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特許7487083重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20240513BHJP
   C01B 5/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C01C1/04 C
C01B5/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020201938
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089501
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 祐太
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-206033(JP,A)
【文献】特公昭50-007720(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第103950952(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 1/02 - 1/14
C01B 5/02
B01D 59/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと重水素化溶媒とを反応容器内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアを得る方法であって、
前記反応容器に向けて前記重水素化溶媒を供給する重水素化溶媒供給ステップと、
前記反応容器に向けて前記アンモニアを供給するアンモニア供給ステップと、
前記反応容器の内部において、前記アンモニアと、前記反応容器内に貯留された前記重水素化溶媒とで軽水素-重水素同位体交換反応を行う交換反応ステップと、
前記反応容器に向けてキャリアガスを供給し、前記反応容器内の前記重水素化溶媒を前記キャリアガスによってバブリングするキャリアガス供給・バブリングステップと、
を備えることを特徴とする重水素化アンモニアの製造方法。
【請求項2】
前記キャリアガス供給・バブリングステップは、前記アンモニアを前記反応容器に供給する前記アンモニア供給ラインに前記キャリアガスを供給することにより、前記反応容器に向けて前記キャリアガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の重水素化アンモニアの製造方法。
【請求項3】
前記キャリアガス供給・バブリングステップは、さらに、前記交換反応ステップにおいて軽水素-重水素同位体交換反応を行った前記重水素化溶媒を前記キャリアガスでバブリングすることにより、該重水素化溶媒中から前記重水素化アンモニアを抽出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重水素化アンモニアの製造方法。
【請求項4】
前記交換反応ステップは、前記反応容器を2以上で複数用いるとともに、該複数の反応容器の各々の間を直列で接続する1以上の混合ガス移送ラインを用い、
前記混合ガス移送ラインが、前記反応容器内で生成された前記重水素化アンモニア及び前記キャリアガスの混合ガスを、それぞれ後段の前記反応容器に向けて移送することにより、前記複数の反応容器内において、順次、軽水素-重水素同位体交換反応を行って前記重水素化アンモニアを得ることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の重水素化アンモニアの製造方法。
【請求項5】
前記交換反応ステップは、さらに、前記複数の反応容器の各々の間を直列で接続する1以上の溶媒移送ラインを用い、前記反応容器内に残存した前記重水素化溶媒の一部又は全部を、それぞれ前段の前記反応容器に向けて移送することを特徴とする請求項4に記載の重水素化アンモニアの製造方法。
【請求項6】
アンモニアと重水素化溶媒とを反応容器内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアを得る装置であって、
前記反応容器に向けて前記アンモニアを供給するアンモニア供給ラインを含むアンモニア供給部と、
前記反応容器に向けてキャリアガスを供給するキャリアガス供給ラインを含むキャリアガス供給部と、を備え、
前記反応容器は、内部に前記重水素化溶媒が貯留され、前記アンモニアと前記重水素化溶媒とで軽水素-重水素同位体交換反応を行い、
前記キャリアガス供給部は、前記キャリアガスを、前記反応容器内における軽水素-重水素同位体交換反応を行った前記重水素化溶媒中に吹き込んでバブリングすることにより、前記重水素化溶媒中から前記重水素化アンモニアを抽出する
ことを特徴とする重水素化アンモニアの製造装置。
【請求項7】
前記キャリアガス供給部は、前記キャリアガス供給ラインから前記アンモニア供給ラインに前記キャリアガスを供給することにより、前記反応容器に向けて前記キャリアガスを供給することを特徴とする請求項6に記載の重水素化アンモニアの製造装置。
【請求項8】
前記反応容器を2以上で複数備えるとともに、該複数の反応容器の各々の間を直列で接続する1以上の混合ガス移送ラインを備え、
前記混合ガス移送ラインは、前記反応容器内で生成された前記重水素化アンモニア及び前記キャリアガスの混合ガスを、それぞれ後段の前記反応容器に向けて移送し、
前記複数の反応容器は、順次、軽水素-重水素同位体交換反応を行うことで、前記重水素化アンモニアを得ることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の重水素化アンモニアの製造装置。
【請求項9】
さらに、前記複数の反応容器の各々の間を直列で接続し、前記反応容器内に残存した前記重水素化溶媒の一部又は全部を、それぞれ前段の前記反応容器に向けて移送する1以上の溶媒移送ラインを備えることを特徴とする請求項8に記載の重水素化アンモニアの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、重水素化アンモニアは、種々の化学反応における反応機構の解明、並びに、医薬農薬分野におけるトレーサー・プローブ等の試薬や、農薬、医薬の合成ビルディングブロックとしての用途があることから、各分野において注目されている。
【0003】
上記のような重水素化アンモニアを製造する方法の一つとして、ハーバー・ボッシュ法(HB法)が挙げられる。このHB法は、鉄を主体とした触媒上で重水素と窒素とを反応させることで、重水素化アンモニアを製造する方法であり、重水素化されていないアンモニア(NH)を用いた工業的な製造方法である。
【0004】
また、例えば、窒化マグネシウム(Mg)、窒化リチウム(LiN)、又は石灰窒素(CaCN)等のような金属窒化物を重水で加水分解することで重水素化アンモニアを得る方法もある。
【0005】
上記のような背景下、従来、重水素化アンモニアを製造する方法として、例えば、酸化鉄と酸化アルミニウムからなる触媒上で重水素と窒素を反応させることで、重水素化アンモニアを得る方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、窒化マグネシウムや窒化リチウムを重水で加水分解することにより、重水素化アンモニアを得る方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第103950952号明細書
【文献】特公昭50-11879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、上記のHB法は、重水素と窒素との反応条件として、厳しい高温条件(400~600℃)、並びに高圧条件(20~100MPaG)が必要であり、非常に高いエネルギー負荷が掛かるという問題がある。
例えば、特許文献1に記載された技術では、重水素と窒素との反応に、温度:400~600℃、圧力:10~30MPaGという非常に厳しい反応条件が必要となる。
【0008】
また、特許文献2に記載されたような、金属窒化物を重水で加水分解する方法においては、窒素源である金属窒化物が非常に高価であることから製造コストが増大するという問題がある。また、市販されている金属窒化物は低純度であるが、低純度の金属窒化物の純度を精製して高めようとする場合には、その精製処理における条件や手順が難しいという問題がある。さらに、特許文献2に記載された方法では、加水分解の副生成物である金属水酸化物の生成に伴って重水素原子が無駄に消費されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高温や高圧の条件を必要とすることなく、製造工程におけるエネルギー負荷が抑制され、低コスト且つ優れた生産効率で重水素化アンモニアを製造することが可能な重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者等が鋭意検討した結果、アンモニアと重水素化溶媒とを混合して軽水素-重水素同位体交換反応(交換反応)を行うことで、高温や高圧の厳しい条件を必要とすることなく重水素化アンモニアを製造できることを知見した。より具体的には、ヒドロキシ基、アミノ基等のようなプロトン交換性官能基を有する重水素化溶媒と、重水素化されていないアンモニアとを混合・溶解して交換反応を行い、その後、キャリアガスの供給により、重水素化溶媒に溶解した重水素化アンモニアをガスの形で取り出す方法により、高温や高圧の厳しい条件を必要とすることなく重水素化アンモニアが得られることを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0011】
請求項1に係る発明は、アンモニアと重水素化溶媒とを反応容器内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアを得る方法であって、前記反応容器に向けて前記重水素化溶媒を供給する重水素化溶媒供給ステップと、前記反応容器に向けて前記アンモニアを供給するアンモニア供給ステップと、前記反応容器の内部において、前記アンモニアと、前記反応容器内に貯留された前記重水素化溶媒とで軽水素-重水素同位体交換反応を行う交換反応ステップと、前記反応容器に向けてキャリアガスを供給し、前記反応容器内の前記重水素化溶媒を前記キャリアガスによってバブリングするキャリアガス供給・バブリングステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記キャリアガス供給・バブリングステップは、前記アンモニアを前記反応容器に供給する前記アンモニア供給ラインに前記キャリアガスを供給することにより、前記反応容器に向けて前記キャリアガスを供給することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の重水素化アンモニアの製造方法であって、前記キャリアガス供給・バブリングステップは、さらに、前記交換反応ステップにおいて軽水素-重水素同位体交換反応を行った前記重水素化溶媒を前記キャリアガスでバブリングすることにより、該重水素化溶媒中から前記重水素化アンモニアを抽出することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の重水素化アンモニアの製造方法であって、前記交換反応ステップは、前記反応容器を2以上で複数用いるとともに、該複数の反応容器の各々の間を直列で接続する1以上の混合ガス移送ラインを用い、前記混合ガス移送ラインが、前記反応容器内で生成された前記重水素化アンモニア及び前記キャリアガスの混合ガスを、それぞれ後段の前記反応容器に向けて移送することにより、前記複数の反応容器内において、順次、軽水素-重水素同位体交換反応を行って前記重水素化アンモニアを得ることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の重水素化アンモニアの製造方法であって、前記交換反応ステップは、さらに、前記複数の反応容器の各々の間を直列で接続する1以上の溶媒移送ラインを用い、前記反応容器内に残存した前記重水素化溶媒の一部又は全部を、それぞれ前段の前記反応容器に向けて移送することを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、アンモニアと重水素化溶媒とを反応容器内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアを得る装置であって、前記反応容器に向けて前記アンモニアを供給するアンモニア供給ラインを含むアンモニア供給部と、前記反応容器に向けてキャリアガスを供給するキャリアガス供給ラインを含むキャリアガス供給部と、を備え、前記反応容器は、内部に前記重水素化溶媒が貯留され、前記アンモニアと前記重水素化溶媒とで軽水素-重水素同位体交換反応を行い、前記キャリアガス供給部は、前記キャリアガスを、前記反応容器内における軽水素-重水素同位体交換反応を行った前記重水素化溶媒中に吹き込んでバブリングすることにより、前記重水素化溶媒中から前記重水素化アンモニアを抽出することを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の重水素化アンモニアの製造装置であって、前記キャリアガス供給部は、前記キャリアガス供給ラインから前記アンモニア供給ラインに前記キャリアガスを供給することにより、前記反応容器に向けて前記キャリアガスを供給することを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、前記反応容器を2以上で複数備えるとともに、該複数の反応容器の各々の間を直列で接続する1以上の混合ガス移送ラインを備え、前記混合ガス移送ラインは、前記反応容器内で生成された前記重水素化アンモニア及び前記キャリアガスの混合ガスを、それぞれ後段の前記反応容器に向けて移送し、前記複数の反応容器は、順次、軽水素-重水素同位体交換反応を行うことで、前記重水素化アンモニアを得ることを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明は、さらに、前記複数の反応容器の各々の間を直列で接続し、前記反応容器内に残存した前記重水素化溶媒の一部又は全部を、それぞれ前段の前記反応容器に向けて移送する1以上の溶媒移送ラインを備えることを特徴とする。
【0021】
なお、本発明で説明する、重水素化アンモニア及びキャリアガスの混合ガスとは、軽水素-重水素同位体交換反応で得られる重水素化アンモニア及びキャリアガスの他、残余の原料、即ち、アンモニアや重水素化溶媒の一部も含むものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る重水素化アンモニアの製造方法によれば、上記のように、反応容器に向けてアンモニアを供給するアンモニア供給ステップと、反応容器の内部において、アンモニアと重水素化溶媒とで軽水素-重水素同位体交換反応を行う交換反応ステップと、反応容器に向けてキャリアガスを供給するキャリアガス供給・バブリングステップと、を備えた方法を採用している。
このように、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基等のようなプロトン交換性官能基を有する重水素化溶媒と、重水素化されていないアンモニアとを混合・溶解して交換反応を行い、その後、キャリアガスの供給により、重水素化溶媒に溶解した重水素化アンモニアをガスの形で取り出すことで、高温や高圧の条件を必要とすることなく、重水素化アンモニアを得ることができる。
従って、製造工程におけるエネルギー負荷が抑制され、低コスト且つ優れた生産効率で重水素化アンモニアを製造することが可能になる。
【0023】
また、本発明に係る重水素化アンモニアの製造装置によれば、上記のように、反応容器に向けてアンモニアを供給するアンモニア供給ラインを含むアンモニア供給部と、反応容器に向けてキャリアガスを供給するキャリアガス供給ラインを含むキャリアガス供給部とを備え、反応容器が、供給されたアンモニアと、内部に貯留された重水素化溶媒とで軽水素-重水素同位体交換反応を行う構成を採用している。
これにより、上記同様、重水素化溶媒と、重水素化されていないアンモニアとで交換反応を行い、キャリアガスの供給により、重水素化溶媒に溶解した重水素化アンモニアをガスの形で取り出すことで、高温や高圧の条件を必要とすることなく、重水素化アンモニアが得られる。
従って、上記同様、製造工程におけるエネルギー負荷が抑制され、低コスト且つ優れた生産効率で重水素化アンモニアを製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用した一実施形態である重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置を模式的に説明する図であり、複数の反応容器を備えた製造装置の全体構成を示す装置系統図である。
図2】本発明を適用した一実施形態である重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置を模式的に説明する図であり、製造装置に備えられる反応容器の詳細な構成を示す拡大図である。
図3】本発明を適用した一実施形態である重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置を模式的に説明する図であり、製造装置に備えられる複数の反応容器の間の重水素化溶媒の流れを示す概略図である。
図4】本発明を適用した重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置の実施例について説明する図であり、実施例で得られた重水素化アンモニアのフーリエ変換赤外分光光度計によるスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した一実施形態である重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0026】
<重水素化アンモニアの製造装置>
まず、本発明を適用した重水素化アンモニアの製造装置(以下、単に製造装置と称する場合がある。)について、図1図3を適宜参照しながら以下に詳述する。
図1は、本実施形態の重水素化アンモニアの製造装置1を模式的に説明する図であり、複数の反応容器2を備えた製造装置1の全体構成を示す装置系統図であり、図2は、反応容器2の詳細な構成を示す拡大図である。図3は、製造装置1に備えられる複数の反応容器2の間の重水素化溶媒Lの流れを示す概略図である。
【0027】
本実施形態の重水素化アンモニアの製造装置1は、アンモニアAと重水素化溶媒Lとを反応容器2内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアHを得るものである。
図1に示すように、本実施形態の製造装置1は、反応容器2に向けてアンモニアAを供給するアンモニア供給ライン32を含むアンモニア供給部3と、反応容器2に向けてキャリアガスCを供給するキャリアガス供給ライン4を含むキャリアガス供給部と、内部に重水素化溶媒Lが貯留され、アンモニアAと重水素化溶媒Lとで軽水素-重水素同位体交換反応を行う反応容器2とを備え、概略構成される。
【0028】
また、図1図2及び図3も参照)に示す例の製造装置1は、3台の反応容器2(2A,2B,2C)が直列で接続されており、これら反応容器2A,2B,2Cの各々の間を接続することで、反応容器2(2A又は2B)内で生成された重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRを、それぞれ後段の反応容器2(2B又は2C)に向けて移送するための2本の混合ガス移送ライン51,52が設けられている。さらに、図示例の製造装置1は、反応容器2A,2B,2Cの各々の間を直列で接続し、反応容器2(2B又は2C)内に残存する重水素化溶媒Lの一部又は全部を、それぞれ前段の反応容器2(2A又は2B)に向けて移送するための2本の溶媒移送ライン61,62が設けられている。
【0029】
図1に示す例の製造装置1は、上記構成により、複数で直列に反応容器2A,2B,2Cが、順次、軽水素-重水素同位体交換反応を行うことで、重水素化アンモニアHを得ることが可能なものである。
【0030】
さらに、図1に示す例の製造装置1においては、最後段となる反応容器2Cの下流側に、軽水素-重水素同位体交換反応で得られる重水素化アンモニアHとキャリアガスCとの混合ガスRから、この混合ガスRに不純物として含まれる重水素化溶媒Lを除去するための溶媒除去器7が接続されている。そして、溶媒除去器7の下流側には、この溶媒除去器7によって重水素化溶媒Lが除去された後の混合ガスRを、目的生成物である重水素化アンモニアHと、不要となるキャリアガスCとに分離するための分離回収器8が接続されている。
【0031】
[アンモニア供給部]
アンモニア供給部3は、軽水素-重水素同位体交換反応を行う反応容器2内にアンモニアAを供給するものである。図1中に例示するアンモニア供給部3は、アンモニアAが充填されるアンモニア容器31と、このアンモニア容器31から反応容器2に向けてアンモニアAを供給するアンモニア供給ライン32とを含んで構成される。
【0032】
図示例のアンモニア供給部3は、アンモニア供給ライン32が、複数で設けられる反応容器2A,2B,2Cのうち、最前段に配置される反応容器2Aに備えられたガス導入口21に接続されている。また、図示例においては、アンモニア供給ライン32の経路中に、後述するキャリアガス供給ライン4が接続されている。
【0033】
アンモニア容器31は、上記のように、アンモニアAが充填されるタンク状の容器である。
アンモニア容器31の材質としては、アンモニアAに対する耐食性や耐圧強度を有した材質であれば、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。
【0034】
アンモニア供給ライン32は、上記のように、アンモニア容器31に充填されたアンモニアAを反応容器2に向けて供給するものであり、例えば、配管状の部材から構成される。
アンモニア供給ライン32の材質としても、原料であるアンモニアAや重水素化溶媒L、生成物である重水素化アンモニアHに対する耐食性等を有した材質であれば、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属配管や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂配管を用いることができる。
【0035】
アンモニア供給ライン32に用いる配管の径としても、反応容器2に対してアンモニアAを不足無く供給できる径であれば特に限定されず、例えば、外径が9~10mm、内径が7~8mmの配管を用いることができる。
【0036】
なお、アンモニア供給ライン32の経路中には、アンモニアA及び後述のキャリアガスCの供給圧力及び流量を調節するために、例えば、図視略の圧力調整弁や流量コントローラー(MFC)を設置することも可能である。
【0037】
[キャリアガス供給部]
キャリアガス供給部は、軽水素-重水素同位体交換反応を行う反応容器2内にキャリアガスCを供給するものである。キャリアガス供給部は、キャリアガスCが充填される図視略のキャリアガス容器と、このキャリアガス容器から反応容器2に向けてキャリアガスCを供給するキャリアガス供給ライン4とを含んで構成される。
【0038】
キャリアガス容器は、上述のようにキャリアガスCが充填される容器であることから、その材質としては、内部に充填するキャリアガスCのガス種に対する耐食性や耐圧強度を有した材質であれば特に限定されず、アンモニア容器31と同様、例えば、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。
【0039】
キャリアガス供給ライン4は、上記のように、キャリアガス容器に充填されたキャリアガスCを反応容器2に向けて供給するものであり、アンモニア供給ライン32と同様、例えば、配管状の部材から構成される。
キャリアガス供給ライン4の材質としても、キャリアガスCのガス種に対する耐食性の他、アンモニアAや重水素化溶媒L、生成物である重水素化アンモニアHに対する耐食性等を有した材質であれば、特に限定されない。即ち、キャリアガス供給ライン4の材質としては、アンモニア供給ライン32と同様、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属配管や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂配管を用いることができる。
【0040】
ここで、図1中に示す例のキャリアガス供給部は、キャリアガス供給ライン4から、上述したアンモニア供給ライン32にキャリアガスCを供給することにより、反応容器2に向けて、アンモニアAと同じ配管でキャリアガスCを供給できる構成とされている。本実施形態においては、上記のように、アンモニアA及びキャリアガスCを同じ配管で反応容器2に供給する構成とすることが、装置を簡便にできる点からより好ましい。
【0041】
なお、キャリアガス供給部によって供給されるキャリアガスCとしては、原料であるアンモニアAや重水素化溶媒L、生成物である重水素化アンモニアHと反応せず、且つ、重水素化溶媒Lに溶解しないガスであれば、特に限定されない。即ち、キャリアガスCとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムといった不活性なガスの中から適宜選択して用いることができる。但し、キャリアガス中に微量で含まれる水等、交換性軽水素を持つ不純物は、重水素化溶媒L及び生成される重水素化アンモニアHの重水素濃縮度を低下させるおそれがあることから、事前にドライカラム等で不純物を除去しておくことが好ましい。
【0042】
[反応容器]
反応容器2は、上述したように、内部に重水素化溶媒Lが貯留され、アンモニア供給部3によって供給されるアンモニアAと重水素化溶媒Lとで軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアHを生成させる。より詳細に説明すると、反応容器2は、内部に一定量の重水素化溶媒Lを貯留させた状態でアンモニアAを供給することで、アンモニアAと重水素化溶媒Lとの混合及び交換反応を行い、その後、キャリアガスCを供給することで重水素化アンモニアHをガス化させて取り出すものであり、本実施形態の製造装置1における重要な構成機器である。
【0043】
反応容器2は、密閉構造であって、且つ、負圧ないし加圧状態に耐えうる強度を有した使用である必要がある。
このような観点から、反応容器2の材質としては、アンモニアA及び重水素化溶媒Lに対する耐食性を有し、且つ、上記の耐圧強度を有したものであれば、特に限定されず、例えば、-0.1~0.3MPaGの範囲の圧力耐えうるステンレス鋼(SUS)を用いることができる。
【0044】
反応容器2の容積としては、内部に供給されるアンモニアAに対して十分な交換反応を行うことが可能な量の重水素化溶媒Lを収容できる大きさが必要となるが、容積が大きすぎると装置が大型化してしまうため、適宜、最適な大きさを判断することが求められる。
また、反応容器2の内径は、大きすぎると内部に供給されるガスの均一な拡散が難しくなり、小さすぎると液面の比表面積が小さくなって重水素化アンモニアHのガス化効率が低下することから、最適な内径を選択する必要がある。
上記の観点から、反応容器2の大きさとしては、例えば、図2中に示す内径dと高さhとの比が{d:h=1:2~3}の範囲となるように設計することが好ましい。
【0045】
上記のアンモニア供給ライン32によって供給されるアンモニアAは、反応容器2に設けられるガス導入口21から、ガス供給配管23を介して反応容器2内に導入される。ここで、反応容器2の上部に備えられるガス導入口21から、容器内下方に向けて延設されるガス供給配管23の出口23aは、重水素化溶媒Lの液面よりも下方に配置されている必要がある。これは、アンモニアAの供給時、アンモニアAと重水素化溶媒Lが混合・溶解しやすくするためであり、また、キャリアガスCの供給時は、重水素化溶媒LをキャリアガスCによる吹き込みでバブリングすることで、液中に溶解している重水素化アンモニアHのガス化を促進するためである。
【0046】
また、図2中に示すように、ガス供給配管23の出口23a近傍には、散気管23Aが設置されていることが好ましい。散気管23Aを設置することにより、ガス供給配管23から供給されるアンモニアA及びキャリアガスCの気泡が細かく分割され、気泡の比表面積が増加する。これにより、アンモニアAの供給時は、重水素化溶媒Lへの溶解効率(反応効率)をさらに向上させることができ、また、キャリアガスCの供給時は、バブリングによる重水素化アンモニアHのガス化効率をより向上させることが可能になる。
【0047】
上記のような散気管23Aとしては、例えば、濾過径が50μmのSUS製焼結金属フィルター等のような多孔質材料を用いることができる。散気管23Aの濾過径は、特に限定されないが、濾過径が小さすぎると圧力損失が大きくなって装置の運転に支障をきたす可能性があり、また、濾過径が大きすぎると、アンモニアA及びキャリアガスCの気泡が細かく分割され難くなり、散気管としての作用が得られ難くなる可能性がある。上記の観点から、散気管23Aの濾過径は、2~120μmの範囲であることが好ましい。
【0048】
図2に示すように、反応容器2の上面側には溶媒導入口25が設けられており、この溶媒導入口25から反応容器2の内部に重水素化溶媒Lを供給することができる。溶媒導入口25の内径は、特に限定されず、重水素化溶媒Lの供給効率等を考慮しながら決定すればよく、例えば、7~8mm程度、もしくはそれ以上の内径とすることができる。
なお、溶媒導入口25は、例えば、バルブやキャップ等により、反応容器2内の気密を確保できる構造とする必要がある。
【0049】
反応容器2の下面側には溶媒出口26が設けられており、この溶媒出口26から使用済みの重水素化溶媒Lを反応容器2の外部に排出することができる。溶媒出口26の内径は、特に限定されず、重水素化溶媒Lを排出する際の排出効率等を考慮しながら決定すればよく、例えば、7~8mm程度、もしくはそれ以上の内径とすることができる。
また、溶媒出口26は、溶媒導入口25と同様、例えば、バルブやキャップ等により、反応容器2内の気密を確保できる構造とする必要がある。
【0050】
また、反応容器2の上部には、生成された重水素化アンモニアHを、複数で設けられる反応容器2の内の後段側に配置される反応容器2や、後述する溶媒除去器7に向けて、ガスの状態で移送するためのガス導出口22が設けられている。このガス導出口22には、後段側の反応容器2と直列で接続するための混合ガス移送ライン51,52、あるいは、後述の溶媒除去器7に接続するための第1生成ガス送出ライン91が接続されている。
【0051】
さらに、反応容器2の上部には、内部に加圧用ガスを導入するための加圧用ガス導入口27が設けられている。この加圧用ガス導入口27は、例えば、反応容器2内の気密を確保可能なバルブ等と接続されている必要がある。
加圧用ガスとしては、キャリアガスCと同じガス種であることが好ましいが、アンモニアA、重水素化アンモニアH及び重水素化溶媒Lと反応することが無く、且つ、重水素化溶媒Lに溶解しないガスであれば、特に限定されない。
【0052】
反応容器2は、アンモニアA及びキャリアガスCの供給時において、アンモニアAと交換反応中の重水素化溶媒Lを攪拌できるような構造、即ち、図2中に示すような攪拌機構24を備えていることがより好ましい。このように、反応容器2内の重水素化溶媒Lを攪拌する攪拌機構24を備えることにより、内部に供給されるアンモニアA及びキャリアガスCの気泡が重水素化溶媒L内に均一に拡散する作用が得られる。これにより、アンモニアAの供給時は、重水素化溶媒Lに対してアンモニアAを均一に溶解させやすくなり、キャリアガスCの供給時は、バブリングによる重水素化アンモニアHのガス化効率が向上する効果が得られる。
【0053】
反応容器2内の重水素化溶媒Lを攪拌する攪拌機構24の構造としては、特に限定されないが、例えば、磁気攪拌子とマグネチックスターラーとからなる機構、あるいは、メカニカルスターラーと攪拌棒とからなる機構等が例示できる。
【0054】
ガス冷却部10は、ガス導出口22に直接取り付けられるか、あるいは、図示例のように、混合ガス移送ライン51,52又は第1生成ガス送出ライン91の経路中に設けられることで、ガス導出口22から導出されるガス状の重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスを冷却するものである。ガス冷却部10によって上記の混合ガスを冷却することにより、不純物として含まれる重水素化溶媒L分を凝縮して取り除く効果が得られる。
このようなガス冷却部10としては、例えば、スパイラル式熱交換器、二重管式熱交換器等の一般的な熱交換器を何ら制限無く採用することができる。
また、ガス冷却部10で用いる冷媒としては、例えばエチレングリコール等の一般的な冷媒を何ら制限無く採用することができる。
【0055】
また、ガス冷却部10と、その後段の設備との間、即ち、後段側の反応容器2(2B,2C)又は溶媒除去器7との間には、図視略の減圧ポンプを設置することがより好ましい。このような減圧ポンプにより、キャリアガスCの供給時に反応容器2内を減圧状態にすることで、重水素化アンモニアHのガス化をより促進することが可能になる。
上記のような減圧ポンプとしては、特に限定されないが、例えば、接ガス部に油や液体を用いておらず、装置内部への不純物混入が少ない構造を有するドライポンプやダイヤフラムポンプ等が好ましい。
【0056】
上述したように、図1に例示した製造装置1は、3台の反応容器2A,2B,2Cが直列で接続されている。このように、反応容器2を複数台で備え、これら反応容器2A,2B,2Cの各々の間を混合ガス移送ライン51,52で直列接続することにより、複数回で連続して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことが可能になる。この交換反応を行う回数が多くなるほど、交換反応に使用する重水素化溶媒Lの総量を少なくすることができるが、その一方で、反応容器2の台数が増えることは装置の大型化を招く懸念もある。このため、交換反応の回数は3回程度、即ち、反応容器2の台数は3台程度とすることが好ましい。なお、交換反応の回数を3回とすると、交換反応が1回である場合と比べて、交換反応で消費される重水素化溶媒Lの総量を10分の1以下程度に減量することができるので、製造コストを大幅に低減することが可能になるとともに、ほぼ平衡反応に達することで反応効率をより高めることが可能になる。
【0057】
複数の反応容器2A,2B,2Cが多段構成で直列に備えられる場合、例えば、前段側の反応容器2(2A又は2B)において、適宜、加圧用ガス導入口27から加圧用ガスを導入して増圧することにより、全後段の反応容器2の間、即ち、反応容器2Aと反応容器2Bとの間、又は、反応容器2Bと反応容器2Cとの間で圧力差が生じる。この圧力差により、例えば、後段側となる反応容器2Bから前段側となる反応容器2Aに向けて、溶媒移送ライン61を介して重水素化溶媒Lを移送させ、また、後段側となる反応容器2Cから前段側となる反応容器2Bに向けて、溶媒移送ライン62を介して重水素化溶媒Lを移送させることが可能になる。
【0058】
混合ガス移送ライン51,52は、上記のように、複数の反応容器2の各々の間を直列で接続し、反応容器2(2A又は2B)内で生成された重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRを、それぞれ後段の反応容器2(2B又は2C)に向けてする配管である。図3中に示す例では、反応容器2Aの後段側に配置される反応容器2Bにおいては、混合ガス移送ライン51から供給される混合ガスRが、ガス導入口21からガス供給配管23を介して内部に導入される。また、最後段に配置される反応容器2Cにおいては、混合ガス移送ライン52から供給される混合ガスRが、ガス導入口21からガス供給配管23を介して内部に導入される。
【0059】
混合ガス移送ライン51,52の材質としては、特に限定されないが、接続される反応容器2と同様、アンモニアA及び重水素化溶媒Lに対する耐食性を有し、且つ、上記の耐圧強度を有した金属であれば、特に限定されず、反応容器2と同様のSUSからなる配管を採用できる。また、混合ガス移送ライン51,52の径も特に限定されず、例えば、外径が9~10mmかそれ以上、内径が7~8mmかそれ以上のサイズとすることができる。
【0060】
溶媒移送ライン61,62は、上記のように、複数の反応容器2の各々の間を直列で接続し、反応容器2(2B又は2C)内に残存した重水素化溶媒Lの一部又は全部を、それぞれ前段の反応容器2(2A又は2B)に向けて移送する配管である。溶媒移送ライン61,62は、例えば、図1,3に示すように、後段の反応容器2(2B又は2C)の液相と、前段の反応容器2(2A又は2B)とを接続する。
溶媒移送ライン61,62の材質としても、特に限定されないが、例えば、外径が9~10mmかそれ以上、内径が7~8mmかそれ以上である透明樹脂は移管等を採用することができる。
なお、図示例の溶媒移送ライン61,62は、複数の反応容器2の各々の気密を確保するため、出口側及び入口側の両端に、開閉バルブ60a,60bが設けられており、必要に応じて開閉が可能な構成とされている。
【0061】
[溶媒除去器]
溶媒除去器7は、反応容器2の出口側に接続され、図1に示す例では、最後段となる反応容器2Cの下流側に、第1生成ガス送出ライン91を介して接続されている。溶媒除去器7は、上述したように、反応容器2内における交換反応で得られる重水素化アンモニアHとキャリアガスCとの混合ガスRから、この混合ガスR中に不純物として含まれる重水素化溶媒Lを除去する。
【0062】
溶媒除去器7に用いられる溶媒除去手段としては、特に限定されず、例えば、溶媒を吸着除去できる吸着剤を充填したカラムや、溶媒分離膜を備えたモジュール等を何ら制限無く採用できる。
溶媒除去器7に用いられる吸着剤としては、除去対象の溶媒分の物性に応じて、例えば、活性アルミナ等を採用することができるが、これには限定されず、硫酸銅無水物等のような重水素化アンモニアHと化学反応することのない吸着剤であれば、何ら制限無く採用することが可能である。
また、溶媒除去器7に用いられる溶媒分離膜モジュールの構造としても特に限定されず、例えば、中空糸膜型、平膜型等の一般的な構造のものを採用することができる。また、溶媒分離膜の材料としても特に限定されず、例えば、ポリアミド等の高分子有機膜、シリカゲル等の無機膜といった一般的な膜材料を用いることが可能である。
【0063】
なお、溶媒除去器7で除去された重水素化溶媒Lは、廃棄してもよいが、例えば、精製後に反応容器2で再利用することも可能である。
【0064】
[分離回収器]
分離回収器8は、溶媒除去器7の出口側に第2生成ガス送出ライン92を介して接続される。分離回収器8は、上述したように、溶媒除去器7によって重水素化溶媒Lが除去された後の混合ガスRを、目的生成物である重水素化アンモニアHと、目的生成物に対する不純物となるキャリアガスCとに分離するものである。これにより、分離回収器8は、生成物出口81から高純度の重水素化アンモニアHを導出するとともに、不純物排出口82からキャリアガスCを排出する。
【0065】
分離回収器8には、例えば、一般的な固化精製装置や蒸留装置等を採用することができる。
分離回収器8に用いられる固化精製装置としては、特に限定されないが、例えば、液体窒素等の寒剤で冷却された重水素化アンモニアHとキャリアガスCとの混合気体中において、重水素化アンモニアHのみを固化・トラップし、固化しないキャリアガスC等の不純物をポンプで排気して除去することで、高純度の重水素化アンモニアHが得られる装置等を採用できる。
【0066】
[重水素化溶媒]
溶媒導入口25から反応容器2に導入し、反応容器2内に貯留させて使用する重水素化溶媒Lとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基等のプロトン交換性官能基を有し、さらに、プロトン交換性官能基が重水素化されたものである必要がある。このような重水素化溶媒Lとしては、例えば、最も好ましくは重水が挙げられ、その他、重メタノール、重エタノール、重ジエチルアミン等を採用することができる。また、重水素化溶媒Lとしては、例えば、重酢酸等のような、アンモニアAと化学反応することで重水素化アンモニアH以外の生成物を与える溶媒でない限り、上記の例示に限定されるものではない。
【0067】
<重水素化アンモニアの製造方法>
以下、本発明を適用した重水素化アンモニアの製造方法(以下、単に製造方法と称する場合がある。)について詳述する。
本実施形態においては、図1図3に示した本実施形態の重水素化アンモニアの製造装置1を用いて重水素化アンモニアを製造する方法について、各手順及び条件、並びに、各ガス(液体)の流れを説明する。また、本実施形態では、重水素化溶媒Lとして重水を用い、キャリアガスCとして窒素を用いた場合の一例を説明する。
なお、以下の説明では、上記の重水素化アンモニアの製造装置1の説明と重複する構成については、その詳細な説明を省略する。
【0068】
本実施形態の重水素化アンモニアの製造方法は、アンモニアAと重水素化溶媒Lとを反応容器内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、重水素化アンモニアHを得る方法である。即ち、本実施形態の製造方法は、以下の(1)~(4)に示す各ステップを備える方法である。
(1)反応容器2に向けて重水素化溶媒Lを供給する重水素化溶媒供給ステップ。
(2)反応容器2に向けてアンモニアAを供給するアンモニア供給ステップ。
(3)反応容器2の内部において、アンモニアAと、反応容器2内に貯留された重水素化溶媒Lとで軽水素-重水素同位体交換反応を行う交換反応ステップ。
(4)反応容器2に向けてキャリアガスCを供給するキャリアガス供給・バブリングステップ。
【0069】
また、本実施形態では、上記(3)の交換反応ステップとして、反応容器2を計3台で用いるとともに、複数の反応容器2A,2B,2Cの各々の間を直列で接続する2本の混合ガス移送ライン51,52を用い、この混合ガス移送ライン51,52が、反応容器2(2A又は2B)内で生成された重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRを、それぞれ後段の反応容器(2B又は2C)に向けて移送することにより、複数の反応容器2A,2B,2C内において、順次、軽水素-重水素同位体交換反応を行う方法について説明する。
さらに、本実施形態では、複数の反応容器2A,2B,2Cの各々の間を直列で接続する2本の溶媒移送ライン61,62を用い、反応容器2(2B又は2C)内に残存する重水素化溶媒Lの一部又は全部を、それぞれ前段の反応容器2(2A又は2B)に向けて移送する方法について説明する。
【0070】
なお、本実施形態では、上記の(1)に示した重水素化溶媒供給ステップについては、工業的に独立した工程として実施する一方、上記の(2)~(4)に示した各ステップは、必ずしも時系列で完全に分離して実施する工程とは限らないため、以下においては、各ステップを併せた総合的な内容で説明する。
【0071】
まず、重水素化溶媒供給ステップにおいて、反応容器2の溶媒導入口25から重水素化溶媒Lとして重水を供給する。
次いで、アンモニア供給ステップ及び交換反応ステップにおいて、反応容器2A内部を攪拌機構24で攪拌しながら、アンモニア供給ライン32を介して、反応容器2Aに備えられたガス導入口21からアンモニアAを供給することで軽水素-重水素同位体交換反応を行う。
このときの条件は、特に限定されるものではなく、工程における種々の状況に応じて適宜選択することができ、例えば、重水素化溶媒Lの供給量:1~10kg、アンモニアAの供給量:0.01~10kg、アンモニアAの供給流量:1~20L/min、攪拌速度:600~1000rpmの範囲の各条件を組み合わせて選択することができる。なお、攪拌速度が大きいほど、反応容器2内に供給されるガスの気泡が重水素化溶媒L内に均一に拡散しやすくなるため、上記のように600rpm以上であることが好ましい。
【0072】
次いで、キャリアガス供給・バブリングステップにおいて、反応容器2A内に、キャリアガス供給ライン4及びアンモニア供給ライン32を介して、キャリアガスCとして窒素を供給することで、重水素化溶媒Lに溶解している反応後の重水素化アンモニアHをガス化させて抽出する。
また、本実施形態のキャリアガス供給・バブリングステップにおいては、上記(3)の交換反応ステップにおける重水素化溶媒LをキャリアガスCでバブリングすることにより、重水素化溶媒L中から重水素化アンモニアHを抽出する。
このときの条件も、特に限定されるものではなく、工程における種々の状況に応じて適宜選択することができ、例えば、キャリアガスCの流量:5~50L/min、供給圧力:0.01~0.9MPaGの範囲の各条件を組み合わせて選択することができる。
【0073】
キャリアガスCを供給している間は、反応容器2を加熱することが好ましい。これは、キャリアガスCの供給によって重水素化アンモニアHが気化する際に、蒸発潜熱によって重水素化溶媒Lが常温以下に冷却されてガス溶解度が大きくなり、重水素化アンモニアHのガス化効率が大きく低下することを防止するためである。この際の加熱温度としては、反応容器2の内部が常温~60℃となる程度が好ましく、例えば、60℃程度であることがより好ましい。これは、加熱温度が高いほどガス化効率は向上するものの、重水素化溶媒Lが蒸発しやすくなり、不純物として後続の装置に混入しやすくなるのを防止するためである。
【0074】
次いで、ガス化された重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRは、ガス導出口22から導出され、混合ガス移送ライン51に設けられたガス冷却部10によって冷却される。
ガス冷却部10による冷却温度は、低いほど重水素化溶媒Lを凝縮して取り除く効果が向上するものの、凝縮した重水素化溶媒Lに対する重水素化アンモニアHの溶解度も高められることで歩留まりが低下してしまうこと、並びに、重水素化溶媒Lに用いる重水の融点である4℃以下に冷却すると、ガス冷却部10の内部で重水素化溶媒Lが固化して流路閉塞を招くおそれがあること等を考慮し、5℃~10℃の範囲に設定することが好ましい。
【0075】
次いで、冷却後の重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRを、混合ガス移送ライン51を介して2段目の反応容器2Bに導入し、上記同様のアンモニア供給ステップ、キャリアガス供給・バブリングステップ、交換反応ステップを実施する。
次いで、上記の混合ガスRを、混合ガス移送ライン52を介して3段目の反応容器2Cに導入し、上記同様の各ステップを実施する。
【0076】
次いで、3段目の反応容器2Cから導出された重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRは、ガス冷却部10による冷却処理を経て、第1生成ガス送出ライン91を介して後段の溶媒除去器7に導入され、不純物となる重水素化溶媒Lが除去される。
次いで、溶媒除去器7で精製された重水素化アンモニアH及びキャリアガスCの混合ガスRは、後段の分離回収器8に導入され、重水素化アンモニアHとキャリアガスCとに分離することで、不純物となるキャリアガスCを除去する。
次いで、反応容器2中の重水素化アンモニアHの回収が終了した後、キャリアガスCの反応容器2内への供給を停止する。
以上により、3台の反応容器2A,2B,2Cを用いた1バッチの重水素化アンモニアHの合成手順が終了する。
【0077】
次に、本実施形態における、複数の反応容器2A,2B,2Cを用いて交換反応ステップを行う方法について詳述する。
通常、2バッチ目以降の軽水素-重水素同位体交換反応を行う場合、交換反応によって重水素化率が低下した重水素化溶媒Lを未使用のものに入れ換える必要がある。このとき、図1に示す製造装置1のように、複数(図示例では3台)の反応容器2(2A,2B,2C)を用いる場合には、全ての重水素化溶媒Lを未使用のものに入れ換える必要はない。これは、反応容器2Aよりも後段側の反応容器2(反応容器2B)に収容された重水素化溶媒Lは、重水素化率の低下が小さいことから、2バッチ目の交換反応においても再利用することが可能なためである。
【0078】
例えば、重水素化溶媒Lとして99.8atom%Dの重水を用い、1バッチ目が終了した後の重水素化率が、1段目:80.0atom%D、2段目:95.0atom%D、3段目:99.0atom%Dとなった場合には、図3中に示すように、まず、1段目の反応容器2A内の重水素化溶媒Lのみを溶媒出口26から排出する。そして、2段目の反応容器2B内の重水素化溶媒Lを、溶媒移送ライン61を介して1段目の反応容器2A内に移送させ、3段目の反応容器2C内の重水素化溶媒Lを、溶媒移送ライン62を介して2段目の反応容器2B内に移送させた後、3段目の反応容器2C内にのみ、未使用の重水素化溶媒Lを補給する。このとき、2バッチ目の交換反応開始前の重水素化率は、1段目:95.0atom%D、2段目:99.0atom%D、3段目:99.8atom%Dとなる。このような条件で、2バッチ目の交換反応を実施することで得られる重水素化アンモニアHの重水素化率は、1バッチ目と比較してほとんど変化しない。即ち、毎バッチにおいて全ての重水素化溶媒Lを未使用のものに入れ換える必要は無く、重水素化溶媒Lの一部を再利用することで、重水素化溶媒Lとして用いる高価な重水の使用量や廃棄量を削減することが可能になる。また、例えば、重水素化溶媒Lの再利用が、上記のうちの一部のみに留まった場合や、重水素化溶媒Lを2段以上前段で配置された反応容器2に移送させた場合であっても、重水素化溶媒L使用量や廃棄量の削減に一定の効果が得られる。
【0079】
本実施形態の製造方法では、以上の手順により、高温・高圧条件を用いることなく、目的物質である重水素化アンモニアHを得ることができる。また、反応容器2を複数用いることで、使用する重水素化溶媒Lの総量を低減できる。さらに、反応容器2A,2B,2Cの各々の間を溶媒移送ライン61,62で接続し、重水素化溶媒Lを再利用することで、バッチ単位での重水素化溶媒Lの排出量を低減し、効率よく交換反応を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態においては、上記(2)のアンモニア供給ステップ及び上記(3)の交換反応ステップの後に、キャリアガスCを供給する上記(4)のキャリアガス供給・バブリングステップを実施する例について説明しているが、これには限定されない。例えば、上記(2)のアンモニア供給ステップにおいてアンモニアAを供給するのと平行して、上記(4)のキャリアガス供給・バブリングステップを実施することにより、アンモニアA及びキャリアガスCを反応容器2内に同時供給することも可能である。
【0081】
また、上記の説明においては、図1図3に示したような、3台の反応容器2A,2B,2Cが直列で接続された製造装置1を用いた場合について説明しているが、交換反応の回数(段数)、即ち、複数の反応容器2の台数や、これらを接続する各ラインの本数等は、これには限定されない。例えば、交換反応の回数は3回よりも多くすることも可能であるが、上述したように、反応容器2の台数が増えることは装置の大型化を招く懸念もあるため、3回程度とすることが好ましい。
【0082】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の重水素化アンモニアの製造方法によれば、反応容器2に向けてアンモニアAを供給するアンモニア供給ステップと、反応容器2の内部において、アンモニアAと重水素化溶媒Lとで軽水素-重水素同位体交換反応を行う交換反応ステップと、反応容器2に向けてキャリアガスCを供給するキャリアガス供給・バブリングステップとを備えた方法を採用している。
このように、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基等のようなプロトン交換性官能基を有する重水素化溶媒Lと、重水素化されていないアンモニアAとを混合・溶解して交換反応を行い、その後、キャリアガスCの供給により、重水素化溶媒Lに溶解した重水素化アンモニアHをガスの形で取り出すことで、高温や高圧の条件を必要とすることなく、重水素化アンモニアHを得ることができる。
従って、製造工程におけるエネルギー負荷が抑制され、低コスト且つ優れた生産効率で重水素化アンモニアHを製造することが可能になる。
【0083】
また、本実施形態の重水素化アンモニアの製造装置1によれば、上記のように、反応容器2に向けてアンモニアAを供給するアンモニア供給ライン32を含むアンモニア供給部3と、反応容器2に向けてキャリアガスCを供給するキャリアガス供給ライン4を含むキャリアガス供給部とを備え、反応容器2が、供給されたアンモニアAと、内部に貯留された重水素化溶媒Lとで軽水素-重水素同位体交換反応を行う構成を採用している。
これにより、上記同様、重水素化溶媒Lと、重水素化されていないアンモニアAとで交換反応を行い、キャリアガスCの供給により、重水素化溶媒Lに溶解した重水素化アンモニアHをガスの形で取り出すことで、高温や高圧の条件を必要とすることなく、重水素化アンモニアHが得られる。
従って、上記同様、製造工程におけるエネルギー負荷が抑制され、低コスト且つ優れた生産効率で重水素化アンモニアHを製造することが可能になる。
【0084】
<その他の形態>
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明には、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【実施例
【0085】
以下、本発明の重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
実施例1においては、図1に示すような、本発明に係る重水素化アンモニアの製造装置1を使用し、以下に示す条件により、重水素化アンモニアHを合成するステップを実施した。
そして、合成・精製した重水素化アンモニアHを図視略の封入容器で回収した後、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:フーリエ変換赤外分光法)により、定性純度分析を行った。
また、合成・精製した重水素化アンモニアHについて、GC(ガスクロマトグラフィ)、及び、1H-NMR(Proton Nuclear Magnetic Resonance:プロトン核磁気共鳴)により、定量純度分析を行った。
【0087】
以下、実施例1における重水素化アンモニアHの合成条件を示す。
(1)反応容器2:内径160mm、高さ400mm(計3台を直列接続で使用)
(2)重水素化溶媒L:重水
(3)重水素化溶媒Lの重水素化率:99.8atom%D
(4)重水素化溶媒Lの使用量:8kg×3台(反応容器2)
(5)アンモニアAの供給流量:10L/min
(6)キャリアガスC:窒素
(7)キャリアガスCの供給流量:25L/min
(8)反応容器2内の圧力:0.05~0.1MPaG
(9)散気管23A:濾過径50μmのSUS製焼結金属フィルター
(10)攪拌速度:600rpm
(11)反応容器2内の温度:55℃(加熱温度:60℃)
(12)冷却後の混合ガスの温度:7℃(冷却温度:5℃)
(13)その他条件(溶媒除去器7及び分離回収器8の容量、圧力、温度):適宜調整
【0088】
上記条件で合成した重水素化アンモニアHのFT-IRスペクトルを図4に示すとともに、GC及び1H-NMRによる分析結果を下記表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
図4のスペクトルに示すように、実施例1で合成した重水素化アンモニアHから得られたピークは、原料であるアンモニアから短波長側にシフトしており、さらに、目標生成物である重水素化アンモニアと一致したことから、重水素化アンモニアが得られたと推察される。
さらに、表1に示すように、実施例1で合成した重水素化アンモニアHは、化学純度が高く、また、高重水素化率であることが確認できた。
【0091】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1と同様の手順及び条件で1バッチ目の重水素化アンモニアを合成した後、さらに、2バッチ目の合成を実施した。ここで、2バッチ目については、実施例1で実施した1バッチ目と同様の手順及び条件で実施したが、重水素化溶媒Lの供給については、最前段の反応容器2A内の重水素化溶媒Lのみを排出させ、反応容器2B及び反応容器2C内の重水素化溶媒Lは、それぞれ前段側の反応容器2A又は反応容器2Bに移送して再利用し、最終段の反応容器2Cにのみ、未使用の重水素化溶媒Lを供給した。
【0092】
そして、実施例2で得られた重水素化アンモニアHについて、実施例1と同様の方法で分析したところ、実施例1で得られた重水素化アンモニアHの図4に示したスペクトル、並びに、表1に示した分析結果を再現する結果となった。
【0093】
以上説明した実施例の結果より、本発明の重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置が、高温・高圧条件を必要とすることなく、目的物質である重水素化アンモニアを高化学純度、高重水素化率で得られることが明らかとなった。また、2バッチ目の合成では、重水素化溶媒の一部を採用した場合でも、化学純度と重水素化率に影響が無いことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の重水素化アンモニアの製造方法及び製造装置は、高温や高圧の条件を必要とすることなく、製造工程におけるエネルギー負荷が抑制され、低コスト且つ優れた生産効率で重水素化アンモニアを製造することが可能なものである。従って、本発明は、例えば、種々の反応機構の解明、並びに、医薬農薬分野におけるトレーサー・プローブ等の試薬や、農薬、医薬の合成ビルディングブロックとしての用途における重水素化アンモニアを得る製造方法及び製造装置として非常に好適である。
【符号の説明】
【0095】
1…重水素化アンモニアの製造装置
2,2A,2B,2C…反応容器(複数の反応容器)
21…ガス導入口
22…ガス導出口
23…ガス供給配管
23a…出口
23A…散気管
24…攪拌機構
25…溶媒導入口
26…溶媒出口
27…加圧用ガス導入口
3…アンモニア供給部
31…アンモニア容器
32…アンモニア供給ライン
4…キャリアガス供給ライン(キャリアガス供給部)
51,52…混合ガス移送ライン
61,62…溶媒移送ライン
60a,60b…開閉バルブ
7…溶媒除去器
8…分離回収器
91…第1生成ガス送出ライン
92…第2生成ガス送出ライン
10…ガス冷却部
A…アンモニア
L…重水素化溶媒
C…キャリアガス
R…混合ガス(重水素化アンモニア及びキャリアガスの混合ガス)
H…重水素化アンモニア
図1
図2
図3
図4