(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】耐火被覆材用固定金具、耐火構造および耐火構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240514BHJP
A62C 2/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E04B1/94 D
A62C2/00 X
(21)【出願番号】P 2021163126
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】芳谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】秀島 有
(72)【発明者】
【氏名】大長 理子
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 俊明
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-220730(JP,A)
【文献】特開平07-133640(JP,A)
【文献】特開2020-204195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0167475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
A62C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材もしくは外壁材が取り付けられる構造体の、前記床材もしくは前記外壁材に取り付けられて、可撓性を有する耐火被覆材を固定するための固定金具であって、
先端が前記耐火被覆材を貫通する突起部と、
前記突起部の基端を立設支持する支持部と、
締結部材によって前記床材もしくは前記外壁材に前記固定金具を取り付けるために前記支持部に形成された取付孔と、を有して
おり、
前記支持部は、平板状の支持部材であって、
前記支持部材に前記突起部が立設支持されると共に、前記取付孔が形成されていることを特徴とする耐火被覆材用固定金具。
【請求項2】
前記突起部は前記取付孔の軸線と重ならないように配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の耐火被覆材用固定金具。
【請求項3】
前記突起部には雄ねじが形成されていることを特徴とする請求項
1または2に記載の耐火被覆材用固定金具。
【請求項4】
床材もしくは外壁材が取り付けられる構造体の、前記床材もしくは前記外壁材に面しない部分が可撓性を有する耐火被覆材によって被覆され、前記床材もしくは前記外壁材の、前記構造体に面する側の面に取り付けられる固定金具に前記耐火被覆材が取り付けられる耐火構造において、
前記固定金具は請求項1から
3のいずれか1項に記載の耐火被覆材用固定金具であって、
前記突起部が、前記耐火被覆材に貫通することで、前記耐火被覆材が前記固定金具に固定されることを特徴とする耐火構造。
【請求項5】
請求項
4に記載された耐火構造において、前記固定金具は請求項
3に記載された耐火被覆材用固定金具であって、
前記耐火被覆材を貫通した前記突起部の前記雄ねじにナットが締結されて、前記耐火被覆材が前記固定金具に固定されることを特徴とする耐火構造。
【請求項6】
前記耐火被覆材は、ベース材である樹脂に熱膨張材が含まれて構成されていることを特徴とする請求項
4または5に記載の耐火構造。
【請求項7】
前記固定金具は、前記床材もしくは前記外壁材に締結部材によって取り付けられ、前記締結部材は取付ねじであることを特徴とする請求項
4から6のいずれか1項に記載の耐火構造。
【請求項8】
前記構造体は前記床材が取り付けられる鉄骨梁であり、前記鉄骨梁の前記床材に面しない部分が可撓性を有する耐火被覆材によって被覆され、前記床材の、前記鉄骨梁に面する側の面に取り付けられる前記固定金具に前記耐火被覆材が取り付けられることを特徴とする請求項
4から7のいずれか1項に記載の耐火構造。
【請求項9】
床材もしくは外壁材が取り付けられる構造体の、前記床材もしくは前記外壁材に面しない部分が可撓性を有する耐火被覆材によって被覆され、前記床材もしくは前記外壁材の、前記構造体に面する側の面に取り付けられる固定金具に前記耐火被覆材が取り付けられる耐火構造の施工方法において、
前記固定金具は請求項
1から3のいずれか1項に記載の耐火被覆材用固定金具であって、
前記固定金具の前記突起部が前記耐火被覆材を貫通することで、前記耐火被覆材が前記固定金具に固定されて、前記構造体を前記耐火被覆材によって被覆することを特徴とする耐火構造の施工方法。
【請求項10】
請求項
9に記載された耐火構造の施工方法において、前記固定金具は、請求項
3に記載の耐火被覆材用固定金具であって、
前記耐火被覆材を貫通した前記突起部の前記雄ねじにナットが締結されて、前記耐火被覆材が前記固定金具に固定されることを特徴とする耐火構造の施工方法。
【請求項11】
前記構造体は前記床材が取り付けられる鉄骨梁であり、前記鉄骨梁の前記床材に面しない部分が可撓性を有する耐火被覆材によって被覆され、前記床材の、前記鉄骨梁に面する側の面に取り付けられる前記固定金具に前記耐火被覆材が取り付けられる耐火構造の施工方法であることを特徴とする請求項
9または10に記載の耐火構造の施工方法。
【請求項12】
床材もしくは外壁材が取り付けられる構造体の、前記床材もしくは前記外壁材に取り付けられて、可撓性を有する耐火被覆材を固定するための固定金具であって、
先端が前記耐火被覆材を貫通する突起部と、
前記突起部の基端を立設支持する支持部と、
締結部材によって前記床材もしくは前記外壁材に前記固定金具を取り付けるために前記支持部に形成された取付孔と、を有しており、
前記支持部は、支持部材と当接部材とを有して断面がL字形状であり、
前記支持部材に前記突起部が立設支持され、前記当接部材に前記取付孔が形成されており、
前記突起部及び前記取付孔は、共に断面がL字形状の前記支持部の内側に存在することを特徴とする耐火被覆材用固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁や柱などの構造体に耐火被覆材が被覆された耐火構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
梁や柱などの鋼製の構造体は、火災等により高温となると耐力が低下するため、これを避けるために、耐火構造が必要である。
このような耐火構造としては、例えば、所定の厚みのロックウール等の耐火材を吹き付けて被覆する方法がある(例えば特許文献1)。特許文献1では、鉄骨梁に耐火材が吹き付けられて覆われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨に耐火材を吹き付ける方法は、安価であり、大型の構造体にも適用が容易であるが、作業環境が著しく悪く、吹き付け耐火材の吹き付け厚みや密度を管理することも困難である。また、吸水によって性能が劣化するため、事前に工場で鉄骨に吹き付け施工してから運搬するのも困難である。
【0005】
これに対し、ロックウールを鉄骨に巻き付けて、その状態でピンを鉄骨に溶接することでロックウールを固定する方法も提案されている。しかし、この方法では、ロックウールを固定するピンを鉄骨に溶接するために、特殊な工具が必要であり、汎用性が低い。また、現場での溶接作業が含まれるため、周囲に可燃物があると危険である。一方、ロックウールは、吸水によって性能が劣化するため、事前に工場で鉄骨にロックウールの巻き付けとピン溶接を行ってから運搬するのも困難である。
【0006】
また、鉄骨の表面に下地材を接着し、ケイ酸カルシウム板を釘で固定する方法も提案されている。しかし、成形板を用いるため、取り扱い中に割れが生じるなど、施工性は必ずしも良くない。また、成形板は、鉄骨へ耐火部材を巻き付ける方法と比較して高価である。
また、鉄骨の表面に熱膨張性塗料を塗布する方法も提案されている。しかし、塗装する塗料の厚みの管理などが困難であるとともに、塗料自体が非常に高価である。このため、より安価で容易に施工が可能な方法が望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性が良好であり、安価に施工することが可能である耐火構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、床材もしくは外壁材が取り付けられる構造体の、床材もしくは外壁材に取り付けられて、可撓性を有する耐火被覆材を固定するための固定金具であって、先端が耐火被覆材を貫通する突起部と、突起部の基端を立設支持する支持部と、締結部材によって床材もしくは外壁材に支持部を取り付けるために支持部に形成された取付孔と、を有している耐火被覆材用固定金具である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様による耐火被覆材用固定金具を用いることにより、作業性が良好であり、安価に施工することが可能である耐火構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る耐火構造を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る耐火構造を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る耐火構造の耐火被覆材が取り付く前の状態を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る耐火被覆材用固定金具の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る耐火被覆材用固定金具の取り付け状態を示す拡大斜視図である。
【
図6A】第2実施形態に係る耐火被覆材用固定金具の下方斜視図である。
【
図6B】第2実施形態に係る耐火被覆材用固定金具の上方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構造や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐火構造1を示す斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る耐火構造1を示す断面図である。実施形態に係る耐火構造1は、構造体としての鉄骨梁2の上面の左右両側に耐火性能を有する床材3が水平に配置されており、左右両側に配置された床材3は鉄骨梁2に対して高さが同一となるように配置され、左右の床材3の下に配置されている鉄骨梁2の床材3に面しない部分が耐火被覆材5によって被覆されている耐火構造である。鉄骨梁2の左右両側に配置された床材3の鉄骨梁2の近傍には、耐火被覆材5を取り付けるための耐火被覆材用固定金具である固定金具20が配置されている。
【0013】
鉄骨梁2は本実施例では、一対のフランジ6がウェブ7によって連結された、いわゆるH形鋼である。なお、鉄骨梁2としては、フランジ6を有するものであれば、I形鋼、L字形鋼、山形鋼など特に限定されない。左右両側に配置された床材3は、鉄骨梁2の上側のフランジ6の上面を覆うように載置されている。床材3は発泡軽量コンクリートパネル等からなり、火災時にはそれ自体が所定の耐火性能を有する。尚、床材3は、規格により定められた複数種類の厚みを備えている。
【0014】
本実施形態の耐火構造1は、左側の床材3と右側の床材3との下側に配置される鉄骨梁2の床材3に面しない部分が可撓性を有する耐火被覆材5によって被覆されている耐火構造である。上側のフランジ6の上面が床材3に面する面であるため、鉄骨梁2の床材3に面しない部分は、上側のフランジ6の端面、ウェブ7、下側のフランジ6であり、これらが可撓性を有する耐火被覆材5によって被覆される。上側のフランジ6の上面に面にする面である床材3の下面に固定金具20は取り付けられ、固定金具20に可撓性を有する耐火被覆材5が取り付けられる。鉄骨梁2の左側においては、耐火被覆材5の一端側が、左側の床材3の下面に取り付けられた固定金具20に固定され、鉄骨梁2の右側においては、耐火被覆材5の他端側が、右側の床材3の下面に取り付けられた固定金具20に固定される。床材3の下面に取り付く固定金具20は、鉄骨梁2の上側のフランジ6の近傍に配置される。耐火被覆材5の一端側が左側の床材3に取り付けられた固定金具20に固定され、他端側が右側の床材3に取り付けられた固定金具20に固定されることで、左側の床材3と右側の床材3の下面から露出する鉄骨梁2が、耐火被覆材5で覆われるため、鉄骨梁2を、火災等による高温から保護する耐火構造を実現できる。尚、左側の床材3の下面に取り付けられた固定金具20と右側の床材3の下面に取り付けられた固定金具20は同一の固定金具であって、断面形状がL字状の固定金具である。
【0015】
耐火被覆材5は、例えば熱膨張材が含まれるシート状の部材であることが望ましい。なお、耐火被覆材5は、取り扱い性を考慮すると、ロックウールなどの無機繊維を主成分とするものではなく、樹脂をベース材とするものが望ましい。すなわち、耐火被覆材5は、ベース材である樹脂に熱膨張材が含まれて構成されていることが望ましい。なお、樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、エラストマー等を適用可能である。また、樹脂に含有させる熱膨張材としては、特に限定されないが、例えば、層状無機物、リン化合物が挙げられる。層状無機物としては、バーミキュライト、カリオン、マイカ、熱膨張性黒鉛などが挙げられ、特に熱膨張性黒鉛が好ましい。さらに、ガラスフリットや無機フィラー等を樹脂に配合してもよい。また、耐火被覆材5は、発泡体であってもよく、非発泡体であってもよい。
【0016】
また、耐火被覆材5に、他の部材を組み合わせてもよい。他の部材としては、本実施形態の効果を損なわない限り特に限定されないが、耐熱性及び/又は難燃性を示す部材が好ましい。耐火被覆材5と他の部材とを組み合わせた複合体の例としては、耐火被覆材5と不燃シートとを貼合したものが挙げられ、不燃シートとしては、金属シートと無機繊維シートが挙げられる。金属シートとしては、ステンレス、アルミニウム、鉄などからなる金属シートを用いることができる。このように金属シートとの複合体とすることにより、耐火性能をより向上することができる。また他に、耐火被覆材5と無機繊維シートとの複合材も挙げられる。無機繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、セルロース繊維、セラミックウール繊維、ロックウール繊維等からなるシート、不織布、織布などが挙げられる。不織布、織布は、薄いアルミニウム層が積層されたものであってもよい。このような不燃シートは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0017】
図3は、実施形態に係る耐火構造1の耐火被覆材5が取り付く前の状態を示す斜視図である。
図3に示すように、耐火被覆材5の一端側を固定するための固定金具20は、上側のフランジ6の左側端面に当接して取り付けられている。耐火被覆材5の他端側を固定するための固定金具20も、上側のフランジ6の右側端面に当接するように取り付けられている。
【0018】
次に、
図4を用いて、耐火被覆材用の固定金具20について説明する。
図4は固定金具20を上方から見た斜視図である。固定金具20は、先端が耐火被覆材5を貫通する突起部21と、突起部21の基端を立設支持する支持部24を備えている。支持部24は、支持部材26と当接部材27を備えて断面がL字形状であり、支持部材26の中央に突起部21が立設支持され、当接部材27には、固定金具20を床材3に取付ねじ41を介して取り付けるための取付孔35が2つ形成されている。突起部21には雄ねじ23が形成されており、突起部21に貫通された耐火被覆材5をナット40により固定することができるようになっている。2つの取付孔35と突起部21は、
図4の下側から固定金具20を視たとき、突起部21が2つの取付孔35の中間に位置するように配置されている。本実施例では、突起部21が2つの取付孔35の中間に位置するように配置されているが、突起部21が取付孔35の軸線と重ならないように配置されていれば、突起部21が2つの取付孔35の中間に位置する配置に限定されない。突起部21が取付孔35の軸線と重ならないように配置されていることにより、取付ねじ41を取付孔35に通すときに突起部21と取付ねじ41が干渉しないため、取付ねじ41の取付けが容易になるからである。取付孔35は2つに限定されず、ひとつ、もしくは、2つ以上であっても構わない。
【0019】
固定金具20の材質としては、耐火構造に用いる金具であるため、火災等による高温の雰囲気下でも容易に変形しない材質であることが望ましい。そのため、例えば、鉄板や亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板などを適用可能である。
【0020】
次に、
図3、5を用いて固定金具20の床材3への取り付けについて説明する。固定金具20は、鉄骨梁2の上側のフランジ6の上面に載置されている左側の床材3の下面と右側の床材3の下面のそれぞれに2か所取り付けられる。鉄骨梁2の上側のフランジ6の端面に支持部24が当接するように固定金具20を配置し、取付孔35を介して取付ねじ41により固定金具20を床材3の下面に固定する。突起部21が2つの取付孔35の中間に位置するように配置されているため、取付ねじ41が突起部21と干渉しないため、取付ねじ41の取付作業が容易である。
【0021】
次に、
図1、2を用いて、固定金具20を用いて耐火被覆材5が鉄骨梁2を覆う耐火構造1について具体的に説明する。本実施形態の耐火構造1は、鉄骨梁2の上面の左右両側に耐火性能を有する床材3が水平に配置され、左右の床材3の下に配置されている鉄骨梁2床材3に面しない部分が耐火被覆材5によって被覆されている耐火構造である。耐火被覆材5の一端側が、左側の床材3の下面に取り付けられた二つの固定金具20に固定され、鉄骨梁2の右側においては、耐火被覆材5の他端側が、右側の床材3の下面に取り付けられた2つの固定金具20に固定される。耐火被覆材5の一端側が左側の床材3に取り付けられた固定金具20に固定され、耐火被覆材5の他端側が右側の床材3に取り付けられた固定金具20に固定されることで、左側の床材3と右側の床材3の下側に配置される鉄骨梁2が耐火被覆材5で覆われる。
【0022】
耐火被覆材5の一端側を左側の床材3に取り付けられた固定金具20の突起部21に貫通させ、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結することで、耐火被覆材5の一端側は固定金具20に固定される。同様に、耐火被覆材5の他端側を左側の床材3に取り付けられた固定金具20の突起部21に貫通させ、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結することで、耐火被覆材5の他端側は固定金具20に固定される。
【0023】
本実施形態の耐火構造1によれば、突起部21に雄ねじ23が形成されているため、ナット40によって、確実に耐火被覆材5の脱落を抑制することができる。また、耐火被覆材5は熱膨張材が含まれた樹脂製であるため、作業環境の悪化を抑制し、軽量であるため作業も容易である。また、ベース材として樹脂を適用することで、従来の無機繊維を主成分とするロックウール等と比較して、耐水性に優れ、運搬時の劣化等を抑制可能であるため、運搬作業も容易である。従って、本実施形態の耐火構造1では、左側の床材3と右側の床材3との下側に配置される鉄骨梁2が、左側の床材3から右側の床材3にかけて、耐火被覆材5で覆われるため、鉄骨梁2を、火災等による高温から保護する耐火構造を実現できると共に、作業性が良好であり、安価に施工することが可能である耐火構造を提供することができる。
なお、ナット40として、いわゆる丸形スピードナット(Round Type Speed Nut)と呼ばれるものを使用すれば、雄ねじ23への差し込みのみで容易に固定が可能となり、より好ましい。
【0024】
本実施形態では、床材3が取り付けられる鉄骨梁2を耐火被覆材5で被覆した例を説明したが、外壁材が取付けられる構造体としての鉄骨柱に対しても適用可能である。また、突起部21に雄ねじ23が形成されていなくてもよく、例えば、針金状の突起であってもよい。この場合には、耐火被覆材5に突起部21を突き刺して、その後先端を屈曲させることで、耐火被覆材5の脱落を抑制することができる。
【0025】
次に、
図1、2、3を用いて、固定金具20を用いて耐火被覆材5が鉄骨梁2を覆う耐火構造1の施工方法について具体的に説明する。
最初に、
図3に示すように、鉄骨梁2の上側のフランジ6の左側上面に載置されている左側の床材3の下面に2つの固定金具20を取付ねじ41を用いて取り付け、続いて、鉄骨梁2の上側のフランジ6の右側上面に載置されている右側の床材3の下面に2つの固定金具20を取付ねじ41を用いて取り付ける。固定金具20は、支持部材26の突起部21が立設支持する面とは反対側の面を鉄骨梁2のフランジ6の端面に当接するように配置する。従って、突起部21の先端は鉄骨梁2とは反対側を向くように固定金具20は配置される。尚、固定金具20の取り付けの順番は左右のどちらからでも構わない。次に、耐火被覆材5の一端側を、左側の床材3の下面に取り付けられた2つの固定金具20の突起部21に貫通させて、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結し、耐火被覆材5の一端側を固定する。次に、耐火被覆材5の他端側を、右側の床材3の下面に取り付けられた2つの固定金具20の突起部21に貫通させて、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結し、耐火被覆材5の他端側を固定して、鉄骨梁2を耐火被覆材5によって被覆する。
【0026】
最初に、固定金具20を床材3に取付ねじ41を用いて取り付け、次に、耐火被覆材5の一端側と他端側を固定金具20の突起部21に貫通させてから、突起部21にナット40を締結することで、施工者一人で耐火被覆材5を取り付けることができるため、耐火被覆材5の取り付けの作業性が良好であり、安価に施工することが可能である。一方、従来技術では、耐火被覆材5を床材3に直接ビス止めしていたが、一人での施工では、耐火被覆材を所定の位置で押さえながら、硬い床材に上向きにビス止めするのは困難であったため、複数名で施工しなければならなかった。しかし、本実施形態に係る固定金具20を用いた耐火構造の施工方法の場合は、ナット40で耐火被覆材5を仮止めすることができるため、施工者一人で耐火被覆材5を取り付けることができるという効果を有する。
【0027】
次に
図6A、6Bを用いて、第2実施形態に係る耐火被覆材用の固定金具51について説明する。
図6Aは固定金具51を下方から見た斜視図であり、
図6Bは、固定金具51を上方から見た斜視図である。第2実施形態に係る固定金具51と第1実施形態に係る固定金具20の相違は、第1実施形態に係る固定金具20は、支持部24が支持部材26と当接部材27とを有して断面がL字形状であるが、第2実施形態に係る固定金具51は、支持部の断面がL字形状ではなく、突起部21の基端を立設支持するする平板状の支持部材53に取付孔35が形成されている点であり、他の構成は第1実施形態に係る固定金具20と同じである。以下、第1実施形態に係る固定金具20と共通する構成については、同じ符号を示す。
【0028】
固定金具51は、先端が耐火被覆材5を貫通する突起部21と、突起部21の基端を立設支持する支持部52を備えており、支持部52は平板状の支持部材53からなる。突起部21は支持部材53の中央に立設しており、支持部材53には突起部21を挟むように2つの取付孔35が形成されている。尚、
図6Bに示すように、固定金具51を床材3に取り付けるための取付ねじ41を、あらかじめ、抜け止め輪54によって固定金具51から抜けないように固定されていても構わない。
【0029】
次に、固定金具51を用いて耐火被覆材5が鉄骨梁2を覆う耐火構造1の施工方法について具体的に説明する。
最初に、鉄骨梁2の上側のフランジ6の左側上面に載置されている左側の床材3の下面に2つの固定金具51を取付ねじ41を用いて取り付け、続いて、鉄骨梁2の上側のフランジ6の右側上面に載置されている右側の床材3の下面に2つの固定金具51を取付ねじ41を用いて取り付ける。固定金具51は、支持部材53の端面を鉄骨梁2のフランジ6の端面に当接するように配置する。従って、突起部21の先端が下側を向くように固定金具51は取り付けられる。尚、固定金具20の取り付けの順番は左右のどちらからでも構わない。次に、耐火被覆材5の一端側を、左側の床材3の下面に取り付けられた一方の固定金具51の突起部21に貫通させて、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結する。同様に、耐火被覆材5のもう一方の一端側を、左側の床材3の下面に取り付けられた他方の固定金具51の突起部21に貫通させて、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結し、耐火被覆材5の一端側を固定する。次に、耐火被覆材5の他端側を、右側の床材3の下面に取り付けられた一方の固定金具51の突起部21に貫通させて、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結する。同様に、耐火被覆材5のもう一方の他端側を、右側の床材3の下面に取り付けられた他方の固定金具51の突起部21に貫通させて、雄ねじ23が形成された突起部21にナット40を締結し、耐火被覆材5の他端側を固定して、鉄骨梁2を耐火被覆材5によって被覆する。
【0030】
最初に、固定金具51を床材3に取付ねじ41を用いて取り付け、次に、耐火被覆材5の一端側を固定金具51の突起部21に貫通させて、突起部21にナット40を締結し、次に、耐火被覆材5の他端側を固定金具51の突起部21に貫通させて、突起部21にナット40を締結することで、施工者一人で耐火被覆材5を取り付けることができるため、耐火被覆材5の取り付けの作業性が良好であり、安価に施工することが可能である。一方、従来技術では、耐火被覆材5を床材3に直接ビス止めしていたが、一人での施工では、耐火被覆材を所定の位置で押さえながら、硬い床材に上向きにビス止めするのは困難であったため、複数名で施工しなければならなかった。しかし、本実施形態に係る固定金具20を用いた耐火構造の施工方法の場合は、ナット40で耐火被覆材5を仮止めすることができるため、施工者一人で耐火被覆材5を取り付けることができるという効果を有する。
【0031】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0032】
1…耐火構造、2…鉄骨梁、3…床材、5…耐火被覆材、6…フランジ、7…ウェブ、20…固定金具、21…突起部、23…雄ねじ、24…支持部、26…支持部材、27…当接部材、35…取付孔、40…ナット、41…取付ねじ、51…固定金具、52…支持部、53…支持部材、54…抜け止め輪