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特許7487830スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/12 20060101AFI20240514BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20240514BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240514BHJP
【FI】
C01G45/12
C01B35/12 A
H01M4/505
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023109665
(22)【出願日】2023-07-03
(65)【公開番号】P2024007535
(43)【公開日】2024-01-18
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2022107987
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】東郷 英一
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-139945(JP,A)
【文献】国際公開第2022/138702(WO,A1)
【文献】特開2021-160970(JP,A)
【文献】特開2021-134100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 45/12
C01B 35/12
H01M 4/505
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホン酸又はホスホン酸塩を含有し、前記ホスホン酸又はホスホン酸塩が、ホスホン酸又はホスホン酸塩部位を含む多糖類であるスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項2】
前記多糖類が、アルギン酸及び/又は硫酸化アルギン酸である請求項1に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項3】
前記ホスホン酸又はホスホン酸塩の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項4】
前記ホスホン酸又はホスホン酸塩が、ホスホン酸基を少なくとも二つ含むホスホン酸系化合物又はホスホン酸塩系化合物である請求項1に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項5】
化学式Li1+XMn2-X-Y(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはMg又はAlである。)で表される請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項6】
無機リン化合物を含有し、無機リン化合物の含有量Zが0<Z≦5.0%質量である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項7】
無機リン化合物を含有し、無機リン化合物がLiPOである請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項8】
BET比表面積が0.3m/g以上2.0m/g以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項9】
二次粒子の平均粒子径が3μm以上20μm以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項10】
一次粒子の平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項11】
XRD測定による(400)面の半値幅が0.005°以上0.1°以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項12】
SOの含有量が0.8質量%以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項13】
ホウ素の含有量が2,000wtppm以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項14】
マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム源及びマグネシウム源の少なくとも1つを含む金属源を含む組成物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物にホスホン酸又はホスホン酸塩を含有させる工程と、を有する請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項15】
焼成後、水洗によりホウ素を100wtppm以上1,500wtppm以下まで除去する請求項14に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項16】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含む電極。
【請求項17】
請求項16に記載の電極を正極に有するリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途に関するものであり、より詳しくは、ホスホン酸又はホスホン酸塩を含有するスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法、並びにこれを電極に用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は他の蓄電池に比べてエネルギー密度が高いことから、携帯端末用の蓄電池として幅広く使用されている。また、最近では、定置用や車載用といった大型で大容量と高出力が必要とされる用途への適用等、更なる高性能化を目指した研究が進められている。
【0003】
現在のリチウムイオン二次電池の正極材料には、携帯電話等の民生用小型電池には主にコバルト系材料(LiCoO)が使用されており、また、定置用や車載用にはニッケル系材料(LiNi0.8Co0.15Al0.05)やニッケル-コバルト-マンガン三元系材料(LiNi0.5Co0.2Mn0.3等)などのコバルト/ニッケル系材料が主に使用されている。しかし、コバルト原料やニッケル原料は資源的に多くないため高価である。また、コバルト/ニッケル系材料は出力特性があまり高くない。
【0004】
一方、マンガン系材料の一つであるスピネル型マンガン酸リチウムは、原料のマンガンが資源的に豊富で安価であり、また、出力特性と安全性に優れることから、大型電池や高出力を必要とする用途に適した材料の一つである。
【0005】
しかしながら、スピネル型マンガン酸リチウムは高温安定性、すなわち、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性や保存特性に問題がある。この課題の解決が望まれていた。例えば、無機リン化合物を含有したスピネル型マンガン酸リチウム(特許文献1)や、酸性リン酸エステル又はキレート能を有する有機化合物で被覆したスピネル型マンガン酸リチウム(特許文献2)が提案されている。しかしながら、これらのマンガン系材料は、高温における充放電特性や保存特性に改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5556983号公報
【文献】特開2006-139945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性及び保存特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウムを提供するものであり、さらには、スピネル型マンガン酸リチウムを正極に用いるリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示において、スピネル型マンガン酸リチウムについて検討を重ねた。その結果、スピネル型マンガン酸リチウムに特定の物質を含有させることで、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明は特許請求の範囲のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
(1)ホスホン酸又はホスホン酸塩を含有するスピネル型マンガン酸リチウム。
(2)前記ホスホン酸又はホスホン酸塩が、アミノ基とホスホン酸基を有するアミノホスホン酸系化合物又はアミノホスホン酸塩系化合物である上記(1)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(3)前記ホスホン酸又はホスホン酸塩が、NH3-X(RPO(式中、1≦X≦3であり、Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基である。)で示されるアミノホスホン酸系化合物、又は、NH3-x(RPO6-y(式中、1≦X≦3、0≦Y≦6であり、Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基、Mはアルカリ金属又はアンモニウムである。)で示されるアミノホスホン酸塩系化合物である上記(1)又は(2)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(4)前記ホスホン酸又はホスホン酸塩が、ホスホン酸基を少なくとも二つ含むホスホン酸系化合物又はホスホン酸塩系化合物である上記(1)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(5)前記ホスホン酸又はホスホン酸塩が、ホスホン酸又はホスホン酸塩部位を含む多糖類である上記(1)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(6)前記多糖類が、アルギン酸及び/又は硫酸化アルギン酸である上記(5)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(7)化学式Li1+XMn2-X-Y(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはMg又はAlである。)で表される上記(1)~(6)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(8)無機リン化合物を含有し、無機リン化合物の含有量Zが0<Z≦5.0%質量である上記(1)~(7)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(9)二次粒子の平均粒子径が3μm以上20μm以下である上記(1)~(8)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(10)一次粒子の平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下である上記(1)~(9)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(11)XRD測定による(400)面の半値幅が0.005°以上0.1°以下である上記(1)~(10)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(12)SOの含有量が0.8質量%以下である上記(1)~(11)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(13)ホウ素の含有量が2,000wtppm以下である上記(1)~(12)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(14)マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム源及びマグネシウム源の少なくとも1つを含む金属源を含む組成物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物にホスホン酸又はホスホン酸塩を含有させる工程と、を有する上記(1)~(13)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
(15)焼成後、水洗によりホウ素を100wtppm以上1,500wtppm以下まで除去する上記(14)に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
(16)上記(1)~(13)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含む電極。
(17)上記(16)に記載の電極を正極に有するリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、リチウムイオン二次電池(以下、「LIB」ともいう。)の電極として使用した際に、高温における電池特性、特にカーボン対極充放電特性及び保存特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウム、及び、その製造方法を提供することができる。さらには、該スピネル型マンガン酸リチウムを用いた電極、またはLIBを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示について、一実施形態を示して詳細に説明する。本実施形態における構成及びパラメータは任意の組合せとすることができ、また、本実施形態で開示した値の上限及び下限は任意の組合せとすることができる。
【0011】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウム(以下、「LMO」ともいう。)は、ホスホン酸又はホスホン酸塩を含有する。そのため、本実施形態のLMOはホスホン酸又はホスホン酸塩(以下、「ホスホン酸等」ともいう。)含有LMOとみなしてもよい。ホスホン酸等は、本実施形態の効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、ホスホン酸、ホスホン酸塩、及び、ホスホン酸構造(-PO3-x(式中、0≦x≦3))を含む化合物の群から選ばれる1以上であればよい。
【0012】
ホスホン酸構造を含む化合物は、化合物中に少なくとも二つ以上のホスホン酸構造を有していてもよく、ホスホン酸基を少なくとも二つ含むホスホン酸系化合物又はホスホン酸塩系化合物であることが好ましい。
【0013】
ホスホン酸等は、例えば、モノホスホン酸、ジホスホン酸、ポリホスホン酸、アミノ基とホスホン酸を有するアミノホスホン酸系化合物、ホスホン酸部位を含む多糖類、モノホスホン酸塩、ジホスホン酸塩、ポリホスホン酸塩、アミノ基とホスホン酸塩基を有するアミノホスホン酸塩系化合物、及び、ホスホン酸塩部位を含む多糖類の群から選ばれる1以上が例示できる。高温における電池特性を向上させる効果が高いため、アミノ基とホスホン酸塩基を有するアミノホスホン酸塩系化合物、ホスホン酸塩部位を含む多糖類、及び、ジホスホン酸塩の群から選ばれる1以上が好ましい。
【0014】
モノホスホン酸は、メチルホスホン酸及びフェニルホスホン酸の少なくともいずれかが例示できる。ジホスホン酸は、メチレンジホスホン酸、プロピレンジホスホン酸、フェニレンジホスホン酸及びヒドロキシエタンジホスホン酸の群から選ばれる1以上が例示できる。ポリホスホン酸は、フィチン酸が例示できる。モノホスホン酸塩は、メチルホスホン酸塩及びフェニルホスホン酸塩の少なくともいずれかが例示できる。ジホスホン酸塩は、メチレンジホスホン酸塩、プロピレンジホスホン酸塩、フェニレンジホスホン酸塩及びヒドロキシエタンジホスホン酸塩の群から得らばれる1以上が例示できる。ポリホスホン酸塩は、フィチン酸塩が例示できる。
【0015】
アミノ基とホスホン酸を有するアミノホスホン酸系化合物は、NH3-X(RPO(式中、1≦X≦3であり、Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基である。)で示されるアミノホスホン酸系化合物が挙げられ、アミノメチルホスホン酸、イミノビス(メチレンホスホン酸)及びニトリロトリス(メチレンホスホン酸)の群から選ばれる1以上が好ましく、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)がより好ましい。アミノ基とホスホン酸基を有するアミノホスホン酸塩系化合物は、NH3-X(RPO6-Y(式中、1≦X≦3、0≦Y≦6であり、Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基、Mはアルカリ金属又はアンモニウムである。)で示されるアミノホスホン酸塩系化合物であればよく、アミノメチルホスホン酸塩、イミノビス(メチレンホスホン酸塩)及びニトリロトリス(メチレンホスホン酸塩)の群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0016】
アミノ基とホスホン酸基を有するアミノホスホン酸系化合物、アミノ基とホスホン酸塩基を有するアミノホスホン酸塩系化合物は、それぞれ、アミノ基を複数有していてもよく、それぞれ、ホスホン酸基と2以上のアミノ基を有するアミノホスホン酸系化合物、及び、ホスホン酸基と2以上のアミノ基を有するアミノホスホン酸塩系化合物であってもよく、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)塩、[1,6-ヘキサンジイルビス[ニトリロビス(メチレン)]]テトラキスホスホン酸及び[1,6-ヘキサンジイルビス[ニトリロビス(メチレン)]]テトラキスホスホン酸塩の群から選ばれる1以上が例示できる。
【0017】
ホスホン酸又はホスホン酸塩部位を含む多糖類における多糖類は、アルギン酸誘導体、更にはアルギン酸及び硫酸化アルギン酸の少なくともいずれかが例示できる。これらは1種でも2種以上でもよい。
【0018】
ホスホン酸塩は、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩の少なくともいずれかが例示でき、アルカリ金属塩は、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩の少なくともいずれかが例示でき、リチウム塩及びナトリウム塩の少なくともいずれかが好ましい。
【0019】
ホスホン酸等がLMOに含有されることにより、LIBの正極活物質として使用した際に優れた電池性能を示し、特に高温において優れた充放電特性及び保存特性を得ることが可能となる。
【0020】
ホスホン酸塩は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)及びヒドロキシエタンジホスホン酸の少なくともいずれか、並びに、その塩が好ましく、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)及びヒドロキシエタンジホスホン酸の少なくともいずれかの塩がより好ましい。
【0021】
本実施形態のLMOに含有されるホスホン酸等は、LMOの二次粒子の表面又は内部に、粒子状又は皮膜状に存在することが好ましい。
【0022】
ホスホン酸等の平均粒子径は0.1μm以上、1μm以上、2μm以上又は3μm以上であり、また、20μm以下、10μm以下又は9μm以下であることが挙げられ、0.1μm以上20μm以下、1μm以上10μm以下、又は、3μm以上9μm以下であることが好ましい。平均粒子径はレーザー回折・散乱法または電子顕微鏡観察で求めることができる。
【0023】
本実施形態のLMOは、化学式Li1+XMn2-X-Y(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはMg又はAlである。)で表されることが好ましい。
【0024】
本実施形態のLMOは、無機リン化合物を含んでいてもよい。本実施形態のLMOは無機リン化合物の含有量Zが0≦Z≦5.0質量%で表される組成であること、すなわち無機リン化合物の含有量が0質量%以上5.0質量%以下であること、更には無機リン化後物の含有量が0質量%超5.0質量%以下であることが好ましい。これにより、本実施形態のLMOをLMOの正極活物質として使用した際に、高温において優れた充放電特性及び保存特性が得るとともに、十分な充放電容量を得ることが可能となる。
【0025】
無機リン酸化物の含有量は、本実施形態のLMOの質量に対する、本実施形態のLMOに含まれるリンの合計量から、ホスホン酸等に含まれるリンを除いた量を、ホスホン酸リチウム(LiPO)換算した値(質量%)として求めればよい。
【0026】
無機リン化合物を含む場合、本実施形態のLMOは、LMO及び無機リン化合物を含むマンガン酸リチウム組成物、更にはLMOと無機リン化合物からなるマンガン酸リチウム組成物、また更にはホスホン酸等を含有するLMOと、無機リン化合物とを含むマンガン酸リチウム組成物、また更にはホスホン酸等を含有するLMOと、無機リン化合物とからなるマンガン酸リチウム組成物、とみなしてもよい。
【0027】
無機リン化合物の含有量は0質量%以上であればよく、無機リン化合物が本実施形態のLMOに含まれていなくともよい。X、Y、Zは組成分析から求めることができ、組成分析の方法は、誘導結合プラズマ発光分析、原子吸光分析等が例示でき、誘導結合プラズマ発光分析であればよい。
【0028】
無機リン化合物は、リン酸塩が好ましく、例えば、リン酸のアルカリ金属塩、リチウムのリン酸塩、更にはナトリウムのリン酸塩及びカリウムのリン酸塩の群から選ばれる1以上挙げられ、好ましくはLiPO、LiPO3、NaPO4、NaHPO、NaHPO、KPO、KHPO及びKHPOの群から選ばれる1以上、より好ましくはLiPO及びLiPOの少なくともいずれか、更に好ましくはLiPOである。
【0029】
本実施形態のLMOの二次粒子の平均粒子径(以下、「平均二次粒子径」ともいう。)は3μm以上又は5μm以上であり、また、20μm以下、12μm以下又は10μm以下であることが挙げられ、3μm以上20μm以下、5μm以上12μm以下、又は、5μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、LIBの正極活物質として使用した際に、LMO粒子内のリチウム拡散距離がより小さくなり、より優れた出力特性を得ることが可能になるとともに、正極合剤の充填性をより高くすることが可能となる。
【0030】
本実施形態のLMOの一次粒子の平均粒子径(以下、「平均一次粒子径」ともいう。)は、0.5μm以上又は1.0μm以下であり、また、3.0μm以下又は2.0μm以下であることが挙げられ、0.5μm以上3.0μm以下、又は、1.0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。これにより、LIBの正極活物質として使用した際に高温において優れた充放電特性を得るとともに、優れた出力特性を得ることが可能となる。なお、本実施形態のLMOは、平均一次粒子径が平均二次粒子径以下であること、更には平均一次粒子径が平均二次粒子径未満であること、が挙げられる。
【0031】
ここで、「二次粒子」とはLMOの一次粒子同士が凝集して焼結した粒子であり、「一次粒子」とは独立した結晶粒子である。
【0032】
本実施形態における平均二次粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定される二次粒子径の平均値であり、これは粒度分布測定装置(例えば、MicrotracBEL製 MT3000II)を使用した以下の条件で測定されるD50径である。
分散媒 : 水
屈折率 : 2.20
測定近似: 非球形近似
本実施形態における平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡―エネルギー分散型X線分析(SEM-EDS)により測定されるLMOの一次粒子の平均径であり、これはSEM-ED(例えば、FE-SEM JSM-7600F、日本電子製)を使用した以下の条件で得られるSEM観察図又は元素マッピングの解析により得られる値である。
加速電圧 : 5kV
観察倍率 : 3000倍~5000倍
また、元素マッピングを取る場合は以下の元素をマッピングすればよい。
マッピング元素 : リン
得られたSEM観察図又は元素マッピングを、一般的な画像解析ソフト(例えば、ImageJ)を使用して平均一次粒子径を求めればよい。
【0033】
本実施形態のLMOのXRD測定による(400)面の半値幅(以下、単に「半値幅」ともいう。)は、0.005°以上であり、また、0.1°以下、0.07°以下又は0.06°以下であることが挙げられ、0.005°以上0.1°以下、0.005°以上0.06°以下であることが好ましい。これにより、結晶性が高くなり、LIBの正極活物質として使用した際のマンガン溶出が抑制されるとともに、充放電に伴う結晶構造変化が抑制され、高温において優れた充放電特性及び保存特性を得ることが可能となる。
【0034】
半値幅は、実施例の<XRDによる半値幅の測定>に記載した方法により測定すればよい。すなわち、測定装置(例えば、Ultima IV、Rigaku社製)を使用し、以下の条件で測定して、粉末X線回折パターン(XRDパターン)を得る。
ターゲット(光源) : CuKα
出力 : 1.6kW(40mA-40kV)
フィルター : Kβフィルター
発散スリット : 1°
発散縦制限スリット : 10mm
散乱スリット : 解放
受光スリット : 解放
走査モード : 連続
スキャンスピード : 4.000°/分
サンプリング幅 : 0.04°(2θ/θ)
積算回数 : 1回
測定範囲 : 10~90°(2θ/θ)
得られたXRDパターン(XRDデータ)は解析ソフト(例えば、PDXL2)を使用して解析し、2θ=44.05±0.05°にピークトップを有するXRDピークを(400)面のピークとみなし、その積分幅を求める。得られた積分幅から標準物質(α型石英粉末、NIST製)の半値幅を差し引くことで、装置誤差を補正し、得られる値半値幅とすればよい。
【0035】
本実施形態のLMOのBET比表面積は0.3m/g以上又は0.5m/g以上であり、また2.0m/g以下又は1.5m/g以下であることが挙げられ、0.3m/g以上2.0m/g以下、又は、0.5m/g以上1.5m/g以下であることが好ましい。これにより、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性に優れるとともに出力特性に優れるLMOとなる。
【0036】
BET比表面積は、一般的な測定装置(例えば、Macsorb、MOUNTECH製)で、吸着ガスに窒素30%-ヘリウム70%の混合ガスを使用し、1点法で測定すればよい。
【0037】
本実施形態のLMOのリンの含有量は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、1.0質量%以上又は1.2質量%以上であり、また、2.1質量%以下、2.0質量%以下、1.9質量%以下又は1.8質量%以下であり、0.1質量%以上2.1質量%以下、0.2質量%以上2.0質量%以下、1.0質量%以上1.9質量%以下、又は、1.2質量%以上1.8質量%以下であることが好ましい。これにより、LIBの正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることができる。
【0038】
本実施形態のLMOのSOの含有量は、0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下又は0.4質量%以下であることがより好ましい。これにより、LMOの正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることができる。SOの含有量は0質量%以上であることが挙げられ、0.01質量%以上又は0.02質量%以上であることが例示でき、0.01質量%以上0.8質量%以下、0.01質量%以上0.5質量%以下、又は、0.02質量%以上0.4質量%以下であることが好ましい。
【0039】
LMOに含有されるSOの状態は限定されるものではなく、例えば、硫酸イオン及びSO基を含む化合物の少なくともいずれかが挙げられ、LiSO及びNaSOの少なくともいずれかが好ましい。
【0040】
本実施形態のLMOは、ホウ素(B)を含んでいてもよく、ホウ素の含有量がまた、2,000wtppm以下、500wtppm以下又は300wtppm以下であることが好ましい。これにより、LIBの正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた充放電特性及び保存特性を得ることができる。
【0041】
ホウ素の含有量は0wtppm、すなわち本実施形態のLMOがホウ素を含まなくてもよい。ホウ素の含有量は0wtppm以上、0wtppm超、50wtppm以上又は100wtppm以上であることが挙げ、れ、0wtppm以上2000wtppm以下、50wtppm以上500ppm以下、又は、100wtppm以上300wtppm以下が好ましい。
【0042】
含有されるホウ素の状態は限定されるものではなく、例えば、ホウ素金属、ホウ素を含む化合物及びホウ素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つ、更にはB及びLiの少なくともいずれか、が例示できる。ホウ素の含有量は、LMOに含有されるマンガンに対する含有量である。
【0043】
リン(P)、SO、ホウ素(B)の含有量(質量%)は、それぞれ、一般的なICP装置(例えば、ICP-AES、パーキンエルマージャパン製)を使用したICP測定により求めることできる。また、SOの含有量(質量%)は、LMOの質量に対する、LMOに含まれるS元素をSO換算した質量の割合(質量%)であり、ICP測定で求まるS元素の濃度(質量%)に、SO/S(原子量比)をかけてSO換算することで求めることができる。
【0044】
次に、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法について説明する。
【0045】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1つを含む金属源を混合して混合物を得る混合工程と、該混合物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物にホスホン酸又はホスホン酸塩を含有させる工程、によって製造することができる。なお、無機リン化合物を含むスピネル型マンガン酸リチウムを製造する場合は、混合工程では、マンガン源、リチウム源及び金属源のほかに、無機リン化合物も混合して混合物を得ることができる。以下に同じである。
【0046】
また、本実施形態のLMOの他の製造方法として、スピネル型リチウムマンガンにホスホン酸又はホスホン酸塩を含有させる工程、を有する製造方法、が挙げられる。
【0047】
混合工程では、マンガン源、リチウム源、並びに、アルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1つを含む金属源を混合して混合物を得る。マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1つを含む金属源が均一に混合されれば、混合方法は湿式混合又は乾式混合のいずれであってもよい。より均一な混合粉末が得られるため、混合方法は湿式混合であることが好ましい。
【0048】
マンガン源はマンガン(Mn)を含む化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、マンガン酸化物及びマンガン有機酸塩の少なくともいずれかが挙げられ、MnO、Mn、Mn及び酢酸マンガンの群から選ばれる1以上、更にはMnO及びMnの少なくともいずれかが挙げられる。
【0049】
リチウム源はリチウム(Li)を含む化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム及びシュウ酸リチウムの群から選ばれる1以上のリチウム塩が挙げられ、炭酸リチウム及び水酸化リチウムの少なくともいずれかが好ましく、炭酸リチウムがより好ましい。
【0050】
金属源は、アルミニウム源及びマグネシウム源の少なくともいずれかを含む。
【0051】
アルミニウム源は、例えば、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウムの少なくともいずれかが好ましい。
【0052】
マグネシウム源としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくともいずれかが好ましい。
【0053】
無機リン化合物は、例えば、LiPO、HPO、LiPO、NaPO4、NaHPO、NaHPO、KPO、KHPO、KHPO、Mg(PO、MgHPO、Mg(HPO、NHPO及び(NHHPOの群から選ばれる1以上が挙げられる。LIBの正極活物質として使用した際に不純物の析出が生じにくいため、無機リン化合物はLiPOであることが好ましい。
【0054】
なお、無機リン化合物の含有量は、ICP測定で求めた、ホスホン酸等を有する化合物を含有させる工程の前のLMOのP元素の濃度(質量%)に、LiPO/P(原子量比)をかけてLiPO換算することで算出すればよい。
【0055】
混合物は、必要に応じてバインダー、導電助剤、その他の添加物を含んでいてもよい。例えば、混合物はホウ素化合物を含んでいることが好ましい。ホウ素化合物は融剤として機能するため、本実施形態のLMOの一次粒子径が増大しやすくなる。ホウ素化合物はホウ素の化合物であれば特に制限はなく、例えば、HBO、B及びLiO・nB(nは1以上5以下)の群から選ばれる1以上が挙げられ、HBOが好ましい。
【0056】
焼成工程は、混合工程で得られた混合物を焼成することにより、焼成物を得る工程であり、これによりLMOが焼成物として得られる。焼成温度は、750℃以上970℃以下で行う。焼成温度が750℃未満では、得られるLMOの半値幅が大きくなる。その結果、LIBの正極活物質として使用した際にマンガンが溶出しやすく、充放電特性及び保存特性が低下しやすい。焼成温度が970℃を超えると、得られるLMOの酸素欠損が増加する。その結果、LIBの正極活物質として使用した際に充放電特性及び保存特性が低下しやすい。焼成温度は780℃以上950℃以下で行うことが好ましい。焼成時間は、焼成に供する混合物の量や焼成炉の性能等により適宜設定すればよいが、LMOが得られ、かつ、製造コストを下げるため、3時間以上12時間以下であることが好ましい。
【0057】
焼成雰囲気は特に限定されないが、例えば、大気中又は高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中を含む)が挙げられる。焼成は、酸素含有量が18体積%以上であり、また、100体積%以下又は60体積%以下であることが挙げられ、18体積%以上100体積%以下、又は、18体積%以上60体積%以下の酸素雰囲気中で行うことが好ましい。
【0058】
高温における充放電サイクル特性向上のため、焼成工程の後、水洗し、LMOからホウ素を除去することが好ましい。水洗は、水洗後のLMOのホウ素の含有量が0wtppm以上、50wtppm以上又は100wtppm以上であり、また、2000wtppm以下、1500wtppm以下又は300wtppm以下となるように行うことが好ましく、0wtppm以上2000wtppm以下、50wtppm以上500wtppm以下、又は、100wtppm以上1,500wtppm以下となるように行うことが好ましい。
【0059】
ホスホン酸等を含有させる工程は、焼成工程で得られた焼成物(LMO)にホスホン酸等を含有させる工程である。これにより、本実施形態のLMO、すなわちホスホン酸等含有LMO、が得られる。焼成物へホスホン酸等を含有させる方法は特に限定されないが、例えば、焼成物にホスホン酸等の粉末を添加してせん断力を加える乾式法や、ホスホン酸等を溶解した溶液と焼成物を混合した後、乾燥して溶媒を除去する湿式法、が挙げられる。
【0060】
焼成物に含有させるホスホン酸等は、ホスホン酸構造を有するものであればよく、モノホスホン酸、ジホスホン酸、ポリホスホン酸、アミノ基とホスホン酸を有するアミノホスホン酸系化合物、ホスホン酸部位を含む多糖類、モノホスホン酸塩、ジホスホン酸塩、ポリホスホン酸塩、アミノ基とホスホン酸塩基を有するアミノホスホン酸塩系化合物、及び、ホスホン酸塩部位を含む多糖類の群から選ばれる1以上が例示される。高温における電池特性を向上させる効果が高いため、アミノ基とホスホン酸塩基を有するアミノホスホン酸塩系化合物、ホスホン酸塩部位を含む多糖類、及び、ジホスホン酸塩群から選ばれる1以上が好ましい。
【0061】
モノホスホン酸、ジホスホン酸、ポリホスホン酸、モノホスホン酸塩、ジホスホン酸塩、リホスホン酸塩は、フィチン酸塩、アミノ基とホスホン酸を有するアミノホスホン酸系化合物、及び、アミノ基とホスホン酸基を有するアミノホスホン酸塩系化合物は、それぞれ、上述したものと同様なものを使用すればよい。
【0062】
ホスホン酸又はホスホン酸塩部位を含む多糖類における多糖類、及びホスホン酸塩中の塩は、上述したものと同様なものであればよい。
【0063】
LMOは、焼成時に二次粒子同士が固結し易い。目的の粒子径を得るために解砕を行うことが好ましい。解砕方法は、微粉生成をより抑制するため、せん断力による解砕が好ましい。
【0064】
LMOは、正極の厚みを超える粗大粒子を除去するため、篩を通過させることが好ましい。篩の目開きは200μm以下又は150μm以下であることが好ましく、60μm以上200μm以下、又は、60μm以上150μm以下であればよい。
【0065】
本実施形態のホスホン酸等を含有したLMOをLIBの正極活物質、更にはこれを含む正極とすることで、従来では得ることができなかった、高温における充放電特性及び保存特性に優れるLIBを構成することが可能になる。
【0066】
正極以外のLIBの構成は特に制限はないが、負極活物質はLiを吸蔵放出する材料、例えば、炭素系材料、酸化錫系材料、LiTi12、SiO、及び、Liと合金を形成する材料の群から選ばれる1以上が挙げられる。Liと合金を形成する材料として、シリコン系材料及びアルミニウム系材料の少なくともいずれかが挙げられる。電解質は、例えば、有機溶媒にLi塩や各種添加剤を溶解した有機電解液や、Liイオン伝導性の固体電解質、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【実施例
【0067】
次に、本開示を具体的な実施例で説明するが、本開示はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0068】
<組成分析>
実施例および比較例で得られたLMOの組成、SO含有量、ホウ素含有量、リン酸塩含有量は、誘電結合プラズマ発光分析装置(商品名:ICP-AES、パーキンエルマージャパン製)を使用し、上述したICP測定により行った。
【0069】
無機リン化合物の含有量は、ホスホン酸等を有する化合物を含有させる工程の前にICP測定で求めたP元素の濃度(質量%)に、LiPO/P(原子量比)をかけてLiPO換算することで算出した。また、Al含有量は加圧酸分解を行い、上記装置によって分析した。
【0070】
<BET比表面積の測定>
処理後の試料を、BET測定装置(商品名:Macsorb、MOUNTECH製)で、吸着ガスに窒素30%-ヘリウム70%の混合ガスを使用し、1点法でBET比表面積の測定を行った。
【0071】
試料1.0gを使用し、BET比表面積測定用のガラスセルに入れ、窒素気流下で150℃、最低20分間脱水処理を行い、粉末に付着した水分の除去を行い前処理とした。
【0072】
<平均二次粒子径の測定>
粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)を使用し、LMOの平均二次粒子径(D50)を測定した。測定時の分散媒は純水を使用した。
【0073】
<平均一次粒子径の測定>
電界放射型走査電子顕微鏡(商品名:FE-SEM JSM-7600F、日本電子製)によるSEM観察図から、LMOの一次粒子の平均粒子径を求めた。
【0074】
<ホスホン酸等の平均粒子径の測定>
ホスホン酸又はホスホン酸塩を含有させる方法として乾式法を用いた場合は、粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)を使用してホスホン酸又はホスホン酸塩の平均粒子径(D50)を測定した。測定時の分散媒はエタノールを使用し、超音波を5分間照射して分散させた後、測定を行った。
【0075】
また、ホスホン酸又はホスホン酸塩を含有させる方法として湿式法を用いた場合は、ホスホン酸等を含有するLMOの電界放射型走査電子顕微鏡(商品名:FE-SEM JSM-7600F、日本電子製)によるSEM-EDS像からホスホン酸等の平均粒子径を求めた。
【0076】
<半値幅の測定>
半値幅は、粉末X線回折測定装置(商品名:Ultima IV、Rigaku製)を使用し、以下の条件で測定したXRDパターンから、上述の方法で求めた。
・ターゲット(線源) :CuKα
・出力 :1.6kW(40mA-40kV)
・フィルタ :Kβフィルター
・発散スリット :1°
・発散縦制限スリット :10mm
・散乱スリット :解放
・受光スリット :解放
・走査モード :連続
・スキャンスピード :4.000°/分
・サンプリング幅 :0.04°(2θ/θ)
・積算回数 :1回
・測定範囲 :10-90°(2θ/θ)
得られたXRDデータパターンを、粉末X線回折測定装置に付属の解析ソフト(PDXL2)を用いて解析し、2θ=44°付近の(400)面の積分幅を求めた。
【0077】
また、測定装置の誤差を補正するため、予めXRD用標準物質(NIST製α型石英粉末)の測定を行い、LMOの積分幅から標準物質の積分幅を差し引いて半値幅を求めた。
【0078】
<初期容量の測定>
正極は以下の方法で作製した。すなわち、LMO4.7gとアセチレンブラック(商品名:デンカブラック、デンカ製)0.15gと10wt%ポリフッ化ビニリデン/N-メチル-2-ピロリドン溶液1.5g(ポリフッ化ビニリデン0.15g)とN-メチル-2-ピロリドン1.23mL(質量比でスピネル型マンガン酸リチウム:アセチレンブラック:ポリフッ化ビニリデン=94:3:3)を自転公転ミキサー(商品名:AR-310、シンキー製)で混合して正極合材スラリーを作製した。得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔に塗布し、120℃で20分乾燥後、トムソン刃で長さ60mm×幅30mmに打ち抜き、正極合剤の密度が2.5g/cmとなるようにロールプレスを行った。ロールプレスした後、正極合材塗布部分の上端長さ10mm×幅30mmを剥がし、120℃で5時間真空乾燥を行い、アルミニウムタブをスポット溶接した。塗布量はLMOが15.0mg/cmとなるようにした。
【0079】
負極は以下の方法で作製した。すなわち、人造黒鉛4.0gと10wt%ポリフッ化ビニリデン/N-メチル-2-ピロリドン溶液2.1g(ポリフッ化ビニリデン0.21g)とN-メチル-2-ピロリドン3.2mL(質量比で黒鉛:ポリフッ化ビニリデン=95:5)を自転公転ミキサー(商品名:AR-310、シンキー製)で混合して負極合剤スラリーを作製した。得られた負極合剤スラリーを銅箔に塗布し、120℃で20分乾燥後、トムソン刃で長さ62mm×幅32mmに打ち抜き、負極合剤の密度が1.5g/cmとなるようにロールプレスを行った。ロールプレスした後、負極合剤塗布部分の上端長さ10mm×幅32mmを剥がし、120℃で5時間真空乾燥を行い、ニッケルタブをスポット溶接した。塗布量は黒鉛の量が5.5mg/cmとなるようにした。
【0080】
正極、負極と、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)にLiPFを1mol/dmとビニレンカーボネートを1wt%溶解した電解液0.24mLと、セパレータ(製品名:LIB用セラミックコーティング湿式セパレータSH716E14、Shenzhen Senior Technology Material製)を用いて単層ラミネートセルを作製した。
【0081】
作製した電池(LIB)を用いて、24℃において、セル電圧4.2Vと3.0Vの間で電流4.5mAで定電流定電圧充電-定電流放電を3サイクル行い、1サイクル目の充電容量を初期容量とし、3サイクル目の放電容量を電池容量とした。
【0082】
<充放電サイクル試験>
<初期容量の測定>で作製した電池を用いて、電池容量を測定し、次に、60℃で、セル電圧が4.2Vと3.0Vの間で、1、10、20、50、100サイクル目は電池容量に対し0.2時間放電率の電流、それ以外のサイクルでは電池容量に対し1時間放電率の電流において定電流定電圧充電-定電流放電を100サイクル行い、100サイクル目と1サイクル目の放電容量の比から充放電サイクル維持率を求めた。なお、定電圧充電の終了条件は、充電電流が定電流充電時の1/20まで減衰した時点とした。
【0083】
実施例1
電解二酸化マンガン1577g、炭酸リチウム369g、水酸化マグネシウム53g、ホウ酸2.8g(マンガンに対するホウ素の添加量:500wtppm)及びリン酸三リチウム63gを純水に加えて固形分濃度20wt%のスラリーを調製し、粉砕機(装置名:ダイノーミル、シンマルエンタープライズ製)で3時間、スラリーを粉砕した。粉砕後のスラリー中の混合物(電解二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸及びリン酸三リチウムの混合物)の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)により測定した結果、0.6μmであった。
【0084】
得られたスラリーをスプレードライヤー(株式会社プリス製)により噴霧圧0.3MPa、供給速度3000g/hr、乾燥温度は入口温度200℃、出口温度120℃で水を蒸発させ、D50が10μmである球状の顆粒乾燥粒子を得た。
【0085】
顆粒乾燥粒子200gを箱型炉にて空気を8L/minの速度で流通させながら850℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、12時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は850℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後120℃で乾燥してLMOを得た。
【0086】
次に、ホスホン酸塩を調製するため、純水10mlにニトリロトリス(メチレンホスホン酸(アルドリッチ製)3.0gと水酸化ナトリウム2.4gを添加して水溶液とし、120℃で蒸発乾固した後メノウ乳鉢で粉砕を行い、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)-6ナトリウム(以下、「NTMPO(6Na)」ともいう。)粉末を得た。
【0087】
次に、LMOにホスホン酸塩を含有させるため、NTMPO(6Na)粉末0.40gを純水6mLに溶解させ、LMO9.60gにスプレーで噴霧した後、120℃で乾燥してNTMPO(6Na)含有LMOを得た。
【0088】
得られたNTMPO(6Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0089】
実施例2
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Na)0.50gを粉末の状態でLMO9.50gに乳鉢で混合したこと以外は実施例1と同様の方法でNTMPO(6Na)含有LMOを得た。
【0090】
得られたNTMPO(6Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0091】
実施例3
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Na)の量を0.40g、LMOの量を9.60gとしたこと以外は実施例2と同様の方法でNTMPO(6Na)含有LMOを得た。
【0092】
得られたNTMPO(6Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0093】
実施例4
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Na)の量を0.14g、LMOの量を9.86gとしたこと以外は実施例2と同様の方法でNTMPO(6Na)含有LMOを得た。
【0094】
得られたNTMPO(6Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0095】
実施例5
ホスホン酸塩を調製する際に水酸化ナトリウムの量を2.0gとしてニトリロトリス(メチレンホスホン酸)-5ナトリウム(以下、「NTMPO(5Na)」ともいう。)を得たこと以外は実施例4と同様の方法でNTMPO(5Na)含有LMOを得た。
【0096】
得られたNTMPO(5Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0097】
実施例6
ホスホン酸としてニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(以下、「NTMPO」ともいう。)を用いたこと以外は実施例4と同様の方法でNTMPO含有LMOを得た。
【0098】
得られたNTMPO含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0099】
実施例7
ホスホン酸塩を調製する際にNTMPO50質量%水溶液4.80gと4mol/Lの水酸化リチウム水溶液12.0mLを混合して得た水溶液を用いてニトリロトリス(メチレンホスホン酸)-6リチウム(以下、「NTMPO(6Li)」ともいう。)粉末を得たことと、LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)粉末0.30gを純水11mLに溶解させてLMO9.70gにスプレーで噴霧したこと以外は実施例1と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0100】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、リン(P)の含有量が1,56質量%であり、また、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0101】
実施例8
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)の量を0.14gとしてスピネル型マンガン酸リチウム9.86gにスプレーで噴霧したこと以外は実施例7と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0102】
得られたNTMPO(6Li)含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0103】
実施例9
ホスホン酸塩を調製する際にNTMPO(6Li)粉末をジェットミルで粉砕したことと、LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)0.30gを粉末の状態でLMO9.70gに乳鉢で混合したこと以外は実施例7と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0104】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0105】
実施例10
ホスホン酸塩を調製する際にNTMPO(6Li)粉末をメノウ乳鉢で粉砕したことと、LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)の量を0.40g、LMOの量を9.60gとしたこと以外は実施例9と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0106】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0107】
実施例11
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)の量を0.30g、LMOの量を9.70gとしたこと以外は実施例10と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0108】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0109】
実施例12
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)の量を0.14g、LMOの量を9.84gとしたこと以外は実施例10と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0110】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0111】
実施例13
ホスホン酸塩を調製する際に4mol/Lの水酸化リチウム水溶液の量を10.0mLとしたこと以外は実施例12と同様の方法でニトリロトリス(メチレンホスホン酸)-5リチウム含有LMOを得た。
【0112】
得られたニトリロトリス(メチレンホスホン酸)-5リチウム含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0113】
実施例14
電解二酸化マンガン1532g、炭酸リチウム356g、水酸化アルミニウム68.7g、ホウ酸5.8g(マンガンに対するホウ素の添加量:1,000wtppm)及びリン酸三リチウム61gを純水に加えて固形分濃度20質量%のスラリーを調製し、粉砕機(商品名:ダイノーミル、シンマルエンタープライズ製)でこれを3時間粉砕した。粉砕後のスラリー中の混合物(電解二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸及びリン酸三リチウムの混合物)の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)により測定した結果、0.6μmであった。得られたスラリーをスプレードライヤー(株式会社プリス製)により噴霧圧0.2MPa、供給速度3000g/hr、乾燥温度は入口温度200℃、出口温度120℃で水を蒸発させ、D50が10μmである球状の顆粒乾燥粒子を得た。
【0114】
顆粒乾燥粒子200gを箱型炉にて空気を8L/minの速度で流通させながら850℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、12時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は850℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後120℃で乾燥してLMOを得た。
【0115】
次に、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)50%水溶液4.80gと4mol/Lの水酸化リチウム水溶液12.0mLを混合して得た水溶液を120℃で蒸発乾固した後メノウ乳鉢で粉砕を行い、NTMPO(6Li)粉末を得た。
【0116】
次に、NTMPO(6Li)粉末0.30gとLMO9.70gを乳鉢で混合し、NTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0117】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.08Mn1.82Al0.10で、リン酸三リチウムの含有量は3.4質量%であった。
【0118】
実施例15
電解二酸化マンガン1533g、炭酸リチウム350g、水酸化アルミニウム69g及びホウ酸5.8g(マンガンに対するホウ素の添加量:1000wtppm)を純水に加えて固形分濃度20質量%のスラリーを調製し、これを粉砕機(商品名:ダイノーミル、シンマルエンタープライズ製)で3時間粉砕した。粉砕後のスラリー中の混合物(電解二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム及びホウ酸の混合物)の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)により測定した結果、0.6μmであった。得られたスラリーをスプレードライヤー(株式会社プリス製)により噴霧圧0.2MPa、供給速度3000g/hr、乾燥温度は入口温度200℃、出口温度120℃で水を蒸発させ、D50が10μmである球状の顆粒乾燥粒子を得た。
【0119】
顆粒乾燥粒子200gを箱型炉にて空気を8L/minの速度で流通させながら850℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、12時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は850℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後120℃で乾燥してLMOを得た。
【0120】
次に、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)50%水溶液4.80gと4mol/Lの水酸化リチウム水溶液12.0mLを混合して得た水溶液を120℃で蒸発乾固した後ジェットミル粉砕を行い、NTMPO(6Li)粉末を得た。
【0121】
次に、NTMPO(6Li)粉末0.50gとLMO9.50gを乳鉢で混合し、NTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0122】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.07Mn1.83Al0.10であった。
【0123】
実施例16
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にNTMPO(6Li)粉末の量を0.40gとLMO9.60gとしたこと以外は実施例15と同様の方法でNTMPO(6Li)含有LMOを得た。
【0124】
得られたNTMPO(6Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.07Mn1.83Al0.10であった。
【0125】
実施例17
ホスホン酸塩を調製する際に、市販のヒドロキシエタンジホスホン酸-4ナトリウム(以下、「HEDPO(4Na)」ともいう。)水溶液を120℃で蒸発乾固した後メノウ乳鉢で粉砕を行いHEDPO(4Na)粉末を得たことと、LMOにホスホン酸塩を含有させる際にHEDPO(4Na)粉末0.40gとLMO9.60gを乳鉢で混合したこと以外は実施例1と同様の方法でHEDPO(4Na)含有LMOを得た。
【0126】
得られたHEDPO(4Na)含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0127】
実施例18
LMOにホスホン酸塩を含有させる際にHEDPO(4Na)量を0.30g、LMO量を9.70gとしたこと以外は実施例17と同様の方法でHEDPO(4Na)含有LMOを得た。
【0128】
得られたHEDPO(4Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0129】
実施例19
純水100mlに水素イオン形アルギン酸(商品名:キミカアシッドG、株式会社キミカ製)2.0(単糖ユニットとして11.4mmol)を撹拌下少量ずつ添加し、白色糊状均一分散液を作製した。次いで、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)50%水溶液(東京化成製)5.2ml(11.4mmol)と1N水酸化ナトリウム水溶液(富士フィルム和光純薬製)68.4ml(68.4mmol)を上記アルギン酸分散液に添加、撹拌した。この水溶液を室温にて1時間撹拌した後、アセトン4Lに滴下し、沈殿を生成させた。得られた沈殿物はろ過により回収し、更にアセトンで洗浄した後、減圧乾燥してニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸を得た。元素分析で求めた窒素含有量は1.8質量%、窒素含有量から算出したニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基含有量は1.3mmol/gであった。キレート基含有高分子化合物の分子量を水系GPCで測定した結果、重量平均分子量は320,000であった。
【0130】
次に、ホスホン酸塩をニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸(ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入量:1.3mmol/g)としたことと、スピネル型マンガン酸リチウムにホスホン酸塩を含有させる際にニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸量を0.30g、LMO量を9.70gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸含有LMOを得た。
【0131】
得られたニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo25.-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0132】
実施例20
電解二酸化マンガン766g、炭酸リチウム182g、水酸化アルミニウム37g及びホウ酸2.7g(マンガンに対するホウ素の添加量:1,000wtppm)を純水に加えて固形分濃度30質量%のスラリーを調製し、これを粉砕機(商品名:ダイノーミル、シンマルエンタープライズ製)で3時間粉砕した。粉砕後のスラリー中の混合物(電解二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム及びホウ酸の混合物)の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)により測定した結果、0.6μmであった。得られたスラリーをスプレードライヤー(株式会社プリス製)により噴霧圧0.1MPa、供給速度3000g/hr、乾燥温度は入口温度200℃、出口温度120℃で水を蒸発させ、D50が10μmである球状の顆粒乾燥粒子を得た。
【0133】
顆粒乾燥粒子200gを箱型炉にて空気を8L/minの速度で流通させながら900℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、12時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は900℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後120℃で乾燥してLMOを得た。
【0134】
ホスホン酸塩としてニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸(ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入量:1.4mmol/g)を用い、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸0.30gとスピネル型マンガン酸リチウム9.70gを乳鉢で混合してニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸含有LMOを得た。
【0135】
得られたニトリロトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム基導入アルギン酸含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.09Mn1.81Al0.10であった。
【0136】
実施例21
(ホスホン酸等を含有させる工程)
市販のHEDPO(4Na)水溶液を120℃で蒸発乾固した後ジェットミルで粉砕し、HEDPO(4Na)粉末を得た
得られたHEDPO(4Na)粉末0.40gと、実施例1と同様な方法で得たLMO9.60gを乳鉢で混合し、HEDPO(4Na)含有LMOを得、電池評価を行った。
【0137】
得られたHEDPO(4Na)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06であった。
【0138】
実施例22
(混合工程)
純水に電解二酸化マンガン3.066gと炭酸リチウム725gと水酸化アルミニウム137gとホウ酸11.5g(マンガンに対するホウ素の添加量:1.000wtppm)を加えて固形分濃度20wt%のスラリーを調製し、粉砕機で3時間粉砕した。電解二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム及びホウ酸の混合物の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置により測定した結果、0.6μmであった。得られたスラリーをスプレードライヤーにより噴霧圧0.1MPa、供給速度3000g/hr、乾燥温度は入口温度200℃、出口温度120℃で水を蒸発させ、D50が10μmである球状の顆粒乾燥粒子を得た。
(焼成工程)
顆粒乾燥粒子200gを箱型炉にて空気を8L/minの速度で流通させながら900℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、24時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は900℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後120℃で乾燥してLMOを得た。
(ホスホン酸等を含有させる工程)
ヒドロキシエタンジホスホン酸60質量%水溶液250mLと水酸化リチウム一水和物178.0gと純水1,500mLを混合して得た水溶液を60℃で蒸発乾固した後ジェットミルで粉砕を行い、ヒドロキシエタンジホスホン酸-4リチウム(以下、「HEDPO(4Li)」ともいう。)粉末を得た。
【0139】
得られたHEDPO(4Li)粉末3.0gと、LMO97.0gを乳鉢で混合した後、目開き40μmの篩を通して、HEDPO(4Li)含有LMOを得、電池評価を行った。
【0140】
得られたHEDPO(4Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.08Mn1.82Al0.10であった。
【0141】
実施例23
(ホスホン酸等を含有させる工程)
実施例22と同様な方法で得たHEDPO(4Li)粉末2.0g及びLMO98.0gを乳鉢で混合した後、目開き40μmの篩を通して、HEDPO(4Li)含有LMOを得、電池評価を行った。
【0142】
得られたHEDPO(4Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.08Mn1.82Al0.10であった。
【0143】
実施例24
(ホスホン酸等を含有させる工程)
実施例22と同様な方法で得たHEDPO(4Li)粉末1.0g及びLMO99.0gを乳鉢で混合した後、目開き40μmの篩を通して、HEDPO(4Li)含有LMOを得、電池評価を行った。
【0144】
得られたHEDPO(4Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.08Mn1.82Al0.10であった。
【0145】
実施例25
(ホスホン酸等を含有させる工程)
実施例22と同様な方法で得たHEDPO(4Li)粉末0.5g及びLMO99.5gを乳鉢で混合した後、目開き40μmの篩を通して、HEDPO(4Li)含有LMOを得、電池評価を行った。
【0146】
得られたHEDPO(4Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.08Mn1.82Al0.10であった。
【0147】
実施例26
(混合工程)
純水を60℃に加熱後、空気を吹き込みながら攪拌し、酸化還元電位が水素電極基準で100mVと一定になるようにしながら、2mol/Lの硫酸マンガン水溶液、及び、20wt%の水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ当該純水中に連続的に添加した後、得られたスラリーをろ過、洗浄、乾燥することにより平均粒子径3.8μmのMnを得た。
【0148】
得られたMn85.00gと、平均粒子径3μmの炭酸リチウム24.34gと、水酸化マグネシウム1.93gとホウ酸0.68gを乾式ボールミルで混合した。
(焼成工程)
箱型炉にて空気を6L/minの速度で流通させながら900℃で6時間焼成を行い、室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は900℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。
次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後150℃で乾燥してリン酸含有LMOを得た。
(ホスホン酸等を含有させる工程)
実施例22と同様の方法で得られたHEDPO(4Li)2.0gと、上記リン酸塩含有LMO98.0gとを、強力小型粉砕機(商品名:フォースミル、大阪ケミカル製)を用いて混合した後、目開き40μmの篩を通過させてHEDPO(4Li)含有LMOを得、電池評価を行った。
【0149】
得られたHEDPO(4Li)含有LMOは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であり、組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06であった。
【0150】
比較例1
NTMPO(6Na)を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でLMOを得た。得られたLMOの組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0151】
比較例2
NTMPO(6Na)を含有させなかったこと以外は、実施例14と同様の方法でLMOを得た。得られたLMOの組成はLi1.08Mn1.82Al0.10で、リン酸三リチウムの含有量は3.4質量%であった。
【0152】
比較例3
NTMPO(6Li)を含有させなかったこと以外は、実施例15と同様の方法でLMOを得た。得られたLMOの組成はLi1.07Mn1.83Al0.10であった。
【0153】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
また、示差熱熱重量同時測定装置(装置名:STA300、日立ハイテクサイエンス社製)を使用し、実施例で使用したホスホン等を以下の条件で示差熱熱重量分析した。
【0156】
測定セル : Pt容器
基準物質 : Pt容器
測定温度 : 40℃~1000℃
昇温速度 : 5℃/min
測定雰囲気 : 空気(流量 200mL/min)
重量減少を伴う発熱ピークは250℃以上で確認され、ホスホン酸等の分解温度が250℃以上であることが確認できた。いずれの実施例においても、LMOとホスホン酸等との混合後、120℃の乾燥を経たのみであるため、実施例で得られたLMOにおいてホスホン酸は分解せずに、その形態で取り込まれていると考えられた
【0157】
【表2】
【0158】
表2から、比較例1乃至3は、充放電サイクル特性が実施例に対して劣ることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本開示のLMOは、特異的なホスホン酸又はホスホン酸塩を含有するため、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性に優れるLIBの正極活物質として使用することができる。