(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電源IC、及び、スイッチングレギュレータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
H02M3/155 B
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2020199049
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 裕樹
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284337(JP,A)
【文献】特開2008-236919(JP,A)
【文献】特開2003-284241(JP,A)
【文献】特開2007-236129(JP,A)
【文献】特開2018-042464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を所定の出力電圧に変換して外部回路に供給可能な電源ICであって、
各機能に対応する複数の内部回路ブロックと、
前記複数の内部回路ブロックに内部電源電圧を供給するための内部電源回路と、
前記複数の内部回路ブロックにバイアス電流を供給するためのバイアス電流回路と、
バイアス電流制御信号に基づいて、前記バイアス電流を調整するためのバイアス電流調整回路と、
を備え、
前記外部回路の負荷が基準値未満になった場合に、前記バイアス電流制御信号に基づいて前記バイアス電流を減少させた後、前記複数の内部回路ブロックの少なくとも一部を停止する軽負荷モードで動作するように構成された、電源IC。
【請求項2】
前記軽負荷モードで動作している際に、前記負荷が前記基準値以上になった場合、前記複数の内部回路ブロックの少なくとも一部を起動した後、前記バイアス電流制御信号に基づいて前記バイアス電流を増加するように構成された、請求項1に記載の電源IC。
【請求項3】
起動時に、ソフトスタート制御信号に基づいて、レギュレータの出力電圧を次第に増加させるソフトスタート制御を実施するためのソフトスタート制御回路を更に備え、
前記ソフトスタート制御回路は、起動完了後、前記ソフトスタート制御信号を前記バイアス電流制御信号として、前記バイアス電流調整回路に供給するように構成された、請求項1又は2に記載の電源IC。
【請求項4】
前記ソフトスタート制御回路は、前記ソフトスタート制御信号の供給先を前記バイアス電流調整回路に切り替えた際に前記ソフトスタート制御信号を初期値にリセットし、その後、前記負荷が前記基準値未満になった場合に増加させる、請求項3に記載の電源IC。
【請求項5】
前記ソフトスタート制御信号は、前記ソフトスタート制御回路が有するキャパシタの充電量に対応する電圧値を有し、
前記ソフトスタート制御回路は、前記キャパシタを放電することにより前記ソフトスタート制御信号をリセットする、請求項4に記載の電源IC。
【請求項6】
前記バイアス電流調整回路は、前記バイアス電流制御信号に対応するバイアス電流調整電流が、前記バイアス電流が流れるバイアス電流ラインに接続されたバイアス調整電流ラインを流れるように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のされた電源IC。
【請求項7】
前記複数の内部回路ブロックは、発振回路、過電流保護回路、過熱保護回路の少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の電源IC。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電源ICを備える、スイッチングレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源IC、及び、スイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の一種である電源ICは、入力電圧を所定の出力電圧に変換するための電子回路が半導体チップ上に集積回路(IC:Integrated Circuit)として構築され、複数個の端子(ピン又はリード)を有するICパッケージとして市場に流通している。
【0003】
一般に、電源ICの内部は機能別に複数の内部回路ブロックに分割されて構成されている。例えば、スイッチングレギュレータに利用される電源ICは、これらの内部回路ブロックとして、スイッチング素子を駆動するためのドライバ回路、当該ドライバ回路にスイッチング制御信号を供給するためのロジック回路、当該ロジック回路に周波数信号を供給するための発振回路、各部に基準電圧を供給するための基準電圧回路、各部に基準電流を供給するための基準電流回路、及び、各部に内部電源電圧を供給するための内部電源回路等を含む。
【0004】
この種の電源ICでは、典型的に、電源供給先である外部回路における負荷が比較的大きい場合に高効率が得られるが、外部回路における負荷が比較的小さい軽負荷状態では、入力電力に対して電源IC自体による消費電力やスイッチングロスの割合が増加するため、効率が低下してしまう。例えば特許文献1には、昇降圧型DC/DCコンバータに用いられる電源回路において、昇降圧型DC/DCコンバータの軽負荷状態における消費電力を低減可能な電源回路について開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイッチングレギュレータに用いられる電源ICでは、前述のように、軽負荷状態で効率が低下する要因として、入力電力に対するスイッチングロスや電源IC自体の消費電力の割合の増加がある。このような電源ICにおいて低負荷状態の効率改善のために軽負荷モードによる動作が可能なものがある。軽負荷モードでは、一部の内部回路ブロックを停止させることで消費電力を抑えるとともに、コンパレータ制御に移行することにより必要最低限のスイッチングで出力電圧を維持することでスイッチングロスを低減することができる。
【0007】
このような軽負荷モードでは、一部の内部回路ブロックが停止されることで内部電源回路に対する負荷が変化し、内部電源電圧にオーバーシュート及びアンダーシュートが生じることがある。このようなオーバーシュート及びアンダーシュートは、一時的な内部電源電圧の変動をもたらし、電源ICに誤作動を発生させる要因となってしまう。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、軽負荷モード時に、内部電源回路から出力される内部電源電圧に生じるオーバーシュート及びアンダーシュートを低減可能な電源IC、及び、スイッチングレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る電源ICは、上記課題を解決するために、
入力電圧を所定の出力電圧に変換して外部回路に供給可能な電源ICであって、
各機能に対応する複数の内部回路ブロックと、
前記複数の内部回路ブロックに内部電源電圧を供給するための内部電源回路と、
前記複数の内部回路ブロックにバイアス電流を供給するためのバイアス電流回路と、
バイアス電流制御信号に基づいて、前記バイアス電流を調整するためのバイアス電流調整回路と、
を備え、
前記外部回路の負荷が基準値未満になった場合に、前記バイアス電流制御信号に基づいて前記バイアス電流を減少させた後、前記複数の内部回路ブロックの少なくとも一部を停止する軽負荷モードで動作するように構成される。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係るスイッチングレギュレータは、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る電源ICを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、軽負荷モード時に、内部電源回路から出力される内部電源電圧に生じるオーバーシュート及びアンダーシュートを低減可能な電源IC、及び、スイッチングレギュレータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係るスイッチングレギュレータの全体構成図である。
【
図3】
図2のソフトスタート制御回路の回路図である。
【
図4】
図1のスイッチングレギュレータの動作時における各制御信号の時間経過を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0014】
まず
図1を参照して電源IC10を備えるスイッチングレギュレータ12の全体構成について説明する。
図1は一実施形態に係るスイッチングレギュレータ12の全体構成図である。
【0015】
スイッチングレギュレータ12は、非同期整流型(ダイオード整流型)であり、電源IC10を備える。電源IC10は、直流の入力電圧VINを所定の直流の出力電圧VOUTに変換して、外部回路に電力を供給可能なDC-DCコンバータとして構成されている。本実施形態では、入力電圧VINは電源14から供給され、外部回路として負荷IC16が接続されている。
【0016】
負荷IC16は、電源IC10の出力電圧VOUTを用いて動作可能な任意のICであり、例えばマイコン、ロジックIC、演算IC等である。電源IC10及び負荷IC16は、それぞれ個別のICパッケージとして提供され、当該電子回路システムの回路基板上で組み合わされる。電源14は、電源IC10等と同じ回路基板上に搭載される別のDC-DCコンバータであってもよいし、AC-DCコンバータ或いはバッテリであってもよい。
【0017】
電源IC10のパッケージには、複数の端子が設けられている。
図1では、これらの端子のうち、VDD端子(電源入力端子)、FB端子(フィードバック端子)、OUT端子(スイッチング出力端子)及びGND端子(制御用グランド端子)が示されている。
【0018】
ここで、OUT端子(スイッチング出力端子)はソースが入力電圧VINに接続された出力トランジスタQ1のゲートに接続されており、出力トランジスタQ1のドレインはチョークコイルL1を介して負荷IC16に接続される。チョークコイルL1の出力端とグランド電位端子との間には、平滑回路を構成する出力コンデンサCOUTと、2つの抵抗R1、R2からなる電圧検出回路28とが接続される。スイッチングレギュレータ12が動作している時は、電圧検出回路28の抵抗R1、R2間のノードNMに出力電圧(チョークコイルL1の出力端の電圧)VOUTに比例する分圧電圧VFBが得られる。分圧電圧VFBはフィードバック信号として電源IC10のFB端子に入力される。
【0019】
電源IC10には、電源系・制御系・駆動系の内部回路ブロックとして、内部レギュレータ回路32、ソフトスタート制御回路33、基準電圧回路34、基準電流回路36、誤差増幅器38、発振回路40、PWMコンパレータ42、ロジック回路44及びドライバ回路45が設けられるとともに、監視系の内部回路ブロックとして、軽負荷モード回路43、UVLO回路46、過電流保護回路47及び過熱保護回路48が設けられている。
【0020】
内部レギュレータ回路32は、例えばリニアレギュレータからなり、電源14からVDD端子を介して供給される電圧VINが入力されることにより、動作電圧に用いる安定した内部電源電圧VREGを生成する。内部電源電圧VREGは、電源IC10内の各内部回路ブロックに供給される。
【0021】
ソフトスタート制御回路33は、電源IC10の起動時にスイッチングレギュレータ12の出力電圧をソフトスタート制御するための制御信号であるソフトスタート信号(以下、適宜「SS信号」と称する)を生成する。尚、詳しくは後述するが、本実施形態では、SS信号は電源IC10の起動時におけるソフトスタート制御に用いられることに加えて、電源IC10が軽負荷モードにある場合に各内部回路ブロックのバイアス電流を調整するための制御信号としても用いられる。
【0022】
基準電圧回路34は、例えばバンドギャップリファレンス回路やバッファー回路等で構成される定電圧源であり、内部レギュレータ回路32からの内部電源電圧VREGが入力され、内部電源電圧VREGが正常範囲内で変動しても一定の基準電圧VREFを生成する。基準電圧VREFは、これを用いる内部回路ブロック、例えば、誤差増幅器38に供給される。
【0023】
基準電流回路36は、例えばトランジスタ又は抵抗等で構成される定電流源であり、内部電源電圧V
REGが正常範囲内で変動しても一定の基準電流I
REFを生成する。基準電流I
REFは、これを必要とする各部に供給され、具体的には各内部回路ブロックのバイアス電流I
B(
図2を参照)として用いられる。
【0024】
誤差増幅器38は、演算増幅器からなり、電圧検出回路28からフィードバック端子FBを介して入力されるフィードバック信号VFBを、ソフトスタート制御回路33からのSS信号、及び、基準電圧回路34からの基準電圧VREFと比較して、その比較誤差をアナログ信号で出力する。
【0025】
発振回路40は、基準電流IREFと基準電圧VREFとキャパシタ等を用いて鋸波又は三角波等のランプ信号VOSCを一定の周波数で発振出力する周波数信号発生回路であり、生成したランプ信号VOSCをPWMコンパレータ42に供給する。
【0026】
PWMコンパレータ42は、誤差増幅器38の出力を発振回路40からのランプ信号VOSCと比較してその比較結果の出力(二値レベルのパルス)をPWM信号VPWMとする。PWMコンパレータ42からのPWM信号VPWMは、ロジック回路44を介してドライバ回路45に供給される。ドライバ回路45は、PWM信号VPWMに従ってトランジスタQ1を一定の周期で相補的にオン・オフ駆動する。トランジスタQ1がオンしている半サイクルでは、電源14からトランジスタQ1を介してチョークコイルL1に電流が流れ、電磁エネルギーが蓄積される(ショットキーダイオードSBDには電流が流れない)。次に、トランジスタQ1がオフする半サイクルでは、ショットキーダイオードSBD及びチョークコイルL1に電流が流れ、負荷IC16に電磁エネルギーが放出される。
【0027】
軽負荷モード回路43は、電源IC10が軽負荷状態にあるか否かを示す軽負荷モード信号(以下、適宜「LLM信号」と称する)を生成する。軽負荷状態であるか否かの判定は、例えば、電源IC10の負荷である負荷IC16が有する負荷を検出し、その検出値が基準値未満であるか否かにより行われる。軽負荷モード回路43は、LLM信号の初期値をLowに設定し、電源IC10が軽負荷状態になった場合にHighに設定する。
【0028】
UVLO回路46は、入力電圧VINや内部電源電圧VREGの低下による誤動作や異常動作を防止するための保護回路である。また、UVLO回路46は、起動時に内部電源電圧VREGが正常範囲に立ち上がるまで電源IC10内の各部をディセーブル状態に保つイネーブル回路の役目もする。
【0029】
過電流保護回路47は、電源IC10の所定の対象箇所における電流値を監視することにより、過電流状態が検出された場合に保護動作を行うための保護回路である。過電流保護回路47は対象箇所における電流値を検出し、その検出結果が基準値以上である場合に過電流状態にあると判定し、保護動作を実施する。過電流保護回路47によって実施される保護動作は、過電流状態を解消するために出力トランジスタQ1をOFFさせる動作や、所定の保護回路を接続する動作であってもよいし、所定の内部回路ブロックを停止する動作であってもよい。
【0030】
過熱保護回路48は、電源IC10の所定の対象箇所における温度を監視することにより、過熱状態が検出された場合に保護動作を行うための保護回路である。過熱保護回路48は対象箇所における温度を検出し、その検出結果が基準値以上である場合に過熱状態にあると判定し、保護動作を実施する。過熱保護回路48によって実施される保護動作は、過熱状態を解消するために出力トランジスタQ1をOFFさせる動作や、所定の保護回路を接続する動作であってもよいし、所定の内部回路ブロックを停止する動作であってもよい。
【0031】
続いて
図2を参照して、電源IC10の具体的な回路構成について説明する。
図2は
図1の電源IC10の中でも本発明に関わる部分の回路構成図である。
【0032】
内部レギュレータ回路32は、電源14からの入力電圧VINに対して所定の出力電圧として、一定の内部電源電圧VREGを出力するリニアレギュレータとして構成される。内部レギュレータ回路32は、NchMOSFETである出力トランジスタQ2を備える。出力トランジスタQ2の出力電圧は、抵抗R3、R4による分圧成分として誤差増幅器50に入力される。誤差増幅器50は、基準電圧VREF2と比較して、その差分がゼロになるように出力トランジスタQ2を調整する。これにより入力電圧VINや、出力側に接続される電源IC10の各内部回路ブロックの負荷が変動した場合においても、一定の内部電源電圧VREGが得られる。内部レギュレータ回路32の出力端は、電源IC10の各内部回路ブロックに接続されることにより、各内部回路ブロックに対して内部電源電圧VREGが供給される。
【0033】
ソフトスタート制御回路33は、内部レギュレータ回路32から内部電源電圧VREGが供給され、イネーブル信号(以下、適宜「EN信号」と称する)及びLLM信号に基づいてSS信号、SS_END1信号及びSS_END2信号を生成する。EN信号は、電源IC10の起動状態に応じてHigh/Lowが切替可能な制御信号であり、初期状態でLowに設定されており、電源IC10が起動された際にHighに設定される。LLM信号は、前述したように軽負荷モード回路43によって電源IC10の動作モードが軽負荷モードにあるか否かに基づいてHigh/Lowが切替可能な制御信号であり、動作モードが軽負荷モードにある場合にHighに設定され、動作モードが軽負荷モードでない(通常モードである)場合にLowに設定される。
【0034】
SS_END1信号は、内部レギュレータ回路32の出力端と誤差増幅器52との間に設けられたスイッチSW1、及び、ソフトスタート制御回路33からのSS信号の出力先として、誤差増幅器52又はバイアス電流調整回路54を選択するためのスイッチSW2を制御するための信号である。SS_END1信号はLLM信号及びEN信号に基づいてHigh/Lowが切替可能である。スイッチSW1は、SS_END1信号がLowである場合にオープンに制御され、SS_END1信号がHighである場合にクローズに制御される。スイッチSW2は、SS_END1信号がLowである場合に、ソフトスタート制御回路33が誤差増幅器52に接続されるように制御される(以下、ソフトスタート制御回路33から誤差増幅器52に供給されるSS信号を、適宜「SS_EA信号」と称する)。一方で、スイッチSW2は、SS_END1信号がHighである場合にソフトスタート制御回路33がバイアス電流調整回路54に接続されるように制御される(以下、ソフトスタート制御回路33からバイアス電流調整回路54に供給されるSS信号を、適宜「SS_VI信号」と称する)。
【0035】
またSS_END2信号は、電源IC10が備える内部回路ブロックのうち、軽負荷モードにおいて停止対象となる内部回路ブロックに対する制御信号である。SS_END2信号がLowに設定されている場合、これらの内部回路ブロックは動作状態にあり、電源IC10は通常モードとして動作する。一方、SS_END2信号がHighに設定されている場合、これらの内部回路ブロックは停止状態に制御され、電源IC10の軽負荷モードが実施される。
【0036】
尚、誤差増幅器52は、SS_EA信号及び基準電圧VREF1と、FB端子から入力されるフィードバック信号(分圧電圧VFB)との差分に応じてPWMコンパレータ42への出力信号を生成する。
【0037】
ここで
図3を参照してソフトスタート制御回路33の具体的な回路構成について説明する。
図3は
図2のソフトスタート制御回路33の回路図である。
【0038】
ソフトスタート制御回路33では、内部レギュレータ回路32からの内部電源電圧VREGが供給される電流源ICHGと、電流源ICHGに接続されたキャパシタCSSとを有する。電流源ICHGとキャパシタCSSとの間に設けられたノードNNには、SS信号を出力するためのSS信号出力端55が設けられている。SS信号は、キャパシタCSSの充電量に対応する電圧値を有する制御信号である。ノードNNに電流源IDISCHGを介して接続されたスイッチSW3がオープンである場合には、キャパシタCSSは電流源ICHGによって充電(チャージ)されることでSS信号の電圧値は次第に増加するように振る舞う。一方、スイッチSW3がクローズである場合には、ノードNNとスイッチSW3との間に設けられた電流源IDISCHGによってキャパシタCSSが放電(ディスチャージ)されることでSS信号の電圧値がリセットされるように振る舞う。
【0039】
尚、スイッチSW3のオープン/クローズは、AND回路56の出力によって切替可能である。AND回路56には、SS_END1信号と、NOT回路58を介したLLM信号とが入力される。
【0040】
コンパレータ60は、SS信号が入力される+端子と、電圧閾値SS_VTHが入力される-端子とを有しており、両者を比較した結果をPLS回路62に入力する。PLS回路62はコンパレータ60の出力信号の立ち上がりエッジをトリガとして生成される1ショットパルス信号であるSS_PLS信号を出力する。SS_PLS信号は、2つのフリップフロップ64A、64Bにそれぞれ入力される。フリップフロップ64AはS端子にSS_PLS信号が入力されるとともに、R端子にEN信号がNOT回路66を介して入力されることにより、Q端子からSS_END1信号が出力される。またフリップフロップ64BはS端子にSS_PLS信号が入力されるとともに、R端子にLLM信号がNOT回路58を介して入力されることにより、Q端子からSS_END2信号が出力される。
【0041】
図2に戻って、内部レギュレータ回路32に接続されるバイアス電流回路70では、カレントミラー回路CM1によって、基準電流回路36から供給される基準電流I
REFに対応する各内部回路ブロックのバイアス電流I
Bが生成される。
図2では、バイアス電流I
Bの供給対象となる内部回路ブロックのうち、軽負荷モードで停止対象となる発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48が示されている。バイアス電流I
Bは、カレントミラー回路CM4によって、発振回路40にはバイアス電流I
B_OSCが供給され、過電流保護回路47にはバイアス電流I
B_OCPが供給され、過熱保護回路48にはバイアス電流I
B_TSDが供給される。
【0042】
バイアス電流調整回路54は、SS_VI信号(スイッチSW2を介してソフトスタート制御回路33から入力されるSS信号)に対応するバイアス調整電流ILLMを生成する。バイアス電流調整回路54は、誤差増幅器72、抵抗R5及びカレントミラー回路CM2、CM3を備えることによって、SS_VI信号に対応するバイアス調整電流ILLMを出力する。
【0043】
ここでバイアス調整電流ILLMが流れるバイアス調整電流ライン74は、バイアス電流回路70のバイアス電流IBが流れるバイアス電流ライン76に接続されている。そのためバイアス調整電流ILLMが増加すると、各内部回路ブロック(発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48)に対するバイアス電流IBの分流成分が減少し、その結果、バイアス電流IB_OSC、バイアス電流IB_OCP及びバイアス電流IB_TSDがそれぞれ減少する。このようにバイアス電流調整回路54におけるバイアス調整電流ILLMによって、軽負荷モードで停止対象となる内部回路ブロックに対するバイアス電流を調整可能である。
【0044】
続いて上記構成を有するスイッチングレギュレータ12の動作について説明する。
図4は
図1のスイッチングレギュレータ12の動作時における各制御信号の時間経過を示すタイミングチャートである。
【0045】
まず時刻t1においてEN信号がLowからHighに切り替えられると、電源IC10が起動する。このときスイッチSW2は、
図2に示すように、誤差増幅器52に接続されており、ソフトスタート制御回路33からのSS信号は、SS_EAとして誤差増幅器52に入力される。尚、SS_END1信号はLowに設定されており、スイッチSW1はオープンである。
【0046】
ソフトスタート制御回路33は、EN信号がLowからHighに切り替えられたことをトリガ―としてソフトスタート制御を実施する。ソフトスタート制御では、
図3に示すソフトスタート制御回路33において、キャパシタCSSが電流源ICHGによって充電されることで、SS_EA信号(SS信号)は時間の経過に従って次第に増加するように変化する。このときスイッチSW3はオープンであり、キャパシタCSSは放電されない。
【0047】
続いて時刻t2においてSS_EA信号(SS信号)の電圧値が電圧閾値SS_VTHに到達すると、ソフトスタート制御回路33では、コンパレータ60からの出力によってPLS回路62から1つのパルス波形が出力され、フリップフロップ64Aから出力されるSS_END1信号がLowからHighに切り替わる。その結果、スイッチSW1がオープンからクローズに切り替えられ、SS_EA信号は内部電源電圧VREGに固定される。
【0048】
また、このようなSS_END1信号の切り替わりに伴い、スイッチSW2の接続先が誤差増幅器52からバイアス電流調整回路54に切り替えられる。そしてソフトスタート制御回路33では、スイッチSW3がオープンからクローズに切り替えられ、キャパシタCSSが放電(ディスチャージ)されることによりリセットされる。
【0049】
このように電源ICがソフトスタート制御を経て通常モードで動作している際に、時刻t3で負荷IC16の負荷が低下すると、軽負荷モード回路43から出力されるLLM信号がLowからHighに切り替わる。LLM信号がHighになると、ソフトスタート制御回路33ではスイッチSW3がオープンに切り替えられることでキャパシタCSSの放電が終了されるとともに、電流源ICHGによる充電が再開される。これにより、リセット後のSS_VI信号(SS信号)は時刻t3から再び時間の経過に伴って増加する。
【0050】
ここでバイアス電流調整回路54では、SS_VI信号の増加に対応するように、バイアス調整電流ILLMもまた増加する。それに伴い、軽負荷モードで停止対象となる発振回路40のバイアス電流IB_OSC、過電流保護回路47のバイアス電流IB_OCP、及び、過熱保護回路48のバイアス電流IB_TSDもまたそれぞれ減少する。
【0051】
続いて時刻t4においてSS_VI信号(SS信号)の電圧値が電圧閾値SS_VTHに到達すると、ソフトスタート制御回路33では、コンパレータ60からの出力によってPLS回路62から1つのパルス波形が出力され、フリップフロップ64Bから出力されるSS_END2信号がLowからHighに切り替わる。その結果、発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48が停止され、これらによる消費電力が抑えられた軽負荷モードが実現される。
【0052】
このようにSS_END2信号による発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48の停止制御時には、各々のバイアス電流は前述のように減少させられているため、内部電源電圧VREGに生じるオーバーシュートを極めて小さく抑えることができる。これにより、オーバーシュートによって電源IC10に誤作動が生じることを防止しながら、軽負荷モードを実現して電源IC10の消費電流を低減することができる。
【0053】
尚、時刻t5では、SS信号はソフトスタート制御回路33が有するキャパシタCSSの容量に対応する最大電圧値に到達して一定に保持される。これに対応するように、バイアス調整電流ILLMもまた時刻t5において最大値に到達して一定に保持される。
【0054】
続いて時刻t6において、軽負荷モードで動作する電源IC10において、負荷IC16の負荷が増加すると、軽負荷モード回路43から出力されるLLM信号がHighからLowに切り替わる。LLM信号がLowになると、ソフトスタート制御回路33では、フリップフロップ64Bから出力されるSS_END2信号がHighからLowに切り替わる。その結果、軽負荷モードで停止制御されていた発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48が動作を再開する。
【0055】
このようにSS_END2信号による発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48の動作再開時には、各々のバイアス電流は前述のように減少させられているため、内部電源電圧VREGに生じるアンダーシュートを極めて小さく抑えることができる。これにより、軽負荷モードの解除時においても、アンダーシュートによって電源IC10に誤作動が生じることを防止することができる。
【0056】
またソフトスタート制御回路33ではスイッチSW3がクローズに切り替えられることでキャパシタCSSの放電が開始され、SS信号(SS_VI信号)がリセットされることにより減少する。SS_VI信号の減少に対応するように、バイアス調整電流ILLMが減少し、発振回路40のバイアス電流IB_OSC、過電流保護回路47のバイアス電流IB_OCP、及び、過熱保護回路48のバイアス電流IB_TSDが増加する。そして時刻t7においてSS_VI信号(SS信号)の電圧値が初期値まで減少すると、軽負荷モードの解除が完了し、電源IC10は通常モードでの動作に戻る。
【0057】
以上説明したように上記実施形態によれば、軽負荷モード時に、内部レギュレータ回路32から出力される内部電源電圧VREGに生じるオーバーシュート及びアンダーシュートを低減可能な電源IC10、及び、スイッチングレギュレータ12を提供できる。
【0058】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0059】
(1)一態様に係る電源ICは、
入力電圧(例えば上記実施形態の入力電圧VIN)を所定の出力電圧(例えば上記実施形態の出力電圧VOUT)に変換して外部回路(例えば上記実施形態の負荷IC16)に供給可能な電源IC(例えば上記実施形態の電源IC10)であって、
各機能に対応する複数の内部回路ブロック(例えば上記実施形態の発振回路40、過電流保護回路47及び過熱保護回路48等)と、
前記複数の内部回路ブロックに内部電源電圧(例えば上記実施形態の内部電源電圧VREG)を供給するための内部電源回路(例えば上記実施形態の内部レギュレータ回路32)と、
前記複数の内部回路ブロックにバイアス電流(例えば上記実施形態の)を供給するためのバイアス電流回路(例えば上記実施形態のバイアス電流回路70)と、
バイアス電流制御信号(例えば上記実施形態のSS信号)に基づいて、前記バイアス電流を調整するためのバイアス電流調整回路(例えば上記実施形態のバイアス電流調整回路54)と、
を備え、
前記外部回路の負荷が基準値未満になった場合に、前記バイアス電流制御信号に基づいて前記バイアス電流を減少させた後、前記複数の内部回路ブロックの少なくとも一部を停止する軽負荷モードで動作するように構成される。
【0060】
上記(1)の態様によれば、内部回路ブロックに供給されるバイアス電流は、バイアス電流制御信号に基づいて制御される。電源ICの外部回路に対する負荷が基準値未満になることで電源ICの動作モードを軽負荷モードに移行する際には、内部回路ブロックの少なくとも一部を停止する前に、バイアス電流制御信号に基づいて、停止対象となる内部回路ブロックに供給されるバイアス電流が減少するように制御される。これにより、内部回路ブロックの停止時における負荷変動を減少させ、内部電源電圧に生じるオーバーシュート及びアンダーシュートを効果的に低減できる。
【0061】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記軽負荷モードで動作している際に、前記負荷が前記基準値以上になった場合、前記複数の内部回路ブロックの少なくとも一部を起動した後、前記バイアス電流制御信号に基づいて前記バイアス電流を増加するように構成される。
【0062】
上記(2)の態様によれば、電源ICの外部回路に対する負荷が基準値以上になることで軽負荷モードが解除される際には、前述のようにバイアス電流が減少した状態で内部回路ブロックが起動され、その後、バイアス電流が増加するように制御される。これにより、内部回路ブロックの起動時における負荷変動を減少させ、内部電源電圧に生じるオーバーシュート及びアンダーシュートを効果的に低減できる。
【0063】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
起動時に、ソフトスタート制御信号(例えば上記実施形態のSS信号)に基づいて、レギュレータの出力電圧を次第に増加させるソフトスタート制御を実施するためのソフトスタート制御回路(例えば上記実施形態のソフトスタート制御回路33)を更に備え、
前記ソフトスタート制御回路は、起動完了後、前記ソフトスタート制御信号を前記バイアス電流制御信号として、前記バイアス電流調整回路に供給するように構成される。
【0064】
上記(3)の態様によれば、電源ICは、電源ICの起動時にレギュレータの出力電圧を次第に増加するようにソフトスタート制御を実施するためのソフトスタート制御回路を備える。この場合、ソフトスタート制御回路で用いられるソフトスタート信号は、バイアス電流制御信号としてバイアス電流調整回路に供給される。これにより、ソフトスタート信号をバイアス電流制御信号として兼用させることができるため、バイアス電流制御信号を生成するための専用回路を設ける場合に比べて、全体の回路構成を簡略化することができる。
【0065】
(4)他の態様では、上記(3)の態様において、
前記ソフトスタート制御回路は、前記ソフトスタート制御信号の供給先を前記バイアス電流調整回路に切り替えた際に前記ソフトスタート制御信号を初期値にリセットし、その後、前記負荷が前記基準値未満になった場合に増加させる。
【0066】
上記(4)の態様によれば、ソフトスタート制御信号がバイアス電流制御信号としてバイアス電流調整回路に供給される際には、一旦、初期値にリセットされることにより、負荷が基準値未満になることで軽負荷モードへの移行が実施される際、バイアス電流制御信号として利用することができる。
【0067】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記ソフトスタート制御信号は、前記ソフトスタート制御回路が有するキャパシタ(例えば上記実施形態のキャパシタCSS)の充電量に対応する電圧値を有し、
前記ソフトスタート制御回路は、前記キャパシタを放電することにより前記ソフトスタート制御信号をリセットする。
【0068】
上記(5)の態様によれば、キャパシタの充放電によってキャパシタに蓄積される静電エネルギー量を可変にすることで、ソフトスタート制御信号及びバイアス電流制御信号の電圧の増減を容易に行うことができる。
【0069】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記バイアス電流調整回路は、前記バイアス電流制御信号に対応するバイアス調整電流(例えば上記実施形態のバイアス調整電流ILLM)が、前記バイアス電流が流れるバイアス電流ライン(例えば上記実施形態のバイアス電流ライン76)に接続されたバイアス調整電流ライン(例えば上記実施形態のバイアス調整電流ライン74)を流れるように構成される。
【0070】
上記(6)の態様によれば、バイアス電流調整回路によってバイアス調整電流ラインを流れるバイアス調整電流を制御することで、バイアス電流ラインを流れるバイアス電流を制御することができる。これにより、軽負荷モードへの移行時には、停止対象となる内部回路ブロックのバイアス電流をバイアス調整電流によって減少させることで、内部電源電圧に生じるオーバーシュート及びアンダーシュートを効果的に低減できる。
【0071】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記複数の内部回路ブロックは、発振回路、過電流保護回路、過熱保護回路の少なくとも1つを含む。
【0072】
上記(7)の態様によれば、軽負荷モードの実施時には、発振回路、過電流保護回路、過熱保護回路の少なくとも1つを停止することで、電源ICにおける消費電力を減少させ、軽負荷状態における効率改善を行うことができる。
【0073】
(8)一態様に係るスイッチングレギュレータは、
上記(1)から(7)のいずれか一態様の電源ICを備える。
【0074】
上記(8)の態様によれば、電源ICの外部回路に対する負荷が基準値以下になった場合には軽負荷モードとして動作することにより、電源ICにおける消費電力及びスイッチングロスを低減し、軽負荷状態においても良好な効率を得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 電源IC
12 スイッチングレギュレータ
14 電源
16 負荷IC
28 電圧検出回路
32 内部レギュレータ回路
33 ソフトスタート制御回路
34 基準電圧回路
36 基準電流回路
38 誤差増幅器
40 発振回路
42 コンパレータ
43 軽負荷モード回路
44 ロジック回路
45 ドライバ回路
46 UVLO回路
47 過電流保護回路
48 過熱保護回路
54 バイアス電流調整回路
55 信号出力端
64A、64B フリップフロップ
70 バイアス電流回路
74 バイアス調整電流ライン
76 バイアス電流ライン