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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】内視鏡用穿刺装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240514BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61B17/34
A61M25/00 530
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020565712
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051170
(87)【国際公開番号】W WO2020145181
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019001713
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】権 志明
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0157839(US,A1)
【文献】特開2000-262629(JP,A)
【文献】特開2015-002920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の内部に挿入されるシースと、
前記シースの内部に配置され、先端に刃面を備えた中空の穿刺針と、
前記穿刺針の遠位側において前記穿刺針の内部に設けられ、少なくとも一部が前記穿刺針の先端開口部の内側に配置される中空の樹脂成形体と、を有し、
前記樹脂成形体は、前記樹脂成形体を貫通し、ガイドワイヤを挿入するための貫通孔と、前記貫通孔の遠位端に形成された開口部とを有し、
前記開口部の縁部は、前記先端開口部の縁部に沿って配置されており、前記先端開口部の縁部の全周に沿って連続的に延びている内視鏡用穿刺装置。
【請求項2】
記樹脂成形体は、その内部を挿通する前記ガイドワイヤが前記穿刺針の中心軸に対して芯出しされるように、所定の肉厚を有する請求項1に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項3】
前記樹脂成形体は、前記刃面の傾斜に応じて傾斜する傾斜部を有する請求項1または2に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項4】
前記樹脂成形体の内径は、前記樹脂成形体の先端側に向かうにしたがって小さくなる請求項1~3のいずれかに記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項5】
前記樹脂成形体の外周面には、テーパ面または段差部が形成されている請求項1~4のいずれかに記載の内視鏡用穿刺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、切除不能の悪性胆道狭窄または閉塞症例で、胆道ドレナージを必要とするもののうち、経十二指腸乳頭的アプローチが不可能な場合等において、超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD)を施行した報告例が散見されている。EUS-BDは、超音波内視鏡を消化管に挿入し、超音波画像をリアルタイムに観察しながら、十二指腸、胃、食道等の消化管の内側から穿刺針で総胆管(または肝内胆管)を穿刺し、この穿刺孔を介してガイドワイヤを胆管に挿入した後、そのガイドワイヤに沿わせて消化管内部と総胆管(または肝内胆管)内部とをつなぐバイパス経路となる管状物を挿入・留置する手技である。この手技により、体内に管状物を埋め込む形で胆道ドレナージが可能となる。
【0003】
このようなEUS-BDにおいてパイパス経路として用いられる管状物として、被覆フィルムを設けた自己拡張型のステントが用いられる場合がある。この場合に用いられるステントデリバリー装置としては、例えば、インナーシースと、該インナーシースがスライド可能に挿通されたアウターシースとを有するカテーテルを備え、インナーシースの遠位端近傍に設けられたステント配置部にステントを配置して、アウターシースの遠位端近傍の内側で該ステントを縮径させた状態で保持し、該カテーテルの近位端側において、インナーシースに対してアウターシースを引き抜くようにスライドさせることにより、ステントを拡径させるようにしたものが知られている。
【0004】
また、例えば、胃壁から肝内胆管を穿刺する際には、特許文献1に記載されているような、患者の体内の目的部位から体組織を採取するための内視鏡用穿刺針(以下、穿刺針)が用いられる場合がある。特許文献1に記載されている穿刺針は、先端に刃面を備えた中空の穿刺針からなり、穿刺針の内腔を通じて、採取した体組織を吸引することが可能となっている。EUS-BDの手技では、穿刺針の内腔はガイドワイヤを挿通するための挿通孔として利用され、内視鏡の処置具案内管に挿入されるシースの内部に穿刺針を配置した内視鏡用穿刺装置を用いて、以下に示すような手技が行われる。
【0005】
例えば、胃と肝内胆管とをバイパス接続する場合には、内視鏡の処置具案内管にシースを挿入し、内視鏡の先端から突出させたシースの先端から、穿刺針の先端部を所定長だけ押し出して、胃の内側から肝内胆管に至るように胃および肝臓を穿刺する。次いで、穿刺針の内腔にガイドワイヤを挿通し、ガイドワイヤを押し出して胃の穿刺孔と肝臓の穿刺孔とを架け渡すように挿通して経路を確保する。次いで、内視鏡の内部の損傷等を避けるため、シース内に穿刺針の先端部を引き込んだ状態で、ガイドワイヤに沿ってシースを内視鏡の処置具案内管から引き抜く。その後、ステントデリバリー装置を用意し、ガイドワイヤに沿ってカテーテルチューブを押し出し、該カテーテルチューブのステントを配置した箇所を、該穿刺孔間を架け渡すように配置し、この状態でステントをリリース(拡張)させることにより、胃と胆管とを架け渡すようにステントを留置する。
【0006】
しかしながら、内視鏡用穿刺装置を用いてEUS-BDの手技を行う場合、穿刺針の先端に刃面が形成されているため、穿刺針の内腔にガイドワイヤを挿入した状態で、ガイドワイヤの押し引きや回転等の各種操作を行うと、ガイドワイヤが穿刺針の刃面に接触して損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-513998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、ガイドワイヤの損傷を防止することが可能な穿刺針を有する内視鏡用穿刺装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、
内視鏡の内部に挿入されるシースと、
前記シースの内部に配置され、先端に刃面を備えた中空の穿刺針と、
前記穿刺針の内部に設けられ、少なくとも一部が前記穿刺針の先端開口部の内側に配置される中空の樹脂成形体と、を有する。
【0010】
本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、穿刺針の内部に設けられ、少なくとも一部が穿刺針の先端開口部の内側に配置される中空の樹脂成形体を有する。そのため、穿刺針の内腔にガイドワイヤを挿入した状態で、ガイドワイヤの押し引きや回転等の各種操作を行っても、穿刺針の先端開口部の内側では、ガイドワイヤは樹脂成形体に接触し、穿刺針の刃面(特に、刃面のエッジ部分)に接触することがない。したがって、ガイドワイヤを穿刺針の刃面から保護することが可能となり、ガイドワイヤの損傷を防止することができる。
【0011】
好ましくは、前記樹脂成形体の内部にはガイドワイヤが挿通可能であり、前記樹脂成形体は、その内部を挿通する前記ガイドワイヤが前記穿刺針の中心軸に対して芯出しされるように、所定の肉厚を有する。このような構成とした場合、樹脂成形体の内部を挿通するガイドワイヤは、樹脂成形体の肉厚分だけ、穿刺針の径方向中心部に向かってオフセットして配置される。したがって、穿刺針の先端開口部の内側では、ガイドワイヤを穿刺針の径方向略中心部(穿刺針の刃面から遠い位置)に配置させることが可能となり、ガイドワイヤを穿刺針の刃面から効果的に保護することができる。
【0012】
好ましくは、前記樹脂成形体は、前記刃面の傾斜に応じて傾斜する傾斜部を有する。このような構成とした場合、穿刺針の先端開口部の内側に傾斜部を配置させると、穿刺針の先端開口部の内側には、傾斜部が先端開口部の縁部に沿って配置されることになる。したがって、穿刺針の先端開口部の内側の大部分を樹脂成形体で覆うことが可能となり、ガイドワイヤを穿刺針の刃面から効果的に保護することができる。
【0013】
好ましくは、前記樹脂成形体の内径は、前記樹脂成形体の先端側に向かうにしたがって小さくなる。この場合、樹脂成形体の内部を挿通するガイドワイヤは、樹脂成形体の先端側に向かうにしたがって、穿刺針の径方向略中心部に配置されることになる。したがって、穿刺針の先端開口部の内側では、穿刺針の中心軸に対して、ガイドワイヤを容易に芯出しすることができる。
【0014】
前記樹脂成形体の外周面には、テーパ面または段差部が形成されていてもよい。このような構成とすることにより、穿刺針の内部から樹脂成形体が抜け落ちることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aはステントデリバリー装置の全体構成を示す正面図である。
図1B図1Bは本発明の第1実施形態に係る内視鏡用穿刺装置の全体構成を示す正面図である。
図2A図2A図1Bに示す内視鏡用穿刺装置が有する穿刺針の一部拡大斜視図である。
図2B図2B図2Aに示す穿刺針の内部に設けられる樹脂成形体を示す斜視図である。
図3A図3A図2Bに示す樹脂成形体の縦断面図である。
図3B図3Bは本発明の第2実施形態に係る内視鏡用穿刺装置が有する穿刺針の内部に設けられる樹脂成形体の縦断面図である。
図3C図3Cは本発明の第3実施形態に係る内視鏡用穿刺装置が有する穿刺針の内部に設けられる樹脂成形体の縦断面図である。
図4A図4Aは本発明の第4実施形態に係る内視鏡用穿刺装置が有する穿刺針の内部に設けられる樹脂成形体の縦断面図である。
図4B図4Bは本発明の第5実施形態に係る内視鏡用穿刺装置が有する穿刺針の内部に設けられる樹脂成形体の縦断面図である。
図4C図4Cは本発明の第6実施形態に係る内視鏡用穿刺装置が有する穿刺針の内部に設けられる樹脂成形体の縦断面図である。
図5図5図2Aに示す穿刺針の内部にガイドワイヤを挿通したときの拡大縦断面図である。
図6図6図1Aに示すステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の作業(穿刺)を示す図である。
図7図7図1Aに示すステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の作業(ガイドワイヤ挿入)を示す図である。
図8図8図1Aに示すステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の作業(カテーテル挿入開始)を示す図である。
図9図9図1Aに示すステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の作業(カテーテル挿入完了)を示す図である。
図10図10図1Aに示すステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の作業(ステントリリース途中)を示す図である。
図11図11図1Aに示すステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の作業(ステントリリース完了)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態では、超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD)を経胃経肝的に施行する場合において、胃の内側から肝内胆管に至るまで胃および肝臓を穿刺して、その穿刺孔に胃と肝内胆管とをバイパス接続する被覆フィルムを備える自己拡張型のステントを留置する場合を例にとり説明する。但し、本発明は、胃と肝内胆管とをバイパス接続するときに限られず、十二指腸と総胆管等、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するときに広く適用することができる。
【0017】
図1Aに示すように、ステントデリバリー装置1は、不図示の内視鏡の処置具案内管を介して、患者の体内(管腔)に挿入される細長いカテーテル部2およびカテーテル部2の近位端側に接続され、体外側から体内のカテーテル部2を操作するための操作部3、ガイドワイヤ4、留置対象としてのステント5を概略備えて構成されている。なお、ステント5を含むカテーテル部2の遠位端近傍は、留置する部位の形状に応じて湾曲した状態とされる場合があるが、図では便宜的に直線的に描かれている。
【0018】
カテーテル部2は、遠位端および近位端を有するインナーシース(内管)21と、遠位端および近位端を有するアウターシース(外管)22とを備えている。インナーシース21およびアウターシース22の遠位端近傍には、造影マーカー(不図示)がそれぞれ取り付けられている。造影マーカーは、X線透視によりその位置が検出されて体内における標識となるものであり、例えば金、白金、タングステン等の金属材料や、硫酸バリウムや酸化ビスマスがブレンドされたポリマー等により形成される。
【0019】
インナーシース21は可撓性を有する細長いチューブからなり、その内腔にはカテーテル部2を患者の体内に挿入するためのガイドとして用いられるガイドワイヤ4が挿通されている。ガイドワイヤ4を体内に挿入して体外と体内との経路を確保した後、ガイドワイヤ4に沿ってカテーテル部2を押し込む(進行させる)ことにより、カテーテル部2の遠位端側を体内の目的部位に挿入することができる。インナーシース21(後述するステント5を配置する部分)の外径は0.5~3.5mm程度である。
【0020】
インナーシース21の遠位端には、その先端(遠位端)に行くにしたがって細くなるように形成された先端チップ24が取り付けられている。先端チップ24はインナーシース21の内腔の遠位端に連通する開口をその中心軸に沿うように有しているとともに、その近位端部は、アウターシース22の内腔の遠位端部に挿入し得る程度の外径を有する細径部24bとなっている。先端チップ24は、インナーシース21(カテーテル部2)の遠位端が体内管腔部の周壁に突き当たった場合に、体内管腔部に対する刺激を軽減し、さらに、カテーテル部2の挿入抵抗を低減し、体内への挿入を容易にする役割を果たすものであり、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、およびポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等から形成することができる。
【0021】
インナーシース21の遠位端近傍には、固定リング25が一体的に固定されており、この固定リング25はステント5の近位端の位置を規定するためのものであり、この固定リング25から遠位端側の部分がステント配置部となっている。ステント配置部には、ステント5がインナーシース21を覆うように配置される。また、インナーシース21の固定リング25より近位端側の部分には、インナーシース21本体を構成する細長いチューブを覆うように、別の細長いチューブ(不図示)が同軸的に設けられていて、インナーシース21の固定リング25より近位端側の部分は、インナーシース21の固定リング25より遠位端側の部分よりも太くなっている。このようにインナーシース21の固定リング25より近位端側の部分が太くなっていることにより、インナーシース21のプッシャビリティが増して操作性が良好になるとともに、固定リング25の位置が近位端側にずれることが防止される。
【0022】
アウターシース22は可撓性を有する細長いチューブからなり、インナーシース21の外径よりも僅かに大きい内径を有しており、その内側にインナーシース21がスライド可能に挿通されている。アウターシース22の内径は0.8~3.5mm程度であり、外径は1.2~4.0mm程度である。アウターシース22は、操作部3を操作することにより、インナーシース21に対して軸方向にスライド(相対移動)可能となっている。
【0023】
インナーシース21、アウターシース22の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂等の各種樹脂材料や、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の各種熱可塑性エラストマーを使用することがでる。これらのうち2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
なお、本実施形態では備えていないが、アウターシース22の外側には最外管(不図示)が同軸上に配置されてもよい。最外管は可撓性を有する細長いチューブからなり、アウターシース22がスライド可能に挿入される内腔を有している。最外管としては、アウターシース22の外径よりも0.05~1.0mm程度大きい寸法ものを用いることができる。最外管の材料としてはポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0025】
ステント5は、収縮状態から自己の弾性力によって拡張する自己拡張型のカバードステントであり、フレームにより形成される筒状のベアステントと、ベアステントの外周を覆う被覆フィルム部とを有している。ベアステントは、ニッケル・チタン合金、コバルトクロム合金、金チタン合金、ベータチタン系合金等の超弾性金属あるいは形状記憶金属等で形成されている。ベアステントの表面は隣接するフレームの間を埋めるように広がったコーティング膜で覆われており、コーティング膜で覆われたベアステントの外周が、ポリマーフィルム等の被覆フィルム部によって覆われている。
【0026】
ステント5の全長は、バイパス接続すべき管腔臓器間の距離に応じて決定されるが、30~200mm程度であり、拡径時の外径は、バイパス接続すべき管腔臓器の種類や大きさ等に応じて決定されるが、φ2~φ30mm程度である。ステント5の縮径時の外径は、拡径時の外形に対して、数分の1程度である。なお、本実施形態では、ステント5をステントデリバリー装置1の構成部材の一つとして説明しているが、ステント5は目的に応じて適宜交換可能である。
【0027】
ガイドワイヤ4は、図1Aに示すように、カテーテル部2を患者の体内に挿入するためのガイドとして用いられるものであり、インナーシース21の内腔内に挿通され、その遠位端はインナーシース21の先端チップ24の遠位端の開口から突出しているとともに、その近位端は操作部3を貫通して配置されたインナーシース21の近位端の開口21aを介して外側に露出するように配置されている。ガイドワイヤとしては、一般には、直径0.035インチ(≒0.889mm)のものや直径0.025インチ(≒0.635mm)のものなどが用いられているが、本実施形態では、ガイドワイヤ4として、直径0.025インチのものを用いるものとする。
【0028】
操作部3は、略円筒状のリリースハンドル(ハウジング)31を有し、リリースハンドル31の遠位端側の開口部は、その中央部に貫通穴を有する遠位端側蓋部材が一体的に取り付けられることにより閉塞され、近位端側の開口部は、その中央部に貫通穴を有する遠位端側蓋部材が一体的に取り付けられることにより閉塞されている。
【0029】
リリースハンドル31の遠位端側蓋部材の貫通穴には、アウターシース22の近位端部がスライド可能に挿通され、アウターシース22の近位端はリリースハンドル31の内部に位置している。リリースハンドル31の側壁には、その中心軸に沿う方向に内外に貫通する溝が形成されている。この溝には、リリースハンドル31の外側に位置する頭部および該頭部の中央部に立設された足部を有するリリースレバー32の該足部が貫通して配置されている。
【0030】
リリースレバー32の足部の先端部(下端部)は、リリースハンドル31の内部に位置されたアウターシース22の近位端部に固定されており、リリースレバー32を溝に沿って移動させることにより、リリースハンドル31(近位端側蓋部材)に固定されたインナーシース21に対してアウターシース22を、近位端側または遠位端側にスライドさせることができるようになっている。
【0031】
アウターシース22に挿通されたインナーシース21の近位端部はリリースハンドル31内を通過して、リリースハンドル31の近位端側蓋部材の貫通穴を貫通して、その近位端はリリースハンドル31の外部に位置している。インナーシース21は近位端側蓋部材(リリースハンドル31)に該貫通穴の部分で固定されている。
【0032】
リリースレバー32を溝の遠位端まで移動させた状態では、アウターシース22の遠位端は、先端チップ24に至って、アウターシース22の内腔の遠位端部に先端チップ24の細径部24bが内挿されており、この状態で、インナーシース21のステント配置部に配置されたステント5を縮径させた状態でその内部に保持した状態となっている。この状態からリリースレバー32を溝の近位端側に移動させると、これに伴いアウターシース22がインナーシース21に対して近位端側にスライドされて、ステント5がアウターシース22の遠位端から相対的に押し出され、ステント5が自己拡張力によってリリース(拡径)される。
【0033】
図1Bおよび図2Aに示すように、内視鏡用穿刺装置6は、シース7と、穿刺針8と、操作部9と、樹脂成形体10とを有する。内視鏡用穿刺装置6は、EUS-BDの手技において、バイパス接続すべき管腔臓器の周壁に穿刺孔を形成し、該穿刺孔を介して、管腔臓器間にガイドワイヤを挿通する際に用いられる。なお、この場合に用いられるガイドワイヤとしては、ステントデリバリー装置1の挿入に用いたガイドワイヤ4をそのまま用いることができる。
【0034】
シース7は可撓性を有する細長いチューブからなり、その内腔には穿刺針8が挿通されている。シース7の外径は、後述する穿刺針8の外径と同等または大きいことが好ましい。シース7は、不図示の内視鏡(例えば、超音波内視鏡)の処置具案内管の内部に挿入され、操作部9を操作することにより、内視鏡の処置具案内管に対して軸方向にスライド(相対移動)可能となっている。シース7の材料としては、前述したステントデリバリー装置1のインナーシース21、アウターシース22の材料として例示した各種の材料を用いることができる。
【0035】
穿刺針8は、可撓性を有する細長い円筒体からなり、シース7の内部に進退自在に挿通(配置)される。図2Aに示すように、穿刺針8の内部には、軸方向に沿って延びる内腔80が形成されており、内腔80の内部にはガイドワイヤ4(図1A参照)を挿通することが可能となっている。
【0036】
穿刺針8の内径(内腔80の直径D)は、例えば0.3~1.3mmであり、穿刺針8の外径は、例えば0.4~1.7mmである。穿刺針8の材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金などの可撓性を有する金属材料を用いることが好ましく、本実施形態では、穿刺針8全体を構成する材料として、ステンレス鋼を用いている。
【0037】
穿刺針8は、穿刺部81を有する。穿刺部81は、鋭利な形状からなり、穿刺針8の先端部(遠位端部)に形成されている。穿刺部81には、穿刺針8の軸線に対して傾斜した刃面82が形成されており、穿刺部81を体内壁に押し当てたときに、体内壁に穿刺孔を設けることが可能となっている。
【0038】
刃面82は、屈折部823と、屈折部823の基端側(近位側)に位置する第1刃面821と、屈折部823の先端側(遠位側)に位置する第2刃面822とを有し、各刃面821,822は屈折部823を介して不連続に接続されている。第1刃面821と第2刃面822とは、それぞれ穿刺針8の軸線に対する傾斜角度が異なっており、第2刃面822の一部は、第1刃面821よりも大きな傾斜角度で傾斜しながら湾曲している。
【0039】
穿刺針8の先端には先端開口部80aが形成されており、この先端開口部80aの縁部に沿って刃面82が形成されている。本実施形態では、穿刺針8の先端がその軸線に対して傾斜しているため、先端開口部80aの形状は略楕円形状となっている。
【0040】
詳細な図示は省略するが、穿刺針8の先端部所定位置表面には、複数の円環状の溝が設けられていてもよい。このような構成とすることにより、穿刺針8の先端部の超音波画像が観察画像上に明瞭に描出され、穿刺針8と、穿刺針8により穿刺される穿刺部位との位置関係および距離の測定を精度良く行うことが可能となる。
【0041】
図1Bに示すように、操作部9は、例えば樹脂材料で構成され、シース7の基端部が固設される操作部本体90と、操作部本体90に対して摺動自在に設けられるスライダ91とを有する。
【0042】
スライダ91は、円筒状体であり、使用者によって把持されるスライダ本体910と、その基端部(近位端部)に同軸上に形成された細径部911とを有する。細径部911には、穿刺針8の基端部が固設されている。
【0043】
操作部本体90は、細長い円筒状体からなり、シース移動部92と、針移動部93と、接続部94とを有する。接続部94は、操作部本体90の先端部に接着等の手段で固定されており、シース7の基端部(遠位端部)が固設される。接続部94は、内視鏡(図示略)の処置具案内管の入口に連結固定され、これにより内視鏡用穿刺装置6を内視鏡に固定することが可能となっている。
【0044】
シース移動部92は、内視鏡(図示略)とシース7との位置関係を調整するための機構であり、操作部本体90の先端側(遠位端側)に設けられている。シース移動部92は、ストッパ920と、目盛部921とを有する。ストッパ920は、操作部本体90に対して摺動自在に配置されている。目盛部921はストッパ920の配置位置を設定する際の指標となる複数の目盛を有し、各目盛は操作部本体90の外周面に各々所定間隔で配置されている。各目盛は、内視鏡(図示略)の先端からのシース7の突出長を表しており、例えば、接続部94を内視鏡に連結固定した状態で、数値「1」に対応する目盛の位置にストッパ920を配置し、その状態でスライダ91を遠位側にスライドさせると、該目盛が示す長さ分だけ(すなわち、1cmだけ)、内視鏡の先端からシース7の先端を突出させることが可能となっている。
【0045】
針移動部93は、シース7と穿刺針8との位置関係を調整するための機構であり、操作部本体90の基端側(近位端側)に設けられている。針移動部93は、ストッパ930と、目盛部931とを有する。ストッパ930は、操作部本体90に対して摺動自在に配置されている。目盛部931はストッパ930の配置位置を設定する際の指標となる複数の目盛を有し、各目盛は操作部本体90の外周面に各々所定間隔で配置されている。各目盛は、シース7の先端からの穿刺針8の突出長を表しており、例えば、数値「1」に対応する目盛の位置にストッパ930を配置し、その状態でスライダ91を遠位側にスライドさせると、該目盛が示す長さ分だけ(すなわち、1cmだけ)、シース7の先端から穿刺針8の先端を突出させることが可能となっている。
【0046】
図2Aに示すように、樹脂成形体10は、中空形状を有し、穿刺針8の内部(内腔80)に嵌入されている。樹脂成形体10は、穿刺針8の内腔80の直径とほぼ同等の外径を有しており、樹脂成形体10の外周面は、穿刺針8の内周面に対して固定されている。樹脂成形体10の外周面を穿刺針8の内周面に固定するための手段としては、接着、圧入等が挙げられ、本実施形態では、接着剤を用いた接着が用いられている。
【0047】
樹脂成形体10は、穿刺針8を構成する材料よりも柔らかい材料で構成され、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの樹脂材料で構成される。また、樹脂材料から樹脂成形体10を成形するための成形方法は、公知の樹脂材料の成形方法が特に限定なく使用できるが、射出成形が好適である。
【0048】
図2Bに示すように、樹脂成形体10は、基端部110と、先端部120とを有する。基端部110は、樹脂成形体10の基端側に配置され、略円筒形状の部分である。先端部120は、樹脂成形体10の先端側に配置され、鋭利な形状の部分である。
【0049】
先端部120は、略円筒形状に成形された直線状の樹脂部材を軸線に対して斜めに切断した形状からなり、その先端部には、穿刺部81の刃面82の傾斜に応じて傾斜する傾斜部(傾斜面)121を有する。先端部120の形状は、穿刺部81の形状と対応している(略同一である)。傾斜部121には、刃面82の屈折部823に対応する位置に、湾曲部122が形成されているが、湾曲部122については省略してもよい。
【0050】
樹脂成形体10の内部には、樹脂成形体10を軸方向に貫通する円筒状の空間である貫通孔100が形成されており、貫通孔100の内部には、ガイドワイヤ4(図1A参照)を挿通させることが可能となっている。
【0051】
樹脂成形体10の先端には開口部100aが形成され、樹脂成形体10の基端には開口部100bが形成されている。貫通孔100は、開口部100bを介して、穿刺針8の内腔80と接続されており、図5に示すように、内腔80の内部を挿通するガイドワイヤ4を貫通孔100の内部に挿通させ、開口部100aから樹脂成形体10の外部に引き出すことが可能となっている。
【0052】
貫通孔100の直径は、図2Aに示す内腔80の直径Dよりも小さく、かつ、貫通孔100の内部を挿通するガイドワイヤ4の直径と同等以上であり、好ましくは0.2~1.0mmである。
【0053】
図3Aに示すように、樹脂成形体10は、その内部を挿通するガイドワイヤ4(図示略)が、図2Aに示す穿刺針8の中心軸に対して芯出しされるように、所定の肉厚を有する。図3Aに示す樹脂成形体10の厚みT1と、図2Aに示す穿刺針8の内腔80の直径Dとの比T1/Dは、好ましくは1/8~1/3である。上記比T1/Dの値を上記範囲内に設定することにより、樹脂成形体10の内部(貫通孔100)を挿通するガイドワイヤ4は穿刺針8の径方向略中心部(穿刺針8の内周面から厚みT1だけ径方向中心側に離れた位置)に配置され、穿刺針8の中心軸に対して芯出しされる。なお、厚みT1は、樹脂成形体10の軸方向に沿って一定となっている。
【0054】
先端部120の軸方向に沿う長さL1は、穿刺部81の軸方向に沿う長さに応じて決定され、通常1~10mmである。樹脂成形体10の軸方向に沿う長さL2は、好ましくは10~150mmである。上記長さL1と上記長さL2との比L1/L2は、好ましくは1/75~1/2であり、より好ましくは1/50~1/5である。
【0055】
図2Aに示すように、先端部120は、穿刺部81の内部に配置される。より詳細には、先端部120は、開口部100aの位置と、先端開口部80aの位置とが、ほぼ一致する(揃う)ように、穿刺部81の内部に配置される。そのため、刃面82の位置と、傾斜部121の位置とは、ほぼ一致し(揃い)、刃面82(穿刺針8の先端)と傾斜部121(樹脂成形体10の先端)とが略面一となる。また、先端開口部80aの内側には、先端部120の開口部100aの縁部が、先端開口部80aの縁部(刃面82)に沿って配置されることになる。
【0056】
このように、本実施形態では、樹脂成形体10の少なくとも一部(先端部120の開口部100aの縁部)が、穿刺部81の先端開口部80aの内側に配置され、先端開口部80aの縁部の内周面には、先端部120の開口部100aの縁部の外周面が当接する。そのため、先端開口部80aの内側では、先端開口部80aの縁部の内周面が、先端部120の開口部100aの縁部によって、ほぼ全周に亘って直接または間接的に覆われ、図5に示すように、刃面82のエッジ部分が傾斜部121に滑らかに接続される。
【0057】
なお、本実施形態では、先端部120の外周面全体が、穿刺部81の内周面全体に当接しており、穿刺部81の内周面のほぼ全体が、先端部120によって、直接または間接的に覆われている。また、基端部110の外周面全体が、穿刺部81より近位側に位置する穿刺針8の一部の内周面に当接しており、当該部分の内周面が、基端部110によって、直接または間接的に覆われている。
【0058】
次に、内視鏡用穿刺装置とステントデリバリー装置とを用いて、ステントを留置する手技について、図6図11を参照して説明する。まず、図1Bに示す内視鏡用穿刺装置6を用意し、穿刺針8をシース7の内部に配置させた状態で、該シース7を内視鏡(図示略)の処置具案内管の内部に挿入するとともに、操作部6の接続部94を内視鏡の処置具案内管の入口に連結固定し、内視鏡用穿刺装置6を内視鏡に固定する。なお、穿刺針8の内腔80には予めスタイレットを挿入しておく。
【0059】
次いで、シース移動部92のストッパ920を目盛部921の所望の目盛の位置に配置し、スライダ91を遠位側にスライドさせ、上記目盛の数値に応じた距離だけ、内視鏡の先端からシース7の先端を突出させる。例えば、腹腔内において胃と肝内胆管とをバイパス接続するようにステントを留置する場合には、上記操作により、胃壁11から所定距離だけ離れた位置に、シース7の先端を配置させることが可能となる。
【0060】
次いで、針移動部93のストッパ930を目盛部931の所望の目盛の位置に配置し、スライダ91を遠位側にスライドさせ、上記目盛の数値に応じた距離だけ、シース7の先端から穿刺針8の先端を突出させる。このようにして、図6に示すように、胃壁11から腹腔15を経て胆管壁(肝臓の肝実質を含む)12に至るように穿刺針8で穿刺し、胃と肝内胆管の双方に穿刺孔14を形成する。その後、内腔80に挿入したスタイレットを穿刺針8から引き抜くとともに、内腔80にガイドワイヤ4を挿通する。そして、図1Bに示す針移動部93のストッパ930を目盛部931の所望の目盛の位置に配置し、スライダ91を近位側にスライドさせ、上記目盛の数値に応じた距離だけ、シース7の先端から穿刺針8の先端を引き込む。これにより、穿刺針8が穿刺孔14から抜去され、図7に示すように、穿刺孔14にガイドワイヤ4を挿通した状態として、経路を確保する。なお、図6図11では内視鏡が二点鎖線で示されている。
【0061】
次いで、内視鏡の処置具案内管からシース7を引き抜き、内視鏡用穿刺装置6を内視鏡から取り外す。シース7の先端から穿刺針8の先端を引き込んだ状態で、内視鏡の処置具案内管からシース7を引き抜くことにより、内視鏡の内部の損傷等を避けることができる。
【0062】
次いで、図1Aに示すステントデリバリー装置1を用意し、ダイレータ(図示略)により穿刺孔14の拡張を行った後、操作部3のリリースレバー32を溝の遠位端まで移動させて、アウターシース22を遠位端側にスライドさせた状態、すなわち、図8に示すように、インナーシース21のステント配置部に配置されたステント5を縮径させた状態でアウターシース22の遠位端部の内側に保持した状態で、カテーテル部2の遠位端部(先端チップ24)を胃壁11側の穿刺孔14に挿入する。
【0063】
次いで、先端チップ24が胃壁11側の穿刺孔14を通過して腹腔15内にさらに深く挿入されるように、カテーテル部2(インナーシース21およびアウターシース22)を挿入すると、胃壁11側の穿刺孔14は先端チップ24により徐々に拡張され、胃壁11側の穿刺孔14が先端チップ24により、カテーテル部2の遠位端部が挿入し得る程度に拡張される。その後、カテーテル部2をさらに進入させて、カテーテル部2の遠位端部(先端チップ24)を胆管壁12側の穿刺孔14に挿入する。
【0064】
カテーテル部2をさらに進入させると、胆管壁12側の穿刺孔14は先端チップ24により徐々に拡張され、胆管壁12側の穿刺孔14が先端チップ24により、カテーテル部2の遠位端部が挿入し得る程度に拡張される。カテーテル部2をさらに進入させて、図9に示すように、ステント5の遠位端が胆管壁12の内側に、ステント5の近位端が胃壁11の内側に位置させた状態でカテーテル部2の挿入を停止する。
【0065】
その後、操作部3において、リリースレバー32を溝の近位端側に移動させて、図10に示すように、インナーシース21に対してアウターシース22を近位端側にスライドさせる。アウターシース22の近位端側へのスライドに伴いステント5はその遠位端側から徐々に露出・拡径され、リリースレバー32を溝の近位端まで移動させることにより、図11に示すように、ステント5が全体的に露出・拡径された状態となる。その後、カテーテル部2および先端チップ24を拡径されたステント5の内側を通過させて引き抜くことにより、ステント5の留置が完了する。
【0066】
本実施形態に係る内視鏡用穿刺装置6は、樹脂成形体10を有するため、穿刺針8の内腔80にガイドワイヤ4を挿入した状態で、ガイドワイヤ4の押し引きや回転等の各種操作を行っても、図5に示すように、穿刺針8の先端開口部80aの内側では、ガイドワイヤ4は樹脂成形体10(先端部120)に接触し、穿刺針8の刃面82(特に、刃面82のエッジ部分)に接触することがない。したがって、ガイドワイヤ4を穿刺針8の刃面82から保護することが可能となり、ガイドワイヤ4の損傷を防止することができる。
【0067】
また、樹脂成形体10は、その内部を挿通するガイドワイヤ4が穿刺針8の中心軸に対して芯出しされるように、所定の肉厚を有する。そのため、樹脂成形体10の内部(貫通孔100)を挿通するガイドワイヤ4は、樹脂成形体10の肉厚分だけ、穿刺針8の径方向中心部に向かってオフセットして配置される。したがって、穿刺針8の先端開口部80aの内側では、ガイドワイヤ4を穿刺針8の径方向略中心部(穿刺針8の刃面82から遠い位置)に配置させることが可能となり、ガイドワイヤ4を穿刺針8の刃面82から効果的に保護することができる。
【0068】
また、樹脂成形体10は、刃面82の傾斜に応じて傾斜する傾斜部121を有する。そのため、穿刺針8の先端開口部80aの内側に傾斜部121を配置させると、穿刺針8の先端開口部80aの内側には、傾斜部121が先端開口部80aの縁部に沿って配置されることになる。したがって、穿刺針8の先端開口部80aの内側の大部分を樹脂成形体10で覆うことが可能となり、ガイドワイヤ4を穿刺針8の刃面82から効果的に保護することができる。
【0069】
第2実施形態
図3Bに示す本実施形態の内視鏡用穿刺装置が有する樹脂成形体10Aは、以下に示す点以外は、上述した第1実施形態と同様な構成と作用効果を有し、共通する部分の説明は省略し、図面では、共通する部材には共通する部材符号を付してある。
【0070】
図3Bに示すように、樹脂成形体10Aは、貫通孔100Aと、先端部120Aとを有する。貫通孔100Aは、先端部120Aに位置する屈曲部101で屈曲し、樹脂成形体10Aの軸線に対して斜め上方に向かって延びている。本実施形態では、屈曲部101は、先端部120Aに形成されているが、基端部110に形成されていてもよい。また、貫通孔100Aは、屈曲部101で、滑らかに湾曲していてもよい。
【0071】
先端部120Aの肉厚は、その先端側に向かうにしたがって、径方向中心部に向かって厚くなっており、屈曲部101よりも先端側には、最大厚みT2の領域(厚肉領域)が形成されている。先端部120Aの最大厚みT2は、基端部110の厚みT1よりも大きく、貫通孔100Aの内部を挿通するガイドワイヤ(図示略)は、上記各厚みの差(T2-T1)に応じた距離だけ、径方向中心部に向かってオフセットした状態で、開口部100aから引き出される。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、樹脂成形体10Aを穿刺針8(図2A参照)の内部に設けたときに、穿刺針8の先端開口部80aの内側では、穿刺針8の中心軸に対して、ガイドワイヤを容易に芯出しすることが可能となり、ガイドワイヤを穿刺針8の刃面82から効果的に保護することができる。
【0073】
第3実施形態
図3Cに示す本実施形態の内視鏡用穿刺装置が有する樹脂成形体10Bは、以下に示す点以外は、上述した第1実施形態と同様な構成と作用効果を有し、共通する部分の説明は省略し、図面では、共通する部材には共通する部材符号を付してある。
【0074】
図3Cに示すように、樹脂成形体10Bは、貫通孔100Bを有する。貫通孔100Bの直径(樹脂成形体10Bの内径)は、樹脂成形体10Bの先端側に向かうにしたがって小さくなるように形成されている。また、貫通孔100Bの形状に対応して、樹脂成形体10Bは、その先端側に向かうにしたがって、径方向中心部に向かって肉厚が厚くなるように形成されている。
【0075】
そのため、樹脂成形体10Bを穿刺針8(図2A参照)の内部に設けたときに、樹脂成形体10Bの内部を挿通するガイドワイヤ(図示略)は、樹脂成形体10Bの先端側に向かうにしたがって、穿刺針8の径方向略中心部に配置されることになる。したがって、穿刺針8の先端開口部80aの内側では、穿刺針8の中心軸に対して、ガイドワイヤを容易に芯出しすることが可能となり、ガイドワイヤを穿刺針8の刃面82から効果的に保護することができる。
【0076】
第4実施形態
図4Aに示す本実施形態の内視鏡用穿刺装置が有する樹脂成形体10Cおよび穿刺針8Cは、以下に示す点以外は、上述した第1実施形態と同様な構成と作用効果を有し、共通する部分の説明は省略し、図面では、共通する部材には共通する部材符号を付してある。
【0077】
図4Aに示すように、樹脂成形体10Cの外周面には、その先端側に向かって外径が大きくなるように傾斜したテーパ面130が形成されている。また、樹脂成形体10Cの外周面形状に対応して、穿刺針8Cの内腔80Cは、穿刺針8Cの先端側に向かって直径が大きくなるように形成されている。
【0078】
本実施形態では、樹脂成形体10Cの外周面にテーパ面130が形成されているため、穿刺針8Cの内部(内腔80C)から樹脂成形体10Cが抜け落ちることを防止することができる。
【0079】
第5実施形態
図4Bに示す本実施形態の内視鏡用穿刺装置が有する樹脂成形体10Dおよび穿刺針8Dは、以下に示す点以外は、上述した第1実施形態と同様な構成と作用効果を有し、共通する部分の説明は省略し、図面では、共通する部材には共通する部材符号を付してある。
【0080】
図4Bに示すように、樹脂成形体10Dの外周面には、略直角形状からなる段差部140が形成されている。また、穿刺針8Dの内腔80D(穿刺針8Dの内壁面)には、段差部140に係合する段差部83が形成されている。
【0081】
本実施形態では、樹脂成形体10Dの外周面に段差部140が形成されているため、穿刺針8Dの内部(内腔80D)から樹脂成形体10Dが抜け落ちることを防止することができる。
【0082】
第6実施形態
図4Cに示す本実施形態の内視鏡用穿刺装置が有する樹脂成形体10Eおよび穿刺針8Eは、以下に示す点以外は、上述した第1実施形態と同様な構成と作用効果を有し、共通する部分の説明は省略し、図面では、共通する部材には共通する部材符号を付してある。
【0083】
図4Cに示すように、樹脂成形体10Eの外周面の一部には、該外周面の周方向に沿って延びる凹凸150が形成されている。また、穿刺針8Eの内腔80E(穿刺針8Eの内壁面)には、凹凸150に係合する凹凸84が形成されている。
【0084】
本実施形態では、樹脂成形体10Eの外周面に凹凸150が形成されているため、穿刺針8Eの内部から樹脂成形体10Eが抜け落ちることを防止することができる。
【0085】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0086】
上記各実施形態において、樹脂成形体10の形状は、図2B等に示す形状に限定されるものではなく、その少なくとも一部が穿刺針8の先端開口部8の内側に配置されることを条件として、適宜変更してもよい。たとえば、図2Bにおいて、基端部110を省略し、先端部120のみからなる樹脂成形体10を構成してもよい。あるいは、穿刺針8の先端開口部80aの縁部の内周面(穿刺針8の先端開口部80aの内側)のみを覆う形状(略リング状)からなる樹脂成形体10を構成してもよい。
【0087】
上記各実施形態では、図2A等に示すように、穿刺針8の刃面82のエッジ部分が、樹脂成形体10の傾斜部121に滑らかに接続されていたが、不連続に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…ステントデリバリー装置
2…カテーテル部
21…インナーシース
22…アウターシース
24…先端チップ
24b…細径部
25…固定リング
3…操作部
31…リリースハンドル
32…リリースレバー
4…ガイドワイヤ
5…ステント
6…内視鏡用穿刺装置
7…シース
8…穿刺針
80…内腔
80a…先端開口部
81…穿刺部
82…刃面
821…第1刃面
822…第2刃面
823…屈折部
83…段差部
84…凹凸
9…操作部
90…操作部本体
91…スライダ
910…スライダ本体
911…細径部
92…シース移動部
920…ストッパ
921…目盛部
93…針移動部
930…ストッパ
931…目盛部
94…接続部
10,10A,10B,10C…樹脂成形体
100,100A,100B…貫通孔
100a,100b…開口部
101…屈曲部
110…基端部
120,120A…先端部
121…傾斜部
122…湾曲部
130…テーパ面
140…段差部
150…凹凸
11…胃壁
12…胆管壁
14…穿刺孔
15…腹腔
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11