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特許7487465液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240514BHJP
   B41J 2/055 20060101ALI20240514BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/055
B41J2/01 403
B41J2/01 401
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019208225
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2020093535
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018226134
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】寒川 哲幹
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055532(JP,A)
【文献】特開2017-047605(JP,A)
【文献】特開2015-089618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319159(US,A1)
【文献】特開2013-056529(JP,A)
【文献】特開2003-175600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に液体を吐出するノズルと、該ノズルと連通する液室と、該液室内の液体に駆動波形の変化により圧力を発生させる圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形を生成する駆動波形生成手段と、
前記駆動波形の一部を選択的にマスクして、前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形のパルスを選択する波形選択部と、を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させるための少なくとも1つの吐出パルスと、前記記録媒体上の液体を吐出させない箇所で液体を前記ノズルから吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微駆動パルスとを含んでおり、前記微駆動パルスは前記駆動波形の吐出周期の先頭に配置され、
前記微駆動パルスと前記吐出パルスについて、同じ方向に電位変化する場合、前記駆動波形において、前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tcの整数倍になる位置に配置されており、
前記波形選択部は、前記吐出パルスを選択する場合、該吐出パルスと同じ吐出周期内の前記微駆動パルスを選択せず、
前記微駆動パルス及び前記吐出パルスは、所定の勾配を有する立ち下がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち上がり要素を時系列で有する波形であり、
前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスの立ち上がり要素開始時から、前記微駆動パルスの前記立ち上がり要素開始時までの時間が、前記液室の固有振動周期Tcの整数倍となるように配置されており、
前記吐出パルスの前記立ち上がり要素および前記微駆動パルスの前記立ち上がり要素は、前記液室の体積を収縮させる
液体吐出装置。
【請求項2】
記録媒体上に液体を吐出するノズルと、該ノズルと連通する液室と、該液室内の液体に駆動波形の変化により圧力を発生させる圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形を生成する駆動波形生成手段と、
前記駆動波形の一部を選択的にマスクして、前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形のパルスを選択する波形選択部と、を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させるための少なくとも1つの吐出パルスと、前記記録媒体上の液体を吐出させない箇所で液体を前記ノズルから吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微駆動パルスとを含んでおり、前記微駆動パルスは前記駆動波形の吐出周期の先頭に配置され、
前記微駆動パルスと前記吐出パルスについて、異なる方向に電位変化する場合、前記駆動波形において、前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の周期の吐出パルスに対して、液室の固有振動周期Tc、整数Nとしたときに"N×Tc+0.5Tc"となる位置に配置されており、
前記波形選択部は、前記吐出パルスを選択する場合、該吐出パルスと同じ吐出周期内の前記微駆動パルスを選択せず、
前記微駆動パルスは、所定の勾配を有する立ち上がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち下がり要素を時系列で有する波形であり
前記吐出パルスは、所定の勾配を有する立ち下がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち上がり要素を時系列で有する波形であり、
前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスの立ち上がり要素開始時から、前記微駆動パルスの前記立ち下がり要素開始時までの時間が、前記液室の固有振動周期Tc、整数Nとしたときに"N×Tc+0.5Tc"となるように配置されており、
前記吐出パルスの前記立ち上がり要素は前記液室の体積を収縮させ、前記微駆動パルスの前記立ち下がり要素は前記液室の体積を拡大させる
液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動波形は、1つの吐出周期内に複数の滴サイズの液体を吐出させる複数の吐出パルスを含む共通駆動波形である場合、
前記複数の吐出パルスの終端は等しい、又は前記複数の吐出パルスに含まれる一のパルス終端と他のパルス終端の間隔は、前記液室の固有振動周期Tcの整数倍であり、
前記共通駆動波形において、前記微駆動パルスは、1つ手前の吐出周期のいずれか1つの吐出滴の最終吐出パルスに対して、長さが調整されて配置されている
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記駆動波形において、前記微駆動パルスは、前記液室の固有振動周期Tcに対して、狙いの位置から±1/4Tc以内の誤差で配置されている
請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記微駆動パルスは、前記記録媒体上の前記液体を吐出させない箇所に対して選択的に使用される
請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記波形選択部は、前記微駆動パルスを選択した場合、該微駆動パルスと同じ吐出周期の内の前記吐出パルスを選択しない
請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吐出パルスの後ろであって、前記吐出周期の最後に、前記吐出パルスとは異なる方向に電位変化する制振パルスを含む
請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
記録媒体上に液体を吐出するノズルと、該ノズルと連通する液室と、該液室内の液体に駆動波形の変化により圧力を発生させる圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドの制御方法であって、
前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形を生成する駆動波形生成ステップと、
前記駆動波形の一部を選択的にマスクして、前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形のパルスを選択する波形選択ステップと、を有し、
前記駆動波形は、液体を吐出させるための少なくとも1つの吐出パルスと、前記記録媒体上の液体を吐出させない箇所で液体を前記ノズルから吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微駆動パルスとを含んでおり、前記微駆動パルスは前記駆動波形の吐出周期の先頭に配置され、
前記微駆動パルスと前記吐出パルスについて、同じ方向に電位変化する場合、前記駆動波形において、前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tcの整数倍になる位置に配置されており、
前記波形選択ステップでは、前記吐出パルスを選択する場合、該吐出パルスと同じ吐出周期内の前記微駆動パルスを選択せず、
前記微駆動パルス及び前記吐出パルスは、所定の勾配を有する立ち下がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち上がり要素を時系列で有する波形であり、
前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスの立ち上がり要素開始時から、前記微駆動パルスの前記立ち上がり要素開始時までの時間が、前記液室の固有振動周期Tcの整数倍となるように配置されており、
前記吐出パルスの前記立ち上がり要素および前記微駆動パルスの前記立ち上がり要素は、前記液室の体積を収縮させる
液体吐出ヘッドの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク滴を吐出して画像を形成するインクジェット記録装置において、駆動波形の後端に制振用及びサテライトを減らす用の非吐出パルスを付与する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、サテライト短縮と制振それぞれに個別の非吐出パルスを設けずに1つの非吐出パルスを共用する目的で、垂直に電位を変化させる要素でサテライト短縮または制振を行う駆動波形の構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、高周波駆動時の制振性を向上させつつ、連続吐出滴後端のみを選択的にサテライト短縮をさせる場合には、画像データにおいて後端部分を検知し、後端部分の画像データをそれ以外の領域と分類する必要があるため、画像データを吐出滴に分類したデータに中間調処理で変換する処理時間の増加し、プリンターに転送される画像データの容量が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、画像データの変換処理に特別な処理を加えることなく、吐出滴の後端におけるサテライト短縮効果を高めることができる液体吐出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、
記録媒体上に液体を吐出するノズルと、該ノズルと連通する液室と、該液室内の液体に駆動波形の変化により圧力を発生させる圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形を生成する駆動波形生成手段と、
前記駆動波形の一部を選択的にマスクして、前記圧力発生手段に印加する前記駆動波形のパルスを選択する波形選択部と、を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させるための少なくとも1つの吐出パルスと、前記記録媒体上の液体を吐出させない箇所で液体を前記ノズルから吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微駆動パルスとを含んでおり、前記微駆動パルスは前記駆動波形の吐出周期の先頭に配置され、
前記微駆動パルスと前記吐出パルスについて、同じ方向に電位変化する場合、前記駆動波形において、前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tcの整数倍になる位置に配置されており、
前記波形選択部は、前記吐出パルスを選択する場合、該吐出パルスと同じ吐出周期内の前記微駆動パルスを選択せず、
前記微駆動パルス及び前記吐出パルスは、所定の勾配を有する立ち下がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち上がり要素を時系列で有する波形であり、
前記微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスの立ち上がり要素開始時から、前記微駆動パルスの前記立ち上がり要素開始時までの時間が、前記液室の固有振動周期Tcの整数倍となるように配置されており、
前記吐出パルスの前記立ち上がり要素および前記微駆動パルスの前記立ち上がり要素は、前記液室の体積を収縮させる
液体吐出装置、を提供する。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、液体吐出装置において、画像データの変換処理に特別な処理を加えることなく、吐出滴の後端におけるサテライト短縮効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るシリアル型画像形成装置のキャリッジ周辺の平面説明図。
図2】本発明の他の実施形態に係るライン型画像形成装置における画像形成部に含まれるヘッドユニットの分解概略斜視図。
図3図2のライン型のヘッドユニットの底面図と拡大図。
図4】液体吐出ヘッドの長手方向及び短手方向の横断面図。
図5】本発明の一実施形態の画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
図6図5の記録ヘッドドライバ周辺の構成例と信号を示すブロック図。
図7】本発明の実施形態に係る駆動波形の一例を示す図。
図8】画像上でサテライト滴を減らすと効果的な領域についての説明図。
図9】比較例に係る制振パルスの説明図。
図10】吐出パルスと非吐出パルスの距離と品質の関係を示す図。
図11】本発明の第1実施例に係るサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形を示すグラフ。
図12】本発明の第2実施例に係るサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形を示すグラフ。
図13】本発明のサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形の複数の吐出周期を示すグラフと、比較例のサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形の複数の吐出周期を示すグラフ。
図14】本発明の第3実施例に係るサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形を示すグラフ。
図15】本発明の他の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成例を含むブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
<シリアル型画像形成装置の構成>
まず、本発明の液体吐出装置をシリアル型の画像形成装置に適用する構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシリアル型画像形成装置のキャリッジ周辺の平面説明図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置1000は、キャリッジ部5と、主走査モータ8と、ギア9と、加圧コロ10と、タイミングベルト11と、ガイドロッド12と、プラテン7と、を備えている。
【0012】
キャリッジ部5には、インクなどの液体を吐出する複数の記録ヘッド6K,6C,6M,6Yが搭載されている。詳しくは、キャリッジ部5に設けられる複数の記録ヘッドのヘッド群60は、インクの色別に、黒(Bk)を吐出するブラック用ヘッド6K、マゼンダ(M)インクを吐出するマゼンダ用ヘッド6M、シアン(C)インクを吐出するシアン用ヘッド6C、黄色(Y)インクを吐出するイエロー用ヘッド6Yから構成されている。この構成により、画像形成装置1000は、カラー画像の形成に適用可能となる。記録ヘッド6K,6C,6M,及び6Yは、液体吐出ヘッドを構成する。
【0013】
キャリッジ部5は、ギア9と加圧コロ10とタイミングベルト11により、主走査モータ8の駆動力が伝達されるように構成されている。キャリッジ部5は、ガイドロッド12に対して主走査方向において摺動できるように取り付けられている。したがって、主走査モータ8に駆動力によって、キャリッジ部5は、図1の矢印Aに示す主走査方向において往復動作をすることができる。キャリッジ部5は、記録ヘッド6K,6C,6M,6Yと共に移動する移動体として機能する。
【0014】
プラテン7は、複数の記録ヘッド6K,6C,6M,6Yから吐出されたインク滴における到達対象物である用紙1を搬送するときに用いられる搬送手段の一部に相当する。
【0015】
ここで、用紙1とは、シート状の記録媒体であって、一般的には、紙(普通紙)である。本実施形態に係る用紙1は紙(普通紙)に限ることなく、コート紙、厚紙、OHP、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等のシート状の部材も含むものである。
【0016】
キャリッジ部5には、エンコーダセンサ51が設けられている。エンコーダセンサ51は、キャリッジ部5の移動方向(主走査方向)に沿って設けられているエンコーダシート(リニアスケール)50を読み取ることでキャリッジ部5の移動中の位置を検出できる。
【0017】
キャリッジ部5が主走査方向において往復移動をしながら、複数の記録ヘッド6K,6C,6M,6Yが所定のタイミングにおいて、それぞれの色のインク滴を用紙1に向けて吐出することで、用紙1に画像が形成される。
【0018】
用紙1は、給紙モータにより、給紙部より搬送部へ送られる。また、搬送部へ送られた用紙1は搬送モータにより搬送ローラを駆動し、主走査方向に直交する矢印B方向(副走査方向)に搬送され、プラテン7まで搬送されることで、画像形成が開始される。
【0019】
<ライン型画像形成装置の構成>
次に、本発明の液体吐出装置をライン型の画像形成装置に適用する構成について説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係るライン型画像形成装置における画像形成部に含まれるヘッドユニットの分解概略斜視図である。
【0020】
図2に示すヘッドユニット17は、4色のヘッドモジュール(ヘッドアレイ)20K,20C,20M,20Y、駆動制御基板3、フラットケーブル19、及びアジャスタプレート18等、を備えている。なお、駆動制御基板3は説明のために少し上方にずらして示している。
【0021】
図2に示すように、ヘッドモジュール20K,20C,20M,20Yは、それぞれ複数の記録ヘッド40Y-1~40Y-4を用紙幅(記録媒体1の幅)全領域で印刷可能に並べて固定しているラインヘッド型である。図2中、矢印で示すD方向にノズル列が形成されている。カラー印刷はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各記録ヘッド40Y-1~40Y-4により行われる。
【0022】
駆動制御基板3は、記録ヘッド40Y-1~40Y-4が備える圧電素子を駆動するための駆動波形を生成する回路と画像データ信号を生成するための回路を備えるリジッド基板である。
【0023】
フラットケーブル19は、駆動制御基板3と各記録ヘッド40Y-1~40Y-4とを電気的に接続するものである。
【0024】
アジャスタプレート18は、複数の各記録ヘッド40Y-1~40Y-4を高精度に配置固定するものである。記録ヘッド40Y-1~40Y-4は、液体吐出ヘッドとして機能する。
【0025】
ヘッドモジュール20K,20C,20M,20Yにおける各記録ヘッド40Y-1~40Y-4は、シリアル型の記録ヘッド6Kと同様に、圧電素子を内蔵している。そして、各記録ヘッド40Y-1~40Y-4において、駆動制御基板3から送信される駆動波形と画像データ信号に基づいて圧電素子を駆動し、用紙1にインク(液体、液滴)を吐出する。
【0026】
各ヘッド40Y-1~40Y-4のノズル面は、アジャスタプレート18の下面であるプラテン上に所定の隙間を保って支持されていることで、用紙1と所定の隙間を保って支持されている。用紙1は、矢印Cの方向に搬送される。
【0027】
各ヘッドモジュール20K,20C,20M,20Yの各記録ヘッド40Y-1~40Y-4が、用紙1の搬送速度に応じてインク滴の吐出を行うことで、用紙1上にカラー画像を形成する。
【0028】
なお、図2では、4色のヘッドを用いて説明しているが、配色は、これに限ることはない。
【0029】
<ヘッドユニットの底面>
図3は、図2のライン型のヘッドユニット17の底面図と拡大図である。
【0030】
図3は、ヘッドユニット17をラインヘッド構成で配置した概略図である。図3に示したヘッドユニット17は、4つのヘッドモジュール(ヘッドアレイ)20K、20C、20M、及び20Yの集合体により構成されている。ブラック用ヘッドモジュール20Kはブラックのインク滴を吐出し、シアン用ヘッドモジュール20Cはシアンのインク滴を吐出し、マゼンダ用ヘッドモジュール20Mはマゼンダのインク滴を吐出し、イエロー用ヘッドモジュール20Yはイエローのインク滴を吐出する。
【0031】
各ヘッドモジュール20K、20C、20M、及び20Yは、用紙等の記録媒体Sの搬送方向(矢印方向)と直交する方向に延びている。このようにヘッドをアレイ化することにより広域な印刷領域幅を確保している。
【0032】
図3(b)は、図3(a)の記録ヘッド40K-1の底面の拡大図である。記録ヘッド40Kのノズル面(底面)43には多数の印字ノズル40Nが2列に千鳥状に配列されている。このように多数の印字ノズル40Nを千鳥配列することで、高解像度に対応できる。
【0033】
なお、図3(a)では、ヘッドを直線状に複数並べることでライン化した例を示しているが、複数のヘッド千鳥配置によってライン化してもよい。あるいは、1ヘッドにてライン化しても構わない。また、配色もこれに限ることはない。
【0034】
<ヘッド>
次に、図4を用いて、記録ヘッド(液体吐出ヘッド)40K-1(6K)の内部構造について説明する。図4において、(a)は、記録ヘッド40K-1(6K)の液室長手方向の断面図であり、(b)は、(a)のSC1断面である液室短手方向の断面図である。
【0035】
図4(a)において、ヘッドユニット17の記録ヘッド(40K-1等)は、吐出するインクの通路を形成する流路板41と、流路板41の下面(記録ヘッドの内部方向)に接合された振動板42と、流路板41の上面(記録ヘッドの外側方向)に接合されたノズル板43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44とを備える。また、記録ヘッドは、振動板42を変形させるための圧力発生手段(アクチュエータ手段)45を有する。
【0036】
本実施形態に係る記録ヘッドは、流路板41と、振動板42と、ノズル板43とを積層することによって、ノズル(吐出口)40Nに連通する流路であるノズル連通路40R及び液室(圧力室)40Fを形成している。また、記録ヘッドは、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40Fにインクを供給するためのインク流入口40S及びインクを液室40Fに供給する共通液室40Cなどを形成している。
【0037】
また、本実施形態では、フレーム部材44には、圧力発生手段45を収納する収容部、共通液室40Cとなる凹部、及び共通液室40Cに記録ヘッド外部からインクを供給するためのインク供給口40INが形成されている。
【0038】
圧力発生手段45は、本実施形態では、電気機械変換素子である圧電素子45Pと、圧電素子45Pを接合固定するベース基板45Bと、隣り合う圧電素子45Pの間隙に配置された支柱部とを備えている。また、圧力発生手段45は、圧電素子45Pを駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル45C等を備えている。
【0039】
ここで、圧電素子45Pは、図4(b)に示すように、圧電材料45Ppと内部電極45Peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)を用いる。内部電極45Peは、複数の個別電極45Peiと複数の共通電極45Pecとを有する。内部電極45Peは、本実施形態では、圧電材料45Ppの端面に交互に個別電極45Pei又は共通電極45Pecを接続している。
【0040】
以下に、記録ヘッドがノズル40Nからインクを吐出する動作(引き-押し打ち動作)を具体的に説明する。
【0041】
記録ヘッドにおいて、先ず、圧電素子45P(圧力発生素子)に印加している電圧を基準電位から下げ、圧電素子45Pをその積層方向に縮小させる。また、記録ヘッドは、圧電素子45Pの縮小によって振動板42を撓み変形させる。このとき、記録ヘッドは、振動板42の撓み変形によって液室40Fの容積(体積)を拡大(膨張)させる。この動作により、記録ヘッドにおいて、共通液室40Cから液室40F内にインクを流入させる。
【0042】
次に、記録ヘッドは、圧電素子45Pに印加している電圧を上げ、圧電素子45Pを積層方向に伸長させる。また、記録ヘッドは、圧電素子45Pの伸長によって、振動板42をノズル40N方向に変形させる。このとき、記録ヘッドは、振動板42の変形によって、液室40Fの容積(体積)を縮小(収縮)させる。この動作により、記録ヘッドは、液室40F内のインクに圧力を付加する。また、記録ヘッドは、インクを加圧することによって、ノズル40Nからインクを吐出(噴射)する。
【0043】
その後、記録ヘッドは、圧電素子45Pに印加している電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に戻す(復元する)。このとき、記録ヘッドは、液室40Fの膨張によって液室40F内を減圧し、共通液室40C内から液室40F内にインクを充填(補充)する。次いで、記録ヘッドは、ノズル40Nのメニスカス面の振動が減衰(安定)した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、上記の動作を繰り返す。
【0044】
このように、記録ヘッドは、圧力発生手段45を用いて、振動板42を変形(撓み変形)する。これにより、記録ヘッドは、液室40Fの容積(体積)を変化させることで、液室40F内のインクに作用する圧力を変化させ、その結果、記録ヘッドは、ノズル40Nから、インクを吐出させる。
【0045】
なお、本発明を適用可能な記録ヘッドの駆動方法は、上記の例(引き-押し打ち)に限定されるものではない。例えば、記録ヘッドの駆動方法は、圧電素子45Pに印加する電圧(駆動波形)を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等を行ってもよい。さらに、圧力発生手段45は、発熱抵抗体を用いて液室40F内のインクを加熱して気泡を発生させるサーマル型や、液室40Fの壁面に振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させた静電力によって振動板を変形させる静電型のものを用いてもよい。
【0046】
以上により、本実施形態のヘッドユニット17では、複数の記録ヘッド40K-1、40K-2、40K-3、及び40K-4を夫々備えた、各色のヘッドモジュール20K、20C,20M,20Yを用いて、1回の記録媒体(用紙1)の搬送動作で、画像形成領域の全域に、白黒又はフルカラーの画像を形成する。あるいは、複数の記録ヘッド6K,6C,6M,6Yを用いて、走査を繰り返しながら、画像形成領域の全域に、白黒又はフルカラーの画像を形成する。
【0047】
<制御説明>
図5は、本実施形態の画像形成装置2(1000)のハードウェア構成例を示すブロック図である。画像形成装置2は、メイン制御基板100と、ヘッド中継基板200と、画像処理基板300とを備える。
【0048】
メイン制御基板100には、CPU(Central Processing Unit)101、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102、RAM(Random Access Memory)103、ROM(Read Only Memory)104、NVRAM(Non-Volatile Random Access
Memory)105、モータドライバ106、および駆動波形生成回路107などが実装されている。
【0049】
CPU101は、画像形成装置2の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM104に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置2における各種動作を制御するための制御指令を出力する。この際CPU101は、FPGA102と通信しながら、FPGA102と協働して画像形成装置2における各種の動作制御を行う。
【0050】
FPGA102には、CPU制御部111、メモリ制御部112、I2C制御部113、センサ処理部114、モータ制御部115、および記録ヘッド制御部116が設けられている。
【0051】
CPU制御部111は、CPU101と通信を行う機能を持つ。メモリ制御部112は、RAM103やROM104にアクセスする機能を持つ。I2C制御部113は、NVRAM105と通信を行う機能を持つ。
【0052】
センサ処理部114は、各種センサ130のセンサ信号の処理を行う。各種センサ130は、画像形成装置2における各種の状態を検知するセンサの総称である。各種センサ130には、上述したエンコーダセンサ51のほか、用紙1の通過を検知する用紙センサ、環境温度や湿度を検知する温湿度センサ、カートリッジ(不図示)のインク残量を検知する残量検知センサなどが含まれる。なお、温湿度センサなどから出力されるアナログのセンサ信号は、例えばメイン制御基板100などに実装されるADコンバータによりデジタル信号に変換されてFPGA102に入力される。
【0053】
モータ制御部115は、各種モータ140の制御を行う。各種モータ140は、画像形成装置2が備えるモータの総称である。各種モータ140には、キャリッジ部5を動作させるための主走査モータ、用紙1を副走査方向に搬送するための副走査モータ、用紙1を給紙するための給紙モータ、維持機構15を動作させるための維持モータなどが含まれる。
【0054】
ここで、主走査モータ8の動作制御を例に挙げて、CPU101とFPGA102のモータ制御部115との連携による制御の具体例を説明する。まず、CPU101がモータ制御部115に対して、主走査モータ8の動作開始指示とともに、キャリッジ部5の移動速度および移動距離を通知する。
【0055】
この指示を受けたモータ制御部115は、CPU101から通知された移動速度および移動指示の情報をもとに駆動プロファイルを生成し、センサ処理部114から供給されるエンコーダ値(エンコーダセンサ51のセンサ信号を処理して得られた値)との比較を行いながら、PWM指令値を算出してモータドライバ106に出力する。
【0056】
モータ制御部115は、所定の動作を終了するとCPU101に対して動作終了を通知する。なお、ここではモータ制御部115が駆動プロファイルを生成する例を説明したが、CPU101が駆動プロファイルを生成してモータ制御部115に指示する構成であってもよい。CPU101は、印字枚数のカウントや主走査モータ8のスキャン数のカウントなども行っている。
【0057】
記録ヘッド制御部116は、ROM104に格納されたヘッド駆動データ(波形データ)、吐出同期信号LINE、吐出タイミング信号CHANGEを、駆動波形生成手段の一例である駆動波形生成回路107に渡して、駆動波形生成回路107に共通駆動波形(共通駆動波形電圧)Vcomを生成させる。
【0058】
駆動波形生成回路107が生成した共通駆動波形Vcom(図7参照)は、ヘッド中継基板200に実装された後述の記録ヘッドドライバ210に入力される。
【0059】
<第1構成例>
次に、図6及び図7を参照して第1の構成例の共通駆動波形における波形(各種パルス)の選択について説明する。図6は、記録ヘッド制御部116、駆動波形生成回路107、記録ヘッドドライバ210の構成例を示すブロック図である。図7は、本発明の実施形態に係る駆動波形の一例を示す図である。
【0060】
記録ヘッド制御部116は、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成回路107へ出力する。さらに、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。
【0061】
駆動波形生成手段である駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで、共通駆動波形Vcomを生成する。
【0062】
さらに、記録ヘッド制御部116は、画像処理基板300に設けられた後述の画像処理部310から画像処理後の画像データSD'を受け取り、この画像データSD'をもとに、記録ヘッド40K-1の各ノズルから吐出させるインク滴の大きさに応じて共通駆動波形Vcomの所定波形(所定パルス)を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。
【0063】
この際、生成されたマスク制御信号MNにより、記録媒体上の白地部(白紙部分、非吐出部分)に対応するノズルに対しては、液体をノズルから吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微駆動パルスを選択し、他の吐出パルスが選択されないようにマスク処理を行う。
【0064】
マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。そして、記録ヘッド制御部116は、画像データSD'と、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、記録ヘッドドライバ210に転送する。
【0065】
本構成では、記録ヘッドドライバ210は、波形選択部の一例であって、共通駆動波形の一部を選択的にマスクして、圧力発生素子(圧電素子、圧力発生手段)45Pに印加する駆動波形のパルスを選択する。
【0066】
記録ヘッドドライバ210は、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213、レベルシフタ214、およびアナログスイッチ215を備える。
【0067】
シフトレジスタ211は、記録ヘッド制御部116から転送される画像データSD'および同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路212は、シフトレジスタ211の各レジスト値を、記録ヘッド制御部116から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0068】
階調デコーダ213は、ラッチ回路212でラッチした値(画像データSD')とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ214は、階調デコーダ213のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ215が動作可能なレベルへとレベル変換する。
【0069】
アナログスイッチ215は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力でオン/オフするスイッチである。このアナログスイッチ215は、記録ヘッド40K-1が備える上述したノズルに対応づけられた圧力発生素子(圧電素子)45Pごとに設けられ、各ノズルに対応する圧電素子45Pの個別電極83に接続されている。また、アナログスイッチ215には、駆動波形生成回路107からの共通駆動波形Vcomが入力されている。また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
【0070】
したがって、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチ215のオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズルに対応する圧電素子45Pに印加される波形が選択される。その結果、ノズルから吐出されるインク滴の大きさが制御される。
【0071】
図7に示すように、共通駆動波形Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズルに対応する圧電素子45Pに印加される波形(1又は複数のパルス)が選択される。その結果、ノズルから吐出される液滴の大きさが例えば大滴、中滴、小滴に制御される。
【0072】
図7の共通駆動波形Vcomにおいて、P2、P3、P4のパルス領域の駆動波形は、滴形成に寄与する液体を吐出させるための吐出パルスである。P5のパルス領域の駆動波形は制振波形であり、吐出パルスP4とともに選択される。また、用紙P上の液体を吐出させない箇所である白地部に対しては、微駆動パルスを含むP1のパルス領域が選択されて、微駆動パルスが駆動波形として圧力発生手段45の圧電素子45Pに印加される。
【0073】
なお、図7の共通駆動波形は、波形の選択の説明のために、模式的に示す一例であって、本発明の制御で使用される駆動波形のパルスの電位変化方向やパルス間隔の具体例は、図11図12図14の実施例とともに詳述する。
【0074】
<適用領域>
図8は、画像上でサテライト滴を減らすと効果的な領域についての説明図である。図8において、(a)は、白地部に隣接する後端エッジに対して何も処理をしなかった例、(b)は白地部に対して本発明の微駆動パルスを適用させた処理を実施した例を示す。
【0075】
図8(a)に示すように、シングルパス方式で印刷した際、サテライト滴は画像が印字から非印字に切り替わる領域で目立つ。なお、サテライト滴とは、ノズルから、射出されたインク滴の主滴から分離して発生する点々とした小さな液滴のことを指す。
【0076】
そこで、図8(b)に示すように、印字から非印字に切り替わる吐出滴の後端エッジ、即ち、非吐出直前のインク滴(非吐出直前滴)のみ、サテライト滴を減らすことができれば、印刷画像の品質向上することができる。
【0077】
ここで、一般的に、ノズル内のインクの乾燥を防止するため、印刷動作中、白地部に相当する非吐出のノズルに対して、微駆動パルス(微駆動波形)が印加されている。
【0078】
本発明の制御では、インクの乾燥防止用の微駆動パルスを、サテライト滴の防止に使用する。そのため、画像データの変換処理に特別な処理を加えることなく、非吐出直前滴の直後に必ず微駆動パルスが配置される画像データを活かして、吐出滴の後端に対してのみサテライト短縮効果を設けることができる。なお、非吐出直前滴(吐出滴後端)は、連続して吐出される連続吐出滴の後端と、図8(a)、(b)の縦3列目のように1滴離れて吐出する単独滴を含む。
【0079】
図9は、比較例に係る制振パルスの説明図である。図6図7で説明したように、共通した駆動波形をマスク処理で切り替えることで、吐出部分及び白地部分(非吐出部分)での微駆動パルスによるメニスカス振動を行うものが、よく知られている。
【0080】
比較例では吐出パルスの直後に、非吐出パルスである制振パルスを設け、その制振パルスで、制振性を高めることで高周波駆動時の吐出安定性を改善させるとともに、サテライト滴を減らすために加振して、吐出滴後端となる非吐出直前滴のリガメントを短くしている。なお、リガメントとは、吐出直後に空中で尾を引くように飛翔する棒状のインク滴である。リガメントが短くなると、サテライト滴が抑制される。
【0081】
また、制振パルスにおいて、吐出滴によるメニスカス振動を反共振させることでメニスカスを減少させると制振性向上に効果的であり、反対に、吐出滴によるメニスカス振動を共振させることでメニスカスを増加させるとサテライト短縮(リガメント短縮)に効果的である。
【0082】
直前の吐出パルスに対して、制振パルスに含まれる立ち上げ要素と立ち下げ要素のタイミング(Ta,Tb)や勾配で、別々に制振やリガメント短縮を狙うことができるが、例えば、サテライト短縮を狙う場合は、立ち下げタイミングTbを、固有振動周期Tcの整数倍で配置することが望ましいために、制振パルスの電位保持要素の長さが長くなる。ここで、固有振動周期Tcとは液室40F(図4参照)の固有振動周波数fcの逆数である。固有振動周期はノズル径、圧力室体積、圧力室構成部材等によって、ノズル毎に一意に決まる。
【0083】
また、制振パルスの立ち上げ又は立ち上げのいずれかのタイミングを調整することで、リガメント短縮を狙うと、吐出によるメニスカス振動を加振させてしまうため、吐出安定性を低下させる。
【0084】
<吐出パルスと非吐出パルスの距離と駆動波形の品質の関係>
図10は、吐出パルスと非吐出パルスの距離と品質の関係を示す図である。図10において(a)は、吐出パルスと非吐出パルスの距離を説明する図であって、(b)は、主滴・サテライト滴の距離と、安定吐出可能な最大周波数の距離を示す。
【0085】
図10(a)のように、吐出パルスと非吐出パルスがあるときパルス間の距離である印加間隔T1を変化させると、図10(b)のように吐出滴の主滴とサテライトの紙面上での距離および吐出パルスで安定吐出可能な最大駆動周波数が変化する。本例では、吐出パルスと非吐出パルスとが、同じ方向に電位が変化する場合について説明する。
【0086】
図10(b)において、Tcは液室の固有振動周期を表しており、同じ方向に電位変化する場合、印加間隔T1が固有振動周期Tcと等しいとき(T1=1.0Tcのとき)が、共振し、最も滴速度を速める効果が高い。この効果は周期的に繰り返し、吐出パルスと非吐出パルスとの間隔T1がTcの整数倍に近づくと、滴速度を速まる。滴速度が速いと、記録媒体上で主滴とサテライト滴との距離が近くなり、サテライト滴が発生しづらく画像品質が良くなる。
【0087】
一方、安定吐出可能な最大駆動周波数は非吐出パルスがTcの(整数+0.5倍)に近づくほど大きくなり、生産性を上げることが可能になる。
【0088】
一般的にサテライトを減らすためには、生産性が犠牲になるため、一つの非吐出パルスで、制振性と加振性の両方の特性を最大限に良くするには、電位保持期間を長くとる必要があり、駆動周期が伸びてしまい、難しかった。
【0089】
そこで、本発明では、吐出パルス直後の非吐出パルスである制振パルスは、Tcの(整数+0.5)倍に近い値にすることで吐出安定性を高め、次の吐出周期の非吐出パルスである微駆動パルスは吐出パルスに対して、Tcの整数倍に近い値にすることで、サテライトを減らすことができる。ここで、微駆動パルスは吐出中には印加されないため、印加間隔T1をTcの整数倍に設定した微駆動パルスを、吐出から白紙(白地、液体を吐出させない箇所)に切り替わる吐出滴の直後に印加することで、その期間のみ加振によりサテライト滴抑制効果が働き、吐出から白紙に切り替わる吐出滴のみサテライトを減らすことができる。
【0090】
これにより、画像データを変えなくても、加振と制振の両方を実現できるため、画像上でサテライトが目立ちやすい領域のみサテライトを減らすことが可能になる。
【0091】
なお、図10(b)に示すように、固有振動周期Tcの1/2周期ごとにメニスカスの加振、制振の特性が反転するため、微駆動パルスを配置する際は、液室の固有振動周期Tcに対して、狙いの位置から±1/4Tc以内の誤差で配置されていると好適である。
【0092】
<第1実施例>
図11は、本発明の第1実施例に係るサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形を示すグラフである。
【0093】
本実施例では、微駆動パルスと吐出パルスについて、同じ方向に電位変化する場合の制御であって、駆動波形において、微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tcの整数倍になる位置に配置されている。
【0094】
詳しくは、図11に示すように、微駆動パルス及び吐出パルスは、所定の勾配を有する立ち下がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち上がり要素を時系列で有する、下に凸の波形(引き打ち波形)である。微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスの立ち上がり要素開始時から、微駆動パルスの立ち上がり開始時までの時間が、液室40Fの固有振動周期Tcの整数倍"T1=Tc×N(Nは整数)"となるように配置されている。
【0095】
本実施例では、印字部から非印字である白紙部(白地部)に切り替わる部分でサテライトを減らすために、白紙部で印加する微駆動パルスを直前の周期の印字波形の吐出パルスと共振するタイミングに配置することで、非吐出直前滴のリガメントを短くしている。
【0096】
また、図10(b)で説明したように微駆動パルスの間隔はTcの整数倍でも設定できるが、1倍が最もサテライト短縮効果が高く、2、3倍と離れるにつれて短縮効果が弱くなるため、前周期の吐出パルスから遠い場合は微駆動パルスを強くする必要がある。しかし、微駆動が強すぎるとメニスカスを攪拌して乾燥による不具合を招く場合があるため、本制御では基本的に駆動波形の吐出周期中で先頭に微駆動を置く。本制御では、駆動波形の最後に配置される制振パルスは、連続印刷時にメニスカスを減衰させる目的のみで使用され、リガメント短縮させるために制振パルスの電位保持要素を長くする必要がなくなるため、駆動波形長(吐出周期)を短くすることができる。
【0097】
例えば、図9に示す比較例のように、制振パルスのみで制振し、且つサテライトを短縮しようとする場合では、制振パルスのパルス長は、7.5μs必要だったものが、サテライト短縮を微駆動パルスによって実現する場合は、制振パルスのパルス長を3.3μs程度に短縮できる。
【0098】
また、微駆動パルスは、白紙部で非印字である非吐出期間中にメニスカスを攪拌して乾燥を防止するために予め設けられているため、微駆動パルスを所定のタイミングとなるように設けることは、吐出周期を長くすることにはならない。
【0099】
このように、乾燥防止に必要な微駆動を、非吐出直前滴のリガメント短縮に活用することで、連続印刷時には制振パルスで吐出安定性を高め、画像のエッジ部のみでサテライト短縮を行う。サテライト短縮はメニスカスを加振するが、次の吐出周期まで一定期間メニスカスを減衰する時間があるため、吐出安定性に影響を及ぼすことがない。
【0100】
<第2実施例>
図12は、本発明の第2実施例に係るサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形を示すグラフである。
【0101】
本実施例では、微駆動パルスと吐出パルスについて、異なる方向に電位変化する場合の制御であって、駆動波形において、微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tc、整数Nとしたときに"N×Tc+0.5Tc"となる位置に配置されている。
【0102】
詳しくは、図12に示すように、微駆動パルスは、所定の勾配を有する立ち上がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち下がり要素を時系列で有する下に凸の波形であり、吐出パルスは、所定の勾配を有する立ち下がり要素、電位保持要素、所定の勾配を有する立ち上がり要素を時系列で有する上に凸の波形である。
【0103】
微駆動パルスは、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスの立ち上がり要素開始時から、微駆動パルスの立ち下がり要素開始時までの間隔T2が、液室の固有振動周期Tc、整数Nとしたときに"T2=N×Tc+0.5Tc"となるように配置されている。
【0104】
本実施例では、吐出パルスが引き打ちであり、微駆動パルスは吐出と反対方向に電位変化させる押し打ちであるため、図10(b)に示した、同じ方向の変化の場合の吐出滴の主滴とサテライトの紙面上での距離および吐出パルスでの安定吐出可能な最大駆動周波数が変化特性は、0.5Tc周期ずれる。したがって、最終吐出パルスとその次の周期の微駆動との間隔は固有振動周期Tcの(整数+0.5)倍にすることで、第1実施例の微駆動が引き打ちと同じ方向に電位が変化するときのTcの整数倍の場合と、同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、本実施例では、1つ手前の周期の吐出パルスに対する微駆動の印加間隔T2を最短で「T2=0.5Tc」に設定することができるため、印加間隔「T1=1.0Tc」が最短である第1実施例よりも、駆動波形長を短く設定することができる。
【0106】
そのため、本実施例に示す微駆動パルスが、直前の吐出パルスと電位変化が異なる方向であって、押し打ちの方向に変化させる微駆動パルスを用いた制御は、駆動波形長を短くしたい場合に効果的である。
【0107】
なお、上述の第1実施例、第2実施例の制御を、図7の共通駆動波形に適用する場合は、図7では小滴・中滴・大滴のすべての滴において、制振パルスP5を含む最後の吐出パルスP4を含むため、どのサイズの滴が連続吐出滴の後端又は単独滴であっても、制振により吐出を安定させつつ、リガメント短縮効果を高めてサテライト滴を抑制することができる。
【0108】
<複数の吐出周期>
図13は、本発明のサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形の複数の吐出周期を示すグラフと、比較例のサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形の複数の吐出周期を示すグラフである。図13において、(a)は本発明の波形であり、(b)は比較例の波形である。
【0109】
図13に示すA波形は、微駆動パルスを先頭に配置した本発明の駆動波形の一例である。本発明の駆動波形における印字部では、非吐出直前滴の波形と、連続吐出部の先端滴又は中間滴の波形が同じ波形である。これに対して、比較例に係るB波形のように微駆動パルスを最後に配置した場合でも、上記のようにタイミングを設定すれば、サテライト滴特性及び乾燥防止同様の効果を得ることは可能である。
【0110】
しかし、太い点線で区切る駆動周期ごとのラスタデータを生成する際、B波形では、白紙部の直前であるかどうか判別し、非吐出直前滴の波形を、連続吐出部の先端滴又は中間滴の波形とは異なるデータにする必要がある。そのため、A波形は2種類の波形(A-1、A-2)に対応する2値のデータで良いのに対して、B波形では3種類の波形(B-1、B-2、B-3)に対応する3値のデータ、および白紙部を識別する処理が必要になるため、印刷時のラスタデータ生成に時間がかかり、転送するデータの容量も大きくなる。
【0111】
また、B波形の吐出周期が、B-3波形からB-1波形に切り替わる領域では、B-3波形の微駆動の直後にB-1波形の吐出パルスが配置されている。即ち、次回の吐出パルスの直前に前周期の微駆動が配置される。そのため、前周期であるB-3波形の微駆動パルスによるメニスカス振動が残り、その影響で次周期であるB-1波形の吐出パルスで駆動させる際に吐出不良を招く恐れがある。
【0112】
一方、本発明に係る、A波形はA-2波形からA-1波形に切り替わる際、A-2波形の点線で示す非駆動領域があるため、微駆動によるメニスカス振動が十分に減衰する時間があり、A-2波形直後のA-1波形の吐出パルスが微駆動パルスによるメニスカス振動の影響を受けにくい。
【0113】
このように本発明では、サテライト短縮が必要な、連続する吐出滴の後端の滴又は単独滴を吐出させるために、サテライト短縮の効果を有する非吐出パルスを付与する際、印刷する画像のデジタルデータを元に後端部分を検知することや、検知した部分をその他の領域と異なるデータに置き換えたりする処理を不要とする。
【0114】
即ち、本発明の制御では、画像データの配置を活かし、連続吐出滴の後端又は単独で吐出された滴に対して直後の微駆動パルスがサテライト短縮パルスとして機能するように波形を構成することで、線画端部の品質を上げるための余分な画像データの変換処理を用いる必要がない。
【0115】
そして、微駆動パルスは画像データ上、白地部(白紙部)で印加するように選択されているため、連続する吐出滴の後端又は単独滴を吐出させる印加波形の直後には必ず微駆動パルスが配置される。一方、連続吐出滴によって画像を形成する間は、連続吐出における先端滴または中間滴で発生するサテライト滴は後続の吐出滴と紙面上で重なるため、画像欠陥を引き起こさない。
【0116】
このように、連続吐出滴直後に必ず微駆動パルスが配置される画像データを活かして、画像データの変換処理に特別な処理を加えることがないため、画像データの容量が大きくならずに、微駆動パルスで吐出の終端となる非吐出直前滴のみサテライト短縮効果を高めることができる。
【0117】
<第3実施例>
図14は、本発明の第3実施例に係るサテライト滴抑制の微駆動パルスを含む駆動波形を示すグラフである。
【0118】
上述の図7の共通駆動波形では、どのサイズの滴にも制振波形を含むように選択され、すべての滴サイズ(大・中・小滴)の吐出パルスのパルス終端は等しい。そのため、どの滴サイズを選択しても、微駆動パルスを、液室の固有振動周期Tcに対する狙いの位置である(T1=Tc×N)となるタイミングで印加できる。
【0119】
しかし、例えば、小滴や、中滴は、吐出の際のメニスカスの振動が少なく残留振動も少ないため、制振パルスがなくても後に続く滴への影響が少ない。そのため、共通駆動波形の中からマスクして、滴サイズごとにマスクを選択する波形において、小滴や中滴のための波形に、制振パルスを含まないで構成することもある。本実施例ではその例について説明する。
【0120】
本発明において、駆動波形が複数のパルスを含み、吐出波形(1)と吐出波形(2)を画像データに応じて切り替え可能である場合、1つ手前の周期の吐出波形(1)の最後の吐出パルスP3と、次の吐出周期の微駆動パルスP1の印加間隔T3を、固有振動周期Tcの整数倍にすることで、吐出波形(1)を印加して吐出される非吐出直前滴のサテライトを減らすことができる。
【0121】
例えば、吐出波形(1)は、小滴や中滴など、制振パルスと組み合わせなくても十分に残留振動が少ない滴などに相当する。
【0122】
本実施例においても、駆動波形にサテライト短縮のみの非吐出パルスを配置する必要がないので、短い波形長で生産性を上げることが可能である。
【0123】
また、大滴など残留振動の制振が必要な場合には、制振性を向上させる非吐出パルス(制振パルスP5)についても選択することで、サテライト短縮効果を得るために制振性を犠牲にする必要がなくなるので、吐出安定が向上する。
【0124】
また、吐出波形(2)に含まれる吐出パルスP4と、次の吐出周期の微駆動パルスP1の印加間隔T4を、固有振動周期Tcの整数倍にすることで、吐出波形(2)を印加して吐出される非吐出直前滴のサテライトを減らすことができる。よって、印加間隔T3とT4の両方を、固有振動周期Tcの整数倍にすることで、吐出波形(1)と吐出波形(2)の両方で、サテライト短縮効果を実現することができる。
【0125】
このように、吐出波形(1)と吐出波形(2)の両方で、サテライト短縮効果を実現するためには、駆動波形内の複数の吐出パルスにおける一のパルス(吐出パルスP3)終端と他のパルス(吐出パルスP4)終端の間隔T5は、液室の固有振動周期Tcの整数倍に設定する。なお、この際の間隔T5は、狙いの位置から±1/4Tc以内の誤差で配置されていると好ましい。
【0126】
あるいは、大滴では、印加する駆動波形が大きい又は長いため、メニスカスの残留振動が発生しやすく、サテライト滴は発生しにくい傾向にある。そのため、駆動波形において、大滴の直後には、サテライト短縮効果(リガメント短縮効果)を狙わない制御も考えられる。
【0127】
例えば、大滴を吐出する際に、吐出波形(1)と吐出波形(2)の両方を用いる制御であってサテライト短縮効果が不要な場合、駆動波形内の吐出波形(1)に含まれる吐出パルスP3の終端と吐出波形(2)に含まれる吐出パルスP4終端の間隔T5を液室の固有振動周期Tcの整数倍にずらし、吐出パルスP4の次の吐出周期の微駆動パルスP1の印加間隔T4を、固有振動周期Tcの整数倍からずらすように(T4≠Tc×N)することで、吐出波形(1)のみ微駆動パルスによってサテライトを減らすように制御できる。
【0128】
<第2の構成例>
図15は、本発明の他の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0129】
図5図6に示した構成では、駆動波形生成回路107は、メイン制御基板100に設けられていたが、本実施形態では、駆動波形生成回路217aは、記録ヘッドドライバ210Aの内部に、ノズルに対応づけられた複数の圧電素子45Pa~45Pxと同数、設けられている。さらに記録ヘッドドライバ210Aには、複数の駆動波形生成回路(複数の駆動波形生成手段)217a~217xを制御するドライバ制御部216が設けられている。
【0130】
本構成では、駆動波形生成回路217a~217xは、圧電素子45Pa~45Pxにそれぞれ対応づけられて設けられているため、液滴吐出波形と微駆動パルスのデータを含む画像データSD'を基に、各駆動波形生成回路217a~217xで、圧電素子45Pa~Pxに印加するための滴サイズや微駆動に適した駆動波形をそれぞれ生成する。
【0131】
詳しくは、本実施形態では、駆動波形生成回路217a~217xで生成される駆動波形は、複数の滴サイズの液体を吐出させる複数の吐出パルス又は液体をノズルから吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微駆動パルスから選択される。
【0132】
そして、生成する駆動波形の、複数の吐出パルスの終端は等しい、又は複数の吐出パルスに含まれる一のパルス終端と他のパルス終端の間隔は液室の固有振動周期Tcの整数倍であるように構成されている。
【0133】
そして、駆動波形生成回路217a~217xは、吐出周期毎に、例えば、吐出パルスを含む大滴、中滴、小滴用の駆動波形、あるいは白地用(液体を吐出させない箇所用)の微駆動パルスを、それぞれの圧電素子45Pa~45Px毎に生成する。
【0134】
微駆動パルスと吐出パルスについて、同じ方向に電位変化する場合、駆動波形生成回路217a~217xは、連続吐出滴後端又は単独滴である非吐出直前滴を吐出した後の白地の開始タイミングにおいて、連続駆動時に1つ手前の吐出周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tcの整数倍になるタイミングで、微駆動パルスを生成して印加する。
【0135】
一方、微駆動パルスと吐出パルスについて、異なる方向に電位変化する場合、駆動波形生成回路217a~217xは、非吐出直前滴を吐出した後の白地の開始周期において、連続駆動時に1つ手前の周期の吐出パルスに対して液室の固有振動周期Tc、整数Nとしたときに"N×Tc+0.5Tc"となるタイミングで、微駆動パルスを生成して印加する。
【0136】
なお、本構成例では、ノズル毎に、それぞれの滴種の駆動波形を生成する例を説明したが、複数のノズルをブロックとして、ブロック毎に駆動波形を生成してもよい。
【0137】
なお、本実施形態においても、インクの乾燥防止用の微駆動パルスを、サテライト滴の防止に使用する。そのため、画像データの変換処理に特別な処理を加えることなく、白地部に必ず微駆動パルスが配置される画像データを活かして、白地部との境界となる非吐出直前滴に対してのみサテライト短縮効果を設けることができる。
【0138】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0139】
例えば、上記実施の形態では、本発明に係る記録ヘッドを備えた画像形成装置について説明したが、本発明に係る液体吐出ヘッド及びその制御は、画像形成装置を含めた液体を吐出する装置に広く適用することができる。
【0140】
例えば、本例では、液体吐出ヘッドとして、インクを吐出する画像形成のためのヘッドユニットに含まれる記録ヘッド40,6を例として説明したが、例えば、前処理手段や後処理手段の吐出ヘッドにおいて、本発明の液体吐出ヘッドの微駆動制御を実施してもよい。
【0141】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0142】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0143】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0144】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0145】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0146】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0147】
又、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生素子が限定されるものではない。例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。
【0148】
又、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【符号の説明】
【0149】
1 用紙(記録媒体)
2 画像形成装置(ライン型画像形成装置、液体吐出装置)
6K,6C,6M,6Y 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
40K‐1,40K‐2,40K‐3,40K‐4 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
40F 液室(圧力室)
40N ノズル(吐出口)
45 圧力発生手段
45P(45Pa~45Px) 圧電素子(圧力発生素子)
107 駆動波形生成回路(駆動波形生成手段)
116 記録ヘッド制御部
210 記録ヘッドドライバ(波形選択部)
210A 記録ヘッドドライバ(波形選択部)
217 駆動波形生成回路(複数の駆動波形生成手段)
1000 画像形成装置(シリアル型画像形成装置、液体吐出装置)
T1,T2,T3,T4 印加間隔
T5 複数の吐出パルスのパルス終端の間隔
Tc 固有振動周期
Vcom 共通駆動波形
【先行技術文献】
【特許文献】
【0150】
【文献】特開2015-174404号公報
図1
図2
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図10
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図15