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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】保護部材の厚み調整方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20240514BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240514BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240514BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240514BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
H01L21/68 N
B24B41/06 L
B24B49/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020097649
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021186954
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣内 大資
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125323(JP,A)
【文献】特開2013-175647(JP,A)
【文献】特開2010-062269(JP,A)
【文献】特開2010-021509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
H01L 21/304
H01L 21/683
B24B 41/06
B24B 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを保持するフィルム保持面を有するステージと、ウェーハを保持するウェーハ保持面を有する保持手段とを備え、該フィルム保持面によって保持されたフィルム上に供給した液状樹脂に、該ウェーハ保持面によって保持されたウェーハの一方の面を押しつけることによって、該ウェーハの該一方の面の全面に液状樹脂を押し広げて、この液状樹脂を硬化することによって、該ウェーハの該一方の面の全面に該液状樹脂を硬化させた樹脂と該フィルムとからなる保護部材を形成する保護部材形成装置と、
該保護部材を介して保持面によってウェーハを保持し、ハイトゲージを用いて該保持面の高さと該保持面に保持されたウェーハの上面高さとを測定した値をもとに、該保護部材を含むウェーハの厚みを算出しながら、研削砥石によってウェーハを研削する研削装置と、
を少なくとも用いて、保護部材の厚みを調整する、保護部材の厚み調整方法であって、
該保護部材形成装置を用いてウェーハの一方の面の全面に保護部材を形成する保護部材形成工程と、
該保護部材を該研削装置の該保持面によって保持し、該研削砥石によるウェーハの研削を実施していない状態で、該ウェーハの中心を中心とする円周上の少なくとも3箇所において、該保護部材を含むウェーハの厚みを該ハイトゲージによって算出する厚み算出工程と、
該厚み算出工程において算出された少なくとも3つの厚み値のうちの1つを基準値として、該基準値と他の2つの厚み値との差である厚み差を算出する算出工程と、
該算出工程において算出された該厚み差を用いて、次に保護部材を形成する前までに、該保護部材形成装置における該ステージの該フィルム保持面と該保持手段の該ウェーハ保持面との傾き関係を調整する傾き調整工程と、
を備える保護部材の厚み調整方法。
【請求項2】
該厚み算出工程後、または、該傾き調整工程後に、該保護部材をウェーハから剥離する剥離装置を用いて、該保護部材をウェーハから剥離する剥離工程をさらに備え、
該保護部材形成工程、該厚み算出工程、該算出工程、該傾き調整工程、および該剥離工程、を繰り返して行う、
請求項1記載の保護部材の厚み調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材の厚み調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円形板状のアズスライスウェーハは、たとえば、円柱状のシリコンインゴットを、ワイヤーソーによってスライスすることによって得られる。この円形板状のアズスライスウェーハは、反りおよびうねりを有している。そのアズスライスウェーハを、研削砥石によって研削することによって、アズスライスウェーハから反りおよびうねりを除去すると共に、アズスライスウェーハの厚みを所定の厚みに調整している。
【0003】
アズスライスウェーハを研削する際には、アズスライスウェーハの一方の面に液状樹脂を押し広げ、その液状樹脂を硬化させる。これにより、アズスライスウェーハの一方の面に、樹脂からなる保護部材を形成している。
【0004】
保護部材の形成については、たとえば、特許文献1に開示されている。この文献の技術では、ステージの上面のフィルム保持面によって、フィルムを保持する。このフィルムの上に液状樹脂を供給し、液状樹脂の上から、ウェーハ保持面に上面を保持されたウェーハの下面を押し付ける。さらに、ウェーハの下面によって液状樹脂に荷重をかけて、ウェーハの下面の全面に、液状樹脂を押し広げる。押し広げられた液状樹脂を硬化させて、保護部材を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-220548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、保護部材を含むウェーハの厚みを均一にするために、フィルムを保持するフィルム保持面と、ウェーハを保持するウェーハ保持面とが、互いに平行になるように調整されている。しかし、これらが僅かに平行でないこと、あるいは、フィルム上における液状樹脂の供給位置が、ウェーハの中心と一致していないことなどによって、保護部材を含むウェーハの厚みが、均一にならないことがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、保護部材を含むウェーハの厚みが不均一になることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保護部材の厚み調整方法(本厚み調整方法)は、フィルムを保持するフィルム保持面を有するステージと、ウェーハを保持するウェーハ保持面を有する保持手段とを備え、該フィルム保持面によって保持されたフィルム上に供給した液状樹脂に、該ウェーハ保持面によって保持されたウェーハの一方の面を押しつけることによって、該ウェーハの該一方の面の全面に液状樹脂を押し広げて、この液状樹脂を硬化することによって、該ウェーハの該一方の面の全面に該液状樹脂を硬化させた樹脂と該フィルムとからなる保護部材を形成する保護部材形成装置と、該保護部材を介して保持面によってウェーハを保持し、ハイトゲージを用いて該保持面の高さと該保持面に保持されたウェーハの上面高さとを測定した値をもとに、該保護部材を含むウェーハの厚みを算出しながら、研削砥石によってウェーハを研削する研削装置と、を少なくとも用いて、保護部材の厚みを調整する、保護部材の厚み調整方法であって、該保護部材形成装置を用いてウェーハの一方の面の全面に保護部材を形成する保護部材形成工程と、該保護部材を該研削装置の該保持面によって保持し、該研削砥石によるウェーハの研削を実施していない状態で、該ウェーハの中心を中心とする円周上の少なくとも3箇所において、該保護部材を含むウェーハの厚みを該ハイトゲージによって算出する厚み算出工程と、該厚み算出工程において算出された少なくとも3つの厚み値のうちの1つを基準値として、該基準値と他の2つの厚み値との差である厚み差を算出する算出工程と、該算出工程において算出された該厚み差を用いて、次に保護部材を形成する前までに、該保護部材形成装置における該ステージの該フィルム保持面と該保持手段の該ウェーハ保持面との傾き関係を調整する傾き調整工程と、
を備える。
【0009】
また、本厚み調整方法では、該厚み算出工程後、または、該傾き調整工程後に、該保護部材をウェーハから剥離する剥離装置を用いて、該保護部材をウェーハから剥離する剥離工程をさらに備えてもよく、該保護部材形成工程、該厚み算出工程、該算出工程、該傾き調整工程、および該剥離工程、を繰り返して行ってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本厚み調整方法では、研削装置のハイトゲージを用いて、保護部材を含むウェーハの厚みを少なくとも3箇所で算出し、その3箇所で算出した厚みの差である厚み差に基づいて、保護部材形成装置におけるステージのフィルム保持面と保持手段のウェーハ保持面との傾き関係を調整すること、すなわち、フィルム保持面とウェーハ保持面との平行度を高めることができる。これにより、保護部材形成装置においてウェーハに保護部材が形成される際、保護部材を含むウェーハの厚みが不均一になることを、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態にかかるウェーハ製造装置を示す説明図である。
図2】ウェーハ製造装置における保護部材形成装置の構成を示す斜視図である。
図3】保護部材形成工程を示す説明図である。
図4】保護部材形成工程を示す説明図である。
図5】保護部材を備えたウェーハの断面図である。
図6】ウェーハ製造装置における研削装置の構成を示す斜視図である。
図7】厚み算出工程を示す説明図である。
図8】厚み算出工程を示す説明図である。
図9】算出工程の例を示す説明図である。
図10】傾き調整工程の例を示す説明図である。
図11】ウェーハの厚みの算出点と、3つの調整軸と、ウェーハの外径との関係を示す説明図である。
図12】ウェーハ製造装置における剥離装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すウェーハ製造装置1は、うねり、反り等をはじめとする変形要素を含むウェーハ100から変形要素を除去して、所定の厚みのウェーハ100を製造する。このウェーハ製造装置1は、ウェーハ100に保護部材を形成する保護部材形成装置2、ウェーハ100を研削する研削装置3、および、ウェーハ100から保護部材を剥離する剥離装置4を備えている。保護部材形成装置2、研削装置3および剥離装置4は、X方向に並ぶように配されている。
【0013】
さらに、ウェーハ製造装置1は、保護部材形成装置2から研削装置3にウェーハ100を搬送するために用いられる受渡カセット部5を備えている。受渡カセット部5は、保護部材形成装置2と研削装置3との間に配置される。
【0014】
ウェーハ100は、図示しないワイヤーソーマシンによってインゴットから切り出されたアズスライスウェーハである。ウェーハ100は、たとえば円板状に形成されており、表面101および裏面102を有している。また、ウェーハ100の外周には、ノッチ107が形成されている。
【0015】
ウェーハ100の裏面102および表面101は、それぞれ、ウェーハ100の一方の面および他方の面の一例に相当する。
【0016】
保護部材形成装置2は、ウェーハ100の裏面102の全面に、樹脂層を含む保護部材を形成する。保護部材形成装置2は、第1の搬送ロボット21を有しており、第1の搬送ロボット21は、保護部材を備えたウェーハ100を受渡カセット部5に収納する。
【0017】
受渡カセット部5は、ウェーハ100を棚状に収納する受渡カセット51と、受渡カセット51が載置されるカセットステージ52とを有している。受渡カセット51は、ウェーハ100を収納するための複数の棚511を備えている。棚511は、保護部材形成装置2側から研削装置3側に受渡カセット51を貫通するように設けられており、棚511に対してウェーハ100を出し入れするための、保護部材形成装置2側の第1の開口512と、研削装置3側の第2の開口513とを備えている。
【0018】
保護部材形成装置2の第1の搬送ロボット21は、第1の開口512を介して、保護部材を備えたウェーハ100を、受渡カセット51の棚511に収納する。
【0019】
研削装置3は、ウェーハ100の表面101および裏面102を研削する。研削装置3は、第2の搬送ロボット31を有している。第2の搬送ロボット31は、受渡カセット51の棚511から、第2の開口513を介して保護部材を備えたウェーハ100を取り出し、研削装置3における所定の位置に載置する。研削装置3は、筐体300を有しており、その-Y方向側の前面には、両面が研削されたウェーハ100を収容するロードポート301が設けられている。
【0020】
剥離装置4は、研削装置3から搬送されたウェーハ100から、保護部材を剥離する。保護部材が剥離されたウェーハ100は、研削装置3を経て、保護部材形成装置2に戻される。
【0021】
以下に、ウェーハ製造装置1の動作の1つである、保護部材の厚みを調整するための保護部材の厚み調整方法について説明する。
【0022】
本実施形態にかかる保護部材の厚み調整方法は、保護部材形成工程、厚み算出工程、算出工程、傾き調整工程および剥離工程を含む。
【0023】
[保護部材形成工程]
図2に示すように、筐体200を有する保護部材形成装置2は、保護部材形成装置2の各構成を制御する第1制御部20を備えている。保護部材形成装置2は、たとえば第1制御部20の制御により、保護部材形成工程を実施する。保護部材形成工程では、保護部材形成装置2を用いて、ウェーハ100の裏面102の全面に、保護部材を形成する。
【0024】
この保護部材形成工程は、まず、第1の搬送ロボット21が、アズスライスウェーハであるウェーハ100を収容しているカセット201から、1枚のウェーハ100を取り出して、第1支持台202に搬送する。ウェーハ検出部27が、ウェーハ100の中心位置および向きを検出する。その後、ウェーハ搬送部25が、第1支持台202からウェーハ100を搬出して、保持手段250に受け渡す。
【0025】
保持手段250は、支持構造251と、ウェーハ保持面252を有する円板状のウェーハ保持部253とを有している。このウェーハ保持面252によって、ウェーハ100の表面101が吸引保持される。
【0026】
また、保持手段250は、支持構造251とウェーハ保持部253との間に、ウェーハ保持部253の中心を支持する連結軸254を備えている。ウェーハ保持部253は、この連結軸254に支持された状態で、支持構造251とともに昇降することが可能である。
【0027】
さらに保持手段250は、支持構造251とウェーハ保持部253との間における連結軸254の周囲に、支持構造251に対するウェーハ保持面252の傾き、すなわち、ウェーハ保持面252とフィルム保持面221との角度関係を調整するための傾き調整機構としての、3つの調整軸255を備えている。
【0028】
調整軸255は、ウェーハ保持面252の中心を中心とする円周上に、互いに等間隔となるように、すなわち、120度おきに設けられている。調整軸255は、各調整軸255が設けられている部分における支持構造251とウェーハ保持部253との間隔を、伸縮することが可能である。これにより、3つの調整軸255は、ウェーハ保持面252とフィルム保持面221との角度関係を調整することができる。
【0029】
ウェーハ100の保持手段250への搬送と並行して、シート載置手段230のクランプ部232が、紫外線を透過する透明材料からなるフィルム103をクランプしてY軸方向に移動することにより、フィルム103をロール部211から引き出す。フィルム103は、図3に示すように、ガラス製のステージ220のフィルム保持面221に載置される。フィルム保持面221は、吸引路223を介して、吸引源222に連通されている。フィルム保持面221は、吸引源222からの吸引力を用いて、フィルム103を吸引保持する。
【0030】
このように、保護部材形成装置2は、フィルム保持面221を有するステージ220と、ウェーハ保持面252を有する保持手段250とを備えている。
【0031】
その後、図2に示す樹脂供給手段240が、樹脂供給ノズル241を旋回させることにより、樹脂供給ノズル241の供給口243を、ステージ220の上方に位置づける。続いて、ディスペンサ242が、樹脂タンク(図示せず)に収容されている、たとえば紫外線硬化樹脂からなる液状樹脂を吸い、樹脂供給ノズル241に送出する。
これにより、樹脂供給ノズル241から、ステージ220に吸引保持されているフィルム103に向けて、図3に示すように、所定量の液状樹脂224が滴下される。
【0032】
図2に示す拡張手段260は、昇降板264により、保持手段250の支持構造251を保持している。拡張手段260は、モータ262によってボールネジ261を回動させることにより、昇降板264とともに保持手段250を降下させる。これにより、図3に矢印701に示すように、保持手段250が降下される。
【0033】
保持手段250の降下に伴い、図4に示すように、ステージ220のフィルム保持面221に吸引保持されているフィルム103上に供給した液状樹脂224に、ウェーハ保持面252によって吸引保持されたウェーハ100の裏面102が押しつけられる。これにより、液状樹脂224が、ウェーハ100の裏面102の全面に押し拡げられる。
【0034】
ステージ220の下方には、たとえば紫外線光源(LED)としての硬化手段270が備えられている。硬化手段270は、ウェーハ100の裏面102に押し拡げられた液状樹脂224に向けて、ステージ220を介して、紫外光271を照射する。その結果、液状樹脂244が硬化されて、硬化された樹脂からなる樹脂層が、ウェーハ100の裏面102の全面に形成される。その後、図2に示す拡張手段260が、昇降板264とともに、ウェーハ保持面252によってウェーハ100を保持している保持手段250を上昇させる。これにより、ウェーハ100が、ステージ220から離間される。
【0035】
その後、ウェーハ100は、図2に示すウェーハ搬送部25によって第2支持台203に搬送され、フィルムカッター28によって、ウェーハ100の外形に沿って、余分なフィルム103が切断される。この際、フィルム103の径は、ウェーハ100の径よりも少し大きくされる。
【0036】
このようにして、図5に示すように、ウェーハ100の裏面102の全面に、液状樹脂244を硬化させた樹脂である樹脂層104とフィルム103とからなる保護部材105が形成される。
保護部材105の形成後、第1の搬送ロボット21が、保護部材105を備えたウェーハ100を、表面101が上向きとなるように、図1に示した第1の開口512を介して、受渡カセット51に収容する。
【0037】
保護部材形成装置2による保護部材形成工程の後、ウェーハ100は、研削装置3によって処理される。
【0038】
図6に示す研削装置3は、ウェーハ100を保持する保持面311を備えたチャックテーブル310、保持面311に保持されたウェーハ100を研削する研削手段330、研削手段330を研削送りするための研削送り手段306を備えている。研削手段330は、研削砥石332を有する研削ホイール331を備えている。
【0039】
また、研削装置3は、研削されたウェーハ100を洗浄するためのスピンナ洗浄ユニット350、および、研削装置3の各構成を制御する第2制御部36を備えている。さらに、研削装置3は、保持面311に保持されたウェーハ100の厚みを算出するためのハイトゲージ320を備えている。
【0040】
そして、研削装置3は、保護部材105を介して保持面311によって保持したウェーハ100を、ハイトゲージ320を用いて、保護部材105を含むウェーハ100の厚みを算出しながら、研削砥石332によって研削するものである。
本実施形態にかかる保護部材の厚み調整方法では、研削装置3は、厚み算出工程および算出工程を実施する。
【0041】
[厚み算出工程]
厚み算出工程では、研削装置3は、保護部材105が形成されたウェーハ100の厚み、すなわち、保護部材105を含むウェーハ100の厚み(ウェーハ100のみの厚みに、保護部材105の厚みを加えたもの)を算出する。
なお、以下では、保護部材105を含むウェーハ100の厚みを、単に、ウェーハ100の厚みと称することがある。
【0042】
この工程では、まず、第2の搬送ロボット31が、受渡カセット部5内の保護部材105を備えたウェーハ100を、第2の開口513を介して取り出す。第2の搬送ロボット31は、ウェーハ100を、その表面101(図5参照)が上向きとなるように、仮置きテーブル32に載置する。
【0043】
そして、第1搬送手段315がウェーハ100の表面101を吸引保持し、チャックテーブル310に搬送する。チャックテーブル310は、保持面311によって、ウェーハ100の裏面102に形成された保護部材105を吸引保持する。これにより、図7に示すように、表面101が露出した状態で、ウェーハ100がチャックテーブル310に保持される。
【0044】
その後、第2制御部36が、ハイトゲージ320によって、ウェーハ100の中心を中心とする円周上の少なくとも3箇所において、ウェーハ100の厚みを算出する。
【0045】
ハイトゲージ320は、チャックテーブル310の保持面311と面一の外枠312、および、ウェーハ100の表面101に、それぞれ、第1接触子321および第2接触子322を接触させる。これにより、ハイトゲージ320は、チャックテーブル310の保持面311の高さ、および、ウェーハ100の高さを測定することができる。ハイトゲージ320は、測定された保持面311の高さとウェーハ100の高さとの差分に基づいて、ウェーハ100の厚みを算出することができる。
【0046】
また、この図7および図6に示すように、チャックテーブル310の下方には、チャックテーブル310を回転させる回転手段としてのモータ317、および、モータ317の回転角度、すなわち、チャックテーブル310の回転角度を検知するためのエンコーダ318が備えられている。モータ317により、チャックテーブル310は、保持面311およびウェーハ100の中心を通過する回転軸401を中心として、回転する。
【0047】
そして、研削装置3による厚み算出工程では、第2制御部36が、モータ317によってチャックテーブル310を回転させながら、ハイトゲージ320によって、ウェーハ100の厚みを算出する。
【0048】
すなわち、第2制御部36は、図8に示すように、チャックテーブル310を回転させながら、ウェーハ100の中心である回転軸401を中心とする円周402上の少なくとも3箇所である、第1算出位置411、第2算出位置412および第3算出位置413に、ハイトゲージ320の第2接触子322を順に接触させる。また、この際、第2制御部36は、各算出位置411~413の外側に位置する、チャックテーブル310の外枠312上の外枠測定位置410に、ハイトゲージ320の第1接触子321を接触させる。
【0049】
これにより、第2制御部36は、第1算出位置411、第2算出位置412および第3算出位置413に関する、3つのウェーハ100の厚み値を算出する。
以下では、第1算出位置411、第2算出位置412および第3算出位置413に関するウェーハ100の厚み値を、それぞれ、第1厚み値T1,第2厚み値T2および第3厚み値T3と称する。
【0050】
[算出工程]
この算出工程では、第2制御部36が、厚み算出工程において算出された3つの厚み値T1~T3のうちの1つを基準値として、この基準値と他の2つの厚み値との差である厚み差ΔTを算出する。
【0051】
たとえば、厚み算出工程により、以下のような厚み値が得られたとする。
第1算出位置411の第1厚み値T1;850μm
第2算出位置412の第2厚み値T2;900μm
第3算出位置413の第3厚み値T3:900μm
【0052】
この場合、第2制御部36は、たとえば、第1厚み値T1(850μm)を基準値とするとともに、厚み差ΔTとして50μmを算出する。
【0053】
この算出工程の後、第2搬送手段316が、チャックテーブル310の保持面311上のウェーハ100の表面101を吸引保持し、ウェーハ100をスピンナ洗浄ユニット350に搬送する。
【0054】
[傾き調整工程]
この傾き調整工程では、図2に示した保護部材形成装置2の第1制御部20が、算出工程において算出された厚み差ΔTを用いて、次に保護部材を形成する前までに、保護部材形成装置2におけるステージ220のフィルム保持面221と保持手段250のウェーハ保持面252との傾き関係を調整する。
【0055】
たとえば、上述した例に示したように、基準値である第1厚み値T1が850μmである一方、第2厚み値T2および第3厚み値T3が900μmであり、厚み差ΔTが50μmであるとする。
【0056】
また、図8に示した、回転軸401から第1算出位置411、第2算出位置412および第3算出位置413までの距離、すなわち、算出位置411~413を規定する円周402の半径が、図9に示すように、124.5mmであるとする。
【0057】
さらに、図2に示した保護部材形成装置2の保持手段250における3つの調整軸255は、図10に示すウェーハ保持部253におけるウェーハ保持面252の中心を通る中心軸501を中心とする円周上に、120度おきに位置している。そして、この円周の半径、すなわち、中心軸501と3つの調整軸255との間の距離が、120mmであるとする。
【0058】
そして、3つの算出点である第1算出位置411、第2算出位置412および第3算出位置413と、3つの調整軸255と、ウェーハ100の外径との関係が、図11に示すように設定されており、3つの調整軸255に対応するように、各算出位置411~413が配置されているとする。図11では、ウェーハ100の外径、および、算出位置411~413を規定する円周402に加えて、3つの調整軸255を規定する円周502を示している。
【0059】
この場合、保護部材形成装置2の第1制御部20は、円周402の半径が124.5mmであり、上述した厚み差ΔTが50μmであることから、ウェーハ保持面252とフィルム保持面221とが、tanθ=50μm/124.5mmとなるような角度θだけ、平行からずれている、と判断する。
【0060】
そして、第1制御部20は、このずれを調整するために、第2算出位置412および第3算出位置413に応じた2つの調整軸255を用いて、これらの調整軸255が設けられている部分における支持構造251とウェーハ保持部253との間隔を、図10に示すように、調整値ΔSだけ調整する。
【0061】
上述の例では、中心軸501と3つの調整軸255との間の距離が120mmであるため、ΔSは、48.19μm(120mm・tanθ)となる。すなわち、第1制御部20は、第2算出位置412および第3算出位置413に応じた2つの調整軸255を用いて、これらの調整軸255の設置箇所における支持構造251とウェーハ保持部253との間隔を、ΔSだけ延ばす。
これにより、ステージ220のフィルム保持面221と保持手段250のウェーハ保持面252との平行度を高めることができる。
【0062】
[剥離工程]
この剥離工程では、図12に示す剥離装置4を用いて、ウェーハ100から、樹脂層104およびフィルム103を含む保護部材105(図5等を参照)が剥離される。
【0063】
図12に示すように、剥離装置4は、ウェーハ100を保持して搬送するための保持手段42を備えている。保持手段42は、ウェーハ100を吸引保持する保持パッド421、保持パッド421を支持するアーム部420、アーム部420を支持してZ軸方向に往復移動させるZ軸方向移動手段423、Z軸方向移動手段423を支持する可動板429、および、可動板429をY軸方向に往復移動させるY軸方向移動手段422を備えている。
【0064】
剥離装置4では、まず、保持手段42の保持パッド421が、Y軸方向移動手段422およびZ軸方向移動手段423によって、剥離装置4に隣接する図6に示した研削装置3のスピンナ洗浄ユニット350にまで移動される。そして、保持パッド421が、スピンナ洗浄ユニット350に載置されているウェーハ100の表面101を吸引保持する。
【0065】
その後、保持手段42は、表面101が上側になるように、ウェーハ100を保持テーブル441上に載置する。保持テーブル441は、ウェーハ100を吸引保持する。そして、保持テーブル441および外側部分剥離手段443が、図5に示したウェーハ100の保護部材105の外側部分だけを、複数箇所(たとえば7箇所)にわたって、ウェーハ100の裏面102から剥離する。この剥離の後、保持テーブル441によるウェーハ100の吸引が解除される。
【0066】
次に、保持手段42は、保持テーブル441上のウェーハ100を保持パッド421によって吸引し、ウェーハ100を全体剥離手段43の上方の位置に搬送し、その位置に固定する。
【0067】
全体剥離手段43は、把持部431、および、把持部431をX軸方向に沿って移動させる移動部材432を含んでいる。把持部431は、ウェーハ100の保護部材105における、-X側の剥離された外側部分を把持する。この状態で、移動部材432が、把持部431を+X側に移動させる。ウェーハ100の位置が固定されているため、保護部材105を把持した把持部431の移動により、ウェーハ100の裏面102から、保護部材105が剥離される。この際、ガイドローラ452が、保護部材105の下面に当接する。
【0068】
剥離された保護部材105は、仮置きテーブル406に、一時的に載置される。仮置きテーブル406は、X軸方向に延在する複数のプレート460を備えている。複数のプレート460は、Y軸方向に所定間隔で並べられている。各プレート460は、ウェーハ100の直径よりも長く延在しており、Y軸方向に所定厚みを有している。また、仮置きテーブル406は、全体として、ウェーハ100よりも大きい載置面積を有している。
【0069】
仮置きテーブル406の下方には、仮置きテーブル406に載置された保護部材105をボックス479に送り出す保護部材送り手段407が設けられている。保護部材送り手段407は、Y軸方向に延在するアーム470、および、アーム470に備えられた2つのピン471を備えている。ピン471は、仮置きテーブル406のプレート460の上面から突出するように延びている。
【0070】
モータ駆動のガイドアクチュエータ472によってアーム470がX軸方向に移動されると、仮置きテーブル406のプレート460から突出するピン471も、X軸方向に移動される。これにより、仮置きテーブル406に載置されている保護部材105が、ボックス479に落下する。
【0071】
ボックス479には、対向する一辺の上端部分に、一対の光学センサ480が設けられている。光学センサ480は、発光部と受光部とを含んでいる。光学センサ480は、発光部から発生される光を受光部が受け、受光部の受光量変化に基づいて、ボックス479に回収された保護部材105が満杯になったかどうかを検知する。
【0072】
その後、剥離装置4では、保持手段42が、ウェーハ100を、図6に示した研削装置3に搬送し、そのスピンナ洗浄ユニット350に、表面101が上向きとなるように載置する。スピンナ洗浄ユニット350にウェーハ100が載置されると、研削装置3の第2の搬送ロボット31が、ウェーハ100を保持し、第2の開口513を介して、受渡カセット51の棚511に収納する。
【0073】
なお、スピンナ洗浄ユニット350の上方に第2の搬送ロボット31が待機していて、剥離装置4の保持手段42が、第2の搬送ロボット31にウェーハ100を受渡してもよい。
【0074】
次に、図2に示した保護部材形成装置2の第1の搬送ロボット21が、第1の開口512を介して、ウェーハ100を、受渡カセット51の棚511から取り出して、保護部材形成装置2の第1支持台202に載置する。
その後、上述した保護部材形成工程、厚み算出工程、算出工程、傾き調整工程、および剥離工程が、たとえば、算出工程において算出された厚み差ΔTが所定値以下となるまで、繰り返して行われる。
【0075】
以上のように、本実施形態では、研削装置3のハイトゲージ320を用いて、保護部材105を含むウェーハ100の厚みを少なくとも3箇所で算出し、その3箇所で算出した厚みの差である厚み差に基づいて、保護部材形成装置2におけるステージ220のフィルム保持面221と保持手段250のウェーハ保持面252との傾き関係を調整すること、すなわち、フィルム保持面221とウェーハ保持面252との平行度を高めることができる。これにより、保護部材形成装置2においてウェーハ100に保護部材105が形成される際、保護部材105を含むウェーハ100の厚みが不均一になることを、抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、保護部材形成工程、厚み算出工程、算出工程、傾き調整工程および剥離工程を、途中で作業者による作業を介在させることなく、実施することができる。これにより、保護部材形成装置2におけるフィルム保持面221とウェーハ保持面252との傾き関係の調整を、自動化することができる。したがって、保護部材105を含むウェーハ100の厚みが不均一になることを、より容易に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、剥離工程において保護部材105を剥離されたウェーハ100を、再び保護部材形成装置2に戻して、保護部材形成工程、厚み算出工程、算出工程、傾き調整工程および剥離工程を繰り返している。これにより、フィルム保持面221とウェーハ保持面252との傾き関係の調整の精度を高めることができる。また、1枚のウェーハ100を使い回しているので、調整のためのコストを低減することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、保護部材形成工程、厚み算出工程、算出工程、傾き調整工程、および剥離工程を、繰り返し実施している。しかしながら、これらの工程は、繰り返されず、1回ずつ実施されるように設定されていてもよい。この場合でも、ステージ220のフィルム保持面221と保持手段250のウェーハ保持面252との平行度を、ある程度まで高めることが可能である。
【0079】
また、本実施形態では、剥離工程が、傾き調整工程の後に実施されている。これに代えて、剥離工程は、厚み算出工程の後、傾き調整工程の前に実施されてもよいし、傾き調整工程と同時に実施されてもよい。
【0080】
また、剥離工程は実施されなくてもよい。この場合、ウェーハ製造装置1は、剥離装置4を備えなくてもよい。すなわち、本実施形態にかかる保護部材の厚み調整方法では、少なくとも、図1に示した保護部材形成装置2および研削装置3が用いられればよい。この場合でも、ステージ220のフィルム保持面221と保持手段250のウェーハ保持面252との平行度を高めることが可能である。
【0081】
また、本実施形態では、厚み算出工程における厚みの算出箇所が、第1算出位置411、第2算出位置412および第3算出位置の3箇所に設定されている。これに関し、厚み算出工程における厚みの算出箇所は、少なくとも3箇所であれよく、4箇所以上であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
100:ウェーハ、101:表面、102:裏面、
103:フィルム、104:樹脂層、105:保護部材、107:ノッチ
1:ウェーハ製造装置、
5:受渡カセット部、51:受渡カセット、52:カセットステージ、
511:棚、512:第1の開口、513:第2の開口、
2:保護部材形成装置、20:第1制御部、21:第1の搬送ロボット、
220:ステージ、221:フィルム保持面、224:液状樹脂、
250:保持手段、251:支持構造、254:連結軸、255:調整軸、
253:ウェーハ保持部、252:ウェーハ保持面、
270:硬化手段、271:紫外光、
3:研削装置、31:第2の搬送ロボット、36:第2制御部、
315:第1搬送手段、316:第2搬送手段、350:スピンナ洗浄ユニット、
310:チャックテーブル、311:保持面、312:外枠、
317:モータ、318:エンコーダ、
320:ハイトゲージ、321:第1接触子、322:第2接触子、
401:回転軸、402:円周、410:外枠測定位置、
501:中心軸、502:円周、
411:第1算出位置、412:第2算出位置、413:第3算出位置、
4:剥離装置、
42:保持手段、43:全体剥離手段、443:外側部分剥離手段、
420:アーム部、421:保持パッド、
422:Y軸方向移動手段、423:Z軸方向移動手段、
406:仮置きテーブル、460:プレート、479:ボックス、
T1~T3:厚み値、ΔT:厚み差、ΔS:調整値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12