(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C23C14/34 B
(21)【出願番号】P 2020114801
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】和田 優
(72)【発明者】
【氏名】對馬 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】川越 裕
(72)【発明者】
【氏名】宮城 匡利
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021101(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/077677(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング面である第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とに連設された側面とを有する酸化物ターゲット材と、
前記酸化物ターゲット材の前記第2主面の側に設けられた基材と、
前記基材と前記酸化物ターゲット材との間に設けられ、前記基材と前記酸化物ターゲット材とを接合する接合部材と、
前記酸化物ターゲット材の前記側面の少なくとも一部から、前記接合部材を跨いで前記基材の表面の少なくとも一部までに設けられた絶縁層と
を具備し、
前記絶縁層が前記酸化物ターゲット材、前記接合部材、及び前記基材のそれぞれに接する当接面にブラスト処理が施されている
スパッタリングターゲットであって、
前記絶縁層と前記酸化物ターゲット材との密着力は、3MPa以上であり、
前記絶縁層の膜厚は100μm以上300μm以下である
スパッタリングターゲット。
【請求項2】
請求項1に記載されたスパッタリングターゲットであって、
前記当接面は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さを有する
スパッタリングターゲット。
【請求項3】
スパッタリング面である第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とに連設された側面とを有する酸化物ターゲット材と、前記酸化物ターゲット材の前記第2主面の側に設けられた基材と、前記基材と酸化物ターゲット材との間に設けられ、前記基材と酸化物ターゲット材とを接合する接合部材とを有するターゲットを準備し、
前記酸化物ターゲット材の前記側面の少なくとも一部から、前記接合部材を跨いで前記基材の表面の少なくとも一部までに絶縁粒子を噴き付け、
前記絶縁粒子を噴き付けたブラスト処理面に絶縁材を溶射して、
前記酸化物ターゲット材との密着力が3MPa以上となるように、前記ブラスト処理面に
、100μm以上300μm以下の膜厚で絶縁層を形成する
スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
請求項
3に記載されたスパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記ブラスト処理面は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さを有する
スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
請求項
3または
4に記載されたスパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記絶縁粒子の平均粒径は、125μm以上180μm以下である
スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
請求項
3~
5のいずれか1つに記載されたスパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記絶縁粒子を0.4MPa以上1.0MPa以下の内圧に設定されたノズルから噴出して前記ブラスト処理面を形成する
スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化アルミニウム(アルミナ)等の酸化物は、電気絶縁性、耐熱性、及び化学的安定性に優れていることから、半導体製造装置、半導体デバイスに適用されている。酸化物を基板に成膜するには、例えば、スパッタリング法が採用されている。例えば、酸化物ターゲット材を基板に対向させ、ターゲット材からスパッタリング粒子を基板に向けて放出させて、基板に酸化膜を形成する。また、ターゲット材は、一般的に、防着板と呼ばれる冶具により、その外周が囲まれている。
【0003】
ここで、酸化物は絶縁性を有する。このため、スパッタリングの際、酸化物よりも低抵抗のバッキングプレートと防着板との間で放電が起きると、酸化物以外の成分がスパッタリングされて、酸化膜に異物が混入する可能性がある。また、放電は、バッキングプレートと防着板との間に限らず、バッキングプレートと接合材(ターゲット材とバッキングプレートとを接合する接合材)との間でも起き得る。
【0004】
これに対処するために、バッキングプレートからターゲット材の側面までを絶縁層で覆う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成であれば、バッキングプレートの表面及び接合材の端部が絶縁層で覆われているため、バッキングプレートと防着板との間、または、接合材と防着板との間での放電が抑制される。さらに、この技術では、バッキングプレートの側面に粗面化処理を施すことにより、絶縁層の密着性を高め、絶縁層の剥離を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の構成では、バッキングプレートには粗面化処理を行っているものの、ターゲット材の側面には粗面化処理を行っていない。
【0007】
ここで、ターゲット材は基板に対向するため、プラズマによって加熱されたり、成膜終了後にはバッキングプレートによって冷やされたりする。これにより、ターゲット材と絶縁層との間に印加される応力は、熱履歴に応じて変動する。さらに、スパッタリング時、絶縁層にターゲット成分が再付着すると、絶縁層には再付着した膜からの応力が印加される。
【0008】
従って、バッキングプレートに粗面化処理を行ったとしても、ターゲット材から絶縁層が剥離する可能性はなくなったとは言えず、仮に剥離が生じた場合、絶縁層下からバッキングプレートまたは接合材が露出し、結局の所、酸化膜に異物が混入することなる。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、バッキングプレートからスパッタリングターゲットの側面までを絶縁層で覆われた構造を有するスパッタリングターゲットにおいて、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るスパッタリングターゲットは、酸化物ターゲット材と、基材と、接合部材と、絶縁層とを具備する。
上記酸化物ターゲット材は、スパッタリング面である第1主面と、上記第1主面とは反対側の第2主面と、上記第1主面と上記第2主面とに連設された側面とを有する。
上記基材は、上記酸化物ターゲット材の上記第2主面の側に設けられている。
上記接合部材は、上記基材と上記酸化物ターゲット材との間に設けられ、上記基材と上記酸化物ターゲット材とを接合する。
上記絶縁層は、上記酸化物ターゲット材の上記側面の少なくとも一部から、上記接合部材を跨いで上記基材の表面の少なくとも一部までに設けられている。
上記絶縁層が上記酸化物ターゲット材、上記接合部材、及び上記基材のそれぞれに接する当接面には、ブラスト処理が施されている。
【0011】
このようなスパッタリングターゲットによれば、絶縁層が酸化物ターゲット材、接合部材、及び基材のそれぞれに接する当接面には、ブラスト処理が施されているので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0012】
上記のスパッタリングターゲットにおいては、上記当接面は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さを有してもよい。
【0013】
このようなスパッタリングターゲットによれば、当接面が8μm以上20μm以下の算術平均粗さを有するので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0014】
上記のスパッタリングターゲットにおいては、上記絶縁層と上記酸化物ターゲット材との密着力は、3MPa以上であってもよい。
【0015】
このようなスパッタリングターゲットによれば、絶縁層と酸化物ターゲット材との密着力が3MPa以上なので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0016】
上記のスパッタリングターゲットにおいては、上記絶縁層の膜厚は100μm以上300μm以下であってもよい。
【0017】
このようなスパッタリングターゲットによれば、絶縁層の膜厚は100μm以上300μm以下なので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法では、スパッタリング面である第1主面と、上記第1主面とは反対側の第2主面と、上記第1主面と上記第2主面とに連設された側面とを有する酸化物ターゲット材と、上記酸化物ターゲット材の上記第2主面の側に設けられた基材と、上記基材と酸化物ターゲット材との間に設けられ、上記基材と酸化物ターゲット材とを接合する接合部材とを有するターゲットが準備される。
上記酸化物ターゲット材の上記側面の少なくとも一部から、上記接合部材を跨いで上記基材の表面の少なくとも一部までに絶縁粒子が噴き付けられる。
上記絶縁粒子を噴き付けたブラスト処理面に絶縁材を溶射して、上記ブラスト処理面に絶縁層が形成される。
【0019】
このような製造方法によれば、当接面には、ブラスト処理が施されているので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0020】
上記のスパッタリングターゲットの製造方法においては、上記ブラスト処理面は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さを有してもよい。
【0021】
このような製造方法によれば、当接面が8μm以上10μm以下の算術平均粗さを有するので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0022】
上記のスパッタリングターゲットの製造方法においては、上記絶縁粒子の平均粒径は、125μm以上180μm以下であってもよい。
【0023】
このような製造方法によれば、125μm以上180μm以下の平均粒径である絶縁粒子によりブラスト処理が施されるため、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【0024】
上記のスパッタリングターゲットの製造方法においては、上記絶縁粒子を0.4MPa以上1.0MPa以下の内圧に設定されたノズルから噴出して上記ブラスト処理面を形成してもよい。
【0025】
このような製造方法によれば、絶縁層と酸化物ターゲット材との密着力が3MPa以上なので、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲットが得られる。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように、本発明によれば、バッキングプレートの表面からスパッタリングターゲットの側面までを絶縁層で覆われた構造を有するスパッタリングターゲットにおいて、絶縁層がターゲット材からより剥離しにくいスパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本実施形態のターゲットを示す模式的断面図である。
図2には、ターゲット30の外周部が示されている。
【
図3】ターゲットの製造方法を示す模式的断面図である。
【
図4】本実施形態のターゲットの変形例を示す模式的断面図である。
【
図5】本実施形態のターゲットの別の変形例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0029】
本実施形態のスパッタリングターゲットが利用される成膜装置の一例を説明する。
図1は、成膜装置の一例を示す模式的断面図である。
【0030】
成膜装置1は、真空容器10と、支持台20と、スパッタリングターゲット30(ターゲットアセンブリ)と、防着板40と、磁気回路部50と、電源60と、排気機構70と、ガス供給機構75とを具備する。支持台20には、処理対象物である基板21が設置されている。
【0031】
真空容器10は、減圧状態を維持可能な容器である。真空容器10には、配管71を通じて、例えば、真空ポンプ、バルブ等の排気機構70が接続されている。排気機構70によって真空容器10内の雰囲気が所定の圧力に維持される。真空容器10には、導入管76を通じて、流量計、弁等のガス供給機構75が設置されている。ガス供給機構75は、真空容器10内に放電ガスを供給する。放電ガスは、例えば、不活性ガス(Ar、Ne、He等)である。また、真空容器10には、真空容器10内の圧力を計測する圧力計が設置されてもよい。
【0032】
支持台20は、真空容器10内に設置されている。基板21は、支持台20に支持される。基板21には、成膜処理が施される。支持台20において、基板21が載置される載置面は、導電体でもよく、絶縁体でもよい。例えば、載置面には、静電チャックが設置されてもよい。支持台20には、基板21を所定温度に保つ温度調節機構が内蔵されてもよい。基板21は、適用されるデバイスに応じて適宜変更され、例えば、ガラス基板、石英基板等の絶縁基板、シリコンウェーハ等の半導体基板、金属基板等である。
【0033】
スパッタリングターゲット30(以下、ターゲット30)は、絶縁物11を介して真空容器10内に設置される。ターゲット30は、支持台20に対して対向するように配置される。ターゲット30に含まれるターゲット材は、基板21に形成する膜の組成に応じて、適宜変更される。例えば、ターゲット材は、酸化アルミニウム材、酸化シリコン材等の酸化物ターゲット材である。酸化物ターゲット材の平面形状は、基板21の平面形状に対応して適宜調整される。ターゲット30の構造については後述する。
【0034】
防着板40は、環状であり、例えば、成膜装置1を上面視した場合、ターゲット30の外周を囲む。例えば、防着板40は、ターゲット30のスパッタリング面31sを開放し、ターゲット30に沿って真空容器10に配置される。防着板40は、例えば、真空容器10の上部に固定されている。防着板40とターゲット30との間には、例えば、0.5mm~数mm程度の隙間が設けられる。防着板40の電位は、接地電位になっている。これにより、成膜時にはパッシェン則が働き、プラズマがスパッタリング面31s付近に集まって安定したプラズマ放電が持続する。
【0035】
磁気回路部50は、支持台20とは反対側のターゲット30の裏側に配置される。磁気回路部50は、ターゲット30に平行に配置されたヨーク51と、ヨーク51に設けられた磁石52とを有する。磁石52は、スパッタリング面31sとは反対側のターゲット30の裏面に臨むように配置されている。
【0036】
これにより、スパッタリング面31s付近には、磁石52から放出された磁場が漏洩して、漏洩した磁場にプラズマ中の電子等が捕捉される。これにより、スパッタリング面31s付近には、高密度のプラズマが形成されて、所謂マグネトロンスパッタリングが行われる。磁石52の形状、個数は、放電の安定性、基板21の成膜層の面内分布、または、ターゲット30の使用効率向上の観点から適宜調整される。
【0037】
電源60は、線路61を介してターゲット30に接続される。電源60は、ターゲット30に電力を供給する。電源60は、DC電源でもよく、VHF電源でもよく、RF電源でもよい。電源60がVHF電源、RF電源等の高周波電源のとき、電源60と、ターゲット30との間の線路61には、整合回路が設けられてもよい。
【0038】
真空容器10内に放電ガスが導入され、ターゲット30に電源60から所定の電力が投入されると、容量結合によりスパッタリング面31s付近に放電プラズマが発生する。放電プラズマ中のイオンがスパッタリング面31sに衝突し、スパッタリング面31sがイオンによりスパッタリングされると、スパッタリング面31sから基板21に向かってスパッタリング粒子が飛散する。これにより、基板21には、スパッタリング粒子が所定の厚みで堆積した膜が形成される。
【0039】
図2は、本実施形態のターゲットを示す模式的断面図である。
図2には、ターゲット30の外周部が示されている。
【0040】
ターゲット30は、ターゲット本体である酸化物ターゲット材31と、基材32と、接合部材33と、絶縁層である溶射絶縁層34とを具備する。
【0041】
酸化物ターゲット材31は、スパッタリング面31s、スパッタリング面31sとは反対側の裏面31rと、スパッタリング面31sと裏面31rとに連設する側面31wとを有する。本実施形態では、スパッタリング面31sを酸化物ターゲット材31における第1主面、裏面31rを酸化物ターゲット材31における第2主面とする。酸化物ターゲット材31は、酸化物焼結体である。
【0042】
基材32は、バッキングプレートであり、酸化物ターゲット材31の裏面31rの側に設けられる。基材32は、絶縁物11に接する部分321と、部分321よりも直径が短い部分322とを有する。部分321、322は、同じ材料であり、一体的に構成されている。
【0043】
基材32が径の異なる部分321、322を有することから、基材32は、部分322が部分321から突き出た凸状体になっている。換言すれば、基材32においては、部分321、322により段差が形成される。部分322の外径は、例えば、酸化物ターゲット材31の直径と略同じである。基材32の内部には、冷媒を流す流路が設けられてもよい。
【0044】
接合部材33は、酸化物ターゲット材31と基材32との間に設けられる。接合部材33は、酸化物ターゲット材31と基材32とを密に接合する。接合部材33は、例えば、インジウム等のろう材である。
【0045】
溶射絶縁層34は、スパッタリング面31s以外のターゲット30の少なくとも一部に設けられる。例えば、溶射絶縁層34は、酸化物ターゲット材31の側面31wの少なくとも一部から、接合部材33を跨いで、基材32の表面の少なくとも一部までに連続的に設けられる。
【0046】
溶射絶縁層34の厚みは、100μm以上300μm以下であり、例えば、150μm以上であり、例えば、200μmである。これにより、溶射絶縁層34の内部に空隙が形成されたとしても、溶射絶縁層34が150μm以上の厚みを有するため、溶射絶縁層34の絶縁性が確保される。
【0047】
溶射絶縁層34がターゲット30に接する当接面300は、当接面310と、当接面330と、当接面320とを含む。当接面310は、酸化物ターゲット材31の側面31wの少なくとも一部に形成される。当接面330は、接合部材33の端面に形成される。当接面320は、接合部材33に接していない基材32の表面に形成される。当接面310、当接面330、及び当接面320のそれぞれは、連通している。
【0048】
溶射絶縁層34は、酸化物ターゲット材31と同じ材料で構成されてもよく、酸化物ターゲット材31と異なる材料で構成されてもよい。例えば、溶射絶縁層34は、耐プラズマ性材料のアルミナ、チタン酸アルミナ、窒化アルミニウム、イットリアなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31とが同じ材料で構成された場合でも、溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との境界は、目視にて判別できる。例えば、酸化物ターゲット材31は、焼結体表面に切削加工の平滑面であるのに対し、溶射絶縁層34は、溶射膜特有の凹凸の形態となっていることから溶射絶縁層34か酸化物ターゲット材31か否かの判別は可能である。
【0049】
当接面300には、絶縁粒子によってブラスト処理が施されている。側面31wにブラスト処理を行う際の条件が適切でない場合、側面31wは絶縁粒子によって浸食され、所望の8μm以上の面粗さにすることは、従来、非常に困難とされてきた。
【0050】
これに対し、本実施形態では、例えば、当接面300は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さRaに設定される。特に、酸化物ターゲット材31の当接面310は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さRaを有する。ここで、当接面310の算術平均粗さRaが8μmよりも小さいと、溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との密着力が弱まり好ましくない。一方、当接面310の算術平均粗さRaが20μmよりも大きいと、焼結体である酸化物ターゲット材31の面粗度が大きく、焼結体を構成している結晶粒が当接面310から脱落するため好ましくない。また、溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との密着力は、3MPa以上であり、例えば、10MPaである。
【0051】
ターゲット30の製造方法について説明する。
図3(a)、(b)は、ターゲットの製造方法を示す模式的断面図である。
【0052】
図3(a)に示すように、酸化物ターゲット材31と、基材32と、接合部材33とを有するターゲット30が準備される。酸化物ターゲット材31においては、スパッタリング面31sから側面31wの一部にかけて、マスク90が被覆される。
【0053】
次に、ターゲット30の基材32が回転テーブル95に対向するように、ターゲット30が回転テーブル95に固定される。適宜、基材32が回転テーブル95に対向する面にもマスク91が被覆されてもよい。
図3(a)には、その例が示されている。但し、マスク91を取り除いた例も、本実施形態に含まれる。この場合、ターゲット30は、基材32と回転テーブル95との隙間がないように回転テーブル95に固定される。
【0054】
次に、マスク90、91から開放されたターゲット30の外周部に、ノズル97を対向させる。例えば、酸化物ターゲット材31の側面31wの少なくとも一部から、接合部材33を跨いで基材32の表面32sの少なくとも一部にノズル97を対向させる。ノズル・ターゲット間距離(ノズル97の先端とターゲット30との最短距離)は、100mm以上200mm以下であり、例えば、170mmである。
【0055】
次に、回転テーブル95が回転しながら、ノズル97から絶縁粒子が噴出されて、絶縁粒子がターゲット30に向けて噴き付けられる。例えば、マスク90、91から開放されたターゲット30の外周領域、すなわち、酸化物ターゲット材31の側面31wの少なくとも一部から、接合部材33を跨いで基材32の表面32sの少なくとも一部までの領域に、絶縁粒子が噴き付けられる。
【0056】
例えば、絶縁粒子としては、アルミナ粒子が適用される。アルミナ粒子の平均粒径は、125μm以上180μm以下である。また、アルミナ粒子は、0.4MPa以上1.0MPa以下の内圧、例えば、0.6MPaの内圧に設定されたノズル97から噴出される。噴出後、絶縁粒子は、エアブロー、吸引等の手法によりブラスト処理面から除去される。
【0057】
これにより、
図3(b)に示すように、マスク90、91から開放されたターゲット30の外周領域に、凹凸状のブラスト処理面、すなわち、当接面300が形成される。この後、溶射法により、ブラスト処理面(当接面300)に溶射絶縁層34の原料である絶縁材が溶射され、ブラスト処理面に溶射絶縁層34が形成される(
図2)。
【0058】
本実施形態によれば、ターゲット30と防着板40との間に隙間があったとしても、防着板40とターゲット30との間には、溶射絶縁層34が介在している。このため、ターゲット30と防着板40との間では、異常放電が起きにくくなる。
【0059】
特に、酸化物ターゲット材31は、ターゲット30の最表面に位置するため、プラズマによりスパッタリング面31sが加熱されたり、基材32によって裏面31rから冷やされたりする。これにより、ターゲット30には、熱履歴に応じて溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との間に応力が印加される。
【0060】
本実施形態によれば、酸化物ターゲット材31の側面31wに、粗面化処理を行っているため、主にアンカー効果によって、溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との間の密着力が向上する。これにより、スパッタリングとともに、溶射絶縁層34に酸化物ターゲット材31からの再付着した膜が形成されたとしても、この膜の応力に対して溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との間の密着力が打ち勝ち、溶射絶縁層34が酸化物ターゲット材31に強固に密着する。
【0061】
これにより、ターゲット30と防着板40との間では、異常放電が長時間にわたり抑制され、ターゲット寿命を延ばすことができる。さらに、ターゲット30を利用したデバイスにおいては、その生産性が向上する。
【0062】
(比較例)
【0063】
図4は、ターゲットの比較例を示す模式的断面図である。
【0064】
上述したように、溶射条件によっては、絶縁粒子80が側面31wに侵食して、絶縁粒子80が当接面310に残存する場合がある。
【0065】
このような構成の場合、ターゲット30に対する溶射絶縁層34の密着強度が弱まり、好ましくない。これに対して、本実施形態では、当接面310に絶縁粒子80が極力残存させず、その表面粗さRaが8μm以上20μm以下に調整されている。
【0066】
図5(a)、(b)は、本実施形態のターゲットの別の変形例を示す模式的断面図である。
【0067】
酸化物ターゲット材31においては、側面31wに凹部350(
図5(a))、または凸部351(
図5(b))が設けられてもよい。例えば、凹部350は、当接面310から酸化物ターゲット材31の内部に凹んだ領域であり、凸部351は、当接面310から溶射絶縁層34に突出する領域である。
【0068】
このような構成であれば、溶射絶縁層34と酸化物ターゲット材31との界面でのアンカー効果がさらに促進され、溶射絶縁層34がターゲット30にさらに強固に密着する。
【実施例】
【0069】
(ブラスト処理)
【0070】
本実施形態では、ブラスト処理の条件(ブラスト粒子の粗さ、噴出圧、パス回数)の調整、及びプラズマ溶射の条件(距離)を適正化することで、酸化物ターゲット材31の側面31wの面粗度を制御して、溶射絶縁層34が酸化物ターゲット材31から剥離しにくいターゲット30が得られた。表面粗さRaの評価は、触針式表面粗さ測定機(東京精密社製、型番:SURFCOM TOUCH50)を用い、JISB0601(1994)に規定される条件で行った。
【0071】
(密着力評価)
【0072】
密着力は、酸化物ターゲット片に、溶射絶縁層を溶射して、溶射絶縁層に、アルミナ製の棒を接着して、棒を引っ張ることで測定した。酸化物ターゲット片の表面をブラスト処理する条件及び溶射絶縁層の溶射条件を変えながら、酸化物ターゲット片に対する溶射絶縁層の密着力を測定した。例えば、密着力の評価は、プルオフ式付着性試験機(ELCOMETER社製、型番:510)を用い、JISK5600-5-7に規定される条件にて行った。
【0073】
(剥離評価)
【0074】
剥離の評価は、異常放電の有無、目視での剥離の状態を4段階に分けた。例えば、A:剥離なし、異常放電痕なし、B:剥離なし、但し、異常放電痕あり、C:剥離あり、異常放電痕あり、D:ターゲットにクラック発生である。
【0075】
結果を表1に示す。
【0076】
本実施形態の粒径は、粒度で定義され、粒度は,JIS Z8801-1に規定する網ふるいを用い、試料約300gを取り、JIS8815によって測定した。平均粒度の評価はJIS R 6001-1:2017に規定されるブラスト材の平均粒度を用いた。
【0077】
【0078】
(実施例1)
【0079】
純度4N、直径300mm、厚さ6mmのアルミナ製ターゲット材と、無酸素銅製のバッキングプレートとを厚みが0.5mmのインジウムロウ材で接合し、これら3つの部材からなるターゲットを作製した。
【0080】
ターゲットの中、ターゲット材の側面の一部からインジウムロウ材を跨いでバッキングプレートの表面(裏面を除く)にまで、耐熱性、耐摩耗性に優れた樹脂テープを被覆した。
【0081】
ターゲットをブラスト処理装置の回転テーブルに設置して、ターゲットを所定の速度で回転しながら、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してターゲットにブラスト処理を行った。ノズル圧は、0.6MPaである。パス回数は、40回とした。
【0082】
ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、19.2μmである。ターゲットをプラズマ溶射機の回転テーブルに載せて所定の速度で回転させながら、平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて溶射を行った。ノズル・ターゲット間距離は、150mmである。溶射絶縁層の厚みは、190μmである。溶射の際、プラズマ熱によってインジウムロウ材が軟化するのを防止するためにエアブローによりインジウムロウ材を冷却した。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、8.1MPaである。
【0083】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積していたものの、異常放電痕、溶射膜の剥離は、確認されなかった。評価は、Aであった。
【0084】
(実施例2)
【0085】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用して、ノズル圧が実施例1~4の中で最も低い0.4MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、40回とした。
【0086】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、8. 0μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、3.2MPaである。
【0087】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積していたものの、異常放電痕、溶射膜の剥離は、確認されなかった。評価は、Aであった。
【0088】
(実施例3)
【0089】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、40回とした。
【0090】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、19.2μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が200mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、薄く形成され、140μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、12.0MPaである。
【0091】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積していたものの、このように薄い膜厚でも異常放電痕、溶射膜の剥離は、確認されなかった。評価は、Aであった。
【0092】
(実施例4)
【0093】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、40回とした。
【0094】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、19.2μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が100mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、厚く形成され、300μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、5.0MPaである。
【0095】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積していたものの、異常放電痕はなく、このように厚い厚みの溶射膜でも、剥離は、確認されなかった。評価は、Aであった。
【0096】
(比較例1)
【0097】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が実施例1~4に比べて細かい90~125μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧1.0MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、80回とした。
【0098】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。平均粒径が90~125μmのアルミナ粒子を用いた場合のブラスト処理面の算術平均粗さRaは、6.0μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、2.1MPaである。
【0099】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積していたものの、異常放電痕、溶射膜の剥離は、確認されなかった。但し、異常放電を示す黒色の変色部が確認された。
【0100】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0101】
(比較例2)
【0102】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、80回とした。
【0103】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、粗く形成され、29.0μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、1.4MPaである。
【0104】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0105】
(比較例3)
【0106】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧1.2MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、5回とした。パス回数が少なくてもノズル圧がこのように高いと、ブラスト後のターゲットにはクラックが確認された。評価は、Dであった。
【0107】
(比較例4)
【0108】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、少なく設定され、10回とした。
【0109】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、6.9μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、2.5MPaである。
【0110】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。このようにパス回数が少ないと、連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0111】
(比較例5)
【0112】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧が低く設定され、ノズル圧0.2MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、80回とした。
【0113】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、5.0μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、1.8MPaである。
【0114】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。このように、ノズル圧が低いと、連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0115】
(比較例6)
【0116】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が212~300μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、80回とした。
【0117】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。但し、アルミナ粒子の粒径が大きいので、ブラスト処理面の算術平均粗さRaは、5.1μmとなった。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、1.2MPaである。
【0118】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0119】
(比較例7)
【0120】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が500~710μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、80回とした。
【0121】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。但し、アルミナ粒子の粒径が大きいので、ブラスト処理面の算術平均粗さRaは、3.0μmとなった。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が150mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、200μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、0.6MPaである。
【0122】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0123】
(比較例8)
【0124】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、40回とした。
【0125】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、19.2μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が75mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、厚く形成され、340μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、2.3MPaである。
【0126】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積し、異常放電痕、溶射膜の剥離が確認された。評価は、Cであった。
【0127】
(比較例9)
【0128】
実施例1と同様に、樹脂テープで被覆されたターゲットを準備し、平均粒径が125~180μmのアルミナ粒子を使用してノズル圧0.6MPaでターゲットにブラスト処理を行った。パス回数は、40回とした。
【0129】
実施例1と同様に、ブラスト処理面に付着したアルミナ粒子を除去した。このときのブラスト処理面の算術平均粗さRaは、19.2μmである。ターゲットに平均粒径30μmのアルミナ粒子を用いて、ノズル・ターゲット間距離が300mmの距離で溶射を行った。溶射絶縁層の厚みは、薄く形成され、90μmである。ターゲット材に対する溶射絶縁層の密着力は、15.0MPaである。
【0130】
このターゲットをスパッタリング装置に装着して、電力3KWで96時間の連続放電を行った。連続放電後の溶射絶縁層には、再付着膜と思われる黒色の付着物が堆積していたものの、溶射膜の剥離は、確認されなかった。但し、異常放電を示す黒色の変色部が確認された。評価は、Bであった。
【0131】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0132】
1…成膜装置
10…真空容器
11…絶縁物
20…支持台
21…基板
30…ターゲット(スパッタリングターゲット)
31…酸化物ターゲット材
31s…スパッタリング面
31r…裏面
31w…側面
32…基材
32s…表面
33…接合部材
34…溶射絶縁層
40…防着板
50…磁気回路部
51…ヨーク
52…磁石
60…電源
61…線路
70…排気機構
71…配管
75…ガス供給機構
76…導入管
80…絶縁粒子
90、91…マスク
95…回転テーブル
97…ノズル
300、310、320、330…当接面
321、322…部分
350…凹部
351…凸部