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特許7488734アクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置
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  • 特許-アクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置 図1
  • 特許-アクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置 図2
  • 特許-アクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】アクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20240515BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240515BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240515BHJP
   B29C 48/37 20190101ALI20240515BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20240515BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/08
B29C48/305
B29C48/37
B29C48/69
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020154925
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048878
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】西本 侑真
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-035789(JP,A)
【文献】特開2003-001696(JP,A)
【文献】特開平11-034045(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137530(WO,A1)
【文献】特開2008-230030(JP,A)
【文献】特開2003-291200(JP,A)
【文献】特開2003-062891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/37
B29C 48/69
B29C 48/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機によりアクリル樹脂フィルムの原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す押出工程と、
前記押出機から押し出された溶融物を第1ギアポンプにより昇圧して吐出する第1昇圧工程と、
前記第1ギアポンプから吐出された溶融物を第2ギアポンプにより昇圧して吐出する第2昇圧工程と、
前記第2ギアポンプから吐出された溶融物を第1フィルタによりろ過する第1ろ過工程と
を備え、
押出機と第1ギアポンプの間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機からの溶融物の押出量をフィードバック制御し、
前記第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を前記第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように、前記第1ギアポンプおよび前記第2ギアポンプの少なくとも一方を制御する、アクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1昇圧工程と前記第2昇圧工程の間に、前記第1ギアポンプから吐出された溶融物を第2フィルタによりろ過する第2ろ過工程を更に備える、請求項1に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1フィルタの目の粗さは、前記第2フィルタの目の粗さよりも細かい、請求項2に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記押出機は、二軸押出機である、請求項1から3の何れか一つに記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記原料は、互いに形状が異なる複数の種類の材料を含む、請求項1から4の何れか一つに記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
アクリル樹脂フィルムの原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す押出機と、
前記押出機の下流側に接続され、前記押出機から押し出された溶融物を昇圧して吐出する第1ギアポンプと、
前記第1ギアポンプの下流側に接続され、前記第1ギアポンプから吐出された溶融物を昇圧して吐出する第2ギアポンプと、
前記第2ギアポンプの下流側に接続され、前記第2ギアポンプから吐出された溶融物をろ過する第1フィルタと、
前記押出機と前記第1ギアポンプの間の溶融物の圧力が一定となるように、前記押出機からの溶融物の押出量をフィードバック制御し、かつ、前記第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を前記第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように、前記第1ギアポンプおよび前記第2ギアポンプの少なくとも一方を制御する制御装置と
を備える、アクリル樹脂フィルムの製造装置。
【請求項7】
前記第1ギアポンプと前記第2ギアポンプの間に接続され、前記第1ギアポンプから吐出された溶融物をろ過する第2フィルタを更に備える、請求項6に記載のアクリル樹脂フィルムの製造装置。
【請求項8】
前記第1フィルタの目の粗さは、前記第2フィルタの目の粗さよりも細かい、請求項7に記載のアクリル樹脂フィルムの製造装置。
【請求項9】
前記押出機は、二軸押出機である、請求項6から8の何れか一つに記載のアクリル樹脂フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂フィルムの製造装置としては、特開平5-4271号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この製造装置は、押出機と、押出機の下流側に接続されたギアポンプと、ギアポンプの下流側に接続されたフィルタと、フィルタの下流側に接続されたダイとを備える。押出機は、スクリューと、スクリューを回転駆動するモータとを備え、原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す。そして、押出機とギアポンプの間の溶融物の圧力を計測し、この圧力が一定になるように、モータの回転数を制御してスクリューの回転数を制御し、押出機からの溶融物の押出量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-4271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記製造装置では、一般に、ギアポンプにより上記溶融物の圧力や押出量を一定にするところ、ギアポンプと押出機との間で圧力変動が発生する。この圧力変動が大きすぎると、ギアポンプやダイに押し出される溶融物の量を安定して制御を行うことができない。このため、ダイにより溶融物からアクリル樹脂フィルムを製造する際、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質が不均一になる問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができるアクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるアクリル樹脂フィルムの製造方法は、
押出機によりアクリル樹脂フィルムの原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す押出工程と、
前記押出機から押し出された溶融物を第1ギアポンプにより昇圧して吐出する第1昇圧工程と、
前記第1ギアポンプから吐出された溶融物を第2ギアポンプにより昇圧して吐出する第2昇圧工程と、
前記第2ギアポンプから吐出された溶融物を第1フィルタによりろ過する第1ろ過工程と
を備え、
前記第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を前記第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように、前記第1ギアポンプおよび前記第2ギアポンプの少なくとも一方を制御する。
【0007】
前記態様によれば、第1ギアポンプによる第1昇圧工程および第2ギアポンプによる第2昇圧工程を有するので、押出機から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプにより各ギアポンプ下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、第1フィルタの下流側にて溶融物の成形を安定して行うことができる。この結果、第1フィルタの下流側にて溶融物から製造されるアクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0008】
また、第1昇圧工程および第2昇圧工程により溶融物を昇圧するので、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプのそれぞれの前後の圧力差を小さくできる。そして、第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように第1ギアポンプおよび第2ギアポンプの少なくとも一方を制御することにより、第1ギアポンプの前後の圧力差をより小さくする。これにより、押出機と第1ギアポンプの間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機からの溶融物の押出量をフィードバック制御する際に、安定して該制御を行うことができる。この結果、第1フィルタの下流側にて溶融物からアクリル樹脂フィルムを製造する際、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0009】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造方法の一実施形態では、前記第1昇圧工程と前記第2昇圧工程の間に、前記第1ギアポンプから吐出された溶融物を第2フィルタによりろ過する第2ろ過工程を更に備える。
【0010】
前記実施形態によれば、第1昇圧工程と第2昇圧工程の間に第2ろ過工程を備えるので、押出機から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプに加えて第2フィルタによりそれぞれの下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、第1フィルタの下流側にて溶融物の成形をより安定して行うことができる。この結果、アクリル樹脂フィルムの品質の均一性をより保持することができる。
【0011】
また、第1昇圧工程と第2昇圧工程の間に第2ろ過工程を備えるので、第2ギアポンプの前後の圧力差が大きくなり、第1ギアポンプの出口側において溶融物の圧力変動が発生しても、第2フィルタによりこの圧力変動を緩和できる。これにより、第1ギアポンプへの圧力変動の伝達を低減でき、さらには、押出機と第2ギアポンプの間の圧力変動を低減でき、さらには、第2ギアポンプと第1ろ過工程の間の圧力変動を低減できる。
【0012】
また、第1昇圧工程と第2昇圧工程の間に第2ろ過工程を備えるので、第1ギアポンプの出口側において溶融物の圧力変動が発生しても、第2フィルタによりこの圧力変動を緩和できる。これにより、第2ギアポンプへの圧力変動の伝達を低減でき、さらには第2ギアポンプと第1ろ過工程の間の圧力変動を低減できる。
【0013】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造方法の一実施形態では、前記第1フィルタの目の粗さは、前記第2フィルタの目の粗さよりも細かい。
【0014】
前記実施形態によれば、第1ギアポンプのみに昇圧された溶融物を目の粗い第2フィルタに通過させることができ、さらに、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプに昇圧された溶融物を目の細かい第2フィルタに通過させることができる。
【0015】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造方法の一実施形態では、前記押出機は、二軸押出機である。
【0016】
前記実施形態によれば、二軸押出機は、一軸押出機に比べて、圧力変動が生じ易いが、二軸押出機と第1ギアポンプの間の圧力変動を有効に低減できる。
【0017】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造方法の一実施形態では、前記原料は、互いに形状が異なる複数の種類の材料を含む。
【0018】
前記実施形態によれば、互いに形状が異なる複数の種類の材料を押出機に投入しても、押出機の吐出側での圧力変動を有効に低減できる。
【0019】
また、本開示の一態様であるアクリル樹脂フィルムの製造装置は、
アクリル樹脂フィルムの原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す押出機と、
前記押出機の下流側に接続され、前記押出機から押し出された溶融物を昇圧して吐出する第1ギアポンプと、
前記第1ギアポンプの下流側に接続され、前記第1ギアポンプから吐出された溶融物を昇圧して吐出する第2ギアポンプと、
前記第2ギアポンプの下流側に接続され、前記第2ギアポンプから吐出された溶融物をろ過する第1フィルタと、
前記第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を前記第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように、前記第1ギアポンプおよび前記第2ギアポンプの少なくとも一方を制御する制御装置と
を備える。
【0020】
前記態様によれば、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプを有するので、押出機から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプにより各ギアポンプ下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、第1フィルタの下流側にて溶融物の成形を安定して行うことができる。この結果、第1フィルタの下流側にて溶融物からアクリル樹脂フィルムを製造する際、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0021】
また、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプを有するので、それぞれのギアポンプにより溶融物を昇圧するので、それぞれのギアポンプの前後の圧力差を小さくできる。そして、制御装置は、第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように第1ギアポンプおよび第2ギアポンプの少なくとも一方を制御することにより、第1ギアポンプの前後の圧力差をより小さくする。これにより、押出機と第1ギアポンプの間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機からの溶融物の押出量をフィードバック制御する際に、安定して該制御を行うことができる。この結果、第1フィルタの下流側にて溶融物から製造されるアクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0022】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造装置の一実施形態では、前記第1ギアポンプと前記第2ギアポンプの間に接続され、前記第1ギアポンプから吐出された溶融物をろ過する第2フィルタを更に備える。
【0023】
前記実施形態によれば、第1ギアポンプと第2ギアポンプの間に第2フィルタを備えるので、押出機から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプに加えて第2フィルタによりそれぞれの下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、第1フィルタの下流側にて溶融物の成形をより安定して行うことができる。この結果、アクリル樹脂フィルムの品質の均一性をより保持することができる。
【0024】
また、第1ギアポンプと第2ギアポンプの間に第2フィルタを備えるので、第2フィルタによりこの圧力変動を緩和できる。
【0025】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造装置の一実施形態では、前記第1フィルタの目の粗さは、前記第2フィルタの目の粗さよりも細かい。
【0026】
前記実施形態によれば、第1ギアポンプのみに昇圧された溶融物を目の粗い第2フィルタに通過させることができ、さらに、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプに昇圧された溶融物を目の細かい第2フィルタに通過させることができる。
【0027】
好ましくは、アクリル樹脂フィルムの製造装置の一実施形態では、前記押出機は、二軸押出機である。
【0028】
前記実施形態によれば、二軸押出機は、一軸押出機に比べて、圧力変動が生じ易いが、二軸押出機と第1ギアポンプの間の圧力変動を有効に低減できる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一態様であるアクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置によれば、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】アクリル樹脂フィルムの製造装置の一実施形態を示す概略図である。
図2】アクリル樹脂フィルムの製造装置の原料供給機を示す概略図である。
図3】アクリル樹脂フィルムの製造装置の原料供給機を除く各部材を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の一態様であるアクリル樹脂フィルムの製造方法およびアクリル樹脂フィルムの製造装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0032】
(実施形態)
<概要構成>
図1は、アクリル樹脂フィルムの製造装置の一実施形態を示す概略図である。図1に示すように、アクリル樹脂フィルムの製造装置1は、原料供給機2と、押出機3と、第1ギアポンプ4と、粗フィルタ5と、第2ギアポンプ6と、高精細フィルタ7と、ダイ8と、制御装置9とを備える。
【0033】
アクリル樹脂フィルムの製造装置1は、アクリル樹脂フィルムの原料を溶融し、この溶融物からアクリル樹脂フィルムを成形する。図1では、溶融物の流れる方向を矢印で示す。原料供給機2と押出機3と第1ギアポンプ4と粗フィルタ5と第2ギアポンプ6と高精細フィルタ7とダイ8とは、溶融物の流れる上流から下流に向かって、順に、配置される。
【0034】
原料供給機2は、アクリル樹脂フィルムの原料を含む。押出機3は、原料供給機2から供給された原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す。
【0035】
第1ギアポンプ4は、押出機3の下流側に接続され、押出機3から押し出された溶融物を昇圧して吐出する。第2ギアポンプ6は、第1ギアポンプ4の下流側に接続され、第1ギアポンプ4から吐出された溶融物を昇圧して吐出する。
【0036】
粗フィルタ5は、第1ギアポンプ4と第2ギアポンプ6の間に接続され、第1ギアポンプ4から吐出された溶融物をろ過する。粗フィルタ5は、特許請求の範囲に記載の第2フィルタの一実施形態に相当する。なお、本実施形態では、粗フィルタ5を省略するようにしてもよい。
【0037】
高精細フィルタ7は、第2ギアポンプ6の下流側に接続され、第2ギアポンプ6から吐出された溶融物をろ過する。高精細フィルタ7は、特許請求の範囲に記載の第1フィルタの一実施形態に相当する。
【0038】
ダイ8は、高精細フィルタ7の下流側に接続され、高精細フィルタ7から吐出された溶融物をフィルム状に型成形して、以降の図示しない成形ロールに搬送する。これにより、アクリル樹脂フィルムを製造することができる。
【0039】
制御装置9は、第1ギアポンプ4による溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプ6による溶融物の昇圧幅以下になるように、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6の少なくとも一方を制御する。
【0040】
前記実施形態によれば、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6を有するので、押出機3から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6により各ギアポンプ下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物の成形を安定して行うことができる。この結果、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物からアクリル樹脂フィルムを製造する際、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0041】
また、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6を有するので、それぞれのギアポンプにより溶融物を昇圧するので、それぞれのギアポンプの前後の圧力差を小さくできる。そして、制御装置9は、第1ギアポンプ4による溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプ6による溶融物の昇圧幅以下になるように第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6の少なくとも一方を制御することにより、第1ギアポンプ4の前後の圧力差をより小さくする。これにより、押出機3と第1ギアポンプ4の間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機3からの溶融物の押出量をフィードバック制御する際に、安定して該制御を行うことができる。この結果、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物からアクリル樹脂フィルムを製造する際、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0042】
<各部材の好ましい構成>
(アクリル樹脂フィルム)
アクリル樹脂フィルムで用いられるアクリル系樹脂としては、例えばメタクリル樹脂(メタクリル酸エステルの単独重合体や、それを主成分とする共重合体)が挙げられる。フィルムに耐衝撃性を付与する観点から、アクリル系樹脂は、ゴム粒子が配合されたもの、特にメタクリル樹脂にゴム粒子が配合されたものであることが好ましい。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体や、それを主成分とする共重合体である。メタクリル酸エステルとしては、通常メタクリル酸のアルキルエステルが用いられ、そのアルキル基の炭素数は1~4個程度である。共重合体とする場合は、メタクリル樹脂の共重合成分として有利であることが知られているアクリル酸エステルや、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他の重合性モノマーなどが用いられる。
【0043】
メタクリル樹脂は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル50~100重量%と、アクリル酸エステル0~50重量%と、これらに共重合可能な他の重合性モノマーの少なくとも1種0~49重量%とからなる単量体の重合によって得られる。好ましくは、ガラス転移温度が40℃以上の熱可塑性重合体である。ここで、アクリル酸エステルは、より好ましくは0.1~50重量%の範囲で用いられ、メタクリル酸アルキルエステルのより好ましい共重合割合は、50~99.9重量%の範囲である。また、このメタクリル樹脂のガラス転移温度は、より好ましくは60℃以上である。なお、本明細書において単に「単量体」というときは、ある単量体1種からなる場合のみならず、複数の単量体が混合された状態も包含するものとする。
【0044】
この熱可塑性重合体において、メタクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~4である。これらの中でも耐久性の観点から、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。メタクリル酸アルキルエステルは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル酸エステルとしては、通常、アクリル酸アルキルエステルが用いられる。アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~8であるアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~4である。アクリル酸エステルは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他の重合性モノマーとしては、従来、この分野で知られている各種単量体が挙げられる。このような単量体としては、例えば、分子内に重合性の炭素-炭素二重結合を1個有する単官能モノマー、分子内に重合性の炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する多官能モノマーなどが挙げられ、単官能モノマーが好ましく用いられる。単官能モノマーとしては、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ハロゲン化スチレン、ヒドロキシスチレンのようなスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなシアン化ビニル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのような不飽和酸;N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドのようなマレイミド;メタリルアルコール、アリルアルコールのような不飽和アルコール;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、2-ヒドロキシメチル-1-ブテン、メチルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾールのような他のモノマーなどが挙げられる。
【0046】
多官能モノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル;ジビニルベンゼンのような芳香族ポリアルケニル化合物などが挙げられる。
【0047】
このような、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他の重合性モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
メタクリル樹脂としては、前述のとおり、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル50~100重量%、より好ましくは50~99.9重量%と、アクリル酸エステル0~50重量%、より好ましくは0.1~50重量%と、これらに共重合可能な他の重合性モノマーの少なくとも1種0~49重量%とからなる単量体を重合させて得られる熱可塑性重合体が好適であり、この範囲に入る重合体を単独で、又は2種以上の重合体の混合物として用いることができる。
【0049】
メタクリル樹脂は、フィルムの耐久性を高め得ることから、高分子主鎖に環構造を有していてもよい。環構造は、環状酸無水物構造、環状イミド構造、ラクトン環構造などの複素環構造であることが好ましい。具体的には、無水グルタル酸構造、無水コハク酸構造のような環状酸無水物構造;グルタルイミド構造、コハクイミド構造のような環状イミド構造;ブチロラクトン、バレロラクトンのようなラクトン環構造などが挙げられる。主鎖中の環構造含有量を大きくするほど、メタクリル樹脂のガラス転移温度を高くすることができる。環状酸無水物構造や環状イミド構造は、無水マレイン酸やマレイミドなどの環状構造を有するモノマーを共重合させることによって導入する方法、重合後に脱水・脱メタノール縮合反応により環状酸無水物構造を導入する方法、アミノ化合物を反応させて環状イミド構造を導入する方法などによって、主鎖中に導入することができる。
【0050】
上記熱可塑性重合体の重合方法は、特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。また、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適なフィルムへの成形性を示す粘度を得るために、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類及び組成により適宜決定すればよい。
【0051】
上記メタクリル樹脂には、フィルムに耐衝撃性を付与する観点から、ゴム粒子が配合されてもよい。ゴム粒子は、平均粒子径が0.05~0.4μm、さらには0.06~0.3μm、とりわけ0.1~0.25μmの範囲にあるものであることが好ましい。
ゴム粒子は、アクリル系樹脂(例えばメタクリル樹脂)とゴム粒子との合計100重量部中に、好ましくは3~60重量部、より好ましくは5~50重量部、さらに好ましくは10~40重量部の割合で含まれる。
【0052】
ゴム粒子は、好ましくはアクリル酸アルキルエステル50~99.9重量%と、これに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0~49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1~10重量%とからなる単量体を重合して得られる層を有する弾性共重合体100重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50~100重量%と、アクリル酸エステル0~50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0~49重量%とからなる単量体10~400重量部を重合させることにより、後者の単量体からの重合層を前記弾性共重合体の表面に少なくとも1層結合してなるゴム含有重合体である。ゴム粒子は、重合条件の変更により、平均粒子径の異なるものを製造することができる。
【0053】
このゴム含有重合体は、例えば、次の方法によって得られる。弾性共重合体用の上記成分を乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させて弾性共重合体を得る。得られたこの弾性共重合体の存在下、上記したメタクリル酸エステルを含む単量体を乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させる。このような複数段階の重合により、後段で用いるメタクリル酸エステルを含む単量体は弾性共重合体にグラフト共重合され、グラフト鎖を有する架橋弾性共重合体が生成する。すなわち、このゴム含有重合体は、アクリル酸アルキルエステルをゴムの主成分として含む多層構造を有するグラフト共重合体となる。なお、弾性共重合体の重合を二段以上で行う場合、又はその後のメタクリル酸エステルを主成分とする単量体の重合を二段以上で行う場合には、いずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が上記範囲内にあればよい。
【0054】
上記のゴム含有重合体におけるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~8のものが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2-エチルヘキシルのような、アルキル基の炭素数が4~8のものが好ましい。
【0055】
ゴム含有重合体における、アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましい。
【0056】
ゴム含有重合体において、弾性共重合体を構成するために用いられる共重合性の架橋性単量体は、1分子内に重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有するものであればよい。このような架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多価カルボン酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多価カルボン酸のポリアルケニルエステルが好ましい。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、又は必要により2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
以上のような、アクリル酸アルキルエステルを主体とする単量体の重合により得られる弾性共重合体には、メタクリル酸エステル50~100重量%と、アクリル酸エステル0~50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0~49重量%とからなる単量体をグラフトさせる。弾性共重合体にグラフトさせるメタクリル酸エステルは、メタクリル酸アルキルエステルであるのが好ましく、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらのメタクリル酸エステルに所望により共重合されるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0058】
グラフトさせる単量体は、弾性共重合体100重量部に対し、好ましくは10~400重量部、より好ましくは20~200重量部使用し、少なくとも一段以上の反応で重合することができる。ここでグラフトさせる単量体の使用量を10重量部以上にすると、弾性共重合体の凝集が生じにくく、透明性が良好となる。
【0059】
また、上記の弾性共重合体層の内側には、メタクリル酸エステルを主体とする硬質層を設けることができる。この場合には、最内層を構成する硬質層の単量体をまず重合させればよい。次いで、得られる硬質重合体の存在下に、上記の弾性共重合体を構成する単量体を重合させる。さらに、得られる弾性共重合体の存在下に、上記のメタクリル酸エステルを主体とし、グラフトさせる単量体を重合させればよい。ここで、最内層となる硬質層は、メタクリル酸エステル70~100重量%と、それに共重合可能な他のビニル単量体0~30重量%とからなる単量体を重合させたものであることが好ましい。この際、他のビニル単量体の一つとして、共重合性の架橋性単量体を用いるのも有効である。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステル、特にメタクリル酸メチルが有効である。このような3層構造のゴム含有重合体は、例えば、特公昭55-27576号公報に開示されている。
【0060】
なお、ゴム粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡で観察して求めることができる。例えば、それぞれのゴム粒子を単独でメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において、酸化ルテニウムを用いてゴム成分を染色する。染色後、電子顕微鏡で観察して、染色された粒子外層部の直径から求めることができる。そのため、ここでいう粒子径は、数平均粒子径となる。
【0061】
上記アクリル系樹脂には、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有してもよい。これらの中でも紫外線吸収剤は、より長時間の耐候性に優れたフィルムを与える点で、好ましく用いられる。
【0062】
これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。紫外線吸収剤の含有量は、所望のアクリル系樹脂押出成形フィルムの厚みにより適宜設定されるが、アクリル系樹脂100重量部に対し、通常0.1重量部以上、好ましくは0.3重量部以上、また通常5重量部以下である。所望の厚みを有するアクリル系樹脂押出成形フィルムの波長380nmにおける透過率が、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下となる範囲で選択することができる。例えば80μmの厚みを有するフィルムの場合、アクリル樹脂フィルムとして用いられるトリアセチルセルロースフィルムと同様の紫外線吸収能を発現するためには、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計100重量部を基準に、紫外線吸収剤の量を2.0重量部程度とするのが好適である。これらの紫外線吸収剤をはじめとする添加剤は、アクリル系樹脂をダイから吐出する際に揮発分として蒸散し、ロール等を汚染することを防ぐために、180℃以上の融点を有することが好ましい。
【0063】
(原料供給機2)
図2は、原料供給機2を示す概略図である。図2に示すように、原料供給機2は、計量器21を有する。計量器21は、輸送管25を介して、押出機3に接続される。計量器21には、図示しない原料室からアクリル樹脂フィルムの原料が送り込まれる。原料は、互いに形状が異なる複数の種類の材料を含む。
【0064】
具体的に述べると、計量器21には、原料として、アクリル樹脂(PMMA)ペレットおよび添加剤等が送り込まれる。原料供給機2は、複数の計量器を有してもよい。複数の計量器を有する場合、各計量器に送り込まれる原料は、互いに形状が異なる。
【0065】
計量器21は、原料の重さを測定し、制御装置9により決定された量の原料を、輸送管25を介して、押出機3に送る。つまり、制御装置9は、押出機3からの溶融物の押出量を制御するために、一つの制御要素として、計量器21を制御して原料の供給量を制御する。
【0066】
(押出機3)
図3は、アクリル樹脂フィルムの製造装置1の原料供給機2を除く各部材を示す概略図である。図3に示すように、押出機3は、二軸押出機である。押出機3は、ケーシング30と、ケーシング30内に配置された第1スクリュー31および第2スクリュー32と、第1スクリュー31および第2スクリュー32を回転駆動するモータ35とを有する。
【0067】
ケーシング30は、原料供給機2から原料が投入される投入口30aを有する。つまり、投入口30aは、原料供給機2の輸送管25に接続される。なお、投入口30aは、複数存在していてもよい。このとき、複数の投入口は、原料供給機2の複数の計量器のそれぞれに対応するようにしてもよい。つまり、1つの投入口は、1つの計量器に接続される。
【0068】
第1スクリュー31および第2スクリュー32は、互いに平行に配置され、矢印で示すように互いに同じ方向に回転する。なお、第1スクリュー31および第2スクリュー32は、互いに反対方向に回転してもよい。
【0069】
投入口30aから投入された原料は、第1スクリュー31および第2スクリュー32の回転により、混錬されて下流側に送り出される。同時に、第1スクリュー31および第2スクリュー32により運搬されている原料は、ケーシング30に設けられた図示しないヒータにより溶融され、この結果、溶融物が製造される。
【0070】
モータ35は、制御装置9により制御される。つまり、制御装置9は、押出機3からの溶融物の押出量を制御するために、一つの制御要素として、モータ35を制御して第1スクリュー31および第2スクリュー32の回転数を制御する。
【0071】
このように、押出機3は、二軸押出機であるため、一軸押出機に比べて、先端部での圧力変動が生じ易い。しかしながら、上述したように、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6を有するので、押出機3の先端部での圧力変動を有効に低減できる。
【0072】
(第1ギアポンプ4)
図3に示すように、第1ギアポンプ4は、第1ギア41と、第2ギア42と、第1ギア41および第2ギア42を回転駆動するモータ45とを有する。第1ギア41と第2ギア42は、互いに噛み合い、矢印で示すように互いに反対方向に回転する。そして、押出機3から押し出された溶融物は、第1ギア41および第2ギア42の回転により、下流側に送り出される。このとき、溶融物は、第1ギアポンプ4により、昇圧される。つまり、第1ギアポンプ4と粗フィルタ5の間に設けられた第2圧力センサ12の数値は、押出機3と第1ギアポンプ4の間に設けられた第1圧力センサ11の数値よりも大きくなる。第1ギアポンプ4による溶融物の昇圧幅は、例えば、3~5MPaである。
【0073】
このように、第1ギアポンプ4を有するので、押出機3から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプ4により第1ギアポンプ4の下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物の成形を安定して行うことができる。
【0074】
(粗フィルタ5)
図3に示すように、粗フィルタ5は、例えば、網目状の金属繊維からなるメッシュフィルタである。該メッシュフィルタは、単一のメッシュからなるものであってもよいし、複数のメッシュ構造からなるものであってもよい。粗フィルタ5は、例えば、溶融物から20μm~100μmの大きさの不純物を取り除く。
【0075】
粗フィルタ5の目の粗さは、高精細フィルタ7の目の粗さよりも粗い。これによれば、第1ギアポンプ4のみに昇圧された溶融物を目の粗い粗フィルタ5に通過させることができる。言い換えると、第1ギアポンプ4は、溶融物を粗フィルタ5に通過させるための圧力だけ昇圧させればよいので、第1ギアポンプ4による溶融物の昇圧幅を小さくできる。
【0076】
溶融物は、粗フィルタ5を通過することにより、降圧される。つまり、第2ギアポンプ6と粗フィルタ5の間に設けられた第3圧力センサ13の数値は、第2圧力センサ11の数値よりも小さくなる。粗フィルタ5による溶融物の降圧幅は、例えば、5MPaである。
【0077】
このように、第1ギアポンプ4と第2ギアポンプ6の間に粗フィルタ5を備える場合、押出機3から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6に加えて粗フィルタ5によりそれぞれの下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物の成形をより安定して行うことができる。この結果、アクリル樹脂フィルムの品質の均一性をより保持することができる。
【0078】
第1ギアポンプ4と第2ギアポンプ6の間に粗フィルタ5を備える場合、第1ギアポンプ4の出口側において溶融物の圧力変動が発生しても、粗フィルタ5によりこの圧力変動を緩和できる。
【0079】
高精細フィルタ7の上流側に粗フィルタ5を設けている場合、高精細フィルタ7の耐久性を向上できる。
【0080】
(第2ギアポンプ6)
図3に示すように、第2ギアポンプ6は、第1ギア61と、第2ギア62と、第1ギア61および第2ギア62を回転駆動するモータ45とを有する。第1ギア61と第2ギア62は、互いに噛み合い、矢印で示すように互いに反対方向に回転する。そして、粗フィルタ5によりろ過された溶融物は、第1ギア61および第2ギア62の回転により、下流側に送り出される。このとき、溶融物は、第2ギアポンプ6により、昇圧される。つまり、第2ギアポンプ6と高精細フィルタ7の間に設けられた第4圧力センサ14の数値は、第3圧力センサ13の数値よりも大きくなる。第2ギアポンプ6による溶融物の昇圧幅は、例えば、1~15MPaである。
【0081】
このように、第2ギアポンプ6を有するので、押出機3から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第2ギアポンプ6により第2ギアポンプ6の下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物の成形を安定して行うことができる。
【0082】
また、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6により溶融物を昇圧するので、それぞれのギアポンプの前後の圧力差を小さくできる。これにより、それぞれのギアポンプにおいて溶融物の逆流を低減できる。
【0083】
(高精細フィルタ7)
図3に示すように、高精細フィルタ7は、例えば、ポリマーフィルタである。高精細フィルタ7は、例えば、溶融物から約3μm~約100μmの大きさの不純物を取り除く。
【0084】
高精細フィルタ7の目の粗さは、粗フィルタ5の目の粗さよりも細かい。これによれば、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6に昇圧された溶融物を目の細かい高精細フィルタ7に通過させることができる。言い換えると、高精細フィルタ7に溶融物を通過させるために溶融物を高く昇圧する必要があるが、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6の両方で溶融物を昇圧することができるため、溶融物の昇圧を容易に大きくすることができる。
【0085】
溶融物は、高精細フィルタ7を通過することにより、降圧される。つまり、高精細フィルタ7からの吐出圧力の数値は、第4圧力センサ14の数値よりも小さくなる。高精細フィルタ7からの吐出圧力の数値は、ダイ8からの吐出圧力の数値と同じである。高精細フィルタ7による溶融物の降圧幅は、例えば、5~15MPaである。
【0086】
(ダイ8)
図3に示すように、ダイ8は、例えば、Tダイである。高精細フィルタ7によりろ過された溶融物は、ダイ8により、シート状に成形される。その後、ダイ8の吐出口から押出されたシート状の溶融物は、ダイ8の吐出口の下方に位置する図示しない成形ロールに搬送され、成形ロールで冷却および固化されて、アクリル樹脂フィルムが製造される。
【0087】
(制御装置9)
図2図3に示すように、制御装置9は、各部材の動作を制御する。制御装置9は、第1制御部91と第2制御部92とを有する。
【0088】
第1制御部91は、第1圧力センサ11の信号を受けて、押出機3のモータ35に信号を送り、さらに、原料供給機2の計量器21に信号を送る。
【0089】
具体的に述べると、第1制御部91は、第1圧力センサ11の圧力が一定となるように、押出機3からの溶融物の押出量をフィードバック制御する。つまり、第1制御部91は、第1圧力センサ11の圧力が一定となるように、押出機3のモータ35を制御して押出機3の第1スクリュー31および第2スクリュー32の回転数を制御し、さらに、原料供給機2の計量器21を制御して押出機3への原料の供給量を制御する。
【0090】
第2制御部92は、第3圧力センサ13の信号を受けて、第1ギアポンプ4のモータ45に信号を送る。具体的に述べると、第2制御部92は、第3圧力センサ13で検知した圧力が一定になるように第1ギアポンプ4のモータ45を制御し、第1ギアポンプ4の回転数を制御する。
【0091】
なお、本開示の製造装置は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、制御装置は、第1ギアポンプによる溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプによる溶融物の昇圧幅以下になるように、第1ギアポンプおよび第2ギアポンプの少なくとも一方を制御するようにしてもよい。
また、第2ギアポンプの下流側に複数のギアポンプを設けてもよい。このとき、全てのギアポンプにおいて下流側のギアポンプほど昇圧幅を大きくしてもよい。または、3台目のギアポンプの昇圧幅を、第2ギアポンプの昇圧幅と同じとしてもよい。または、3台目以降のギアポンプの少なくとも1つのギアポンプの昇圧幅を、その他のギアポンプの昇圧幅と同じとしてもよい。
【0092】
<製造方法>
次に、図1から図3を用いてアクリル樹脂フィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
【0093】
まず、押出機3によりアクリル樹脂フィルムの原料を混錬しかつ溶融して溶融物として押し出す(以下、押出工程という)。そして、押出機3から押し出された溶融物を第1ギアポンプ4により昇圧して吐出する(以下、第1昇圧工程という)。
【0094】
そして、第1ギアポンプ4から吐出された溶融物を第2ギアポンプ6により昇圧して吐出する(以下、第2昇圧工程という。)そして、第2ギアポンプ6から吐出された溶融物を高精細フィルタ7によりろ過する(以下、第1ろ過工程という)。
【0095】
第1昇圧工程および第2昇圧工程の少なくとも一方において、第1ギアポンプ4による溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプ6による溶融物の昇圧幅以下になるように、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6の少なくとも一方を制御する。
【0096】
これによれば、第1ギアポンプ4による第1昇圧工程および第2ギアポンプ6による第2昇圧工程を有するので、押出機3から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6により各ギアポンプ下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物の成形を安定して行うことができる。この結果、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物から製造されるアクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0097】
また、第1昇圧工程および第2昇圧工程により溶融物を昇圧するので、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6のそれぞれの前後の圧力差を小さくできる。そして、第1ギアポンプ4による溶融物の昇圧幅を第2ギアポンプ6による溶融物の昇圧幅以下になるように第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6の少なくとも一方を制御することにより、第1ギアポンプ4の前後の圧力差をより小さくする。これにより、押出機3と第1ギアポンプ4の間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機3からの溶融物の押出量をフィードバック制御する際に、安定して該制御を行うことができる。この結果、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物からアクリル樹脂フィルムを製造する際、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
【0098】
好ましくは、第1昇圧工程と第2昇圧工程の間に、第1ギアポンプ4から吐出された溶融物を粗フィルタ5によりろ過する第2ろ過工程を更に備える。
【0099】
これによれば、第1昇圧工程と第2昇圧工程の間に第2ろ過工程を備えるので、押出機3から押し出される溶融物の押出量が変動し溶融物の圧力が変動しても、第1ギアポンプ4および第2ギアポンプ6に加えて粗フィルタ5によりそれぞれの下流側における溶融物の圧力変動を緩和でき、高精細フィルタ7の下流側にて溶融物の成形をより安定して行うことができる。この結果、アクリル樹脂フィルムの品質の均一性をより保持することができる。
【0100】
また、第1ギアポンプと第2ギアポンプの間に第2フィルタを備えるので、押出機と第1ギアポンプとの間で発生した圧力変動が下流側へ伝播したとしても、第2フィルタによりこの圧力変動を緩和できる。
【0101】
なお、本開示の製造方法は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、本開示の製造方法は、図1の製造装置1により実現されることに限らず、他の異なる装置により実現されてもよい。
【0102】
(実施例)
次に、実施例について説明する。
【0103】
[実施例1]
(1)原料樹脂の作製
メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97重量%とアクリル酸メチル3重量%との共重合体である熱可塑性重合体(ガラス転移温度104℃)のペレットを用いた。アクリルゴム粒子として、上記特公昭55-27576号公報の実施例3と同様の方法で製造され、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルが共重合している硬質重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルが共重合している弾性重合体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸メチルが共重合している硬質重合体からなる球形3層構造であり、平均粒子径が0.22μmのものを用いた。
メタクリル樹脂のペレット70部とアクリルゴム粒子30部とを、スーパーミキサーで混合した。次いで、二軸押出機(押出温度230℃~270℃)で溶融混練して樹脂組成物のペレットとし、これをアクリル系樹脂として用いた。
【0104】
(2)アクリル樹脂フィルムの作製
得られたペレットを別の二軸押出機(押出温度230℃~270℃)により溶融し、第1ギアポンプ、粗フィルタ、第2ギアポンプ及び高精細フィルタをこの順に通過させて、ダイより押出し、成形ロール(表面温度60℃~100℃℃)を通過させて、厚みが80μmとなるように適宜吐出量とライン速度を調整し、アクリル樹脂フィルム(幅1300mm、厚み80μm)を得た。
【0105】
[比較例1]
第1ギアポンプ及び第2ギアポンプにおける条件を、以下の表1に記載の条件に変更する以外は、実施例1と同様にアクリル樹脂フィルムを作製した。表1において、P1は、第1圧力センサの測定値を示し、P2は、第2圧力センサの測定値を示し、P3は、第3圧力センサの測定値を示し、P4は、第4圧力センサの測定値を示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示すように、実施例1では、第1ギアポンプの昇圧幅を第2ギアポンプの昇圧幅よりも小さくしているので、押出機と第1ギアポンプの間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機からの溶融物の押出量をフィードバック制御する際に、安定して該制御を行うことができる。これにより、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができる。
一方、比較例1では、第1ギアポンプの昇圧幅を第2ギアポンプの昇圧幅よりも大きくしているので、押出機と第1ギアポンプの間の溶融物の圧力が一定となるように、押出機からの溶融物の押出量をフィードバック制御する際に、安定して該制御を行うことができない。これにより、アクリル樹脂フィルムの厚みなどの品質の均一性を保持することができない。
【符号の説明】
【0108】
1 アクリル樹脂フィルムの製造装置
2 原料供給機
21 計量器
3 押出機
31,32 第1、第2スクリュー
35 モータ
4 第1ギアポンプ
41,42 第1、第2ギア
45 モータ
5 粗フィルタ(第2フィルタ)
6 第2ギアポンプ
61,62 第1、第2ギア
65 モータ
7 高精細フィルタ(第1フィルタ)
8 ダイ
9 制御装置
91,92 第1、第2制御部
11~14 第1~第4圧力センサ
図1
図2
図3