火160℃)で16分間焼成することで、チョコレート入りクッキーを製造した。焼成後のチョコレート入りクッキーのチョコレートの性状及びチョコレートのクッキーへの染み出しを上記評価基準により評価した。チョコレートの性状及びチョコレートのクッキーへの染み出しの評価結果が共に○又は△の場合、チョコレートは耐熱性を有すると判断した。評価結果を表7に示した。
【0053】
【表7】
【0054】
表7から分かるように、実施例のチョコレートは耐熱性を有していた。