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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240514BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020131630
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028311
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智久
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
(72)【発明者】
【氏名】竹田 祥平
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-198290(JP,A)
【文献】特開2019-009200(JP,A)
【文献】特開2018-137300(JP,A)
【文献】特開2001-233542(JP,A)
【文献】特開2002-367931(JP,A)
【文献】特開2016-201488(JP,A)
【文献】特開2017-175040(JP,A)
【文献】特開2020-113671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハより広い面積でウェーハの外周からはみ出したはみ出し部を有するフィルムと、該フィルムとウェーハの一方の面との間に形成する樹脂層と、を備えてウェーハの該一方の面を保護するシート状の保護部材を、ウェーハから剥離して装置内のゴミ箱に廃棄する剥離装置であって、
該保護部材を形成したウェーハの該一方の面と反対の他方の面を吸引保持する保持手段と、
該保持手段が保持したウェーハに貼着された該保護部材の該はみ出し部を把持する把持手段と、
該把持手段と該保持手段とを相対的にすれ違うように移動させウェーハから該保護部材を剥離する剥離手段と、
該剥離手段によりウェーハから剥離され該把持手段が把持する該保護部材を該ゴミ箱に積層させる積層手段と、を備え、
該積層手段は、
該把持手段が把持するウェーハから剥離した該保護部材を傾斜落下させる傾斜落下手段と、
該傾斜落下手段に沿って傾斜落下した該保護部材を水平姿勢にするとともに該保護部材を該ゴミ箱に向かって凸形状に湾曲させ該ゴミ箱に落下させるべく、該ゴミ箱の上に水平方向に延在するように配設される2本の水平棒と、を備え、
2本の該水平棒は、上方向にエアを噴射するエア噴射孔を備え、
傾斜落下した該保護部材が2本の該水平棒により水平姿勢になるとともに該水平棒の該エア噴射孔から噴射されるエアによって該保護部材の外周部分が噴き上げられ、中央部分から先に該ゴミ箱内に該保護部材を落下させ積層させることを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
2本の前記水平棒の間隔が前記傾斜落下手段に近い一方の端より他方の端が大きくなるように、2本の該水平棒は上面視ハの字に配置される請求項1記載の剥離装置。
【請求項3】
2本の前記水平棒の間隔が前記傾斜落下手段に近い一方の端より他方の端が小さくなるように、2本の該水平棒は上面視ハの字に配置される請求項1記載の剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材をウェーハから剥離してゴミ箱に廃棄する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの製造工程において平坦面を備えるウェーハを作製する場合には、例えば、シリコン等の原材料からなる円柱状のインゴットを、ワイヤーソー等で薄く切断して、円板状のウェーハ(いわゆる、アズスライスウェーハ)を得る。このウェーハの両面には、うねりや反りが存在しているため、ウェーハに対する研削加工を施す、即ち、ウェーハの切断面に対して、回転する研削砥石を当接させてうねりや反りを除去して平坦な面にする。
【0003】
研削加工を行うために、例えば、円板状のウェーハの一方の面に液状樹脂で保護部材を形成する。これは、ウェーハのうねりや反りを保護部材で吸収して、研削装置のチャックテーブルで平坦に吸引保持するためである。
例えば、ウェーハの直径よりも大径の円形フィルム上に液状の樹脂を所定量供給する。この樹脂は、例えば、紫外線によって硬化する性質を備えている。そして、保持手段でウェーハの他方の面を吸引保持し、ウェーハの一方の面に対向するように配設されたフィルム上で、ウェーハを液状樹脂に対して上側から押し付けることで、液状樹脂を押し広げてウェーハの一方の面全面が樹脂層で被覆された状態にする。その後、樹脂層に紫外線の照射を行い硬化させることで、保護部材を形成する。該保護部材は、ウェーハの外周縁からフィルムがはみ出したはみ出し部を備えている。
【0004】
その後、保護部材が形成されていない他方の面が上側になるようにして、ウェーハを研削装置のチャックテーブルの保持面上で平坦に吸引保持し、研削砥石で研削を行っていく。その後、テープ剥離装置(例えば、特許文献1参照)によりウェーハから保護部材を剥がし、保護部材により保護されていたウェーハの一方の面をさらに研削することで、両面が平坦面となるウェーハを作製することができる。
【0005】
特許文献1に開示されているようなテープ剥離装置では、樹脂層を剥離し、剥離した保護部材をゴミ箱に廃棄している。そして、剥離した保護部材を、滑り台でゴミ箱の上方に滑り落とし、ゴミ箱の上で湾曲させゴミ箱の中に落下させることによって、ゴミ箱の中で保護部材を積み重ねて多くの保護部材をゴミ箱に入れることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-198290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、保護部材は、形成された樹脂層の厚みが部分的に異なることで湾曲し難いものがあったり、樹脂層を形成する際にウェーハの外周からはみ出し硬化したリング状の硬化樹脂によって湾曲し難いものがあったりして、ゴミ箱に落下しない場合がある。また、ゴミ箱で保護部材が重ねられていないことがあり、ゴミ箱に多くの保護部材を投入できないという問題がある。
【0008】
したがって、ウェーハから樹脂層を剥離して保護部材をゴミ箱に投入する機能を備えた剥離装置においては、ゴミ箱に保護部材を適切に落下させるとともに、多くの保護部材をゴミ箱に投入できるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、ウェーハより広い面積でウェーハの外周からはみ出したはみ出し部を有するフィルムと、該フィルムとウェーハの一方の面との間に形成する樹脂層と、を備えてウェーハの一方の面を保護するシート状の保護部材を、ウェーハから剥離して装置内のゴミ箱に廃棄する剥離装置であって、該保護部材を形成したウェーハの該一方の面と反対の他方の面を吸引保持する保持手段と、該保持手段が保持したウェーハに貼着された該保護部材の該はみ出し部を把持する把持手段と、該把持手段と該保持手段とを相対的にすれ違うように移動させウェーハから該保護部材を剥離する剥離手段と、該剥離手段によりウェーハから剥離され該把持手段が把持する該保護部材を該ゴミ箱に積層させる積層手段と、を備え、該積層手段は、該把持手段が把持するウェーハから剥離した該保護部材を傾斜落下させる傾斜落下手段と、該傾斜落下手段に沿って傾斜落下した該保護部材を水平姿勢にするとともに該保護部材を該ゴミ箱に向かって凸形状に湾曲させ該ゴミ箱に落下させるべく、該ゴミ箱の上に水平方向に延在するように配設される2本の水平棒と、を備え、2本の該水平棒は、上方向にエアを噴射するエア噴射孔を備え、傾斜落下した該保護部材が2本の該水平棒により水平姿勢になるとともに該水平棒の該エア噴射孔から噴射されるエアによって該保護部材の外周部分が噴き上げられ、中央部分から先に該ゴミ箱内に該保護部材を落下させ積層させることを特徴とする剥離装置である。
【0010】
本発明に係る剥離装置においては、2本の前記水平棒の間隔が前記傾斜落下手段に近い一方の端より他方の端が大きくなるように、2本の該水平棒は上面視ハの字に配置されると好ましい。
【0011】
本発明に係る剥離装置においては、2本の前記水平棒の間隔が前記傾斜落下手段に近い一方の端より他方の端が小さくなるように、2本の該水平棒は上面視ハの字に配置されると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る剥離装置は、剥離手段によりウェーハから剥離され把持手段が把持する保護部材をゴミ箱に積層させる積層手段を備え、積層手段は、把持手段が把持するウェーハから剥離した保護部材を傾斜落下させる傾斜落下手段と、傾斜落下手段に沿って傾斜落下した保護部材を水平姿勢にするとともに保護部材をゴミ箱に向かって凸形状に湾曲させゴミ箱に落下させるべく、ゴミ箱の上に水平方向に延在するように配設される2本の水平棒と、を備え、2本の水平棒は、上方向にエアを噴射するエア噴射孔を備えているため、形成した樹脂層に部分的に厚み差が生じていたとしても、エア噴射孔から噴射したエアによって保護部材の外周部分の両端を持ち上げさせているので、保護部材の中央部分から先にゴミ箱内に落下するように進入させることが可能となるため、保護部材が折れ曲がらないために落下しないといった事態が生じるのを防ぐことが可能となる。また、保護部材をみな同じような形状で積み重ねることが可能となるため、保護部材をゴミ箱に多く収容することが可能となる。
【0013】
本発明に係る剥離装置において、2本の水平棒の間隔が傾斜落下手段に近い一方の端より他方の端が大きくなるように、2本の水平棒は上面視ハの字に配置されることで、傾斜落下した保護部材が、2本の水平棒のハの字の広がりで落ちかかりながらゴミ箱の縁に当たって行き止まり、ゴミ箱上を通過してしまうことが防がれ、さらに、湾曲させてゴミ箱内に落下させることが可能となる。
【0014】
本発明に係る剥離装置において、2本の水平棒の間隔が傾斜落下手段に近い一方の端より他方の端が小さくなるように、2本の水平棒は上面視ハの字に配置されることで、傾斜落下した保護部材が、2本の水平棒のハの字の狭まりにより速度が弱まり2本の水平棒の上で停止させることが可能となり、ゴミ箱上を通過してしまうことが防がれ、さらに、湾曲させてゴミ箱内に落下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】剥離装置の一例を示す斜視図である。
図2】把持手段で保護部材のはみ出し部を把持した状態を説明する断面図である。
図3】剥離手段によって把持手段と保持手段とを相対的にすれ違うように移動させて保護部材をウェーハの外周側から剥離し始めた状態を説明する断面図である。
図4】剥離手段によって把持手段と保持手段とを相対的にすれ違うように移動させてウェーハからの保護部材の剥離を進行させた状態を説明する断面図である。
図5】剥離手段によって把持手段と保持手段とを相対的にすれ違うように移動させて保護部材をウェーハから剥離し終えた状態を説明する断面図である。
図6図6(A)は、傾斜落下した保護部材が2本の水平棒により水平姿勢になるとともに水平棒のエア噴射孔から噴射されるエアによって保護部材の外周部分が噴き上げられ、中央部分から先にゴミ箱内に落下する状態を側方から見た断面図の一例である。図6(B)は、傾斜落下した保護部材が2本の水平棒により水平姿勢になるとともに水平棒のエア噴射孔から噴射されるエアによって保護部材の外周部分が噴き上げられ、中央部分から先にゴミ箱内に落下する状態を示す平面図の一例である。
図7図7(A)は、傾斜落下した保護部材が2本の水平棒により水平姿勢になるとともに水平棒のエア噴射孔から噴射されるエアによって保護部材の外周部分が噴き上げられ、中央部分から先にゴミ箱内に落下する状態を側方から見た断面図の別例である。図7(B)は、傾斜落下した保護部材が2本の水平棒により水平姿勢になるとともに水平棒のエア噴射孔から噴射されるエアによって保護部材の外周部分が噴き上げられ、中央部分から先にゴミ箱内に落下する状態を示す平面図の別例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す剥離装置1は、シート状の保護部材91をアズスライスウェーハ等のウェーハ90から剥離する装置である。図1、2に示す保護部材91は、ウェーハ90よりも大径、即ち広い面積に形成され、ウェーハ90の一方の面900(図2参照)に樹脂層92を介してフィルム93が固着されている。フィルム93は、例えばポリオレフィン系樹脂からなるフィルムであり、樹脂層92は紫外線の照射により硬化された樹脂層である。樹脂層92は、ウェーハ90の一方の面900全面、及びウェーハ90の外周面の一部を覆っている。また、フィルム93は、ウェーハ90の外周よりも外側にはみ出したはみ出し部930を備えている。
【0017】
図1に示す剥離装置1のベース10上の後方側(-X方向側)には、コラム11が立設されており、コラム11の+X方向側の前面の上部には、モータ122によりボールネジ120を回動させることで、一対のガイドレール123上を可動板121を摺動させて、可動板121に配設された保持手段2をY軸方向に往復移動させる保持手段移動手段12が配設されている。
【0018】
可動板121には、Z軸方向に保持手段2を往復移動させる保持手段上下動手段13が配設されている。保持手段上下動手段13は、モータ132によりボールネジ130を回動させることで、Z軸方向(鉛直方向)に延びる一対のガイドレール133上を摺動する可動板131に配設された保持手段2を、Z軸方向に往復移動させる。
【0019】
図2に示す一方の面900に保護部材91を形成したウェーハ90の一方の面900の反対面である他方の面903を吸引保持する保持手段2は、可動板131上に根元側の一端が固定されたアーム部20と、アーム部20の+X方向側の先端の下面に配設されウェーハ90を吸引保持することができる保持パッド21とを備えている。図2に示すように、保持パッド21は、ポーラス板等からなり図示しない吸引源に連通する吸着部210と、吸着部210を支持する枠体211とを備え、吸着部210の露出面であり枠体211の下面と面一に形成されている保持面213でウェーハ90の他方の面903を吸引保持する。
【0020】
図1に示すコラム11の+X方向側前面の中間部、即ち、保持パッド21の移動経路の下方には、上から順に、X軸方向の軸心を有する回転ローラ18と、保持手段2が保持したウェーハ90に貼着された保護部材91のはみ出し部930を把持する把持手段40、及び把持手段40をY軸方向に往復移動させる把持手段移動手段42と、が配設されている。
【0021】
把持手段移動手段42は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ420と、ボールネジ420と平行に配設された一対のガイドレール421と、ボールネジ420を回動させるモータ422と、内部のナットがボールネジ420に螺合し側部がガイドレール421に摺接する可動ブロック423とから構成される。そして、モータ422がボールネジ420を回動させると、これに伴い可動ブロック423がガイドレール421にガイドされてY軸方向に移動し、可動ブロック423に配設された把持手段40が可動ブロック423の移動に伴いY軸方向に移動する。
本実施形態においては、把持手段移動手段42と保持手段移動手段12とにより、把持手段40と保持手段2とを相対的にY軸方向においてすれ違うように移動させウェーハ90から保護部材91を剥離する剥離手段4が構成される。
【0022】
把持手段40は、軸方向がX軸方向であるスピンドル400と、スピンドル400を回転可能に支持するハウジング401と、スピンドル400の+X方向側の先端に配設された把持クランプ402とを備えている。把持クランプ402は、互いが接近及び離間可能な一対の把持板の間に把持対象を挟み込むことができ、スピンドル400が回転することで、把持対象に対する角度を変えることができる。なお、例えば、把持手段40は、可動ブロック423の前面を上下方向に移動可能となっていてもよい。
【0023】
回転ローラ18は、例えば、その外形が円柱状に形成されており、図示しないモータによりX軸方向の軸心を軸として回転する。回転ローラ18は、保護部材91に当接することにより、例えば、保護部材91の剥離の際に起き得る図2に示す樹脂層92の折れを防止する役割を果たす。なお、回転ローラ18は、Y軸方向に移動可能であってもよい。
【0024】
ベース10上には、剥離された保護部材91を収容するゴミ箱7が配設されている。ゴミ箱7は、例えば、外形が略直方体状に形成されており、後述する積層手段5の2本の水平棒53、水平棒54の下方において開口している。ゴミ箱7の上部には、例えば、発光部790(-Y方向側)と受光部791(+Y方向側)とを備える透過型の光センサ79が配設されている。ウェーハ90から剥離された保護部材91が、積層手段5によりゴミ箱7内に落とされていき、ゴミ箱7内に保護部材91が所定の高さまで積み上がり、発光部790と受光部791との間の検査光が保護部材91により遮られ受光部791の受光量が減少することで、光センサ79はゴミ箱7内が保護部材91で満たされたことを検出する。
【0025】
剥離装置1は、本実施形態においては把持手段移動手段42と保持手段移動手段12とで構成される剥離手段4によりウェーハ90から剥離され把持手段40が把持する保護部材91をゴミ箱7に積層させる積層手段5を備えている。
【0026】
積層手段5は、把持手段40が把持するウェーハ90から剥離した保護部材91を傾斜落下させる傾斜落下手段50と、傾斜落下手段50に沿って傾斜落下した保護部材91を水平姿勢にするとともに保護部材91をゴミ箱7に向かって凸形状に湾曲させゴミ箱7に落下させるべく、ゴミ箱7の上に水平方向に延在するように配設される2本の水平棒53、水平棒54と、を備えている。
【0027】
傾斜落下手段50は、ゴミ箱7の後上方において、把持手段40及び保持手段2の移動経路下方に設けられており、前方に向かうにしたがって下方に傾斜する一対のガイドレール501、ガイドレール502によって構成される。
【0028】
一対のガイドレール501、ガイドレール502は、例えば円形断面を有する棒状に形成され、保護部材91の外径と略同一の長さを有している。また、一対のガイドレール501、ガイドレール502の先端(下端)部分が、水平方向に延在するように屈曲されている。当該先端部分は、ゴミ箱7の上面の後方側(+Y方向側)の一辺部分に固定されている。また、一対のガイドレール501、ガイドレール502は、ゴミ箱7のX軸方向における中心線を挟んで対称に、保護部材91の直径より十分に小さい間隔で平行に配置されている。
【0029】
2本の水平棒53、水平棒54は、ゴミ箱7の上方のY軸方向の端から端までを跨ぐように水平に延びており、例えば円形断面を有する棒状に形成され、保護部材91の外径より大きい長さで延在する。水平棒53及び水平棒54の一端(後端)は、ゴミ箱7のY軸方向後方側における一辺の上端部分に固定され、他端(先端)がゴミ箱7のY軸方向前方側における一辺の上端部分に固定されている。
【0030】
また、水平棒53及び水平棒54は、保護部材91の外径より小さい間隔で、ゴミ箱7のX軸方向における中心線を挟んで対称に配置されている。さらに、図1に示す例においては、水平棒53及び水平棒54は、両棒の間隔が傾斜落下手段50に近い+Y方向側の一方の端より-Y方向側の他方の端が大きくなるように、上面視ハの字を形成する。即ち、図1に示すように、水平棒53及び水平棒54は、後端側(傾斜落下手段50に近い側)の間隔D2より先端側の間隔D3が大きくなるように配置される。また、間隔D2は一対のガイドレール501、502の間の間隔D1より大きくなっており、水平棒53及び水平棒54の後端が、一対のガイドレール501、502の先端を左右で挟むように配置される。すなわち、水平棒53及び水平棒54の後端と、一対のガイドレール501、502の先端とは、X軸方向側から見て重なっている。
【0031】
2本の水平棒53、水平棒54は、上方向(+Z方向)にエアを噴射するエア噴射孔55を備えている。本実施形態においては、エア噴射孔55が、水平棒53、及び水平棒54の上面側に複数長手方向に整列して設けられている。エア噴射孔55は、丸穴状に形成されているが、細幅のスリット状に形成されていてもよいし、または、2本の水平棒53、水平棒54の上面側において略端から略端まで一本の連続的に延びるスリット状にエア噴射孔55は形成されていてもよい。そして、各エア噴射孔55には、図示しないコンプレッサー等で構成されるエア供給源が連通している。
【0032】
以下に、図1に示す剥離装置1によりウェーハ90から保護部材91を剥離して廃棄する場合の剥離装置1の動作について説明する。
まず、図1に示すように、研削後のウェーハ90が、一方の面900の反対面でありすでに研削された面である他方の面903が上側になるように、図示しない受け渡しテーブ上に載置される。保持手段移動手段12により保持手段2がY軸方向に移動し、図2に示すように、保持パッド21の保持面213の中心がウェーハ90の他方の面903の中心に略合致するように、ウェーハ90の上方に位置付けられる。さらに、保持手段2が降下して保持面213をウェーハ90の他方の面903に接触させ、吸引力が伝達された保持面213によって、保護部材91を下にしてウェーハ90の他方の面903が吸引保持される。
【0033】
図2に示すように、ウェーハ90を吸引保持した保持手段2が、保持手段移動手段12によって回転ローラ18の上方に位置するまでY軸方向に移動する。さらに、保持手段2が-Z方向に下降して、保護部材91のフィルム93の下面の+Y方向側の外周部付近に回転ローラ18の側面を当接させる。また、把持手段40が、把持手段移動手段42によって-Y方向に移動し、把持クランプ402がはみ出し部930を把持する。
【0034】
例えば、把持クランプ402がはみ出し部930を把持した後、図2に示すようにはみ出し部930が+X方向側からみて時計回り方向に90度回転することで、回転ローラ18が保護部材91の下面側を支持した状態で、保護部材91の樹脂層92が回転ローラ18の側面にならって緩やかに曲げられつつ、保護部材91が-Z方向に向かって把持クランプ402により引っ張られることにより、ウェーハ90の一方の面900から保護部材91の一部が剥離される。即ち、保護部材91は、図3に示すように回転ローラ18に当接しながら略直角に屈曲される。
【0035】
次いで、図1に示した剥離手段4により、把持手段40と保持手段2とを相対的にY軸方向にすれ違うように移動させて、ウェーハ90の外周縁から中心に向かって保護部材91を剥離する。即ち、図3に示すように、把持手段移動手段42によって把持手段40を-Y方向側に移動させるとともに、保持手段移動手段12により保持手段2を+Y方向に移動させ、さらに、回転ローラ18がX軸方向の軸心を軸に回転し、保護部材91の樹脂層92が回転ローラ18の側面にならって緩やかに曲げられ急激な樹脂折れが抑制された状態を維持しつつ、ウェーハ90の+Y方向側の外周縁から-Y方向側に向かって保護部材91を剥離していく。
なお、保持手段2、又は把持手段40のいずれか一方を停止させた状態で、Y軸方向に移動するもう一方によって、ウェーハ90から保護部材91を剥離していってもよい。または、例えば、把持手段40をY軸方向に移動させず下方に移動させ続け、保護部材91を直角に屈曲させた状態で剥離を進行させていってもよい。
【0036】
図4に示すように、把持手段40がウェーハ90の-Y方向側の外周縁近くまで移動すると、把持手段40が+X方向側からみて時計回り方向に90度回転することで、保護部材91の樹脂層92側が下に向けられた状態になる。さらに、剥離手段4によって把持手段40、及び保持手段2をY軸方向に相対的に移動させることで、図5に示すように、ウェーハ90から保護部材91が完全に剥離される。そして、把持手段40によって把持されている保護部材91は、-Z方向に把持手段40から垂れ下がった状態になる。
【0037】
上記のように、保護部材91がウェーハ90から完全に剥離されると、図6(A)に示すように、はみ出し部930を把持する把持手段40は、把持手段移動手段42によって傾斜落下手段50の近傍に位置付けられ、保護部材91のフィルム93側が一対のガイドレール501、502の傾斜面に当接される。これにより、保護部材91は、一対のガイドレール501、502に沿うようにしてZ軸方向に対して僅かに傾斜される。
【0038】
保護部材91が一対のガイドレール501、502に沿わされた状態で、把持クランプ402が互いに離間すると、把持手段40によるはみ出し部930の把持が解除される。保護部材91は、自重により一対のガイドレール501、502に沿って斜め下方に傾斜落下する。一対のガイドレール501、502の先端は水平方向に屈曲しており、一対のガイドレール501、502の先には2本の水平棒53、水平棒54が位置しているため、保護部材91は、傾斜落下時の勢いにより、移動方向が斜め下方から水平方向に変換され、傾斜落下手段50から2本の水平棒53、水平棒54に移動(移送)され、2本の水平棒53、水平棒54により水平姿勢となり-Y方向に移動する。
【0039】
2本の水平棒53、水平棒54に沿って保護部材91が水平方向(-Y方向)に移動する際、保護部材91は、X軸方向における中央部分が自重によって落ち込み、-Y方向側から見た正面視U字状、即ち、ゴミ箱7に向かって凸形状に湾曲される。
さらに、本発明に係る剥離装置1では、2本の水平棒53、水平棒54のエア噴射孔55に対して図示しないエア供給源が圧縮エアを供給することで、各エア噴射孔55から上方に位置する保護部材91の外周部分の下面に向かってエア559が噴射されて、保護部材91の外周部分が噴き上げられることによって、上記保護部材91のゴミ箱7に向かって凸形状になる湾曲をさらに促す。これによって、保護部材91がゴミ箱7内に確実に落下する状態になる。
【0040】
また、本実施形態においては、図6(B)に示す、2本の水平棒53、水平棒54の間隔が傾斜落下手段50に近い+Y方向側の一方の端の間隔D2より-Y方向側の他方の端の間隔D3が大きくなるように、2本の水平棒53、水平棒54は上面視ハの字に配置されていることで、傾斜落下した保護部材91が、2本の水平棒53、水平棒54のハの字の広がりで落ちかかりながらゴミ箱7の-Y方向側の開口縁に当たって行き止まり、ゴミ箱7上を通過してしまうことが防がれ、さらに、ゴミ箱7に向かって凸形状に湾曲させてゴミ箱7内に落下させることが可能となる。
【0041】
ゴミ箱7に向かって凸形状に湾曲しつつ落下する保護部材91は、さらに、2本の水平棒53、水平棒54の間隔が傾斜落下手段50に近い+Y方向側の一方の端の間隔D2より-Y方向側の他方の端の間隔D3が大きくなるように、2本の水平棒53、水平棒54は上面視ハの字に配置されていることで、2本の水平棒53、水平棒54よりも下方のゴミ箱7内において、凸形状を元の水平形状に徐々に戻しつつ2本の水平棒53、水平棒54の先端側からゴミ箱7内を落下していく。保護部材91は、進行方向の前側が先に2本の水平棒53、水平棒54の下方に落ち込んだら、のちに後側が2本の水平棒53、水平棒54の下方に落ち込む。保護部材91は、ゴミ箱7内で凸形状を元の水平形状に徐々に戻しつつゴミ箱7内を落下していくため、図6(A)に示すように、複数の保護部材91を水平姿勢でゴミ箱7内に積層することが可能である。
【0042】
本発明に係る剥離装置1は、剥離手段4によりウェーハ90から剥離され把持手段40が把持する保護部材91をゴミ箱7に積層させる積層手段5を備え、積層手段5は、把持手段40が把持するウェーハ90から剥離した保護部材91を傾斜落下させる傾斜落下手段50と、傾斜落下手段50に沿って傾斜落下した保護部材91を水平姿勢にするとともに保護部材91をゴミ箱7に向かって凸形状に湾曲させゴミ箱7に落下させるべく、ゴミ箱7の上に水平方向に延在するように配設される2本の水平棒53、水平棒54と、を備え、2本の水平棒53、水平棒54は、上方向にエアを噴射するエア噴射孔55を備えているため、形成した樹脂層92に部分的に厚み差が生じていたとしても、エア噴射孔55から噴射したエアによって保護部材91の外周部分の両端を持ち上げさせているので、保護部材91の中央部分から先にゴミ箱7内に落下するように進入させることが可能となるため、保護部材91が折れ曲がらないために落下しないといった事態が生じるのを防ぐことが可能となる。また、保護部材91をみな同じよう形状で積み重ねることが可能となるため、保護部材91をゴミ箱7に多く収容することが可能となる。
【0043】
なお、本発明に係る剥離装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている剥離装置1の各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0044】
例えば、図7(A)、(B)に示すように、水平棒53及び水平棒54は、両棒の間隔が傾斜落下手段50に近い+Y方向側の一方の端より-Y方向側の他方の端が小さくなるように、上面視ハの字を形成してもよい。即ち、図7(B)に示すように、水平棒53及び水平棒54は、後端側(傾斜落下手段50に近い側)の間隔D4より先端側の間隔D5が小さくなるように配置される。また、間隔D4は一対のガイドレール501、502の間の間隔D1より大きくなっており、水平棒53及び水平棒54の後端が、一対のガイドレール501、502の先端を左右で挟むように配置される。
【0045】
図7(A)に示すように、保護部材91が一対のガイドレール501、502に沿わされた状態で、把持手段40によるはみ出し部930の把持が解除され、保護部材91は、自重により一対のガイドレール501、502に沿って斜め下方に傾斜落下する。そして、保護部材91は、傾斜落下時の勢いにより、移動方向が斜め下方から水平方向に変換され、2本の水平棒53、水平棒54に移動(移送)され、水平姿勢となり-Y方向に移動する。
【0046】
2本の水平棒53、水平棒54に沿って保護部材91が水平方向(-Y方向)に移動する際、保護部材91は、X軸方向における中央部分が自重によって落ち込み、また、各エア噴射孔55から上方に位置する保護部材91の外周部分の下面に向かってエア559が噴射されて外周部分が噴き上げられることによって、+Y方向側から見た正面視U字状、即ち、ゴミ箱7に向かって凸形状に保護部材91が湾曲される。これによって、保護部材91がゴミ箱7内に確実に落下する状態になる。
【0047】
そして、2本の水平棒53、水平棒54の間隔が傾斜落下手段50に近い+Y方向側の一方の端の間隔D4より-Y方向側の他方の端の間隔D5が小さくなるように、2本の水平棒53、水平棒54は上面視ハの字に配置されていることで、保護部材91の水平面における進行方向(-Y方向)における2本の水平棒53、水平棒54のハの字の狭まりにより速度が弱まり、2本の水平棒53、水平棒54の上で停止させることが可能となり、ゴミ箱7上を通過してしまうことが防がれ、さらに、湾曲させてゴミ箱7内に落下させることが可能となる。
【0048】
ゴミ箱7に向かって凸形状に湾曲しつつ落下する保護部材91は、さらに、2本の水平棒53、水平棒54の間隔が傾斜落下手段50に近い+Y方向側の一方の端の間隔D4より-Y方向側の他方の端の間隔D5が小さくなるように、2本の水平棒53、水平棒54は上面視ハの字に配置されていることで、2本の水平棒53、水平棒54よりも下方のゴミ箱7内において、凸形状を元の水平形状に徐々に戻しつつ2本の水平棒53、水平棒54の後端側からゴミ箱7内を落下していく。さらに保護部材91は、進行方向の後側が先に2本の水平棒53、水平棒54の下方に落ち込んだら、のちに先側が2本の水平棒53、水平棒54の下方に落ち込む。このとき、保護部材91はゴミ箱7内において凸形状を元の水平形状に徐々に戻しつつゴミ箱7内を落下していくため、複数の保護部材91を水平姿勢でゴミ箱7内に積層することが可能である。
なお、一対のガイドレール501、502にエアを噴射する噴射孔を備え、保護部材91をガイドレール501、502に沿って落下しやすくしてもよい。
また、エア噴射孔55の穴の大きさをガイドレール501、502から遠くなるほど大きくするというようにエア噴射孔55の大きさを変えることによって、水平棒53、水平棒54に落下した保護部材91を水平棒上でゴミ箱7を通過することが無いように停止させてもよい。なお、その際は、2本の水平棒53、水平棒54を平行にしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
90:ウェーハ 900:一方の面 91:保護部材 92:樹脂層 93:フィルム
930:はみ出し部
1:剥離装置 10:ベース 11:コラム 18:回転ローラ
40:把持手段 400:スピンドル 402:把持クランプ
42:把持手段移動手段 420:ボールネジ 422:モータ 423:可動ブロック
12:保持手段移動手段 120:ボールネジ 121:可動板 122:モータ
13:保持手段上下移動手段
2:保持手段 20:アーム部 21:保持パッド 210:吸着部 211:枠体
213:保持面 7:ゴミ箱 79:光センサ
5:積層手段 50:傾斜落下手段 501、502:一対のガイドレール
53、54:水平棒 55:エア噴射孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7