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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020027385
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021132156
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160971(JP,A)
【文献】特開2006-289388(JP,A)
【文献】特開2019-176079(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176715(WO,A1)
【文献】特開2019-220657(JP,A)
【文献】特開2017-107921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト用金属パターンが形成された分割予定ラインによって複数のデバイスが区画され表面に形成されたウエーハであって、該ウエーハの分割予定ラインの内部には、該テスト用金属パターンと、該テスト用金属パターンに隣接するデバイスとを、ウエーハの表面近傍の内部で電気的に接続する回路情報が形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの裏面から所定の深さに位置付けて照射して複数の改質層を分割予定ラインに沿って上下方向に重ねて形成する改質層形成工程と、
ウエーハに外力を付与し分割予定ラインの内部に形成された改質層を起点として個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
を少なくとも含み、
該改質層形成工程において、後に照射するレーザー光線の集光点を先に形成した改質層に上下方向で一部重ねて位置付け照射する際のレーザー光線の平均出力は、該集光点に改質層を形成しつつ、先に分割予定ラインに沿って形成された改質層で後に照射されるレーザー光線が散乱して散乱光を形成して、該散乱光によりウエーハの表面近傍に形成された該テスト用金属パターンと該デバイスとを接続する回路情報を破壊し、且つ、該レーザー光線の照射位置に隣接するデバイスに破壊が及ばない範囲で設定される出力であるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該集光点のスポット形状を楕円形に形成し該楕円形の長軸を分割予定ラインに沿って位置付ける請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスト用金属パターンが形成された分割予定ラインによって複数のデバイスが区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、分割予定ラインに対してTEG(Test Element Group)と称されるデバイスの特性を検査するためのテスト用金属パターンが形成されているウエーハを個々のデバイスチップに分割するに際し、ウエーハの表面側から切削ブレードによって、又はレーザー光線の照射によって、該TEGと該デバイスとを接続する配線を含む回路情報が残らないようにTEGそのものを破壊して除去するTEG除去工程と、該TEG除去工程の後に、分割予定ラインに沿ってレーザー加工、又はダイシング加工を実施して分割起点となる改質層、又は分割溝を形成する工程と、を実施するウエーハの加工方法が提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-72986号公報
【文献】特開2005-21940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1、2に記載された技術によってウエーハを個々のデバイスチップに分割する場合は、上記したTEG除去工程を実施した後、ウエーハに対し改めて分割起点、又は分割溝を形成する工程を実施する必要があり、生産性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、生産性を悪化させずに分割起点を形成すると共にTEGに係る回路情報を破壊することができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、テスト用金属パターンが形成された分割予定ラインによって複数のデバイスが区画され表面に形成されたウエーハであって、該ウエーハの分割予定ラインの内部には、該テスト用金属パターンと、該テスト用金属パターンに隣接するデバイスとを、ウエーハの表面近傍の内部で電気的に接続する回路情報が形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの裏面から所定の深さに位置付けて照射して複数の改質層を分割予定ラインに沿って上下方向に重ねて形成する改質層形成工程と、ウエーハに外力を付与し分割予定ラインの内部に形成された改質層を起点として個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を少なくとも含み、該改質層形成工程において、後に照射するレーザー光線の集光点を先に形成した改質層に上下方向で一部重ねて位置付け照射する際のレーザー光線の平均出力は、該集光点に改質層を形成しつつ、先に分割予定ラインに沿って形成された改質層で後に照射されるレーザー光線が散乱して散乱光を形成して、該散乱光によりウエーハの表面近傍に形成された該テスト用金属パターンと該デバイスとを接続する回路情報を破壊し、且つ、該レーザー光線の照射位置に隣接するデバイスに破壊が及ばない範囲で設定される出力であるウエーハの加工方法が提供される。
【0008】
該集光点のスポット形状を楕円形に形成し該楕円形の長軸を分割予定ラインに沿って位置付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエーハの加工方法は、テスト用金属パターンが形成された分割予定ラインによって複数のデバイスが区画され表面に形成されたウエーハであって、該ウエーハの分割予定ラインの内部には、該テスト用金属パターンと、該テスト用金属パターンに隣接するデバイスとを、ウエーハの表面近傍の内部で電気的に接続する回路情報が形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの裏面から所定の深さに位置付けて照射して複数の改質層を分割予定ラインに沿って上下方向に重ねて形成する改質層形成工程と、ウエーハに外力を付与し分割予定ラインの内部に形成された改質層を起点として個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を少なくとも含み、該改質層形成工程において、後に照射するレーザー光線の集光点を先に形成した改質層に上下方向で一部重ねて位置付け照射する際のレーザー光線の平均出力は、該集光点に改質層を形成しつつ、先に分割予定ラインに沿って形成された改質層で後に照射されるレーザー光線が散乱して散乱光を形成して、該散乱光によりウエーハの表面近傍に形成された該テスト用金属パターンと該デバイスとを接続する回路情報を破壊し、且つ、該レーザー光線の照射位置に隣接するデバイスに破壊が及ばない範囲で設定される出力であることから、分割起点となる改質層を形成すると同時に、テスト用金属パターンとデバイスとを接続する配線を含む回路情報が形成された領域を破壊することが可能であり、生産性が悪いという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態により加工されるウエーハに保護テープを貼着する態様を示す斜視図である。
図2】(a)ウエーハをレーザー加工装置のチャックテーブルに載置する態様を示す斜視図、(b)ウエーハに改質層形成工程を実施する態様を示す斜視図である。
図3図2に示す改質層形成工程を実施する際において、(a)第一の改質層を形成する際のウエーハの一部を拡大して示す断面図、(b)第二の改質層を形成する際のウエーハの一部を拡大して示す断面図、(c)第三の改質層を形成する際のウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
図4】改質層が形成されたウエーハの斜視図である。
図5】(a)ウエーハを研削装置のチャックテーブルに載置する態様を示す斜視図、(b)分割工程を実施する態様を示す斜視図、(c)分割工程によりウエーハが個々のデバイスチップに分割された状態を示す斜視図である。
図6】分割工程を経たウエーハから保護テープを剥離する態様を示す斜視図である。
図7】(a)分割工程の他の実施形態においてウエーハから保護テープを剥離する態様を示す斜視図、(b)ウエーハを保持する粘着テープを拡張してウエーハが個々のデバイスチップに分割される態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のウエーハの加工方法における被加工物は、例えば、図1に示すように、分割予定ライン14によって複数のデバイス12が区画され表面10aに形成されたウエーハ10である。ウエーハ10は、例えばシリコン(Si)からなるウエーハであり、直径が300mm、厚みが780μmである。ウエーハ10の表面10a上の分割予定ライン14の一部を右方に拡大して示すように、分割予定ライン14上には、デバイス12の特性を検査するための電極であるテスト用金属パターン(以下「TEG」と称する)16が形成されている。このTEG16とデバイス12とは、ウエーハ10の表面10a側近傍の内部で電気的に接続されて回路情報が形成されている。
【0013】
本実施形態において、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割するに際し、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って、内部に改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
【0014】
該改質層形成工程を実施するに際し、例えば、ウエーハ10と同一の外径寸法で形成され、表面に粘着剤が付与された保護テープ20を用意する。保護テープ20は、例えば、PVC、PET等からなる。この保護テープ20を、ウエーハ10の表面10aに対して貼着して一体とする。なお、保護テープ20によってウエーハ10の表面10aを保護する態様は、図1に記載された実施形態に限定されず、例えば環状のフレームの開口部にウエーハ10を位置付け、フレームに貼着される寸法の保護テープを介して該フレームに保持させるようにしてもよい。
【0015】
上記したように、保護テープ20と一体とされたウエーハ10を、図2に示すレーザー加工装置30(一部のみを示している)に搬送し、図2(a)に示すように、ウエーハ10の裏面10b側を上方に、保護テープ20側を下方に向けてチャックテーブル32の保持面32aに載置して吸引保持する。レーザー加工装置30には、図2(b)に示すように、レーザー光線照射手段34が配設されている。レーザー光線照射手段34は、図示しないレーザー発振器を含む光学系を備え、ウエーハ10を構成するシリコン(Si)に対して透過性を有する波長(例えば、1342nm)のレーザー光線LBを照射することができる。また、チャックテーブル32は、図示しない移動手段により、チャックテーブル32を矢印Xで示すX軸方向、矢印Yで示すY軸方向に移動させることができ、且つ回転させることもできる。
【0016】
ウエーハ10をチャックテーブル32に保持したならば、図示を省略する撮像手段を使用してアライメント工程を実施して、ウエーハ10の裏面10b側から、表面10a側に形成された分割予定ライン14を検出する。該撮像手段は、例えば、赤外線照射手段及び赤外線CCDを備え、ウエーハ10の表面10a側を裏面10b側から透過して撮像することができる。
【0017】
該アライメント工程により検出した分割予定ライン14の位置に基づいて、チャックテーブル32をレーザー光線照射手段34の直下に移動し、ウエーハ10の分割予定ライン14をX軸方向に沿う方向とする所定の位置に位置付ける。次いで、レーザー光線照射手段34から照射されるレーザー光線LBの集光点を所定の分割予定ライン14に沿った内部に位置付けて照射し、チャックテーブル32をX軸方向に移動させ、分割予定ライン14に沿った改質層100を形成する。上記した改質層100を形成するレーザー加工について、以下に詳述する。
【0018】
改質層形成工程において改質層100を形成するに際し、まず、図3(a)に示すように、所定の分割予定ライン14の内部であって、ウエーハ10のTEG16が形成された表面10aに近い、例えば、裏面10b側から見て700μmの深さの位置に集光点P1の中心を位置付ける。次いで、レーザー光線照射手段34を作動して、シリコン(Si)からなるウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザー光線LBを照射し、且つチャックテーブル32を、図2(b)に示す矢印Xの方向(図3(a)の図面に垂直な方向)に移動して、第一の改質層100aを形成する。レーザー光線照射手段34から照射されるレーザー光線LBの集光点は、レーザー光線照射手段34を構成する光学系の球面収差によりウエーハ10の厚み方向(深さ方向)に伸びていることから、ウエーハ10の内部には、厚み方向に一定の長さを有する第一の改質層100aが形成される。なお、図3(a)に示すように、ウエーハ10の表面10aの近傍の内部には、分割予定ライン14に沿って配設されたTEG16とデバイス12とを接続する配線を含む回路情報Q1、Q2が形成されている。
【0019】
本実施形態におけるレーザー光線照射手段34から照射されるレーザー光線LBの集光点のスポットSの形状は、図2(b)の右上方に拡大して示すように、長軸が分割予定ライン14に沿った方向に位置付けられた楕円形状とされている。このようにレーザー光線LBの集光点のスポットSの形状を楕円とする場合は、例えば、レーザー光線LBを伝送する光学系に、ビームエキスパンド及び楕円シェービング(いずれも図示は省略する)を配設して実現することができる。該ビームエキスパンドは、レーザー光線LBが集光点で集光される際に形成される小さな円形のスポットを、大きな円形のスポットに拡張し、該拡張された円形のスポットを、楕円シェービングによって楕円形状のスポットSに変形する。
【0020】
なお、本実施形態において実施される改質層形成工程におけるレーザー加工条件は、例えば、以下のとおりである。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :60kHz
平均出力 :1.6W
加工送り速度 :300mm/秒
集光点位置(深さ) :700μm(P1)、500μm(P2)、300μm(P3)
【0021】
上記したように第一の改質層100aを形成したならば、図3(b)に示すように、先に第一の改質層100aを形成した所定の分割予定ライン14に沿った内部であって、第一の改質層100aの位置に近い位置、例えば裏面10bから見て500μmの深さに、集光点P2の中心を位置づける。この際、先に形成された第一の改質層100aに対してレーザー光線LBの集光点P2の一部が重なるように照射し、且つチャックテーブル32を図2(b)に示す矢印Xの方向(図3(b)の図面に垂直な方向)に移動して、第二の改質層100bを形成する。このようにレーザー光線LBを、集光点P2の一部が先に形成された第一の改質層100aに対して上下方向で見て重なるように照射することで、第一の改質層100aでレーザー光線LBが散乱し、図3(b)に示すように、第一の改質層100aの外方向に向かう散乱光LB1を形成する。この散乱光LB1がTEG16とデバイス12とを接続する配線を含む回路情報Q1、Q2に照射されることで、回路情報Q1、Q2が破壊される。なお、この時に照射されるレーザー光線LBの平均出力は、分割予定ライン14に沿ったウエーハ10の内部に第二の改質層100bを形成しつつ、散乱光LB1によって回路情報Q1、Q2が破壊され、且つ該破壊の領域が分割予定ライン14に沿った内部に留まり、デバイス12に該破壊が及ばない範囲で設定される。
【0022】
上記したように第二の改質層100bを形成したならば、図3(c)に示すように、第一の改質層100a及び第二の改質層100bを形成した所定の分割予定ライン14に沿った内部であって、先に形成された第二の改質層100bの位置に近い裏面10bから見て300μmの深さに集光点P3を位置づける。そして、第二の改質層100bに対してレーザー光線LBの集光点P3の一部が重なるように照射し、且つチャックテーブル32を図2(b)に示す矢印Xの方向(図3(c)の図面に垂直な方向)に移動して、第三の改質層100cを形成する。このように集光点P3の一部が先に形成された第二の改質層100bに対して上下方向で見て重なるように照射することで、第二の改質層100bでレーザー光線LBが散乱して第二の改質層100bの外方向に向かう散乱光LB2を形成する。この散乱光LB2もTEG16とデバイス12とを接続する配線を含む回路情報Q1、Q2に達し、回路情報Q1、Q2がさらに破壊される。この時に照射されるレーザー光線LBの平均出力は、第三の改質層100cを形成しつつ回路情報Q1、Q2を破壊し、該破壊が分割予定ライン14に沿った内部に留まり、デバイス12に影響が及ばない範囲で設定される。
【0023】
上記したように、所定の分割予定ライン14に沿った内部に、第一の改質層100a、第二の改質層100b、及び第三の改質層100cを含む改質層100を形成する改質層形成工程を実施することで、所定の分割予定ライン14に沿って形成されているTEG16とデバイス12を接続する配線を含む回路情報Q1、Q2が破壊される。このように所定の分割予定ライン14に対して改質層100を形成したならば、チャックテーブル32を移動させることにより、図2(b)において矢印Yで示すY軸方向にレーザー光線LBの照射位置を移動(割り出し送り)して、該所定の分割予定ライン14に隣接する未加工の分割予定ライン14に対しても、上記と同様にして改質層100を形成し、分割予定ライン14に沿って形成されたTEG16に係る回路情報Q1、Q2を破壊する。そして、所定の分割予定ライン14と平行なすべての分割予定ライン14に沿って、改質層100を形成すると共に回路情報Q1、Q2を破壊したならば、チャックテーブル32と共にウエーハ10を90度回転させて、上記した所定の分割予定ライン14と直交する方向の全ての分割予定ライン14に対しても同様のレーザー加工を実施して、改質層100を形成すると共に分割予定ライン14に沿って形成されたTEG16に係る回路情報Q1、Q2を破壊する(図4を参照)。以上により、改質層形成工程が完了する。
【0024】
なお、上記した実施形態の改質層形成工程では、改質層100を、第一の改質層100a、第二の改質層100b、及び第三の改質層100cによって形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第一の改質層100aと、第二の改質層100bとにより回路情報Q1、Q2が十分に破壊され、且つ後述する分割工程による分割がこの改質層100を分割起点として実施可能である場合は、第一の改質層100a、第二の改質層100bのみによって改質層100を形成してもよく、さらには、第一の改質層100a、第二の改質層100b、及び第三の改質層100cに、さらに改質層を追加して形成することもできる。
【0025】
上記した改質層形成工程を実施したならば、ウエーハ10に外力を付与し、分割予定ライン14の内部に形成された改質層100を起点として個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。分割工程の実施形態については、以下に説明する。
【0026】
図5(a)に示すように、改質層100が形成されたウエーハ10を、外力付与手段として機能する研削装置40(一部のみを示している)に搬送して、ウエーハ10の裏面10bを上方に、保護テープ20側を下方に向け、研削装置40に配設されたチャックテーブル42の保持面42aに載置して吸引保持する。
【0027】
研削装置40は、図5(b)に示すように、研削手段44を備えている。研削手段44は、回転自在に配設されたスピンドル44aと、スピンドル44aを回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ(図示は省略)とを備えている。スピンドル44aの下端部には、円盤状のマウント44bが配設され、マウント44bの下面には、研削ホイール44cが配設されている。そして、研削ホイール44cの下面には、複数の研削砥石44dが環状に配設されている。
【0028】
本実施形態による分割工程を実施するに際し、チャックテーブル42に吸引保持されたウエーハ10を、図5(b)に示すように、研削手段44の下方に位置付ける。次いで、チャックテーブル42を矢印R1で示す方向に、例えば、300rpmの回転速度で回転させると共に、スピンドル44aを矢印R2で示す方向に、例えば、6000rpmの回転速度で回転させる。次いで、図示しない研削送り手段を作動して、研削手段44を矢印R3で示す方向に下降させて、ウエーハ10の裏面10bに当接させる。研削手段44の研削砥石44dがウエーハ10の裏面10bに当接して裏面10bを研削する際の研削送り速度は、例えば0.1μm/秒に設定される。このように研削加工を実施することにより、図5(c)に示すように、ウエーハ10の裏面10bが研削されると共に、ウエーハ10に対して外力が付与されて、改質層100を分割起点としてウエーハ10が分割予定ライン14に沿って個々のデバイスチップ12’に分割され、分割工程が完了する。
【0029】
上記したように分割工程を実施したならば、必要に応じて、ウエーハ10の表面10aに貼着された保護テープ20を剥離し、裏面10b側を粘着テープTによって保持すべくテープ張替え工程を実施する。テープ張替え工程を実施する際には、図6に示すように、ウエーハ10を収容可能な開口部を有する環状のフレームFを用意し、フレームFの開口部に保護テープ20が貼着された側を上方にしてウエーハ10を位置付け、粘着テープTを介してフレームFに保持させる。ウエーハ10の裏面10bを粘着テープTに貼着したならば、ウエーハ10の表面10aから保護テープ20を剥離する。フレームFに保持され保護テープ20が剥離されたウエーハ10は、図示を省略する収容手段(例えばカセット)に収容されるか、又は、そのまま次工程(例えばピックアップ工程等)に送られる。
【0030】
ウエーハ10に外力を付与し、分割予定ライン14の内部に形成された改質層100を分割起点として個々のデバイスチップに分割する分割工程は、上記した実施形態に限定されず、以下に示す他の実施形態によって実施されてもよい。
【0031】
分割工程の他の実施形態を実施するに際しては、図7(a)に示すように、ウエーハ10を収容可能な開口部を有する環状のフレームFを用意し、フレームFの開口部に保護テープ20が貼着された側を上方にしてウエーハ10を位置付け、粘着テープTを介してフレームFに保持させる。次いで、保護テープ20を剥離し、その後、粘着テープTを矢印R4で示す方向に拡張し、分割予定ライン14に沿って形成された改質層100を起点として、個々のデバイスチップ12’に分割する。以上により、分割工程が完了し、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10は、図示を省略する収容手段(例えばカセット)に収容されるか、又は次工程(例えばピックアップ工程等)に送られる。
【0032】
本実施形態によれば、分割起点となる改質層100を形成すると共に、TEG16とデバイス12とを接続する配線を含む回路情報Q1、Q2を破壊することが可能であり、生産性が悪いという問題が解消する。
【符号の説明】
【0033】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
16:TEG
20:保護テープ
30:レーザー加工装置
32:チャックテーブル
34:レーザー光線照射手段
100:改質層
100a:第一の改質層
100b:第二の改質層
100c:第三の改質層
LB:レーザー光線
LB1、LB2:散乱光
Q1、Q2:回路情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7