(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】3D回折データを取得するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20240516BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240516BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20240516BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20240516BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H01J37/147 A
H01J37/147 B
H01J37/28 B
H01J37/26
H01J37/20 C
H01J37/20 D
H01J37/22 502H
H01J37/22 501Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021054601
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-02-16
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】バルト ブイユッセ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヘンストラ
(72)【発明者】
【氏名】ユチェン デン
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533352(JP,A)
【文献】特開2014-082143(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088159(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/309441(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/348749(US,A1)
【文献】特表2020-511770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームによってサンプルを撮像するための方法であって、
荷電粒子源から生成された荷電粒子
ビームを第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに分割することと、
前記サンプルの関心領域(ROI)に前記第1の荷電粒子ビームを照射することによって回折パターンを取得することと、
前記ROIに前記第2の荷電粒子ビームを照射することによってサンプル画像を取得することと、を備える、方法。
【請求項2】
さらに、前記サンプル画像に基づいて、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームに対する前記サンプルの位置を調整することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、サンプル平面内の軸の周りで前記サンプルを傾斜させることと、前記傾斜したサンプルに前記第2の荷電粒子ビームを照射することによって別のサンプル画像を取得することと、前記サンプルを傾ける前後に取得された前記サンプル画像を比較することによって前記サンプルの位置を調整することと、を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルの位置を調整することが、前記荷電粒子源の放射軸に垂直な平面内で前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームに対して前記サンプルを平行移動させることを含む、請求項2または3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームが、異なる入射角で前記ROIを照射する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の荷電粒子ビームが、前記ROIを照射するときに平行ビームであり、前記第2の荷電粒子ビームが、前記ROIを照射するときに非平行ビームである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームが、サンプル平面の近くに異なる焦点面を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回折パターンおよび前記サンプル画像が、前記サンプルの下流に配置された検出器を使用して取得される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記荷電粒子源によって生成された前記荷電粒子
ビームを二焦点ビームフォーマによって分割することと、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームの焦点特性を前記二焦点ビームフォーマによって異なって調整することと、を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記二焦点ビームフォーマによって前記第2の荷電粒子ビームを前記第1の荷電粒子ビームから離れるように偏向させることを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
荷電粒子ビームによってサンプルを撮像するための方法であって、
前記サンプルの関心領域(ROI)に第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームを同時に照射することによって第1の回折パターンおよび第1のサンプル画像を取得することを備え、
前記第1の回折パターンは前記ROIに前記第1の荷電粒子ビームを照射することによって取得され、前記第1のサンプル画像は前記ROIに前記第2の荷電粒子ビームを照射することによって取得され、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームは荷電粒子源から生成された荷電粒子ビームを分割することによって形成される、方法。
【請求項12】
さらに、前記第1のサンプル画像に基づいて、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームに対する前記サンプルの位置を調整することを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルの位置を調整することが、前記荷電粒子源の放射軸に直交する平面内で前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームをシフトさせることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記荷電粒子源の放射軸に直交する軸の周りで前記サンプルを連続的に傾斜させることと、前記傾斜したサンプルの第2の回折パターンおよび第2のサンプル画像を取得することと、前記第1のサンプル画像と前記第2のサンプル画像を比較することによって前記サンプルの位置を調整することと、を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記荷電粒子源の放射軸に直交する軸の周りで前記サンプルを連続的に傾斜させることと、前記ROIに前記第1の荷電粒子ビームのみを照射することによって前記サンプルの第2の回折パターンを取得することと、を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
サンプルを撮像するためのシステムであって、
荷電粒子源および二焦点ビームフォーマを含む光学カラムであって、前記二焦点ビームフォーマが、前記荷電粒子源から生成された荷電粒子
ビームを第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに分割する、光学カラムと、
前記光学カラムに結合されたサンプルチャンバ内に配置されたサンプルと、
前記サンプルの下流に配置された検出器と、
非一時的メモリにコンピュータ可読命令が記憶されたコントローラであって、前記サンプルの関心領域(ROI)に前記第1の荷電粒子ビームを照射し、前記検出器によって回折パターンを取得し、前記ROIに前記第2の荷電粒子ビームを照射し、前記検出器によってサンプル画像を取得する、ように構成されたコントローラと、を備える、システム。
【請求項17】
前記システムが、さらに、前記光学カラムの主軸に直交する軸の周りで前記サンプルを傾斜させるためのサンプルホルダを含み、前記コントローラが、さらに、前記サンプルホルダによって前記サンプルを傾斜させ、異なる傾斜角での複数の回折パターンおよび複数のサンプル画像を取得するように構成されている、請求項
16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラが、さらに、前記複数のサンプル画像に基づいて結晶シフトを判定し、前記結晶シフトに基づいて、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームに対するサンプルの位置を調整するように構成されている、請求項
17に記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラが、さらに、前記複数のサンプル画像に基づいて前記複数の回折パターンから1つ以上の回折パターンを除去して回折傾斜系列を形成するように構成されている、請求項
17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般に、3D回折データを取得するための方法およびシステムに関し、より具体的には、回折傾斜系列を取得しながら結晶位置を追跡および補正することに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶を形成する分子の構造は、3D回折データ、すなわち、複数の傾斜角で取得された結晶の回折パターンに基づいて解決されることができる。回折パターンは、結晶の任意の非結晶軸の周りにサンプルを傾けながら、電子ビームなどの荷電粒子ビームを結晶に照射することによって取得されることができる。高品質の回折パターンを得るためには、入射ビームのサイズが結晶のサイズに匹敵する必要がある。しかしながら、調査中の結晶は、データ取得中に、サンプルステージの偏心および/またはサンプルドリフトによる移動によって引き起こされる入射ビームに対してシフトする可能性がある。
【0003】
結晶シフトを補正する1つの方法は、サンプルを傾ける前後に撮像したサンプル画像を比較することによってシフトを追跡し、入射ビームおよび/またはサンプル位置を調整することによってシフトを補正することである。しかしながら、この方法は、撮像システムを回折モードと撮像モードとの間で頻繁に切り替える必要があるため、時間がかかる場合がある。総取得時間が長いと、サンプルの放射線による損傷が増加し、より大きな結晶シフトを導入する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、3D回折データを取得するための方法は、荷電粒子源から生成された荷電粒子を第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに分割することであって、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームが、サンプル平面の近くに異なる焦点面を有することと、サンプルの関心領域(ROI)に第1の荷電粒子ビームを照射することによって回折パターンを取得することと、ROIに第2の荷電粒子ビームを照射することによってサンプル画像を取得することと、を備える。荷電粒子源から生成された荷電粒子ビームは、二焦点ビームフォーマによって分割される。二焦点ビームフォーマは、第1および第2の荷電粒子ビームの一方または双方に四重極場を個別に適用することができる。さらに、二焦点ビームフォーマは、第1および第2の荷電粒子ビームの一方または双方を個別に偏向させることができる。そのため、第1および第2の荷電粒子ビームは、異なる入射角でサンプルの同じROIを照射する。回折パターンおよびサンプル画像は、1つの検出器を使用して同時に取得されることができる。結晶の位置変化は、サンプル画像に基づいて追跡および補正されることができる。このようにして、3D回折データの総データ取得時間を短縮することができる。さらに、結晶位置を適時に追跡および補正することは、狭い入射ビームによって高品質の回折パターンが取得されることを可能にする。
【0005】
上記の概要は、詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供されていることを理解されたい。特許請求される主題の主要なまたは本質的な特徴を特定することを意味するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。さらにまた、特許請求される主題は、上記または本開示の任意の部分で言及された任意の欠点を解決する実装に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、x-z平面での3D回折データ取得のための二焦点マルチビーム荷電粒子システムを示している。
【
図2】
図2は、y-z平面での
図1の二焦点マルチビーム荷電粒子システムを示している。
【
図3A】
図3Aは、x-z平面での
図1の二焦点マルチビーム荷電粒子システムの第1および第2の荷電粒子ビームの入射角を示している。
【
図3B】
図3Bは、y-z平面での
図1の二焦点マルチビーム荷電粒子システムの第1および第2の荷電粒子ビームの入射角を示している。
【
図4】
図4は、x-z平面での3D回折データ取得のための二焦点マルチビーム荷電粒子システムを示している。
【
図5】
図5は、3D回折データを取得するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、二焦点マルチビーム荷電粒子システムによって取得された例示的な画像である。
【
図7】
図7は、二焦点マルチビーム荷電粒子システムを用いて3D回折データを取得するための例示的なタイムラインを示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
同様の参照符号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を指す。
【0008】
以下の説明は、サンプルの多重回折パターンを取得するためのシステムおよび方法に関する。多重回折データは、二焦点マルチビーム荷電粒子システムを使用して取得された電子回折傾斜系列などの回折傾斜系列とすることができる。そのような二焦点マルチビーム荷電粒子システムは、「Dual Beam Bifocal Charged Particle Microscope」と題された2020年3月30日に出願されたHenstraらによる米国特許出願第16/834,963号に開示されており、これは、本明細書全体において全ての目的のために参照される。二焦点マルチビーム荷電粒子システムでは、光学カラム内に配置された荷電粒子源から生成された荷電粒子は、光学カラムの主軸に沿って移動する軸方向ビームと、光学カラムの主軸から離れて移動する非軸方向ビームとに分割される。2つの荷電粒子ビームは、異なる焦点特性を有する。例えば、2つの荷電粒子ビームは、サンプル面またはその近くに異なる焦点面を有する。さらに、第1および第2の荷電粒子ビームは、異なる入射角でサンプルの関心領域(ROI)を照射する。すなわち、2つの荷電粒子ビームは、サンプル平面において互いに傾けられる。
【0009】
荷電粒子源から生成された荷電粒子は、二焦点ビームフォーマによって分割されることができる。二焦点ビームフォーマは、2つの荷電粒子ビームの一方または双方のビーム特性を個別に変更することができる。すなわち、荷電粒子ビームの1つのビーム特性は、他の荷電粒子ビームとは独立して変更されることができる。ビーム特性は、焦点特性およびビーム方向を含むことができる。二焦点ビームフォーマは、四重極場を印加することにより、荷電粒子ビームの少なくとも1つの焦点特性を調整することができる。二焦点ビームフォーマは、双極子場を印加することにより、主軸に対して荷電粒子ビームの少なくとも1つをさらに偏向させることができる。一例では、二焦点ビームフォーマは、荷電粒子ビームの1つに四重極場を印加し、二焦点ビームフォーマの下流に配置された多重極素子は、荷電粒子ビームを円筒対称ビームに変更する。二焦点ビームフォーマと複数の素子の複合効果は、2つの荷電粒子ビームに、サンプル面の近くに異なる焦点面を有させる。
【0010】
軸方向ビームおよび非軸方向ビームは、異なる入射角と異なるビーム発散によってサンプルのROIを照射する。回折パターンおよびサンプル画像は、サンプル面の下流に配置された検出器上に形成されることができる。回折パターンは、2つの荷電粒子ビームの一方によって形成されることができ、サンプル画像は、他方の荷電粒子ビームによって形成される。回折パターンは、軸方向ビームまたは非軸方向ビームのいずれかによって形成されることができる。サンプル画像の視野は、回折パターンの視野よりも大きくすることができる。サンプル画像は、ROI内の結晶の輪郭を示すことができる。一例では、回折パターンは、制限視野電子回折(SAED)パターンである。別の例では、サンプル画像は、焦点がぼけたサンプル画像である。このようにして、ROI内の結晶の回折パターンおよびサンプル画像を、検出器を使用して二焦点画像として同時に取得されることができる。
図6は、二焦点マルチビーム荷電粒子システムによって取得された例示的な二焦点画像である。画像は、結晶の回折パターンおよびサンプル画像を含む。
【0011】
図1および
図2は、それぞれ、x-zおよびy-z平面における例示的な二焦点マルチビーム荷電粒子システムを示している。二焦点ビームフォーマは、加速器の上流に配置されている。回折パターンは、軸方向の平行ビームによって形成され、サンプル画像は、非軸収束ビームによって形成される。軸方向ビームおよび非軸方向ビームは、
図3A~
図3Bに示すように、サンプル面において異なる入射角を有する。
図4は、別の例示的な二焦点マルチビーム荷電粒子システムを示しており、二焦点ビームフォーマは、加速器の下流に配置されている。いくつかの例では、回折パターンは、非軸方向ビームによって取得されることができ、サンプル画像は、軸方向ビームによって取得されることができる。いくつかの例では、軸方向ビームおよび非軸方向ビームの双方は、非平行(収束または発散)とすることができる。
【0012】
一例として、二焦点マルチビーム荷電粒子システムは、各粒子の回折パターンを評価することによって、透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド上で複数の粒子をスクリーニングするために使用されることができる。サンプル画像および回折パターンを同時に撮像することにより、撮像モードおよび回折モードの頻繁なモード切り替えが回避され、したがって、スクリーニング時間を短縮することができる。サンプル画像を使用して、各粒子に対するビームのセンタリングを改善することができる。例えば、粒子は、大きなステージ移動を必要とする距離だけ分離される場合があり、ナビゲーションに使用されるアトラスの精度は、ステージ移動後に次の粒子を照明領域内に正確に移動するには不十分な場合がある。
【0013】
別の例として、二焦点マルチビーム荷電粒子システムを使用して、サンプルシフトを追跡および補償することができる。
図5は、二焦点マルチビーム荷電粒子システムを使用して3D回折データを取得するための例示的な方法を示している。二焦点マルチビーム荷電粒子システムを使用して取得された二焦点画像は、2つの荷電粒子ビームのいずれがROIを照射するかに応じて、サンプル画像および/または回折パターンを含むことができる。二焦点画像は、ROIに第1の荷電粒子ビームが照射されたときの回折パターンを含む。二焦点画像は、ROIに第2の荷電粒子ビームが照射されたときのサンプル画像を含む。さらに、二焦点画像は、ROIが第1および第2の荷電粒子ビームの双方によって照射されたときの回折パターンおよびサンプル画像の双方を含む。傾斜軸を中心にサンプルを傾斜させながら、複数の回折パターンが取得される。各回折パターンは、サンプルが段階的に傾斜している場合には異なる傾斜角に対応し、サンプルが連続的に傾斜している場合には異なる傾斜角範囲に対応する。サンプル画像は、3D回折データ取得中に、リアルタイムで結晶シフトを追跡および補正するために、回折パターンの一部または全てと同時に取得されることができる。結晶シフトは、異なる傾斜角または傾斜範囲で取得されたサンプル画像を比較することによって推定されることができる。例えば、結晶の位置は、サンプル画像内の結晶の2D輪郭に基づいて推定される。次に、結晶シフトは、サンプル画像と参照サンプル画像との間の結晶位置の変化、ならびにサンプル画像と参照画像との傾斜角に基づいて計算されることができる。結晶シフトは、サンプルと第1および第2の荷電粒子ビームとの間の相対位置を調整することによって補正されることができる。結晶シフトを補正した後、結晶位置は、参照サンプル画像の結晶位置に戻される。第2の荷電粒子ビームによって形成されたサンプル画像に基づいて結晶シフトを追跡および補正することにより、3D回折データ取得中の撮像モードの切り替えが回避される。したがって、データ取得時間が短縮される。適時に結晶シフトを追跡および補償することは、照射面積が小さく、結晶サイズに匹敵することができるように、サンプル表面の照射面積を減らすことができる。小さい照射面積は、結晶環境から発生するバックグラウンドノイズを低減し、回折パターンの品質を向上させる。さらに、荷電粒子照射によるサンプルの損傷は、第2の荷電粒子ビームをブランキングまたは遮断することによって、および/または第1の荷電粒子ビームと比較して第2の荷電粒子ビームの強度を低減することによって低減されることができる。さらに、サンプル画像に基づいて、取得された回折パターンがサンプル画像に基づいて選択され、結晶学用の回折傾斜系列を形成することができる。
図7は、3D回折データを取得するための例示的なタイムラインを示している。
【0014】
図1を参照すると、二焦点マルチビーム荷電粒子システム100が、x-z平面に示されている。二焦点マルチビーム荷電粒子システム100は、異なる焦点特性を有する2つの荷電粒子ビームを形成するための光学カラム(図示せず)を含む。光学カラムは、荷電粒子源106と、二焦点ビームフォーマ112、集束コンポーネント120、集束カラム126、多重極素子124、およびミニコンデンサ128などの光学部品とを備える。いくつかの例では、1つ以上のレンズが、荷電粒子源106と二焦点ビームフォーマとの間に配置され、これにより、双方のビームの電流の調整が可能になる。これらのレンズは、好ましくは静電レンズである。
【0015】
荷電粒子源106によって生成された荷電粒子ビーム111は、荷電粒子源106の下流に配置された二焦点ビームフォーマによって、第1の荷電粒子ビーム101と第2の荷電粒子ビーム102とに分割される。荷電粒子源106は、電子源とすることができる。第1の荷電粒子ビーム101は、光学カラムの主軸110に沿って移動する軸方向ビームである。主軸110は、荷電粒子源106の放射軸とすることができる。主軸110は、z軸に平行である。第2の荷電粒子ビーム102は、主軸110とは異なる軸161に沿って移動する非軸方向ビームである。二焦点ビームフォーマ112は、第1および第2の荷電粒子ビームが異なる焦点特性を有するように、第1および第2の荷電粒子ビームのうちの少なくとも1つの焦点特性を変更する。二焦点ビームフォーマ112はまた、第2の荷電粒子ビームを主軸から離れるように偏向させる。すなわち、二焦点ビームフォーマ112を出る第2の荷電粒子ビームの主軸110とビーム軸161との間の角度163は、主軸110と第2の荷電粒子ビームを形成する荷電粒子ビーム111の部分のビーム軸160との間の角度162よりも大きい。
【0016】
いくつかの例では、二焦点ビームフォーマは、微小電気機械システム(MEMS)または開口レンズアレイとすることができる。荷電粒子ビームの少なくとも1つの焦点特性を変更するために、二焦点ビームフォーマは、ビームの対応する焦点特性が異なるように、ビームの少なくとも1つを集束、非点収差、および/またはさもなければ変更する荷電粒子ビームの少なくとも1つに少なくとも四重極レンズ効果を印加することができる。四重極レンズ効果は、第2の荷電粒子ビームをx-z平面に集束させ、第2の荷電粒子ビームをy-z平面に拡大することができる(
図2に示されている)。二焦点ビームフォーマは、さらに、ビームの少なくとも1つを偏向させる少なくとも双極子電磁場を生成するように構成されることができる。例えば、二焦点ビームフォーマは、主軸に垂直な方向に第2の荷電粒子ビームに偏向力を印加する双極子場を生成することができる。主軸からの第2の荷電粒子ビームの偏向の程度は、二焦点ビームフォーマの双極子強度を調整することによって調整されることができる。
【0017】
二焦点ビームフォーマ112を出た後、第1および第2の荷電粒子ビームは、双方とも、サンプル14を照射する前に、集束コンポーネント120、多重極素子124、集束カラム126、ミニコンデンサ128、およびプレサンプル対物レンズ130を順次通過する。サンプル14は、サンプルが傾斜していないとき、サンプル平面154に位置する。サンプル平面154は、主軸110に直交する平面である。二焦点ビームフォーマの下流に配置された集束コンポーネント120は、第1の荷電粒子ビーム101および第2の荷電粒子ビーム102を集束コンポーネント120の下流に配置された集束カラム126に向けて加速/減速する、集束する、および/または導く。集束コンポーネント120は、荷電粒子ビームを集束および加速する加速器122とすることができる。
【0018】
多重極素子124は、集束コンポーネント120と集束カラム126との間の第1の荷電粒子ビームの焦点面に配置されて、第2の荷電粒子ビームのビーム形状を調整する。多重極素子124は、第1の荷電粒子ビームに影響を与えない。多重極素子124は、第2の荷電粒子ビームプロファイルを円筒対称にするために、二焦点ビームフォーマの四重極レンズ効果を補完する四重極レンズ効果を印加するためのスティグメータとすることができる。二焦点ビームフォーマ112および多重極素子124の複合作用は、サンプル平面154の近くに異なる焦点面を有する第1および第2の荷電粒子ビームを生じさせる。第1および第2の荷電粒子ビームは、サンプル面において異なるビーム発散を有する。一例では、第1の荷電粒子ビームは、サンプル面において平行であり、第2の荷電粒子ビームは、サンプル面において非平行である。いくつかの例では、多重極素子は、ビームフォーマの下流に配置されていない。サンプル画像を形成するための荷電粒子ビームのビームプロファイルは、サンプル面において円形でなくてもよい。
【0019】
集束カラム126およびミニコンデンサ128は、偏向された第2の荷電粒子ビームを主軸110に近付ける。いくつかの例では、ミニコンデンサは、光学的にオフにされて、特定の照明条件を作り出すことができる。第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームは、プレサンプル対物レンズ130の上流の異なる平面(152および151)に集束する。第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームは、双方とも、ミニコンデンサ128の下流に配置されたプレサンプル対物レンズ130を通過した後、サンプルのROIを照射する。第1および第2の荷電粒子ビームのビーム軸は、サンプル面154において遮断することができる。第2の荷電粒子ビームは、サンプル面において非平行(収束または発散)ビームである。一例では、第1の荷電粒子ビームは、サンプル面において平行ビームである。別の例では、第1の荷電粒子ビームは、サンプル面において非平行である。第2の荷電粒子ビームは、第1の荷電粒子ビームに対してゼロ以外の傾斜角でサンプル14に衝突する。
【0020】
サンプル14は、光学カラムに結合されたサンプルチャンバ(図示せず)内に配置されたサンプルホルダ13によって保持される。サンプルホルダ13は、サンプル平面内の回転軸に対してサンプルを傾けること、および/またはサンプル平面内でサンプルを平行移動させること、および/またはサンプル平面を主軸に沿って移動させることによって、サンプル位置を調整することができる。
【0021】
検出器144は、投影光学系132の下流に配置され、回折パターンは、ポストサンプル対物レンズ131および投影光学系132を通して検出器に集束される。プレサンプル対物レンズ130およびポストサンプル対物レンズ131は、磁気浸漬レンズに組み合わせることができる。散乱されていないビームは、投影光学系132と検出器144との間に配置されたビームストッパ17によって遮断されることができる。散乱された荷電粒子103は、投影レンズ132を通過し、検出器144の第1の領域において回折パターンを形成する。収集された散乱荷電粒子(散乱電子など)は、制限視野電子回折(SAED)パターンなどの回折パターンを形成する。第2の荷電粒子ビームは、検出器144の第2の領域においてサンプル画像を形成する。第1の領域および第2の領域は、互いにオフセットされている。すなわち、第1の領域および第2の領域の中央位置は異なる。検出器の検出領域を最大化するために、サンプル画像を主軸に対して回転させることができる。二焦点画像内のサンプル画像は、二焦点光学系とコンデンサ光学系を変更することにより、回折パターンに対して半径方向に調整されることができる。サンプル画像および回折パターンの双方を含むことができる二焦点画像の全体的な倍率は、投影システムによって調整されることができる。サンプル画像は、結晶の2D輪郭または外形を示すことができる。サンプル画像は、低解像度の焦点ぼけサンプル画像とすることができる。焦点ぼけのために画像のコントラストが高くなることができ、これは、輪郭の抽出を容易にすることができる。結晶位置は、サンプル画像に基づいて追跡されることができる。サンプル画像の視野(FOV)は、回折パターンのFOV以上である。ROIは、サンプル面において第1および第2の荷電粒子ビームの双方によって照射される領域内にある。ROIは、少なくとも1つの結晶を含む。検出器144は、データをコントローラ30に出力して、二焦点画像を形成する。
【0022】
二焦点マルチビーム荷電粒子システム100は、第2の荷電粒子ビームを偏向または遮断して、サンプルへの放射線損傷を低減することができる。例えば、ブランカーは、第2の荷電粒子ビームのビーム経路に配置される。別の例では、二焦点ビームフォーマは、第1の荷電粒子ビームを通過させながら、第2の荷電粒子ビームを遮断することができる。サンプルの放射線による損傷は、第2の荷電粒子ビームのビーム電流を減少させることによってさらに減少させることができる。第2の荷電粒子ビームのビーム電流は、第2の荷電粒子ビームのための二焦点ビームフォーマの開口を減少させることによって減少させることができる。
【0023】
コントローラ30は、オペレータの命令に応答して手動で、または非一時的メモリ(またはコンピュータ可読媒体)32に記憶されたコンピュータ可読命令にしたがって自動的にかのいずれかで、二焦点マルチビーム荷電粒子システム100の動作を制御することができる。コントローラ30は、プロセッサ35を含むことができ、本明細書で説明する方法のいずれかを実装するために、コンピュータ可読命令を実行して、システム100の様々なコンポーネントを制御するように構成されることができる。コントローラ30は、荷電粒子源106の高電圧レベルを調整することによって、サンプルに向けて照射される荷電粒子ビームのエネルギを調整することができる。コントローラ30は、サンプルホルダ13を調整することにより、サンプルの位置および/または向きを調整することができる。コントローラ30は、検出器144が取得したデータを受信し、取得されたデータに基づいて画像を形成する。コントローラ30は、通知および/またはサンプルの画像を表示するためにディスプレイ31にさらに結合されてもよい。コントローラ30は、ユーザ入力デバイス33からユーザ入力を受信することができる。ユーザ入力デバイス33は、キーボード、マウス、またはタッチスクリーンを含むことができる。コントローラは、取得された回折傾斜系列に基づいて結晶の分子構造を解決するように構成されることができる。
【0024】
コントローラ30は、二焦点ビームフォーマ112、集束コンポーネント120、集束カラム126、およびミニコンデンサ128のうちの1つ以上を調整することによって、サンプル平面における第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームのビーム特性を調整することができる。例えば、サンプル面における2つの荷電粒子ビーム間の傾斜角を調整することは、二焦点ビームフォーマにおける荷電粒子ビームの少なくとも1つの偏向の程度を調整することを含むことができ、二焦点ビームフォーマの双極子強度を調整することによって偏向の程度を調整することができる。サンプル平面における2つの荷電粒子ビームの相対位置の調整は、二焦点ビームフォーマの四重極レンズ強度の調整を含むことができる。回折パターンとサンプル画像との間のFOVの比率を調整することは、二焦点ビームフォーマの四重極レンズ強度を調整することを含むことができる。サンプル面における荷電粒子ビームの光学特性(照射領域、2つのビームの直径の比率、および2つのビーム間の相互傾斜角など)のいかなる変更も、1つ以上のコンデンサレンズの励起の変更を必要とする。システムは、柔軟性を提供するのに十分な数のコンデンサレンズを含む必要がある。
【0025】
コントローラ30は、二焦点ビームフォーマ112および光学カラム内の1つ以上のレンズを調整して、二焦点マルチビーム撮像モードと通常の透過型電子顕微鏡(TEM)、および/または走査型電子顕微鏡(SEM)撮像モード、および/または走査型透過電子顕微鏡法(STEM)とを切り替えることができる。通常のTEM、SEM、およびSTEMモードでは、1つの荷電粒子ビームのみが光学カラムによって形成される。
【0026】
電子回折パターンおよび電子顕微鏡サンプル画像の取得は例として説明されているが、回折パターンおよび/またはサンプル画像は、他の顕微鏡システムによって取得されることができることを理解されたい。本議論は、単に1つの好適な撮像モダリティの例として提供される。一例として、二焦点画像のサンプル画像は、サンプル表面上で電子ビームの1つを走査することによって取得されたSTEM画像とすることができる。二焦点画像の回折パターンは、ナノビーム電子回折パターンとすることができる。STEM画像のFOVは、ナノビーム電子回折パターンのFOVよりも大きい。
【0027】
図2は、
図1に示されるx-z平面に直交するy-z平面における
図1の二焦点マルチビーム荷電粒子システム100を示している。第1および第2の荷電粒子ビームのビーム軸は、二焦点ビームフォーマ112から検出器144までy-z平面において重なり合う。
【0028】
図3Aは、x-z平面におけるサンプル14に対する荷電粒子ビームの方向を示している。第1の荷電粒子ビーム101は、それが主軸110に沿ってサンプルを照射するときに平行である。第2の荷電粒子102は、それが軸151に沿ってサンプルを照射するときに収束している。第1の荷電粒子ビームと第2の荷電粒子ビームとの間の角度152は、x-z平面においてゼロではない。一例では、角度152は、15mrad未満である。別の例では、角度152は、10mradである。第1および第2の荷電粒子ビームは、双方とも、サンプル面上で円形のビーム形状を有することができる。第2の荷電粒子ビーム102のビーム幅302は、サンプル表面での第1の荷電粒子ビーム101のビーム幅301以上である。一例では、サンプル表面での第1の荷電粒子ビームのビーム直径は2μmであり、サンプル表面での第2の荷電粒子ビームのビーム直径は2.45μmである。別の例では、第1の荷電粒子ビームのビーム直径に対する第2の荷電粒子ビームのビーム直径の比は1~2である。
【0029】
図3Bは、y-z平面におけるサンプル14に対する荷電粒子ビームの方向を示している。第2の荷電粒子ビーム102のビーム軸151は、x軸方向から見たときに、主軸110(すなわち、第1の荷電粒子ビームのビーム軸)と重なる。第1の荷電粒子ビーム101は、それが主軸110に沿ってサンプルを照射するときに平行である。第2の荷電粒子102は、それが軸151に沿ってサンプルを照射するときに収束している。第2の荷電粒子ビーム102のビーム幅302は、サンプル平面154における第1の荷電粒子ビーム101のビーム幅301以上である。
【0030】
いくつかの例では、2つの荷電粒子ビームのビーム形状は、サンプル表面において異なる。第1の荷電粒子ビームのビーム形状は、円形とすることができ、第2の荷電粒子ビームのビーム形状は、非円形とすることができる。
【0031】
図4は、いくつかの実施形態にかかる、二焦点マルチビーム荷電粒子システム400を示している。二焦点ビームフォーマが加速器の上流に配置される二焦点マルチビーム荷電粒子システム100とは異なり、二焦点ビームフォーマ412は、システム400の加速器422の下流に配置される。さらに、集束レンズ420は、第1および第2の荷電粒子ビームを集束させるための集束コンポーネントとして、二焦点ビームフォーマ412の下流に配置される。システム100と同様に、二焦点ビームフォーマ412は、荷電粒子源106によって生成された荷電粒子ビーム111を第1および第2の荷電粒子ビームに分割する。二焦点ビームフォーマ412はまた、第2の荷電粒子ビームをx-z平面の主軸110から離れるように偏向させる。多極要素124、集束カラム126、ミニコンデンサ128、および対物レンズ130などの光学カラム内の残りの光学部品の配置は、
図1~
図2の二焦点マルチビームシステム100の配置と同様である。光学部品のレンズ励起は、システム100およびシステム400において異なることができる。
【0032】
図1~
図2および
図4の二焦点マルチビーム荷電粒子システムは、軸方向ビームによって回折パターンを形成し、非軸方向ビームによってサンプル画像を形成する。いくつかの実施形態では、回折パターンは、非軸方向ビームによって形成され、サンプル画像は、軸方向ビームによって形成される。例えば、巨視的偏向器は、二焦点ビームフォーマの下流に配置され、最初は非軸方向ビームを主軸に向け、最初は軸方向ビームを主軸から遠ざけることができる。
【0033】
図5は、
図1~
図2および
図4のシステムなどの二焦点マルチビーム荷電粒子システムを使用して3D回折データを取得するための方法500を示している。回折パターンは、第1の荷電粒子ビームによって取得され、サンプル画像は、第2の荷電粒子ビームによって取得される。第1の荷電粒子ビームは、軸方向ビームまたは非軸方向ビームのいずれかとすることができる。結晶シフトは、サンプル画像に基づいて回折パターンの取得中に追跡および補正される。取得した回折パターンは、サンプル画像に基づいて生成された結晶の3D輪郭に基づいて選択されることができる。
【0034】
502において、3D回折データ取得のためのサンプルのROIの位置が判定される。ROI位置は、サンプルのTEM画像などのサンプル画像に基づいて判定されることができる。例えば、サンプル画像に基づいて、サンプルは、結晶がROIの中心に位置する場所に移動される。サンプルは、デュアルビーム(イオンビームおよび電子ビーム)システムを使用して調製された薄いラメラとすることができる。
【0035】
504において、回折系列のパラメータが判定される。パラメータは、ビームエネルギ、ビーム電流、およびサンプル面における第1および第2の荷電粒子ビームのそれぞれの視野などのビーム特性を含むことができる。パラメータは、1つ以上の傾斜範囲、傾斜ステップ、傾斜速度、および回折パターンの数を含むサンプル傾斜パラメータを含むことができる。結晶学のために3D回折データを取得する場合、傾斜範囲は、サンプルホルダの全傾斜範囲とすることができる。ゾーン軸の位置合わせのために3D回折データが取得される場合は、離散的な傾斜ステップが判定されることができる。パラメータはまた、サンプル画像を撮像するための頻度を含むことができる。サンプル画像を撮像する頻度は、サンプルの特性に基づいて判定されることができる。例えば、サンプルが放射線による損傷を受けやすい場合、サンプル撮像の頻度は低減される。
【0036】
506において、第1および第2の荷電粒子ビームの双方によって照射されたROIに応答して、回折パターンおよびサンプル画像が、検出器(
図1の検出器144など)を使用して二焦点画像において同時に取得される。
【0037】
いくつかの例では、サンプル画像のみが、第2の荷電粒子ビームのみによってサンプルを照射することによってステップ506において取得される。サンプル画像は、結晶シフトを補正するための初期サンプル位置として機能することができる。
【0038】
508において、サンプルは、次の傾斜角に傾斜する。一例では、サンプルは、504において判定された傾斜ステップのために傾斜され、サンプルが特定の傾斜角に維持されている間に、回折パターンが取得される。各回折パターンは、1つの傾斜角に対応する。別の例では、サンプルは、連続的に傾斜され、サンプルが傾斜している間に回折パターンが取得される。各回折パターンは、傾斜角の範囲に対応する。サンプルは、主軸に直交する傾斜軸に対して傾斜しており、サンプル平面内で結晶を通過する。傾斜軸は、結晶の任意の非結晶軸とすることができる。
【0039】
510において、方法500は、結晶シフトをチェックする必要があるかどうかを判定する。結晶シフトは、504において判定された頻度で定期的にチェックされることができる。例えば、結晶シフトは、他の全ての回折パターンを収集した後にチェックされることができる。結晶シフトをチェックしないと判定された場合、512において、ROIは、第1の荷電粒子ビームのみによって照射され、回折パターンが取得される。結晶シフトをチェックすると判定した場合、514において、ROIは、第1および第2の荷電粒子ビームの双方によって照射され、回折パターンおよびサンプル画像が同時に取得される。
【0040】
516において、方法500は、現在の傾斜角が3D回折データ取得のための最後の傾斜角であるかどうかを判定する。現在の傾斜角が最後の傾斜角でない場合、サンプルは、508において新たな傾斜角に傾斜する。それ以外の場合、方法500は、ステップ522に移動する。
【0041】
517において、方法500は、現在の傾斜角が3D回折データ取得のための最後の傾斜角であるかどうかを判定する。現在の傾斜角が最後の傾斜角でない場合、結晶シフトは、518において推定される。それ以外の場合、方法500は、ステップ522に移動する。
【0042】
518において、サンプル平面における結晶シフトは、異なる傾斜角で撮像されたサンプル画像に基づいて推定され、結晶シフトの量は、閾値結晶シフトと比較される。例えば、結晶シフトは、参照サンプル画像の結晶位置から現在のサンプル画像(514において取得されたサンプル画像など)の結晶位置へのシフト、ならびに参照サンプル画像および現在のサンプル画像の傾斜角に基づいて判定される。参照サンプル画像は、506において取得されたサンプル画像など、サンプルを傾斜させる前に取得されたサンプル画像とすることができる。あるいは、参照サンプル画像は、現在のサンプル画像の傾斜角とは異なる傾斜角で取得されたサンプル画像とすることができる。結晶位置の変化は、参照サンプル画像と現在のサンプル画像との間の相互相関などの画像処理方法を使用して推定されることができる。結晶位置変化の単位は、サンプル画像のピクセル数とすることができる。次に、結晶シフトは、結晶位置の変化と、参照および現在のサンプル画像の傾斜角に基づいて計算されることができる。結晶シフトは、サンプル平面内の結晶シフトの量に対応する振幅および結晶シフトの方向に対応する方向を有するベクトルとすることができる。結晶シフト量が閾値結晶シフトよりも大きい場合、結晶シフトは、520において補正される。それ以外の場合、サンプルは、508において新たな傾斜角に傾斜する。
【0043】
520において、サンプルのROIが入射する第1および第2の荷電粒子ビームと再整列するように、サンプルのROIと入射する第1および第2の荷電粒子ビームとの間の相対位置を調整することによって、結晶シフトが補正または補償される。一例では、サンプルは、結晶シフトに基づいてサンプル平面内のサンプルホルダを平行移動させることによってシフトされることができる。別の例では、第1および第2の荷電粒子ビームは、結晶シフトに基づいて光学カラム内の1つ以上の光学部品を調整することによって、サンプル平面内で一緒に平行移動されることができる。第1および第2の荷電粒子ビームは、二焦点ビームフォーマの下流に配置された標準ビーム偏向器を調整することによって一緒に平行移動されることができる。結晶シフトを補正した後、入射する第2荷電粒子ビームに対する結晶位置は、参照サンプル画像を取得するときの結晶位置と同じになる。
【0044】
522において、504において判定された全ての傾斜角で回折パターンを収集した後、3D回折データが結晶学のために収集される場合、回折パターンは、サンプル画像に基づいて回折傾斜系列を生成するために必要に応じて選択される。例えば、収集された回折パターンの1つ以上の回折パターンは、それらが強く非運動学的またはそうでなければ妥協された回折パターンを生成する傾斜角で収集される場合には除去されることができる。調査中の結晶の3D輪郭は、サンプル画像の結晶の2D輪郭に基づいて再構築されることができる。強く非運動学的散乱に対応する傾斜角は、閾値サンプル厚さを超える入射する第1の荷電粒子ビームのビーム軸に沿ったサンプル厚さに対応する傾斜角とすることができる。閾値サンプル厚さは、1ミクロンとすることができる。
【0045】
このようにして、結晶学分析のための高品質の回折傾斜系列を、短縮されたデータ取得時間で得ることができる。結晶シフトは、回折パターンと同時に取得されたサンプル画像に基づいて追跡および補正されることができる。これは、3D回折データの取得を妨げることなく、高解像度の結晶シフトの追跡および補正を可能にする。
【0046】
結晶学に加えて、方法500は、回折パターンが複数の傾斜角で取得される任意の用途において、結晶シフトを追跡および補正するために使用されることができる。例えば、方法500は、ゾーン軸整列中の結晶シフト追跡および補正に使用されることができ、結晶サンプルのゾーン軸は、回折パターンに基づいて入射ビームと整列される。
【0047】
図6は、二焦点マルチビーム荷電粒子システムを使用して取得された例示的な二焦点画像600を示している。二焦点画像は、ROIに第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームの双方が照射されたときに収集される。二焦点画像600は、二焦点画像600の中心にある回折パターン(SAEDパターン)601と、二焦点画像600の左下隅にあるサンプル画像602とを含む。二焦点画像600におけるサンプル画像602の位置は、光学カラムの投影レンズなどの光学カラムの1つ以上の光学部品を調整することによって調整されることができる。サンプル画像602は、サンプル画像と回折パターンとの間の重なりを減らすために、二焦点画像600の隅部に移動されることができる。サンプル画像602は、ROI内に結晶603を含む。結晶の2D輪郭は、サンプル画像602において視覚化されることができる。
【0048】
図7は、3D回折データ取得の例示的なタイムラインを示している。プロット701は、サンプルの傾斜角である。傾斜角の範囲は、主軸に対して-Aから+A度である。傾斜角の範囲は、サンプルホルダの最大回転範囲と同じであってもよい。プロット702は、軸方向ビーム(第1の荷電粒子ビーム)の状態である。プロット703は、非軸方向ビーム(第2の荷電粒子ビーム)の状態である。プロット704は、検出器(
図1の検出器144など)からデータを取得するためのコントローラのデータ取得状態である。プロット705は、サンプル平面における結晶シフト量である。結晶シフト量は、y軸方向に増加する。プロット706は、ROIに対する入射する第1および第2荷電粒子ビームのビームシフト量である。ビームシフト量は、y軸方向に増加する。x軸は時間であり、時間は、x軸の方向に増加する。
【0049】
T1において、第1および第2の荷電粒子ビームがROIと整列する。T1からT4まで、サンプルは、傾斜角-Aから傾斜角+Aまで連続的に傾斜する。サンプルを傾けている間、ROIは、軸方向ビームによって照射される。非軸方向ビームは、期間731によってROIを定期的に照射する。画像データは、期間742によって取得され、各画像データを取得するための期間は、741である。カメラがローリングシャッタモードで動作している場合、741および742はほぼ同じである。画像データは、ROIに軸方向ビームおよび非軸方向ビームの双方を照射したときの回折パターンおよびサンプル画像の双方を含む二焦点画像である。画像データは、ROIに軸方向ビームのみを照射した場合の回折パターンのみを含む二焦点画像である。期間742は、検出器からコントローラまでのデータ読み出し時間に依存することができる。軸方向ビームおよび非軸方向ビームの双方によって各二焦点画像を取得した後、サンプル面の基準結晶位置からの結晶シフト量が計算される。基準位置は、T1における結晶位置とすることができる。結晶シフト量は、結晶シフト閾値751と比較される。T2において、結晶シフト閾値よりも高い結晶シフト量に応答して、ビームは、ROIに対してゼロ以外のビームシフト量だけシフトされる。T3において、結晶シフト閾値よりも低い結晶シフト量に応答して、ビームは、ROIに対してシフトされない。
【0050】
荷電粒子源によって生成された荷電粒子を2つの荷電粒子ビームに分割することの技術的効果は、分割ビームの一方を使用して結晶シフトを補正し、他方の分割ビームを使用して結晶の回折パターンを取得することができるということである。二焦点ビームフォーマによって第1の荷電粒子ビームを主軸に沿って導き、第2の荷電粒子ビームを主軸から偏向させることの技術的効果は、第1および第2の荷電粒子ビームがサンプル面において視野に重なっているということである。第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームの異なる焦点特性を生成する技術的効果は、2種類の画像(回折パターンおよびサンプル画像)が1つの検出器において形成されるように、第1および第2の荷電粒子ビームが異なるビーム発散でROIを照射するということである。
【0051】
一実施形態では、荷電粒子ビームによってサンプルを撮像するための方法は、荷電粒子源から生成された荷電粒子を第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに分割することと、サンプルの関心領域(ROI)に第1の荷電粒子ビームを照射することによって回折パターンを取得することと、ROIに第2の荷電粒子ビームを照射することによってサンプル画像を取得することと、を含む。この方法の第1の例では、方法は、さらに、サンプル画像に基づいて、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに対するサンプルの位置を調整することを含む。この方法の第2の例は、必要に応じて第1の例を含み、さらに、サンプル平面内の軸の周りでサンプルを傾けることと、傾斜したサンプルに第2の荷電粒子ビームを照射することによって別のサンプル画像を取得することと、サンプルを傾ける前後に取得したサンプル画像を比較してサンプルの位置を調整することと、を含む。この方法の第3の例は、必要に応じて、第1および第2の例のうちの1つ以上を含み、さらに、サンプル位置の調整が、荷電粒子源の放射軸に垂直な平面における第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに対してサンプルを平行移動することを含む。この方法の第4の例は、必要に応じて、第1および第3の例のうちの1つ以上を含み、さらに、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームが異なる入射角でROIを照射することを含む。この方法の第5の例は、必要に応じて、第1および第4の例のうちの1つ以上を含み、さらに、第1の荷電粒子ビームが、ROIを照射するときに平行ビームであり、第2の荷電粒子ビームが、ROIを照射するときに非平行ビームであることを含む。この方法の第6の例は、必要に応じて、第1および第5の例のうちの1つ以上を含み、さらに、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームが、サンプル平面の近くに異なる焦点面を有することを含む。この方法の第7の例は、必要に応じて、第1および第6の例のうちの1つ以上を含み、さらに、回折パターンおよびサンプル画像が、サンプルの下流に配置された検出器を使用して取得されることを含む。この方法の第8の例は、必要に応じて、第1および第7の例のうちの1つ以上を含み、さらに、荷電粒子源によって生成された荷電粒子を二焦点ビームフォーマによって分割することと、二焦点ビームフォーマとは異なって第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームの焦点特性を調整することと、を含む。この方法の第9の例は、必要に応じて、第1および第8の例のうちの1つ以上を含み、さらに、二焦点ビームフォーマによって第2の荷電粒子ビームを第1の荷電粒子から偏向することを含む。
【0052】
一実施形態では、荷電粒子ビームによってサンプルを撮像する方法は、関心領域(ROI)に第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームを同時に照射することによって、第1の回折パターンおよび第1のサンプル画像を取得することであって、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームが、荷電粒子源によって生成された荷電粒子を分割することによって形成されることを含む。この方法の第1の例では、方法は、さらに、第1のサンプル画像に基づいて、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに対するサンプルの位置を調整することを含む。この方法の第2の例は、必要に応じて第1の例を含み、さらに、サンプル位置の調整が、荷電粒子源の放射軸に直交する平面内で第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームをシフトすることを含むことを含む。この方法の第3の例は、必要に応じて、第1および第2の例のうちの1つ以上を含み、さらに、荷電粒子源の放出軸に直交する軸の周りでサンプルを連続的に傾斜させることと、傾斜したサンプルの第2の回折パターンおよび第2のサンプル画像を取得することと、第2のサンプル画像を第1のサンプル画像と比較することによってサンプルの位置を調整することと、を含む。この方法の第4の例は、必要に応じて、第1および第3の例のうちの1つ以上を含み、さらに、荷電粒子源の放出軸に直交する軸の周りでサンプルを連続的に傾斜させることと、第1の荷電粒子ビームのみをROIに照射することによって第2の回折パターンを取得することと、を含む。
【0053】
一実施形態では、サンプルを撮像するためのシステムは、荷電粒子源および二焦点ビームフォーマを含む光学カラムであって、二焦点ビームフォーマが、荷電粒子源から生成された荷電粒子を第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに分割する、光学カラムと、光学カラムに結合されたサンプルチャンバ内に配置されたサンプルと、サンプルの下流に配置された検出器と、非一時的メモリにコンピュータ可読命令が記憶されたコントローラであって、サンプルの関心領域(ROI)に第1の荷電粒子ビームを照射し、検出器によって回折パターンを取得し、ROIに第2の荷電粒子ビームを照射し、検出器によってサンプル画像を取得するように構成されたコントローラと、を含む。システムの第1の例では、システムは、さらに、システムが光学カラムの主軸に直交する軸の周りでサンプルを傾斜させるためのサンプルホルダをさらに含み、コントローラが、サンプルホルダでサンプルを傾斜させ、異なる傾斜角で複数の回折パターンおよび複数のサンプル画像を取得するようにさらに構成されている、ことを含む。システムの第2の例は、必要に応じて第1の例を含み、さらに、コントローラが、複数のサンプル画像に基づいて結晶シフトを判定し、結晶シフトに基づいて、第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームに対するサンプル位置を調整するようにさらに構成されている、ことを含む。システムの第3の例は、必要に応じて、第1および第2の例のうちの1つ以上を含み、さらに、コントローラが、複数のサンプル画像に基づいて複数の回折パターンから1つ以上の回折パターンを除去して回折傾斜系列を形成するようにさらに構成されている、ことを含む。システムの第4の例は、必要に応じて、第1および第2の例のうちの1つ以上を含み、さらに、コントローラが、回折傾斜系列に基づいてROI内の結晶の分子構造を判定するようにさらに構成されている、ことを含む。