(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ボールバルブ、及びボールバルブユニット
(51)【国際特許分類】
F16K 5/06 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
F16K5/06 L
(21)【出願番号】P 2020060880
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】吉原 雅之
(72)【発明者】
【氏名】唐藤 実
(72)【発明者】
【氏名】神代 忠治
(72)【発明者】
【氏名】笠井 育人
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-320377(JP,A)
【文献】特開昭62-052297(JP,A)
【文献】特開昭58-077976(JP,A)
【文献】特開平10-267139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象流体が通る流路を有し、前記流路の途中にキャビティが設けられたバルブボディと、
前記キャビティ内に回動可能に収容され、通孔を有するボール弁体と、
前記キャビティ内において前記流路の流れ方向の一方側の端部と他方側の端部とにそれぞれ配置され、前記キャビティの壁面と前記ボール弁体の外面との間をシールする一対のシールリングと、
を備え、
前記バルブボディには、
前記バルブボディの外側と前記キャビティ内とに連通し、前記キャビティ内に清掃用流体を導入する導入孔と、
前記キャビティ内と前記バルブボディの外側とに連通する排出孔と、
が設けられ、
前記導入孔の前記キャビティ側の導入孔開口部は、前記ボール弁体の回動状態が前記流路の流れを遮断するバルブ閉状態である場合における前記ボール弁体の前記通孔に対向する位置に設けられ、
前記排出孔の前記キャビティ側の排出孔開口部は、前記ボール弁体の回動状態が前記バルブ閉状態である場合における前記ボール弁体の前記通孔に対向しない位置に設けられている、ボールバルブ。
【請求項2】
前記排出孔開口部は、前記導入孔開口部よりも下方の位置に設けられている、請求項
1に記載のボールバルブ。
【請求項3】
前記バルブボディに取り付けられ、前記導入孔の流通状態を流通可能状態と流通遮断状態とに切り替える切替弁を更に備える、請求項
1に記載のボールバルブ。
【請求項4】
前記対象流体が液体である場合には、前記清掃用流体として清浄液体が前記導入孔から前記キャビティ内に導入される、又は、前記対象流体が粉体空気輸送における粉体及び気体である場合には、前記清掃用流体として清浄気体が前記導入孔から前記キャビティ内に導入される、請求項1~
3のいずれか一項に記載のボールバルブ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載されたボールバルブと、
前記導入孔に前記清掃用流体を供給し、前記導入孔を介して前記キャビティ内に前記清掃用流体を導入させる流体供給部と、
前記流体供給部における前記導入孔への前記清掃用流体の供給を制御する供給制御部と、
を備える、ボールバルブユニット。
【請求項6】
前記ボール弁体の回動状態を取得する状態取得部を更に備え、
前記供給制御部は、前記バルブ閉状態と前記流路の流通を可能とするバルブ開状態との間で前記ボール弁体が回動している状態であることが前記状態取得部によって取得された場合、前記導入孔に前記清掃用流体が供給されるように前記流体供給部を制御する、請求項
5に記載のボールバルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブ、及びボールバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、流路の途中にキャビティが設けられたバルブボディと、キャビティ内に回動可能に収容され、通孔を有するボール弁体と、キャビティの壁面とボール弁体の外面との間をシールする一対のシールリングとを備えるボールバルブが記載されている。このボールバルブは、ボール弁体が回動させられることによって、ボール弁体の通孔と流路とが連通するバルブ開状態と、ボール弁体の外面によって流路の流れを遮断するバルブ閉状態とに切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、粉体空気輸送における粉体及び気体のように固体を含む流体、又はスラリーのように固体を含む流体を搬送する搬送流路の途中に、上述したボールバルブが設けられる場合がある。この場合、シールリングのシール不良によって、又はボール弁体が中間の開き角度となったときにキャビティ内が流体に晒されることによって、キャビティ内(キャビティの壁面とボール弁体の外面との隙間)に固体が入り込み、固体が蓄積することがある。また、固体(固形分)が析出する流体を搬送する搬送流路の途中に上述したボールバルブが設けられる場合も同様に、析出した固体がキャビティ内で蓄積することがある。このように、キャビティ内に固体が蓄積した場合、ボール弁体が回動し難くなり、ボールバルブの作動不良が生じ得る。また、修理、復旧の際にバルブを分解清掃する必要があり、多大な労力を要する。
【0005】
そこで、本発明は、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良を抑制できるボールバルブ及びボールバルブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面に係るボールバルブは、対象流体が通る流路を有し、流路の途中にキャビティが設けられたバルブボディと、キャビティ内に回動可能に収容され、通孔を有するボール弁体と、キャビティ内において流路の流れ方向の一方側の端部と他方側の端部とにそれぞれ配置され、キャビティの壁面とボール弁体の外面との間をシールする一対のシールリングと、を備え、バルブボディには、バルブボディの外側とキャビティ内とに連通し、キャビティ内に蓄積した固体を清掃・除去するための流体(以後「清掃用流体」という)を導入する導入孔が設けられ、導入孔のキャビティ側の導入孔開口部は、ボール弁体の回動状態が流路の流れを遮断するバルブ閉状態である場合におけるボール弁体の通孔に対向しない位置に設けられている。
【0007】
このボールバルブでは、バルブボディに設けられた導入孔から清掃用流体をキャビティ内(キャビティの壁面とボール弁体の外面との隙間)に導入することができる。これにより、キャビティ内に固体が蓄積する場合であっても、導入された清掃用流体によってシールリングとボール弁体との隙間等を介してキャビティ内から固体を排出することができる。従って、このボールバルブは、固体を含む対象流体及び固体(固形分)が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良が生じることを抑制できる。
【0008】
本発明の第2の側面に係るボールバルブは、対象流体が通る流路を有し、流路の途中にキャビティが設けられたバルブボディと、キャビティ内に回動可能に収容され、通孔を有するボール弁体と、キャビティ内において流路の流れ方向の一方側の端部と他方側の端部とにそれぞれ配置され、キャビティの壁面とボール弁体の外面との間をシールする一対のシールリングと、を備え、バルブボディには、バルブボディの外側とキャビティ内とに連通し、キャビティ内に清掃用流体を導入する導入孔と、キャビティ内とバルブボディの外側とに連通する排出孔と、が設けられ、導入孔のキャビティ側の導入孔開口部及び排出孔のキャビティ側の排出孔開口部は、ボール弁体の回動状態が流路の流れを遮断するバルブ閉状態である場合におけるボール弁体の通孔に対向しない位置にそれぞれ設けられている。
【0009】
このボールバルブでは、バルブボディに設けられた導入孔から清掃用流体をキャビティ内(キャビティの壁面とボール弁体の外面との隙間)に導入することができる。これにより、キャビティ内に固体が蓄積する場合であっても、導入された清掃用流体によってシールリングとボール弁体との隙間等を介してキャビティ内から固体を排出することができる。また、このボールバルブでは、バルブボディに排出孔が設けられている。これにより、キャビティ内に導入された清掃用流体と共にキャビティ内の固体を排出孔から排出することができる。このように、ボールバルブは、排出孔が設けられていることによって、キャビティ内の固体を容易に排出できる。従って、このボールバルブは、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良が生じることを抑制できる。
【0010】
本発明の第3の側面に係るボールバルブは、対象流体が通る流路を有し、流路の途中にキャビティが設けられたバルブボディと、キャビティ内に回動可能に収容され、通孔を有するボール弁体と、キャビティ内において流路の流れ方向の一方側の端部と他方側の端部とにそれぞれ配置され、キャビティの壁面とボール弁体の外面との間をシールする一対のシールリングと、を備え、バルブボディには、バルブボディの外側とキャビティ内とに連通し、キャビティ内に清掃用流体を導入する導入孔と、キャビティ内とバルブボディの外側とに連通する排出孔と、が設けられ、導入孔のキャビティ側の導入孔開口部は、ボール弁体の回動状態が流路の流れを遮断するバルブ閉状態である場合におけるボール弁体の通孔に対向する位置に設けられ、排出孔のキャビティ側の排出孔開口部は、ボール弁体の回動状態がバルブ閉状態である場合におけるボール弁体の通孔に対向しない位置に設けられている。
【0011】
このボールバルブでは、バルブボディに設けられた導入孔から清掃用流体をキャビティ内(キャビティの壁面とボール弁体の外面との隙間)に導入することができる。これにより、キャビティ内に固体が蓄積する場合であっても、導入された清掃用流体によってシールリングとボール弁体との隙間等を介してキャビティ内から固体を排出することができる。また、導入孔のキャビティ側の導入孔開口部は、バルブ閉状態のボール弁体の通孔に対向している。これにより、導入孔から導入された清掃用流体が通孔を通ってキャビティの壁面に吹き付けられて周囲に広がり、キャビティの壁面とボール弁体の外面との隙間の全体にわたってより均一に清掃用流体が行き渡る。従って、キャビティ内の全体から固体をより一層適切に排出することができる。また、ボールバルブでは、バルブボディに排出孔が設けられている。これにより、キャビティ内に導入された清掃用流体と共にキャビティ内の固体を排出孔から排出することができる。このように、ボールバルブは、排出孔を有していることにより、キャビティ内の固体を容易に排出できる。従って、このボールバルブは、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良が生じることを抑制できる。
【0012】
ボールバルブにおいて、排出孔開口部は、導入孔開口部よりも下方の位置に設けられていてもよい。この場合、ボールバルブは、重力によって下方に下がった固体を清掃用流体と共により一層適切に排出孔から排出できる。
【0013】
ボールバルブは、バルブボディに取り付けられ、導入孔の流通状態を流通可能状態と流通遮断状態とに切り替える切替弁を更に備えていてもよい。この場合、ボールバルブがバルブ開状態であり対象流体が流されているときに、切替弁を流通遮断状態とすることによって対象流体が導入孔からバルブボディ外に漏れ出ることを防止できる。
【0014】
ボールバルブにおいて、対象流体が液体である場合には、清掃用流体として清浄液体が導入孔からキャビティ内に導入される、又は、対象流体が粉体空気輸送における粉体及び気体である場合には、清掃用流体として清浄気体が導入孔からキャビティ内に導入されてもよい。この場合、対象流体の性質に応じて導入された清掃用流体によって、キャビティ内の固体を適切に排出できる。
【0015】
本発明の更に他の側面に係るボールバルブユニットは、上記のボールバルブと、導入孔に清掃用流体を供給し、導入孔を介してキャビティ内に清掃用流体を導入させる流体供給部と、流体供給部における導入孔への清掃用流体の供給を制御する供給制御部と、を備えている。
【0016】
このボールバルブユニットは、供給制御部の制御によって、清掃用流体を導入孔からキャビティ内に導入することができる。これにより、ボールバルブユニットは、キャビティ内に固体が蓄積する場合であっても、導入された清掃用流体によってシールリングとボール弁体との隙間等を介してキャビティ内から固体を排出することができる。以上のように、ボールバルブユニットは、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良を抑制できる。また、ボールバルブユニットでは、供給制御部が流体供給部を制御することによって、清掃用流体を導入孔からキャビティ内に導入できる。
【0017】
ボールバルブユニットは、ボール弁体の回動状態を取得する状態取得部を更に備え、供給制御部は、バルブ閉状態と流路の流通を可能とするバルブ開状態との間でボール弁体が回動している状態であることが状態取得部によって取得された場合、導入孔に清掃用流体が供給されるように流体供給部を制御してもよい。ここで、ボール弁体が回動して通孔の一部分が流路と連通した状態となったときに、キャビティ内とキャビティに隣接する流路とが通孔を介して連通した状態となる。この場合に清掃用流体が導入されるように供給制御部が流体制御部を制御することにより、ボールバルブは、キャビティ内の固体を、通孔を介して流路へ向けて排出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の種々の側面によれば、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係るボールバルブユニットの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ボールバルブをバルブ流路の延在方向に沿って切った断面図である。
【
図3】
図3は、ボールバルブをバルブ流路の延在方向に直交する方向に沿って切った断面図である。
【
図4】
図4は、変形例に係るボールバルブをバルブ流路の延在方向に直交する方向に沿って切った断面図である。
【
図5】
図5は、他の変形例に係るボールバルブをバルブ流路の延在方向に直交する方向に沿って切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、ボールバルブユニット1は、対象流体の供給元ユニットAから供給先ユニットBへ対象流体を搬送する搬送流路L上に設けられる。搬送流路Lを通じて搬送される対象流体は、固体を含む流体である。例えば、固体を含む対象流体は、粉体輸送における粉体及び気体のように固体を含む流体、又は、スラリーのように固体を含む流体であってもよい。また、搬送流路Lを通じて搬送される対象流体は、固体(固形分)が析出する流体であってもよい。
【0022】
ボールバルブユニット1は、ボールバルブ10、流体供給部20、及び制御ユニット30を備えている。ボールバルブ10は、供給元ユニットAから供給先ユニットBへの搬送流路L上に設けられている。ボールバルブ10は、バルブ閉状態のときに、搬送流路Lにおける対象流体の流れを遮断する。また、ボールバルブ10は、バルブ開状態のときに、搬送流路Lにおいて対象流体を流通可能とする。流体供給部20は、供給流路Kを介して、ボールバルブ10を清掃するための清掃用流体をボールバルブ10に対して供給する。制御ユニット30は、流体供給部20におけるボールバルブ10への清掃用流体の供給を制御する。
【0023】
まずボールバルブ10の詳細について、説明する。
図2及び
図3に示されるように、ボールバルブ10は、バルブボディ11、ボール弁体12、シールリング13、シールリング14、ステム15、導入切替弁(切替弁)16、及び排出切替弁17を備えている。
【0024】
バルブボディ11は、対象流体が通るバルブ流路(流路)11aを内部に有している。バルブ流路11aは、軸線X方向(
図2参照)に沿って延びる円柱状を呈している。また、バルブボディ11は、バルブ流路11aの途中に設けられたキャビティ11bを有している。すなわち、キャビティ11bは、軸線X方向において、分断されたバルブ流路11aによって挟まれている。キャビティ11bは、バルブボディ11の内面において軸線Xの周りを周方向に沿って延在する凹状を呈している。キャビティ11bは、軸線X方向に沿って見た場合に、環状を呈しており、ボール弁体12の外縁部を囲むように収容する。キャビティ11bの壁面11cは、略球状のボール弁体12の外面12bに沿うように、軸線X方向の断面が略円弧状となっている。
【0025】
ボール弁体12は、バルブボディ11のキャビティ11b内に回動可能に収容される。本実施形態において、ボール弁体12は、バルブ流路11aが延在する軸線Xに直交する回動軸Z周りに回動する。ボール弁体12には、通孔12aが設けられている。ボールバルブ10は、ボール弁体12が回動軸Z周りに回動させられることによって、バルブ閉状態とバルブ開状態とに切り替えられる。
【0026】
バルブ閉状態とは、
図2に示されるように、ボール弁体12の回動状態がバルブ流路11aの流れを遮断(完全に遮断)する状態である。すなわち、ボールバルブ10が完全に閉じられた状態である。なお、
図2及び
図3では、バルブ閉状態のボールバルブ10の構成が示されている。具体的には、バルブ閉状態とは、ボール弁体12の外面12bによってバルブ流路11aが閉鎖されている状態である。バルブ開状態とは、ボール弁体12の回動状態がバルブ流路11aの流れを遮断しない状態である。具体的には、バルブ開状態とは、ボール弁体12の通孔12aが軸線X方向に沿って延在する状態であり、バルブ流路11aの流通を可能とする状態である。すなわち、バルブ開状態とは、分断されたバルブ流路11aが通孔12aによって連通された状態である。
【0027】
一対のシールリング13及び14は、キャビティ11b内において、バルブ流路11aの流れ方向(軸線X方向)の一方側の端部と他方側の端部とにそれぞれ配置されている。シールリング13及び14における環形状の内側には、軸線Xが通っている。ボール弁体12は、シールリング13とシールリング14との間に挟み込まれるようにして、キャビティ11b内に配置されている。
【0028】
シールリング13及び14の外縁部は、キャビティ11bの壁面11cに当接している。シールリング13及び14の内縁部は、ボール弁体12の外面12bに摺動可能に当接している。シールリング13及び14は、キャビティ11bの壁面11cとボール弁体12の外面12bとの間をシールする。ボール弁体12は、キャビティ11b内において、シールリング13及び14によって支持されている。
【0029】
ステム15は、回動軸Zに沿って延在する棒状の部材である。ステム15の一方の端部は、バルブボディ11内に差し込まれている。ステム15の他方の端部は、バルブボディ11外に突出している。ステム15は、回動軸Z周りに回動可能にバルブボディ11に取り付けられている。ステム15におけるバルブボディ11内に差し込まれた側の端部は、ボール弁体12に設けられた溝にはめ込まれている。これにより、ボール弁体12とステム15とは、回動軸Z周りに一体に回動することができる。
【0030】
ステム15におけるバルブボディ11外に突出する側の端部には、ボール弁体12(ステム15)を回動させるためのバルブ駆動部40が連結されている。バルブ駆動部40は、ボール弁体12を回動させるモータ等を備えている。バルブ駆動部40は、ボール弁体12を回動させることにより、ボール弁体12の状態をバルブ閉状態とバルブ開状態とに切り替えることができる。また、バルブ駆動部40に代えて、ボールバルブ10を手動で開閉するためのハンドル等がステム15に取り付けられていてもよい。
【0031】
ここで、
図3に示されるように、バルブボディ11には、流体供給部20から供給された清掃用流体をキャビティ11b内に導入するための導入孔H1が設けられている。導入孔H1は、貫通孔であり、バルブボディ11の外側とキャビティ11b内とに連通している。なお、導入孔H1におけるキャビティ11b側の開口部を、導入孔開口部H1aとする。導入孔開口部H1aは、ボール弁体12の回動状態がバルブ閉状態である場合におけるボール弁体12の通孔12aに対向する位置に設けられている。すなわち、ボール弁体12がバルブ閉状態である場合の通孔12aの延在方向において、導入孔開口部H1aと通孔12aの開口部とが対向している。これにより、導入孔H1を通って導入孔開口部H1aからキャビティ11b内に導入された清掃用流体は、ボール弁体12の外面12bに吹き付けられることなく、通孔12a内に直接導入される。導入孔開口部H1aは、軸線X方向において、シールリング13とシールリング14との間に位置している。
【0032】
また、バルブボディ11には、キャビティ11b内の固体を排出するための排出孔H2が設けられている。排出孔H2は、貫通孔であり、バルブボディ11の外側とキャビティ11b内とに連通している。なお、排出孔H2におけるキャビティ11b側の開口部を、排出孔開口部H2aとする。排出孔開口部H2aは、ボール弁体12の回動状態がバルブ閉状態である場合におけるボール弁体12の通孔12aに対向しない位置に設けられている。すなわち、排出孔開口部H2aは、ボール弁体12の外面12bに対向している。また、排出孔開口部H2aは、ボールバルブ10の使用時の姿勢において、導入孔開口部H1aよりも下方の位置に設けられている。本実施形態において、排出孔H2は、ボールバルブ10の使用時の姿勢において、バルブボディ11の最下部の位置に設けられ、上下方向に沿って延在している。排出孔開口部H2aは、軸線X方向において、シールリング13とシールリング14との間に位置している。
【0033】
ここで、例えば、粉体を空気輸送する場合及びスラリーを輸送する場合のように固体を含む対象流体を輸送する搬送流路L上にボールバルブ10が設けられる場合、キャビティ11b内に固体が入り込み、固体が蓄積することがある。なお、固体が蓄積するキャビティ11b内とは、キャビティ11bの壁面11cとボール弁体12の外面12bとの隙間であり、軸線X方向がシールリング13とシールリング14とによって封止された略筒状の空間である。同様に、例えば、固体が析出する対象流体を搬送する場合にも、析出した固体がキャビティ11b内で蓄積することがある。排出孔H2は、キャビティ11b内に蓄積された固体をバルブボディ11外に排出することができる。
【0034】
導入切替弁16は、バルブボディ11に取り付けられている。導入切替弁16は、導入孔H1の流通状態を流通可能状態と流通遮断状態とに切り替える。排出切替弁17は、バルブボディ11に取り付けられている。排出切替弁17は、排出孔H2の流通状態を流通可能状態と流通遮断状態とに切り替える。
【0035】
図1に戻り、流体供給部20は、キャビティ11b内に蓄積された固体を排出するための清掃用流体を供給流路Kを介して導入孔H1に供給する。なお、供給流路Kのボールバルブ10側の端部は導入切替弁16に接続されている。導入切替弁16の状態が流通可能状態である場合、流体供給部20から供給された清掃用流体は、導入切替弁16及び導入孔H1を介してバルブボディ11(キャビティ11b)内に導入される。
【0036】
ここで、清掃用流体は、例えば、ガス、水、溶剤(トルエン、アセトン、キシレン、アルコール)、界面活性剤を添加した液体等を用いることができる。
【0037】
清掃用流体は、搬送流路Lにおいて搬送される対象が気体であれば清浄気体、液体であれば清浄液体を用いることが好ましい。例えば、対象流体が粉体空気輸送における粉体及び気体である場合は清浄空気、水スラリー輸送であれば清浄水、油スラリー輸送であれば清浄油、固体が析出する溶液の場合はその溶質を含まない溶媒、を用いることが好ましい。清掃用流体に、搬送される対象の流体に応じた性質の清浄流体を用いることで、キャビティ11b内に残留、または搬送流路Lに侵入した清掃用流体が、対象流体にコンタミネーションを起こすことが無いため、ボールバルブ10、搬送流路Lを分解せずにキャビティ11b内の清掃を行うことができる。
【0038】
制御ユニット30は、ボールバルブ10の動作を制御する。制御ユニット30は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)等を備える電子制御ユニットである。制御ユニット30は、流体供給部20の動作を制御することによって、ボールバルブ10の内部(キャビティ11b)に蓄積する固体を清掃するための制御を行う。
【0039】
制御ユニット30は、機能的には、状態取得部31、及び供給制御部32を備えている。状態取得部31は、ボール弁体12の回動状態を取得する。例えば、状態取得部31は、ステム15(ボール弁体12)の回動位置を検出するセンサがボールバルブ10に設けられている場合、このセンサの検出結果に基づいてボール弁体12の回動状態を取得してもよい。また、例えば、状態取得部31は、バルブ駆動部40を制御する制御装置から、ボール弁体12の回動状態を取得してもよい。
【0040】
供給制御部32は、流体供給部20における導入孔H1への清掃用流体の供給を制御する。ここでは、供給制御部32は、バルブ閉状態とバルブ開状態との間でボール弁体12が回動している状態であることが状態取得部31によって取得された場合、導入孔H1に清掃用流体が供給されるように流体供給部20を制御することができる。例えば、供給制御部32は、対象流体の搬送開始時又は搬送終了時にボールバルブ10の開閉動作が行われたときのボール弁体12の回動動作に基づいて、導入孔H1に清掃用流体が供給されるように流体供給部20を制御してもよい。また、供給制御部32は、対象流体が搬送されていない状態で、ボールバルブ10を清掃するために行われるボール弁体12の回動動作(清掃用の回動動作)に基づいて、導入孔H1に清掃用流体が供給されるように流体供給部20を制御してもよい。
【0041】
また、供給制御部32は、状態取得部31によって取得されたボール弁体12の回動状態がバルブ閉状態である場合に、導入孔H1に清掃用流体が供給されるように流体供給部20を制御してもよい。例えば、供給制御部32は、対象流体の搬送が終了し、状態取得部31によってバルブ閉状態であることが取得されるごとに、清掃用流体が予め定められた時間供給されるように流体供給部20を制御してもよい。例えば、供給制御部32は、状態取得部31によってバルブ閉状態であることが取得されている状態において、予め定められたタイミングで、清掃用流体が予め定められた時間供給されるように流体供給部20を制御してもよい。
【0042】
また、導入切替弁16及び排出切替弁17が制御信号に基づいて状態を切り替えることができる場合、供給制御部32は、導入切替弁16及び排出切替弁17の状態を制御してもよい。具体的には、供給制御部32は、流体供給部20によって清掃用流体を導入孔H1に供給するときに、導入切替弁16及び排出切替弁17が流通可能状態となるようにこれらを制御してもよい。なお、供給制御部32は、ボール弁体12の回動状態がバルブ開状態である場合、導入切替弁16及び排出切替弁17が流通遮断状態となるようにこれらを制御してもよい。これにより、導入孔H1及び排出孔H2から対象流体が漏れ出ることが防止される。
【0043】
次に、導入孔H1へ清掃用流体が供給された場合にキャビティ11b内に蓄積した固体が排出される様子について説明する。例えば、
図3に示されるように排出孔H2が設けられている場合、導入孔H1から清掃用流体がバルブボディ11内に導入されると、ボール弁体12の外面12bに沿って清掃用流体がキャビティ11b内に広がる。そして、清掃用流体は、バルブボディ11に設けられている排出孔H2からキャビティ11b外(バルブボディ11外)に流れ出る。キャビティ11b内に蓄積された固体は、キャビティ11b外へ流れ出る清掃用流体の流れに乗って又は清掃用流体に押し出されることによって、排出孔H2からバルブボディ11外へ排出される。
【0044】
以上のように、ボールバルブ10では、バルブボディ11に設けられた導入孔H1から清掃用流体をキャビティ11b内に導入することができる。これにより、キャビティ11b内に固体が蓄積する場合であっても、導入された清掃用流体によってキャビティ11b内から固体を排出することができる。従って、このボールバルブ10は、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良が生じることを抑制できる。
【0045】
また、導入孔H1の導入孔開口部H1aをバルブ閉状態のボール弁体12の通孔12aに対向させた場合、導入孔H1から導入された清掃用流体は、通孔12aを通って導入孔H1が設けられた側に対して反対側のキャビティ11bの壁面11cに当接し、壁面11cに沿って周囲に広がる。これにより、ボールバルブ10は、キャビティ11bの壁面11cとボール弁体12の外面12bとの隙間の全体にわたってより均一に清掃用流体を行き渡らせることができる。従って、キャビティ11b内の全体から蓄積された固体をより一層適切に排出することができる。また、導入孔H1から導入された清掃用流体がボール弁体12の外面12bに直接吹き付けられることがない。これにより、ボールバルブ10は、導入された清掃用流体によってボール弁体12の外面12bが摩耗することを抑制できる。
【0046】
ボールバルブ10では、バルブボディ11に排出孔H2が設けられている。これにより、キャビティ11b内に導入された清掃用流体と共にキャビティ11b内の固体を排出孔H2から排出することができる。このように、ボールバルブ10は、排出孔H2を有していることにより、キャビティ11b内の固体を容易に排出できる。
【0047】
排出孔開口部H2aは、導入孔開口部H1aよりも下方の位置に設けられている。この場合、ボールバルブ10は、重力によって下方に下がった固体を清掃用流体と共により一層適切に排出孔H2から排出できる。
【0048】
ボールバルブ10には、導入孔H1の流通状態を流通可能状態と流通遮断状態とに切り替える導入切替弁16が設けられている。この場合、ボールバルブ10がバルブ開状態であり対象流体が流されているときに、導入切替弁16を流通遮断状態とすることによって、対象流体が導入孔H1からバルブボディ11外に漏れ出ることを防止できる。同様に、ボールバルブ10には、排出孔H2の流通状態を流通可能状態と流通遮断状態とに切り替える排出切替弁17が設けられている。この場合、ボールバルブ10がバルブ開状態であり対象流体が流されているときに、排出切替弁17を流通遮断状態とすることによって、対象流体が排出孔H2からバルブボディ11外に漏れ出ることを防止できる。
【0049】
ボールバルブ10において、対象流体が液体である場合には、清掃用流体として清浄液体が導入孔H1から導入される。また、ボールバルブ10において、対象流体が粉体空気輸送における粉体及び気体である場合には、清掃用流体として清浄気体が導入孔H1から導入される。この場合、ボールバルブ10は、対象流体の性質に応じて導入された清掃用流体によって、キャビティ11b内の固体を適切に排出できる。
【0050】
ボールバルブユニット1は、状態取得部31及び供給制御部32を有する制御ユニット30を備えている。これにより、ボールバルブユニット1は、供給制御部32が流体供給部20を制御することによって、清掃用流体を導入孔H1からキャビティ11b内に導入することができる。ここで、ボールバルブ10は、例えばサイロ等の工場設備の上層部分など、作業員が立ち入り難い場所に設けられることがある。この場合であっても、ボールバルブユニット1では、作業員がボールバルブ10の設置場所に立ち入って清掃作業を行うことなく、供給制御部32が流体供給部20を制御することによってボールバルブ10の清掃を容易に行うことができる。
【0051】
供給制御部32は、ボール弁体12が回動状態である場合に、導入孔H1に清掃用流体が供給されるように流体供給部20を制御する。ここで、ボール弁体12が回動したときに、キャビティ11b内とバルブ流路11aとが通孔12aを介して連通した状態となる。この場合に清掃用流体がバルブボディ11内に導入されるように供給制御部32が流体供給部20を制御することにより、ボールバルブ10は、キャビティ11b内の固体を通孔12aを介してバルブ流路11aへ向けて排出することができる。このように、ボールバルブユニット1は、ボール弁体12の回動状態に応じてボールバルブ10の清掃を自動で行うことができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、
図4に示されるボールバルブ10Aのように、ボールバルブ10の導入孔H1に代えて導入孔H3が設けられていてもよい。導入孔H3は、バルブボディ11の外側とキャビティ11b内とに連通し、キャビティ11b内に清掃用流体を導入する。導入孔開口部H3aは、ボール弁体12の回動状態がバルブ閉状態である場合におけるボール弁体12の通孔12aに対向しない位置に設けられている。導入孔開口部H3aは、軸線X方向において、シールリング13とシールリング14との間に位置している。この場合であっても、ボールバルブ10Aは、実施形態におけるボールバルブ10と同様に、キャビティ11b内の固体をキャビティ11b外へ排出することができる。従って、ボールバルブ10Aは、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良が生じることを抑制できる。
【0053】
また、
図5に示されるボールバルブ10Bのように、
図4に示されるボールバルブ10Aの排出孔H2が設けられていない構成であってもよい。この場合は、ボール弁体12を回動させて通孔12aの一部がバルブ流路11aと連通した状態とし、キャビティ11bとキャビティ11bに隣接するバルブ流路11aとが通孔12aを介して連通した状態とする。導入孔H1からキャビティ11bに導入された清掃用流体は、通孔12aを介してバルブ流路11aに流れ出る。キャビティ11b内に蓄積された固体は、キャビティ11b外へ流れ出る清掃用流体の流れに乗って又は清掃用流体に押し出されることによって、通孔12aを介してキャビティ11bからバルブ流路11aへ排出される。従って、このボールバルブ10Bは、固体を含む対象流体及び固体が析出する対象流体に対して使用される場合であっても、作動不良が生じることを抑制できる。
【0054】
また、
図3に示されるボールバルブ10において、排出孔H2が導入孔H1の下方の位置に設けられていなくてもよい。同様に、
図4に示されるボールバルブ10Aにおいて、排出孔H2が導入孔H3の下方の位置に設けられていなくてもよい。
【0055】
導入切替弁16は、上述したように制御信号によって切り替えられる構成であってもよく、手動で切り替えられる構成であってもよい。排出切替弁17も同様に、上述したように制御信号によって切り替えられる構成であってもよく、手動で切り替えられる構成であってもよい。また、導入切替弁16及び排出切替弁17は、設けられていなくてもよい。
【0056】
ボールバルブ10が使用される対象流体は、上述した粉体輸送における粉体及び気体のように固体を含む流体、又はスラリーに限定されない。対象流体は、固体を含む流体及び固体が析出する流体であればよい。
【0057】
供給制御部32が流体供給部20を制御して清掃用流体を導入孔H1へ導入させるタイミングは、上述したタイミングに限定されない。供給制御部32は、他のタイミングで、清掃用流体を導入孔H1へ導入させる構成であってもよい。また、供給制御部32は、設けられていなくてもよい。作業員が手動で流体供給部20を作動させることによって、導入孔H1に清掃用流体が導入される構成であってもよい。
【0058】
以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ボールバルブユニット、10,10A,10B…ボールバルブ、11…バルブボディ、11a…バルブ流路(流路)、11b…キャビティ、11c…壁面、12…ボール弁体、12a…通孔、12b…外面、13,14…シールリング、16…導入切替弁(切替弁)、20…流体供給部、31…状態取得部、32…供給制御部、H1,H3…導入孔、H1a,H3a…導入孔開口部、H2…排出孔、H2a…排出孔開口部。