(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】窒化ケイ素膜を堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/42 20060101AFI20240515BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240515BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240515BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/455
H01L21/318 B
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2021521294
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019055920
(87)【国際公開番号】W WO2020081397
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シムズ・ジェイムス・エス.
(72)【発明者】
【氏名】タン・シェーン
(72)【発明者】
【氏名】ライ・ヴィクラント
(72)【発明者】
【氏名】マッケロー・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キウ・フアタン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0148806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/42
C23C 16/455
H01L 21/318
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック上に窒化ケイ素層を堆積する方法であって、複数のサイクルを含む原子層堆積を行うことを含み、各サイクルは、
ハロゲン化ケイ素含有前駆体ガスを供給することによって、ケイ素前駆体堆積を形成するハロゲン化ケイ素含有前駆体
をスタック
に投与すること
と、
前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の前記スタック
への投与の後、N
2プラズマ変換を行って、前記ケイ素前駆体堆積を窒化ケイ素堆積に変換すること
と、
前記N
2プラズマ変換を行った後、H
2プラズマ変換を行って、前記窒化ケイ素堆積の水素化された表面を形成すること
であって、その後の
サイクルにおける前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の前記スタック
への投与において前記水素化された表面にケイ素前駆体が堆積される、
前記窒化ケイ素堆積の水素化された表面の形成と、を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与過程で、前記スタックは200℃~400℃の範囲の温度に維持される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与はプラズマレスである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、各サイクルはNH
3フリーである、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記N
2プラズマ変換を行うことは、
水素を含まないN
2ガスを流すことと、
前記N
2ガスを水素を含まないN
2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記N
2プラズマに暴露させることと、
前記N
2ガスを流すことを停止することと
を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記H
2プラズマ変換を行うことは、
H
2ガスを流すことと、
前記H
2ガスをH
2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記H
2プラズマに暴露させることと、
前記H
2ガスを流すことを停止することと
を含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体はヨウ化ケイ素である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体は、塩化ケイ素または臭化ケイ素である、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記H
2プラズマ変換を行った後、かつ前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与の前に前記H
2プラズマ変換によって形成されたH
2プラズマをパージすることをさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与の後、かつ前記N
2プラズマ変換を行う前に前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体ガスをパージすることをさらに含む、方法。
【請求項11】
窒化ケイ素原子層堆積をスタック上に堆積させる装置であって、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に基板支持体と、
前記処理チャンバの中にガスを供給するためのガス入口と、
前記ガスを前記ガス入口に供給するためのガス源であって、
ケイ素含有前駆体源、
N
2ガス源、および
H
2ガス源
を含む、ガス源と、
前記処理チャンバからガスをポンプで送るための排出ポンプと、
前記処理チャンバにRF電力を供給するための電極と、
前記電極に電力を供給するための少なくとも1つの電源と、
前記ガス源および前記少なくとも1つの電源に制御可能に接続されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、
少なくとも1つのプロセッサ、および
コンピュータ可読媒体を含み、
前記コンピュータ可読媒体は、複数のサイクルを行うことによってスタック上に原子層堆積で窒化ケイ素層を堆積させるためのコンピュータコードを含み、
前記複数のサイクルの各サイクルは、
前記ケイ素含有前駆体源からハロゲン化ケイ素含有前駆体ガスを供給することによって、ケイ素前駆体堆積を形成するハロゲン化ケイ素含有前駆体を含むスタック
に投与することと、
前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与の後、N
2プラズマ変換を行って、前記ケイ素前駆体堆積を窒化ケイ素堆積に変換することと、
前記N
2プラズマ変換を行った後、H
2プラズマ変換を行って、前記窒化ケイ素堆積の水素化された表面を形成することと
を含み、
その後の
サイクルにおける前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の前記スタック
への投与において前記水素化された表面にケイ素前駆体が堆積される、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、前記基板支持体を加熱するヒータをさらに含む、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記コンピュータ可読媒体は、前記基板支持体を200℃~400℃の範囲の温度に加熱するためのコンピュータコードをさらに含む、装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置であって、前記ガス源はNH
3フリーである、装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置であって、前記N
2プラズマ変換を行うことは、
水素を含まないN
2ガスを流すことと、
前記N
2ガスを水素を含まないN
2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記N
2プラズマに暴露させることと、
前記N
2ガスを流すことを停止することと
を含む、装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、前記H
2プラズマ変換を行うことは、
H
2ガスを流すことと、
前記H
2ガスをH
2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記H
2プラズマに暴露させることと、
前記H
2ガスを流すことを停止することと
を含む、装置。
【請求項17】
請求項11に記載の装置であって、前記複数のサイクルの各々のサイクルは、
前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与の後、かつ前記N
2プラズマ変換を行う前に前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体ガスをパージすることと、
前記H
2プラズマ変換を行った後、かつ前記スタック
への前記ハロゲン化ケイ素含有前駆体の投与の前にH
2プラズマをパージすることと
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月19日に出願された米国出願第62/748,085号の優先権の利益を主張するものであり、同文献を参照してあらゆる目的のために本願に援用する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、窒化ケイ素膜を堆積させる方法に関する。さらに詳細には、本開示は、原子層堆積を利用する窒化ケイ素膜の堆積に関する。
【発明の概要】
【0003】
上記を達成するため、かつ本開示の目的に従い、スタック上に窒化ケイ素層を堆積させる方法を提供する。本方法は、複数のサイクルを含む原子層堆積を行うことを含み、各サイクルは、ケイ素含有前駆体ガスを供給することによってケイ素含有前駆体をスタックに投与することと、N2プラズマ変換を行うことと、H2プラズマ変換を行うこととを含む。
【0004】
別の面では、窒化ケイ素の原子層堆積をスタック上に堆積させる装置を提供する。処理チャンバを用意する。処理チャンバ内には基板支持体がある。ガス入口がガスを処理チャンバの中に供給する。ガス源がガスをガス入口に供給し、ガス源は、ケイ素含有前駆体源、N2ガス源、およびH2ガス源を含む。処理チャンバからガスをポンプで送るために排出ポンプを設ける。電極がRF電力を処理チャンバに供給する。少なくとも1つの電源が電極に電力を供給する。ガス源および少なくとも1つの電源にコントローラを制御可能に接続する。コントローラは、少なくとも1つのプロセッサおよびコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、複数のサイクルを行って原子層堆積によって窒化ケイ素層をスタック上に堆積させるためのコンピュータコードを含み、複数のサイクルの各サイクルは、ケイ素含有前駆体源からケイ素含有前駆体ガスを供給することによってケイ素含有前駆体をスタックに投与することと、N2プラズマ変換を行うことと、H2プラズマ変換を行うこととを含む。
【0005】
本開示のこれらの特徴およびその他の特徴を、本開示の詳細な説明に以下の図面を併せて以下にさらに詳細に説明する。
【0006】
本開示は、例として非限定的に添付の図面の図に示されており、図面では同様の符号はほぼ同じ要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【0008】
【
図2A】一実施形態に従って処理されたスタックの概略断面図である。
【
図2B】一実施形態に従って処理されたスタックの概略断面図である。
【0009】
【
図3】一実施形態で使用してよい処理チャンバの概略図である。
【0010】
【
図4】一実施形態を実施する際に使用してよいコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面に示したように、本開示のいくつかの例示的な実施形態を引用して本開示を詳細に説明する。以下の説明では、本開示を完全に理解してもらうために多数の具体的な詳細を記載している。しかしながら、本開示がこれらの具体的な詳細の一部または全部がなくとも実施し得ることは当業者には自明であろう。他の場合では、本開示を無駄に不明瞭にしないために、公知の処理工程および/または構造は詳細に説明していない。
【0012】
窒化ケイ素(SiN)膜を150℃~450℃で堆積させるコンフォーマルプラズマ強化原子層堆積(PEALD)は、低ウェットエッチング速度(WER)の目標と同時に高い成長速度を達成するという課題に直面している。ハロゲン化物系のケイ素前駆体は、この温度範囲で100%のコンフォーマル性を達成できることが知られている唯一の原子層堆積(ALD)SiNケイ素前駆体であるため、低WERと高成長率を同時に実現する膜には、通常、窒化物変換プラズマ中に窒素(N2)とアンモニア(NH3)をいくらか組み合わせたものが必要になる。N2プラズマは低WERにつながり、NH3プラズマは高成長率およびコンフォーマル性につながる。残念ながら、NH3を使用すると、望ましくない副作用が生じる。NH3の高い反応性は、NH3が残留しているハロゲン化物系ケイ素前駆体と反応したときに上流に粒子生成および金属腐食を引き起こす可能性がある。これらの反応は、過剰な粒子生成、および金属製のチャンバ構成要素を攻撃するおそれのある揮発性のハロゲン化物系酸副産物の遊離を引き起こす。変換プラズマからNH3を除去すると、低成長率(<0.3Å/サイクル)になり、完全にコンフォーマルな膜を得るには、適切なタイミングで長い無線周波数(RF)が必要になる(>8秒)。この両方の作用が極めて低いスループット(tpt)をもたらし、それによって膜は商業的に魅力のないものになる。
【0013】
現在の低WER、高成長率のコンフォーマルALD SiNプロセスでは、通常、N2とNH3のプラズマの組み合わせを使用してSi-X(X=ハロゲン化物または水素原子)リガンドを-Si-N-結合に変換する。NH3に関わる問題は、粒子生成率が高く、チャンバ腐食率が高いことである。カプセル化を適用する場合、NH3-プラズマは、感応しやすいカルコゲニド材料の上に堆積されたときに高い元素損失を促進することが知られている。さらに、NH3プラズマは一般に、希フッ化水素酸(dHF)中で高WERをもたらす大量のNHx部分の取り込みを促進する。
【実施例】
【0014】
理解しやすくするため、
図1は、一実施形態の高度なフローチャートである。スタックを用意する(工程104)。
図2Aは、一実施形態でのスタック200の概略断面図である。スタック200は、基板204を含んでいてよく、基板204の上には構造体208が形成されている。この例では、スタック200は、相変化ランダムアクセスメモリ(PRAM)を形成する。
【0015】
SiN ALDプロセスによってスタック200の上にSiN層を堆積させる(工程108)。この実施形態では、SiN ALDプロセスは、SiN PEALDプロセスである。SiN層は、PRAMをカプセル化するために使用される。この実施形態では、ALDプロセスは、複数のサイクルを含む。各サイクルには、ケイ素含有前駆体ガスをスタックに投与する工程がある(工程112)。この例では、スタックへの投与は、スタックを約400℃の温度まで加熱することを含む。この例では、ケイ素含有前駆体のケースは、ジヨードシラン(H2SiI2)の蒸気である。約0.5~1.5秒で投与は完了し、ケイ素含有前駆体ガスの流れは停止する。この実施形態では、スタックへの投与(工程112)は、プラズマレスまたはプラズマフリーのプロセスである。プラズマフリーへの投与により、Si含有種の吸着を確実に自己制御にすることによってプラズマを使用するプロセスよりもコンフォーマルで飽和した半反応を可能にする。
【0016】
投与(工程112)が完了し、ケイ素含有前駆体ガスの流れが停止した後、第1のパージを行って(工程116)ケイ素含有前駆体ガスをパージする。この例では、第1のパージ(工程116)は、第1のパージガスを流すことを含む。この例では、第1のパージガスはN2である。この例では、第1のパージは、プラズマレスまたはプラズマフリーのプロセスである。このプロセスは、ケイ素含有プラズマを形成するのを防止するためにプラズマフリーである。約0.25秒後、第1のパージ(工程116)は停止する。
【0017】
第1のパージ(工程116)が完了した後、N2プラズマ変換を行う(工程120)。この例では、第1のパージ(工程116)中のN2の流れは継続するが、N2プラズマ変換はプラズマをもたらす。この例では、N2ガスをN2プラズマに変換するのに十分なRF電力が提供される。バイアスは適用されない。スタックは、窒化ケイ素変換を行うためにN2プラズマに暴露される。水素なし変換を用いることによって、膜のNHx結合が極めて少なくなり、それによって希釈HF酸中で低WERになる。N2プラズマ変換は、3~5秒間行われる。N2プラズマ変換(工程120)が完了した後、N2の流れは停止する。
【0018】
この例では、N2プラズマ変換(工程120)が完了し、N2ガスの流れが停止した後、任意選択の第2のパージを行ってよい(工程124)。この例では、Arの第2のパージガスを供給してよい。この例では、RF電力は、プラズマを維持するために継続される。
【0019】
第2のパージが完了した後(工程124)、水素(H2)プラズマ変換を行う(工程128)。この例では、H2ガスが流される。H2ガスは、H2プラズマに変換される。この実施形態では、H2プラズマ変換(工程128)中に提供されるRF電力は、N2プラズマ変換(工程120)中に提供されるRF電力よりも高い。バイアスは適用されない。スタックは、表面を水素化し、進入してくるハロゲン化物分子に表面をより反応させるためにH2プラズマに暴露される。H2プラズマ変換は1~2秒間行われる。H2プラズマ変換(工程128)が完了した後、H2の流れは停止する。
【0020】
この例では、H2プラズマ変換(工程128)が完了し、H2ガスの流れが停止した後、第3のパージを行う(工程132)。この例では、N2の第3のパージガスを供給する。この例では、プラズマを消失させるためにRF電力を停止する。この例では、第3のパージは、約0.25~0.75秒間行われる。第3のパージが完了した後、第3のパージガスの流れは停止し、サイクルは完了する。サイクルは、再びSi投与(工程112)に戻り、プロセスは複数サイクルにわたって実施される。
【0021】
図2Bは、SiN ALDプロセス(工程108)によってSiN層212がスタック上にコンフォーマルに堆積された後のスタック200の概略断面図である。PEALDプロセスは、高度にコンフォーマルなSiN層212を実現する。
【0022】
出来上がるSiN層212は、高いスループットで形成され得る。様々な実施形態では、プロセスからNH3を排除し、依然としてコンフォーマルなALD SiN膜を有し、NH3プラズマと同じくらい高成長率で、N2プラズマと同じくらい低WERで、低粒子で、かつ上流に金属腐食がない。これは、最初のN2プラズマ工程の後にH2プラズマ工程を挿入することによって行われる。これは単にプラズマ中のN2とH2との混合ではなく、流れ、圧力および電力を独自に最適化した個別のH2プラズマ工程であり、前述の高成長率および低WERで極めて高いスループットが得られるように行われることに注意されたい。短く希薄なH2プラズマは、PRAMカルコゲニド材料に対する反応性が低い可能性があり、二層のカプセル化層を進行させ、高スループットのN2/H2ALD SiNプロセスは、N2のみのALD SiNの保護層の最上部に施されることが予想される。このハイブリッドのスタックは、厚みが同等のN2のみの膜よりも遥かにスループットが高く、酸化耐性が良好になる。
【0023】
様々な実施形態では、低WER(<200:1の希釈フッ化水素酸(dHF)で1分あたり4オングストローム(Å/分))かつ高成長率(>0.7A/サイクル)という要件を、最初のN2プラズマ変換工程の後に第2のH2プラズマ変換工程を挿入することによって満たすNH3フリーのプロセスを実現する。H2は、NH3のようにハロゲン化物前駆体と熱反応しないという利点がある。これは、ガス分配プレナム(GDP)で上流での粒子生成がないという意味である。さらに、金属腐食につながるヨウ化水素(HI)および塩化水素(HCl)の揮発性副産物の上流での遊離がない。H2プラズマ変換は、成長しているSiN膜の表面に十分な反応性リガンドを追加して、高いウェットエッチング速度につながる過剰なNHx結合を取り込むことなく、次のケイ素前駆体吸着サイクルを促進する。
【0024】
このALD SiN堆積プロセスに関して予想外なことは、この実施形態が、NH3よりも遥かに少ない反応性窒素源で依然として高いコンフォーマル性および高成長率を達成できることである。さらに、膜内の粒子加算は、規模が2~3桁減少している。様々な実施形態で、連続するN2とH2のプラズマ工程の最適化が可能になり、それによって膜の特性および生産性がクラス最高になる。NH3の排除は、ツール費用の大幅な費用削減にもつながり得る。なぜなら、侵襲性の低い金属削減対策を用いることができると予想され、残留するケイ素前駆体からNH3を分離するための高価な二重プレナム設計の必要性がなくなるからである。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2のパージ(工程124)をなくしてよい。このような実施形態では、N2ガスが最初に流れる。H2ガスおよびN2ガスがある程度の時間一緒に流れるように、H2ガスは、N2ガスの流れが始まった後、かつN2ガスが流れ続けている間に流れる。別の実施形態では、N2ガスの流れは、H2の流れが始まる前に停止する。ただし、第2のパージ(工程124)がなければ、残りのN2ガスとH2ガスとがいくらか混合される。第2のパージ(工程124)をなくすことで、処理時間が減り、スループットが増す。
【0026】
様々な実施形態では、ケイ素含有前駆体は、ハロゲン化ケイ素の少なくとも1つである。様々な実施形態では、ジヨードシラン(H2SiI2)、トリヨードシラン(HSiI3)、ヨードシラン(H3SiI)、またはテトラヨードシラン(SiI4、)などのヨウ化ケイ素が、好適なケイ素含有前駆体をもたらす。その他の実施形態では、ハロゲン化ケイ素は、塩化ケイ素または臭化ケイ素であってよい。好ましくは、少なくとも1つのハロゲンが少なくとも1つのケイ素原子に結合しているハロゲン化ケイ素に加えて、ハロゲン化ケイ素は、少なくとも1つのケイ素原子に結合している1つ以上の水素原子も有していてよい。その他の実施形態では、ハロゲン化ケイ素は、少なくとも1つのケイ素原子と、この少なくとも1つのケイ素原子に結合している別の元素の少なくとも1つの原子とに結合している少なくとも1つのハロゲンを有していてよい。これらの他のケイ素含有前駆体は、脱離基、架橋促進剤またはドーパントのいずれかとして作用できるアミノ系、アミド系またはアルキル系のサブグループであり得る。様々な実施形態では、基板は、投与過程(工程112)で少なくとも150℃の温度まで加熱される。さらに詳細には、基板は、200℃~400℃の温度まで加熱される。この加熱は、ケイ素含有前駆体に活性化エネルギーをもたらしてケイ素含有前駆体に飽和コンフォーマル単分子層を形成させる。
【0027】
図3は、一実施形態で使用してよい処理チャンバの概略図である。1つ以上の実施形態では、処理チャンバ300は、チャンバ349内部にチャンバ壁352で取り囲んだ状態で、ガス入口を提供するガス分配プレート306および基板支持体308を有する。チャンバ349内部には、スタック200が基板支持体308の上に配置されている。エッジリング309が基板支持体308を包囲している。ガス分配プレート306を介してチャンバ349にガス源310が接続されている。この例では、ガス源310は、ケイ素含有前駆体源311、N
2ガス源312、およびH
2ガス源316を含んでいる。基板支持体308を加熱するためのヒータ351に支持体温度コントローラ350が接続されている。無線周波数(RF)源330がRF電力を上方電極に供給する。この実施形態では、上方電極はガス分配プレート306である。例示的な実施形態では、400キロヘルツ(kHz)、13.56メガヘルツ(MHz)、および任意選択で2MHz、27MHzの電力源がRF源330となる。この実施形態では、基板支持体308は接地されている。この実施形態では、各周波数に対して1つの発生器を用意する。他の実施形態では、発生器は、別々のRF源にあってよい、あるいは別々のRF発生器が異なる電極に接続されてよい。例えば、上方電極は、異なるRF源に接続されている内部電極および外部電極を有していてよい。RF源および電極のこれ以外の構成を他の実施形態で使用してよい。RF源330、排出ポンプ320、およびガス源310にはコントローラ335が制御可能に接続されている。このようなチャンバの一例が、米国カリフォルニア州フリーモント所在のLam Research Corporation社が製作するStriker(登録商標)システムである。
【0028】
図4は、実施形態で使用するコントローラ335を実装するのに適したコンピュータシステム400を示す高度なブロック図である。コンピュータシステムは、集積回路、プリント回路基板、および小型のハンドヘルドデバイスから巨大なスーパーコンピュータに至るまでの多くの物理形態を採り得る。コンピュータシステム400は、1つ以上のプロセッサ402を含んでおり、さらに、(図形、テキスト、およびその他のデータを表示するための)電子表示デバイス404、メインメモリ406(例えばランダムアクセスメモリ(RAM))、ストレージデバイス408(例えばハードディスクドライブ)、取り外し可能なストレージデバイス410(例えば光学ディスクドライブ)、ユーザインターフェースデバイス412(例えばキーボード、タッチ画面、キーパッド、マウスまたはその他のポイントデバイスなど)、および通信インターフェース414(例えばワイヤレスネットワークインターフェース)を含むことができる。通信インターフェース414により、コンピュータシステム400と外部デバイスとの間でリンクを介してソフトウェアおよびデータを伝送させることができる。システムは、前述のデバイス/モジュールに接続された通信インフラストラクチャ416(例えば通信バス、クロスオーバーバー、またはネットワーク)も含んでいてよい。
【0029】
通信インターフェース414を介して伝送された情報は、通信リンクを介して通信インターフェース414による受信が可能な電子信号、電磁信号、光学信号、または他の信号などの信号の形態であってよく、通信リンクは、信号を運搬し、ワイヤまたはケーブル、光ファイバ、電話線、携帯電話リンク、無線周波数リンク、および/またはその他の通信チャネルを用いて実装されてよい。このような通信インターフェースを用いると、1つ以上のプロセッサ402は、ネットワークから情報を受信する可能性があるか、あるいは前述の方法の工程を実施する過程で情報をネットワークに出力する可能性があると想定される。さらに、方法の実施形態は、処理の一部を分担するリモートプロセッサを併用して、プロセッサ上のみで実行してよいか、インターネットなどのネットワーク上で実行してよい。
【0030】
「非一時的なコンピュータ可読媒体」という用語は、一般に、主要メモリ、二次メモリ、取り外し可能なストレージ、およびストレージデバイスなどの媒体、ハードディスク、フラッシュメモリ、ディスクドライブメモリ、CD-ROM、およびその他の永続的なメモリの形態などの媒体を指して使用されており、キャリア波または信号などの一時的な主題をカバーするものと解釈してはならない。コンピュータコードの例として、コンパイラによって生成されるようなマシンコード、およびインタプリタを使用してコンピュータによって実行される高度なコードを含むファイルが挙げられる。コンピュータ可読媒体は、キャリア波中に具現化されプロセッサによって実行可能な一連の命令を表すコンピュータデータ信号によって伝送されるコンピュータコードであってもよい。
【0031】
本開示をいくつかの好適な実施形態に関して説明したが、変更、修正、入れ替え、および様々な代替の同等物があり、これらは本開示の範囲内に収まる。本開示の方法および装置を実現する多くの代替の方法があることにも注意すべきである。したがって、以下の添付の特許請求の範囲は、そのような変更、修正、入れ替え、および様々な代替の同等物をすべて含むとともに本開示の真の趣旨および範囲内に収まるものとして解釈することを意図している。
本発明は、たとえば、以下のような態様で実現することもできる。
適用例1:
スタック上に窒化ケイ素層を堆積する方法であって、複数のサイクルを含む原子層堆積を行うことを含み、各サイクルは、
ケイ素含有前駆体ガスを供給することによってケイ素含有前駆体をスタックに投与すること、
N2プラズマ変換を行うこと、
H2プラズマ変換を行うこと
を含む、方法。
適用例2:
適用例1の方法であって、前記ケイ素含有前駆体は、ハロゲン化ケイ素である、方法。
適用例3:
適用例1の方法であって、前記スタックの投与過程で、前記スタックは少なくとも150℃の温度に維持される、方法。
適用例4:
適用例1の方法であって、前記スタックの投与はプラズマレスである、方法。
適用例5:
適用例1の方法であって、各サイクルはNH3フリーである、方法。
適用例6:
適用例1の方法であって、前記N2プラズマ変換を行うことは、
N2ガスを流すことと、
前記N2ガスをN2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記N2プラズマに暴露させることと、
前記N2ガスを流すことを停止することと
を含む、方法。
適用例7:
適用例6の方法であって、前記H2プラズマ変換を行うことは、
H2ガスを流すことと、
前記H2ガスをH2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記H2プラズマに暴露させることと、
前記H2ガスを流すことを停止することと
を含む、方法。
適用例8:
適用例7の方法であって、前記N2ガスを流すのは、前記H2ガスを流す前である、方法。
適用例9:
適用例1の方法であって、前記ケイ素含有前駆体はヨウ化ケイ素である、方法。
適用例10:
適用例1の方法であって、前記ケイ素含有前駆体は、塩化ケイ素または臭化ケイ素である、方法。
適用例11:
適用例1の方法であって、前記H2プラズマ変換を行った後、かつ前記スタックへの投与の前に前記H2プラズマ変換によって形成されたH2プラズマをパージすることをさらに含む、方法。
適用例12:
適用例1の方法であって、前記スタックへの投与の後、かつ前記N2プラズマ変換を行う前に前記ケイ素含有前駆体ガスをパージすることをさらに含む、方法。
適用例13:
窒化ケイ素原子層堆積をスタック上に堆積させる装置であって、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に基板支持体と、
前記処理チャンバの中にガスを供給するためのガス入口と、
前記ガスを前記ガス入口に供給するためのガス源であって、
ケイ素含有前駆体源、
N2ガス源、および
H2ガス源
を含む、ガス源と、
前記処理チャンバからガスをポンプで送るための排出ポンプと、
前記処理チャンバにRF電力を供給するための電極と、
前記電極に電力を供給するための少なくとも1つの電源と、
前記ガス源および前記少なくとも1つの電源に制御可能に接続されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、
少なくとも1つのプロセッサ、および
コンピュータ可読媒体を含み、
前記コンピュータ可読媒体は、複数のサイクルを行うことによってスタック上に原子層堆積で窒化ケイ素層を堆積させるためのコンピュータコードを含み、
前記複数のサイクルの各サイクルは、
前記ケイ素含有前駆体源からケイ素含有前駆体ガスを供給することによってケイ素含有前駆体をスタックに投与することと、
N2プラズマ変換を行うことと、
H2プラズマ変換を行うことと
を含む、装置。
適用例14:
適用例13の装置であって、前記基板支持体を加熱するヒータをさらに含む、装置。
適用例15:
適用例14の装置であって、前記コンピュータ可読媒体は、前記基板支持体を少なくとも150℃の温度に加熱するためのコンピュータコードをさらに含む、装置。
適用例16:
適用例13の装置であって、前記ガス源はNH3フリーである、装置。
適用例17:
適用例13の装置であって、前記N2プラズマ変換を行うことは、
N2ガスを流すことと、
前記N2ガスをN2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記N2プラズマに暴露させることと、
前記N2ガスを流すことを停止することと
を含む、装置。
適用例18:
適用例17の装置であって、前記H2プラズマ変換を行うことは、
H2ガスを流すことと、
前記H2ガスをH2プラズマに変換することと、
前記スタックを前記H2プラズマに暴露させることと、
前記H2ガスを流すことを停止することと
を含む、装置。
適用例19:
適用例13の装置であって、前記複数のサイクルの各々のサイクルは、
前記スタックへの投与の後、かつ前記N2プラズマ変換を行う前に前記ケイ素含有前駆体ガスをパージすることと、
前記H2プラズマ変換を行った後、かつ前記スタックへの投与の前にH2プラズマをパージすることと
を含む、装置。