(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】白金族元素の相互分離方法
(51)【国際特許分類】
C22B 11/00 20060101AFI20240514BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20240514BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20240514BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20240514BHJP
C22B 3/38 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/10
C22B3/26
C22B3/44 101Z
C22B3/44 101A
C22B3/38
(21)【出願番号】P 2020042216
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀昌
(72)【発明者】
【氏名】新宮 正寛
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆行
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-097695(JP,A)
【文献】特開2018-070978(JP,A)
【文献】特開2018-070927(JP,A)
【文献】特開2012-172182(JP,A)
【文献】特開2009-144183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 -61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物元素を含む白金族元素含有物から白金族元素を相互分離する方法であって、
前記白金族元素含有物を塩酸溶液に懸濁し酸化剤を添加して浸出に付し、白金族元素を含む浸出生成液を得る浸出工程と、
前記浸出生成液に対して溶媒抽出処理を施す
第1の溶媒抽出工程と、
前記溶媒抽出処理により得られ
、2.0g/L~2.5g/Lの割合で白金を含有する抽出残液に、塩化カリウムを該抽出残液中で20g/L以上
80g/L以下となるように添加して
第1のケーキ化沈澱物を生成する第1のケーキ化工程と、
前記第1のケーキ化工程で得られる
第1のケーキ化沈澱物を含むスラリーを濾過分離して生成する濾液を酸化中和処理することにより、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第1の
酸化中和処理沈澱物を生成する第1の酸化中和工程と、
前記第1の酸化中和工程で得られる
第1の酸化中和処理沈澱物を塩酸溶液に溶解して得られる水溶液に塩化カリウムを添加して
第2のケーキ化沈澱物を生成する第2のケーキ化工程と、を有する、
白金属元素の相互分離方法。
【請求項2】
前記第2のケーキ化工程で得られる
第2のケーキ化沈
澱物を含むスラリーを濾過分離して精製する濾液を、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを形成し、不純物を除去する不純物除去工程と、
前記不純物除去工程で得られる抽出残液を酸化中和処理することにより、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第2の
酸化中和処理沈澱物を生成する第2の酸化中和工程と、を有し、
さらに、
前記第2のケーキ化工程で得られる
第2のケーキ化沈澱物を、pH12以上のアルカリ水溶液中で酸化剤を添加して浸出に付し、イリジウム及びロジウムを含む残渣とルテニウム浸出生成液を生成するルテニウム浸出工程と、を有する、
請求項1に記載の白金属元素の相互分離方法。
【請求項3】
前記ルテニウム浸出工程で得られるルテニウム浸出生成液からルテニウムを精製するルテニウム精製工程を、さらに有する、
請求項2に記載の白金族元素の相互分離方法。
【請求項4】
前記ルテニウム浸出工程では、
前記第2のケーキ化工程で得られる
第2のケーキ化沈
澱物と共に、前記第2の酸化中和工程で得られる第2の
酸化中和処理沈澱物を合わせて、前記浸出に付し、イリジウム及びロジウムを含む残渣とルテニウム浸出生成液を生成する、
請求項2又は3に記載の白金属元素の相互分離方法。
【請求項5】
前記ルテニウム浸出工程で得られる残渣を塩酸溶液に溶解して得られるイリジウム及びロジウムを含む水溶液を、リン酸トリブチルと接触させて溶媒抽出に付し、イリジウムを抽出した後、逆抽出して、イリジウムを含む逆抽出生成液とロジウムを含む抽出残液を生成するイリジウム抽出工程と、
前記イリジウム抽出工程で得られる抽出残液を、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを形成し、不純物を除去する不純物除去工程と、をさらに有する、
請求項2乃至4のいずれかに記載の白金族元素の相互分離方法。
【請求項6】
前記第1の酸化中和工程及び前記第2の酸化中和工程では、
水溶液のpHを5~12に調整し、酸化剤を添加して加水分解に付し、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第1の
酸化中和処理沈澱物
及びイリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第2の酸化中和処理沈澱物を生成する、
請求項2乃至5のいずれかに記載の白金族元素の相互分離方法。
【請求項7】
前記
第1の溶媒抽出工程は、
前記浸出生成液をジエチレングリコールジブチルエーテルと接触させて溶媒抽出に付し、不純物元素を含む有機相と抽出残液を形成する第1工程と、
得られる抽出残液を硫化アルキルと接触させて溶媒抽出に付し、パラジウムを抽出した後、逆抽出して、パラジウムを含む逆抽出生成液と抽出残液を形成する第2工程と、
を含み、前記第2工程で得られる抽出残液を前記第1のケーキ化工程に供する、
請求項1乃至6のいずれかに記載の白金族元素の相互分離方法。
【請求項8】
前記第1のケーキ化工程で得られる
第1のケーキ化沈澱物に含まれる白金を精製する白金精製工程を、さらに有する、
請求項1乃至
7のいずれかに記載の白金族元素の相互分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素の相互分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金族元素は、資源的に希少な元素で、白金族元素を高濃度で含有する白金鉱石のような天然鉱物での産出は少なく、工業的に生産される白金族元素の原料は、銅、ニッケル、コバルトなどの非鉄金属製錬からの副産物、自動車排ガス処理触媒など各種の使用済み廃触媒などからが大部分を占めている。
【0003】
この非鉄金属製錬からの副産物は、製錬原料の中にごく微量含有されている白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウムなどの白金族元素が、その化学的性質から主金属である銅、ニッケル等の硫化濃縮物及び粗金属の中に濃縮され、さらに電解精製等の主金属回収工程で残滓等として白金族元素を含む貴金属濃縮物の形態で分離されるものである。
【0004】
この濃縮物には、主金属である銅、ニッケル等と共に、他の構成元素である金、銀等の貴金属、セレン、テルル等のVI族元素、ヒ素等のV族元素が、白金族元素に比べて高含有量で共存するのが通常である。その後、金、銀の回収を経て、不純物元素を含む白金族元素含有物が得られ、白金族元素の分離回収が行われる。白金族元素含有物から白金族元素を工業的に分離する方法では、通常は一旦液中に浸出してから溶媒抽出、吸着剤などの分離技術を用いて相互分離及び精製して回収される。
【0005】
ここで、特許文献1には、不純物元素を含む白金族元素含有物から白金族元素を相互分離する方法であって、安全性の高い化合物と工程を用いて、母液中の白金族元素に対する不純物元素の含有比率の上昇とクロロ錯体の分解とを防止し、不純物元素を効果的に除去して、かつパラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)を製品化できる純度で相互分離する方法が示されている。具体的に、
図3に示すフローによりPGMconc(アノードスライムを処理して貴金属を濃縮したもの)を処理することで、白金族元素を製品化できる純度で相互分離することが可能となっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、
図3中に記載のBi-SX抽残液中のPtを100としたとき、Bi-SX抽残液を酸化中和工程で処理して得られる酸化中和後液中のPtは65程度である。そのため、Ptの回収率をより向上させるために、フローの最終段階で、Ru残渣溶解液を酸化中和して得られる酸化中和後液をPt精製工程に戻し入れるといった処理(
図3中のフロー矢印X)が必要となる。
【0007】
ただし、IrRuRh澱物中に含まれるPtについては、Ru浸出工程、塩酸溶解工程、酸化中和工程を経るなかでロスが発生し、上述のように戻し入れるルートを備えていても、Pt精製工程に導入されるPtは90未満(Bi-SX抽残液中のPtを100としたとき)に留まっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような従来技術の問題に対して、本件出願人は、不純物元素を含む白金族元素含有物を塩酸で浸出して得られた浸出液に対して溶媒抽出処理を施し、その抽出残液に塩化カリウムを所定の割合で添加して沈澱物を生成させることで、その沈澱物中にPtを効果的に移行させることができ、Ptの回収率を向上できることを見出し、提案している。
【0010】
具体的には、
図4の工程図に示すように、不純物元素を含む白金族元素含有物を塩酸溶液により浸出して白金族元素を含む浸出生成液を得る浸出工程S71と、浸出生成液に対して溶媒抽出処理を施す溶媒抽出工程S72Aと、溶媒抽出処理により得られる抽出残液に、塩化カリウムを所定の割合で添加して沈澱物を生成するケーキ化工程S73と、を含む、白金族元素の相互分離方法を提案している。このような方法によれば、Ptの回収率を効果的に向上させることができる。なお、ケーキ化工程S73を経て得られたPtを含有する沈澱物からPtを精製する処理(白金精製工程S82)を行うことで、白金族元素含有物に含まれるPtのおよそ9割以上の割合の量に相当するPtの回収できる。
【0011】
この相互分離方法では、ケーキ化工程S73での処理対象となる抽出残液は、溶媒抽出工程S72Aにおける溶媒抽出処理を経て得られる。具体的に、その溶媒抽出工程S72Aとしては、浸出生成液をジエチレングリコールジブチルエーテルと接触させて溶媒抽出に付して不純物元素を含む有機相と抽出残液を形成する第1工程S721と、得られる抽出残液を硫化アルキルと接触させて溶媒抽出に付してパラジウムを抽出した後、逆抽出してパラジウムを含む逆抽出生成液と抽出残液を形成する第2工程S722と、得られる抽出残液とビス(2-エチルへキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付して陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液を形成する第3工程S723と、を含む処理工程とすることができる。なお、第2工程S722を経て得られるパラジウムを含む逆抽出生成液からは、公知の方法によりパラジウムを回収できる(パラジウム精製工程S81)。
【0012】
このような溶媒抽出工程S72Aにおいて、その第3工程S723では、ビスマスの大部分を除去することが可能となる。ところが、次工程のケーキ化工程S73において塩化カリウムを所定量添加してケーキ(沈澱物)を生成させることで抽出残液に含まれるPtを回収することの効果は、抽出残液に含まれるビスマスの多寡に依って変わらない。このことから、Ptを効果的かつ効率的に分離回収する観点からすると、溶媒抽出工程S72Aにおける第3工程S723を省略することが好ましい。
【0013】
そこで、本件出願人は、
図5の工程図に示すように、溶媒抽出工程S72Bとして、第2工程S722を経て得られる、パラジウムを抽出する溶媒抽出を行った後の抽出残液を、次工程のケーキ化工程S73に供する方法を提案している。このような方法によれば、工程を簡略化しながらも、ケーキ化工程S73にて有効に白金を分離回収できる。
【0014】
なお、第3工程を省略した溶媒抽出工程S72Bを実行した場合、
図5の工程図に示すイリジウム抽出工程S76において、ルテニウム浸出工程S75を経て得られる浸出残渣を塩酸溶液に溶解して得られる水溶液に対して陽イオン型不純物元素を分離するための溶媒抽出処理を行うようにしてもよい。
【0015】
あるいは、イリジウム抽出工程S76での処理を経て得られる抽出残液に対して溶媒抽出処理を施し、その抽出残液から陽イオン型不純物元素を除去するようにしてもよい。具体的には、
図6の工程図に示すように、不純物除去工程S761を設けて、イリジウム抽出工程S76で得られるRhを含む抽出残液を、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを生成させ、そのRhを含む抽出残液からビスマス、銅、鉛、ニッケル等の陽イオン型不純物元素を除去するようにしてもよい。このような方法によれば、白金を分離回収した後において、白金族元素含有物に含まれていた不純物元素のそれぞれを、化合物の形態で純度高く回収することができる。
【0016】
なお、ルテニウム浸出工程S75で得られるRuを含む浸出生成液からRuを精製する処理を施すことで、Ruの結晶を得ることができる(ルテニウム精製工程S83)。また、不純物除去工程S761で得られる抽出残液からRhを精製する処理を施すことで、Rhの結晶を得ることができる(ロジウム精製工程S84)。また、イリジウム抽出工程S76で得られる逆抽出生成液からIrを精製する処理を施すことで、Irの結晶を得ることができる(イリジウム精製工程S85)。
【0017】
さて、上述したような新規な相互分離方法(
図3~
図6の工程図を参照)では、処理対象の白金族元素含有物の組成などに起因して、ケーキ化工程S73からのケーキ濾液に対して酸化中和処理(酸化中和工程S74での処理)を施して得られる、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む沈澱物(IrRuRh澱物)中においてPdが比較的多く残存することがある。このような場合、IrRuRh澱物に対して浸出処理を行うルテニウム浸出工程S75において、浸出処理に使用する酸化剤(例えば亜塩素酸ナトリウム)が澱物中のPdの固定に用いられ、Ruを有効に浸出させることができないことがある。
【0018】
また、Ruを有効に浸出させるためには、酸化剤の使用量を増加させることが必要となり、その結果として処理コストが増加することがある。
【0019】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、不純物元素を含む白金族元素含有物から白金族元素を相互分離する方法において、白金(Pt)の回収率を向上させるとともに、効率的な処理によって、他の白金族元素のうちの特にルテニウム(Ru)の回収率を高めることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、不純物元素を含む白金族元素含有物を塩酸で浸出して得られた浸出液に対して溶媒抽出処理を施し、その抽出残液に塩化カリウムを所定の割合で添加して沈澱物を生成(ケーキ化処理)させることで、その沈澱物中にPtを効果的に移行させることができ、Ptの回収率を向上できることを見出した。また、そのケーキ化処理を経て得られる濾液に対して酸化中和処理を施して得られるIrRuRh澱物に対して第2のケーキ化処理を施して沈殿物を生成させることで、IrRuRh澱物中のPd含有量が多い場合であっても、その沈澱物中のRuを効果的に移行させることができ、処理コストも抑えながら、白金族元素のうちの特にRuの回収率を高めることができることを見出した。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0021】
(1)本発明の第1の発明は、不純物元素を含む白金族元素含有物から白金族元素を相互分離する方法であって、前記白金族元素含有物を塩酸溶液に懸濁し酸化剤を添加して浸出に付し、白金族元素を含む浸出生成液を得る浸出工程と、前記浸出生成液に対して溶媒抽出処理を施す溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出処理により得られる抽出残液に、塩化カリウムを該抽出残液中で20g/L以上となるように添加して沈澱物を生成する第1のケーキ化工程と、前記第1のケーキ化工程で得られる沈澱物を含むスラリーを濾過分離して生成する濾液を酸化中和処理することにより、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第1の沈澱物を生成する第1の酸化中和工程と、前記第1の酸化中和工程で得られる沈澱物を塩酸溶液に溶解して得られる水溶液に塩化カリウムを添加して沈澱物を生成する第2のケーキ化工程と、を有する、白金属元素の相互分離方法である。
【0022】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記第2のケーキ化工程で得られる沈殿物を含むスラリーを濾過分離して精製する濾液を、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを形成し、不純物を除去する不純物除去工程と、前記不純物除去工程で得られる抽出残液を酸化中和処理することにより、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第2の沈澱物を生成する第2の酸化中和工程と、を有し、さらに、前記第2のケーキ化工程で得られる沈澱物を、pH12以上のアルカリ水溶液中で酸化剤を添加して浸出に付し、イリジウム及びロジウムを含む残渣とルテニウム浸出生成液を生成するルテニウム浸出工程と、を有する、白金属元素の相互分離方法である。
【0023】
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記ルテニウム浸出工程で得られるルテニウム浸出生成液からルテニウムを精製するルテニウム精製工程を、さらに有する、白金族元素の相互分離方法である。
【0024】
(4)本発明の第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記ルテニウム浸出工程では、前記第2のケーキ化工程で得られる沈殿物と共に、前記第2の酸化中和工程で得られる第2の沈澱物を合わせて、前記浸出に付し、イリジウム及びロジウムを含む残渣とルテニウム浸出生成液を生成する、白金属元素の相互分離方法である。
【0025】
(5)本発明の第5の発明は、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記ルテニウム浸出工程で得られる残渣を塩酸溶液に溶解して得られるイリジウム及びロジウムを含む水溶液を、リン酸トリブチルと接触させて溶媒抽出に付し、イリジウムを抽出した後、逆抽出して、イリジウムを含む逆抽出生成液とロジウムを含む抽出残液を生成するイリジウム抽出工程と、前記イリジウム抽出工程で得られる抽出残液を、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを形成し、不純物を除去する不純物除去工程と、をさらに有する、白金族元素の相互分離方法である。
【0026】
(6)本発明の第6の発明は、第2乃至第5の発明において、前記第1の酸化中和工程及び前記第2の酸化中和工程では、水溶液のpHを5~12に調整し、酸化剤を添加して加水分解に付し、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む沈澱物を生成する、白金族元素の相互分離方法である。
【0027】
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記溶媒抽出工程は、前記浸出生成液をジエチレングリコールジブチルエーテルと接触させて溶媒抽出に付し、不純物元素を含む有機相と抽出残液を形成する第1工程と、得られる抽出残液を硫化アルキルと接触させて溶媒抽出に付し、パラジウムを抽出した後、逆抽出して、パラジウムを含む逆抽出生成液と抽出残液を形成する第2工程と、を含み、前記第2工程で得られる抽出残液を前記第1のケーキ化工程に供する、白金族元素の相互分離方法である。
【0028】
(8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記第1のケーキ化工程では、前記塩化カリウムを前記抽出残液中で80g/L以下となるように添加する、白金族元素の相互分離方法である。
【0029】
(9)本発明の第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記第1のケーキ化工程で得られる沈澱物に含まれる白金を精製する白金精製工程を、さらに有する、白金族元素の相互分離方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、不純物元素を含む白金族元素含有物から白金族元素を相互分離する方法において、白金(Pt)の回収率を向上させることができるとともに、効率的な処理によって、他の白金族元素のうちの特にルテニウム(Ru)の回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】白金族元素の相互分離方法の流れの一例を示す工程図である。
【
図2】白金族元素の相互分離方法の流れの一例を示す工程図であり、
図1の工程図に示す処理に続く処理工程を示す図である。
【
図3】従来の白金族元素の相互分離方法の流れを示す工程図である。
【
図4】白金族元素の相互分離方法の流れを示す工程図である。
【
図5】白金族元素の相互分離方法の流れを示す工程図である。
【
図6】白金族元素の相互分離方法の流れを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」であることを意味する。
【0033】
≪1.概要≫
本実施の形態に係る白金族元素の相互分離方法(以下、単に「相互分離方法」ともいう)は、不純物元素を含む白金族元素含有物から白金族元素を相互分離する方法である。
【0034】
不純物元素を含む白金族元素含有物は、特に限定されず、銅、ニッケル、コバルト等の非鉄金属製錬からの副産物、自動車排ガス処理触媒等の各種の使用済み廃触媒等から得られる種々の不純物元素を含む白金族元素の濃縮物等を用いることができる。不純物元素は、主金属である銅、ニッケル、コバルト、鉄等と共に、他の構成元素である金、銀、鉛、スズ、セレン、テルル、ヒ素、アンチモン、ビスマス、等が挙げられる。このような不純物元素を含む白金族元素含有物としては、例えば、アノードスライムを処理して貴金属を濃縮したもの(PGMconc)等が挙げられる。
【0035】
具体的に、この相互分離方法は、白金族元素含有物を塩酸溶液により浸出して白金族元素を含む浸出生成液を得る浸出工程と、浸出生成液に対して溶媒抽出処理を施す溶媒抽出工程と、溶媒抽出処理により得られる抽出残液に塩化カリウムを添加してケーキ(沈澱物)を生成する第1のケーキ化工程と、を含む。
【0036】
このような方法によれば、溶媒抽出工程を経て得られる抽出残液に含まれる白金(Pt)の大部分を沈澱物中に移行させることができ、Ptの回収率を効率的にかつ効果的に向上させることができる。また、従来の方法(例えば特許文献1に開示の方法)では、抽出残液に対して酸化中和処理を施して得られる処理後液(酸化中和後液)中にPtを濃縮し、その濃縮液を白金精製の工程に戻し入れるといった処理が必要となるが、それに対して、本実施の形態に係る方法によれば、そのような処理が不要となり、全体のプロセスとして工程の簡略化が可能となり、効率性を高めることができる。
【0037】
また、この相互分離方法は、さらに、第1のケーキ化工程で得られる濾液(ケーキ濾液)を酸化中和処理することにより、イリジウム、ルテニウム及びロジウムを含む第1の沈澱物(IrRuRh澱物)を生成する酸化中和工程(第1の酸化中和工程)と、酸化中和工程で得られる沈澱物を塩酸溶液に溶解して得られる水溶液に塩化カリウムを添加して沈澱物を生成する第2のケーキ化工程と、を有することを特徴としている。
【0038】
このような方法によれば、第1のケーキ化工程で得られるケーキ濾液を酸化中和処理して得られるIrRuRh澱物中にパラジウム(Pd)が残存している場合であっても、そのIrRuRh澱物の塩酸溶解液に対して塩化カリウムを添加して沈澱物(ケーキ)を生成させることで(第2のケーキ化工程)、IrRuRh澱物に含まれるRuの大部分を沈澱物中に効果的に移行させることができ、白金以外の白金族元素のうちの特にRuの回収率を向上させることができる。例えば
図4~
図6に工程図を示した方法では、ルテニウム浸出工程(S75)においてIrRuRh澱物に対して酸化剤を添加して浸出処理を施すようにしているが、そのIrRuRh澱物中にPdが比較的多く残存していると、浸出処理におけるPdの固定化に多くの酸化剤が使用され、Ruの浸出率を低下させることがある。また、酸化剤の使用量が増え、処理コストの上昇にもつながる。それに対して、本実施の形態に係る方法によれば、処理コストを抑えながら効率的に、Ruの回収率を向上させることができる。
【0039】
≪2.白金族元素の相互分離方法の各工程について≫
以下、より具体的に白金族元素の相互分離方法(以下、単に「相互分離方法」ともいう)の各工程について説明する。
図1は、本実施の形態に係る白金族元素の相互分離方法の流れの一例を示す工程図である。上述したように、不純物元素を含む白金族元素含有物としては、例えば、アノードスライムを処理して貴金属を濃縮したもの(PGMconc)を用いることができる。
【0040】
[浸出工程]
この相互分離方法では、不純物元素を含む白金族元素含有物(例えばPGMconc)に対して、塩酸溶液を用いた浸出工程S1を行う。具体的に、浸出工程S1では、不純物元素を含む白金族元素含有物を塩酸溶液に懸濁し、酸化剤を添加して浸出処理に付し、白金族元素を含む浸出生成液を得る。
【0041】
処理対象である白金族元素含有物は、通常、金属状又は硫化物状の形態で白金族元素を含有することから、浸出工程S1において塩酸溶液の存在下で酸化剤を作用させて処理することで、有効に白金族元素を溶解することができる。
【0042】
具体的に、浸出工程S1では、白金族元素含有物を、塩酸を含む水溶液に懸濁させ、これに酸化剤を添加する。ここで、塩酸溶液は、初めから水溶液中に共存させてもよいが、原料が硫化物である場合には塩素と水との反応により化学的に生成させてもよい。浸出工程においては、通常、白金族元素に伴う不純物のうちの鉛及び銀の大部分が塩化物として残渣に残留し、他の元素はいずれも塩化物又はクロロ錯体として溶解する。
【0043】
酸化剤としては、特に限定されず、例えば、硝酸、過酸化水素、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、塩素、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、臭素、ペルオキソ硫酸塩等を用いることができる。中でも、コストを考慮すると実用的には、硝酸、過酸化水素及び塩素から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0044】
浸出処理の条件としては、特に限定されないが、白金族元素を確実にクロロ錯体とすることができる条件とすることが好ましい。例えば、温度は70℃以上とすることが好ましく、懸濁液の液部の塩酸濃度は4mol/L以上にすることが好ましい。後工程の溶媒抽出工程S2(特に、後述する第3工程S23)において白金族元素の加水分解を防止するために、浸出処理において確実にクロロ錯体を形成しておくことが望ましい。
【0045】
[溶媒抽出工程]
この相互分離方法では、浸出工程S1を経て得られる浸出生成液に対して溶媒抽出処理を施す溶媒抽出工程S2を行う。溶媒抽出工程S2としては、後述する溶媒抽出処理を行う連続溶媒抽出工程とすることができる。
【0046】
・溶媒抽出工程の第1の実施態様
具体的に、溶媒抽出工程S2は、浸出生成液をジエチレングリコールジブチルエーテルと接触させて溶媒抽出に付し第1工程S21と、第1工程S21から得られる抽出残液を硫化アルキルと接触させて溶媒抽出に付す第2工程S22と、を有する。
【0047】
(第1工程)
溶媒抽出工程S2における第1工程S21は、浸出工程S1で得られる浸出生成液をジエチレングリコールジブチルエーテルと接触させて溶媒抽出に付し、不純物元素を含む有機相と抽出残液を形成する工程である。第1工程S21では、浸出生成液に含まれる不純物元素のうち、金、スズ、アンチモン、テルル、鉄等の親油性クロロ錯体を形成する元素がほぼ完全に抽出され、さらに3価のヒ素及び4価のセレンも抽出することができる。これによって、不純物元素を効果的に集合分離し除去することができる。
【0048】
ここで、溶媒抽出処理の対象である浸出生成液の塩酸濃度は、特に限定されないが、4mol/L~9mol/L程度に調整することが好ましい。塩酸濃度が4mol/L未満であると、金以外の不純物の抽出率が大きく低下する。一方で、塩酸濃度が9mol/Lを超えると、ジエチレングリコールジブチルエーテルの水相への溶出が著しく増加する。なお、白金族元素の一部も僅かに抽出され有機相に入るが、上述した濃度範囲の塩酸水溶液を用いて有機相を洗浄処理することで、白金族元素を逆抽出して水相中へ回収することができる。
【0049】
抽出された不純物元素の有機相からの回収は、特に限定されず公知の方法に従って行うことができる。例えば、蓚酸、亜硫酸ナトリウム等の還元性の水溶液で逆抽出して金を単独分離し、他の不純物元素は水酸化物又は塩基性塩の沈澱として有機相から分離除去することができる。また、逆抽出のpHを-0.2以下に保持することで、金のみを金属として回収し、他の不純物を逆抽出生成液中に溶解した状態で分離することもできる。
【0050】
このような第1工程S21における溶媒抽出処理によって、母液中の白金族元素に対する不純物元素の含有比率の上昇を防止することができる。
【0051】
(第2工程)
溶媒抽出工程S2における第2工程S22は、第1工程S21で得られる抽出残液を硫化アルキルと接触させて溶媒抽出に付し、パラジウムを抽出した後、逆抽出して、パラジウムを含む逆抽出生成液と抽出残液とを生成する工程である。
【0052】
抽出剤としては、硫化アルキルを用いる。硫化アルキルとしては、特に限定されないが、工業的に市販されている硫化ジヘキシル又は硫化ジオクチルを用いることが好ましく、硫化ジヘキシルを用いることがより好ましい。また、工業的に市販されている類似化合物を用いる場合には、不純物元素との選択性の観点から決定することが必要である。なお、硫化アルキルとしては、例えば、10容量%~50容量%の濃度になるように炭化水素系希釈剤によって希釈して用いることが好ましい。また、抽出時間は3時間以上が好ましい。
【0053】
ここで、第1工程S21で得られる抽出残液(第2工程S22での溶媒抽出の対象)のpHは、特に限定されないが、硫化アルキルとの接触に先立って0.5~2.5の範囲に調整しておくことが好ましい。これにより、第1工程S21で得られる抽出残液中に金、セレン、アンチモン、スズ等が残存した場合においても、溶媒抽出の抽出、洗浄、逆抽出の各処理段階でのクラッドの発生に伴って起こる不純物元素の共抽出を防止することができる。処理対象の抽出残液のpHが0.5未満であると、共抽出の防止効果が不十分となり、パラジウムと共に不純物元素が共抽出されやすくなる。一方で、抽出残液のpHが2.5を超えると、ビスマスが沈澱して白金族元素が共沈澱する可能性がある。
【0054】
また、処理対象の抽出残液(第1工程S21で得られる抽出残液)中のテルル、アンチモン、スズの残存量が数十mg/Lを超える場合には、その抽出残液中に沈澱物が発生することがあるが、発生した沈澱物は事前に分離してから用いることが望ましい。
【0055】
また、処理対象の抽出残液に対するpHの調整にともない、その抽出残液中に溶解していたジエチレングリコールジブチルエーテルの溶解度は、酸濃度の低下に伴って0.n~ng/Lから0.01g/Lまで低下する。このことから、抽出残液中にジエチレングリコールジブチルエーテルの結晶が析出してくるため、浮上分離により効率的に回収することができる。
【0056】
第2工程S22での溶媒抽出により得られる有機相中のパラジウムについては、例えばアンモニア水により逆抽出することができ、その逆抽出処理によりパラジウムを含む逆抽出生成液が得られる。逆抽出においては、共存不純物元素を分離除去するために、例えば濃度1mol/L~2mol/Lの塩酸で洗浄処理した後に行うことが好ましい。なお、逆抽出により再生される有機相は再度抽出に用いることができる。
【0057】
第2工程S22で得られるパラジウムを含む逆抽出生成液からは、公知の方法によって、製品化できる純度のパラジウムを回収することができる(パラジウム精製工程S221)。例えば、塩酸で中和することで純度99.9重量%(金属換算)以上の塩化ジアンミンパラジウム(II)結晶を得ることができる。
【0058】
このような溶媒抽出工程を経て、第2工程S22から得られる抽出残液、つまりパラジウムを抽出する溶媒抽出を行った後の抽出残液を、次工程の第1のケーキ化工程S3に供する。
【0059】
さて、第1の実施態様に示す溶媒抽出工程では、後述する第2の実施態様に示す溶媒抽出工程と比べて、主としてビスマスを抽出除去する第3工程を省略して工程を簡略化させたものである。後述する第3工程では、第2工程S22から得られる抽出残液に含まれるビスマスの大部分を除去することが可能であるが、次の第1のケーキ化工程S3にて塩化カリウムを添加してケーキ(沈澱物)を生成させることで抽出残液に含まれる白金(Pt)を回収することの効果は、抽出残液に含まれるビスマスの多寡に依って変わらない。このことから、白金を効果的かつ効率的に分離回収する観点からすると、第1の実施態様である溶媒抽出工程S2を実行することが好ましい。
【0060】
このような溶媒抽出工程S2によれば、工程を簡略化しながらも、次の第1のケーキ化工程S3にて有効に白金を分離回収することができる。また、後述する第3工程での溶媒抽出処理を行ってビスマスを分離させると、ビスマスが有機相中に澱物状となって蓄積されていくため、所定の期間(回数)でその有機相(有機溶媒)を繰り返し使用するにあたっては、有機相の入れ替え頻度が多くなり、あるいはその澱物を除去する操作が必要になる。この点、第1の実施態様である溶媒抽出工程S2を実行することで、上述した澱物除去操作が不要となり、また有機相の頻繁な入れ替えも不要となる。
【0061】
・溶媒抽出工程の第2の実施態様
溶媒抽出工程の第2の実施態様としては、上述した第1の実施態様に係る溶媒抽出工程S2において、さらに第3工程を有するものである(工程図は特段示さない)。
【0062】
具体的に、第3工程は、第2工程S22で得られる抽出残液をビス(2-エチルへキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを生成する工程である。第3工程では、第2工程S22では分離除去されない、主としてビスマスや、その他、銅、鉛、ニッケル等の陽イオン型不純物元素が抽出除去される。
【0063】
抽出剤としては、ビス(2-エチルへキシル)リン酸を用いる。第3工程での溶媒抽出においては、酸性抽出剤であれば原理的にはいずれの抽出剤であっても使用可能であるが、ビス(2-エチルへキシル)リン酸より酸性の弱い(pKa値が大きい)酸性抽出剤を用いる場合には、各金属イオンの抽出のためにpHを上昇させることが必要となり、その結果ビスマスの加水分解と沈澱発生を招く。一方で、より酸性の強い(pKa値が小さい)酸性抽出剤を用いると、逆抽出が困難となる。
【0064】
ビス(2-エチルへキシル)リン酸としては、例えば、10容量%~50容量%の濃度になるように炭化水素系希釈剤によって希釈して用いることが好ましい。
【0065】
処理対象の抽出残液(第2工程S22で得られる抽出残液)のpHは、特に限定されないが、2.5~4.5であることが好ましい。抽出残液のpHが2.5未満であると、不純物元素の抽出が不完全になる可能性がある。一方で、抽出残液のpHが4.5を超えると、ビスマスが含まれる場合には沈澱が生成して、クラッドを形成しやすくなる。
【0066】
pHの調整方法としては、特に限定されないが、ビス(2-エチルへキシル)リン酸の一部を予めアルカリ金属塩としたものを用いて行うことが好ましい。具体的には、例えば、第2工程S22で得られる抽出残液とビス(2-エチルへキシル)リン酸とを混合しながら、pH調整剤としてビス(2-エチルへキシル)リン酸のアルカリ金属塩を用いる方法が好ましい。このことは、第2工程S22で得られる抽出残液(処理対象の抽出残液)とビス(2-エチルへキシル)リン酸とを混合しながら、アルカリを添加してpH調整を行うことで、その抽出残液中にビスマスを含有するときにはアルカリが直接ビスマスと反応してオキシ塩化物等の沈澱が発生する可能性があるからである。すなわち、抽出剤中のアルカリ金属イオンと不純物元素イオンとのイオン交換反応を利用して抽出を行うことで、ビスマス化合物の沈澱を防止することができる。
【0067】
第3工程での溶媒抽出により得られる有機相については、特に限定されないが、逆抽出に先立って、塩化ナトリウム等の中性付近の塩類を含む水溶液で洗浄することが好ましい。これにより、物理的に有機相中に分散及び懸濁した水滴を、水相に回収することができる。なお、ビス(2-エチルへキシル)リン酸には、陰イオンを形成している白金族元素のクロロ錯体は抽出されないが、水相が物理的に有機相中に分散及び懸濁される。
【0068】
有機相(洗浄した場合には洗浄後の有機相)に対する逆抽出処理は、公知の方法により、塩酸、硝酸、スルファミン酸等の強酸溶液を用いて行うことができる。ここで、不純物としてビスマス又は鉛を含む場合には、これらの元素と錯体を形成し、低濃度でも効率よく逆抽出することができる塩酸溶液を用いることが好ましい。逆抽出に用いる塩酸濃度は、特に限定されないが、0.5mol/L~2mol/Lが好ましい。塩酸濃度が0.5mol/L未満であると、ビスマスの加水分解により沈澱生成が起きる可能性がある。一方で、塩酸濃度が2mol/Lを超えると、共通イオン効果により塩化鉛の溶解度が低下して、塩化鉛が析出する可能性がある。なお、逆抽出で再生される有機相は再度抽出に用いることができる。
【0069】
このような溶媒抽出工程を経て、第3工程から得られる抽出残液、つまり主としてビスマスを抽出する溶媒抽出を行った後の抽出残液を、次工程の第1のケーキ化工程S3に供給する。
【0070】
[第1のケーキ化工程]
(Ptを含むケーキの生成工程)
この相互分離方法では、上述した溶媒抽出工程S2における処理により得られる抽出残液に塩化カリウムを所定量添加してケーキ(沈澱物)を生成する第1のケーキ化工程S3を行うことを特徴としている。
【0071】
本実施の形態に係る相互分離方法では、このように第1のケーキ化工程S3にて沈澱物を生成させることで、抽出残液中に含まれる白金(Pt)の大部分を沈澱物化させることができる。これにより、白金の回収率を効果的に向上させることができる。
【0072】
添加する塩化カリウムは、固体(粉体)の形態であってもよく、水等の溶媒に溶解させた塩化カリウム溶液の形態であってもよい。
【0073】
第1のケーキ化工程S3においては、塩化カリウムの添加量が重要となり、具体的には、塩化カリウムを抽出残液中における濃度で20g/L以上となるように添加する。また、好ましくは、塩化カリウムを抽出残液中における濃度で40g/L以上となるように添加し、より好ましくは、塩化カリウムを抽出残液中における濃度で60g/L以上となるように添加する。
【0074】
ここで、処理対象の抽出残液中には、Ptが2.0g/L~2.5g/L程度の割合で含まれている。一般的に、このような抽出残液に塩化カリウムを添加して沈澱物を生成させると、ロジウム(Rh)やルテニウム(Ru)等も同時に沈澱して不純物となることが懸念される。ところが、本発明者らは、意外にもこのような懸念は発現されず、Ptが優先的に沈澱して、不純物を低減しながら有効に回収することができることを見出した。
【0075】
このことの理由は以下のように考えられる。すなわち、塩化カリウムによる白金族元素の沈澱反応は、K2[MCl6]の形態(M=白金族元素)をとる必要があり、白金族元素は4価の状態である必要があるところ、白金族元素の価数は酸化還元電位に影響を受ける。上述した溶媒抽出工程S2を経て得られる抽出残液において、Ptは4価の状態であるため、K2[PtCl6]の形態となってケーキとして沈澱する。一方で、抽出残液中のIr、Ru、Rhは3価の比率が高いことから、沈澱の生成が遅い。これによりケーキ中にはPtが優先的に沈澱することになる。
【0076】
そして、本発明者らは、抽出残液への塩化カリウムの添加量が、抽出残液中の濃度で20g/L以上のときに上述した効果が発現していることを見出した。このような20g/Lという塩化カリウムの添加量は、Ptの反応当量に換算すると20倍~25倍程度に相当する大過剰の量であるため、4価の状態であるPtが3価の状態である他の白金族元素よりも、優先的に沈澱する傾向を強めたものであると推測される。
【0077】
上述したように、本実施の形態に係る相互分離方法では、第1のケーキ化工程S3にて沈澱物を生成させることで、抽出残液中に含まれるPtの大部分を沈澱物化させることができる。具体的には、抽出残液中のPtを100としたとき、Pt精製処理に導入されるPtは従来の方法では90未満であったのに対し、95以上にまで向上させることができる。
【0078】
一方で、塩化カリウムの添加量について、抽出残液中における濃度で80g/L以下となるように添加することが好ましい。抽出残液中の塩化カリウム濃度が80g/Lを超えるように添加すると、形成される沈澱物中のPtの分配率を95%超の割合にでき、抽出残液中に残存するPt(Pt残存率)を5%未満とすることができるものの、Ir、Ru、Rh等の元素の沈澱物中への分配率も上昇し始める。
【0079】
このことから、塩化カリウムの添加量としては、抽出残液中における濃度で80g/L以下となるように添加することがより好ましく、これにより、沈澱物中への不純物の含有を低減させて、Ptを選択的に回収することができる。
【0080】
(ケーキ(沈澱物)中のPtの精製工程)
この相互分離方法では、上述した第1のケーキ化工程S3を経て得られたPtを含有する沈澱物からPtを精製する工程(白金精製工程S31)を行うことができる。
【0081】
具体的には、第1のケーキ化工程S3での処理により得られたPtを含有する沈澱物を濾過等により分離したのち、公知の方法により精製処理を施すことができる。例えば、塩酸等を用いてその沈澱物を溶解し、その後塩化アンモニウムを添加することにより、純度99.9重量%(金属換算)以上のヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム結晶を生成させる。なお、精製方法としてはこれに限定されない。
【0082】
精製して回収されるPtは、第1のケーキ化工程S3を経て得られるものであり、白金族元素含有物に含まれるPtのおよそ9割以上の割合の量に相当する。このように、第1のケーキ化工程S3を経ることにより、Ptの回収率を向上させることができる。
【0083】
[第1の酸化中和工程]
この相互分離方法では、第1のケーキ化工程S3を経て沈澱物(Ptを含むケーキ)を濾過分離して得られる濾液(ケーキ濾液)に酸化中和処理を施す第1の酸化中和工程S4を行う。
【0084】
具体的に、第1の酸化中和工程S4では、濾液のpHを5~12に調整して酸化剤を添加して加水分解に付し、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)を含む沈澱物(IrRuRh澱物)を生成する。第1の酸化中和工程S4では、ケーキ濾液のpHを中性付近に保持することにより、加水分解しやすいIr、Ru及びRhを水酸化物沈澱として分離する。なお、ケーキ濾液中にPtが残存して含まれる場合でも、選択的に可溶性の白金酸アルカリとして水溶液に残留させることができる。
【0085】
第1の酸化中和工程S4では、例えばpH調整剤を添加してケーキ濾液のpHを5~12に調整する。ケーキ濾液のpHが5未満であると、Ru、Rh及びIrの加水分解が不完全となることがある。一方で、ケーキ濾液のpHが12を超えると、これら元素の水酸化物沈澱が再溶解する可能性がある。なお、ここで用いるpH調整剤としては、特に限定されず、例えば水溶性のアルカリを用いることができ、その中でも水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0086】
温度条件としては、特に限定されないが、温度が上昇するほど加水分解反応が促進されることから、特に60℃~100℃であることが好ましい。温度が60℃未満であると、加水分解反応が不十分となることがあり、100℃を超えると加圧反応容器が必要になり処理の効率性が低下する。
【0087】
酸化還元電位(ORP、銀/塩化銀電極基準)としては、特に限定されないが、100mV~700mVであることが好ましく、200mV~400mVであることがより好ましい。上述した浸出工程S1において、白金族元素は強酸化性雰囲気にて浸出されることから、Ir、Ru及びRhは4価のクロロ錯体となるが、これら元素を良好に沈澱させるためには溶解度が低い4価の水酸化物を確実に生成させることが重要となる。このとき、ORPが100mV未満であると、白金族元素の酸化が十分でなくIr、Ru及びRhの水酸化物の生成が不十分となる可能性がある。一方で、ORPが700mVを超えると、白金族元素の一部が6価まで酸化されて水酸化物が溶解し、また、Ruが8価に酸化され揮発性で爆発性のあるRuO4を形成する恐れがある。
【0088】
酸化剤としては、特に限定されず、中性からアルカリ性領域で有効に作用する、塩素、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、臭素、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、ペルオキソ硫酸塩等を用いることができる。その中でも特に、保管しやすく、かつ反応中の自己分解率が低く価格が安価である亜塩素酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0089】
[第2のケーキ化工程]
ここで、例えば処理対象となる白金族元素含有物の組成などにより、第1のケーキ化工程S3で得られるケーキ濾液を酸化中和処理して得られるIrRuRh澱物中にパラジウム(Pd)が所定量残存することがある。例えば
図4~
図6に工程図を示した方法のように、得られたIrRuRh澱物に対して浸出処理を施す場合(ルテニウム浸出工程(S75))、そのIrRuRh澱物中にPdが残存している状態であると、浸出処理に際して添加する酸化剤(例えば亜塩素酸ナトリウムなど)がそのPdの固定化に用いられてしまい、効果的にIrRuRh澱物からRuを浸出させることができない。また、Ruを浸出させるために酸化剤の使用量を増加させると、それにともって処理コストが上昇し、効率的な処理を実現できなくなる。
【0090】
そこで、本実施の形態に係る相互分離方法では、第1の酸化中和工程S4を経て得られたIrRuRh澱物に対してケーキ化処理を行う第2のケーキ化工程S5を有する。具体的に、第2のケーキ化工程S5では、IrRuRh澱物を塩酸溶液に溶解し、得られる塩酸溶解液からなる水溶液に塩化カリウムを添加して沈殿物(ケーキ)を生成する。
【0091】
第2のケーキ化工程S5での処理を行うことで、IrRuRh澱物に含まれるRuの大部分を生成する沈澱物中に効果的に移行させることができる。具体的には、生成する沈澱物中のRu含有率としておよそ90%以上の高い割合で、Ruを沈澱物として回収することができる。このように、処理コストを抑えながら効率的に、Ruの回収率を向上させることができる。
【0092】
また、詳しくは後述するが、第2のケーキ化工程S5で得られたRuを含む沈澱物については、ルテニウム浸出工程S8での処理に移送供給して、沈澱物中のRuを浸出させる処理を施すことが好ましい。このとき、上述したように第2のケーキ化工程S5を設け、IrRuRh澱物に含まれるRuの大部分を沈澱物とすることができるため、その沈澱物に対する浸出処理における負荷を有効に低減させることができる。
【0093】
第2のケーキ化工程S5において、まず、IrRuRh澱物を塩酸溶液により溶解するに際しては、特に限定されないが、溶解温度を60℃~100℃とすることが好ましい。このような範囲に加熱して溶解することで、特にIrをヘキサクロロイリジウム(IV)酸として溶解させることができ、水溶液中に残存させて沈澱物化を抑制できる。
【0094】
また、溶解に用いる塩酸溶液の濃度は、特に限定されないが、3mol/L~7mol/Lが好ましく、4mol/L~7mol/Lがより好ましい。
【0095】
第2のケーキ化工程S5において、次に、得られた塩酸溶解液に対するケーキ化処理に際して添加する塩化カリウムは、第1のケーキ化工程S3と同様に、固体(粉体)の形態であってもよく、水等の溶媒に溶解させた塩化カリウム溶液の形態であってもよい。
【0096】
また、塩化カリウムの添加量としては、塩酸溶解液中における濃度で20g/L以上となるように添加することが好ましく、40g/L以上となるように添加することが好ましく、60g/L以上となるように添加することが特に好ましい。一方で、塩化カリウムの添加量について、塩酸溶解液中における濃度で80g/L以下となるように添加することが好ましい。塩化カリウム濃度が80g/Lを超えるように添加すると、Ir、Rh等の元素の沈澱物中への分配率も上昇し始める可能性がある。
【0097】
[不純物除去工程]
不純物除去工程S6では、第2のケーキ化工程S5で得られる沈殿物(ケーキ)を含むスラリーを濾過分離して精製する濾液に対して溶媒抽出処理を施し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを形成し、不純物を除去する。
【0098】
具体的には、沈殿物を濾過分離して精製する濾液(ケーキ濾液)を、ビス(2-エチルへキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを生成させる。これにより、ビスマス、銅、鉛、ニッケル等の陽イオン型不純物元素が有機相中に抽出され除去される。なお、溶媒抽出の方法についての詳細は、上述した第2の実施態様の溶媒抽出工程S2における第3工程と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0099】
このような不純物除去工程S6での処理を経て得られる抽出残液は、陽イオン型不純物元素が除去された水溶液であり、次の第2の酸化中和工程S7を経て得られる第2のIrRuRh澱物において、陽イオン型不純物元素の含有を抑制して、純度を向上させることができる。そして、その第2のIrRuRh澱物から、Ir、Ru及びRhをそれぞれ化合物の形態として精製することで、純度の高い化合物を得ることができる。
【0100】
[第2の酸化中和工程]
第2の酸化中和工程S7では、不純物除去工程S6で得られる抽出残液を酸化中和処理することにより、Ir、Ru及びRhを含む第2の沈澱物(第2のIrRuRh澱物)を生成する。
【0101】
具体的に、第2の酸化中和工程S7では、抽出残液のpHを5~12に調整して酸化剤を添加して加水分解に付し、Ir、Ru及びRhを含む第2のIrRuRh澱物を生成する。上述した第1の酸化中和工程S4と同様に、抽出残液のpHを中性付近に保持することにより、加水分解しやすいIr、Ru及びRhを水酸化物沈澱として分離することができる。なお、酸化中和の方法についての詳細は、第1の酸化中和工程S4における処理方法と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0102】
[ルテニウム浸出工程]
(ルテニウム浸出工程)
ルテニウム浸出工程S8では、上述した第2のケーキ化工程S5で得られる沈澱物(ケーキ)に対して浸出処理を施して、Ruを含む浸出生成液を得る。
【0103】
具体的に、ルテニウム浸出工程S8では、第2のケーキ化工程S5を経て得られる沈澱物をpH12以上の強アルカリ水溶液中で酸化剤を添加して浸出に付し、Ir及びRhを含む残渣と、Ruを含む浸出生成液を得る。ルテニウム浸出工程S8では、強アルカリ水溶液中で酸化することで、Ruがルテニウム(VI)酸ナトリウムとして浸出される。
【0104】
強アルカリ水溶液のpHは12以上であり、13以上が好ましい。また、強アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムを用いる場合には、NaOH濃度10重量%以上がより好ましい。pHが高いほど、ルテニウム(VI)酸ナトリウムが液中で安定化する。一方で、pHが12未満であると、ルテニウム(VI)酸ナトリウムはほとんど生成しなくなる。なお、pH調整剤としては、特に限定されず、水溶性のアルカリが用いられるが、その中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
【0105】
酸化還元電位(ORP、銀/塩化銀電極基準)としては、特に限定されないが、100mV~300mVであることが好ましい。ORPが100mV未満であると、水酸化ルテニウム(IV)からルテニウム(VI)酸ナトリウムへの酸化が不十分となり、ルテニウムの浸出が不十分となる。一方で、ORPが300mVを超えると、酸化剤の自己分解が大きくなるため非効率的である。
【0106】
酸化剤としては、特に限定されず、アルカリ性領域で有効に作用する、塩素、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、臭素、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、ペルオキソ硫酸塩等を用いることができる。中でも特に、保管しやすく、かつ反応中の自己分解率が低く価格が安価である亜塩素酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0107】
懸濁液のスラリー濃度としては、特に限定されないが、100g/L以下であることが好ましく、10g/L~100g/Lであることがより好ましい。スラリー濃度は低いほど浸出率は大きくなり、100g/L以下のスラリー濃度であることにより、通常90%以上の浸出率を得ることができる。
【0108】
なお、高純度のルテニウム得るためには、ORP、pH、スラリー濃度等の条件を調整してルテニウム浸出率を故意に低く抑えることにより、白金族元素その他の不純物の浸出を抑制することが好ましい。
【0109】
ここで、ルテニウム浸出工程S8では、第2のケーキ化工程S5で得られる沈殿物と共に、上述した第2の酸化中和工程S7で得られる第2のIrRuRh澱物を合わせて、浸出処理に付すようにしてもよい。そしてこれにより、Ir及びRhを含む残渣と、Ruを含む浸出生成液とを生成する。
【0110】
また、第2の酸化中和工程S7で得られる第2のIrRuRh澱物に対しては、第2のケーキ化工程S5で得られる沈澱物とは分けて、それぞれ別々の系で浸出処理を行うようにしてもよい。例えば、別々の装置を用いて処理するか、あるいは各浸出生成液を区別してバッチ処理する方法により、それぞれ別々に処理する。
【0111】
なお、上述したように、第2のケーキ化工程S5を経て得られる沈澱物は、Ruの大部分が高純度に含まれるものである。そのため、その第2のケーキ化工程S5で得られる沈澱物に対しては、それ単独の処理としてRuを浸出させる処理(ルテニウム浸出工程S8での処理)を施すようにすることで、その処理負荷を有効に低減できるとともに、得られるRuを含む浸出生成液の純度をより向上させることができる。
【0112】
(ルテニウムの精製工程)
また、必要に応じて、ルテニウム浸出工程S8で得られるRuを含む浸出生成液からRuを精製するルテニウム精製工程S9を行うことができる。
【0113】
ルテニウム精製工程S9は、例えば、Ruを含む浸出生成液に還元剤を添加してRuを含む沈澱物を得る還元段階と、その沈澱物を溶解してRu結晶を得る結晶化段階と、を備える。結晶化段階では、例えば、Ruを含む沈澱物を塩酸溶液に溶解して得られる水溶液に、塩化カリウム又は塩化アンモニウムを添加してRuの結晶を得る方法を行うことができる。これにより、製品化できる純度のRuの結晶を得ることができる。
【0114】
還元段階においては、Ruを含む浸出生成液中のルテニウム(VI)酸ナトリウムを還元剤により還元して、水酸化ルテニウム(IV)の沈澱物を生成させる。なお、水酸化ルテニウム(IV)は、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が0mV付近で沈澱する。還元剤としては、特に限定されないが、Ruのみを選択的に還元することができる、アルコール類、ケトン類、糖類などの緩和な還元剤を用いることが好ましい。
【0115】
また、結晶化段階においては、水酸化ルテニウム(IV)を、ヘキサクロロルテニウム(IV)酸又はその水和錯イオンとして塩酸溶液に溶解し、塩化カリウム又は塩化アンモニウムを添加することによって、ヘキサクロロルテニウム(IV)酸塩、オクソペンタクロロルテニウム(IV)酸塩、又はオクソテトラクロロルテニウム(IV)酸塩の結晶を得ることができる。なお、不純物元素が微量含有される場合でも、不純物元素は全て母液に分配される。このような結晶化段階を経て、純度99.9重量%(金属換算)以上のRuの結晶を得ることができる。
【0116】
なお、さらに高純度のRu化合物を得るためには、必要に応じて、結晶を処理する再結晶精製を行うことができる。再結晶精製としては、例えば、得られた結晶を用いて、塩化ヒドラジニウム又は亜硫酸イオン等の弱い還元剤で還元して塩化ルテニウム(III)の水溶液を得て、これを再度、酸化剤を用いて酸化する方法を用いることができる。
【0117】
[イリジウム抽出工程]
(イリジウム抽出工程)
イリジウム抽出工程S10では、ルテニウム浸出工程S8を経て得られる浸出残渣(Ir及びRhを含む残渣)を塩酸溶液に溶解して得られる水溶液に対して溶媒抽出処理を施して、Irを抽出する。具体的に、イリジウム抽出工程S10では、浸出残渣を塩酸溶液に溶解して得られるIr及びRhを含む水溶液を、リン酸トリブチルと接触させて溶媒抽出に付し、Irを抽出した後、逆抽出して、Irを含む逆抽出生成液とRhを含む抽出残液を生成する。
【0118】
Ir及びRhを含む残渣を塩酸溶液により溶解するに際し、その溶解温度は、特に限定されないが、60℃~100℃とすることが好ましい。このような範囲に加熱して溶解することで、Irをヘキサクロロイリジウム(IV)酸として溶解させることができる。
【0119】
また、溶解に用いる塩酸溶液の濃度は、特に限定されないが、Irをヘキサクロロイリジウム(IV)酸として十分に抽出する観点から、3mol/L~7mol/Lが好ましく、4mol/L~7mol/Lがより好ましい。
【0120】
溶媒抽出に用いるIr及びRhを含む水溶液の酸化還元電位(ORP、銀/塩化銀電極基準)は、特に限定されないが、酸化剤を添加することで、好ましくは700mV~1200mV、より好ましくは800mV~1000mVに調整する。ORPが700mV未満であると、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸イオンが不安定となり一部3価のIrが生成して有機相に十分に抽出できない可能性がある。一方で、ORPが1200mVを超えても、それ以上の抽出効果は得られない。
【0121】
酸化剤としては、特に限定されず、例えば塩素、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸等が用いることができるが、中でも特に、白金族元素のクロロ錯体形成を促進する触媒となる硝酸を用いることが好ましい。
【0122】
また、溶媒抽出の処理対象であるIr及びRhを含む水溶液中にRuが共存している場合には、その水溶液に亜硝酸イオンを添加することが好ましい。これにより、ペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸を生成させ、Irと同時にRuを有機相へ分離することができ、水相中のRhの純度を高めることができる。
【0123】
Irを含む有機相に対する逆抽出で用いる水溶液としては、特に限定されず、水又は1mol/L以下の希薄な酸を用いることができるが、特に、相分離不良と有機相中の不純物の加水分解とを防止する観点から、食塩等の水溶性のアルカリ塩類を含む水溶液を用いることが好ましい。
【0124】
ここで、Irと共に有機相中に共存する元素をより完全に逆抽出するためには、ヒドラジン若しくはその化合物、又は亜硫酸若しくはその塩類を含む水溶液を用いて、還元性で逆抽出することが有効である。ただし、有機相中に懸濁又は溶解した還元剤が、抽出の際に酸化還元電位を下げる場合があるため、そのような場合には、抽出段のORPを700mV以上に保つように、Ir及びRhを含む水溶液のORP制御が必要である。
【0125】
(不純物除去工程)
また、不純物除去工程S101では、イリジウム抽出工程S10で得られるRhを含む抽出残液に対して溶媒抽出処理を施し、、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを形成し、不純物を除去する。具体的には、Rhを含む抽出残液を、ビス(2-エチルへキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを生成させる。
【0126】
これにより、抽出残液に含まれる、ビスマス、銅、鉛、ニッケル等の陽イオン型不純物元素が有機相中に抽出され除去することができる。なお、具体的な溶媒抽出の方法については、上述した第2の実施態様に係る溶媒抽出工程S2における第3工程と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0127】
このような不純物除去工程S101での処理を経て得られる抽出残液は、陽イオン型不純物元素が除去されたRhを含む水溶液であり、この水溶液をロジウム精製工程S92での処理に供することで、ロジウム化合物の純度をさらに向上させることができる。
【0128】
(ロジウム精製工程)
上述したように、不純物除去工程S101での溶媒抽出処理を経て得られる抽出残液、すなわちRhを含む抽出残液からは、公知の方法により、製品化できる純度のRhを回収することができる(ロジウム精製工程S102)。
【0129】
例えば、抽出残液に亜硝酸ナトリウムを添加することでヘキサニトロロジウム(III)酸ナトリウムを得て、これを温水に溶解して不純物を除去精製した後、塩化アンモニウムを添加してヘキサニトロロジウム(III)酸アンモニウムを分離回収する方法により、純度99重量%以上のRhの結晶を得ることができる。
【0130】
(イリジウム精製工程)
また、必要に応じて、イリジウム抽出工程S10で得られる逆抽出生成液を処理するイリジウム精製工程S103を行うことができる。イリジウム精製工程S103は、例えば、逆抽出生成液に金属ビスマスを添加して還元に付し、Ir以外の白金族元素を含む合金及びIrを含む水溶液を形成する還元段階と、その水溶液からIrの結晶を得る結晶化段階と、を備える。
【0131】
結晶化段階では、例えば、Irを含む水溶液に酸化剤を添加して酸化後、塩化カリウム又は塩化アンモニウムを添加して、Irの結晶を得る方法を行う。
【0132】
還元段階において用いる還元剤としては、金属ビスマスが好ましい。金属ビスマスは、Irイオンを還元しないが、他の白金族イオンを確実に還元することができる+300mV付近のORPを維持しやすい。これにより、Ir以外の白金族元素を含む合金とIrを含む水溶液を得ることができる。
【0133】
結晶化段階においては、先ず、Irを含む水溶液に再び酸化剤を添加して、酸化還元電位(ORP、銀/塩化銀電極基準)を、好ましくは700mV~1000mV、より好ましくは800mV~1000mVに調整する。これにより、結晶生成に必要なヘキサクロロイリジウム(IV)酸イオンが安定して生成する。ORPが700mV未満であると、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸イオンが不安定であり一部3価のIrが生成する可能性がある。一方で、ORPが1000mVを超えると、鉛のごく一部が4価になり、Irと同形のヘキサクロロ酸鉛結晶を作って混入することがある。
【0134】
結晶化段階で用いる酸化剤としては、特に限定されず、例えば塩素、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸等を用いることができる。
【0135】
結晶化段階においては、次いで、ORPが調整された水溶液に、塩化カリウム又は塩化アンモニウムを添加する。このことによって、Irのみを選択的に結晶化することができる。これにより、純度99.9重量%(金属換算)以上のヘキサクロロイリジウム酸塩の結晶を得ることができる。
【0136】
なお、さらに高純度のイリジウム化合物を得るためには、必要に応じて、結晶を処理する再結晶精製を行うことができる。再結晶精製としては、例えば、得られた結晶を用いて、塩化ヒドラジニウム又は亜硫酸イオン等の弱い還元剤で還元して塩化イリジウム(III)の水溶液を得て、これを再度、酸化する方法を用いることができる。
【実施例】
【0137】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、金属の分析はICP発光分析法により行った。
【0138】
[浸出工程~第1のケーキ化工程について]
(実施例1)
原料として白金族元素濃縮物を用いて、
図1に示すフロー図に沿って処理を進めた。具体的に、先ず、浸出工程S1と、浸出生成液に対する溶媒抽出工程S2と、を行った。これにより、溶媒抽出工程S2における第2工程S22を経て得られた抽出残液としてPt濃度2.04g/Lである溶液(原液)を得た。
【0139】
得られた抽出残液100mlに、塩化カリウム(粉体)を、抽出残液中の濃度で20g/Lとなるように添加した(第1のケーキ化工程S3)。その後、液温25℃で、300rpmの回転数でスターラー撹拌してケーキ(沈澱物)を生成させた。濾紙(131)を用いて濾過処理を行い、沈澱物と濾液とに分離した。
【0140】
分離して得られた濾液中のPt濃度を測定したところ0.19g/Lであり、原液の9.3%に相当する濃度であった。なお、沈澱物中には原液の90.7%に相当するPtが含まれていた(Ptのケーキへの分配率:90.7%)。
【0141】
(実施例2)
実施例2では、第1のケーキ化工程S3において、塩化カリウム(粉体)を、抽出残液中の濃度で40g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、分離して得られた濾液中のPt濃度を測定したところ0.11g/Lであり、原液の5.4%に相当する濃度であった。なお、沈澱物中には原液の94.6%に相当するPtが含まれていた(Ptのケーキへの分配率:94.6%)。
【0142】
(実施例3)
実施例3では、第1のケーキ化工程S3において、塩化カリウム(粉体)を、抽出残液中の濃度で60g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、分離して得られた濾液中のPt濃度を測定したところ0.09g/Lであり、原液の4.4%に相当する濃度であった。なお、沈澱物中には原液の95.6%に相当するPtが含まれていた(Ptのケーキへの分配率:95.6%)。
【0143】
(実施例4)
実施例4では、第1のケーキ化工程S3において、塩化カリウム(粉体)を、抽出残液中の濃度で80g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、分離して得られた濾液中のPt濃度を測定したところ0.07g/Lであり、原液の3.4%に相当する濃度であった。なお、沈澱物中には原液の96.6%に相当するPtが含まれていた(Ptのケーキへの分配率:96.6%)。
【0144】
(実施例5)
実施例5では、第1のケーキ化工程S3において、塩化カリウム(粉体)を、抽出残液中の濃度で160g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、分離して得られた濾液中のPt濃度を測定したところ0.06g/Lであり、原液の2.9%に相当する濃度であった。なお、沈澱物中には原液の97.1%に相当するPtが含まれていた(Ptのケーキへの分配率:97.1%)。
【0145】
(比較例1)
比較例1では、第1のケーキ化工程S3において、塩化カリウム(粉体)を、抽出残液中の濃度で10g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、分離して得られた濾液中のPt濃度を測定したところ0.51g/Lであり、原液の25.0%に相当する濃度であった。なお、沈澱物中には原液の75.0%に相当するPtが含まれていた(Ptのケーキへの分配率:75.0%)。
【0146】
(結果)
下記表1に、浸出工程~第1のケーキ化工程における処理の結果をまとめて示す。
【0147】
【0148】
表1に示す結果から、抽出残液に含まれる白金族元素のうち、Ptが優先的にケーキ化しており、そのケーキへの分配率は90%を超える高い割合となっていることがわかる。また、抽出残液中の塩化カリウム濃度が40g/L以上となるように添加すると、ケーキへの分配率はおよそ95%程度以上となって安定化するため、特に好ましいことがわかる。
【0149】
一方で、抽出残液に塩化カリウムを添加する場合でもその濃度が10g/Lであると(比較例1)、ケーキへの分配率は75%と低くなり、Ptの回収率向上の効果は十分に表れないことがわかる。
【0150】
また、抽出残液中の塩化カリウムの濃度が80g/Lを超えると、Ptのケーキへの分配率の向上効果は徐々に小さくなるのに対し、Pt回収の観点で不純物となる元素(Ir、Ru、Rh)のケーキへの分配率が上昇している。このことから、塩化カリウムの添加量に関して、抽出残液中の塩化カリウムの濃度で80g/L以下となるように添加することが好ましいことがわかる。
【0151】
[第1の酸化中和工程~第2のケーキ化工程について]
(実施例6)
次に、
図1に示すフロー図に沿って処理を進め、第1のケーキ化工程S3から得られたケーキ濾液に対して酸化中和処理を施す第1の酸化中和工程S4を実行し、続いて、得られたIrRuRh澱物に対してケーキ化処理を施す第2のケーキ化工程S5を実行した。
【0152】
具体的に、第1の酸化中和工程S4では、第1のケーキ化工程S3から得られた濾液(ケーキ濾液)に水酸化ナトリウムを添加してpH11程度に調整し、酸化剤として亜塩素酸ナトリウムを添加して加水分解に付した。なお、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は200mV~400mVの範囲内に維持されるように処理した。このような酸化中和処理により、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)を含む沈澱物(IrRuRh澱物)を生成させた。
【0153】
次に、得られたIrRuRh澱物に対して第2のケーキ化処理を行った(第2のケーキ化工程S5)。具体的には、まず、IrRuRh澱物を、濃度4mol/Lの塩酸溶液に温度80℃で溶解して、Ru濃度が640mg/Lである塩酸溶解液を得た。次に、塩酸溶解液100mlに、塩化カリウム(粉体)を、塩酸溶解液中の濃度で80g/Lとなるように添加した。その後、液温25℃で、300rpmの回転数でスターラー撹拌してケーキ(沈澱物)を生成させた。濾紙(131)を用いて濾過処理を行い、沈澱物と濾液とに分離した。
【0154】
分離して得られた濾液中のRu濃度を測定したところ64mg/Lであり、塩酸溶解液の10%に相当する濃度であった。また、沈澱物中には塩酸溶解液の90%に相当するRuが含まれていた(Ruのケーキへの分配率:90%)。このように、第2のケーキ化工程S5を経ることにより、Ruのほとんどを沈澱物として回収することができた。
【0155】
[不純物除去工程~第2の酸化中和工程について]
(実施例7)
次に、
図1に示すフロー図に沿って処理を進め、第2のケーキ化工程S5から得られた濾液に対して溶媒抽出により不純物除去する不純物除去工程S6を実行し、続いて、得られた抽出残液に対して酸化中和処理を施す第2の酸化中和工程S7を実行した。
【0156】
具体的に、不純物除去工程S6では、第2のケーキ化工程S5から得られた濾液(ケーキ濾液)を、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸と接触させて溶媒抽出に付し、陽イオン型不純物元素を含む有機相と抽出残液とを生成させる不純物除去処理を行い、陽イオン型不純物元素を除去した抽出残液を得た。このような処理により、処理前のケーキ濾液と比べて、処理後に得られた抽出残液では、Biをはじめとする陽イオン型不純物元素を大幅に除去することができた。
【0157】
次に、第2の酸化中和工程S7では、不純物除去工程S6から得られた抽出残液に水酸化ナトリウムを添加してpH11程度に調整し、酸化剤として亜塩素酸ナトリウムを添加して加水分解に付した。なお、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は200mV~400mVの範囲内に維持されるように処理した。このような酸化中和処理により、IrRuRh澱物を生成させた。
【0158】
[ルテニウム浸出工程~ルテニウム精製工程について]
(実施例8)
次に、
図1に示すフロー図に沿って処理を進め、第2のケーキ化工程S5から得られたIrRuRh澱物と、第2の酸化中和工程S7から得られたIrRuRh澱物とを合わせて、それら沈澱物に対してRuを浸出させるルテニウム浸出工程S8を実行した。また続いて、得られたRuを含む浸出生成液からRuを精製するルテニウム精製工程S9を実行した。
【0159】
具体的に、ルテニウム浸出工程S8では、第2のケーキ化工程S5及び第2の酸化中和工程S7から得られたIrRuRh澱物を、pH13の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、酸化剤として亜塩素酸ナトリウムを添加して浸出に付し、Ir及びRhを含む残渣と、Ruを含む浸出生成液を得た。なお、酸化還元電位(ORP、銀/塩化銀電極基準)としては、100mV~300mVの範囲内に維持されるように処理した。このような浸出処理により、浸出生成液中にRuが浸出されてルテニウム(VI)酸ナトリウムが生成した。なお、浸出生成液中のRu含有量は624mg/Lであり、浸出率は97.5%であった。
【0160】
次に、ルテニウム精製工程S9では、ルテニウム浸出工程S8から得られた浸出生成液に還元剤を添加してルテニウム(VI)酸ナトリウムを還元し、水酸化ルテニウム(IV)の沈澱物を生成させた。続いて、水酸化ルテニウム(IV)の沈澱物を、塩酸溶液に溶解することによりヘキサクロロルテニウム(IV)酸又はその水和錯イオンの形態とし、さらに、塩化カリウムを添加することによってヘキサクロロルテニウム(IV)酸カリウムの結晶を生成させた。このような精製処理により、Ruを結晶として回収できた。