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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】キャンセルカム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/42 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B60Q1/42 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022505055
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003921
(87)【国際公開番号】W WO2021176932
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020034833
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(72)【発明者】
【氏名】田尻 洋司
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特許第5138022(JP,B2)
【文献】実開昭63-159344(JP,U)
【文献】実開平3-94333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトと一体で回転軸線回りに回転可能な部材であって、外周部と、内周部と、前記回転軸線に平行な軸方向を向く第1面と、を含む環状部材と、
ターンシグナルスイッチを作動位置から中立位置へ復帰させるように構成され、前記外周部から前記軸方向に延び、前記外周部に沿って周方向に延びるカム壁と、
前記カム壁から前記内周部の方へ延び、前記カム壁を前記環状部材に連結する少なくとも1つの補強リブと、を備え、
前記カム壁は、前記軸方向において前記第1面から定義される第1軸方向長さを有し、
前記内周部は、前記軸方向において前記第1面から定義される第2軸方向長さを有し、
前記第2軸方向長さは、前記第1軸方向長さよりも短い、
キャンセルカム。
【請求項2】
前記環状部材は、前記内周部において前記第1面から前記軸方向に突出する部分を有さない、
請求項1に記載のキャンセルカム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの補強リブは、前記カム壁から前記内周部の方へ延び、前記カム壁を前記第1面に連結する、
請求項1または2に記載のキャンセルカム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの補強リブは、前記カム壁から前記第1面の方へ延び前記回転軸線に対して傾斜する傾斜面を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のキャンセルカム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの補強リブは、前記軸方向において前記第1面から定義される第3軸方向長さを有し、
前記第2軸方向長さは、前記第3軸方向長さよりも短い、
請求項1~4のいずれか1項に記載のキャンセルカム。
【請求項6】
前記第3軸方向長さは、前記第1軸方向長さ以下である、
請求項5に記載のキャンセルカム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補強リブは、径方向において前記カム壁から定義される径方向長さを有し、
前記径方向長さは、前記第3軸方向長さよりも短い、
請求項5または6に記載のキャンセルカム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの補強リブは、複数の補強リブを含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載のキャンセルカム。
【請求項9】
前記カム壁は、第1周方向端と、第2周方向端と、を含み、
前記カム壁は、前記第1周方向端から前記第2周方向端まで前記周方向に延びる、
請求項1~8のいずれか1項に記載のキャンセルカム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの補強リブは、前記第1周方向端に連結される第1補強リブと、前記第2周方向端に連結される第2補強リブと、を含む、
請求項9に記載のキャンセルカム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの補強リブは、前記第1補強リブと前記第2補強リブとの間に配置される中間補強リブを含み、
前記第1補強リブおよび前記第2補強リブの少なくとも一方の厚みは、前記中間補強リブの厚みよりも大きい、
請求項10に記載のキャンセルカム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される技術は、キャンセルカムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、回転コネクタ装置に用いられるキャンセルカムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5138022号公報
【文献】特開2010-143460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターンシグナルスイッチを中立位置から作動位置へ操作すると、ターンシグナルスイッチのラチェットがキャンセルカムに接触する。このため、キャンセルカムの強度を確保するのが好ましい。一方で、ターンシグナルスイッチとキャンセルカムとの接触により生じる異音を低減することが好ましい。
【0005】
本願に開示される技術の課題は、キャンセルカムの強度を確保しつつ、ターンシグナルスイッチとキャンセルカムとの接触により生じる異音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の特徴に係るキャンセルカムは、環状部材と、カム壁と、少なくとも1つの補強リブと、を備える。環状部材は、ステアリングシャフトと一体で回転軸線回りに回転可能な部材であって、外周部と、内周部と、回転軸線に平行な軸方向を向く第1面と、を含む。カム壁は、ターンシグナルスイッチを作動位置から中立位置へ復帰させるように構成され、外周部から軸方向に延び、外周部に沿って周方向に延びる。少なくとも1つの補強リブは、カム壁から内周部の方へ延び、カム壁を環状部材に連結する。カム壁は、軸方向において第1面から定義される第1軸方向長さを有する。内周部は、軸方向において第1面から定義される第2軸方向長さを有する。第2軸方向長さは、第1軸方向長さよりも短い。
【0007】
第1の特徴に係るキャンセルカムでは、第2軸方向長さが第1軸方向長さよりも短いので、ターンシグナルスイッチとカム壁との接触により発生する異音がカム壁の径方向内側において反響するのを抑制できる。一方、少なくとも1つの補強リブにより環状部材およびカム壁の連結強度を確保できる。これにより、キャンセルカムの強度を確保しつつ、ターンシグナルスイッチとキャンセルカムとの接触により生じる異音を低減できる。
【0008】
第2の特徴に係るキャンセルカムは、第1の特徴に係るキャンセルカムにおいて、環状部材は、内周部において第1面から軸方向に突出する部分を有さない。
【0009】
第2の特徴に係るキャンセルカムでは、ターンシグナルスイッチとカム壁との接触により発生する異音がカム壁の径方向内側において反響するのを確実に抑制できる。
【0010】
第3の特徴に係るキャンセルカムは、第1または第2の特徴に係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、カム壁から内周部の方へ延び、カム壁を第1面に連結する。
【0011】
第3の特徴に係るキャンセルカムでは、環状部材およびカム壁の連結強度を高めることができる。
【0012】
第4の特徴に係るキャンセルカムは、第1~第3の特徴のいずれかに係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、カム壁から第1面の方へ延び回転軸線に対して傾斜する傾斜面を含む。
【0013】
第4の特徴に係るキャンセルカムでは、環状部材およびカム壁の連結強度を高めつつ、ターンシグナルスイッチとカム壁との接触により発生する異音がカム壁の径方向内側において反響するのを抑制できる。
【0014】
第5の特徴に係るキャンセルカムは、第1~第4の特徴のいずれかに係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、軸方向において第1面から定義される第3軸方向長さを有する。第2軸方向長さは、第3軸方向長さよりも短い。
【0015】
第5の特徴に係るキャンセルカムでは、ターンシグナルスイッチとカム壁との接触により発生する異音がカム壁の径方向内側において反響するのを確実に抑制できる。
【0016】
第6の特徴に係るキャンセルカムは、第5の特徴に係るキャンセルカムにおいて、第3軸方向長さは、第1軸方向長さ以下である。
【0017】
第6の特徴に係るキャンセルカムでは、異音の発生を抑制しつつ、キャンセルカムの軽量化が可能となる。
【0018】
第7の特徴に係るキャンセルカムは、第5または第6の特徴に係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、径方向においてカム壁から定義される径方向長さを有する。径方向長さは、第3軸方向長さよりも短い。
【0019】
第7の特徴に係るキャンセルカムでは、異音の発生を抑制しつつ、キャンセルカムの軽量化が可能となる。
【0020】
第8の特徴に係るキャンセルカムは、第1~第7の特徴のいずれかに係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、複数の補強リブを含む。
【0021】
第8の特徴に係るキャンセルカムでは、環状部材およびカム壁の連結強度を確実に高めつつ、ターンシグナルスイッチとカム壁との接触により発生する異音がカム壁の径方向内側において反響するのを抑制できる。
【0022】
第9の特徴に係るキャンセルカムは、第1~第8の特徴のいずれかに係るキャンセルカムにおいて、カム壁は、第1周方向端と、第2周方向端と、を含む。カム壁は、第1周方向端から第2周方向端まで周方向に延びる。
【0023】
第9の特徴に係るキャンセルカムでは、カム壁の強度を確保しやすくなる。
【0024】
第10の特徴に係るキャンセルカムは、第1~第9の特徴のいずれかに係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、第1周方向端に連結される第1補強リブと、第2周方向端に連結される第2補強リブと、を含む。
【0025】
第10の特徴に係るキャンセルカムでは、カム壁の強度を高めることができる。
【0026】
第11の特徴に係るキャンセルカムは、第10の特徴に係るキャンセルカムにおいて、少なくとも1つの補強リブは、第1補強リブと第2補強リブとの間に配置される中間補強リブを含む。第1補強リブおよび第2補強リブの少なくとも一方の厚みは、中間補強リブの厚みよりも大きい。
【0027】
第11の特徴に係るキャンセルカムでは、第1補強リブおよび第2補強リブの少なくとも一方によりカム壁の第1周方向端および第2周方向端の少なくとも一方を効率よく補強でき、さらに、中間補強リブによりカム壁の中間部を補強できる。すなわち、第1補強リブ、第2補強リブ、および中間補強リブによりカム壁の強度を効率よく高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本願に開示される技術であれば、キャンセルカムの強度を確保しつつ、ターンシグナルスイッチとキャンセルカムとの接触により発生する異音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本実施形態に係るキャンセルカムを含む回転コネクタ装置の斜視図である。
図2図2は、キャンセルカムの斜視図である。
図3図3は、図8のラインIII-IIIにおけるキャンセルカムの断面図である。
図4図4は、変形例に係るキャンセルカムの断面図である。
図5図5は、図8のラインV-Vにおけるキャンセルカムの断面図である。
図6図6は、図8に示すキャンセルカムの部分断面図である。
図7図7は、キャンセルカムの斜視図である。
図8図8は、キャンセルカムの平面図である。
図9図9は、図8のラインVIII-VIIIにおけるキャンセルカムの断面図である。
図10図10は、キャンセルカムおよびターンシグナルスイッチの模式図である(中立位置)。
図11図11は、キャンセルカムおよびターンシグナルスイッチの模式図である(作動位置)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図中において同じ符号は、対応するまたは同一の構成を示している。
【0031】
図1に示すように、回転コネクタ装置1は、回転体10、ステータ20、電気コネクタ30、およびキャンセルカム40を備える。回転体10はステータ20に対して回転軸線A1回りに回転可能に設けられる。本実施形態では、例えば、ステータ20は車両本体に固定されるように構成され、回転体10はステアリングホイールのステアリングシャフトに連結されるように構成される。電気コネクタ30およびキャンセルカム40は回転体10に取り付けられる。回転体10、電気コネクタ30、およびキャンセルカム40は、ステアリングホイールと一体で回転軸線A1回りに回転可能である。電気コネクタ30は、例えば、ステアリング側コネクタと電気的に接続されるように構成される。ステアリング側コネクタは、ステアリングホイールのスイッチ類やエアバッグ装置等の電気回路に電気的に接続される。
【0032】
図2に示すように、キャンセルカム40は、環状部材41と、カム壁42と、少なくとも1つの補強リブ43と、を備える。環状部材41は、ステアリングシャフトと一体で回転軸線A1回りに回転可能である。環状部材41は、外周部44と、内周部45と、第1面46と、を含む。第1面46は回転軸線A1に平行な軸方向D1を向く。
【0033】
外周部44は環状部材41の最外周を構成する。内周部45は環状部材41の最内周を構成する。環状部材41は開口47を含む。内周部45は開口47の少なくとも一部を定義する。回転コネクタ装置1が車両に搭載される状態で、ステアリングシャフトは開口47に挿入される。
【0034】
カム壁42は、ターンシグナルスイッチ150(図10参照)を作動位置LまたはR(図10参照)から中立位置N(図10参照)へ復帰させるように構成される。カム壁42は、外周部44から軸方向D1に延び、外周部44に沿って周方向D2に延びる。カム壁42は、第1周方向端42Aと、第2周方向端42Bと、を含む。カム壁42は、第1周方向端42Aから第2周方向端42Bまで周方向D2に延びる。
【0035】
少なくとも1つの補強リブ43は、カム壁42から内周部45の方へ延び、カム壁42を環状部材41に連結する。少なくとも1つの補強リブ43は、カム壁42から内周部45の方へ延び、カム壁42を第1面46に連結する。
【0036】
少なくとも1つの補強リブ43は、複数の補強リブ43を含む。少なくとも1つの補強リブ43は、第1周方向端42Aに連結される第1補強リブ43Aと、第2周方向端42Bに連結される第2補強リブ43Bと、を含む。少なくとも1つの補強リブ43は、少なくとも1つの中間補強リブ43Cを含む。少なくとも1つの中間補強リブ43Cは複数の中間補強リブ43Cを含む。
【0037】
少なくとも1つの補強リブ43は、カム壁42から第1面46の方へ延び回転軸線A1に対して傾斜する傾斜面43Dを含む。第1補強リブ43Aは、カム壁42から第1面46の方へ延び回転軸線A1に対して傾斜する傾斜面43Dを含む。第2補強リブ43Bは、カム壁42から第1面46の方へ延び回転軸線A1に対して傾斜する傾斜面43Dを含む。中間補強リブ43Cは、カム壁42から第1面46の方へ延び回転軸線A1に対して傾斜する傾斜面43Dを含む。
【0038】
図3に示すように、カム壁42は、軸方向D1において第1面46から定義される第1軸方向長さL1を有する。内周部45は、軸方向D1において第1面46から定義される第2軸方向長さL2を有する。少なくとも1つの補強リブ43は、軸方向D1において第1面46から定義される第3軸方向長さL3を有する。第2軸方向長さL2は、第1軸方向長さL1よりも短い。第2軸方向長さL2は、第3軸方向長さL3よりも短い。第3軸方向長さL3は、第1軸方向長さL1以下である。第3軸方向長さL3は第1軸方向長さL1と等しい。しかし、第3軸方向長さL3は第1軸方向長さL1よりも短くてもよい。
【0039】
本実施形態では、第2軸方向長さL2は第1軸方向長さL1の50%以下である。第2軸方向長さL2は第1軸方向長さL1の25%以下である。第2軸方向長さL2は第3軸方向長さL3の50%以下である。第3軸方向長さL3は第1軸方向長さL1の25%以下である。環状部材41は、内周部45において第1面46から軸方向D1に突出する部分を有さない。すなわち、本実施形態では、第2軸方向長さL2は、ゼロである。しかし、図4に示すように、第2軸方向長さL2がゼロよりも長くてもよい。この場合、内周部45は、第1面46から軸方向D1に延びる突出部45Aを含む。
【0040】
図5に示すように、カム壁42は、外周面42Cと、内周面42Dと、を含む。外周面42Cは、ターンレバーと接触可能である。内周面42Dは、外周面42Cの裏側に設けられる。補強リブ43は内周面42Dから径方向内側に延びる。補強リブ43は、第2環状プレート52から軸方向D1へ延びる。補強リブ43は、カム壁42、第2環状プレート52、および中間部53を連結する。
【0041】
少なくとも1つの補強リブ43は、径方向においてカム壁42から定義される径方向長さL4を有する。補強リブ43の径方向長さL4は、カム壁42の内周面42Dから径方向内側に定義される。本実施形態では、径方向長さL4は、第3軸方向長さL3よりも短い。しかし、径方向長さL4は、第3軸方向長さL3以上であってもよい。
【0042】
図6に示すように、カム壁42の外周面42Cは、ターンシグナルスイッチ150のラチェット120(図10参照)が接触する接触面42Eを含む。カム壁42は軸方向D1において外周部44から最も遠い軸方向端部42Fを含む。接触面42Eは軸方向D1において第1面46および軸方向端部42Fの間に設けられる。
【0043】
図3に示すように、環状部材41は、軸方向D1を向く第2面49を含む。第2面49は、第1面46の裏側に設けられる。図7に示すように、キャンセルカム40は複数の連結部50を備える。複数の連結部50は第2面49から軸方向D1に延びる。連結部50は内周部45から軸方向D1に延びる。連結部50は回転体10と連結されるように構成される。
【0044】
図8に示すように、本実施形態では、キャンセルカム40は、基準面RPに対して対称な形状を有する。基準面RPは回転軸線A1を含む仮想面である。キャンセルカム40は、カム壁142と、少なくとも1つの補強リブ143と、を備える。カム壁142は、基準面RPに対してカム壁42と対称な形状を有し、カム壁42と実質的に同じ構造を有する。少なくとも1つの補強リブ143は、複数の補強リブ143を含む。複数の補強リブ143は、基準面RPに対して複数の補強リブ43と対称な形状を有し、複数の補強リブ43と実質的に同じ構造を有する。しかし、キャンセルカム40が基準面RPに対して非対称な形状を有していてもよい。
【0045】
中間補強リブ43Cは、第1補強リブ43Aと第2補強リブ43Bとの間に配置される。第1補強リブ43Aおよび第2補強リブ43Bの少なくとも一方の厚みは、中間補強リブ43Cの厚みよりも大きい。本実施形態では、第1補強リブ43Aの厚みおよび第2補強リブ43Bの厚みは、中間補強リブ43Cの厚みよりも大きい。しかし、第1補強リブ43Aおよび第2補強リブ43Bの少なくとも一方の厚みが中間補強リブ43Cの厚みと等しくてもよく、または、中間補強リブ43Cの厚みより小さくてもよい。
【0046】
図3に示すように、環状部材41は、第1環状プレート51、第2環状プレート52、および中間部53を含む。第1環状プレート51は、内周部45、第1面46、および第2面49を含む。第2環状プレート52は外周部44を含む。連結部50は第1環状プレート51から軸方向D1に延びる。第2環状プレート52は第1環状プレート51から軸方向D1にオフセットした位置に配置される。第2環状プレート52の外径は第1環状プレート51の外径よりも大きい。中間部53は第1環状プレート51から第2環状プレート52まで軸方向D1に延びる。中間部53は第1環状プレート51の第2面49から第2環状プレート52まで軸方向D1に延びる。中間部53は第1環状プレート51を第2環状プレート52に連結する。カム壁42および142は外周部44(本実施形態では、第2環状プレート52の外周)から軸方向D1に第1環状プレート51を超えて延びる。カム壁42および142は中間部53の径方向外側に配置される。
【0047】
図8に示すように、環状部材41は第1外周壁54および第2外周壁55を含む。第1外周壁54はカム壁42からカム壁142まで周方向D2に延びる。第1外周壁54はカム壁42をカム壁142に連結する。第2外周壁55はカム壁42からカム壁142まで周方向D2に延びる。第2外周壁55はカム壁42をカム壁142に連結する。
【0048】
環状部材41は、複数の第1リブ56および複数の第2リブ57を含む。第1リブ56は第1外周壁54を第2環状プレート52および中間部53に連結する。第2リブ57は第2外周壁55を第2環状プレート52および中間部53に連結する。
【0049】
図9に示すように、第1外周壁54および第2外周壁55は外周部44(本実施形態では、第2環状プレート52の外周)から軸方向D1に延びる。第1リブ56は第1外周壁54から中間部53まで延びる。第2リブ57は第2外周壁55から中間部53まで延びる。
【0050】
図10に示すように、ターンシグナルスイッチ150はキャンセルカム40の径方向外側に配置される。ターンシグナルスイッチ150は、ラチェット120、ラチェットスプリング122、ブラケット130、バックスプリング135、ターンレバー140、およびケース151を含む。ケース151は車体に固定される。ラチェット120、ラチェットスプリング122、ブラケット130、およびバックスプリング135は、ケース151内に設けられる。ラチェット120は、ケース151に対して移動方向D3に移動可能にケース151に連結される。ラチェット120は、キャンセルカム40のカム壁42に接触可能に設けられる。ラチェットスプリング122は、ラチェット120をカム壁42の方へ付勢するようにラチェット120およびケース151に連結される。ブラケット130はブラケット軸131によりケース151に回転可能に連結される。ブラケット130はケース151に対して第1方向D41および第2方向D42に回転可能である。ターンレバー140は、ブラケット130に固定され、ブラケット130とともにケース151に対して回転可能である。ターンレバー140およびブラケット130は、ケース151に対して中立位置Nから作動位置LまたはRへ回転可能である。作動位置Lは左折指示位置Lとも称し得る。作動位置Rは右折指示位置Rとも称し得る。ターンレバー140が操作されていない状態では、バックスプリング135はブラケット130およびターンレバー140を中立位置Nに保持する。
【0051】
ラチェット120は、ラチェット軸121、第1ラチェット端部124、および第2ラチェット端部125を含む。バックプレート134はガイド溝152Aを含む。ラチェット軸121はガイド溝152A内に配置される。ラチェット120はガイド溝152Aにより移動方向D3に案内される。ラチェット120はラチェット軸121を中心としてケース151に対して回転可能である。第1ラチェット端部124はキャンセルカム40のカム壁42に接触可能である。ラチェット軸121は第1ラチェット端部124および第2ラチェット端部125の間に配置される。
【0052】
ブラケット130はバックプレート134を含む。バックプレート134は、ケース151に対して第1移動方向C1および第2移動方向C2に移動可能に設けられる。バックプレート134は、第1係合部132、第2係合部133、およびガイド部136を含む。第2ラチェット端部125は第1係合部132および第2係合部133の間に配置される。ガイド部136はラチェット120を移動方向D3に案内するように構成される。ガイド部136はラチェットスプリング122の付勢力によりラチェット軸121と常に接触する。したがって、ガイド部136はラチェット120の位置を保持するように構成される。
【0053】
例えば、ターンレバー140およびブラケット130が中立位置Nに配置された状態では、ラチェット120のラチェット軸121はガイド部136の先端部に接触する。これにより、ガイド部136はラチェット120を通常位置P1に保持する。ラチェット120が通常位置P1にある状態では、ラチェット120の第1ラチェット端部124はキャンセルカム40から離れている。また、ターンレバー140およびブラケット130が中立位置Nに配置された状態では、ラチェット120の第2ラチェット端部125は第1係合部132および第2係合部133の間に配置される。
【0054】
図11に示すように、ターンレバー140が中立位置Nから第1方向D41または第2方向D42に操作されると、ラチェット軸121がガイド部136の第1ガイド凹部137Aまたは第2ガイド凹部137Bへ移動し、ターンレバー140が作動位置LまたはRに保持される。このとき、ラチェット120はキャンセルカム40のカム壁42と接触可能な接触位置P2へ移動し、ラチェットスプリング122の付勢力により第1ラチェット端部124がカム壁42に衝突する。この衝突により異音が発生する。
【0055】
本実施形態に係るキャンセルカム40は、環状部材41と、カム壁42と、少なくとも1つの補強リブ43と、を備える。環状部材41は、ステアリングシャフトと一体で回転軸線A1回りに回転可能な部材であって、外周部44と、内周部45と、回転軸線A1に平行な軸方向D1を向く第1面46と、を含む。カム壁42は、ターンシグナルスイッチ150を作動位置LまたはRから中立位置Nへ復帰させるように構成され、外周部44から軸方向D1に延び、外周部44に沿って周方向D2に延びる。少なくとも1つの補強リブ43は、カム壁42から内周部45の方へ延び、カム壁42を環状部材41に連結する。カム壁42は、軸方向D1において第1面46から定義される第1軸方向長さL1を有する。内周部45は、軸方向D1において第1面46から定義される第2軸方向長さL2を有する。第2軸方向長さL2は、第1軸方向長さL1よりも短い。
【0056】
特許第5138022号公報の図2図6に記載されるキャンセルカム構造10では、内側壁13bの高さが外周カム壁13aの高さと等しいので、ラチェット20と外周カム壁13aとの接触により生じる異音が、外周カム壁13aと内側壁13bとの間の空洞で反響し、ドライバーにとって耳障りな籠った異音になり得る。
【0057】
しかし、本願のキャンセルカム40では、第2軸方向長さL2が第1軸方向長さL1よりも短いので、ターンシグナルスイッチ150とカム壁42との接触により発生する異音がカム壁42の径方向内側において反響するのを抑制できる。一方、少なくとも1つの補強リブ43により環状部材41およびカム壁42の連結強度を確保できる。これにより、キャンセルカム40の強度を確保しつつ、ターンシグナルスイッチ150とキャンセルカム40との接触により生じる異音を低減できる。
【0058】
環状部材41は、内周部45において第1面46から軸方向D1に突出する部分を有さない。これにより、ターンシグナルスイッチ150とカム壁42との接触により発生する異音がカム壁42の径方向内側において反響するのを確実に抑制できる。
【0059】
少なくとも1つの補強リブ43は、カム壁42から内周部45の方へ延び、カム壁42を第1面46に連結する。これにより、環状部材41およびカム壁42の連結強度を高めることができる。
【0060】
少なくとも1つの補強リブ43は、カム壁42から第1面46の方へ延び回転軸線A1に対して傾斜する傾斜面43Dを含む。これにより、環状部材41およびカム壁42の連結強度を高めつつ、ターンシグナルスイッチ150とカム壁42との接触により発生する異音がカム壁42の径方向内側において反響するのを抑制できる。
【0061】
少なくとも1つの補強リブ43は、軸方向D1において第1面46から定義される第3軸方向長さL3を有する。第2軸方向長さL2は、第3軸方向長さL3よりも短い。これにより、ターンシグナルスイッチ150とカム壁42との接触により発生する異音がカム壁42の径方向内側において反響するのを確実に抑制できる。
【0062】
第3軸方向長さL3は、第1軸方向長さL1以下である。これにより、異音の発生を抑制しつつ、キャンセルカム40の軽量化が可能となる。
【0063】
少なくとも1つの補強リブ43は、径方向においてカム壁42から定義される径方向長さL4を有する。径方向長さL4は、第3軸方向長さL3よりも短い。これにより、異音の発生を抑制しつつ、キャンセルカム40の軽量化が可能となる。
【0064】
少なくとも1つの補強リブ43は、複数の補強リブ43を含む。これにより、環状部材41およびカム壁42の連結強度を確実に高めつつ、ターンシグナルスイッチ150とカム壁42との接触により発生する異音がカム壁42の径方向内側において反響するのを抑制できる。
【0065】
カム壁42は、第1周方向端42Aと、第2周方向端42Bと、を含む。カム壁42は、第1周方向端42Aから第2周方向端42Bまで周方向D2に延びる。これにより、カム壁42の強度を確保しやすくなる。
【0066】
少なくとも1つの補強リブ43は、第1周方向端42Aに連結される第1補強リブ43Aと、第2周方向端42Bに連結される第2補強リブ43Bと、を含む。これにより、カム壁42の強度を高めることができる。
【0067】
少なくとも1つの補強リブ43は、第1補強リブ43Aと第2補強リブ43Bとの間に配置される中間補強リブ43Cを含む。第1補強リブ43Aおよび第2補強リブ43Bの少なくとも一方の厚みは、中間補強リブ43Cの厚みよりも大きい。したがって、第1補強リブ43Aおよび第2補強リブ43Bの少なくとも一方によりカム壁42の第1周方向端42Aおよび第2周方向端42Bの少なくとも一方を効率よく補強でき、さらに、中間補強リブ43Cによりカム壁42の中間部を補強できる。すなわち、第1補強リブ43A、第2補強リブ43B、および中間補強リブ43Cによりカム壁42の強度を効率よく高めることができる。
【0068】
なお、本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0069】
本願において、「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在していることを暗に意味しているわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在していることを暗に意味しているわけではない。
【0070】
また、本開示における「平行」「直交」および「一致」の表現は、厳密に解釈されるべきではなく、「実質的な平行」「実質的な直交」および「実質的な一致」の意味をそれぞれ含む。また、その他の配置に関する表現も、厳密に解釈されるものではない。
【0071】
また、本開示における「AおよびBのうち少なくとも1つ」という表現は、例えば、(1)Aのみ、(2)Bのみ、および(3)AおよびBの両方、のいずれも包含している。「A、BおよびCのうち少なくとも1つ」という表現は、例えば、(1)Aのみ、(2)Bのみ、(3)Cのみ、(4)AおよびB、(5)BおよびC、(6)AおよびC、(7)A、BおよびCの全て、のいずれも包含している。本開示では、「AおよびBのうち少なくとも1つ」という表現は、「Aのうち少なくとも1つおよびBのうち少なくとも1つ」とは解釈されない。
【0072】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 :回転コネクタ装置
10 :回転体
20 :ステータ
30 :電気コネクタ
40 :キャンセルカム
41 :環状部材
42、142:カム壁
42A :第1周方向端
42B :第2周方向端
42C :外周面
42D :内周面
43、143 :補強リブ
43A :第1補強リブ
43B :第2補強リブ
43C :中間補強リブ
43D :傾斜面
44 :外周部
45 :内周部
46 :第1面
120 :ラチェット
140 :ターンレバー
150 :ターンシグナルスイッチ
A1 :回転軸線
D1 :軸方向
D2 :周方向
L :作動位置
N :中立位置
R :作動位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11