IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

特許7487812純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法
<>
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図1
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図2
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図3
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図4
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図5
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図6
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図7
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図8
  • 特許-純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240514BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023039727
(22)【出願日】2023-03-14
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124483(JP,A)
【文献】特開2014-083480(JP,A)
【文献】特開2018-171577(JP,A)
【文献】特開2017-209654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/44
B01D61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の給水機構と逆浸透膜装置と前記逆浸透膜装置の透過水側の送水圧を測定する圧力計とを有する純水製造装置における純水製造時の逆浸透膜装置の制御方法であって、前記純水製造装置の後段に純水使用機器を有し、前記純水製造装置と純水使用機器の間に該純水使用機器に供給される純水の流量コントロール弁を備え、前記純水使用機器の純水の要求水量に応じて前記流量コントロール弁による純水の供給量を調整するとともに、前記給水機構の給水出力を前記圧力計の計測値が予め定めた送水圧力でほぼ一定となるように制御する、純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法。
【請求項2】
前記逆浸透膜装置が複数系列並列に設けられている、請求項1に記載の純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法。
【請求項3】
前記複数系列並列に設けられている逆浸透膜装置を全部稼働する、請求項2に記載の純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法。
【請求項4】
前記複数系列並列に設けられている逆浸透膜装置の一部の稼働を停止する、請求項2に記載の純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造装置を構成する逆浸透膜装置の制御方法に関し、特に半導体、液晶等の電子産業分野で利用される超純水を製造する際に、使用水量に応じて純水の送水量を制御可能な純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、例えば、図1に示すように前処理装置2、一次純水装置(純水製造装置)3、及び二次純水装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成された超純水製造装置1で原水Wを処理することにより製造されている。具体的には、前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0003】
一次純水装置3は、前処理水(被処理水)W1を貯留する被処理水タンク31と、この前処理水W1を送水する高圧ポンプ32と、逆浸透膜装置33と、空気により溶存気体を除去する第一の脱気膜装置34Aと、窒素ガスにより溶存気体をさらに脱気する第二の脱気膜装置34Bと、紫外線酸化装置35と、電気脱イオン装置36と、この電気脱イオン装置36に給水を供給する給水ポンプ37とを有する。この一次純水装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解する。
【0004】
サブシステム4は、一次純水装置3で製造された純水使用機器であり、一次純水(純水)W2を貯留する電気脱イオン装置36の後段に配置された純水タンクとしてのサブタンク41と、このサブタンク41から図示しないポンプを介して送給される一次純水W2を処理する紫外線酸化装置42と非再生型混床式イオン交換装置43と膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜44とで構成され、さらに必要に応じRO膜分離装置等が設けられている場合もある。このサブシステム4では、紫外線酸化装置42により一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、続いて非再生型混床式イオン交換装置43で処理することで残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質をイオン交換によって除去する。そして、限外濾過(UF)膜44で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント5に供給して、未使用の超純水はサブタンク41に還流する。
【0005】
この超純水製造装置1では、所定の水質の一次純水を安定して供給するために、あらかじめ過剰量の一次純水W2を製造して、サブタンク41に必要量のみ供給し、余剰分は循環利用するなどの制御を行っていた。
【0006】
上述したような超純水製造装置1における逆浸透膜装置33の制御方法として、図8に示すように水位計51でサブタンク41の水位を計測し、サブタンク41の水位が所定の範囲内となるように、高圧ポンプ32のオン・オフ制御を行い、これに伴い逆浸透膜装置33の運転・停止も繰り返していた。この際、逆浸透膜装置33は稼働時には一定の濃縮倍率で運転していた。なお、52は逆浸透膜33の透過水の送水圧を計測する圧力計であり、53は逆浸透膜装置33の濃縮水の回収ラインであり、54は流量計である。
【0007】
また、逆浸透膜装置は、図9に示すように高圧ポンプ32(32A,32B)、逆浸透膜装置33(33A,33B)により複数系列(図8では2系列)並行に配置されることが多いが、この場合には、逆浸透膜装置33A,33Bを一定条件(一定流量・一定給水圧)で運転され、水の使用水量もしくは後段設備のサブタンク41の水位等に応じて逆浸透膜装置33A,33Bの両方を発停する制御を行うか、あるいは長期的な使用水量の調整に併せて稼働系列を増減させる(逆浸透膜装置33A,33Bのいずれか1系列以上を逐次停止する)運転にて造水量を制御していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8及び図9に示すような逆浸透膜装置33の制御方法では、経年使用による有機物等によるファウリングや高濃縮による無機スケールの蓄積などによりRO膜の透過水量が低下するだけでなく、逆浸透膜装置33(33A,33B)装置33(33A,33B)の頻繁な発停によるウォーターハンマーにより逆浸透膜のエレメント内部の膜表面が物理的に傷つき、イオン除去率が悪化する恐れがある、という問題点がある。また、逆浸透膜装置33は、停止して時間が経過することで、濃縮側からのイオンの拡散により透過水側の水質の悪化により再稼働直後の水質が悪化するので、運転再開前に洗浄を行うのが一般的であり、稼働開始時間や使用水量に無駄が生じる、という問題点がある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、使用水量などに追従して流量が変動しても安定的に送水することができ、発停に伴う膜の劣化、水質の低下及び再起動時の膜の洗浄の必要がない純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み、本発明は、被処理水の給水機構と逆浸透膜装置と前記逆浸透膜装置の透過水側の送水圧を測定する圧力計とを有する純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法であって、前記純水製造装置の後段に純水使用機器を有し、前記純水製造装置と純水使用機器の間に該純水使用機器に供給される純水の流量調整機構を備え、前記純水使用機器の純水の要求水量に応じて前記流量調整機構による純水の供給量を調整するとともに、前記給水機構の給水出力を前記圧力計の計測値が予め定めた送水圧力でほぼ一定となるように制御する、純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を提供する(発明1)。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、純水使用機器での純水の要求水量の増減に応じて、純水製造装置で製造した純水の供給量を増減するように流量調整機構を制御する。この供給量の増減に伴い、そのままであれば給水圧力が減増するので、給水圧力が予め定められた圧力でほぼ一定となるように給水機構の給水出力を制御することで、逆浸透膜を停止することなく逆浸透膜の透過水を安定して供給することができる。これにより発停に伴う膜の劣化や水質の低下がなく、再起動時の膜の洗浄の頻度も大幅に少なくすることができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記逆浸透膜装置が複数系列並列に設けられていることが好ましい(発明2)。特に上記発明(発明2)においては、前記複数系列並列に設けられている逆浸透膜装置を全部稼働することが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明2,3)によれば、逆浸透膜装置が複数系列並列に設けられた場合であっても、これらの合計による給水圧力が予め定められた圧力でほぼ一定となるように給水機構の給水出力を制御して、それぞれの逆浸透膜装置の透過水量を減じて運転することで、逆浸透膜装置を停止する必要がない。
【0014】
また、上記発明(発明2)においては、前記複数系列並列に設けられている逆浸透膜装置の一部の稼働を停止してもよい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明4)によれば、純水使用機器での純水の要求水量が、給水機構で調整可能な給水出力の流量以下に低下した場合には、運転する系列数を少なくする操作を適宜組み合わせることにより、さらに効率的な運転が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法によれば、純水使用機器の純水の要求水量に応じて、流量調整機構により純水の供給量を調整するとともに、前記給水機構の給水出力を前記圧力計の計測値が予め定めた送水圧力でほぼ一定となるように制御するので、必要量の逆浸透膜の透過水を逆浸透膜を停止することなく安定して供給することができる。これにより発停に伴う膜の劣化や水質の低下が大幅に減少し、逆浸透膜装置の再起動時の膜の洗浄の頻度も激減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の純水装置における逆浸透膜装置の制御方法を適用可能な超純水製造装置を示す概略図である。
図2】本発明の第一の実施形態による純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を示す概略図である。
図3】本発明の第二の実施形態による純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を概略的に示す概略図である。
図4】実施例1及び比較例1における純水製造装置における逆浸透膜装置を示す概略図である。
図5】実施例1における給水圧力及び透過水圧力をとの関係を示すグラフである。
図6】実施例1における透過水の水質(電気伝導度)を示すグラフである。
図7】比較例1における透過水の水質(電気伝導度)を示すグラフである。
図8】従来の純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を示す概略図である。
図9】従来の他の純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の純水装置における逆浸透膜装置の制御方法について添付図面を参照して説明する。
【0019】
〔第一の実施形態〕
(純水製造装置)
本発明は、超純水製造装置などに用いる純水製造装置(一次純水装置)における逆浸透膜の制御に特徴を有するものである。ここで、純水製造装置(一次純水装置)としては、特に制限はなく、被処理水を供給するための給水機構としての給水ポンプと、この給水ポンプの後段に設けられた逆浸透膜装置と、逆浸透悪装置の透過水側の送水圧を測定する圧力計とを有し、給水ポンプと圧力計との間に必要に応じ1又は2種以上の水処理機器を備えるものであれば、種々の純水製造装置を適用することができる。例えば、図1に示すような超純水製造装置1における一次純水装置3に好適に適用することができる。
【0020】
図1に示すような一次純水装置3における造水プロセスにおいて、逆浸透膜装置33は図2に示すような制御系統により制御される。すなわち、図2において、一次純水装置3は、被処理水タンク31の後段に、給水機構としてのインバータ制御により出力調整可能な高圧ポンプ32Aが設けられていて、前処理水(被処理水)W1を逆浸透膜装置33に供給可能され、逆浸透膜装置33で処理した後、その水処理機器で処理されて一次純水W2が製造され、この一次純水装置3で製造された一次純水(純水)W2が、サブタンク41に貯留される構造となっている。この一次純水装置3において、逆浸透膜装置33の後段には、逆浸透膜装置33の透過水側の送水圧を測定する圧力計61と、流量調整機構としてのコントロール弁62とが設けられているとともに、サブタンク41には、水位計63が設けられていて、これら、圧力計61、水位計63は、図示しない制御機構に情報伝達可能となっていて、この制御機構は圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定(例えば±5%)となるように高圧ポンプ32Aをインバータ制御可能となっているとともに、水位計63の計測値に基づいてコントロール弁62の開度を制御可能となっている。71は、逆浸透膜装置33の濃縮水の回収ラインであり、この回収ライン71には流量制御弁72、流量計73がそれぞれ設けられていて、この濃縮水は、回収逆浸透膜などで処理されて、被処理水タンク31に戻るなどが行われる。なお、図2においては、逆浸透膜装置33以外の水処理ユニットについては省略するが、逆浸透膜装置33と圧力計61との間には、他の水処理ユニットがあってもよい。具体的には、紫外線酸化装置、脱気膜、電気脱イオン装置、再生式イオン交換装置、非再生式イオン交換装置などから選ばれた1種又は2種以上を配置してもよい。
【0021】
(逆浸透膜装置の制御方法)
次に図2に示す逆浸透膜装置の制御方法について説明する。
図2において、高圧ポンプ32Aを起動して被処理水タンク31から前処理水(被処理水)W1を供給し、逆浸透膜装置33やその他必要に応じて適宜設けられる水処理ユニット(図示せず)で処理して製造される純水(一次純水)W2をサブタンク41に貯留する。そして、このサブタンク41に貯留された一次純水W2は、ユースポイント(図示せず)での超純水の使用量に応じてサブシステムに送られ、サブシステムで超純水を調製してユースポイントに供給される。
【0022】
上述したような一次純水装置3による逆浸透膜装置33による処理プロセスにおいて、逆浸透膜装置33は、送水圧を測定する圧力計61、コントロール弁62、水位計63及びインバータ制御可能な高圧ポンプ32Aにより以下のように制御される。
【0023】
まず、あらかじめサブタンク41の水位の基準値(所定の範囲の値でもよい)を定めておく。そして、ユースポイントでの超純水の使用量が減少して、水位計63の水位の計測値がこの基準値より増加したら、図示しない制御手段は、コントロール弁62を絞ってサブタンク41への一次純水W2の給水量を減少させる。その結果、給水圧力が上昇する。そこで、制御手段は、圧力計61の計測値に基づいて、該圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定となるように高圧ポンプ32Aの出力をインバータ制御により減少させる。一方、ユースポイントでの超純水の使用量が増加して、サブタンク41の水位の計測値がこの基準値より減少したら、図示しない制御手段は、コントロール弁62を開成してサブタンク41への給水量を増加させる。その結果、給水圧力が減少する。そこで、制御手段は、圧力計61の計測値に基づいて、該圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定(例えば±5%)となるように、高圧ポンプ32Aの出力をインバータ制御により増加させる。
【0024】
このように純水使用機器であるサブシステムの要求水準(サブタンク41の水位)に応じてコントロール弁62により一次純水W2の供給量を調整するとともに、インバータ制御により出力調整可能な高圧ポンプ32Aの給水出力を圧力計61の計測値が予め定めた送水圧力でほぼ一定となるように制御することにより、逆浸透膜装置33を停止することなく、一次純水W2を安定して供給することができる。これにより下記(1)~(3)のような効果が得られる。
【0025】
(1)従来は、逆浸透膜装置33の給水量及び濃縮倍率を一定として運転するので、例えば濃縮倍率5倍の場合には、下記表1に示すような運転条件となる。これに対し、本実施形態においては、逆浸透膜装置33の濃縮水量はほぼ一定で運転することとする。そして、逆浸透膜装置33の給水の水量は後段のユースポイントの使用水量に対応して変動させる。例えば、濃縮水量を20m/hで一定とした場合、下記表2に示すような運転条件となる。この表1及び表2から明らかなとおり、本実施形態においては、濃縮水の水量を一定として給水の水量を増減させているため、濃縮倍率は変動し、給水水量の最大値を従来の給水水量と同じとすれば、その平均値は既存の運転方法より小さくなる。すなわち、節水効果が高いといえる。なお、逆浸透膜装置33の濃縮水量を一定に保っているため、線速度によるファウリング物質の付着防止効果は同等である。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
(2)一般的な逆浸透膜装置は、0.5~2.0MPaの給水圧力で運転される。既存の逆浸透膜装置の運転制御方法では、逆浸透膜装置33においては、逆浸透膜装置の発停のたびに、給水圧力が0MPaになる急激な圧力変化が発生している。これにより、逆浸透膜装置33の逆浸透膜表面を物理的に傷つけるリスクがあった。これに対し、本実施形態においては、使用水量に追従して高圧ポンプ32Aのポンプインバーターの制御とコントロール弁62の開度を制御することにより、逆浸透膜装置33の送水圧力を制御しているので、浸透膜装置33の発停頻度は極めて少なくなり、シームレスに給水圧力が変化して、急激な圧力変化の回数が大幅に減少する。これにより、逆浸透膜装置33の損傷および逆浸透膜表面を物理的に傷つけるリスクが極めて少なくなる。
【0029】
(3)逆浸透膜装置33を停止してある程度の時間が経過すると、滞留している水が濃縮水側から透過水側に、イオンなどが逆拡散して、透過水側の水質が悪化するため、運転再開直後の透過水の水質が低下する。そこで、通水再開前に逆浸透膜の洗浄が必要であった。これに対し本実施形態においては、一時的な水質の悪化を抑えることができるだけでなく、逆浸透膜装置33の発停を最小限とすることで、運転再開前の逆浸透膜の洗浄の回数を削減し、洗浄に必要な水量を削減することが可能となる。
【0030】
〔第二の実施形態〕
(純水製造装置)
図3に示す第二の実施形態は、図2に示す第一の実施形態において、インバータ制御により出力調整可能な高圧ポンプ32Aと逆浸透膜装置33とが2系列並列に設けられた構造となっている以外同じ構成を有するので、図3においては高圧ポンプ32A,32B、逆浸透膜装置33A、33Bとして記載する。
【0031】
(逆浸透膜装置の制御方法)
次に図3に示す逆浸透膜装置の制御方法について説明する。
図3において、高圧ポンプ32A,32Bを起動して被処理水タンク31から前処理水(被処理水)W1を逆浸透膜装置33A,33Bに供給して処理し、その他必要に応じて適宜設けられる水処理ユニット(図示せず)で処理して製造される純水(一次純水)W2をサブタンク41に貯留する。そして、このサブタンク41に貯留された一次純水W2は、ユースポイント(図示せず)での超純水の使用量に応じてサブシステムに送られ、サブシステムで超純水が調製されてユースポイントに供給される。
【0032】
本実施形態における逆浸透膜装置33A,33Bによる処理プロセスにおいて、逆浸透膜装置33A,33Bは、送水圧を測定する圧力計61、コントロール弁62、水位計63及びインバータ制御可能な高圧ポンプ32A,32Bにより以下のように制御される。
【0033】
まず、あらかじめサブタンク41の水位の基準値(所定の範囲の値でもよい)を定めておく、そして、ユースポイントでの超純水の使用量が減少して、水位計63の水位の計測値がこの基準値より増加したら、図示しない制御手段は、コントロール弁62を絞ってサブタンク41への一次純水W2の給水量を減少させる。その結果、給水圧力が上昇する。そこで、制御手段は、圧力計61の計測値に基づいて、該圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定(例えば±5%)となるように高圧ポンプ32A,32Bの出力をインバータ制御により減少させる。一方、ユースポイントでの超純水の使用量が増加して、サブタンク41の水位の計測値がこの基準値より減少したら、図示しない制御手段は、コントロール弁62を開成してサブタンク41への給水量を増加させる。その結果、給水圧力が減少する。そこで、制御手段は、圧力計61の計測値に基づいて、該圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定(例えば±5%)となるように、高圧ポンプ32A,32Bの出力をインバータ制御により増加させる。
【0034】
このように純水使用機器であるサブシステムの要求水量に応じてコントロール弁62により一次純水W2の供給量を調整するとともに、インバータ制御により出力調整可能な高圧ポンプ32A,32Bの給水出力を圧力計61の計測値が予め定めた送水圧力でほぼ一定となるように制御することにより、逆浸透膜装置33A,33Bの両方を停止することなく、一次純水W2安定して供給することができる。
【0035】
ただし、純水使用機器であるサブシステムでの一次純水W2の要求水量が、高圧ポンプ32A,32Bの給水出力の調整可能な流量以下(例えば、高圧ポンプ32Aと高圧ポンプ32Bのそれぞれの最低出力の合計値以下)にまで低下した場合は、いずれか一方を止めて逆浸透膜装置33A又は33Bの処理を停止することで、継続して運転することができる。なお、この第二の実施形態は2系列の場合であるが、3系列以上の場合にも、給水出力の調整可能な流量以下に低下した場合には、高圧ポンプ及び逆浸透膜装置を停止して運転する系列数を減ずればよいが、停止する系列数はなるべく少なくなるように制御することが好ましい。
【0036】
以上、本発明について、上記の実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能である。例えば、給水機構としては、インバータ制御可能な高圧ポンプ32Aだけでなく、給水ポンプの後段に高圧ポンプ32Aを設けて、これらの組み合わせを給水機構としてもよい。さらに、サブタンク41とは別に一次純水装置の途中、例えば電気脱イオン装置36の後段に貯水タンクを設け、この貯水タンクの水位に基づいて制御を行ってもよいし、タンクの水位によらず、サブシステム4などの純水使用機器での純水W2の要求水量を流量計など他の手段により判断可能であれば、タンクを有しないシステムにも適用可能である。さらに、逆浸透膜装置は並列と直列とを組み合わせてもよい。さらにまた、純水製造装置は。超純水製造装置用のものに限らない。
【実施例
【0037】
以下、具体的実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1及び比較例1〕
(逆浸透膜の本数切り替え試験)
図4に示すように、インバータ81Aが付設された高圧ポンプ81と、並列に設けられた逆浸透膜装置82A及び82Bと、これら逆浸透膜装置82A、82Bの濃縮水を処理する逆浸透膜装置83とを備え、逆浸透膜83の透過水側にサンプリング点84を設けた試験装置を用意した。
【0039】
この試験装置において、透過水圧力及び濃縮水流量が一定となるように制御し、逆浸透膜装置の通水本数を3本に固定して被処理水W1の処理を行った。
【0040】
この試験における逆浸透膜装置82A及び82Bの透過水の流量及び濃縮水の流量を図5に、サンプリング点84で測定した透過水の水質として電気伝導率(EC)を測定した結果を図6にそれぞれ示す。
【0041】
また、ユースポイントでの要求水量の変動を想定して、高圧ポンプ81の給水圧力及び逆浸透膜装置82A、82Bの透過水(処理水)の流量を変動させ、これに伴い逆浸透膜82A、82B並びに逆浸透膜83への通水・停止を制御した(比較例1)。具体的には、流量の多い順に逆浸透膜82A、82B及び逆浸透膜63(3本)、逆浸透膜82A及び逆浸透膜83(2本)、逆浸透膜82Aのみ(1本)に通水本数を変動させて同様に通水試験を行った。この際の逆浸透膜82A、82Bの透過水の水質として電気伝導率(EC)を測定した結果を逆浸透膜の通水本数の変化とともに図7に示す。
【0042】
図6及び図7から明らかなとおり、透過水圧力及び濃縮水流量が一定となるように逆浸透膜82A、82Bを常時運転制御した実施例1では、水質(電気伝導率(EC))の変動がゆるやかであったのに対し、逆浸透膜の本数を増減させた比較例1では、運転本数の増加に伴い、水質が一時的に悪化している。これは逆浸透膜の通水停止時に透過水側に保持していた水の水質が悪化し、この逆浸透膜の通水再開時に悪化した保持水が放出されるためと考えられ、再開前に洗浄が必要であることがわかる。
【符号の説明】
【0043】
1 超純水製造装置
2 前処理装置
3 一次純水装置(純水製造装置)
31 被処理水タンク
32,32A,32B 高圧ポンプ(給水機構)
33,33A,33B 逆浸透膜装置
34A 第一の脱気膜装置
34B 第二の脱気膜装置
35 紫外線酸化装置
36 電気脱イオン装置
37 給水ポンプ
4 二次純水製造装置(サブシステム)
41 サブタンク
42 紫外線酸化装置
43 非再生型混床式イオン交換装置
44 限外濾過(UF)膜
5 ユースポイント
61 圧力計
62 コントロール弁(流量調整機構)
63 水位計
71 回収ライン
72 流量制御弁
73 流量計
W 原水
W1 前処理水(被処理水)
W2 一次純水(純水)
W3 二次純水(超純水)
【要約】
【課題】 使用水量などに追従して流量が変動しても安定的に送水することができ、純水製造装置における逆浸透膜装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 ユースポイントでの超純水の使用量が減少して、水位計63の水位の計測値が増加したら、コントロール弁62を絞ってサブタンク41への一次純水W2の給水量を減少させる。そこで、制御手段は、圧力計61の計測値に基づいて、該圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定となるように高圧ポンプ32Aの出力を減少させる。一方、ユースポイントでの超純水の使用量が増加して、サブタンク41の水位の計測値が減少したら、コントロール弁62を開成してサブタンク41への給水量を増加させる。そこで、制御手段は、圧力計61の計測値に基づいて、該圧力計61の計測値が予め定めた圧力でほぼ一定となるように、高圧ポンプ32Aの出力を増加させる。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9