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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】改善されたコンクリート混和剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20240516BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240516BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20240516BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20240516BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20240516BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20240516BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20240516BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240516BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20240516BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B28/02
C04B28/14
C04B24/26 H
C04B24/26 B
C04B24/26 F
C04B24/00
C04B24/38 Z
C04B14/04 C
C04B24/32 A
C08L33/14
C08L5/00
C08K3/36
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020564126
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019068491
(87)【国際公開番号】W WO2020016072
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】18184042.2
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】アナ ジメネズ
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02378946(GB,A)
【文献】国際公開第03/018505(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第02757081(EP,A1)
【文献】特開2016-056081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C08L 33/14
C08L 5/00
C08K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100重量%の水性組成物に基づいて、
- 5~75重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
- 0.05~5重量%の少なくとも一種の水不溶性液体消泡剤、及び
- 0.005~3重量%の少なくとも一種の水溶性多糖
を含む、水性組成物であって、
100重量%の前記水性組成物に基づいて、0.05~0.6重量%の無機ナノ粒子、及び
20℃にて少なくとも10重量%の水溶解度を伴う、0.1~10重量%の少なくとも一種のポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体をさらに含むことを特徴とする、
水性組成物。
【請求項2】
前記アニオン性ポリマーが、流動化剤、減水剤、高流動化剤及び加工性保持剤を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
少なくとも一種のアニオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール側鎖を含むアニオン性櫛型ポリマーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記水不溶性液体消泡剤が、有機リン酸エステルであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記水溶性多糖が、微生物多糖であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記多糖が、100重量%の前記水性組成物に基づいて、0.006~0.2重量%で存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記無機ナノ粒子が、アモルファスシリカのナノ粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項8】
前記無機ナノ粒子が、100nm未満の平均粒径を有することを特徴とする、請求項1又は7に記載の水性組成物。
【請求項9】
20℃にて少なくとも10重量%の水溶解度を伴う、0.5~5重量%の少なくとも一種のポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体をさらに含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項10】
100重量%の水性組成物に基づいて、
- 20~89重量%の水、
- 5~75重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
- 0.05~5重量%の水不溶性液体消泡剤、
- 0.005~3重量%の少なくとも一種の水溶性多糖、
- 0.05~0.6重量%の無機ナノ粒子、
- 0.1~10重量%の少なくとも一種の水溶性ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体、及び
- 0~10重量%のさらなる添加剤
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項11】
空気連行剤を含むか又は含まない無機バインダー組成物の空気量を安定化させるための水性組成物の使用であって、
前記水性組成物を前記無機バインダー組成物へと混和することを特徴とし、
ここで、前記水性組成物が、100重量%の前記水性組成物に基づいて、
- 5~75重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
- 0.05~5重量%の少なくとも一種の水不溶性液体消泡剤、及び
- 0.005~3重量%の少なくとも一種の水溶性多糖
- 0.05~0.6重量%の無機ナノ粒子、及び
- 0.1~10重量%の少なくとも一種の水溶性ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体
を含む、
使用。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の水性組成物、及び空気連行剤を含む、無機バインダー組成物。
【請求項13】
セメント質のバインダーであり、水との混合の直後に測定して4~10%の空気量を有することを特徴とする、請求項12に記載の無機バインダー組成物。
【請求項14】
水との前記混合の後に、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性組成物を含む無機バインダー組成物を硬化させることによって得られる、造形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン性ポリマー、水不溶性消泡剤及び多糖類を含む水性組成物、並びに無機バインダー組成物中のその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
建設材料、例えば、コンクリート又はモルタルのための混和剤は、フレッシュな材料及び硬化した材料の質、例えば、強度、流動、水密性、耐化学性などを改善させるために広範に使用される。混和剤の大部分は、水溶液又は分散物として使用される。残念ながら、いくつかの混和剤は、空気が導入される傾向がある。空気が導入されるというこの傾向は、典型的には、いくつかの流動化剤、特に、櫛型ポリマー構造を有する非常に有効な高流動化剤についてあてはまる。しかし、高い空気量は、硬化した材料の強度及び耐久性を低減させる。したがって、典型的には、消泡剤をこのような混和剤に加える。消泡剤は、大部分はシリコーン油又は鉱油、リン酸エステル又はポリプロピレングリコール誘導体をベースとする疎水性物質である。残念ながら、これらの消泡剤は典型的には難水溶性であり、水溶液から分離する傾向を有する。これが起こる場合、消泡剤が出現し、混和剤の上に層を形成する。このように、混和剤の底の部分は、空気連行特性を有し、上の部分は、消泡特性を有する。これによって、コンクリート生産者は、硬化した材料の低い強度及び乏しい耐久性に関連する潜在的な問題に直面する。
【0003】
さらに、新たに混合したコンクリートの空気量は、多くの要因によって影響を受ける。例えば、温度、加えた水の量、骨材粒度、セメントのタイプ、粉砕助剤又は他の混和剤は、空気の変動をもたらし得る要因である。このように、組成物によって、コンクリート中の空気量は、消泡された混和剤が使用されるときでさえまだ高すぎる。
があり得る。
【0004】
混和剤中の消泡剤の使用における第2の障害は、凍結融解耐性を有するコンクリートにおいて、微細な空気細孔をマトリックスへと導入しなければならないということである。これは典型的には、空気連行剤の添加によって行われる。この場合、消泡剤は、これらの空気連行剤と負に相互作用してはならない。残念ながら、コンクリート混和剤と消泡剤及び空気連行剤との組合せは、コンクリートの予測可能でない空気量をもたらすことが多い。このように、場合によって、予想外の高い空気量が得られるか、他の場合、空気量は混合時間と共に常に上昇するか、他の場合、空気量は時間と共に劇的に減少するか、又は空気量は上下する。コンクリートプラント及び現場において測定される空気量は大幅に異なり得るため、これはレディミックスコンクリートにおいて特に問題がある。コンクリートの空気量は硬化した材料の強度を直接決定するため高度に重大な意味を持つ要素であるので、これは全く不満足な状況である。
【0005】
コンクリート混和剤中の消泡剤の量を増加させる試みがなされてきた。
【0006】
欧州特許第1242330号明細書は、セメント質の組成物のための混和剤として水不溶性消泡剤及び分散剤と混和される可溶化剤の使用について記載している。可溶化剤として、アルコキシル化物質又はスチレン-マレイン酸コポリマーについて記載している。
【0007】
米国特許第6,875,801号明細書は、混和剤組成物中の水不溶性消泡剤を安定化させるアミン可溶化剤を使用している。
【0008】
国際公開第2013/158870号パンフレットは、a)ポリアルキレンオキシドを含む水分散性消泡剤、b)ポリカルボキシレートセメント分散剤、及びc)8~150ナノメートルの平均サイズを有するコロイド状ナノ粒子を含むセメント質の組成物を修飾するための添加組成物について記載している。
【0009】
改良が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
望ましくない量の空気を連行しない建設材料のための安定な消泡された混和剤が必要とされている。さらに、これは、輸送及び配置の間の空気量を劇的に増加又は減少させることなく、予測可能な空気量を得るために空気連行剤と適合性でなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、建設材料において使用されるとき、望ましくない大量の空気が導入されない安定な消泡された水性組成物を提供することは本発明の課題である。さらに、消泡された組成物は、空気が連行された高品質のコンクリートを生成するために空気連行剤と適合性であるべきである。
【0012】
この課題は請求項1に記載されている水性組成物によって遂行することができることが驚いたことに見出された。
【0013】
アニオン性ポリマー及び水不溶性液体消泡剤を含む水性組成物への多糖類の添加は、驚いたことに貯蔵安定な組成物を生じさせる。これによって、組成物の安定性に影響を与えることなく、不溶性消泡剤の量を増加させることを可能とする。増加した量の消泡剤は、無機バインダー組成物中の望ましくない高い空気量を防止する。安定な組成物は、それが貯蔵されているドラム又は容器の至るところに、一定量の消泡剤を保証する。
【0014】
さらに、本発明の水性組成物は、驚いたことに空気連行剤と高度に適合性である。フレッシュな建設材料へと導入された空気の量は予測可能であり、空気量は、それどころか60分間若しくはそれ超まで安定である。このように、品質を喪失することなく輸送及び配置することができる空気が連行された高品質のコンクリート又はモルタルを生成することができる。
【0015】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の対象である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の対象は、100重量%の組成物に基づいて、
- 5~75重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
- 0.05~5重量%の少なくとも一種の水不溶性液体消泡剤、及び
- 0.005~3重量%の少なくとも一種の水溶性多糖
を含む水性組成物である。
【0017】
用語「水不溶性」は、本文献において、20℃にて0.6g超~100gの蒸留水と共に加えられたとき、完全に溶解しない物質の特性を指す。
【0018】
アニオン性ポリマーは、100%の水性組成物に基づいて、好ましくは、10~70重量%、より好ましくは、12~65重量%で存在する。
【0019】
アニオン性ポリマーは好ましくは、建設材料、例えば、コンクリート、モルタル、セメントペースト又はセッコウ製品の性能を改善するために、建設業において使用される混和剤である。
【0020】
このようなアニオン性ポリマーについての例は、分散化剤、流動化剤、減水剤、高流動化剤、ワーカビリティ(加工性)保持剤、ポリマー抑制剤、安定剤、ポリマー収縮低減剤又はレオロジー改善剤である。このような混和剤は、建設業において周知である。
【0021】
アニオン性ポリマーは好ましくは、流動化剤、減水剤、高流動化剤及びワーカビリティ(加工性)保持剤を含む群から選択される。
【0022】
アニオン性ポリマーは好ましくは、-COOM、-SO-OM、-O-PO(OM)及び-PO(OM)-基を含む群から選択される少なくとも1個のアニオン基を含み、Mは、互いから独立して、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基、好ましくは、H及び/又はアルカリ金属イオンである。
【0023】
例示的なアニオン性ポリマーは、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化ビニルコポリマー、ホスホン酸基を含むポリアルキレングリコール、リン酸基を含むポリアルキレングリコール、ポリカルボキシレート、又はポリアルキレングリコール側鎖を含むアニオン性櫛型ポリマーである。
【0024】
用語ポリカルボキシレートは、複数個のカルボン酸基を含むポリマーを指す。カルボン酸基は好ましくは、重合モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸に由来する。
【0025】
好ましくは、少なくとも1種のアニオン性ポリマーは、ポリアルキレングリコール側鎖を含むアニオン性櫛型ポリマーである。
【0026】
用語「ポリアルキレングリコール側鎖を含むアニオン性櫛型ポリマー」は、ポリマーの骨格及びポリアルキレングリコールの側鎖においてアニオン基を含むポリマーを指す。アニオン基は好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及びホスホン酸基からなる群から選択される。側鎖は好ましくは、エステル、エーテル、イミド及び/又はアミド基を介してポリマー骨格に結合している。
【0027】
ポリアルキレングリコール側鎖は好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコール又はエチレングリコール及びプロピレングリコールからなる。最も好ましいのは、ポリエチレングリコールの側鎖である。
【0028】
好ましくは、櫛型ポリマーは、式Iの構造単位
【化1】
及び式IIの構造単位
【化2】
を含み、式中、
は、それぞれの場合において互いから独立して、-COOM、-SO-OM、-O-PO(OM)及び/又は-PO(OM)であり、
及びRは、それぞれの場合において互いから独立して、H、-CH-COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
及びRは、それぞれの場合において互いから独立して、H、又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
及びRは、それぞれの場合において互いから独立して、H、-COOM、又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
或いはR及びRが、-CO-O-CO-(無水物)への環を形成する場合、
Mは、それぞれの場合において互いから独立して、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基であり、
p=0、1又は2であり、
o=0又は1であり、
m=0、又は1~4の数であり、
n=2~250、より特定すると、10~200であり、
Xは、それぞれの場合において互いから独立して、-O-又は-NH-であり、
は、それぞれの場合において互いから独立して、H、C~C20-アルキル基、-シクロヘキシル基又は-アルキルアリール基であり、
A=C~C-アルキレンである。
【0029】
好ましくは、構造単位Iと構造単位IIのモル比は、0.7~10:1、より好ましくは、1~8:1、特に、1.5~5:1である。
【0030】
特定の利点を伴って、櫛型ポリマーは、アニオン基を含むモノマー、及びポリアルキレングリコール鎖を含むモノマーのフリーラジカル共重合によって生成される。例示的なポリマーは、例えば、欧州特許第2522680号明細書に記載されている。
【0031】
また特定の利点を伴って、櫛型ポリマーは、1つの末端においてヒドロキシル基又はアミノ基を含む少なくとも1種のポリアルキレングリコールによる、カルボン酸基を含むポリマーのポリマー類似エステル化及び/又はアミド化によって生成される。例示的なポリマーは、例えば、欧州特許第1138697号明細書に記載されている。
【0032】
また特定の利点を伴って、櫛型ポリマーは、ブロック構造又はグラジエント構造を有する。このようなポリマーは典型的には、リビングラジカル重合によって生成される。例示的なポリマーは、例えば、国際公開第2015/144886号パンフレット及び国際公開第2017/050907号パンフレットに記載されている。
【0033】
好ましくは、アニオン性ポリマーは、カルボン酸及び/又は塩の基及びポリエチレングリコール側鎖を含むアニオン性櫛型ポリマーである。
【0034】
このようなポリマーは、無機バインダー組成物のための特に良好な流動化剤である。
【0035】
溶離液としてpH12での0.1NのNaNOを伴う、ポリエチレングリコール標準に対するSECで測定したアニオン性櫛型ポリマーの質量平均分子量(M)は、好ましくは、5000~200000g/mol、より好ましくは、8000~150000g/mol、特に好ましくは、10000~130000g/mol、特に、12000~80000g/molである。
【0036】
このようなアニオン性ポリマーを含む本発明の水性組成物は、良好な保存安定性を示し、無機バインダー、特に、モルタル又はコンクリートのための消泡された流動化剤又は高流動化剤として完全に適している。
【0037】
好ましくは、水性組成物は、複数種のアニオン性ポリマー、特に、2種以上のアニオン性ポリマーを含む。
【0038】
このようなポリマーの組合せは、特定の用途の必要性への水性組成物の性能を適合させるのに特に有用である。
【0039】
少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤は好ましくは、鉱油又は植物性油、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、アルコキシル化脂肪酸、アルコキシル化脂肪アルコール、プロピレングリコール及び/若しくはブチレングリコールの単位を含むポリアルキレングリコール誘導体、アセチレン化合物、有機シリコーン化合物又は有機リン酸エステルである。
【0040】
好ましくは、水不溶性液体消泡剤は、有機リン酸エステル、特に、リン酸トリイソブチル(TiBP)又はリン酸トリブチル(TBP)である。
【0041】
特に好ましいのは、リン酸トリブチル(TBP)である。
【0042】
好ましくは、消泡剤は、100重量%の水性組成物に基づいて、0.1~3重量%、より好ましくは、0.2~2重量%、さらにより好ましくは、0.25~1重量%で存在する。
【0043】
これは、水不溶性液体消泡剤が、水性組成物に加えられる前に非イオン性乳化剤と混合される場合有利であり得る。好ましいのは、100部のプレミックスが得られる、80~99.5部の不溶性消泡剤と0.5~20部の非イオン性乳化剤との重量比である。これは、水性組成物の安定性をさらに改善し得る。
【0044】
水溶性多糖類は、天然又は修飾された多糖類である。例示的な多糖類は、水溶性セルロースエーテル又はエステル、加工デンプン、ヘミセルロース又はガムが関与する。
【0045】
多糖類の投与量は、水性添加組成物中の多糖類のタイプ、並びに他の成分のタイプ及び投与量によって決まる。
【0046】
0.005重量%未満の投与量は、組成物を安定化させるのに不十分であり得、3重量%超の投与量は、水性組成物の望ましくない高い粘度をもたらし得る。
【0047】
多糖類は好ましくは、特に、ウェランガム、キサンタンガム、ジウタンガム及びジェランガム、好ましくは、ジウタンガムからなる群から選択される、微生物多糖類である。
【0048】
このようなガムは、水性組成物の部分であり得る多くの化学物質と適合性である水溶性であり、望ましくない方法で無機バインダーの状態に影響を与えない。これらは低い投与量でさえ組成物中の消泡剤を安定化させるのに非常に有効である。
【0049】
有利なことには、多糖類は、100重量%の水性組成物に基づいて、0.006~0.2重量%、好ましくは、0.007~0.15重量%、より好ましくは、0.008~0.1重量%、特に好ましくは、0.009~0.09重量%で存在する。
【0050】
好ましくは、多糖類は、ジウタンガムである。水性組成物中のジウタンガムの投与量は好ましくは、0.01~0.07重量%である。
【0051】
このような投与量で使用されるジウタンガムは、水性組成物中の不溶性液体消泡剤を安定化させる最適な性能を有する。より低い投与量は、いくつかの組成物において不十分であり得、より高い投与量は、望ましくない高い粘度をもたらし得る。
【0052】
低い投与量は、コストの最適化をさらに可能とする。
【0053】
好ましくは、微生物多糖類は、水性組成物中の唯一の多糖類である。
【0054】
有利なことには、水性組成物は、細菌成長を回避するのに十分な量で殺生物剤を含む。
【0055】
水性組成物が、100重量%の水性組成物に基づいて、0.05~5重量%、好ましくは、0.1~2重量%、より好ましくは、0.15~1重量%、さらにより好ましくは、0.2~0.8重量%、特に、0.25~0.6重量%の無機ナノ粒子をさらに含む場合、これは有利である。
【0056】
0.05重量%未満の投与量は、不十分であり得、一方、高い投与量はコストを不必要に増加させる。
【0057】
用語「無機ナノ粒子」は、典型的には、サイズが1~1000nmである無機粒子を指す。このような粒子は、液体に分散されるとき、目に見えるほどに沈殿させず、容易に濾過することができない。
【0058】
無機ナノ粒子は、水性組成物中で不活性な任意の無機材料のものであり得る。好ましくは、無機ナノ粒子は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)又は二酸化チタン(TiO)の粒子である。
【0059】
好ましくは、無機ナノ粒子は、アモルファスシリカ、特に、沈降シリカのものである。
【0060】
好ましくは、無機ナノ粒子の平均粒径は、100nm未満、より好ましくは、80nm未満、さらにより好ましくは、50nm未満、特に好ましくは、30nm未満、特に、10nm未満又はさらには8nm未満である。
【0061】
特に好ましいのは、約3~7nmの平均粒径を有する無機ナノ粒子である。
【0062】
このような寸法のナノ粒子は、特に大きな表面積を実現し、組成物中の不溶性消泡剤を安定化させることを助ける。これらはまた、本発明の水性組成物を含むモルタル又はコンクリートにおける空気の安定性を改善させる。
【0063】
低い平均粒径、特に、10nm未満、又はさらには7nm若しくはそれ未満は、さらなる混濁度を導入することなく、特に安定な組成物を可能とする。
【0064】
無機ナノ粒子と多糖類との組合せは、組成物中のそれぞれの低い投与量を可能とし、これはコストを低減させ、また、溶液の高すぎる粘度を防止する。
【0065】
驚いたことに、多糖類と組み合わせた無機ナノ粒子は、水性組成物を含む空気が連行されたコンクリート又はモルタルにおける空気の安定性を改善させる。
【0066】
好ましくは、水性組成物は、20℃にて少なくとも10重量%の水溶解度を伴う、0.1~10重量%、より好ましくは、0.5~5重量%の少なくとも1種のポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体をさらに含む。
【0067】
好ましくは、ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体は、300~5000g/mol、より好ましくは、500~3000g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0068】
好ましくは、ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体は、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール単位を含む。
【0069】
好ましくは、異なるポリアルキレングリコールのブレンドを使用する。
【0070】
水溶性ポリアルキレングリコールは、水性組成物の安定性をさらに増加させることができるだけでなく、コンクリート又はモルタルにおける空気量のレギュレーターとしてさらに作用することができる。
【0071】
水性組成物は、特に、コンクリート混和剤又はモルタル混和剤中で使用されるさらなる成分を含み得る。例示的なさらなる成分は、促進剤、収縮低減剤、界面活性剤、着色剤、抑制剤、レオロジー調節剤、ポンピング助剤及び腐食防止剤を含む。
【0072】
水性組成物は好ましくは、100重量%の組成物に基づいて、
- 20~89重量%の水、
- 5~75重量%、好ましくは、10~70重量%、より好ましくは、12~65重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、好ましくは、アニオン基及びポリアルキレングリコール側鎖を含む少なくとも一種の櫛型ポリマー、
- 0.05~5重量%、好ましくは、0.1~3重量%、より好ましくは、0.2~2重量%、さらにより好ましくは、0.25~1重量%の水不溶性液体消泡剤、特に、有機リン酸エステル、好ましくは、TBP、
- 0.005~3重量%、特に、0.01~0.07重量%の少なくとも一種の水溶性多糖類、特に、微生物多糖類、好ましくは、ジウタン、ウェラン又はキサンタンガム、より好ましくは、ジウタンガム、
- 0.05~5重量%、好ましくは、0.1~2重量%、より好ましくは、0.15~1重量%、さらにより好ましくは、0.2~0.8重量%、特に、0.25~0.6重量%の、好ましくは、3~7nmの中位粒径を有する無機ナノ粒子、特に、アモルファスシリカ、
- 0.1~10重量%、好ましくは、0.5~5重量%の少なくとも一種の水溶性ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体、並びに
- 0~10重量%のさらなる添加物
を含む。
【0073】
水性組成物は、均質な液体が得られるまで全ての成分を単純に混合することによって調製することができる。
【0074】
多糖類をアニオン性ポリマーの水溶液に最初に溶解し、多糖類の完全な溶解の後、他の成分を添加することは有利であり得る。
【0075】
これは、水溶性ポリマー、ナノ粒子及び多糖類を水溶液又は分散物として使用する場合また有利であり得る。
【0076】
好ましくは、アニオン性ポリマーは、20~80重量%、より好ましくは、30~75重量%の溶液として使用される。
【0077】
好ましくは、無機ナノ粒子は、5~50重量%、より好ましくは、10~30重量%のコロイド状分散物として使用される。
【0078】
好ましくは、多糖類は、0.08~0.5重量%、より好ましくは、0.1~0.2重量%の殺生物剤を含む溶液として使用される。
【0079】
多糖類が、水を加える前に、水溶性液体、好ましくは、アルキレングリコール、オリゴアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールに最初に均質に分散され、多糖類が完全に溶解するまで混合物を撹拌する場合、これは有利であり得る。
【0080】
本発明のさらなる態様は、無機バインダー組成物、特に、セメント及び/又はセッコウを含むバインダー組成物における水性組成物の使用である。
【0081】
好ましくは、本発明の水性組成物は、無機バインダーの重量に基づいて、0.2~5重量%、より好ましくは、0.25~4重量%、さらにより好ましくは、0.3~2重量%で使用される。
【0082】
無機バインダー組成物は、少なくとも1種の無機バインダーを含む。表現「無機バインダー」は、特に、水の存在下で水和反応において反応して、固体水和物又は水和物相を形成するバインダーを指す。これは、例えば、水硬性バインダー(例えば、セメント若しくは水硬性石灰)、潜在水硬性バインダー(例えば、スラグ)、ポゾランバインダー(例えば、フライアッシュ)、又は非水硬性バインダー(例えば、セッコウ若しくは水をまぜた石灰)であり得る。
【0083】
より特定すると、無機バインダー又はバインダー組成物は、水硬性バインダー、好ましくは、セメントを含む。特に好ましいのは、≧35重量%のセメントクリンカ画分を有するセメントである。セメントは、より特定すると、タイプCEM I、CEM II、CEM III、CEM IV又はCEM Vのものである(規格EN197-1による)。代替の規格、例えば、ポルトランドセメントタイプについてASTM C150、又はブレンドされた水硬性セメントについてASTM C595、及び他の国家規格、例えば、インド規格又は日本規格JISによって生成されるセメントは、同等に適切である。
【0084】
全体として無機バインダー中の水硬性バインダーの画分は、有利には、少なくとも5重量%、より特定すると、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも35重量%、特に、少なくとも65重量%である。さらなる有利な実施形態によると、無機バインダーは、ある程度、≧95重量%の水硬性バインダー、より特定すると、セメント又はセメントクリンカからなる。
【0085】
しかし、無機バインダー又は無機バインダー組成物が、他のバインダーを含むか、他のバインダーからなることがまた有利であり得る。これらは、特に、潜在水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーである。適切な潜在水硬性及び/又はポゾランバインダーの例は、スラグ、フライアッシュ及び/又はシリカ粉塵である。バインダー組成物はまた、例えば、不活性な物質、例えば、石灰石、微粉砕した石英及び/又は顔料を含み得る。1つの有利な実施形態では、無機バインダーは、5~95重量%、より特定すると、5~65重量%、非常に好ましくは、15~35重量%の潜在水硬性及び/又はポゾランバインダーを含む。有利な潜在水硬性及び/又はポゾランバインダーは、スラグ及び/又はフライアッシュである。
【0086】
無機バインダーとしてまた好ましいのは、プラスター又は無水石膏を含むバインダー、特に、無機バインダーの重量に基づいて、少なくとも50重量%、特に、少なくとも80重量%のプラスター又は無水石膏である。
【0087】
無機バインダー組成物は好ましくは、不活性な材料、例えば、無機充填剤、砂及び骨材をさらに含む。
【0088】
無機バインダー組成物は好ましくは、モルタル又はコンクリート組成物である。
【0089】
無機バインダー組成物は、特に、水で作製することができ、且つ/又はワーカブルである無機バインダー組成物である。
【0090】
無機バインダー組成物中の水とバインダーの重量比は、好ましくは、0.25~0.7、より好ましくは、0.28~0.65、特に、0.30~0.60の範囲である。
【0091】
無機バインダー組成物は、添加物、特に、コンクリート又はモルタル添加物をさらに含み得る。
【0092】
例示的なさらなる添加物は、促進剤、収縮低減剤、界面活性剤、着色剤、殺生物剤、抑制剤、塗膜形成ポリマー懸濁剤、空気連行剤、レオロジー調節剤、ポンピング助剤、発泡剤若しくは腐食防止剤又はこれらの混合物を含む。
【0093】
好ましくは、無機バインダー組成物は、セメントを含むモルタル又はコンクリートである。
【0094】
本発明の別の態様は、本発明の水性組成物及び空気連行剤を含む無機バインダー組成物である。
【0095】
好ましくは、この無機バインダー組成物中の無機バインダーはセメント質のバインダーであり、無機バインダー組成物は、水と混合した直後に測定して4~10%の空気量を有する。
【0096】
このように、本発明の水性組成物は、無機バインダー組成物の空気量に影響を与えない。しかし、本発明の水性組成物が無機バインダー組成物の空気量を安定化させることがまた可能である。
【0097】
このように、本発明の水性組成物は、任意選択で空気連行剤を含む、無機バインダー組成物の空気量を安定化させるプロセスにおいて使用し得、前記水性組成物を前記無機バインダー組成物へと混和することを特徴とする。好ましくは、本発明の水性組成物は、前記プロセスにおいて無機バインダーの重量に基づいて、0.2~5重量%、より好ましくは、0.25~4重量%、さらにより好ましくは、0.3~2重量%で使用される。
【0098】
本発明の水性組成物は、混合水の添加の前に、混合水若しくはその一部と一緒に、及び/又は混合水の添加の直後に、無機バインダー組成物へと混和することができる。混合水の前に又は一緒に水性組成物を加えることが好ましい。
【0099】
本発明のさらなる態様は、水と混合した後、本発明の水性組成物を含む無機バインダー組成物を硬化させることによって得ることができる、造形物品、より特定すると、建造物の構成物に関する。
【0100】
建造物は、例えば、橋、建物、トンネル、道路、又は滑走路であり得る。
【0101】
本発明のさらなる有利な実施形態は、本明細書の下記の実施例から明らかである。
【実施例
【0102】
下記の実施例は、限定的なものではなく、本発明を例示する。
【0103】
1.材料
PCE-1:カルボン酸基及びポリエチレングリコール側鎖を有する53.4重量%の櫛型ポリマータイプの高流動化剤と、6.6重量%のアニオン性ポリマーとを含む60重量%の水性高流動化剤溶液。PCE-1のpHは、約3.5である。
SiOナノ粒子:水中の15重量%のコロイド状アモルファスナノシリカ、pH=9.5を有する透明な水性液体。
ポリアルキレングリコールブレンド:エチレングリコール及びプロピレングリコールをベースとする非イオン性水溶性ポリアルキレングリコールのブレンド。
消泡剤:少なくとも85重量%のTBPを含む非イオン性乳化剤とのリン酸トリブチル(TBP)のブレンド。
Sika(登録商標)Air-260:空気連行剤、Sika Corporation、USAから入手可能。
【0104】
2.方法
水性組成物の安定性を、視覚的に判断した。約200mlの水性組成物を調製し、それぞれ、20℃及び37℃にて250ml容量のガラス製ボトル中に貯蔵した。表面上の分離のより良好な可視化のために、着色剤を消泡剤に加えた。規定の時間間隔の後、試料を相分離について点検及び検査した。
【0105】
モルタルのスランプは、ASTM C1437によって測定した。
【0106】
モルタルの空気量は、ASTM C185によって測定した。
【0107】
コンクリートの空気量は、ASTM C231によって測定した。
【0108】
3.水性組成物の配合及び安定性
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
4.消泡された高流動化剤組成物の調製
SP-1~SP-3の調製
PCE-1及び水をビーカー中で混合し、次に、SiOナノ粒子、消泡剤、及び殺生物剤を、撹拌した混合物に表1に示した量で加えた。混合物を機械式撹拌機で均質となるまで撹拌した。
【0112】
SP-4~SP-6の調製
ジウタンガムを撹拌しながら水に溶解し、0.1重量%の溶液を調製した。次いで、PCE-1、SiOナノ粒子、消泡剤、ポリアルキレングリコールブレンド、殺生物剤及び水を、撹拌した混合物に表1に示した量で加えた。混合物を均質となるまで撹拌した。
【0113】
SP-7及びSP-8の調製
PCE-1及び水をビーカー中で混合し、次に、SiOナノ粒子、消泡剤、ポリアルキレングリコールブレンド及び殺生物剤を、撹拌した混合物に表2に示した量で加えた。混合物を機械式撹拌機で均質となるまで撹拌した。
【0114】
SP-9及びSP-10の調製
ジウタンガムを撹拌したPCE-1溶液に加え、ガムが完全に溶解するまで混合物を撹拌した。次に、水、SiOナノ粒子、消泡剤、ポリアルキレングリコールブレンド及び殺生物剤を、撹拌した混合物に表2に示した量で加えた。混合物を機械式撹拌機で均質となるまで撹拌した。
【0115】
5.コンクリート試験
消泡された高流動化剤組成物の性能を、空気連行剤を伴わない及び空気連行剤を添加したコンクリートにおいて試験した。
【0116】
コンクリートの詳細を、表3において示す。所定の時間間隔において測定した空気量を、表4及び5において示す。表4は、空気連行剤を伴わない空気量を示し、表5は、空気連行剤を伴う空気量を示す。
【0117】
【表3】
【0118】
コンクリートの調製
砂及び粗骨材及び90%の水をドラムミキサーにおいて28rpmのスピードで1分間混合し、次いで、セメントを加え、コンクリートをさらに1分間混合し、次いで、水の残りを加え、コンクリートを28rpmのスピードでさらに3分間混合し、最終的に、混和剤を表4及び表5に示した量で加え、コンクリートを28rpmのスピードでさらに3分間混合した。ミキサーを停止し、測定のための試料を採取した。次に、ミキサースピードを最後の測定まで8rpmに設定し、試料を採取するためのみに停止した。
【0119】
試験結果
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
6.モルタル試験
消泡された高流動化剤組成物の性能を、空気連行剤の添加を伴う及び伴わないモルタルにおいて試験した。
【0123】
モルタルの組成を、表6において示す。所定の時間間隔において測定した最初のスランプ及び空気量を、表7及び8において示す。表8は、空気連行剤を伴わない空気量を示し、表9は、空気連行剤を伴う空気量を示す。
【0124】
【表6】
【0125】
モルタルの調製
セメント及び砂を、Hobartミキサーにおいてスピード1で1分間混合し、次いで、表8及び表9において示した量の混和剤を含んだ水を加え、モルタルをスピード1でさらに3分間混合した。
【0126】
それぞれの測定の前に、モルタルを手で30秒間練り直しした。
【0127】
試験結果
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]100重量%の水性組成物に基づいて、
- 5~75重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
- 0.05~5重量%の少なくとも一種の水不溶性液体消泡剤、及び
- 0.005~3重量%の少なくとも一種の水溶性多糖
を含む、水性組成物。
[2]前記アニオン性ポリマーが、流動化剤、減水剤、高流動化剤及び加工性保持剤を含む群から選択されることを特徴とする、上記[1]に記載の水性組成物。
[3]少なくとも一種のアニオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール側鎖を含むアニオン性櫛型ポリマーであることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の水性組成物。
[4]前記水不溶性液体消泡剤が、有機リン酸エステル、特に、リン酸トリイソブチル又はリン酸トリブチルであることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の水性組成物。
[5]前記水溶性多糖が、微生物多糖であり、好ましくは、ウェランガム、キサンタンガム、ジウタンガム及びジェランガムからなる群から選択される微生物多糖であり、好ましくは、ジウタンガムからなる群から選択される微生物多糖であることを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の水性組成物。
[6]前記多糖が、100重量%の前記水性組成物に基づいて、0.006~0.2重量%、好ましくは、0.007~0.15重量%、より好ましくは、0.008~0.1重量%、特に好ましくは、0.009~0.09重量%で存在することを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の水性組成物。
[7]100重量%の前記水性組成物に基づいて、0.05~5重量%、好ましくは、0.1~2重量%、より好ましくは、0.15~1重量%、さらにより好ましくは、0.2~0.8重量%、特に、0.25~0.6重量%の無機ナノ粒子をさらに含むことを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の水性組成物。
[8]前記無機ナノ粒子が、アモルファスシリカのナノ粒子、特に、沈降シリカのナノ粒子であることを特徴とする、上記[7]に記載の水性組成物。
[9]前記無機ナノ粒子が、100nm未満、好ましくは、80nm未満、より好ましくは、50nm未満、特に好ましくは、30nm未満、特に、10nm未満又は8nm未満の平均粒径を有することを特徴とする、上記[7]又は[8]に記載の水性組成物。
[10]20℃にて少なくとも10重量%の水溶解度を伴う、0.1~10重量%、好ましくは、0.5~5重量%の少なくとも一種のポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体をさらに含むことを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の水性組成物。
[11]100重量%の水性組成物に基づいて、
- 20~89重量%の水、
- 5~75重量%の少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
- 0.05~5重量%の水不溶性液体消泡剤、
- 0.005~3重量%の少なくとも一種の水溶性多糖、
- 0.05~5重量%の無機ナノ粒子、
- 0.1~10重量%の少なくとも一種の水溶性ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体、及び
- 0~10重量%のさらなる添加剤
を含む、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の水性組成物。
[12]無機バインダー組成物、特に、セメント及び/又はセッコウを含むバインダー組成物における、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の水性組成物の使用。
[13]上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の水性組成物、及び空気連行剤を含む、無機バインダー組成物。
[14]セメント質のバインダーであり、水との混合の直後に測定して4~10%の空気量を有することを特徴とする、上記[13]に記載の無機バインダー組成物。
[15]水との前記混合の後に、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の水性組成物を含む無機バインダー組成物を硬化させることによって得られる、造形物品、特に、建造物の構成物。