(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】アルコキシシラン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240515BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C07F7/18 B
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023506079
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 KR2021009971
(87)【国際公開番号】W WO2022025702
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0096158
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キュ-リョン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、セ-ウォン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0017952(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0126741(KR,A)
【文献】特開2001-139583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240907(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0008007(KR,A)
【文献】国際公開第2016/167494(WO,A1)
【文献】特開平05-247061(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110817888(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104513263(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させてアルコキシシラン化合物およびアンモニアを含む第1混合物を製造するステップと、
(2)前記第1混合物に下記化学式2で表される化合物およびアルコールを添加し反応させて追加のアルコキシシラン化合物とアンモニウム塩が生成された第2混合物を製造するステップと、
(3)前記第2混合物に
水を添加して前記アンモニウム塩を溶解させるステップと、
(4)前記アンモニウム塩が溶解された水層を分離、除去してアルコキシシラン化合物を取得するステップとを含む、アルコキシシラン化合物の製造方法。
【化1】
【化2】
前記化学式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基であり、R
2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数であり、Xは、ClまたはBrである。
【請求項2】
前記シラザン系化合物は、ジアルキルジシラザン、テトラアルキルジシラザンおよびヘキサアルキルジシラザンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、グリセロール、エチレングリコールおよびジプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記アルコキシシラン化合物は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物およびトリアルコキシシラン化合物からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~3のいずれかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アルコールは、下記化学式3で表される化合物であり、前記アルコキシシラン化合物は、下記化学式4で表される化合物である、請求項1または2に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【化3】
【化4】
前記化学式中、R
1およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基であり、R
2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数である。
【請求項6】
前記化学式2で表される化合物は、前記第1混合物のアンモニアと同じ当量で添加される、請求項1~5のいずれかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項7】
前記第1混合物に前記化学式2で表される化合物を投入する前に、前記第1混合物に含まれたアンモニアの濃度を測定する過程をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項8】
前記シラザン系化合物は、ヘキサメチルジシラザンであり、前記アルコールは、エタノールであり、前記アルコキシシランは、トリメチルエトキシシランである、請求項1~7のいずれかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項9】
前記化学式2で表される化合物は、トリメチルクロロシランである、請求項1~8のいずれかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(1)のシラザン系化合物とアルコールの反応は、酸触媒条件下で行われる、請求項1~9のいずれかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項11】
前記酸触媒は、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸およびフッ酸からなる群から選択される1種以上を含む、請求項10に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0096158号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、アルコキシシラン化合物の製造方法に関し、より具体的には、シリカエアロゲルの疎水化表面改質に使用されるアルコキシシラン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、ナノ粒子で構成された高多孔性物質として、高い気孔率と比表面積、および低い熱伝導度を有することから、高効率の断熱材、防音材などの用途で注目されている。このようなエアロゲルは、多孔性構造によって非常に低い機械的強度を有するため、既存の断熱繊維である無機繊維または有機繊維などの繊維状ブランケットにエアロゲルを含浸して結合させたエアロゲル複合体が開発されている。一例として、シリカエアロゲルを用いたシリカエアロゲル含有ブランケットの場合、シリカゾルの製造ステップ、ゲル化ステップ、熟成(Aging)ステップ、表面改質ステップおよび乾燥ステップを経て製造される。
【0004】
シリカエアロゲルおよびシリカエアロゲル含有ブランケットの表面改質ステップにおいて、表面改質剤として使用されるシラザン系化合物は、アルコキシシラン化合物またはシラノール化合物に分解されて多量のNH3を発生させる。NH3は、湿潤ゲル内の溶媒に溶解され、以降の超臨界乾燥中に抽出溶媒として使用する二酸化炭素と反応して炭酸アンモニウム塩を形成し、これは、温度低下の時に析出されて固相粉末を形成し、これは、後続工程において、スケール(scale)の形成および配管またはバルブの目詰まりなどの問題の原因として作用する。
【0005】
そのため、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲル含有ブランケットの表面改質ステップにおいて、表面改質剤として、シラザン系化合物の代わりに、アンモニアを発生させないアルコキシシラン化合物の使用が好まれている。したがって、シラザン系化合物を用いてアルコキシシラン化合物を製造する場合、副生成物として発生するアンモニアをより効果的に除去することができる新たなアルコキシシラン化合物の製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0100082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、シラザン系化合物を用いてアルコキシシラン化合物を製造する過程において、副生成物として発生するアンモニアをより効果的に除去することができる新たなアルコキシシラン化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、(1)下記化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させてアルコキシシラン化合物およびアンモニアを含む第1混合物を製造するステップと、(2)前記第1混合物に下記化学式2で表される化合物およびアルコールを添加し反応させて追加のアルコキシシラン化合物とアンモニウム塩が生成された第2混合物を製造するステップと、(3)前記第2混合物に水系溶媒を添加して前記アンモニウム塩を溶解させるステップと、(4)前記アンモニウム塩が溶解された水層を分離、除去してアルコキシシラン化合物を取得するステップとを含むアルコキシシラン化合物の製造方法を提供する。
【化1】
【化2】
前記化学式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基であり、R
2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数であり、Xは、ClまたはBrである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるアルコキシシラン化合物の製造方法は、シラザン系化合物を用いてアルコキシシラン化合物を製造する過程において、副生成物として形成されるアンモニアを用いて追加のアルコキシシラン化合物を製造するとともに、これをアンモニウム塩に転換して除去することで、効果的にアンモニアを除去することができ、且つ製造しようとするアルコキシシラン化合物の取得率を増加させることができる効果をともに発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0012】
本発明によるアルコキシシラン化合物の製造方法は、(1)下記化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させてアルコキシシラン化合物およびアンモニアを含む第1混合物を製造するステップと、(2)前記第1混合物に下記化学式2で表される化合物およびアルコールを添加し反応させて追加のアルコキシシラン化合物とアンモニウム塩が生成された第2混合物を製造するステップと、(3)前記第2混合物に水系溶媒を添加して前記アンモニウム塩を溶解させるステップと、(4)前記アンモニウム塩が溶解された水層を分離、除去してアルコキシシラン化合物を取得するステップとを含む。
【0013】
【0014】
【0015】
前記化学式中、R1は、炭素数1~8のアルキル基であり、R2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数であり、Xは、ClまたはBrである。
【0016】
(1)化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させてアルコキシシラン化合物およびアンモニアを含む第1混合物を製造するステップ
ステップ(1)では、下記化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させてアルコキシシラン化合物を合成し、この際、副生成物としてアンモニアが生成され、アルコキシシラン化合物およびアンモニアを含む第1混合物を製造する。
【0017】
【0018】
前記化学式1中、R1は、炭素数1~8のアルキル基であり、R2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数である。
【0019】
また、前記R1は、炭素数1~6のアルキル基であることができ、R2は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることができる。
【0020】
また、前記R1は、炭素数1~4のアルキル基であることができ、R2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることができる。
【0021】
本発明の一例において、前記シラザン系化合物は、ジアルキルジシラザン、テトラアルキルジシラザンおよびヘキサアルキルジシラザンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0022】
また、前記シラザン系化合物の具体的な例としては、1,3-ジエチルジシラザン(1,3-diethyldisilazane)、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(1,1,3,3-tetramethyl disilazane)、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン(1,1,3,3-tetraethyl disilazane)、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-hexamethyldisilazane;HMDS)、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-hexaethyldisilazane)、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン(1,1,3,3-tetraethyldisilazane)または1,3-ジイソプロピルジシラザン(1,3-diisopropyldisilazane)などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0023】
一方、前記アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどの一価アルコール、グリセロール、エチレングリコールおよびジプロピレングリコールなどの二価アルコールが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。本発明の一例において、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、グリセロール、エチレングリコールおよびジプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上であることができ、具体的には、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールからなる群から選択される1種以上であることができ、より具体的には、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0024】
前記化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させて合成されるアルコキシシラン化合物は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物およびトリアルコキシシラン化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができ、前記アルコールが下記化学式3で表される化合物である時に、前記アルコキシシラン化合物は、具体的には、下記化学式4で表される化合物であることができる。
【0025】
【0026】
【0027】
前記化学式3または4中、R1およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基であり、R2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数である。
【0028】
また、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基であることができ、R2は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることができる。
【0029】
また、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基であることができ、R2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることができる。
【0030】
前記シラザン系化合物と前記アルコールとの反応は、下記反応式1のように示すことができ、1当量のシラザン系化合物と2当量のアルコールとの反応により2当量のアルコキシシラン化合物を生成し、副生成物として1当量のアンモニアを生成し、これによって製造される第1混合物は、アルコキシシラン化合物およびアンモニアを含む。
【0031】
【0032】
前記反応式1中、R1~R3およびnは、前記化学式1、3および4で定義したとおりである。
【0033】
(2)前記第1混合物に下記化学式2で表される化合物およびアルコールを添加し反応させて追加アルコキシシラン化合物とアンモニウム塩が生成された第2混合物を製造するステップ
【0034】
ステップ(2)では、前記製造された第1混合物に、下記化学式2で表される化合物およびアルコールを添加し反応させて、アンモニアと下記化学式2で表される化合物の反応により追加アルコキシシラン化合物を生成させ、アンモニアをアンモニウム塩に転換する。すなわち、ステップ(2)では、第1混合物に含まれたアンモニアと下記化学式2で表される化合物との反応を用いて追加のアルコキシシラン化合物を生成するとともに、アンモニアをアンモニウム塩に転換する過程が行われ、アンモニウム塩に転換されたアンモニアは、以降のステップにより除去されることができる。
【0035】
【0036】
前記化学式2中、R1は、炭素数1~8のアルキル基であり、R2は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、nは、1~3の整数であり、Xは、ClまたはBrである。
【0037】
また、前記R1は、炭素数1~6のアルキル基であることができ、R2は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることができる。
【0038】
また、前記R1は、炭素数1~4のアルキル基であることができ、R2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることができる。
【0039】
また、Xは、Clであることがある。
【0040】
本発明の一例において、前記アルコールは、前記ステップ(1)で使用されるアルコールと同じものであることができ、ステップ(2)で使用されるアルコールと前記ステップ(1)で使用されるアルコールが同じものである場合、ステップ(1)で製造されたアルコキシシラン化合物とステップ(2)で製造される追加アルコキシシラン化合物が同じ化合物になることができる。
【0041】
ステップ(2)の反応は、下記反応式2のように示すことができる。
【0042】
【0043】
前記反応式2中、前記アンモニア(NH3)は、前記ステップ(1)において、シラザン系化合物分解の結果として発生し、第1混合物に含まれたアンモニアであり、ステップ(2)では、シラザン系化合物とアルコールの反応の副生成物として発生するアンモニアと、下記化学式2で表される化合物およびアルコールを反応させることで、追加アルコキシシラン化合物とアンモニウム塩が生成された第2混合物を製造する。すなわち、本発明のアルコキシシラン化合物の製造方法は、アンモニアを、除去が容易なアンモニウム塩の形態に転換し、且つ、従来、単純な除去の対象に過ぎなかったアンモニアを用いて、さらにアルコキシシラン化合物を生成する効果を発揮することができる。
【0044】
前記化学式2で表される化合物は、前記第1混合物のアンモニアと同じ当量で添加されることができる。前記化学式2で表される化合物が前記第1混合物のアンモニアと同じ当量で添加される場合、アンモニアが効果的に除去されるとともに、追加アルコキシシラン化合物が使用された前記化学式2で表される化合物が高い収率で製造されることができる。前記化学式2で表される化合物が前記第1混合物のアンモニアに比べて過少量添加されると、アンモニアがアンモニウムに完全に転換されず、アンモニアの除去効率が低下することがあり、前記化学式2で表される化合物が前記第1混合物のアンモニアに比べて過量添加されると、副反応が発生することがあり、工程コントロールが容易でないこともある。
【0045】
本発明の一例によるアルコキシシラン化合物の製造方法は、前記化学式2で表される化合物を前記第1混合物のアンモニアと同じ当量で添加するために、前記第1混合物に前記化学式2で表される化合物を投入する前に、前記第1混合物に含まれたアンモニアの濃度を測定する過程をさらに含むことができる。例えば、前記ステップ(1)のように、前記化学式1で表されるシラザン系化合物にアルコールを添加し反応させた後、第1混合物に含まれたアンモニアの濃度を測定する過程が行われることができ、その後、前記アンモニアの濃度に基づいて、同じ当量の前記化学式2で表される化合物を添加する過程が行われることができる。
【0046】
(3)第2混合物に水系溶媒を添加して前記アンモニウム塩を溶解させるステップ
ステップ(3)では、第2混合物に水系溶媒を添加し、ステップ(2)においてアンモニアから転換されたアンモニウム塩を溶解させる。第2混合物は、アルコキシシラン化合物およびアンモニウム塩を含むものであり、アルコキシシラン化合物は、水系溶媒に溶解されず、アンモニウム塩のみ水系溶媒に溶解されるため、アンモニウム塩は水層に分離される。
【0047】
前記水系溶媒は、前記ステップ(2)においてアンモニアから転換されたアンモニウム塩を溶解させるためのものであり、アルコキシシラン化合物を溶解させないとともにアンモニウム塩を溶解させることができるものであることができ、例えば、水であることができる。この際、前記水は、工程水であることができ、具体的には、蒸留水またはイオン交換水であることができる。
【0048】
(4)アンモニウム塩が溶解された水層を分離、除去してアルコキシシラン化合物を取得するステップ
ステップ(4)では、アンモニウム塩が溶解された水層をアルコキシシラン化合物の有機層と分離して除去することで、目的とするアルコキシシラン化合物を取得する。
【0049】
このように、本発明のアルコキシシラン化合物の製造方法により、シラザン系化合物からシリカエアロゲルの疎水化表面改質に使用されるアルコキシシラン化合物を製造することができる。
【0050】
本発明の一例において、前記化学式1で表されるシラザン系化合物は、具体的には、ヘキサメチルジシラザンであることができ、前記アルコールは、エタノールであることができ、前記化学式2で表される化合物は、トリメチルクロロシランであることができる。
【0051】
前記ヘキサメチルジシラザンにエタノールを添加し反応させる場合、トリメチルエトキシシランおよびアンモニアを含む第1混合物が製造される。
【0052】
前記第1混合物に含まれたアンモニアをトリメチルクロロシランおよびエタノールと反応させる場合、トリメチルクロロシランのクロロがエタノールのエトキシで置換され、さらなるトリメチルエトキシシランを生成し、アンモニアは塩化アンモニウムに転換される。これにより、本発明の一例によるアルコキシシラン化合物の製造方法は、第1混合物の製造時に製造されたトリメチルエトキシシラン以外に、第2混合物の製造時にさらにトリメチルエトキシシランが生成されることから、従来知られているヘキサメチルジシラザンにエタノールを添加して2分子のトリメチルエトキシシランを生成する反応に比べて、より高い取得率を達成することができ、また、これと同時に、ヘキサメチルジシラザンの分解によって発生する副生成物であるアンモニアをアンモニウム塩に転換して除去する効果を同時に奏することができる。
【0053】
一方、本発明の一例において、前記ステップ(1)のシラザン系化合物とアルコールの反応は、酸触媒条件下で行われることができる。前記酸触媒は、前記シラザン系化合物とアルコールの反応を促進させるために使用されることができ、前記酸触媒は、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸およびフッ酸からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0054】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0055】
(実施例1)
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、エタノールおよびHClを1:2:0.00064のモル比になるように混合した溶液を常温で2時間撹拌してトリメチルエトキシシラン(TMES)を合成し、生成されたトリメチルエトキシシラン(TMES)内のアンモニア濃度を測定した。測定されたアンモニアの当量と同じ当量のトリメチルクロロシラン(TMCS)とエタノールを投入し、沈殿塩を生成させた。
【0056】
生成されたトリメチルクロロシランと1:1の体積比になるように蒸留水を投入し撹拌して沈殿塩を溶解させた後、水層を排出して、アンモニアが除去されたトリメチルエトキシシラン(TMES)を取得した。
【0057】
(実施例2)
ヘキサメチルジシラザンおよびエタノールを1:2のモル比になるように混合した後、75℃の還流(reflux)条件で2時間反応させた以外は、実施例1と同じ方法で、アンモニアが除去されたトリメチルエトキシシランを取得した。
【0058】
(比較例1)
ヘキサメチルジシラザンおよびエタノールを1:2のモル比になるように混合した後、75℃の還流(reflux)条件で2時間反応させてトリメチルエトキシシランを合成し、これを蒸留させてトリメチルエトキシシランを取得した。
【0059】
(比較例2)
ヘキサメチルジシラザンおよびエタノールを1:2のモル比になるように混合した後、75℃の還流(reflux)条件で2時間反応させてトリメチルエトキシシランを合成し、これを、さらに、75℃で24時間還流(reflux)させてトリメチルエトキシシランを取得した。
【0060】
(比較例3)
ヘキサメチルジシラザンおよびエタノールを1:2のモル比になるように混合した後、75℃の還流(reflux)条件で2時間反応させてトリメチルエトキシシランを合成し、これを、さらに、24時間75℃で還流(reflux)させた後、これを蒸留させてトリメチルエトキシシランを取得した。
【0061】
(実験例)
1)アンモニア含量の測定
トリメチルエトキシシラン内のアンモニアの含量および最終取得されたトリメチルエトキシシラン内の残留アンモニアの含量は、Metrohm社製の87 Titrino plusを使用し、硫酸を用いて、滴定分析して測定した。
【0062】
2)取得率
トリメチルエトキシシランの取得率は、下記数学式1によって計算した。
【0063】
[数学式1]
(取得されたトリメチルエトキシシランのモル数/使用されたヘキサメチルシラザンのモル数×2)×100=取得率(%)
【0064】
【0065】
前記表1を参照すると、実施例1および2は、最終残留アンモニアが検出されていないが、比較例1~3は、アンモニアが最終的に残留し、実施例1および2の製造方法による場合、より効果的にアンモニアを除去することができることを確認することができた。また、実施例1および2は、トリメチルエトキシシランの取得率が100%を超えて反応が行われたヘキサメチルシラザンから得られるトリメチルエトキシシランの量を超えるトリメチルエトキシシランを取得することができたが、これは、実施例1および2の製造方法は、トリメチルエトキシシラン(TMES)を合成した後、生成されたトリメチルエトキシシラン内のアンモニア濃度を測定した後、測定されたアンモニアの当量と同じ当量のトリメチルクロロシラン(TMCS)とエタノールを投入することで、さらにトリメチルエトキシシランを合成することができたためである。これにより、実施例1および2の製造方法は、非常に効果的にアンモニアを除去することができ、且つ除去の対象になるアンモニアを用いて、さらにトリメチルエトキシシランを得ることができ、アンモニアの除去およびアルコキシシラン化合物の製造において非常に優れた効果を発揮することができることを確認することができた。これに比べて、比較例1は、ヘキサメチルジシラザンおよびエタノールの還流反応によるトリメチルエトキシシラン合成反応の後、蒸留によりアンモニアがガス状に排出されて除去され、比較例2は、生成されたトリメチルエトキシシランを追加還流させてアンモニアをガス状に追加排出したが、最終的に残留するアンモニアが含まれていることを確認することができ、比較例3は、生成されたトリメチルエトキシシランを追加還流させた後、これをまた蒸留し、最終的に残留するアンモニアの含量をより減少させることができたが、最終的にアンモニアが残留することを確認することができ、還流と蒸留によるトリメチルエトキシシランの損失が発生した。
【0066】
また、製造時間の面でも、実施例1および2は、それぞれ総5時間がかかり、それぞれ総26時間および総27時間がかかった比較例2および3に比べて、非常に短い時間がかかった。比較例1は、トリメチルエトキシシランの合成後、蒸留だけ行われて、製造時間は、総3時間に過ぎず、実施例1~3に比べて所要時間が短かったが、取得率が低く、最終的にアンモニア多量残留する点で、実施例1~3に比べてその効果が劣っていた。