(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】2分割されたCpf1タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20240514BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N9/16 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/55
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/09 110
(21)【出願番号】P 2020554991
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019043161
(87)【国際公開番号】W WO2020091069
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018206940
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年8月12日にウェブサイト(https://doi.org/10.1038/s41589-019-0338-y)に論文を掲載 平成31年8月13日にウェブサイト(https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0109_00204.htmlおよびhttps://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/files/20190813_satomsobun01.pdf)に論文に関する記事を掲載
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、「CRISPR-Cas9システムを光制御するゲノムエンジニアリングツール」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守俊
(72)【発明者】
【氏名】小田部 尭広
(72)【発明者】
【氏名】二本垣 裕太
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518183(JP,A)
【文献】国際公開第2017/189308(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/106657(WO,A1)
【文献】特表2015-527889(JP,A)
【文献】KAYA, Hidetaka et al.,A Split Staphylococcus aureus Cas9 as a Compact Genome-Editing Tool in Plants,Plant Cell Physiol.,2017年,Vol. 58,pp. 643-649
【文献】POLSTEIN, Lauren R. et al.,A light-inducible CRISPR-Cas9 system for control of endogenous gene activation,Nat. Chem. Biol.,2015年,Vol. 11,pp. 198-200
【文献】NIHONGAKI, Yuta et al.,CRISPR-Cas9-based photoactivatable transcription system,Chem. Biol.,2015年,Vol. 22,pp. 169-174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 9/00-9/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセットであって、2つのポリペプチドが、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントであり、
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、配列番号:2のアミノ酸配列を、371位~387位、404位~409位、437位~445位、567位~577位、606位~609位のいずれかの位置で切断した2つのポリペプチドの組み合わせ、
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントのアミノ酸配列に1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含む組み合わせ
であって、自発会合した後に、ガイドRNAと結合する能力を保持した組み合わせ;
又は
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントの配列が上記フラグメントのアミノ酸配列と
90%以上の配列同一性を有するフラグメントである組み合わせ
であって、自発会合した後に、ガイドRNAと結合する能力を保持した組み合わせであり、
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが自発会合する、2つのポリペプチドのセット。
【請求項2】
2分割されたCpf1タンパク質の2つの融合ポリペプチドのセットであり、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのそれぞれに、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントのいずれかが結合し、
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、配列番号:2のアミノ酸配列を、371位~387位、404位~409位、437位~445位、567位~577位、606位~609位のいずれかの位置で切断した2つのポリペプチドの組み合わせ、
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントのアミノ酸配列に1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含む組み合わせで
あって、自発会合した後に、ガイドRNAと結合する能力を保持した組み合わせ;
又は
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントの配列が上記フラグメントのアミノ酸配列と
90%以上の配列同一性を有するフラグメントである組み合わせ
であって、自発会合した後に、ガイドRNAと結合する能力を保持した組み合わせであり、
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが自発会合する、請求項1に記載のポリペプチドのセット。
【請求項3】
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ活性型である、請求項1又は2に記載のポリペプチドのセット。
【請求項4】
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ不活性型である、請求項1又は2に記載のポリペプチドのセット。
【請求項5】
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及び/又はCpf1タンパク質のC末端側フラグメントに機能性ドメインが結合する、請求項4に記載のポリペプチドのセット。
【請求項6】
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ不活性型であり、
光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの一方にCpf1タンパク質のN末端側フラグメント及び/又はCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが結合し、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの他方に機能性ドメインが結合する、請求項1に記載のポリペプチドのセット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のポリペプチドのセットをコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項9】
標的二本鎖核酸を切断する方法であって、
前記標的二本鎖核酸と、請求項3に記載のポリペプチドのセットとを、インキュベートする工程を含む、方法(ただし、ヒト個体内で行う方法を除く)。
【請求項10】
標的二本鎖核酸を切断する方法であって、
前記標的二本鎖核酸と、請求項3に記載のポリペプチドのセットと、前記標的二本鎖核酸
の配列に
基づいて設計したガイドRN
Aとを、光照射して又は薬物存在下でインキュベートする工程を含む、方法(ただし、ヒト個体内で行う方法を除く)。
【請求項11】
標的遺伝子の発現を抑制又は活性化する方法であって、
標的遺伝子と、請求項5に記載のポリペプチドのセットとを、インキュベートする工程を含む、方法(ただし、ヒト個体内で行う方法を除く)。
【請求項12】
標的遺伝子の発現を抑制又は活性化する方法であって、
標的遺伝子と、請求項5に記載のポリペプチドのセットと、前記標的
遺伝子の
一部の配列に相補的な配列を含むガイドRN
Aとを、光照射して又は薬物存在下でインキュベートする工程を含む、方法(ただし、ヒト個体内で行う方法を除く)。
【請求項13】
標的遺伝子の発現を抑制又は活性化する方法であって、
標的遺伝子と、請求項6に記載のポリペプチドのセットとを、光照射して又は薬物存在下でインキュベートする工程を含む、方法(ただし、ヒト個体内で行う方法を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2分割されたCpf1タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲノムにおける所望の標的DNA配列を切断できるゲノム編集ツールとして、CRISPR(clustered regularly interspaced palindromic repeats)-Cas9システムが開発された(非特許文献1-3)。このシステムでは、Streptococcus pyogenes由来のCas9ヌクレアーゼ(Cas9)とCas9を標的DNA配列に導くガイドRNAが用いられる。ガイドRNAの最初の20塩基に相補的で、且つ、そのC末端側のNGG(NはA、T、C及びGのいずれかの塩基を表す)で表されるPAM(protospacer-adjacent motif)領域が標的DNA配列となり、Cas9に切断される。
【0003】
CRISPR-Cas9システムは、適切なガイドRNAを設計することによって任意の配列を簡便且つ正確に切断することができ、非相同末端再結合(non-homologous end-joining; NHEJ)や相同組換え修復(homology-directed repair; HDR)を組み合わせれば、切断部位に任意のindel変異(挿入/欠失変異)を導入してゲノム編集を行うことができる強力なツールである。
また、ヌクレアーゼ不活性型変異Cas9(dead Cas9:dCas9)やニッカーゼ型変異Cas9(Cas9 nickase:nCas9)と種々のエフェクターとの融合タンパク質を用いるゲノム編集の種々の改良技術も知られている。
【0004】
一方、タンパク質の光活性化を利用する分子制御アプローチが出現し、オプトジェネティクスと呼ばれている(非特許文献4、5)。
本発明者らは、光依存的にホモ二量体を形成するNeurospora Crassa由来のVividタンパク質を改変し、光の照射により二量体の形成及び解離を精密に制御することができる光スイッチタンパク質のペア「マグネット」を開発した(非特許文献6、特許文献1)。また、ゲノム編集ツールとして、2分割されたCas9タンパク質とマグネットを融合した2つの融合ポリペプチドのセットを開発した(非特許文献7、特許文献2)。
【0005】
近年、CRISPR-Cas9システムのClass 2のエンドヌクレアーゼとして、Francisella tularensis由来のCpf1ヌクレアーゼ(Cpf1)が発見され、ゲノム編集ツールとして活用されている(非特許文献8、特許文献3、4)。
Cpf1においては、標的DNA配列に導くcrRNAが用いられる。crRNAの3'末端の20~25塩基に相補的で、且つ、その5'末端側にTTTV(VはA、C及びGのいずれかの塩基を表す)で表されるPAM(protospacer-adjacent motif)領域が標的DNA配列となり、Cpf1に切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-165776号公報
【文献】国際公開第2016/167300号
【文献】米国第2016/208243号公報
【文献】国際公開第2017/106657号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Cong, L. et al., Science 339, 819-823 (2013).
【文献】Mali, P. et al., Science 339, 823-826 (2013).
【文献】Jinek, M. et al., Elife 2, e00471 (2013).
【文献】Toettcher, J. E. et al., Nat. Methods 8, 35-38 (2011).
【文献】Mueller, K. et al., Mol. BioSyst. 9, 596-608 (2013).
【文献】Kawano, F. et al., Nat. Commun. 6, 6256 (2015).
【文献】Nihongaki Y. et al., Nat. Biotech, 33, 755 (2015).
【文献】Zetsche, B. et al., Cell, 163, 1 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、Cpf1タンパク質を利用した新規なゲノム編集技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、Cpf1タンパク質を様々な位置で2つに分割したフラグメントを作ったところ、2分割されたCpf1タンパク質が、誘導会合型あるいは自発会合型として再構成されることを見出した。
これらの知見に基づいて、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下のとおりである。
〔1〕
2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセットであって、2つのポリペプチドが、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントである、2つのポリペプチドのセット。
〔2〕
2分割されたCpf1タンパク質の2つの融合ポリペプチドのセットであり、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのそれぞれに、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントのいずれかが結合する、〔1〕に記載のポリペプチドのセット。
〔3〕
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが自発会合する、〔1〕又は〔2〕に記載のポリペプチドのセット。
〔4〕
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ活性型である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリペプチドのセット。
〔5〕
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ不活性型である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリペプチドのセット。
〔6〕
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及び/又はCpf1タンパク質のC末端側フラグメントに機能性ドメインが結合する、〔5〕に記載のポリペプチドのセット。
〔7〕
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ不活性型であり、
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが自発会合し、
光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの一方にCpf1タンパク質のN末端側フラグメント及び/又はCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが結合し、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの他方に機能性ドメインが結合する、〔1〕に記載のポリペプチドのセット。
〔8〕
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、配列番号:2のアミノ酸配列を、69位~73位、83位~89位、131位~138位、244位~252位、265位~296位、309位~312位、371位~387位、404位~409位、437位~445位、549位~552位、567位~577位、606位~609位、619位~628位、727位~736位、802位~811位、1037位~1042位、1140位~1148位、1155位~1161位、1163位~1178位のいずれかの位置で切断した2つのポリペプチドの組み合わせ、
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントの配列に1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含む組み合わせ;並びに
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントの配列が上記配列と80%以上の配列同一性を有するフラグメントである組み合わせである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のポリペプチドのセット。
〔9〕
〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のポリペプチドのセットをコードする核酸。
〔10〕
〔9〕に記載の核酸を含む発現ベクター。
〔11〕
標的二本鎖核酸を切断する方法であって、
前記標的二本鎖核酸と、〔4〕に記載のポリペプチドのセットとを、インキュベートする工程を含む、方法。
〔12〕
標的二本鎖核酸を切断する方法であって、
前記標的二本鎖核酸と、〔4〕に記載のポリペプチドのセットと、前記標的二本鎖核酸のそれぞれの配列に相補的な配列を含むガイドRNAのペアとを、光照射して又は薬物存在下でインキュベートする工程を含む、方法。
〔13〕
標的遺伝子の発現を抑制又は活性化する方法であって、
標的遺伝子と、〔6〕に記載のポリペプチドのセットとを、インキュベートする工程を含む、方法。
〔14〕
標的遺伝子の発現を抑制又は活性化する方法であって、
標的遺伝子と、〔6〕に記載のポリペプチドのセットと、前記標的二本鎖核酸のそれぞれの配列に相補的な配列を含むガイドRNAのペアとを、光照射して又は薬物存在下でインキュベートする工程を含む、方法。
〔15〕
標的遺伝子の発現を抑制又は活性化する方法であって、
標的遺伝子と、〔7〕に記載のポリペプチドのセットとを、光照射して又は薬物存在下でインキュベートする工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Cpf1タンパク質を利用した新規なゲノム編集技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、2分割されたCpf1(split-Cpf1)のDNA切断効率(ゲノム編集効率)を評価するための生物発光アッセイシステムの概要を示す。Cpf1を二分割して作製したCpf1のN末端側フラグメント(split-Cpf1-N)とCpf1のC末端側フラグメント(split-Cpf1-C)に、rapamycinの添加によって二量体を形成するFRBとFKBPをそれぞれ連結する。この二つの融合タンパク質(split-Cpf1-N-FRBとFKBP-split-Cpf1-C)をそれぞれコードするプラスミド及びガイドRNA(crRNA)をコードするプラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクションし、当該融合タンパク質とcrRNAを発現させる。上述のように作製したsplit-Cpf1のDNA切断効率を評価するために、生物発光アッセイシステムを構築する。このアッセイシステムでは、途中に停止コドン(stop codon)が導入されたルシフェラーゼの発現ベクター(StopFluc レポーター;pCMVをプロモーターとして用いる)とプロモーターを持たないルシフェラーゼのベクター(Flucドナー)を用いる。Split-Cpf1によってStopFlucレポーターが切断(double strand break; DSB)されるとFlucドナーとの間で相同組換えに基づく修復(homology directed repair; HDR)が起こり、ルシフェラーゼが発現するようになる。このルシフェラーゼの生物発光シグナルを計測することにより、split-Cpf1のDNA切断効率を評価する。様々な位置でCpf1を二分割して作製したsplit-Cpf1について、rapamycinを添加してFKBPとFRBの二量体を形成させた場合と、rapamycinを添加せずFKBPとFRBの二量体を形成させない場合のDNA切断効率を評価した。
【
図2】
図2は、薬物スイッチタンパク質としてFKBPとFRBと、FKBPとFRBとの二量体形成を誘導する薬物としてramapycinとによるFKBP-rapamycin-FRBシステムを用いたsplit-Cpf1のゲノム編集の模式図を示す。FKBPとFRBはrapamycinの添加によって二量体を形成するタンパク質であり、二つの融合タンパク質(split-Cpf1-N-FRBとFKBP-split-Cpf1-C)は、rapamycinの添加によりFKBPとFRBが二量体を形成し、split-Cpf1-N-FRBとFKBP-split-Cpf1-Cが会合し、split-Cpf1が再構成される。
【
図3】
図3は、split-Cpf1の分割位置の違いによるDNA切断効率(ゲノム編集効率)の違いを、FKBP-rapamycin-FRBシステムを用いたsplit-Cpf1(split-Cpf1-N-FRBとFKBP-split-Cpf1-C)で、ramapycin存在下(Rapamycin(+))及び非存在下(Rapamycin(-))で比較した結果を示す。
図1の生物発光アッセイシステムを用いて、Lachnospiraceae bacterium ND2006由来のCpf1(LbCpf1)を様々な位置で分割したsplit-Cpf1(例えば、図中の"N70/C71"は70番目のアミノ酸残基と71番目のアミノ酸残基の間で分割して作製したsplit-Cpf1である。)について、rapamycinを添加してFKBPとFRBを二量化させた場合とrapamycinを添加せずFKBPとFRBを二量化させない場合のDNA切断効率を比較した(図のデータは、rapamycin非存在下でのfull length LbCpf1(「Full length」として示し、「全長LbCpf1」ともいう。)が与える生物発光シグナルで規格化した。)。その結果、rapamycinの添加に依存して、つまりsplit-Cpf1に連結するFKBPとFRBの二量体形成に依存してDNA切断効率が上昇するsplit-Cpf1が見つかった。加えて、rapamycinを添加しなくても、つまり連結するFKBPとFRBの二量体形成を誘導しなくても高いDNA切断効率を示すsplit-Cpf1も発見された。前者はそのDNA切断活性(ゲノム編集活性)を薬物誘導による外部刺激でsplit-Cpf1の再構成をコントロールできる「誘導会合型split-Cpf1」、後者は外部刺激に関係なく自発的に会合してsplit-Cpf1が再構成して、DNA切断活性(ゲノム編集活性)を生起させる「自発会合型split-Cpf1」である。以後の評価は、N730/C731(右矢印)を誘導会合型split-Cpf1として用いて行い、N574/C575(左矢印)を自発会合型split-Cpf1として用いて行なった。なお、N574/C575の自発会合型split-Cpf1は、全長Cpf1に対して極めて高い活性を示した。N730/C731の誘導会合型split-Cpf1は、rapamycin非存在下での活性が低い一方、rapamycin存在下での誘導能が高く、薬物誘導会合型として選択性の高いsplit-Cpf1である。
【
図4】
図4は、薬物スイッチタンパク質(FRB-rapamycin-FKBPシステム)を用いて、LbCpf1における薬物誘導会合型split-Cpf1(N730/C731)によるゲノム編集を評価した結果を示す(細胞はHEK293T細胞。ゲノムの標的部位はDNMT1 (site 1)。Full-length LbCpf1(全長LbCpf1)との比較。)。
【
図5】
図5は、光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)を用いて、LbCpf1における光誘導会合型split-Cpf1(N730/C731)によるゲノム編集を評価した結果を示す(細胞はHEK293T細胞。ゲノムの標的部位はDNMT1 (site 1)。全長LbCpf1との比較。)。
【
図6】
図6は、光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)を用いて、LbCpf1における光誘導会合型split-Cpf1(N730/C731)によるゲノム編集を評価した結果を示す(細胞はHEK293T細胞。ゲノムの標的部位はGRIN2b、FANCF (site 1)、FANCF (site 2)。光誘導会合型split-Cpf1(paCpf1)と全長LbCpf1(Cpf1)を比較。Dは、光照射していない場合、Lは、光照射している場合を表す。)。
【
図7】
図7は、光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)を用いて、LbCpf1における光誘導会合型split-Cpf1(N730/C731)によるゲノム編集を評価した結果を示す(細胞はHeLa細胞。ゲノムの標的部位はDNMT1 (site 1)、VEGFA。光誘導会合型split-Cpf1(paCpf1)と全長LbCpf1(Cpf1)を比較。)。
【
図8】
図8は、光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)を用いて、LbCpf1における光誘導会合型split-Cpf1(N730/C731)によるゲノム編集を評価した結果を示す(細胞はHeLa細胞。ゲノムの標的部位はGRIN2b、FANCF (site 1)。光誘導会合型split-Cpf1(paCpf1)と全長LbCpf1(Cpf1)を比較。)。
【
図9】
図9は、光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)を用いて、LbCpf1における光誘導会合型split-Cpf1(N730/C731)によるゲノム編集の空間的制御の結果を示す。surrogate EGFPレポーターを用いてゲノム編集の空間的制御を評価した。
【
図10】
図10は、LbCpf1における薬物誘導会合型split-dCpf1による転写活性化した結果を示す。薬物誘導会合型split-dCpf1(dN730/dC731;dC731はsplit-Cpf1(N730/C731)のC末端側フラグメントにE925A変異を導入してヌクレアーゼ活性を欠失させたdCpf1のC末端側フラグメントであり、dN730は、split-dCpf1のN末端側フラグメントであり、その他のsplit-dCpf1においても、E925Aの変異を有する。)に薬物スイッチタンパク質(FRB-rapamycin-FKBPシステム)と転写活性化ドメイン(VPR)を連結して薬物誘導による転写活性を評価した。FRB-rapamycin-FKBPシステムを利用し、転写活性の評価にはGAL4-luciferaseレポーターを利用した(w/がrapamycin添加(左側)、w/oがrapamycin未添加(右側)での比較。)。
【
図11】
図11は、LbCpf1における自発会合型split-Cpf1によるゲノム編集の結果を示す。自発会合型split-Cpf1(N574/C575)は、二量体化ドメイン(FKBP,FRB)を連結してラパマイシンを添加しなかった場合も(一番左のデータ)、二量体化ドメイン(FKBP,FRB)を連結しなかった場合も(左から二番目のデータ)、ヌクレアーゼ活性を有する。自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575;dC575はsplit-Cpf1(N574/C575)のC末端側フラグメントにE925A変異を導入してヌクレアーゼ活性を欠失させたdCpf1のC末端側フラグメントであり、dN574は、split-dCpf1のN末端側フラグメントである。)を用いた場合には(左から三番目のデータ)、ヌクレアーゼ活性を示さなかった。
【
図12】
図12は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)に薬物スイッチタンパク質と転写活性化ドメイン(p65-HSF1)を連結して転写活性を薬物誘導した結果を示す。薬物スイッチタンパク質として、FRB-rapamycin-FKBPシステム(薬物としてrapamycin)、PYL-abscisic acid (ABA)-ABIシステム(薬物としてABA)又はGID1-GA3-AM-GAIシステム(薬物としてGA3-AM)を利用した。Split-dCpf1にFRBを連結する場合はp65-HSF1にFKBPを連結し、split-dCpf1にFKBPを連結する場合はp65-HSF1にFRBを連結した。Split-dCpf1にPYLを連結する場合はp65-HSF1にABIを連結し、split-dCpf1にABIを連結する場合はp65-HSF1にPYLを連結した。Split-dCpf1にGID1を連結する場合はp65-HSF1にGAIを連結し、split-dCpf1にGAIを連結する場合はp65-HSF1にGID1を連結した。転写活性の評価にはGAL4-luciferaseレポーターを利用した。それぞれのsplit-dCpf1において、薬物を添加した場合(右側)及び薬物を添加しなかった場合(左側)で比較した。自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)の各フラグメントに、p65を連結した場合には(右から二番目のデータ)、極めて高い転写活性を示した。
【
図13】
図13は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)によるゲノム遺伝子(ASCL1)の転写活性を薬物誘導した結果を示す。
【
図14】
図14は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)による転写活性を光誘導した結果を示す。光スイッチタンパク質としてCRY2-CIB1システムを利用した。Split-dCpf1にCIB1を連結し、転写活性化ドメイン(p65-HSF1)にCRY2-PHRを連結した。Split-dCpf1(dN574/dC575)の各フラグメントに存在する4つの末端(2つのN末端と2つのC末端)に1~4個のCIB1を連結し、それぞれの転写活性を全長dLbCpf1(Full length dLbCpf1)にCIB1を1つ連結した場合と比較した。Darkは光照射していない場合(左側)、Lightは光照射している場合(右側)を表す。転写活性の評価にはGAL4-luciferaseレポーターを利用した。
【
図15】
図15は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)によるゲノム遺伝子(ASCL1)の転写活性を光誘導した結果を示す。
【
図16】
図16は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)による転写活性化した結果を示す。自発会合型split-dCpf1に転写活性化ドメインを連結して自発会合による転写活性を評価した。Split-dCpf1(dN574/dC575)の各フラグメントに存在する4つの末端(2つのN末端と2つのC末端)に1~4個の転写活性化ドメインを連結し、転写活性を評価した。転写活性化ドメインとして、VP64、VPR、p65を利用した。転写活性の評価にはGAL4-luciferaseレポーターを利用した。
【
図17】
図17は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1(dN574/dC575)によるゲノム遺伝子(ASCL1)の転写活性化した結果を示す。
【
図18】
図18は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1によるゲノム遺伝子(ASCL1)の転写活性化した結果を示す。分割dCpf1アクチベーター(BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLSとBPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLS)と全長dLbCpf1のN末端とC末端の両方にp65-HSF1を連結したプローブ(BPNLS-p65-HSF1-dCpf1-p65-HSF1-BPNLS)との比較。
【
図19】
図19は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1によるゲノム遺伝子(MYOD1)の転写活性化した結果を示す。分割dCpf1アクチベーター(BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLSとBPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLS)と全長dLbCpf1のN末端とC末端の両方にp65-HSF1を連結したプローブ(BPNLS-p65-HSF1-dCpf1-p65-HSF1-BPNLS)との比較。
【
図20】
図20は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1による転写活性化を利用したiPS細胞の分化誘導の概念図を示す。分割dCpf1アクチベーターを用いてゲノム遺伝子(Neurogenin3)の転写を活性化しiPS細胞を神経細胞に分化させる。
【
図21】
図21は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1による転写活性化を利用したiPS細胞の分化誘導した結果を示す。分割dCpf1アクチベーター(BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLSとBPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLS)を用いてゲノム遺伝子(Neurogenin3)の転写を活性化した。Neurogenin3を標的とする6種類のcrRNA(crNGN3-1~3-6)をそれぞれ用いた場合、及びそれらすべてを混ぜて用いた場合(crNGN3_Mix)を比較した。
【
図22】
図22は、LbCpf1における自発会合型split-dCpf1による転写活性化を利用したiPS細胞の分化誘導した結果を示す。分割dCpf1アクチベーター(BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLSとBPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLS)を用いてゲノム遺伝子(Neurogenin3)の転写を活性化しiPS細胞を神経細胞に分化した。Neurogenin3を標的とする6種類のcrRNA(crNGN3-1~3-6)をそれぞれ用いた場合、及びそれらすべてを混ぜて用いた場合(crNGN3_Mix)を比較した。
【
図23】
図23は、LbCpf1の全長アミノ酸配列を含むLpCpf1-NLS-3xHA tagのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはNucleoplasmin NLSを意味し、核局在化配列である。以下、
図23~
図36において、核局在化配列には網掛けを、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成するスイッチタンパク質を囲み線を付して示す。また、
図23~
図36において、下線は開始アミノ酸(M)を、二重下線は制限酵素サイトを、破線下線はリンカーを意味する。
【
図24】
図24は、split-Cpf1-Nを含むNLS-N730-FRBのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはSV40 NLSを意味し、核局在化配列である。N730はLbCpf1のN730/C731を切断部位とするsplit-Cpf1-Nである。FRBはrapamycinの添加によって二量体を形成する薬物スイッチタンパク質である。
【
図25】
図25は、split-Cpf1-Cを含むFKBP-C731-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはNucleoplasmin NLSを意味し、核局在化配列である。C731はLbCpf1のN730/C731を切断部位とするsplit-Cpf1-Cである。FKBPはrapamycinの添加によって二量体を形成する薬物スイッチタンパク質である。
【
図26】
図26は、split-Cpf1-Nを含むNLS-N730-pMagのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはSV40 NLSを意味し、核局在化配列である。N730はLbCpf1のN730/C731を切断部位とするsplit-Cpf1-Nである。pMagは光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)である。
【
図27】
図27は、split-Cpf1-Cを含むnMagHigh1-C731-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはNucleoplasmin NLSを意味し、核局在化配列である。C731はLbCpf1のN730/C731を切断部位とするsplit-Cpf1-Cである。nMagHigh1は光スイッチタンパク質(pMag-nMagHigh1システム)である。
【
図28】
図28は、split-dCpf1-Nを含むNLSx3-dN730-FRB-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはSV40 NLSを意味し、核局在化配列であり、×3は3回繰り返しを意味する。dN730はdLbCpf1のN730/C731を切断部位とするsplit-dCpf1-Nである。FRBはrapamycinの添加によって二量体を形成する薬物スイッチタンパク質である。
【
図29】
図29は、split-dCpf1-Cを含むVPR-FKBP-dC731-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはNucleoplasmin NLSを意味し、核局在化配列である。dC731はdLbCpf1のN730/C731を切断部位とするsplit-dCpf1-Cである。VPRは転写活性化ドメインであり、FKBPはrapamycinの添加によって二量体を形成する薬物スイッチタンパク質である。以下、
図29~
図36において、転写活性化ドメインを網掛け及び囲み線を付して示す。
【
図30】
図30は、split-Cpf1-Nを含むNLS-N574-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSはSV40 NLSを意味し、核局在化配列である。N574は、LbCpf1のN574/C575を切断部位とするsplit-Cpf1-Nである。
【
図31】
図31は、split-Cpf1-Cを含むNLS-C575-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、N末端側のNLSはNLSV40 NLSを意味し、C末端側のNLSはNucleoplasmin NLSを意味し、核局在化配列である。C575は、LbCpf1のN574/C575を切断部位とするsplit-Cpf1-Cである。
【
図32】
図32は、split-dCpf1-Nを含むBPNLS-CIB1-dN574-CIB1-BPNLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、BPNLSは、核局在化配列である。dN574は、dLbCpf1のN574/575を切断部位とするsplit-dCpf1-Nである。CIB1は光スイッチタンパク質(CRY2-CIB1システム)である。
【
図33】
図33は、split-dCpf1-Cを含むBPNLS-CIB1-dC575-NLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、BPNLSは、核局在化配列であり、C末端側のNLSはNucleoplasmin NLSを意味し、核局在化配列である。dC575は、dLbCpf1のN574/575を切断部位とするsplit-dCpf1-Cである。CIB1は光スイッチタンパク質(CRY2-CIB1システム)である。
【
図34】
図34は、NLSx3-CRY2-PHR-p65-HSF1のアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、NLSは、SV40 NLSを意味し、核局在化配列であり、×3は3回繰り返しを意味する。CRY2-PHRは光スイッチタンパク質(CRY2-CIB1システム)である。p65及びHSF1は転写活性化ドメインである。
【
図35】
図35は、split-Cpf1-Nを含むBPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、BPNLSは核局在化配列であり、NLSはNLSV40 NLSを意味し、核局在化配列である。N574はdLbCpf1のN574/575を切断部位とするsplit-dCpf1-Nである。p65及びHSF1は転写活性化ドメインである。
【
図36】
図36は、split-Cpf1-Cを含むBPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLSのアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列において、BPNLSは、核局在化配列である。dN574は、dLbCpf1のN574/575を切断部位とするsplit-dCpf1-Cである。p65及びHSF1は転写活性化ドメインである。
【
図37】
図37は、プロモーター領域を標的とする分割dCpf1アクチベーターとdCas9-SAMの活性化効率の比較を示す。
図37a~eは、それぞれ、ASCL1(a)、IL1R2(b)、AR(c)、HBB(d)及びIL1RN(e)のプロモーター領域における比較結果を示す。細胞はHEK293T細胞を用いた。各
図37a~eにおいて、上のパネルは、各crRNAとsgRNAの標的部位を示し、指定されたCRISPRアクチベーター(分割dCpf1アクチベーター、dCas9-SAM)とガイドRNA(分割dCpf1アクチベーターの場合はcrRNA、dCas9-SAMの場合はsgRNA)が用いられた。結果は、空のベクターをトランスフェクションしたネガティブコントロールに対する相対的なmRNAレベルとして表され、平均±s.e.mとして示す。(n数は、a、c、d では、3つの異なる細胞培養サンプルから3であり、b、eでは、2つの異なる細胞培養による2つの異なる個別実験サンプルから4である)。ドットは個々のデータポイントを示す。
【
図38】
図38は、分割dCpf1アクチベーターを使用したin vivo遺伝子活性化を示す。
図38aは、生きているマウスのルシフェラーゼレポーターの活性化における分割dCpf1アクチベーターとdCpf1-VPRアクチベーターの比較。dCpf1アクチベーター(分割dCpf1アクチベーターもしくはdCpf1-VPRアクチベーター)、GAL4-UASルシフェラーゼレポーター及びレポーターを標的とするcrRNA(またはネガティブcrRNA)を発現するプラスミドを、ハイドロダイナミックインジェクション法によりにより尾静脈から肝臓に送達した。インジェクションの24時間後に生物発光イメージングを実施した。スケールバーは1 cmである。
図38bは、
図38aに示す生物発光活性の定量化(n数は3である)。
図38cは、dCpf1アクチベーターを使用した内在性のAscl1活性化。データは、トランスフェクションされていないネガティブコントロール(n数は4である)に対する相対mRNAレベルとして示した。
図38b及び38cでは、データは平均±s.e.mとして示した。ドットは個々のデータポイントを示す。ウェルチt検定を実施してP値で示した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、発明を実施するための形態により具体的に説明するが、本発明は、以下の発明を実施するための形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0014】
(2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット)
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセットは、2つのポリペプチドが、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントである、2つのポリペプチドのセットである。
Cpf1タンパク質を2分割すると、2つのポリペプチドが得られる。2つのポリペプチドのうち、Cpf1タンパク質におけるN末端アミノ酸を含むフラグメントをCpf1タンパク質のN末端側フラグメントといい、Cpf1タンパク質におけるC末端アミノ酸を含むフラグメントをCpf1タンパク質のC末端側フラグメントという。
ここで、本明細書において、Cpf1タンパク質とは、Cpf1及びその変異体を意味し、下記(1)~(3)を含む意味で用いる。
(1)native Cpf1を含み、ヌクレアーゼ活性型であるCpf1ヌクレアーゼ(単に、「Cpf1」と記載する場合もある。)
(2)ヌクレアーゼ不活性型変異Cpf1(単に、「dead Cpf1(dCpf1))」と記載する場合もある。)
(3)ニッカーゼ型変異Cpf1であるCpf1ニッカーゼ(Cpf1 nickase(nCpf1))
天然に由来するCpf1や、dCpf1及びnCpf1が、本来の機能を損なわずに、機能に関連のない部分が変異を受けている変異体も本明細書におけるCpf1タンパク質に含まれる。
dCpf1とnCpf1は、Cpf1の2つのDNA切断能のうち少なくとも1つのDNA切断能が失活したCpf1の変異体である。
【0015】
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセットは、好適には、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、自発会合型として再構成する。
また、本発明における2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセットは、好適には、2分割されたCpf1タンパク質の2つの融合ポリペプチドのセットである。2つの融合ポリペプチドのセットである場合、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのそれぞれに、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントのいずれかが結合し、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドが、光誘導され、あるいは薬物誘導されて二量体を形成するのに併せて、融合したCpf1タンパク質のN末端側フラグメント及び融合したCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、誘導会合型として再構成する。なお、2つの融合ポリペプチドのセットである場合においても、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、自発会合型として再構成してもよい。
【0016】
本発明において、自発会合型あるいは誘導会合型として再構成するとは、2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドが、自発的にあるいは誘導されて会合して、2分割される前のCpf1タンパク質の有する特性を再度構成することを意味する。
2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドが再構成される場合のCPf1タンパク質の特性は、ヌクレアーゼ活性、ヌクレアーゼ不活性又はニッカーゼ活性が挙げられる。
【0017】
(ヌクレアーゼ活性型であるCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット)
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-Cpf1)は、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント(split-Cpf1-N)とC末端側フラグメント(split-Cpf1-C)に分割された2つのポリペプチドのセットであり、2つのポリペプチドのセットが、誘導会合型あるいは自発会合型として再構成してヌクレアーゼ活性を示す。
本明細書においてヌクレアーゼ活性とは、Cpf1の本来の機能である、二本鎖核酸の塩基間のホスホジエステル結合を加水分解して切断する活性を意味する。
本明細書においては、ヌクレアーゼ活性型Cpf1タンパク質をCpf1とも記載する。
【0018】
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-Cpf1)は、好適には、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント(split-Cpf1-N)とC末端側フラグメント(split-Cpf1-C)が自発会合する2つのポリペプチドのセットであって、Cpf1のタンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントが自発会合型として再構成して、ヌクレアーゼ活性を示す。
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-Cpf1)は、好適には、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのそれぞれに、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント(split-Cpf1-N)とC末端側フラグメント(split-Cpf1-C)のいずれかが結合した2つの融合ポリペプチドのセットであって、光依存的に又は薬物存在下で、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントが誘導会合型として再構成して、ヌクレアーゼ活性を示す。
【0019】
本発明に係る「ヌクレアーゼ活性型であるCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット」は、標的二本鎖核酸配列に基づいて設計したガイドRNAと組合せて用いることにより、標的二本鎖核酸配列を正確に切断することができる。ここで、ガイドRNAは、crRNAとも呼ばれ、Cpf1ヌクレアーゼを標的配列に誘導する役割を果たす。本発明で用いられるガイドRNAは、標準的なCpf1システムで用いられるガイドRNAと同様に設計すればよい。例えば、5'末端側に「TTTV」(VはA、C及びGのいずれかの塩基を示す。)を有し、crRNAの3'末端の約20~25塩基に相補的な配列を含むよう設計することができる。ガイドRNAを複数用意することにより、同時に複数の標的配列を切断することも可能である。
かかる二本鎖核酸の切断方法も本発明に包含される。
【0020】
さらに、本発明に係る「ヌクレアーゼ活性型であるCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット」とNHEJやHDRを組み合わせれば、標的配列に所望のindel変異を導入することもできる。ガイドRNAを複数用いて、多重遺伝子改変を行ってもよい。
【0021】
(ヌクレアーゼ不活性型であるCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット)
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-dCpf1)は、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)とC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)に分割された2つのポリペプチドのセットであり、2つのポリペプチドのセットが、誘導会合型あるいは自発会合型として再構成してヌクレアーゼ不活性型である。
本明細書においては、ヌクレアーゼ不活性型Cpf1タンパク質をdCpf1とも記載する。
【0022】
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-dCpf1)は、好適には、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)とC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)が自発会合する2つのポリペプチドのセットであって、Cpf1のタンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントが自発会合型として再構成する。
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-dCpf1)は、好適には、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのそれぞれに、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントのいずれかが結合した2つの融合ポリペプチドのセットであって、光依存的に又は薬物存在下で、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントが誘導会合型として再構成する。なお、2つの融合ポリペプチドのセットである場合においても、Cpf1タンパク質のN末端側
フラグメント及びCpf1タンパク質のC末端側フラグメントが、自発会合型として再構成してもよい。
【0023】
ヌクレアーゼ不活性型Cpf1タンパク質は、例えば、人工的にCpf1ヌクレアーゼのアミノ酸配列に変異を加えることにより得られる。具体的には、Cpf1ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性中心のアミノ酸に変異を加えてヌクレアーゼ活性を消失させた変異体であって、例えば、後述するLachnospiraceae bacterium ND2006由来のCpf1(LbCpf1)についてはD832A、E925A及びD1180Aのうちどれか一つの変異を有する。
【0024】
本明細書において、配列番号:Xのアミノ酸配列のY位に変異を含むという場合であって、配列番号:Xに天然の配列から付加又は欠失が生じている場合、いずれのアミノ酸がY位に当たるかは、前後の配列等にも続いて当業者が決定することができる。したがって、例えば、LbCpf1のE925Aを例に挙げて説明すると、必ずしもN末端から数えて925番目のアミノ酸がAに置換されているのではなく、天然由来のアミノ酸配列においてN末端から数えて925番目のEに対応するアミノ酸がAに置換されていることを意味する。
したがって、LbCpf1についてはD832A、E925A及びD1180Aのいずれかに変異を有することで、dLbCpf1となるが、他の種由来のCpf1におけるdCpf1としては、LbCpf1におけるD832、E925及びD1180に相当する、他の種由来のCpf1におけるD又はEのアミノ酸において、それぞれ、Aに置換されていればdCpf1とすることができる。
LbCpf1においては、D832A、E925A及びD1180Aのいずれか一つが導入されていることにより、ヌクレアーゼ不活性型dCpf1となるが、Acidaminococcus sp. BV3L6由来のCpf1(AsCpf1)については、D908A及びE993Aのいずれか一つが導入されていることにより、ヌクレアーゼ不活性型dCpf1となり、Francisella tularensis subsp. Novicida U112由来のCpf1(FnCpf1)については、D917A及びE1006Aのいずれか一つが導入されていることにより、ヌクレアーゼ不活性型dFnCph1となる。
【0025】
ヌクレアーゼ不活性型であるポリペプチドのセット(split-dCpf1)には、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)とC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のいずれかに機能性ドメインが結合していることが好ましい。
本明細書においてヌクレアーゼ不活性型であるポリペプチドのセット(split-dCpf1)の場合、再構成されたdCpf1は、機能性ドメインに基づいた機能を発揮し得、中でも、機能性ドメインとして、転写活性化ドメイン、転写抑制ドメインを用いることにより、遺伝子発現の活性化や抑制をする。
【0026】
ヌクレアーゼ不活性型であり、かつ自発会合型のポリペプチドのセット(split-dCpf1)である場合、機能性ドメインは、好適には、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)及び/又はC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)に結合している。
Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)のN末端及びC末端において、及び/又は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端及びC末端において、機能性ドメインは結合していてもよい。すなわち、4つの機能性ドメインが、ポリペプチドのセット(split-dCpf1)に結合していてもよい。
【0027】
ヌクレアーゼ不活性型であり、かつ自発会合型のポリペプチドのセット(split-dCpf1)である場合、機能性ドメインは、好適には、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの一方に結合し、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの他方は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)のN末端及びC末端において、及び/又は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端及びC末端において結合する。
ポリペプチドのセット(split-dCpf1)は自発会合し、かつ、光依存的に又は薬物存在下で、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドが二量体を形成することで、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの一方に結合した4つの機能性ドメインが存在し得る。
機能性ドメインが、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドを介さずに、直接、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)のN末端及びC末端において、及び/又は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端及びC末端において結合していてもよい。この場合、機能性ドメインが、ポリペプチドのセット(split-dCpf1)において、機能性ドメインが、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドを介さずに、直接、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)のN末端及びC末端において、及び/又は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端及びC末端において結合し、また、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの一方に結合し、光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドの他方は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)のN末端及びC末端において、及び/又は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端及びC末端において結合する。
【0028】
ヌクレアーゼ不活性型であり、かつ誘導会合型のポリペプチドのセット(split-dCpf1)である場合、機能性ドメインは、好適には、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)及び/又はC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)に結合している。
Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)のN末端又はC末端において、及び/又は、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端又はC末端において、機能性ドメインは結合していてもよい。すなわち、2つの機能性ドメインが、ポリペプチドのセット(split-dCpf1)に結合していてもよい。
当該ポリペプチドのセット(split-dCpf1)は、標的二本鎖核酸配列に基づいて設計したガイドRNAと組合せて用いることにより、標的二本鎖核酸配列において機能性ドメインに基づいた機能を発揮したりする。
かかる二本鎖核酸における機能性ドメインに基づいた機能を発揮する方法も本発明に包含される。
【0029】
ヌクレアーゼ不活性型であり、かつ誘導会合型のポリペプチドのセット(split-dCpf1)である場合、Cpf1タンパク質の2つのポリペプチドに結合する光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドに機能性ドメインが結合していてもよく、さらにCpf1タンパク質の2つのポリペプチドであるN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)及び/又はC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)のN末端又はC末端に結合していてもよい。
【0030】
自発会合型として再構成される場合には、機能性ドメインを複数個結合させた融合ポリペプチドのセットとすることができる。
【0031】
本発明において、機能性ドメインとしては、例えば、転写活性化ドメイン、転写抑制ドメイン、リコンビナーゼ、デアミナーゼ、エピジェネティック修飾因子、ヌクレアーゼ等の機能性ドメインが挙げられる。
転写活性化ドメインとしては、トランスアクチベーションドメイン、トランスアクチベーターとも呼ばれるドメインであって、標的遺伝子に対する転写活性化ドメインである。転写活性化ドメインとしては、VP16、VP64、p65及びHSF1等が挙げられる。
転写抑制ドメインとしては、KRAB及びSID4X等が挙げられる。
リコンビナーゼとしては、セリンリコンビナーゼ(例えば、Hin、Gin又はTn3リコンビナーゼなど)及びチロシンリコンビナーゼ(例えば、Creリコンビナーゼなど)等が挙げられる。
デアミナーゼとしては、シチジンデアミナーゼ(例えば、APOBEC1、AID又はACF1/ASEデアミナーゼなど)及びアデノシンデアミナーゼ(例えば、ADATファミリーデアミナーゼなど)等が挙げられる。
エピジェネティック修飾因子として、ヒストン脱メチル化酵素、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素、及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ等が挙げられる。
ヌクレアーゼとしては、エキソヌクレアーゼ(例えば、TREX2、TREX2、Exo1、lambda exonucleaseなど)及びエンドヌクレアーゼ(例えば、FokIなど)等が挙げられる。
【0032】
ヌクレアーゼ不活性型のポリペプチドのセットにおいても、ヌクレアーゼ活性型のポリペプチドのセットに用いられるCpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントと同様に設計することができる。
【0033】
機能性ドメインのCpf1タンパク質のN末端側フラグメント及び/又はC末端側フラグメントへの結合、及び光依存的に又は薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドへの結合は、リンカーを介して又はリンカーを介さずに結合する。
リンカーを介して結合する場合のリンカーは、例えば、1又は複数のグリシンとセリンを構成アミノ酸とするフレキシブルなリンカーを用いることができる。
【0034】
本発明に係るポリペプチドのセットは、機能性ドメインが、転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインである場合、標的遺伝子の発現を活性化又は抑制する。
本明細書において「遺伝子の発現」は、DNAをテンプレートとしてRNAが合成される転写と、RNA配列に基づいてポリペプチドが合成される翻訳の双方を含む概念として用いられる。
ヌクレアーゼ不活性型であり、かつ誘導会合型のポリペプチドのセット(split-dCpf1)である場合であって、標的遺伝子の発現を活性化又は抑制する2つのポリペプチドのセットは、標的遺伝子の一部の配列と相補的な配列を有するガイドRNAと組合せることにより、標的遺伝子の発現を活性化又は抑制することができる。この場合、ガイドRNAは、例えば、標的遺伝子のセンス鎖又はアンチセンス鎖のプロモーター配列又はエクソン配列の一部(例えば約20塩基)に相補的な配列とすることができ、これにより、転写の開始又はmRNAの伸長が阻害される。
かかる遺伝子発現の活性化方法又は抑制方法も本発明に包含される。
【0035】
本発明においては、転写活性化ドメインとしてVP64がCpf1タンパク質のC末端側フラグメントに結合したポリペプチドを含む標的遺伝子の遺伝子発現を活性化する2つのポリペプチドのセットであることが好ましく、アプタマー結合タンパク質としてMS2を用い、アプタマー結合タンパク質と結合する転写活性化ドメインとして、p65及びHSF1を用いることが好適である。
VP64、MS2、p65及びHSF1に相当する因子として、公知の転写活性化ドメイン及びアプタマー結合タンパク質を用いることもできるが、例えば、Nature (2015) 517, 583-588及びNature protocols (2012) 7(10), 1797-1807に開示されるような転写活性化ドメイン及びアプタマー結合タンパク質を用いることができる。
【0036】
(ニッカーゼ活性型であるCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット)
本発明に係る2分割されたCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット(split-nCpf1)は、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント(split-dCpf1-N)とC末端側フラグメント(split-dCpf1-C)に分割された2つのポリペプチドのセットであり、2つのポリペプチドのセットが、誘導会合型あるいは自発会合型として再構成してニッカーゼ活性型である。
本明細書においてニッカーゼ活性とは、二本鎖核酸のうち一本鎖にニックを形成する活性を意味する。
本明細書においては、ニッカーゼ活性型Cpf1タンパク質をnCpf1とも記載する。
ニッカーゼ活性型のポリペプチドのセットにおいても、ヌクレアーゼ活性型のポリペプチドのセットに用いられるCpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントと同様に設計することができる。
また、ニッカーゼ活性型のポリペプチドのセットにおいて、ヌクレアーゼ不活性型のポリペプチドのセットにおけるのと同様に、転写活性化ドメインやデアミナーゼ等の機能性ドメインを有するポリペプチドのセットとしてもよい。
【0037】
ニッカーゼ活性を示す2つのポリペプチドのセットは、標的二本鎖核酸のそれぞれの鎖を標的とするガイドRNAのペアと組合せることにより、標的二本鎖核酸を切断することができる。この場合、標的二本鎖核酸は、ガイドRNAのペアで挟まれる領域で切断されるので、単一のガイドRNAを用いる場合よりも配列特異性を高めること可能である。
それぞれのガイドRNAは、ヌクレアーゼ活性型のポリペプチドのセットと同様に設計することができる。また、複数のガイドRNAのペアを用意することにより、同時に複数の標的配列を切断することも可能である。
かかる二本鎖核酸の切断方法も本発明に包含される。
また、本発明に係る「ニッカーゼ活性型を示すCpf1タンパク質の2つのポリペプチドのセット」とNHEJやHDRを組み合わせれば、標的配列に所望のindel変異を導入することもできる。ガイドRNAを複数用いて、多重遺伝子改変を行ってもよい。
【0038】
ニッカーゼ活性型Cpf1タンパク質は、例えば、人工的にCpf1ヌクレアーゼのアミノ酸配列に変異を加えることにより得られる。具体的には、Cpf1ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性中心のアミノ酸に変異を加えてヌクレアーゼ活性を消失させた変異体であって、例えば、LbCpf1についてはR1138A、AsCpf1についてはR1226Aの変異を含む。
ここで、例えば、LbCpf1のR1138Aを例に挙げて説明すると、必ずしもN末端から数えて1138番目のアミノ酸がAに置換されているのではなく、天然由来のアミノ酸配列においてN末端から数えて1138番目のRに対応するアミノ酸がAに置換されていることを意味する。
したがって、LbCpf1についてはR1138Aの変異を有することで、nLbCpf1となるが、他の種由来のCpf1におけるnCpf1としては、LbCpf1におけるR1138に相当する、他の種由来のCpf1におけるアミノ酸において、Aに置換されていればnCpf1とすることができる。
【0039】
本発明において、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントは、それぞれCpf1タンパク質の部分配列又は部分配列に変異を含む配列からなるフラグメントであってもよい。
以下、LbCpf1の全長アミノ酸配列である配列番号:2を例にして説明するが、他の種由来のCpf1についても、LbCpf1のアミノ酸配列に対応する各アミノ酸を選択してもよい。
N末端側フラグメントのN末端アミノ酸は、配列番号:2の配列において、C末端側フラグメントのN末端アミノ酸よりもN末端側のアミノ酸である。N末端側フラグメントのC末端アミノ酸は、配列番号:2の配列において、C末端側フラグメントのN末端アミノ酸よりもN末端側のアミノ酸であってもC末端側のアミノ酸であってもよい。
【0040】
N末端側フラグメントとC末端側フラグメントは、N末端側フラグメント又はC末端側フラグメントと、配列番号:2のアミノ酸配列との重複する領域が、配列番号:2のアミノ酸配列の70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、100%、又は100%以上となるよう設計してもよい。ここで、「N末端側フラグメント又はC末端側フラグメントと、配列番号:2のアミノ酸配列との重複する領域」とは、例えば、N末端側フラグメントが配列番号:2の11位のアミノ酸から400位のアミノ酸で構成され、C末端側フラグメントが401位のアミノ酸から1000位のアミノ酸で構成される場合、11位のアミノ酸から1000位のアミノ酸の990アミノ酸を意味する。したがって、当該領域は、配列番号:2のアミノ酸配列(1273アミノ酸)の約78%となる。また、例えば、N末端側フラグメントが配列番号:2の11位のアミノ酸から600位のアミノ酸で構成され、C末端側フラグメントが611位のアミノ酸から1200位のアミノ酸で構成される場合、「N末端側フラグメント又はC末端側フラグメントと、配列番号:2のアミノ酸配列との重複する領域」は、11位から600位のアミノ酸の590アミノ酸と、611位から1200位の590アミノ酸の合計である1180アミノ酸で構成され、配列番号:2のアミノ酸配列の約93%となる。
Cpf1のN末端側フラグメント又はC末端側フラグメントと、配列番号:2のアミノ酸配列との重複する領域が、配列番号:2のアミノ酸配列の70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、100%、又は100%以上となるよう設計して得られるN末端側フラグメント又はC末端側フラグメントは、Lachnospiraceae bacterium ND2006由来以外の他種由来のCpf1又はCpf1タンパク質におけるN末端側フラグメント又はC末端側フラグメントとなり得る場合もある。また、Lachnospiraceae bacterium ND2006由来以外の他種由来のCpf1又はCpf1タンパク質におけるN末端側フラグメント又はC末端側フラグメントは、LbCpf1におけるN末端側フラグメントとC末端側フラグメントとする切断部位を参考に、対応する部位で切断された2分割されたCpf1又はCpf1タンパク質であってもよい。
本明細書において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列からなるフラグメント、又は、フラグメントのアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるフラグメントという場合に同様である。
本発明において、Lachnospiraceae bacterium ND2006由来のLbCpf1に代えて用いることのできるCpf1を例示として、表1に示す。
【0041】
【0042】
N末端側フラグメントとC末端側フラグメントは、それぞれ配列番号:2のアミノ酸配列のうち100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、300アミノ酸以上、400アミノ酸以上、500アミノ酸以上、600アミノ酸以上、700アミノ酸以上からなるフラグメントとして設計してもよい。
【0043】
N末端側フラグメントとC末端フラグメントは、配列番号:2のアミノ酸配列において、DNA切断に関わるヌクレアーゼドメイン(RuvCあるいはUK)以外のドメインで切断していることが好ましく、また、αへリックスやβシートを接合する領域(例えば、ループ領域)であり、かつCpf1分子の外側に配向されている領域を切断することが好ましい。
N末端側フラグメントとC末端フラグメントは、例えば、配列番号:2のアミノ酸配列を、69位~73位、83位~89位、131位~138位、244位~252位、265位~296位、309位~312位、371位~387位、404位~409位、437位~445位、549位~552位、567位~577位、606位~609位、619位~628位、727位~736位、802位~811位、1037位~1042位、1140位~1148位、1155位~1161位、1163位~1178位のいずれかの位置で、切断してできるフラグメントであってもよい。
誘導会合型である場合、N末端側フラグメントとC末端フラグメントは、配列番号:2のアミノ酸配列を、好ましくは、69位~73位、83位~89位、131位~138位、244位~252位、265位~296位、309位~312位、549位~552位、619位~628位、727位~736位、802位~811位、1037位~1042位、1140位~1148位、1155位~1161位、1163位~1178位のいずれかの位置で、より好ましくは、309位~312位、549位~552位、727位~736位、1037位~1042位、1163位~1178位のいずれかの位置で、さらに好ましくは、309位~312位、727位~736位の位置で、切断してできるフラグメントであってもよい。
自発会合型である場合、N末端側フラグメントとC末端フラグメントは、配列番号:2のアミノ酸配列を、好ましくは、83位~89位、244位~252位、371位~387位、404位~409位、437位~445位、567位~577位、606位~609位のいずれかの位置で、より好ましくは、371位~387位、404位~409位、437位~445位、567位~577位、606位~609位のいずれかの位置で、さらに好ましくは、567位~577位の位置で、切断してできるフラグメントであって
もよい。
こうして得られるフラグメントのアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列からなるフラグメント、又は、こうして得られるフラグメントのアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるフラグメントであってもよい。
【0044】
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントは、それぞれ、配列番号:2のアミノ酸配列におけるN末端を含む50~1223アミノ酸の配列からなるフラグメントと、配列番号:2のアミノ酸配列におけるC末端を含む50~1223アミノ酸の配列からなるフラグメントであってもよい。
かかるフラグメントのアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列からなるフラグメント、又は、かかるフラグメントのアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるフラグメントであってもよい。
【0045】
Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとC末端側フラグメントが以下のいずれかの組み合わせであってもよい。
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~70位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、71位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~86位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、87位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~134位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、135位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~248位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、249位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~266位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、267位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~310位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、311位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~373位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、374位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~406位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、407位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~443位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、444位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~550位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、551位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~574位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、575位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~607位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、608位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~624位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、625位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~730位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、731位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~808位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、809位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~1039位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、1040位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~1143位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、1144位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~1157位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、1156位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;
配列番号:2のアミノ酸配列における1位~1170位のアミノ酸からなるN末端フラグメントと、1171位~1273位のアミノ酸からなるC末端フラグメントの組み合わせ;及び
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントの配列に1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含む組み合わせ;並びに
上記いずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのフラグメントの配列が上記配列と80%以上の配列同一性を有するフラグメントである組み合わせ。
上記するDNA切断に関わるヌクレアーゼドメイン(RuvCあるいはUK)以外のドメインで切断していることが好ましく、また、αへリックスやβシートを接合する領域(例えば、ループ領域)であり、かつCpf1分子の外側に配向されている領域を切断することが好ましいN末端側フラグメントとC末端フラグメントの具体例として、上記の組み合わせから選択してもよい。また、誘導会合型である場合や自発会合型である場合にも同様に、その具体例として上記の組み合わせから選択してもよい。
【0046】
本明細書において、「アミノ酸」は、その最も広い意味で用いられ、天然アミノ酸に加え、その誘導体や人工のアミノ酸を含む。本明細書においてアミノ酸としては、天然タンパク性L-アミノ酸;非天然アミノ酸;アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられる。非天然アミノ酸の例として、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸や、側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸、ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられるがこれに限定しない。
本明細書においてアミノ酸は、慣用的な一文字表記又は三文字表記で示される場合もある。一文字表記又は三文字表記で表されたアミノ酸は、それぞれの変異体や誘導体を含む場合もある。
【0047】
本明細書において、あるアミノ酸配列に1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むという場合、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個又は9個のアミノ酸が、その配列の末端又は非末端において、付加(挿入)、置換、又は欠失されていることを意味する。付加、置換、又は欠失されるアミノ酸の数は、結果として得られるポリペプチドが本発明における効果を奏する限り特に限定されない。また、付加、置換、又は欠失される部位は、1ヶ所であっても2ヶ所以上であってもよい。
【0048】
本明細書において、あるアミノ酸配列と配列同一性が80%以上であるという場合、配列同一性は、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上であってもよい。配列同一性は、当業者が公知の方法に従って求めることができる。
【0049】
(光依存的に二量体を形成する2つのポリペプチドのセット)
本明細書において、「光依存的に二量体を形成する2つのポリペプチドのセット」(以下「光スイッチタンパク質」という。)は、光を照射することによってホモ二量体又はヘテロ二量体を形成する天然のタンパク質のペア、又はこれを人工的に改変したものをいう。光スイッチタンパク質の非限定的な例として、以下のものが挙げられる。
〔ヘテロ二量体を形成するペア〕
PhyBとPIF(Levskaya, A., et al., Nature, 461, 997-1001 (2009).)
FKF1とGI(Yazawa, M. et al., Nat. Biotechnol.27, 941-5 (2009).)
CRY2とCIB1(Kennedy, M. J., et al., Nat. methods 7, 12-16 (2010).)
UVR8-COP1(Crefcoeur, RP. et al., Nat. Commun. 4:1779 doi: 10.1038/ ncomms2800 (2013).)
VVD-WC1(Malzahn, E. et al., Cell, 142, 762-772 (2010).)
PhyB-CRY1(Hughes, R. M. et al., J. Biol. Chem. 287, 22165-22172 (2012).)
RpBphP1-RpPpsR2(Bellini, D. et al., Structure, 20, 1436-1446 (2012).)
〔ホモ二量体を形成するペア〕
UVR8(Chen, D. A. et al., J. Cell Biol. 201, 631-640 (2013).)
EL222(Motta-Mena, L. B. et al., Nat. Chem. Biol., 10, 196-202 (2014).)
bPac(Stierl, M. et al., Beggiatoa, J. Biol. Chem., 286, 1181-1188 (2001).)
RsLOV(Conrad, K. S. et al., Biochemistry, 52, 378-391 (2013).)
PYP(Fan, H. Y. et al., Biochemistry, 50, 1226-1237 (2011).)
H-NOXA(Zoltowski, B. D. et al., Biochmeistry, 47, 7012-7019 (2008).)
YtvA(Zoltowski, B. D. et al., Biochmeistry, 47, 7012-7019 (2008).)
NifL(Zoltowski, B. D. et al., Biochmeistry, 47, 7012-7019 (2008).)
FixL(Zoltowski, B. D. et al., Biochmeistry, 47, 7012-7019 (2008).)
RpBphP1(Bellini, D. et al., Structure, 20, 1436-1446 (2012).)
CRY2(マルチマー形成)(Zoltowski, B. D. et al., Biochmeistry, 47, 7012-7019 (2008).)
光スイッチタンパク質は、ペアのそれぞれのアミノ酸数が約200以下、約180以下、又は約160以下であってもよい。
【0050】
光スイッチタンパク質としては、Vividタンパク質を基に本発明者らが開発したマグネットを用いてもよい。マグネットは、配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド及びその変異体ポリペプチドから、それぞれ独立の選択される2つの異なるポリペプチドのセットである。特に、セットの一方のポリペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列又はこれと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列において、52位のIle及び55位のMetが、側鎖に正電荷を有するアミノ酸で置換された配列を有し、他方のポリペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列又はこれと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列において、52位のIle及び55位のMetが、側鎖に負電荷を有するアミノ酸で置換された配列を有するものが挙げられる。
ここで、側鎖に正電荷を有するアミノ酸は、天然のアミノ酸であっても非天然のアミノ酸であってもよく、天然のアミノ酸の場合には、リシン、アルギニン、及びヒスチジンが挙げられる。側鎖に負電荷を有するアミノ酸も、天然のアミノ酸であっても非天然のアミノ酸であってもよく、天然のアミノ酸の場合には、アスパラギン酸とグルタミン酸が挙げられる。
【0051】
マグネットの具体例としては、以下のものが挙げられる。
pMagとnMag
pMagとnMagHigh1
pMagHigh1とnMag
pMagHigh1とnMagHigh1
ここで、pMagは、配列番号:1のアミノ酸配列又はこれと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列において、I52R及びM55Rの変異を有するポリペプチドをいい、pMagHigh1は、pMagのアミノ酸配列において、さらにM135I及びM165Iの変異を含むポリペプチドをいう。
また、nMagは、配列番号:1にアミノ酸配列又はこれと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列において、I52D及びM55Gの変異を有するポリペプチドをいい、nMagHigh1は、nMagのアミノ酸配列において、さらにM135I及びM165Iの変異を含むポリペプチドをいう。
【0052】
光スイッチタンパク質は、青色光を照射することによってヘテロ二量体を形成し、光照射を止めることにより当該ヘテロ二量体が迅速に解離する。
【0053】
光スイッチタンパク質のそれぞれのポリペプチドと、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びC末端フラグメントは、公知の方法で結合させることができる。例えば、それぞれをコードする核酸を適宜連結し、融合ポリペプチドとして発現させる方法が挙げられる。この場合、光スイッチタンパク質のいずれかのポリペプチドと、N末端側フラグメント又はC末端側フラグメントとの間には、リンカーを介在させてもよい。
リンカーとしては、例えば、1又は複数のグリシンとセリンを構成アミノ酸とするフレキシブルなリンカーを用いることができる。
【0054】
(薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのセット)
本発明に用いられる「薬物存在下で二量体を形成する2つのポリペプチドのセット」は、公知のものとすることができる。例えば、ラパマイシン存在下でヘテロ二量体を形成するFKBP(FK506-binding protein)とFRB(FKBP12-rapamycin associated protein 1 fragment)のセット、ジベレリンとその結合タンパク質(GAI/GID1)を用いたシステム(Nat. Chem. Biol. 8, 465-470 (2012) doi:10.1038/nchembio.922)、フシコクシンとその結合タンパク質(CT52M1/T14-3-3cΔC-M2)を用いたシステム(PNAS 110, E377-386 (2013) doi: 10.1073/pnas.1212990110)、アブシジン酸とその結合タンパク質(PYL/ABI)を用いたシステム(Science Signaling 4 (164), rs2 (2011) DOI: 10.1126/scisignal.2001449)、rCD1/FK506とその結合タンパク質(FKBP/SNAP)を用いたシステム(Angew. Chem. Int. Ed. 53, 1-5 (2014) DOI: 10.1002/anie.201402294)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
薬物存在下で二量体を形成するポリペプチドのそれぞれと、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びC末端フラグメントとは、光スイッチタンパク質の場合と同様に結合させることができる。
また、薬物存在下で二量体を形成するポリペプチドのそれぞれと、あるいは、光スイッチタンパク質のポリペプチドのそれぞれと、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びC末端フラグメントとの結合において、ポリペプチドのそれぞれは、本明細書において記載するポリペプチドのそれぞれから任意に選択することができ、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント及びC末端フラグメントも本明細書において記載するフラグメントや組み合わせから任意に選択することができる。すなわち、本明細書において、例示されるポリペプチドのそれぞれと、例示されるフラグメントとを任意に結合させることができ、好ましいもの同士であっても、一方を好ましいものから選択し、他方をより好ましいものから選択するといったことも可能である。当然に、好ましいものと好ましいものとを組み合わせてもよく、好ましいものとさらに好ましいものとを組み合わせてもよく、例示されるものと、好ましいもの、より好ましいもの、更に好ましいものとを組み合わせてもよい。
【0056】
(核酸)
本発明は、2つのポリペプチドのセットを構成するポリペプチドをコードする核酸も提供する。
本明細書において用語「核酸」は、特に記載されていない限り、DNA、RNA、DNA/RNAのキメラ、及び、locked nucleic acid(LNA)やペプチド核酸(PNA)などの人工核酸を含む。
【0057】
このような核酸としては、例えば、光スイッチタンパク質の一方のポリペプチドと、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメントとの融合ポリペプチドをコードする核酸、及び、光スイッチタンパク質の他方のポリペプチドと、Cpf1タンパク質のC末端側フラグメントとの融合ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。光スイッチタンパク質のいずれか一方のポリペプチドと、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント又はC末端側フラグメントの融合ポリペプチドとの間のリンカーもコードする核酸であってもよい。
【0058】
また本発明に係る核酸の別の例としては、薬物存在下で二量体を形成するポリペプチドの一方とCpf1タンパク質のN末端側フラグメントとの融合ポリペプチドをコードする核酸、及び、薬物存在下で二量体を形成するポリペプチドの他方とCpf1タンパク質のC末端側フラグメントとの融合ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。薬物存在下で二量体を形成するポリペプチドのセットのいずれか一方と、Cpf1タンパク質のN末端側フラグメント又はC末端側フラグメントの融合ポリペプチドとの間のリンカーもコードする核酸であってもよい。
【0059】
本発明に係る核酸は、当業者が公知の方法にしたがって合成することができる。
【0060】
本発明は、本発明に係る核酸を含む発現ベクターも包含する。本発明に係る発現ベクターにおいては、本発明に係る2つのポリペプチドのセットのそれぞれをコードする核酸のいずれか一方が挿入されていてもよく、核酸の双方が1つのベクターに挿入されていてもよい。また、かかるベクターには、ガイドRNAをコードする核酸が含まれていてもよい。
【0061】
本発明の核酸はそのまま、又は制限酵素で消化し、又はリンカーを付加して、発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することができる。ベクターとしては、大腸菌由来プラスミド(pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC18、pUC19、pUC118、pBluescript II等)、枯草菌由来プラスミド(pUB110、pTP5、pC1912、pTP4、pE194、pC194等)、酵母由来プラスミド(pSH19、pSH15、YEp、YRp、YIp、YAC等)、バクテリオファージ(λファージ、M13ファージ等)、ウイルス(レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、バキュロウイルス等)、コスミド等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
プロモーターは、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。宿主が動物細胞である場合は、例えば、SV40(simian virus 40)由来プロモーター、CMV(cytomegalovirus)由来プロモーターを用いることができる。宿主が大腸菌である場合は、trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター等を用いることができる。
発現ベクターには、DNA複製開始点(ori)、選択マーカー(抗生物質抵抗性、栄養要求性等)、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、タグ(FLAG、HA、GST、GFPなど)をコードする核酸等を組み込んでもよい。
【0063】
上記発現ベクターで適当な宿主細胞を形質転換することにより、形質転換体を得ることができる。宿主は、ベクターとの関係で適宜選択することができ、例えば、大腸菌、枯草菌、バチルス属菌)、酵母、昆虫又は昆虫細胞、動物細胞等が用いられる。動物細胞として、例えば、HEK293T細胞、CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞、HeLa細胞、Vero細胞を用いてもよい。形質転換は、宿主の種類に応じ、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法等、公知の方法に従って行うことができる。
形質転換体を常法に従って培養することにより、目的とするポリペプチドが発現する。
【0064】
形質転換体の培養物からのタンパク質の精製は、培養細胞を回収し、適当な緩衝液に懸濁してから超音波処理、凍結融解などの方法により細胞を破壊し、遠心分離やろ過によって粗抽出液を得る。培養液中にポリペプチドが分泌される場合には、上清を回収する。
粗抽出液又は培養上清からの精製も公知の方法又はそれに準ずる方法(例えば、塩析、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー等)で行うことができる。
【0065】
(キット)
本発明に係るキットは、標的二本鎖核酸を切断するためのキットであって、本発明に係る「ヌクレアーゼ活性型の2つのポリペプチドのセット」、又は該ポリペプチドのセットをコードする核酸、又は該核酸を含むベクターと、標的二本鎖核酸の一方の配列に相補的な配列を含むガイドRNA又はそれをコードする核酸と、を含む。
例えば、ヌクレアーゼ活性型の2つのポリペプチドのセットのそれぞれをコードする核酸、及びガイドRNAをコードする核酸の合計3種類の核酸を含むキットとすることができ、該キットにおいて3種類の核酸は、1つ、2つ、又は3つのベクターに挿入されていてもよい。ガイドRNAは2種類以上であってもよい。
【0066】
本発明に係るキットは、標的二本鎖核酸を切断するためのキットであって、本発明に係る「ニッカーゼ活性型の2つのポリペプチドのセット」、又は該ポリペプチドのセットをコードする核酸、又は該核酸を含むベクターと、標的二本鎖核酸のそれぞれの配列に相補的な配列を含むガイドRNAのペア又はそれらをコードする核酸と、を含む。
例えば、ニッカーゼ活性型の2つのポリペプチドのセットのそれぞれをコードする核酸、及びガイドRNAのペアをコードする核酸の合計4種類の核酸を含むキットとすることができ、該キットにおいて、4種類の核酸は、1つ、2つ、3つ又は4つのベクターに挿入されていてもよい。ガイドRNAのペアは、2以上であってもよい。
【0067】
本発明に係るキットは、切断に続くゲノム編集に用いることもでき、その場合、NHEJやHDRに必要な試薬を備えていてもよい。
【0068】
本発明に係るキットは、標的遺伝子の発現を抑制するためのキットであって、本発明に係る「標的遺伝子の遺伝子発現を抑制する2つのポリペプチドのセット」、又は該ポリペプチドのセットをコードする核酸、又は該核酸を含むベクターと、標的遺伝子の部分配列に相補的なガイドRNA又はそれをコードする核酸と、を含む。
例えば、標的遺伝子の遺伝子発現を抑制する2つのポリペプチドのセットをそれぞれコードする核酸、及びガイドRNAをコードする核酸の合計3種類の核酸を含むキットとすることができ、該キットにおいて3種類の核酸は、1つ、2つ、又は3つのベクターに挿入さいれていてもよい。ガイドRNAは2種類以上であってもよい。
【0069】
本発明に係るキットは、標的遺伝子の発現を活性化するためのキットであって、本発明に係る「標的遺伝子の遺伝子発現を活性化する2つのポリペプチドのセット」、又は該ポリペプチドのセットをコードする核酸、又は該核酸を含むベクターと、アプタマーを導入した前記標的遺伝子の部分配列に相補的な配列を含むガイドRNA又はそれをコードする核酸と、転写活性化ドメインが連結するアプタマー結合タンパク質又はそれをコードする核酸と、を含む。
例えば、標的遺伝子の遺伝子発現を活性化する2つのポリペプチドのセットをそれぞれコードする核酸、アプタマー及びガイドRNAをコードする核酸、並びに転写活性化ドメイン及びアプタマー結合タンパク質をコードする核酸の合計4種類の核酸を含むキットとすることができ、該キットにおいて4種類の核酸は、1つ、2つ、3つ、又は4つのベクターに挿入さいれていてもよい。ガイドRNAは2種類以上であってもよい。
本発明においては、転写活性化ドメインとしてVP64がCpf1タンパク質のC末端側フラグメントに結合したポリペプチドを含む標的遺伝子の遺伝子発現を活性化する2つのポリペプチドのセット、アプタマー結合タンパク質としてMS2とし、転写活性化ドメインとして、p65及びHSF1とし、MS2結合配列が結合したガイドRNAをコードする核酸、並びにp65、HSF1及びMS2をコードする核酸が好適に用いられるが、VP64、MS2、p65及びHSF1に相当する因子として、Nature (2015) 517, 583-588及びnature protocols (2012) 7(10), 1797-1807に開示されるような転写活性化ドメイン及びアプタマー結合タンパク質を用いることもできる。
【0070】
本発明に係るキットは、標的遺伝子の発現を活性化するためのキットや標的遺伝子の発現を抑制するためのキットである場合と同様に、機能性ドメインに基づいた機能を発揮するためのキットであってもよい。
当該キットには、上述の「ニッカーゼ活性型の2つのポリペプチドのセット」等や上述の「ヌクレアーゼ不活性型の2つのポリペプチドのセット」等を含んでいてもよい。
【0071】
本発明に係るキットは、他に必要な試薬や器具を具備することができ、例えば各種緩衝液や必要なプライマー、酵素、取扱説明書等が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
【0073】
誘導会合型Cpf1ヌクレアーゼをコードするプラスミドの作製
コドンを最適化したLachnospiraceae bacterium ND2006 由来のCpf1(LbCpf1)のN末端側フラグメント並びにC末端側フラグメントをコードするcDNAは、Addgene より入手したplasmid(#69988)を元にして作製した。薬物スイッチタンパク質(FKBP,FRB)をコードするcDNAはヒトcDNAライブラリーを元に作製した。光スイッチタンパク質(pMag,nMagHigh1)をコードするcDNAは参考文献(Kawano, F. et al. Nat. Commun. 6, 6256 (2015))に従って作製した。このような二量体化ドメイン(光スイッチタンパク質,薬物スイッチタンパク質)を標準的なPCRで増幅する過程で、グリシンとセリンからなるリンカーと核局在化配列をそれらの5'末端や3'末端に付加した。このようにCpf1のN末端側フラグメント及びC末端側フラグメントと二量体化ドメインを用いた誘導会合型Cpf1のコンストラクトはpcDNA3.1 V5/His-Aベクター(Invitrogen)に導入した。
【0074】
分割dCpf1アクチベーターをコードするプラスミドの作製
分割dCpf1アクチベーターをコードするプラスミドを作製するために、標準的なoverlap PCRを用いて、LbCpf1にE925A変異を導入してヌクレアーゼ活性を欠失させたdLbCpf1を作製した。p65-HSF1をコードするcDNAをAddgene plasmid(#61423)より入手し、その5'末端と3'末端にグリシンとセリンからなるリンカーと核局在化配列をPCRで付加した。dLbCpf1のN末端側フラグメントとC末端側フラグメント及びp65-HSF1からなる分割dLbCpf1アクチベーターのコンストラクトはpcDNA3.1 V5/His-Aベクターに導入した。コントロールとしてのSAMを作製するために、dCas9-VP64とMS2-p65-HSF1をAddgene plasmid(#61422 と61423)から増幅し、pcDNA3.1 V5/His-Aに導入した。
【0075】
crRNA及びsgRNAをコードするプラスミドの作製
ヒトU6プロモーターを用いた哺乳類細胞でのcrRNAの発現にはpSPgRNAベクター(Addgene plasmid #47108)を改変して用いた。この改変pSPgRNAベクターのBsmBIサイトにオリゴDNAを導入することにより、停止コドンが導入されたFlucレポーター、DNMT1、GRIN2b、FANCF1、GAL4-luciferase レポーター、ASCL1、HBG1、IL1R2、IL1RN、NGN3をそれぞれ標的とするcrRNAを作製した。MS2結合配列を導入したsgRNA(sgRNA 2.0と呼ぶ)はAddgene plasmid(#61424)より増幅し、pSPgRNAベクターに導入して用いた。ASCL1、HBG1、IL1R2、IL1RN、NGN3をそれぞれ標的とするsgRNAは、このsgRNA 2.0ベクターのBbsIサイトにオリゴDNAを導入することにより作製した。
【0076】
レポータープラスミドの作製
停止コドンが導入されたFlucレポーターは、pGL4.31ベクター(Promega)からのfirefly luciferase(Fluc)をpcDNA 3.1/V5-HisAベクターのHind IIIとXho Iサイトに導入すると共に、停止コドンや PAM配列をMulti Site-Directed Mutagenesis Kitで導入することによって作製した。Luciferase donorベクターはpColdIベクター(Clontech)のXho IとHind IIIサイトにFlucの配列を逆さにして導入することにより作製した。Surrogate EGFPレポーターは、pcDNA 3.1/V5-HisAベクターのHind III and Xho IサイトにmCherryと コドンフレームがずれたEGFP を導入することにより作製した。なお、このmCherryと コドンフレームがずれたEGFP の間には、EcoR IとBamH I サイトにオリゴDNAを用いてDNMT1 標的配列を導入することにより作製した。
【0077】
細胞培養
HEK293T細胞(ATCC)は10% FBS(HyClone)、100 unit/mL penicillin、100 μg/mL streptomycin(GIBCO)を添加したDulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM,Sigma Aldrich)を用いて37 ℃、5% CO2の条件下で培養した。HeLa細胞(ATCC)は10% FBS、100 unit/mL penicillin、100 μg/ml streptomycinを添加したMinimum Essential Media(MEM, Sigma Aldrich)を用いて37 ℃、5% CO2の条件下で培養した。
【0078】
Luciferaseプラスミドを用いたHDRアッセイ
HEK293T細胞を2.0 × 104 cells/wellの密度で 96-well black-walled plate(Thermo Fisher Scientific)に播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。HEK293T細胞への遺伝子導入はLipofectamine 3000(Thermo Scientific)を用いてマニュアルに従って行った。二量体化ドメインを連結したLbCpf1のN末端側フラグメント、二量体化ドメインを連結したLbCpf1のC末端側フラグメント、crRNA、停止コドンが導入されたFlucレポーター、Luciferase donorベクターをそれぞれコードするプラスミドを2.5:2.5:5:1:4の比でトランスフェクションした。なお、トランスフェクションに用いたプラスミドの総量は0.1 μg/wellである。薬物(ラパマイシン)誘導会合型split-LbCpf1の評価の場合、トランスフェクションから24時間後、10 nM rapamycinを含む100 μLのDMEMで培地を置換した。なお、光誘導会合型split-LbCpf1の評価の場合、rapamycinではなく、青色光照射下でサンプルを培養した。青色光照射には470 nm ± 20 nmのLED光源(CCS Inc.)を用いた。青色光の強度は1 W/m2で光照射を行なった。48時間のインキュベーションの後、培地を500 μM D-luciferin(Wako Pure Chemical Industries)を含む100 μLのphenol red-free DMEM(Sigma Aldrich)で置換した。30分間のインキュベーションの後、プレートリーダー(Centro XS3 LB 960,Berthold Technologies)で発光計測を行なった。(
図1,
図2,
図3)
【0079】
誘導会合型のゲノム編集
非相同末端結合(NHEJ)による挿入欠失(indel)変異の評価のために、HEK293T細胞を1.0 × 105 cells/wellの密度で 24-well black-walled plate(Thermo Fisher Scientific)に播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。HEK293T細胞への遺伝子導入はLipofectamine 3000(Thermo Scientific)を用いてマニュアルに従って行った。二量体化ドメインを連結したLbCpf1のN末端側フラグメント、二量体化ドメインを連結したLbCpf1のC末端側フラグメント、crRNAをそれぞれコードするプラスミドを1:1:1の比でトランスフェクションした。ポジティブコントロールとして、全長LbCpf1とcrRNAをそれぞれコードするプラスミドを2:1の比でトランスフェクションした。なお、トランスフェクションに用いたプラスミドの総量は0.5 μg/wellである。HeLa細胞の場合、5.0 × 104 cells/wellの密度で 24-well black plate(Thermo Fisher Scientific)で播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。HeLa細胞への遺伝子導入はX-tremeGENE 9(Sigma Aldrich)を用いてマニュアルに従って行った。薬物(ラパマイシン)誘導会合型split-LbCpf1の評価の場合、トランスフェクションから24時間後、10 nM rapamycinを含むDMEMで培地を置換した。なお、光誘導会合型split-LbCpf1の評価の場合、rapamycinではなく、青色光照射下でサンプルを培養した。特に記載がない場合は、24時間のインキュベーションの後、Blood Cultured Cell Genomic DNA Extraction Mini Kit (Favorgen)を用いて、マニュアルに従ってゲノムDNAを抽出した。(
図4,
図5,
図6,
図7,
図8)
【0080】
内在性遺伝子のindel変異を定量するためのT7EIアッセイ
split-LbCpf1や全長LbCpf1による切断部位を含むゲノムDNAをPrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(TaKaRa)を用いたPCRにより増幅した。このPCRは次のようなtouchdown PCRの条件で行なった:98 ℃、 3 min; (98 ℃, 10 sec; 72-62 ℃, -1 ℃/cycle, 30 sec; 72 ℃, 60 sec) × 10 cycles; (98 ℃, 10 sec; 62 ℃, 30 sec; 72 ℃, 60 sec) × 25 cycles, 72 ℃, 3 min。PCRで増幅したアンプリコンはFastGene Gel/PCR Extraction Kits(Nippon Genetics)を用いて、マニュアルに従って精製した。精製したアンプリコンは2 μL の制限酵素用NEB buffer 2(New England Biolabs)と超純水と混和して20 μLとし、ヘテロ二重鎖DNAを形成させるためにre-annealingを行なった(95 ℃, 10 min; 90-15℃, -2.5 ℃/ 1 min)。Re-annealingを行なった後、ヘテロ二重鎖DNAをT7 endonuclease I(T7EI,New England Biolabs)で30 min、37 ℃で処理を行い、ゲル電気泳動装置(Agilent 4200 TapeStation,Agilent)での解析を行なった。定量はバンドの強度を元に行った。Split-LbCpf1や全長LbCpf1によるindel変異の効率は次の式に基づいて計算した:100 × (1 - (1 - (b + c)/(a + b + c))1/2)。ただし、aはT7EIによって切断されなかったPCR産物、bとcはT7EIによって切断されたPCR産物を示す。
【0081】
Surrogate EGFPレポーターを用いた空間的ゲノム編集の評価
HEK293T細胞を8.0 × 105 cells/dishの密度で fibronectin(BD Biosciences)で表面を修飾した35 mm dish (Iwaki Glass)に播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。HEK293T細胞への遺伝子導入はLipofectamine 3000(Thermo Scientific)を用いてマニュアルに従って行った。N730-pMag、nMagHigh1-C731、DNMT1を標的とするcrRNA、DNMT1の標的部位を含むsurrogate EGFPレポーターを1:1:2:6の比でトランスフェクションした。トランスフェクションに用いたプラスミドの総量は0.5 μg/dishとした。トランスフェクションから24時間後、フォトマスクを用いて2 mmのスリット状に青色光を照射した(24時間,37 ℃,5% CO2)。4% paraformaldehydeで15 min処理して細胞を固定化した。実体顕微鏡(M205 FA,Leica)を用いて画像を取得し、ソフトウェア(Metamorph,Molecular Devices)で画像解析を行なった。(
図9)
【0082】
GAL4-luciferaseレポーターを用いた転写活性化の評価
HEK293T細胞を2.0 × 104 cells/wellの密度で 96-well black-walled plate(Greiner Bio-One)に播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。HEK293T細胞への遺伝子導入はLipofectamine 3000(Thermo Scientific)を用いてマニュアルに従って行った。所定のドメインを連結したLbCpf1のN末端側フラグメント、所定のドメインを連結したdLbCpf1のC末端側フラグメント、crRNA、luciferaseレポーターを1:1:1:1の比でトランスフェクションした。ポジティブコントロールとして転写活性化ドメインを連結した全長dLbCpf1を用いる場合には、転写活性化ドメインを連結した全長dLbCpf1、crRNA、luciferaseレポーターを2:1:1の比でトランスフェクションした。トランスフェクションに用いたプラスミドの総量は0.1 μg/wellとした。トランスフェクションから48時間後、培地を500 μM D-luciferin(Wako Pure Chemical Industries)を含む100 μLのphenol red-free DMEM(Sigma Aldrich)で置換した。生物発光測定はプレートリーダー(Centro XS3 LB 960,Berthold Technologies)を用いて行なった。(
図10,
図12,
図14,
図16)
【0083】
自発会合型split-Cpf1のHDRアッセイ
HEK293T細胞を2.0 × 104 cells/wellの密度で 96-well black-walled plate(Thermo Fisher Scientific)に播種し、37 ℃,5% CO2の条件下で24時間培養した。HEK293T細胞への遺伝子導入はLipofectamine 3000(Thermo Scientific)を用いてマニュアルに従って行った。LbCpf1のN末端側フラグメント(N574)、LbCpf1のC末端側フラグメント(C575)、crRNA、停止コドンが導入されたFlucレポーター及びLuciferase donorベクターをそれぞれコードするプラスミドを2.5:2.5:5:1:4の比でトランスフェクションした。なお、トランスフェクションに用いたプラスミドの総量は0.1 μg/wellであった。48時間のインキュベーションの後、培地を500 μM D-luciferin(Wako Pure Chemical Industries)を含む100 μLのphenol red-free DMEM(Sigma Aldrich)で置換した。30分間のインキュベーションの後、プレートリーダー(Centro XS3 LB 960,Berthold Technologies)で発光計測を行なった。(
図11)
【0084】
定量的リアルタイムPCR分析
Cells-to-Ct Kit(Thermo Fisher Scientific)もしくはCellAmp Direct RNA Prep Kit(TaKaRa)とPrimeScript RT Master Mix(TaKaRa)、SuperScript IV VILO Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を組み合わせて、マニュアルに従ってトータルRNAを抽出した。StepOnePlusシステム(Thermo Fisher Scientific)とTaqMan Gene Expression Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を用いてマニュアルに従って定量的リアルタイムPCR分析を行った。それぞれの標的遺伝子と内在性コントロールのGAPDHを検出するためのTaqManプローブ(Life technologies)を用いた。TaqMan Gene Expression Assay IDは以下のとおり:ASCL1: Hs04187546_g1, MYOD1: Hs02330075_g1, IL1RN: Hs00893626_m1, IL1R2: Hs01030384_m1, NGN3: Hs01875204_s1, HBG1: Hs00361131_g1, GAPDH: Hs99999905_m1)。ネガティブコントロール(空のベクターを導入した細胞を暗所で処理したもの)に対するそれぞれのサンプルの相対的なmRNAレベルはstandard ΔΔCt methodで算出した。(
図13,
図15,
図17,
図18,
図19)
【0085】
iPS細胞の培養、トランスフェクション、青色光照射による神経細胞への分化
RIKEN Bio Resource CenterよりヒトiPS細胞(#454E2)を入手し、マトリゲル(Corning, #354230)でコートした6-well culture plate(Thermo Fisher Scientific)を用いてmTeSR1培地(Stemcell Technologies)の中で培養した。5.0 × 105 個のiPS細胞にpCAG-BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLS、pCAG-BPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLS、NGN3標的とするcrRNAを導入するために4D-Nucleofector(Lonza,CA-137 programを利用)とP3 Primary Cell 4D-Nucleofector X Kit S(Lonza)を用いた。トランスフェクションした細胞を2.5 × 105 cells/wellの密度でマトリゲルでコートした8-well chamber slide(Thermo Scientific)に播種し、10 μM ROCK inhibitor(WAKO)を含んだmTeSR1培地で培養した。この10 μM ROCK inhibitorを含んだ新しいmTeSR1培地を毎日添加した。トランスフェクションから24時間後、サンプルを定量的リアルタイムPCRで分析し、トランスフェクションから96時間後、蛍光抗体法での染色を行なった。(
図20,
図21,
図22)
【0086】
分割dLbCpf1アクチベーターで分化させた神経細胞を蛍光抗体法で分析
サンプルをPBSで2回洗浄し、4% paraformaldehyde(WAKO)で10分間固定した後、0.2% Triton X-100を含んだPBSで10分間処理した。サンプルをPBSで2回洗浄し、3% BSAと10% FBSで1 時間ブロッキングを行い、anti-beta III tubulin eFluor 660 conjugate(eBioscience, catalog no. 5045-10, clone 2G10-TB3)で3時間染色を行った。なお、anti-beta III tubulin eFluor 660 conjugateはブロッキング溶液で1:500に希釈して用いた。サンプルをPBSで2回洗浄し、DAPI(Thermo Scientific)で10分間染色した。染色したサンプルは20倍の対物レンズを搭載した共焦点レーザー走査顕微鏡(Carl Zeiss,LSM710)で蛍光観察した。
【0087】
分割dCpf1アクチベーターによる内在性遺伝子の活性化とdCas9-SAMとの比較
HEK293T細胞を2.0 × 104 cells/wellの密度で 96-well plate(Thermo Scientific)に播種し、37 ℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。HEK293T細胞への遺伝子導入はLipofectamine 3000(Thermo Scientific)を用いてマニュアルに従って行った。トランスフェクションに用いたプラスミドの総量は0.1 μg/wellとした。アクチベータードメインを連結したCpf1のN末端断片(BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLS)をコードするcDNA(この配列は配列番号15に同じ)、アクチベータードメインを連結したdCpf1のC末端断片(BPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLS)をコードするcDNA(この配列は配列番号16に同じ)、crRNAを1:1:1の比でトランスフェクションした。dCas9-SAMの場合、dCas9-VP64をコードするcDNA、MCP-p65-HSF1をコードするcDNA、sgRNA2.0を1:1:1の比でトランスフェクションした。トランスフェクションから48時間後、定量的リアルタイムPCR(rtPCR)分析を行った。
【0088】
マウスの生体(in vivo)での遺伝子活性化
動物実験は東京大学の「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」に従って実施した。In vivoでのルシフェラーゼレポーター実験では、6週齢のメスのマウス(BALB/c)に分割dCpf1アクチベーターをコードするcDNA、GAL4-UASルシフェラーゼレポーター、およびレポーターを標的とするcrRNAもしくは無関係なヒトB4GALNT1を標的とするcrRNAを搭載したプラスミドを1:1:1の比でインジェクションした。インジェクションにはTransIT-EE Hydrodynamic Delivery Solution(Mirus Bio LLC)を用いた。1匹のマウスに体重1gあたり0.1 mLのインジェクション溶液と、1匹のマウスあたり総量75 μgのDNAを用いてインジェクションを行なった。インジェクションから20時間後、除毛クリームを使ってマウスの腹部の皮膚を除毛した。インジェクションから24時間後に、Lumazone 生物発光イメージャー(日本ローパー)とEvolve 512 EMCCDカメラ(Photometrics)を使って生物発光イメージングを行った。生物発光イメージングの直前に、100 mM D-luciferinを含む200 μLのHank’s balanced salt solutionをマウスの腹腔にインジェクションし、インジェクションから5分以内に生物発光画像を取得した。In vivoで内在性遺伝子(ASCL1)を活性化する場合には、分割dCpf1アクチベーターをコードするcDNAとASCL1を標的とするcrRNAもしくはネガティブコントロールのcrRNAを1:1の比で、TransIT-EE Hydrodynamic Delivery Solutionを使って、マウスにインジェクションした。このとき、1匹のマウスあたり総量100 μgのDNAを用いた。インジェクションから24時間後に、肝臓を取り出してRNAlater solution(Invitrogen)の中に入れた。これはRNAの分解を防ぐためである。Cryolys Evolution cooling systemを搭載したPrecellys Evolution tissue homogenizer(Bertin Instruments)、Precellys Lysing Kit CK28、Nucleospin RNAを使って、肝臓からTotal RNAを抽出し、Superscript IV VILO Master Mixを使ってcDNAを合成した。Luna Universal Probe qPCR Master Mix(New England Biolabs)を使ってrtPCRを行い、StepOne Real-Time PCR Systemで解析を行った。ASCL1遺伝子と内在性コントロールのGAPDH遺伝子を検出するためにTaqManプライマー(Life technologies)を用いた。TaqMan Gene Expression Assay IDは以下のとおり: ASCL1: Mm03058063_m1、 GAPDH: Mm99999915_g1。トランスフェクションしていないネガティブコントロールに対するそれぞれのサンプルの相対的なmRNAレベルはstandard ΔΔCt methodで算出した。
【配列表フリーテキスト】
【0089】
配列番号:1は、Vividタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号:2は、LbCpf1の全長アミノ酸配列を示す。
配列番号:3は、LpCpf1-NLS-3xHA tagのアミノ酸配列を示す。
配列番号:4は、NLS-N730-FRBのアミノ酸配列を示す。
配列番号:5は、FKBP-C731-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:6は、NLS-N730-pMagのアミノ酸配列を示す。
配列番号:7は、nMagHigh1-C731-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:8は、NLSx3-dN730-FRB-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:9は、VPR-FKBP-dC731-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:10は、NLS-N574-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:11は、NLS-C575-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:12は、BPNLS-CIB1-dN574-CIB1-BPNLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:13は、BPNLS-CIB1-dC575-NLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:14は、NLSx3-CRY2-PHR-p65-HSF1のアミノ酸配列を示す。
配列番号:15は、BPNLS-p65-HSF1-NLS-dN574-p65-HSF1-BPNLSのアミノ酸配列を示す。
配列番号:16は、BPNLS-p65-HSF1-dC575-p65-HSF1-BPNLSのアミノ酸配列を示す。
【配列表】