(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】複合ケーブル及び複合ハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
(21)【出願番号】P 2020160462
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145076(JP,A)
【文献】特開2020-009610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体素線が撚り合わされてなる第1導体線と、前記第1導体線を被覆する第1絶縁体と、を備える複数の電源線と、
1本の信号線ユニットと、
前記複数の電源線と前記1本の信号線ユニットの周囲を一括して被覆するシースと、
を備え、
前記信号線ユニットは、
複数対の信号線と、
前記信号線ユニットの長手方向に垂直な断面において偶数個の頂点を有する多角形の隣り合う一対の頂点に、対となる前記信号線をそれぞれ配置して構成され、全体が撚り合わされた第1集合体の周囲を被覆する内部シースと、を有し、
前記複数の電源線と前記1本の信号線ユニットとを撚り合わせた第2集合体の撚り方向が前記第1集合体の撚り方向と異なって
おり、
前記第1集合体の撚り方向と前記第1導体線の撚り方向とが異なっており、前記第2集合体の撚り方向と前記第1導体線の撚り方向とが同じである
複合ケーブル。
【請求項2】
前記第2集合体の周囲を一括して被覆するように、前記シースが設けられて
おり、
前記複数対の信号線は、隣接した前記信号線同士が接触した状態で撚り合わされている、
請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記信号線ユニットは、前記複数対の信号線として3対の信号線を有し、
前記第1集合体は、前記信号線ユニットの長手方向に垂直な断面において六個の頂点を有する六角形の隣り合う一対の頂点に、対となる前記信号線をそれぞれ配置して構成されている、
請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何か1項に記載の複合ケーブルと、
前記複数の電源線と前記信号線ユニットの端部のうち、少なくとも何かの端部に取り付けられたコネクタと、
を備えた、
複合ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブル及び複合ハーネス。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、ABS(Anti-lock Braking System)センサ用ケーブル及びパーキングブレーキ用ケーブルをシース内部に収容するハーネスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ABSセンサ用ケーブルは、その先端にABSセンサが取り付けられる。このABSセンサは、車両に搭載されたABS装置の一部を構成するものであり、車両の車輪の回転速度を測定するセンサである。ABS装置は、例えば、ブレーキ装置が作動すると、測定した車輪の回転速度に基づいて車輪が空転しないようにブレーキ装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の複合ケーブルは、例えば、2本の対撚線と電源線とを撚り合わせ、その周囲にシースを被覆した場合、外径が大きくなってしまう。従来の複合ケーブルは、細径とするために対撚線の撚りが崩れてしまうと、外来のノイズに対する耐性が低下する問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、細径化が可能であり、かつノイズに対する耐性が低下することを抑制可能な複合ケーブル及び複合ハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電源線と、1本の信号線ユニットと、前記複数の電源線と前記1本の信号線ユニットの周囲を一括して被覆するシースと、を備え、前記信号線ユニットは、複数対の信号線と、前記信号線ユニットの長手方向に垂直な断面において偶数個の頂点を有する多角形の隣り合う一対の頂点に、対となる前記信号線をそれぞれ配置して構成され、全体が撚り合わされた第1集合体の周囲を被覆する内部シースと、を有し、前記複数の電源線と前記1本の信号線ユニットとを撚り合わせた第2集合体の撚り方向が前記第1集合体の撚り方向と異なっている、複合ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、細径化が可能であり、かつノイズに対する耐性が低下することを抑制可能な複合ケーブル及び複合ハーネスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る複合ハーネスが用いられた車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るセンサヘッドとロータの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る複合ハーネスの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る複合ハーネスの
図3のIV-IV線で切断した断面を矢印方向から見た断面図の一例である。
【
図5】
図5(a)は、実施の形態に係る信号線の配置の一例について説明する図であり、
図5(b)は、変形例に係る信号線の配置の一例について説明する図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る第1集合体、第2集合体及び第1導体線の撚り方向の一例について説明するための図である。
【
図7】
図7(a)は、実施の形態に係る第1センサICと信号線ユニットの接続の一例について説明するための図であり、
図7(b)は、第2センサICと信号線ユニットの接続の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、他の実施の形態に係る複合ハーネスの複合ケーブルの断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、実施の形態に係る複合ハーネスが用いられた車両の構成の一例を示す図である。
図2は、実施の形態に係るセンサヘッドとロータの一例を示す斜視図である。なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率や形状は、実際の比率や形状とは異なる場合がある。
【0011】
車両9は、
図1に示すように、車体90にタイヤハウス91~タイヤハウス94を有している。タイヤハウス91~タイヤハウス94には、車輪としての前輪91a~後輪94aが配置されている。
【0012】
車両9には、車両9の停車後に後輪93a及び後輪94aの回転を抑止するための電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)が搭載されている。この電動パーキングブレーキは、EPB用モータ95と、車室内に配置されたEPBスイッチ901と、EPB制御部903と、を備えている。
【0013】
EPB用モータ95は、車両9の後輪93a及び後輪94aに配置されている。EPB用モータ95は、後輪93a及び後輪94aに配置された油圧式のブレーキ装置を駆動して制動力を発生させる。なおEPB用モータ95は、前輪91a及び前輪92aに配置されてもよいし、前輪91a~後輪94aに配置されてもよい。
【0014】
EPBスイッチ901は、レバーを引き上げることでオフ状態からオン状態へと切り替わるレバー式のスイッチである。EPBスイッチ901は、EPB制御部903に電気的に接続されている。
【0015】
EPB制御部903は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。EPB制御部903は、ECU(Electronic Control Unit)902に搭載されている。なお、EPB制御部903は、ECU902以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
【0016】
EPB制御部903は、車両9の停止時に、EPBスイッチ901がオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたってEPB用モータ95に駆動電流を出力することにより、後輪93a及び後輪94aに制動力を発生させるように構成されている。
【0017】
また、EPB制御部903は、EPBスイッチ901がオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏み込み操作されたとき、EPB用モータ95に駆動電流を出力し、後輪93a及び後輪94aへの制動力を解除するように構成されている。なお、EPBスイッチ901は、レバー式に限定されず、ペダル式のスイッチであってもよい。
【0018】
また車両9には、アンチブレーキシステムが搭載されている。このアンチブレーキシステムは、前輪91a~後輪94aに配置されたABSセンサ65と、ABS制御部904と、を備えている。
【0019】
ABSセンサ65は、前輪91a~後輪94aに配置され、前輪91a~後輪94aの回転速度を検出する。ABSセンサ65は、ABS制御部904と電気的に接続されている。
【0020】
このABSセンサ65は、
図2に示すように、前輪91a~後輪94aが取り付けられたハブに配置された円板状のロータ7の第1磁化領域71及び第2磁化領域72が形成する磁場の変化を検出するように構成されている。第1磁化領域71及び第2磁化領域72は、ロータ7の周方向にN極及びS極が交互に形成された領域である。
【0021】
このABSセンサ65は、
図2に示すように、センサヘッド6に収容されている。ABSセンサ65は、冗長化のため、同じ構成を有する、つまりロータ7の回転による磁場の変化に対して同様に反応する複数のセンサを備えている。
【0022】
ABS制御部904は、後述するように、複数のセンサから出力される信号に基づいて回転速度を算出すると共にABSセンサ65の故障検知を行う。
【0023】
ABS制御部904は、CPU、RAM及びROMなどから構成されるマイクロコンピュータである。ABS制御部904は、ECU902に搭載されている。ABS制御部904は、急停止時に前輪91a~後輪94aがロックしないように、ABSセンサ65の出力に基づいて前輪91a~後輪94aの制動力を制御するものである。なお、ABS制御部904は、ECU902以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
【0024】
本実施の形態の複合ハーネス1は、一方端部が車体90の外側にあるEPB用モータ95と電気的に接続されると共に、ABSセンサ65を収容するセンサヘッド6と電気的に接続されている。また複合ハーネス1は、他方端部が車体90の内部にある後輪側の中継ボックス97b内において電線群99bに電気的に接続されると共に、ECU902と電気的に接続されている。
【0025】
前輪91a及び前輪92aに配置されたABSセンサ65は、前輪側の中継ボックス97a、及び電線群99aを介してECU902に電気的に接続されている。
【0026】
ECU902は、バッテリ900と電気的に接続されている。ECU902のEPB制御部903は、電動パーキングブレーキを作動させるとき、バッテリ900から駆動電流を生成し、電線群99b、中継ボックス97b、及び複合ハーネス1を介してEPB用モータ95に供給する。またABS制御部904は、バッテリ900から電源電圧Vccを生成し、電線群99b、中継ボックス97b、及び複合ハーネス1を介してセンサヘッド6に供給する。
【0027】
(複合ハーネス1の構成)
図3は、実施の形態に係る複合ハーネスの一例を示す図である。
図4は、実施の形態に係る複合ハーネスの
図3のIV-IV線で切断した断面を矢印方向から見た断面図の一例である。
【0028】
複合ハーネス1は、
図3に示すように、複合ケーブル10と、車外側EPBコネクタ23と、車内側EPBコネクタ24と、センサヘッド6と、車内側ABSコネクタ64と、を備えて概略構成されている。
【0029】
複合ケーブル10は、
図4に示すように、2本の電源線3と、1本の信号線ユニット30と、2本の電源線3と1本の信号線ユニット30の周囲を一括して被覆する外部シース5と、を備えて概略構成されている。
【0030】
信号線ユニット30は、複数対の信号線3と、信号線ユニット30の長手方向に垂直な断面において偶数個の頂点を有する多角形の隣り合う一対の頂点に、対となる信号線3をそれぞれ配置して構成され、全体が撚り合わされた第1集合体11の周囲を被覆する内部シース35と、を有している。複合ケーブル10は、2本の電源線2と1本の信号線ユニット30とを撚り合わせた第2集合体12の撚り方向が第1集合体11の撚り方向と異なるように構成されている。なお複合ケーブル10は、第2集合体12と外部シース5の間に押さえ巻きテープ4が設けられている。
【0031】
2本の電源線2は、対となって使用されるので、一対の電源線2と記載する。なお電源線2は、これに限定されず、さらに複数であってもよい。
【0032】
4つの信号線3は、
図4の紙面左上から時計回りに信号線3a、信号線3b、信号線3c及び信号線3dと記載する。本実施の形態では、隣り合う信号線3aと信号線3b、信号線3cと信号線3dが一対となって使用される。従って以下では、一対の信号線である信号線3aと信号線3bを第1対信号線33、一対の信号線である信号線3cと信号線3dを第2対信号線34と記載する。なお一対の信号線は、これに限定されず、後述するセンサの数に応じて増えてもよい。
【0033】
(電源線2の構成)
一対の電源線2は、EPB用モータ95に駆動電流を供給するためのものである。一対の電源線2は、EPB用モータ95と接続される車外側EPBコネクタ23が一方の端部に取り付けられ、車内の中継ボックス97bと接続される車内側EPBコネクタ24が他方の端部に取り付けられている。
【0034】
電源線2は、
図4に示すように、第1導体線21と、第1導体線21を被覆する第1絶縁体22と、から構成されている。第1導体線21は、例えば、銅や銅合金からなる複数の素線を撚り合わせて構成されている。この撚り合わせの方向については、後述する。第1絶縁体22は、例えば、架橋ポリエチレンを用いて形成される。
【0035】
第1導体線21に用いる素線は、一例として、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合は、十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下する可能性がある。また直径0.30mmより大きい素線を用いた場合は、複合ハーネス1の可撓性が低下する可能性がある。電源線2の外径は、一例として、3.0mmである。
【0036】
(信号線3の構成)
4つの信号線3は、隣接した信号線3同士が接触した状態で撚り合わされて内部シース35によって被覆されている。そして
図4に示すように、4つの信号線4が接触して撚り合わされ、中心が空洞となっている。
【0037】
信号線ユニット30は、ABSセンサ65を収容したセンサヘッド6が一方の端部に取り付けられ、車内の中継ボックス97bと接続される車内側ABSコネクタ64が他方の端部に取り付けられている。
【0038】
信号線3は、第2導体線31と、第2導体線31を被覆する第2絶縁体32と、から構成されている。第2導体線31は、例えば、銅や銅合金からなる複数の素線を撚り合わせて構成されている。第2絶縁体32は、例えば、架橋ポリエチレンを用いて形成される。
【0039】
第2導体線31に用いる素線は、第1導体線21と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。また信号線3の外径は、一例として、1.35mmである。また4つの信号線3を被覆した状態における内部シース35の外径は、一例として、4.5mmである。なお第2導体線31の撚り方向については、
図4の紙面において時計回りでも半時計回りでもよい。
【0040】
内部シース35は、4つの信号線3を保護すると共に、一対の電源線2と撚り合わせる際に形状を整え易くするために設けられている。内部シース35は、例えば、ポリウレタン等の樹脂が押出成形されることにより形成される。
【0041】
4つの信号線3は、集合体11として全体が撚り合わされている。この集合体11の撚りピッチは、一例として、およそ40mmである。集合体11の撚り方向については、後述する。また一対の電源線2と信号線ユニット30は、集合体12を形成し、全体が撚り合わされている。この集合体12の撚りピッチは、一例として、およそ60mmである。集合体12の撚り方向については、後述する。
【0042】
なお電源線2の第1導体線21の断面積(導体断面積)、及び第1絶縁体22の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。本実施の形態では、第1導体線21は、上述のように、信号線3の第2導体線31よりも断面積(導体断面積)が大きく設定されている。つまり第1導体線21は、第2導体線31よりも太く形成されている。
【0043】
(信号線3の配置について)
図5(a)は、実施の形態に係る信号線の配置の一例について説明する図であり、
図5(b)は、変形例に係る信号線の配置の一例について説明する図である。
【0044】
信号線3は、
図4及び
図5(a)に示すように、偶数個の頂点を有する多角形8の隣り合う一対の頂点ごとに配置されている。
図5(a)に示す多角形8は、一例として、紙面の左上から時計周りに頂点80~頂点83を有する正四角形である。この多角形8は、正多角形であることが望ましいがこれに限定されない。なお正多角形とは、製造における交差の範囲のずれを含むものとする。また頂点に配置されるとは、信号線3の短手方向の断面の中心が頂点に一致するように配置されることを意味している。
【0045】
頂点80と頂点81は、隣り合っている。従って
図5(a)に示すように、頂点80に対応して信号線3aが配置され、頂点81に対応して信号線3aと対となる信号線3bが配置される。
【0046】
頂点82と頂点83は、隣り合っている。従って
図5(a)に示すように、頂点82に対応して信号線3cが配置され、頂点83に対応して信号線3cと対となる信号線3dが配置される。なお信号線3a~信号線3dは、撚り合わされているので、断面によっては
図5(a)の紙面の通りの位置ではなく、信号線3a~信号線3dが回転した位置となる。つまり信号線3aと信号線3bが隣り合い、信号線3cと信号線3dが隣り合う関係は、維持される。
【0047】
なお変形例として信号線3は、
図5(b)に示すように、6個の頂点を有する多角形8の隣り合う一対の頂点ごとに配置されてもよい。
図5(b)に示す多角形8は、一例として、紙面の左上から時計周りに頂点80~頂点85を有する正六角形である。この変形例では、3つのセンサに接続される信号線3a~信号線3fが多角形8の頂点に配置される。
【0048】
この変形例では、一例として、頂点80に配置された信号線3aと頂点81に配置された信号線3bが対となり、頂点82に配置された信号線3cと頂点83に配置された信号線3dが対となり、頂点84に配置された信号線3eと頂点85に配置された信号線3fが対となる。
【0049】
なお信号線3は、他の偶数個の頂点を有する多角形の隣り合う一対の頂点ごとに配置されてもよい。
【0050】
(撚り方向について)
図6は、実施の形態に係る第1集合体、第2集合体及び第1導体線の撚り方向の一例について説明するための図である。
図6では、撚り方向を矢印で示している。
【0051】
第1集合体11の撚り方向とは、第1集合体11の一端からみて、他端側から一端側にかけて信号線3が回転している方向である。また第2集合体12の撚り方向とは、第2集合体12の一端からみて、他端側から一端側にかけて一対の電源線3及び信号線ユニット30が回転している方向である。
【0052】
具体的には、複合ケーブル10は、第1集合体11の撚り方向が、
図6の紙面において反時計回り(左回り)である場合、第2集合体12の撚り方向が逆方向、つまり時計回り(右回り)となる。
【0053】
また複合ケーブル10は、電源線2の第1導体線21の撚り方向が第1集合体11の撚り方向と逆方法であると共に、第2集合体12の撚り方向と同方向である。
【0054】
第1集合体11の撚り方向と電源線2の第1導体線21の撚り方向を互いに逆方向としたのは、以下の理由に基づいている。
・撚り合わせにより第1集合体11に付与される曲がり癖と第2集合体12の曲がり癖とが逆方向となって互いに相殺され、曲がり癖を抑制した直線状の複合ケーブル10を容易に実現可能となる。
・例えば、複合ケーブル10は、第1集合体11の撚り方向と第2集合体12の撚り方向とが同じ方向である場合、第2集合体12を撚り合わせる際に撚りが締まる方向に信号線ユニット30が撚られ、第1集合体11の撚りピッチが変化してしまう場合がある。両集合体の撚り方向を異ならせることで、第1集合体11の撚りピッチを維持でき、撚りが不安定になることによる外来ノイズの影響を抑制できる。
・また、複合ケーブル10は、両集合体の撚り方向を異ならせることで、第1集合体11の撚りが緩んでしまうことも抑制可能である。
【0055】
また第2集合体12の撚り方向と第1導体線21の撚り方向を同方向としたのは、第1導体線21の撚り合わせの緩みを抑制するためである。
【0056】
(押さえ巻きテープ4の構成)
押さえ巻きテープ4は、第2集合体12の周囲に螺旋状に巻き付けられている。押さえ巻きテープ4は、第2集合体12と外部シース5との間に介在し、屈曲時に第2集合体12と外部シース5との間の摩擦を低減したり、複合ケーブル10の取り扱い性を向上させたり、断面形状を円形に近づけたりするように使用されるものである。
【0057】
なお複合ケーブル10は、押さえ巻きテープ4と電源線2及び信号線ユニット30の間にさらに介在を配置してもよい。介在とは、押さえ巻きテープ4と電源線2及び信号線ユニット30の間に詰められる詰めものであり、絶縁性を有する材料を用いてひも状に形成されている。介在は、例えば、綿花を材料とする綿糸、紙ひも、又はポリプロピレンなどの合成繊維のひもである。
【0058】
押さえ巻きテープ4は、張力を付与した状態で第2集合体12の周囲に螺旋状に巻き付けられる。よって、押さえ巻きテープ4としては、巻き付け時に付与される張力により破断しないものを用いる必要がある。他方、押さえ巻きテープ4は、端末加工時に外部シース5と共に除去されるものである。そのため、押さえ巻きテープ4としては、端末加工時に容易に除去できるものを用いることが望まれる。
【0059】
従って押さえ巻きテープ4としては、例えば、不織布、和紙などの紙、あるいは樹脂(樹脂フィルムなど)からなるものを用いることができる。
【0060】
(外部シース5の構成)
外部シース5は、押さえ巻きテープ4が巻き回された一対の電源線2、及び信号線ユニット30を被覆し、これらを保護している。外部シース5は、例えば、押さえ巻きテープ4の外周にポリウレタン等の樹脂が押出成形されることにより形成される。
【0061】
(センサヘッド6の構成)
センサヘッド6は、例えば、PC(Polycarbonate)やABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)などの熱硬化性樹脂を用いた射出成形によって形成される。
【0062】
センサヘッド6は、
図2に示すように、センサ保持部60と、フランジ部61と、ケーブル保持部62と、を備えて概略構成されている。
【0063】
センサ保持部60は、細長い四角柱形状を有し、基部60a及び先端部60bを有している。基部60aは、フランジ部61の前面61a側から突出している。先端部60bは、基部60aの先端部分であって基部60aよりも細い形状を有し、ABSセンサ65を収容している。
【0064】
フランジ部61は、板形状を有している。フランジ部61は、前面61aにセンサ保持部60が設けられ、後面61bにケーブル保持部62が設けられている。またフランジ部61は、車両9に取り付ける際にボルトが挿入される貫通孔63を有している。なお貫通孔63には、金属製の補強部材が挿入されてもよい。
【0065】
ケーブル保持部62は、信号線ユニット30を保持するものである。信号線ユニット30及びABSセンサ65は、射出成形により、センサヘッド6と一体となっている。
【0066】
(ABSセンサ65の構成)
図7(a)は、実施の形態に係る第1センサIC(Integrated Circuit)と信号線ユニットの接続の一例について説明するための図であり、
図7(b)は、第2センサICと信号線ユニットの接続の一例を説明するための図である。
図7(a)は、
図2の紙面の上から第1センサIC65aを見た図である。
図7(b)は、
図2の紙面の下から第2センサIC65bを見た図である。
【0067】
ABSセンサ65は、冗長化のため、第1センサIC65a及び第2センサIC65bを有している。第1センサIC65a及び第2センサIC65bは、例えば、ロータ7の回転による第1磁化領域71及び第2磁化領域72が形成する磁場の変化を検出し、検出した場合に「Hi」を示す検出信号を出力し、検出しなかった場合に「Lo」を示す検出信号を出力するようにそれぞれ構成されている。
【0068】
第1センサIC65aは、制御部650aと、磁気センサ651aと、入力端子652aと、出力端子653aと、を有している。制御部650aと、磁気センサ651aと、入力端子652a及び出力端子653aの端部が封止樹脂によって封止されている。
【0069】
制御部650aは、一例として、予め定められたしきい値を有し、磁気センサ651aの出力がしきい値以上である場合、「Hi」を示す検出信号S1を出力する。この検出信号S1は、「Hi」と「Lo」からなる矩形波である。
【0070】
磁気センサ651aは、ブリッジ回路を形成する4つの磁気抵抗素子を有している。この4つの磁気抵抗素子は、
図2に点線で示す面内に角度を90°ずつ変えて配置されている。センサヘッド6は、
図2に示すように、4つの磁気抵抗素子が配置された当該面とロータ7の表面70とが平行となるように車両9に取り付けられている。
【0071】
ここで磁気センサ651a及び後述する磁気センサ651bは、磁気抵抗素子に限定されず、GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子やホール素子などの磁場の変化を検出する磁気センサ素子を用いて構成されてもよい。また第1センサIC65a及び第2センサIC65bは、磁気センサ651a及び磁気センサ651bにバイアス磁場を作用させるバイアス磁石を備える構成であってもよい。この場合、ロータ7は、磁化される必要がなく、磁性体で形成され、周方向に等間隔で複数のギア歯が形成される。センサヘッド6は、このギア歯に対向するように配置され、磁気センサ651a及び磁気センサ651bがギア歯の接近によるバイアス磁場の変化を検出する。
【0072】
入力端子652a及び出力端子653aは、例えば、銅やアルミニウムなどの合金を用いて細長い板状に形成されている。入力端子652a及び出力端子653aは、制御部650aと電気的に接続されている。なお入力端子652a及び出力端子653aは、制御部650aなどの電子部品が配置されるリードフレームの一部として構成されてもよい。
【0073】
入力端子652a及び出力端子653aには、一対の信号線3である第1対信号線33が接続される。具体的には、入力端子652aには、
図7(a)に示すように、信号線3aの第1導体線31がはんだや溶接などによって接続されている。また出力端子653aには、信号線3bの第1導体線31がはんだや溶接などによって接続されている。
【0074】
図7(a)に示すように、信号線3aと信号線3bは、隣り合っているので、絡み合うことなく内部シース35から引き出される。
【0075】
入力端子652aは、第1センサIC65aを駆動するための電源電圧VccがABS制御部904から供給される。出力端子653aは、接地回路(GND)に接続されると共に、検出信号S1をABS制御部904に出力する。
【0076】
第2センサIC65bは、制御部650bと、磁気センサ651bと、入力端子652bと、出力端子653bと、を有している。制御部650bと、磁気センサ651bと、入力端子652b及び出力端子653bの端部が封止樹脂によって封止されている。
【0077】
制御部650bは、一例として、予め定められたしきい値を有し、磁気センサ651bの出力がしきい値以上である場合、「Hi」を示す検出信号S2を出力する。この検出信号S2は、「Hi」と「Lo」からなる矩形波である。
【0078】
磁気センサ651bは、磁気センサ651aと同様にブリッジ回路を形成する4つの磁気抵抗素子を有している。磁気センサ651bと磁気センサ651aは、平行に配置されるので、磁気センサ651bがロータ7の表面70と平行となる。
【0079】
入力端子652b及び出力端子653bは、例えば、銅やアルミニウムなどの合金を用いて細長い板状に形成されている。入力端子652b及び出力端子653bは、制御部650bと電気的に接続されている。なお入力端子652b及び出力端子653bは、制御部650bなどの電子部品が配置されるリードフレームの一部として構成されてもよい。
【0080】
入力端子652b及び出力端子653bには、一対の信号線3である第2対信号線34が接続される。具体的には、入力端子652bには、
図7(b)に示すように、信号線3dの第1導体線31がはんだや溶接などによって接続されている。また出力端子653bには、信号線3cの第1導体線31がはんだや溶接などによって接続されている。
【0081】
入力端子652bは、第2センサIC65bを駆動するための電源電圧VccがABS制御部904から供給される。出力端子653bは、接地回路(GND)に接続されると共に、検出信号S2をABS制御部904に出力する。
【0082】
なお第1センサIC65a及び第2センサIC65bは、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、第2導体線31が第1センサIC65aでは表側、第2センサIC65bでは反対の裏側に接続されるので、この構成を採用しない場合と比べて、近接させて配置させることができる。
【0083】
第1センサIC65a及び第2センサIC65bは、近接して配置されるので、ロータ7の回転による磁場の変化を同様に検出する。従って第1センサIC65a及び第2センサIC65bが出力する検出信号S1及び検出信号S2の波形がほぼ同じとなり、信頼性がより向上する。
【0084】
ABS制御部904は、例えば、検出信号S1及び検出信号S2のいずれか一方の「Hi」と「Lo」のタイミングからロータ7の回転速度を算出する。なおABS制御部904は、検出信号S1から算出した回転速度と検出信号S2から算出した回転速度との平均をロータ7の回転速度としてもよい。
【0085】
またABS制御部904は、検出信号S1及び検出信号S2を用いて故障検知を行うことが可能である。例えば、第1センサIC65aのみ配置され、この第1センサIC65aが故障して「Lo」を示す検出信号S1を出力し続ける場合、ABS制御部904は、ロータ7が回転していない、つまり車両9が停車しているのか第1センサIC65aが故障しているのか検出信号S1のみでは判定できない。
【0086】
しかし第1センサIC65a及び第2センサIC65bが配置された場合、ABS制御部904は、検出信号S1及び検出信号S2を比較することで、第1センサIC65a及び第2センサIC65bのいずれかが故障したと判定することができる。ABS制御部904は、故障が検知された場合、ECU902に対して故障の発生を示す信号を出力し、故障を示すアラートを車両9の表示装置に表示させる。
【0087】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る複合ハーネス1は、複数対の信号線3が多角形の隣接する頂点に配置され、かつ接触した状態を保ちつつ撚り合わされているので、この構成を採用しない場合と比べて、信号線ユニット30の細径化が可能であり、かつノイズに対する耐性が低下することを抑制することができる。
【0088】
複合ハーネス1は、撚り合わせにより第1集合体11に付与される曲がり癖と第2集合体12の曲がり癖とが逆方向となって互いに相殺され、曲がり癖を抑制した直線状の複合ケーブル10とすることができる。
【0089】
複合ハーネス1は、対となる信号線3が隣接して配置されるので、隣接して配置されない場合と比べて、対となる信号線3が絡み合うことなく内部シース35から取り出せ、第1センサIC65a及び第2センサIC65bに接続し易い。また複合ハーネス1は、絡み合うことなく信号線3を第1センサIC65a及び第2センサIC65bに接続することができるので、センサヘッド6を形成する際、内部シース35から取り出した信号線3の間に樹脂を十分に充填することができて信頼性を向上させることができる。
【0090】
複合ハーネス1は、内部シース35から取り出した信号線3の長さを揃えることが容易なので、対向して配置された場合と比べて、信号線3の全体の長さがほぼ等しくなり、検出信号S1及び検出信号S2のずれが抑制され、より信頼性が向上する。
【0091】
複合ハーネス1は、第1集合体11と第2集合体12の撚り方向を異なる方向としたので、同方向である場合と比べて、第1集合体11の撚りピッチを維持でき、撚りが不安定になることによる外来ノイズの影響を抑制できる。また複合ハーネス1は、外来ノイズの影響を抑制することができるので、第1センサIC65aの第1磁気センサ651aが出力する検出信号S1、及び第2センサIC65bの第2磁気センサ651bが出力する検出信号S2に基づいた精度の高い回転速度の算出を行うことができると共に、精度の高い故障検知を行うことができるので、信頼性を向上させることができる。
【0092】
複合ハーネス1は、第1集合体11と第2集合体12の撚り方向を異なる方向としたので、同方向である場合と比べて、第1集合体11の撚りが緩んでしまうことを抑制することができる。
【0093】
複合ハーネス1は、電源線2の第1導体線21の撚り方向と集合体12の撚り方向とを同方向としているので、異なる場合と比べて、第1導体線21の撚り合いの緩みを抑制することができる。
【0094】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号などを援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号などは、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材などに限定するものではない。
【0095】
[1]複数の電源線(2)と、
1本の信号線ユニット(30)と、
前記複数の電源線(2)と前記1本の信号線ユニット(30)の周囲を一括して被覆するシース(5)と、
を備え、
前記信号線ユニット(30)は、
複数対の信号線(3)と、
前記信号線ユニット(30)の長手方向に垂直な断面において偶数個の頂点(80~83)を有する多角形(8)の隣り合う一対の頂点(頂点80及び頂点81、頂点82及び頂点83)に、対となる前記信号線(3)を配置して構成され、全体が撚り合わされた第1集合体(11)の周囲を被覆する内部シース(35)と、を有し、
前記複数の電源線(2)と前記1本の信号線ユニット(30)とを撚り合わせた第2集合体(12)の撚り方向が前記第1集合体(11)の撚り方向と異なっている、
複合ケーブル(10)。
【0096】
[2]前記第2集合体(12)の周囲を一括して被覆するように、前記シース(5)が設けられている、
[1]に記載の複合ケーブル(10)。
【0097】
[3]前記複数対の信号線(3)は、隣接した前記信号線(3)同士が接触した状態で撚り合わされている
[1]又は[2]に記載の複合ケーブル(10)。
【0098】
[4]前記[1]乃至[3]の何か1項に記載の複合ケーブル(10)と、
前記複数の電源線(3)と前記信号線ユニット(30)の端部のうち、少なくとも何かの端部に取り付けられたコネクタ(23、24、64)と、
を備えた、
複合ハーネス(1)。
【0099】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0100】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
図8は、他の実施の形態に係る複合ハーネスの複合ケーブルの断面図の一例である。
【0101】
この実施の形態の複合ハーネス1の複合ケーブル10は、例えば、
図8に示すように、複数の絶縁電線13が電源線2、信号線ユニット30及び押さえ巻きテープ4の間に配置されている。この複数の絶縁電線13は、一例として、車両9のタイヤの空気圧を測定する空気圧センサに電流を供給すると共に、測定した結果を示す検出信号を出力する電線であるがこれに限定されない。なお
図8では、一例として、2つの絶縁電線13を図示しているがこれに限定されない。複合ケーブル10は、例えば、絶縁電線13がさらに多くても少なくともよく、また絶縁電線13が信号線や電源線などの種類が異なる電線の組み合わせであってもよく、さらに絶縁電線ではなく介在であってもよく、またさらにこれらを組み合わせて配置されてもよい。
【0102】
また上記の実施の形態では、ABSセンサ65は、故障検知のため、第1センサIC65a及び第2センサIC65bを用いていたがこれに限定されず、一方のセンサICをメインに使用し、他方のセンサICを予備として用いてもよい。この場合、ABS制御部904は、一例として、ECU902から取得した車両9に関する情報とメインのセンサICから取得した検出信号とに基づいて故障検知を行い、故障の発生に基づいて予備であるセンサICに切り替える。
【符号の説明】
【0103】
1…複合ハーネス、2…電源線、3…信号線、3a~3f…信号線、6…センサヘッド、8…多角形、10…複合ケーブル、11…第1集合体、12…第2集合体、23…車外側EPBコネクタ、24…車内側EPBコネクタ、30…信号線ユニット、35…内部シース、64…車内側ABSコネクタ