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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】発泡成形体及び発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240514BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240514BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08L23/12
B29C44/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019002936
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020111661
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月1日 第56回(2018年度)日立化成研究発表会にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 重哉
(72)【発明者】
【氏名】富田 教一
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-111708(JP,A)
【文献】特開平08-067758(JP,A)
【文献】特開2019-171871(JP,A)
【文献】特開平11-322993(JP,A)
【文献】特開平11-080404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
C08L 1/01-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と添加剤と発泡剤とからなる樹脂材料が発泡してなり、
137℃での貯蔵弾性率が1.50MPa以上であり、
前記樹脂は、ポリプロピレン系樹脂(分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を除く。)であり、
前記添加剤は、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂であり、前記分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の含有率は、前記樹脂材料に対して質量%~質量%であり、
前記発泡剤の含有率は、前記樹脂材料に対して0.05質量%~1質量%であり、
結晶化ピーク温度が125℃以上130℃以下である発泡成形体。
【請求項2】
180℃での溶融張力が5.0mN以上である請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の230℃でのMFRが、35g/10分以上である請求項1又は請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発泡成形体を製造する発泡成形体の製造方法であって、
前記樹脂材料を発泡させる工程を含む発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体及び発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合系樹脂等の熱可塑性樹脂の射出発泡成形体は、軽量であり剛性に優れる観点から、自動車用の部材として使用されている。
射出発泡成形方法の一つとして、コアバック法がある。コアバック法とは、発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、可動金型の位置をスライドさせた後、さらに発泡成形をする成形方法である。この成形方法を用いれば、成形体の表層が発泡層よりも発泡率の低いスキン層になり、成形体の内部が均一な高倍率の発泡層になる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-121793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出発泡成形体がコンソールボックス、ドアトリム、デッキサイドトリム、バックドアトリム、インスツルメントパネル等の自動車内装部品、フェンダー、サイドシル、バンパー、バックドアアウタ等の自動車外装部品などとして使用される場合、射出発泡成形体には、軽量、薄肉であり、かつ外観の良さが要求される。
【0005】
しかしながら、射出発泡成形体の表面には、円形状又は楕円状の小さなくぼみ(以下、「アバタ」と称することがある。)が発生しやすく外観上問題となる場合がある。このため、発泡成形体のアバタの発生を抑制することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、アバタの発生が抑制された発泡成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 樹脂と発泡剤とを含む樹脂材料が発泡してなり、137℃での貯蔵弾性率が1.00MPa以上である発泡成形体。
<2> 結晶化ピーク温度が125℃以上である<1>に記載の発泡成形体。
<3> 180℃での溶融張力が5.0mN以上である<1>又は<2>に記載の発泡成形体。
<4> 前記樹脂材料は、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の発泡成形体。
<5> 前記樹脂材料の分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の含有率は、2質量%以上である<4>に記載の発泡成形体。
<6> 前記分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の230℃でのMFRが、35g/10分以上である<4>又は<5>に記載の発泡成形体。
【0008】
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の発泡成形体を製造する発泡成形体の製造方法であって、前記樹脂材料を発泡させる工程を含む発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アバタの発生が抑制された発泡成形体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】金型を備える成形装置の概略を説明するための図である。
図2】実施例1、2及び比較例1における貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
なお、本開示において、発泡成形体、発泡層及びスキン層の厚さは、実体顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)又は偏向顕微鏡を用いて発泡成形体の断面を観察し、厚さがそれぞれ最大となる部分を指す。
【0012】
<発泡成形体>
本開示の発泡成形体は、樹脂と発泡剤とを含む樹脂材料が発泡してなり、137℃での貯蔵弾性率が1.00MPa以上である。本開示の発泡成形体では、アバタの発生が抑制されるが、その理由は以下のように推測される。後述のようにして測定される137℃での貯蔵弾性率が1.00MPa以上であるため、溶融状態の樹脂材料が金型内に流動していく過程で、金型と接触している表面部分が冷却していくときに早く結晶化が進行して固化することで、剛性の高いスキン層が形成される。溶融状態の樹脂材料が金型内に流動していく過程で流動末端部では急激な減圧により発泡剤が分解して、気泡が発生し、可動側金型の位置をスライドさせたときに樹脂材料の内部に発生し、膨張している気泡が冷却されることで体積収縮して樹脂材料を内部に引き込もうとする負応力よりも、スキン層の剛性が勝るため、アバタの発生が抑制できると考えられる。
【0013】
本開示の発泡成形体における137℃での貯蔵弾性率は、アバタの発生をより好適に抑制する点から、1.00MPa以上であることが好ましく、1.50MPa以上であることがより好ましい。また、本開示の発泡成形体における137℃での貯蔵弾性率は、10.0MPa以下であってもよく、5.00MPa以下であってもよい。
なお、137℃での貯蔵弾性率は、樹脂と発泡剤とを含む樹脂材料が発泡してなる厚さ2.5mmの発泡成形体を得て後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
【0014】
本開示の発泡成形体における結晶化ピーク温度は、アバタの発生をより好適に抑制する点から、125℃以上が好ましく、125.5℃以上がより好ましく、126℃以上が更に好ましい。また、本開示の発泡成形体における結晶化ピーク温度は、発泡倍率の点から、130℃以下であってもよく、129℃以下であってもよい。
なお、結晶化ピーク温度は、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。例えば、結晶化ピーク温度は、後述の実施例に示すように発泡剤を含まない以外は、本開示の発泡成形体の原料となる樹脂材料と同じ樹脂材料を用いて測定される値であってもよい。また、結晶化ピーク温度は、発泡成形体を溶融して得られた溶融樹脂材料を用い、実施例に示す方法にて測定される値であってもよい。
【0015】
本開示の発泡成形体では、180℃での溶融張力が5.0mN以上であることが好ましく、5.5mN以上であることがより好ましく、5.6mN以上であることが更に好ましく、6.0mN以上であることが特に好ましい。180℃での溶融張力が5.0mN以上であることにより、金型内を樹脂材料が流動する際に樹脂材料の内部にて減圧により生じた気泡を破れにくくし、また可動側金型の位置をスライドさせた際に気泡の拡大とともに樹脂が延伸されるために破泡が抑制されると考える。これにより、金型と接触している表面部分への気泡の移動機会が減少することでアバタの発生をより好適に抑制できると推測される。
【0016】
本開示の発泡成形体では、発泡倍率の点から、180℃での溶融張力が10mN以下であってもよく、8.0mN以下であってもよい。
なお、180℃での溶融張力は、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。例えば、180℃での溶融張力は、後述の実施例に示すように発泡剤を含まない以外は、本開示の発泡成形体の原料となる樹脂材料と同じ樹脂材料を用いて測定される値であってもよい。また、180℃での溶融張力は、発泡成形体を溶融して得られた溶融樹脂材料を用い、実施例に示す方法にて測定される値であってもよい。
【0017】
本開示の発泡成形体では、アバタの発生をより好適に抑制する点から、結晶化ピーク温度と180℃での溶融張力との積が、700以上であることが好ましく、750以上であることが更に好ましい。
本開示の発泡成形体では、発泡倍率の点から、結晶化ピーク温度と180℃での溶融張力との積が、1250以下であってもよく、1000以下であってもよい。
【0018】
(発泡層及びスキン層)
本開示の発泡成形体は、樹脂と発泡剤とを含む樹脂材料が発泡してなる。例えば、本開示の発泡成形体は、発泡層と、発泡層を被覆するスキン層を備え、発泡層は樹脂材料が発泡してなる層であり、スキン層はこの樹脂材料が冷却固化した層であってもよい。
【0019】
発泡層は、金型内に充填された樹脂材料を発泡成形することにより形成される層であってもよく、また、スキン層は、樹脂材料が冷却固化して形成され、発泡層よりも発泡率が低い層であってもよい。
【0020】
樹脂材料に用いる樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリカーボネート系樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。この中でも、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0021】
樹脂材料は、前述の樹脂及び後述する発泡剤以外の成分を含んでいてもよい。例えば、樹脂材料は、フィラー充填材、ガラス繊維、炭素繊維等を含んでいてもよい。
【0022】
また、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム(別名、重炭酸ナトリウム、重曹)等の無機発泡剤などが挙げられる。自動車用外装部品の発泡成形では、環境試験性能に優れる点から、発泡剤として有機発泡剤を用いることが好ましい。
【0023】
有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられ、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。特に、外装品を製造する場合は、分解物に水がほぼ含まれないアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好ましい。
【0024】
発泡剤の総量中のアゾジカルボンアミド(ADCA)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0025】
発泡剤の分解温度は、50℃~250℃であることが好ましく、100℃~220℃であることがより好ましい。使用形態によって、発泡剤の分解温度は、130℃~250℃であってもよい。
【0026】
樹脂材料中の発泡剤の含有率は、発泡剤の種類等に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いる場合、発泡性及び成形性の観点から、樹脂材料中のアゾジカルボンアミド(ADCA)の含有率は、0.05質量%~0.5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%~0.4質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、ADCAの含有率は、後述する射出機のシリンダ投入前の混合物(組成物)での割合を意味する。
【0027】
樹脂材料は、発泡成形体の結晶化ピーク温度、溶融張力等を高める点から、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含むことが好ましく、前述の樹脂としてポリプロピレン系樹脂とともに分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含むことがより好ましい。
【0028】
樹脂材料が分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含む場合、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の含有率は、樹脂材料全量に対して、4質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。
【0029】
樹脂材料が分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂を含む場合、分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の含有率は、20質量%以下であってもよく、16質量%以下であってもよい。
【0030】
分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の230℃でのMFR(メルトフローレート)は、35g/10分以上であることが好ましく、40g/10分以上であることがより好ましく、50g/10分以上であることが更に好ましい。
【0031】
分岐鎖を有するポリプロピレン樹脂の230℃でのMFRは、100g/10分以下であってもよく、80g/10分以下であってもよい。
なお、MFRは、JIS K7210-1(2014)に準拠して、230℃、2.16kg荷重(21.18N荷重)で測定したときの値である。
【0032】
発泡層の厚さは、特に限定されず、0.01mm~5.9mmであることが好ましく、1.0mm~5.0mmであることがより好ましく、1.7mm~2.9mmであることが更に好ましい。
【0033】
発泡層の空隙率は、2%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。発泡層の空隙率が10%以上であることにより、発泡成形体の軽量化の点から有利である一方、スキン層の表面にアバタが生じやすくなる傾向にある。しかし、本開示の発泡成形体では、結晶化ピーク温度が125℃以上であることにより、発泡層の空隙率を大きくした場合であっても軽量化とアバタの抑制との両立を図ることができると考えられる。
なお、空隙率は、以下の式(1)に示すように発泡成形体のある断面の断面積に対するこの断面に存在する各気泡の合計面積の比率を意味する。
空隙率=(各気泡の合計面積/発泡成形体の断面積)×100・・・(1)
【0034】
スキン層の厚さは、特に限定されず、0.05mm~2.995mmであることが好ましく、0.1mm~1.0mmであることがより好ましく、0.3mm~0.5mmであることが更に好ましい。
【0035】
<発泡成形体の製造方法>
本開示の発泡成形体の製造方法は、前述の本開示の発泡成形体を製造する発泡成形体の製造方法であって、金型内にて前記樹脂材料を発泡させる工程を含む。本開示の発泡成形体の製造方法では、アバタの発生が抑制された発泡成形体を得ることができる。
【0036】
本開示の発泡成形体の製造方法では、例えば、固定側金型と、固定側金型に対して開閉方向に移動可能とされ、固定側金型との間に空隙であるキャビティを形成する可動側金型とで構成される一組の金型におけるキャビティ内に樹脂と発泡剤とを含む樹脂材料を射出する工程と、キャビティ内を樹脂材料で充填した後、金型を構成する固定側金型から可動側金型を開放方向に移動させて前記キャビティ内の容積を拡張する工程と、を経た方法により発泡成形体を成形することができる。
【0037】
図1に、発泡成形体の製造に適用可能な成形装置の概略構成図を示す。図1に示される成形装置16は、固定側金型17と、固定側金型17に対して開閉方向に移動可能とされ、固定側金型17との間に空隙であるキャビティ18を形成する可動側金型19と、を備えている。
【0038】
また、成形装置16は、キャビティ18まで固定側金型17を貫通するゲート21と、ゲート21を通じてキャビティ18に溶融状態の樹脂材料Rを射出充填する射出機22と、を備えている。射出機22は、図示しないホッパ(供給部)と図示しないシリンダとを備えている。この射出機22では、樹脂、発泡剤、及び必要に応じて用いられる添加剤等を含む混合物がホッパ(供給部)からシリンダに供給され、シリンダ内にてスクリュー等で撹拌されて樹脂材料Rとして調製され、所定の圧力でゲート21を通じて樹脂材料Rをキャビティ18内に射出充填する。なお、射出機22は、ゲート21を通じてキャビティ18に溶融状態の樹脂材料Rを射出充填できれば、上記構成に限定されるものではない。
【0039】
樹脂材料Rが熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂材料Rは加熱して流動化させてキャビティ18内に供給される。
【0040】
また、固定側金型17及び可動側金型19は、通常、溶融状態の樹脂材料Rよりも低い温度となっている。そのため、樹脂材料Rがキャビティ18内へ充填されることで、固定側金型17及び可動側金型19に接した部分から、樹脂材料Rの冷却固化が始まり、スキン層が形成される。
【0041】
次いで、可動側金型19を固定側金型17に対して開放方向(型開き方向)に所定量開き(コアバック)、固化していない樹脂材料Rを発泡させて発泡層を形成する。その後、固定側金型17と可動側金型19を型開きし、発泡成形体を可動側金型19から取り外すことで、発泡成形体が得られる。
【実施例
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
[樹脂材料の原料]
発泡成形体の製造に用いた樹脂材料は以下の通りである。
(樹脂)
PP-A(ポリプロピレン、品名「MX01HX」、230℃でのMFR41g/10min、サンアロマー株式会社)
PP-B(ポリプロピレン、品名「TSOP-GP6」、230℃でのMFR41g/10min、株式会社プライムポリマー)
(発泡剤)
アゾジカルボンアミド(ADCA)
(添加剤)
分岐鎖ポリプロピレン(品名「039N」、230℃でのMFR60g/10min、株式会社カネカ)
【0044】
[実施例1]
(発泡成形体の作製)
PP-A、発泡剤、及び添加剤を含む樹脂材料をホッパからシリンダに供給し、シリンダ内にてスクリューを用いて200℃の条件にて樹脂材料を100回転/分で撹拌した。樹脂材料全量における発泡剤の含有率は1質量%であり、添加剤の含有率は4質量%であった。
次に、溶融状態の樹脂材料を60℃に調節した金型内に樹脂圧10MPa、射出速度90mm/sで注入した。注入後、冷却時間10秒の条件にて、樹脂材料を冷却固化させた。そして、可動側金型を固定側金型に対して開放方向(型開き方向)に2.5mm開き、固化していない樹脂材料を発泡させて発泡層を形成した。その後、固定側金型と可動側金型を型開きし、8cm×15cm×2.5mmの発泡成形体を取り出した。
【0045】
(アバタの評価)
アバタの評価については、3D形状測定機(株式会社キーエンス、VR-3200)を用いて発泡成形体の表面を観察し、観察領域にて周囲よりも高さが3μm以上低い領域をアバタとし、観察領域の面積全体におけるアバタの面積の比率(面積率)を求めて評価した。評価の基準は以下の通りである。
評価A・・・観察領域の面積全体におけるアバタの面積の比率が3%以下である。
評価B・・・観察領域の面積全体におけるアバタの面積の比率が3%越えである。
結果を表1に示す。
【0046】
(貯蔵弾性率の測定用サンプルの作製)
前述のようにして作製した発泡成形体から15mm×15mmに切り出し、測定用サンプルを作製した。
【0047】
(貯蔵弾性率の測定)
前述の測定用サンプル及び粘弾性測定装置(品名MCR302、Anton Paar社)を用い、測定温度200℃~20℃、降温速度:5℃/分、周波数:1Hz、使用コーン:直径12mm、ひずみ1%~0.01%、液体窒素雰囲気下)により貯蔵弾性率を測定した。
結果を表1及び図2に示す。なお、図2中、1.00E+03~1.00E+09とは、1.00×10~1.00×10を意味している。
【0048】
(結晶化ピーク温度及び溶融張力の測定用サンプルの作製)
樹脂成形体の製造のため、成形機(PLASTER Si-130 II、東洋機械金属株式会社)を用いた。
まず、PP-A及び添加剤を含み、全量に対して添加剤を4質量%含む樹脂材料をホッパからシリンダに供給し、シリンダ内にてスクリューを用いて200℃の条件にて樹脂材料を100回転/分で撹拌した。次に、溶融状態の樹脂材料を60℃に調節した金型内に樹脂圧10MPa、射出速度90mm/sで注入した。注入後、冷却時間10秒の条件にて、金型内に注入された樹脂材料が固化されることにより、9cm×9cm×1mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体を粉砕機(TH-1328、株式会社ホーライ)を用いて粉砕し、結晶化ピーク温度及び溶融張力の測定用サンプルを作製した。
【0049】
(結晶化ピーク温度の測定)
前述の測定用サンプル5mg及びDiscovery DSC Q1000(TAインスツルメント社)を用い、40℃で3分間保持し、50℃/分の条件で230℃まで昇温し、230℃で3分間保持し、30℃/分の条件で60℃まで冷却して結晶化ピーク温度を測定した。
結果を表1に示す。
【0050】
(溶融張力の測定)
前述の測定用サンプル及びキャピラログラフ1D(株式会社東洋精機製作所)を用い、測定温度180℃、ピストンの押し出しせん断速度60mm/min、引き取り速度200m/minにて溶融張力を測定した。
結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
樹脂をPP-Bに変更し、また添加剤の量を樹脂材料全量に対して4質量%から8質量%に変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1及び図2に示す。
【0052】
[比較例1]
添加剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1及び図2に示す。
[比較例2]
添加剤を使用しなかった以外は、実施例2と同様の評価を行った。
結果を表1及び図2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
図2に示すように、130℃~140℃付近にて実施例1及び2では、比較例1及び2よりも貯蔵弾性率が高かった。
表1に示すように、実施例1及び2の発泡成形体では、比較例1及び2の発泡成形体と比較してアバタの発生が抑制されていた。特に、実施例2では、実施例1よりもアバタの発生が抑制されていた。
【0055】
実施例1及び2の発泡成形体の断面と、比較例1及び2の発泡成形体の断面とを、目視にて確認したところ、添加剤の有無にかかわらず、実施例1及び2並びに比較例1及び2のスキン層の厚さがほぼ同じであった。これにより、実施例1及び2では、スキン層の厚さが大きくならずにスキン層の剛性が向上しており、その結果、アバタの発生が抑制されていることが分かった。
【符号の説明】
【0056】
16 成形装置
17 固定側金型
18 キャビティ
19 可動側金型
21 ゲート
22 射出機
図1
図2