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特許7489404光学被覆材料としての四ホウ酸ストロンチウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】光学被覆材料としての四ホウ酸ストロンチウム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/10 20150101AFI20240516BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240516BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240516BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240516BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G02B1/10
G02B1/11
G02B5/20
G02B5/26
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021566306
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 US2020031550
(87)【国際公開番号】W WO2020227332
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】62/845,496
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/913,643
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/819,991
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュアン ユン-ホ アレックス
(72)【発明者】
【氏名】シィアオリー インイン
(72)【発明者】
【氏名】ロギノバ エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フィールデン ジョン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525144(JP,A)
【文献】特開平10-284793(JP,A)
【文献】特開2011-099941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0265572(US,A1)
【文献】特表2018-517902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10
G02B 1/11
G02B 5/20
G02B 5/26
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
サンプルを支持するように構成されたステージと、
100nmから300nmまでの間の範囲内の波長を有する入射光を発生するように構成された光源と、
センサと、
前記入射光を前記サンプル上まで誘導し、反射光を前記サンプルから前記センサまで誘導するように構成された光学システムと、
を含み、
前記光源及び前記光学システムのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの光学構成要素を含み、該光学構成要素は、
光部分を受け取るように配置された基体であって、それにより、前記受け取られた光部分は、前記基体の最上面に向かって誘導され、前記受け取られた光部分は、前記入射光及び前記反射光のうちの一方を含む、基体と、
前記最上面にわたって前記基体上に配設された第1光学材料層であって、前記受け取られた光部分の一部分が前記第1光学材料層を通して前記基体の前記最上面まで通過するように構成された第1光学材料層と、
を含み、
前記第1光学材料層が少なくとも99%の四ホウ酸ストロンチウム(SrB)から構成されている、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学構成要素は、周波数変換結晶、レンズ、ビームスプリッタ、ミラー、窓、プリズム、及び偏光子のうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1光学材料層は、前記光学構成要素の反射率を最小化するように構成され、それによって前記基体の前記最上面から離れる方に誘導される前記受け取られた光部分の量を最小化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1光学材料層は、前記光学構成要素の反射率を最大化するように構成され、それによって前記基体の前記最上面から離れる方に誘導される前記受け取られた光部分の量を最大化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1光学材料層は、30nmから200nmまでの間の範囲内の厚さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光学構成要素は、前記第1光学材料層と前記基体の前記最上面との間に配設された少なくとも1つの第2光学材料層を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2光学材料層は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、及び二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記光学構成要素は、前記第1光学材料層にわたって配設された少なくとも1つの第3光学材料層を更に含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1光学材料層は、前記基体の前記最上面上に形成され、前記光学構成要素は、前記第1光学材料層にわたって配設された少なくとも1つの第2光学材料層を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2光学材料層は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、及び二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記基体は、前記最上面と、前記最上面の反対側に配設された底面と、を含む外周面を有し、
前記第1光学材料層は、前記最上面にわたって配設された第1部分と、前記底面にわたって配設された第1部分と、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記光学構成要素は、周波数変換結晶を含み、前記基体は、吸湿性非線形光学材料を含み、
前記第1光学材料層は、前記基体の前記外周面を完全に囲む連続封止構造を形成する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記吸湿性非線形光学材料は、セシウムホウ酸リチウム(CLBO)及びセシウムホウ酸(CBO)のうちの1つを含み、前記第1光学材料層は、前記吸湿性非線形光学材料の前記外周面上に直接配設されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記周波数変換結晶は、前記第1光学材料層の外周面上に配設された第2光学材料層を更に含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記周波数変換結晶は、前記第1光学材料層と前記吸湿性非線形光学材料の前記外周面との間に配設された第2光学材料層を更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
システムであって、
100nmから700nmまでの間の範囲内の波長を有する入射光を発生するように構成された光源と、
前記入射光をサンプル上まで誘導するように構成された光学システムと、
を含み、
前記光源及び前記光学システムのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの光学構成要素を含み、該光学構成要素は、
光部分を受け取るように配置された基体であって、それにより、前記受け取られた光部分は、前記基体の最上面に向かって誘導され、前記受け取られた光部分は、前記入射光及び反射光のうちの1つを含む、基体と、
前記基体の前記最上面上に配設された第1光学材料層と、
前記第1光学材料層の最上面上に配設された第2光学材料層と、
を含み、
前記第1及び第2光学材料層は、前記受け取られた光部分の一部分が前記第1及び第2光学材料層の両方を通して前記基体の前記最上面まで通過するように構成され、
前記第1及び前記第2光学材料層のうちの一方が、少なくとも99%の四ホウ酸ストロンチウムから構成され、前記第1及び前記第2光学材料層のうちの他方が、四ホウ酸ストロンチウムの屈折率よりも低い屈折率を有する第2光学材料を含む、システム。
【請求項17】
前記システムは、半導体検査システム及び半導体測定システムのうちの1つであり、
前記システムは、センサを更に含み、前記光学システムは、前記サンプルから反射又は散乱された光を前記センサまで誘導するように更に構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、リソグラフィシステムであり、前記システムは、前記サンプル上のパターンを露光するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
基体を有する光学構成要素を作製する方法であって、
100nmから300nmまでの間の範囲内の波長を有する入射光を発生するように構成された光源と、前記入射光をサンプル上まで誘導し、反射光を前記サンプルからセンサまで誘導するように構成された光学システムのうちの少なくとも1つが、前記基体を有する光学構成要素を含むものであり、前記方法は、
前記基体を用意するステップと、
四ホウ酸ストロンチウム源に向いている被覆されるべき前記基体を被覆チャンバ内に設置するステップと、
前記基体を前記被覆チャンバ内部で回転させるステップと、
前記四ホウ酸ストロンチウム源に電子銃からの電子によって衝撃を付与するステップと、
前記四ホウ酸ストロンチウム源と前記電子銃とが、四ホウ酸ストロンチウムが前記源から放出されて、前記基体に向かって誘導されるように構成されるステップと、
四ホウ酸ストロンチウムの層を前記基体上に形成するステップと、
四ホウ酸ストロンチウムの所望の厚さが前記基体上に堆積されたときに、前記電子衝撃付与を停止するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記厚さは、ある波長での前記基体の反射率を低減させるように選ばれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記厚さは、ある波長での前記基体の反射率を増加させるように選ばれる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記波長は、130nmから400nmまでの間にある、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記厚さは、30nmから200nmまでの範囲内にある、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、前記四ホウ酸ストロンチウムの層上に第2層を形成するステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第2層は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、及び二酸化ケイ素のうちの1つを含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して半導体製造における使用に(例えば、フォトマスク、レチクル、及び半導体ウェーハを検査及び/又は測定することに)適したタイプのシステムに関する。特に、本開示は、赤外、可視光、深紫外(DUV)、及び真空紫外(VUV)放射を利用する測定及び検査システムに実装される光学構成要素(例えば、ミラー、レンズ、プリズム、及びレーザ)のための光学被覆材料に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月9日に出願された、「STRONTIUM TETRABORATE AS OPTICAL COATING MATERIAL」という名称の米国仮特許出願第62/845,496号の優先権を主張し、参照によって本明細書に組み込まれる。本出願は、また、2019年10月10日に出願された、「STRONTIUM TETRABORATE AS OPTICAL COATING MATERIAL」という名称の米国仮特許出願第62/913,643号の優先権を主張し、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
集積回路産業は、数十ナノメートル(nm)以下の大きさのより小さい欠陥及び粒子を検出するために、ますます高い感度を有する検査ツールを必要とする。これらの検査ツールは、フォトマスク、レチクル、又はウェーハの面積の大部分又は100%さえも短時間に検査するために、高速で動作しなければならない。例えば、検査時間は、製造中の検査について1時間以下であってもよく、又はR&D若しくはトラブルシューティングについてせいぜい数時間であってもよい。そのように迅速に検査するために、検査ツールは、関心のある欠陥又は粒子の寸法よりも大きいピクセル又はスポットサイズを用い、欠陥又は粒子によって生じる信号のわずかな変化を検出する。信号の小さい変化を検出することは、高い光レベル及び低いノイズレベルを必要とする。高速検査は、紫外(UV)光で動作する検査ツールを用いる製造において最も一般的に実行される。R&Dでの検査は、UV光又は電子を用いて実行されてもよい。
【0004】
集積回路(IC)産業は、また、小さい特徴の寸法を半導体ウェーハにおいて数ナノメートル以下まで正確に測定するための高精度計測ツールを必要とする。測定プロセスは、半導体製造プロセスにおける様々な時点にウェーハ上で実行されて、ウェーハ上のパターン化された構造の幅、ウェーハ上に形成された膜の厚さ、及びウェーハの別の層上のパターン化された構造に関してウェーハの1つの層上にパターン化された構造のオーバーレイ等のウェーハの様々な特性を測定する。これらの測定値は、半導体ダイの製造におけるプロセス制御及び/又は収量効率を向上するために用いられる。測定は、UV光又は電子によって実行されてもよい。
【0005】
高集積化、低消費電力化、及び低コスト化を伴う集積回路製造を目的とした半導体産業は、UV光学系の主要ドライバのうちの1つである。エキシマレーザ及び周波数逓倍固体レーザ等の強力UV光源の開発は、UV光子応用の分野における研究開発努力の成長をもたらした。
【0006】
光学被覆は、ミラー又はレンズ等の光学構成要素上に堆積された材料の1つの層又はいくつかの薄層であり、これが、光学構成要素が光を反射及び透過する態様を変更する。1つのタイプの光学被覆は、反射防止被覆(ARC)であり、これは、光学面からの望ましくない反射を減少させる。光学被覆は、半導体検査及び測定のいたるところにある。それらは、ミラー、レンズ、ビームスプリッタ、及びプリズム、プラズマアークランプ被覆等の反射及び透過光学系から、深紫外(DUV)及び真空紫外(VUV)レーザにおける結晶被覆及びレーザキャビティ被覆までのほとんどの検査及び測定システムに見出される。
【0007】
DUV(~200nmから280nmまで)及びVUV(~100nmから200nmまで)のスペクトル範囲内の光学被覆は、難解だが興味をそそる。DUV/VUVレーザは、数ミリワット(mW)から10ワット(W)以上までの高い電力レベル、及び高光子エネルギ(例えば、193nmで6.5eV及び266nmで4.66eV)を有することがある。パルスレーザは、短いパルス長(ナノ秒以下)、及び高い反復速度(数十kHz以上)を有してもよい。光学被覆は、DUV/VUV波長範囲内で透過的であることに加えて、高い光学損傷閾値、高い硬度、及び良好な安定性と共にこれらの極端な状態に耐える必要がある。
【0008】
DUV及びVUV波長に適した、当該技術分野で公知の2、3の被覆が存在する。これらのうち、最も広く一般的に用いられているものは、フッ化マグネシウム(MgF)被覆である。MgFは、広範囲の波長にわたって透過的である。MgFによって被覆されたレンズ、ミラー、プリズム、窓等の光学構成要素は、VUVにおける121nm(水素ライマンアルファ線)から赤外線における8.0μmまで透過的であり得る。MgFは、主にUV光学系に用いられ、特にエキシマレーザ用途に用いられる。1.37の低い屈折率に起因して、MgFの薄層は、安価な反射防止被覆として光学構成要素面上で広く用いられる。結晶質MgFは、通常、窓又はレンズ等の構成要素を形成するために用いられたとき、非常に強靭であり、うまく作用し、仕上がる。しかしながら、やむをえず非晶質であるMgF被覆は、時間が経過するにつれて安定的でなくなることがある。更に、それらはわずかに多孔性であり得る。フッ素は、被覆面から流出する傾向があり、酸化マグネシウムは、どちらかの表面上に形成され得る。更に、MgF被覆は、低い光損傷閾値(~0.1GW/cm)を有する。酸化ハフニウム(HfO)、二酸化ケイ素(SiO)、及び酸化アルミニウム(Al)被覆等の別の材料が、また、光学被覆として用いられてもよいけれども、それらは約200nmよりも長い波長に対してのみ透過的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2015/0372446号
【文献】米国特許第5,216,323号
【文献】特開平10-284793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
VUV及びDUV照明の下で安定的な被覆面を生成することに対する重要な関心が数十年にわたって存在してきたが、MgF被覆は、その欠点にもかかわらず、特にVUV波長範囲に対する唯一の都合の良い被覆であり続けている。高速検査及び測定についての本適用に関して、光学被覆は、高い光学損傷閾値、高い硬度、及び良好な安定性を有する必要がある。かかる被覆は、基体又は下にある層の酸化を低減するために、水及び酸素の拡散に対する低い透過性を有することが更に望ましい。
【0011】
したがって、必要とされるのは、従来技術の限界のうちの一部又は全部を克服する光学被覆材料である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、約100nmから約700nmまでの範囲又はそれ以上の光(放射線)を誘導するために光学構成要素を利用する様々なシステムにおいて利用される光学構成要素のための光学被覆層としての四ホウ酸ストロンチウム(SrB)の使用に関するものである。
【0013】
四ホウ酸ストロンチウムは、100nmから300nmまでの範囲内の深紫外(DUV)及び真空紫外(VUV)光を利用する半導体検査及び測定システム内の光学被覆材料としての使用に対して比類なく適しているようにされる光学的及び機械的特性を示し、この特性は、また、可視光又は赤外(IR)放射を利用する別のシステム(例えば、光学リソグラフィシステム又はIRカメラシステム)においても有用な場合がある。SrBについての公表された透過度範囲は、130nmから3200nmまでであるけれども、本発明者らは、SrB光学層は、130nmよりもわずかに短い波長、おそらく120nmから125nmまでの波長を有する光に対して十分に透過的であってもよいと考えている。SrBの屈折率は、MgF等の従来の光学被覆材料と比較して高い。光損傷閾値は、MgF等の別の被覆材料と比較して非常に高い(14.7GW/cm)。SrBの微小硬度も、また高い(x方向に1750kg/mm、y方向に1460kg/mm、及びz方向に1350kg/mm)。高い光損傷閾値及び微小硬度は、SrB被覆が、半導体検査及び測定システム、特にDUV及びVUV放射を利用するシステム内で生じる極限状態に耐えることを可能にする。すなわち、半導体検査及び測定システムにおいて利用されるDUV及びVUVレーザは、数ミリワット(mW)から数ワット(W)以上までの高電力レベル、及び高光子エネルギ(例えば、193nmで6.5eV、及び266nmで4.66eV)をしばしば有する。パルスレーザは、短いパルス長(ナノ秒以下)及び高い繰返し率(数十kHz以上)を有してもよい。光学構成要素の基体構造上に動作可能に配設されている、かかるシステムに四ホウ酸ストロンチウムを主成分とする光学被覆層(すなわち、層の少なくとも99%がSrBである)を有する光学構成要素を提供することによって、SrBの光学的及び/又は機械的特性は、光学構成要素の動作寿命を延長し、それによって、システムが、従来のシステムよりも実質的により長い不断の動作期間、及び実質的に低減された全動作コストを達成することを可能にする。
【0014】
例示的な実用的実施形態に従うと、本発明は、DUV又はVUV半導体検査/計測システムを目的とし、該システムは、100nmから300nmまでの間の範囲内の波長を有する入射光を発生するように構成されている照明(光)源を含み、そして、入射光を源からサンプルまで誘導し、そして反射/散乱光をサンプルからセンサまで誘導するように構成されている光学システムを含む。本発明の一態様によれば、照明(光)源及び光学システムのうちの少なくとも1つにおいて利用される少なくとも1つの光学構成要素は、四ホウ酸ストロンチウム(SrB)光学被覆層を含み、該光学被覆層は、構成要素のコア基体構造の少なくとも1つの面上に動作可能に配設されている。例えば、四ホウ酸ストロンチウム光学被覆層が構成要素の基体の受光(最上)面にわたって形成されることにより、受光面に向かって誘導される入射光又は反射/散乱光が、受光面に到達する前に、必然的に四ホウ酸ストロンチウム光学被覆層を通過する。代替実施形態では、光学構成要素は、検査及び測定システムの照明源又は光学システムにおいて利用されるいずれかのタイプのものであってもよく、該光学構成要素としては、反射及び透過光学構成要素(例えば、ミラー、レンズ、窓、ビームスプリッタ、偏光子、及びプリズム)、プラズマアークランプ、周波数変換結晶並びにレーザキャビティが挙げられる。これらの光学構成要素のうちの少なくとも1つに1つ又は複数のSrB光学被覆層を設けることによって、SrBの機械的特性は、下にある光学材料についての強化された(すなわち、従来の光学被覆材料のみを利用する同様の光学構成要素と比較して)保護を提供し、それによって、光学構成要素の有効寿命を増加させ、これは、次いで、不断の動作期間の長さを増加させて、ホストDUV/VUV半導体検査/測定システムの全動作コストを低減する。
【0015】
いくつかの単層の実施形態では、SrB光学被覆層は、光学構成要素の基礎材料(一般に基体と呼ばれる)の最上(受光)面上に直接形成されている。これらの実施形態では、光学構成要素の反射率(すなわち、反射された入射光の量)は、SrB光学被覆層の厚さを調整することによって調整可能である。一実施形態では、SrB光学被覆層は、基体の最上面から離れるDUV/VUV光の反射量を最小化するように形成されている(例えば、光学被覆層中での受光した光の光波長の1/2に等しい厚さを有するSrB光学被覆層を形成することによって、光が被覆された光学系に入射するときに、弱め合う干渉が反射ビームに対して生じ、それで、構成要素の反射率が、少なくとも関心のある波長において大幅に低減される)。別の一実施形態では、SrB光学被覆層は、基体の最上面から離れるDUV/VUV光の反射量を最大化するように形成される。DUV又はVUV半導体検査及び測定システムにおける反射率の増加又は減少の両方を促進するために、SrB光学被覆層は、30nmから200nmまでの範囲内の厚さで形成されている。単一のSrB光学被覆層を利用することは、SrBの光学特性及び機械的特性の両方を活用し、それによって、上記の延長した構成要素寿命の利点を提供し、同時に構成要素の製造コストを最小化する(すなわち、所望の光学被覆特性(例えば、反射率)を提供するためにSrBの光学特性を利用し、それによって、さもなければ所望の光学被覆特性を提供するのに必要とされるであろう1つ又は複数の追加の光学材料層の形成に関連するであろう付加的な製造コストを回避する)。
【0016】
別の一実施形態では、光学構成要素は、光学構成要素の基体上に形成された複数の光学被覆層を含み、この場合、多層被覆のうちの少なくとも1つの層は、実質的にSrBから構成されている。いくつかの特定実施形態では、SrB光学被覆層は、構成要素の多層光学被覆構造の最外被覆層を(すなわち、1つ又は複数の従来の(第2)光学被覆層が、SrB光学被覆層と基体の最上面との間に形成されるように)形成する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の従来の光学材料層は、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、フッ化アルミニウム、及び/又はフッ化マグネシウム等の1つ又は複数の従来の光学被覆材料を含む。この配列は、SrB層の強化された機械的特性を利用して下にある従来の光学被覆層を保護することによって、光学構成要素の有効寿命を延長するために利用されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の従来の(第3)光学材料層をSrB光学被覆層にわたって形成することにより、この配列から得られることがある有益な光学的品質を向上してもよく、同時に、SrB層の強化された機械的特性を利用して、下にある従来の(第2)光学材料層及び/又は基体を保護する。更に別の実施形態では、SrB光学被覆層は、基体の最上面上に直接形成され、1つ又は複数の従来の(第2)光学材料層は、(SrB)光学材料層にわたって形成され、それによって、SrB層の強化された機械的特性を利用して基体のみを保護する。
【0017】
いくつかの実施形態では、SrB層は、基体構造の複数の(例えば、最上及び反対側の底)面を覆い、別の実施形態では、SrB層は、全ての外側周辺基体面にわたって延在して、基体構造を完全に取り囲む連続封止構造を形成する。いくつかの実施形態では、検査又は測定システムは、その光源内にレーザを含み、レーザは、300nmよりも短い波長等の深UV波長を発生するように構成された周波数変換結晶を含む。かかる周波数変換結晶の基体は、しばしば、セシウムホウ酸リチウム(CLBO)又はホウ酸セシウム(CBO)等の吸湿性非線形光学材料を含む。連続SrB封止構造の構成は、SrB層の強化された機械的特性を利用して、吸湿性非線形光学材料内への水及び/又は酸素の拡散を遅延又は停止させることによって改善された周波数変換結晶の生成を促進し、それで、さもなければあり得るよりも高い湿度環境内で結晶を貯蔵し、輸送し、動作することを可能にする。いくつかの実施形態では、所望の光学特性は、連続的なSrB封止構造の内側又は外側のいずれかに配設されている、随意の従来の光学被覆材料層を用いて達成されてもよい。
【0018】
半導体検査ツールは、短時間でフォトマスク、レチクル、又はウェーハの面積の大部分又はその100%さえも、検査するためには高速で動作しなければならない。例えば、検査時間は、製造中の検査について1時間以下であることがあり、又は、R&D若しくはトラブルシューティングについてはせいぜい数時間であることがある。そのように迅速に検査するために、検査ツールは、関心のある欠陥又は粒子の寸法よりも大きいピクセル又はスポットサイズを用いて、欠陥又は粒子に起因する信号のわずかな変化を検出する。高速検査は、紫外(UV)光で動作する検査ツールを用いて、製造において最も一般的に実行される。高精度測定ツールが、半導体ウェーハ上の、数ナノメートル以下まで低下する小さい特徴の寸法を正確に測定するために必要である。測定プロセスは、半導体製造プロセスにおける様々な時点でウェーハ上で実行されて、ウェーハの様々な特徴を測定し、該特徴とは、ウェーハ上のパターン化された構造の幅、ウェーハ上に形成された膜の厚さ、及びウェーハの1つの層におけるパターン化構造の、ウェーハの別の層におけるパターン化された構造に対するオーバーレイオフセット等である。これらの測定値は、半導体ダイの製造におけるプロセス制御及び/又は収量効率を向上するために用いられる。高速検査及び測定は、高い光レベル及び安定した信号を必要とする。透過型光学系の反射損失を減少させ、反射型光学系の反射を増加させる光学被覆は、センサにおいて利用可能な光を増加させ、それで、より高い感度及びより高い速度を可能にする。劣化しない又は既存の被覆よりも遅く劣化する被覆は、信号の小さい変化を検出することをより容易にするより安定的な信号をもたらし得る。かかる被覆は、また、光学構成要素の交換頻度を減少させることによって、検査又は測定ツールの操業費用を低減し得る。
【0019】
本開示は、以下の添付図面の図において、例として示されており、限定として示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】1つ又は複数の光学構成要素を実装する例示的な検査又は測定システムを示し、該光学構成要素は、本発明の実施形態に従う少なくとも1つのSrB光学材料層を含む。
図2】本発明の例示的な特定実施形態に従う単一のSrB光学材料層を含む一般化された光学構成要素を示す図である。
図3A】本開示の代替実施形態に従う、例示的な多層光学被覆構造を含む例示的な簡略光学構成要素を示す図であり、該光学被覆構造において、層のうちの少なくとも1つが、本質的にSrBから構成されている。
図3B】本開示の代替実施形態に従う、例示的な多層光学被覆構造を含む例示的な簡略光学構成要素を示す図であり、該光学被覆構造において、層のうちの少なくとも1つが、本質的にSrBから構成されている。
図4】SrBの典型的な透過曲線を示す図である。
図5】本開示に従う源材料としてSrBを有する電子ビーム/イオンビームスパッタリング被覆チャンバを示す図である。
図6】吸湿性非線形結晶材料(例えば、CBO又はCLBO)を含む例示的な周波数変換結晶を示し、該吸湿性非線形結晶材料は、本発明の別の実施形態に従うSrB光学材料層によって完全に被覆されている。
図6A】本発明の代替特定実施形態に従う代替の単層及び多層光学被覆構造をそれぞれ示す断面側面図である。
図6B】本発明の代替特定実施形態に従う代替の単層及び多層光学被覆構造をそれぞれ示す断面側面図である。
図6C】本発明の代替特定実施形態に従う代替の単層及び多層光学被覆構造をそれぞれ示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特許請求された主題が、特定実施形態について説明されるけれども、本明細書に記載された利点及び特徴の全てを提供するわけではない実施形態を含む別の実施形態も、また本開示の範囲内にある。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、プロセスステップ、及び電子的変更がなされてもよい。従って、本開示の範囲は、添付の請求の範囲を参照することによってのみ規定される。
【0022】
以下の説明は、特定の用途及びその必要条件に関連して提供されるような開示内容を当業者が作成し、用いることを可能にするために提示される。本明細書で用いられるように、「最上」、「底」、「上方」、「下方」、「上側」、「上向き」、「下側」、「下方」、及び「下向き」等の方向を示す用語は、説明の目的で相対的位置を提供することを意図しており、絶対座標系を示すことを意図していない。好ましい実施形態に対する種々の変更が、当業者には明らかであろう、そして、本明細書おいて規定された一般的な原理は、別の実施形態に適用されてもよい。そのため、本開示は、示され説明された特定の実施形態に限定されることを意図されていないが、本明細書に開示された原理及び新規な特徴と整合する最も広い範囲に一致させられるべきである。
【0023】
図1は、シリコンウェーハ、レチクル、又はフォトマスク等の半導体製造関連のサンプル108を検査又は測定するように構成された例示的な検査又は計測システム100を示す。システム100は、一般に照明(光)源102と、センサ106と、ステージ112と、を含む。
【0024】
照明源102は、好ましくは、100nmから300nmまでの範囲内の波長を有する深UV(DUV)及び/又は真空UV(VUV)入射光(放射)LINを発生(放射)するように構成されているけれども、300nm超の波長を有する光を発生するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、照明源102は、1つ又は複数のレーザ及び1つ又は複数の光学構成要素(例えば、周波数変換器200-0)を利用して、入射光LINを発生する。一実施形態では、照明源102は、アークランプ、レーザ励起プラズマ光源、又は連続波(CW)レーザ等の連続源であってもよい。別の一実施形態では、照明源102は、モードロックレーザ、Qスイッチレーザ、又はモードロック若しくはQスイッチレーザによってポンピングされるプラズマ光源等のパルス源であってもよい。照明源102内に含まれてもよい好適な光源が、Kirkらへの「Methods and systems for providing illumination of a specimen for a process performed on the specimen」という名称の米国特許第7,705,331号、Bezelらへの「System and method for transverse pumping of laser-sustained plasma」という名称の米国特許第9,723,703号、及び、Chuangらへの「High brightness laser-sustained plasma broadband source」という名称の米国特許第9,865,447号に記載されている。これらの特許は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0025】
ステージ112は、サンプル108を受け取って、光学システム103に対するサンプル108の移動を容易にするように(すなわち、光学システム103が入射光LINをサンプル108の異なる領域に集束するように)構成されている。ステージ112は、X-Yステージ又はR-θステージを含んでもよい。一実施形態では、ステージ112は、焦点を維持するために検査中のサンプル108の高さを調整してもよい。別の一実施形態では、光学系103が調整されることにより焦点を維持してもよい。
【0026】
光学システム(光学系)103は、入射光LINをサンプル108上に誘導して集束させ、そして反射(散乱を含む)光LR/Sをサンプル108からセンサ106まで誘導するように構成された複数の光学構成要素及び別の光学構成要素を備えている。図1に示す光学システム103の光学構成要素は、照明管レンズ200-1と、対物レンズ200-2と、集光管レンズ200-3と、集光レンズ200-4と、ビームスプリッタ200-5と、を備えている。
【0027】
システム100の作動中、照明源102を出る入射光LINが、集光レンズ200-4及び照明管レンズ200-1によってビームスプリッタ205まで誘導され、該ビームスプリッタは、入射光LINを下向きに対物レンズ200-2を通してサンプル108まで誘導する。反射光LR/Sは、サンプル108の表面特徴によって対物レンズ200-2内へと上向きに反射及び/又は散乱される入射光LINの一部を代表し、そして、対物レンズ200-2及び集光管レンズ200-3によってセンサ106まで誘導される。センサ106は、サンプル108から受け取られた反射光LR/Sの量に基づいて出力信号/データを発生する。センサ106の出力は、出力を分析する計算システム114に提供される。計算システム114は、キャリア媒体116上に記憶可能であるプログラム命令118によって構成されている。一実施形態では、計算システム114は、検査又は計測システム100及びセンサ106を制御して、サンプル108上の構造を検査又は測定する。一実施形態では、システム100は、サンプル108上のラインを照明して、1つ又は複数の暗視野及び/又は明視野集光チャネル内に反射/散乱光を収集するように構成されている。この実施形態では、検出器アセンブリ104は、時間差積分(TDI)センサ、ラインセンサ、又は電子衝撃ラインセンサを含んでもよい。
【0028】
一実施形態では、照明管レンズ200-1は、照明瞳開口131を対物レンズ200-2内部の瞳絞りに結像するように構成されている(すなわち、照明管レンズ200-1は、照明瞳開口131と瞳絞りとが互いに共役であるように構成されている)。照明瞳開口131は、例えば、様々な開口を照明瞳開口131の位置に切り替えることによって、又は照明瞳開口131の開口部の直径又は形状を調整することによって構成可能である。このようにして、サンプル108は、計算システム114の制御下で実行される測定又は検査に応じた異なる角度範囲によって照明されてもよい。
【0029】
一実施形態では、集光管レンズ200-3は、対物レンズ200-2内部の瞳絞りを集光瞳開口121に結像するように構成されている(すなわち、集光管レンズ200-3は、集光瞳開口121と対物レンズ200-2内部の瞳絞りとが互いに共役であるように構成されている)。集光瞳開口121は、例えば、異なる開口を集光瞳開口121の位置に切り替えることによって、又は集光瞳開口121の開口部の直径又は形状を調整することによって構成可能であってもよい。このようにして、サンプル108から反射又は散乱された異なる角度範囲の光が、計算システム114の制御の下で検出器アセンブリ104まで誘導されてもよい。
【0030】
照明瞳開口131及び集光瞳開口121のいずれか又は両方は、Brunnerへの「2D programmable aperture mechanism 」という名称の米国特許第9,255,887号に記載されているもの、又は、Brunnerへの「Flexible optical aperture mechanisms」という名称の米国特許第9,645,287号に記載されたもの等のプログラム可能な開口を備えてもよい。ウェーハ検査のための開口構成を選択する方法が、Kolchinらへの「Determining a configuration for an optical element positioned in a collection aperture during wafer inspection」という名称の米国特許第9,709,510号、及びKolchinらへの「Apparatus and methods for finding a best aperture and mode to enhance defect detection」という名称の米国特許第9,726,617号に記載されている。全てのこれらの特許は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0031】
以下に提供される特定実施形態において更に詳細に説明される本発明の一態様に従うと、照明源102及び/又は光学系103において利用される1つ又は複数の光学構成要素は、構成要素の基体構造の少なくとも1つの表面上に形成された少なくとも1つの光学材料層を含み、この場合、光学材料層は、基本的に四ホウ酸ストロンチウムから構成されている(すなわち、光学材料層の少なくとも99%がSrBである)。例えば、例示的な特定実施形態では、照明源102の周波数変換器200-0及び光学システム103の光学構成要素200-1~200-5のうちの少なくとも1つは、単一の四ホウ酸ストロンチウム光学材料層(すなわち、図2に関して以下で説明されるような)を含む。別の一実施形態では、照明源102の周波数変換器200-0及び光学システム103の光学構成要素200-1~200-5のうちの少なくとも1つが、複数の光学材料層を含み、それらの層のうちの少なくとも1つは、基本的に四ホウ酸ストロンチウム(すなわち、図3A及び3Bに関して以下で説明されるような)から構成されている。SrB層以外の光学材料層の例示的な材料としては、例えば、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びフッ化マグネシウム等が挙げられる。別の一実施形態では、照明源102の周波数変換器200-0及び光学システム103の光学構成要素200-1~200-5のうちの少なくとも1つが、それぞれの光学構成要素の基体構造を完全に囲む連続封入構造を形成するSrB光学材料層(すなわち、図6、及び6A~6Cに関して以下で説明されるような)を含む。以下に提供される特定実施形態に関して説明されるように、SrB層の厚さを選択して、光が、被覆された光学構成要素に入射すると、反射されたビームについて弱め合う干渉が発生し、それで構成要素の反射率が低減されるようにしてもよい。その代替として、SrB層の厚さは、強め合う干渉が反射ビームについて生じ、それで構成要素の反射率が向上されるように選ばれてもよい。システム100の全体的な光スループットは、1つ又は複数の光学構成要素を適切に被覆することによって改善されてもよい。主要な光学構成要素の寿命は、また、SrB被覆によって改善されてもよい。
【0032】
検査又は測定システム100の様々な実施形態についての追加の詳細が、Vazhaeparambilらへの「TDI Sensor in a Darkfield System」という名称の米国特許第9,891,177号、Romanovskyらへの「Wafer inspection」という名称の米国特許第9,279,774号、Armstrongらへの「Split field inspection system using small catadioptric objectives」という名称の米国特許第7,957,066号、Chuangらへの「Beam delivery system for laser dark-field illumination in a catadioptric optical system」という名称の米国特許第7,817,260号、Shaferらへの「Ultra-broadband UV microscope imaging system with wide range zoom capability」という名称の米国特許第5,999,310号、Leongらへの「Surface inspection system using laser line illumination with two dimensional imaging」という名称の米国特許第7,525,649号、Kandelらへの「Metrology systems and methods」という名称の米国特許第9,080,971号、Chuangらへの「Broad band objective having improved lateral color performance」という名称の米国特許第7,474,461号、Zhuangらへの「Optical metrology with reduced sensitivity to grating anomalies」という名称の米国特許第9,470,639号、Wangらへの「Dynamically Adjustable Semiconductor Metrology System」という名称の米国特許第9,228,943号、1997年3月4日に発行された、Piwonka-Corleらへの「Focused Beam Spectroscopic Ellipsometry Method and System」という名称の米国特許第5,608,526号、及び2001年10月2日に発行された、Rosencwaigらへの「Apparatus for Analysing Multi-Layer Thin Film Stacks on Semiconductors」という名称の米国特許第6,297,880号、に記載されている。これらの特許の全ては、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0033】
図2は、本開示の第1実施形態に従う、基体201の最上(受光)面201T上に形成された単一のSrB光学材料層(被覆)202を含む例示的な光学構成要素200を示す。基体201は、説明目的のために一般化された形式で描かれており、いずれかの好適な材料を含み、検査及び測定システムに見られるいずれかの光学構成要素を実装するのに必要ないずれかの形状(例えば、図1に示す構成要素200-0から200-5までのいずれか)を有してもよい。すなわち、光学構成要素200は、ミラー、レンズ、ビームスプリッタ、プリズム、プラズマアークランプエンベロープ、非線形結晶、及びレーザ結晶等の反射又は透過光学系を実装することが可能ないずれかのタイプのものであってもよい。一実施形態では、SrB光学材料層202は、30nmと200nmとの間の範囲内の厚さT-202を有する。
【0034】
ホスト検査及び測定システム内に実装されるとき、光学構成要素200は、外部媒体220を通って伝播する光ビーム部分203を遮断するように配置された基体201によって照明源102又は光学系103内部に固定的に維持され、該外部媒体は、典型的には空気、窒素若しくはアルゴン等の不活性パージガス、又は真空である。図1を参照すると、光学構成要素200が実装される場合に従って、光ビーム部分203は、入射光LIN又は反射/散乱光LR/Sのいずれかであってもよい。いずれの場合も、光学構成要素200は、光ビーム部分203が面202Tへの法線(一点鎖線で描かれている)に対して入射角θでSrB層202の上側面202Tに当たるように向けられており、光ビーム部分203の一部は、基体201の最上(受光)面201Tに到達する前に、SrB層202を通過する。SrB層202に入る入射光ビーム203の一部は、ビーム205及び207によって示されるように、SrB層202の境界(202T及び201T)によって屈折させられる。屈折に加えて、入射光ビーム203及び屈折光ビーム205の一部は、また、反射ビーム204及び206によって示すように、これらの境界によって反射される。ビーム206は、次にそれぞれビーム209及び208によって示すように、材料境界(基体の最上面)201Tで反射及び屈折させられる。ビーム209は、次にビーム210及び211によって示すように、201Tでの材料境界で反射及び屈折させられる。ビーム210は、202T等で反射及び屈折させられ、SrB層202内部での無限級数の内部反射(それらの最初のいくつかが、206、209、210、213及び214として示されている)、基体201内の無限級数の下向き進行透過ビーム(それらの最初のいくつかが、207、211及び215として示されている)、並びに外部媒体220内の無限級数の上向き進行ビーム(それらの最初のいくつかが、208、212及び216として示されている)をもたらす。図2に示す屈折/反射角及び層厚は、縮尺通りではないけれども、単一の入射光ビームは、基体201とSrB層202との境界において複数回だけ屈折及び反射され得ることに留意する。それゆえ、例えば、別の屈折及び反射がビーム214に基づいて生じ得るけれども、簡単のために図示されていない。本明細書に開示された発明の実施形態では、入射ビーム203の幅は、典型的には、しばしば層202の厚さT-202よりも大きく(例えば、T-202が数十から数百nmまでの範囲内にある場合、入射ビームの幅は数ミクロンから数十mmまでの範囲内にあることがある)、それゆえに、複数のビームは、全て実質的に空間的に重なっており、そして、媒体220内の全ての上向き進行ビームの和(すなわち、反射ビーム204と、208、212及び216等の透過ビームと、の和)に等しい1つの反射ビーム、及び全ての透過ビームの和(すなわち、207、211及び215等のビームの和)に等しい、基体201内へと進行する1つの透過ビームとして現れる。
【0035】
一実施形態では、光学材料層202は、光学構成要素200の反射率を最小にし、それによって、最上面202Tから離れる方に誘導される受け取られた光部分203の量を最小にする、すなわち、ビーム204、208、212、216等の全パワーを最小にするように構成されている。すなわち、光学材料層202は、外部媒体220内の上向き進行2次ビーム(例えば、ビーム208、212、及び216)の和が、反射ビーム204に対して位相が実質的に反対(すなわち、実質的に180°の位相差、又は180°の任意の奇数倍の位相差)であるように構成されている。一実施形態では、反射ビーム204の振幅は、(例えば、振幅の約75%から振幅の約150%までの範囲内の)外部媒体220内の上方進行2次ビーム(例えば、ビーム208、212、及び216)の和と振幅がほぼ等しいけれども、位相は逆である。出射ビーム204が出射二次ビーム208、212及び216等によって実質的にキャンセルされるとき、弱め合う干渉が生じ、システムの反射率がかなり低減され、それによって、光学構成要素200の光透過を改善して、光学構成要素200を組み込むシステム内での光損失を低減する。
【0036】
公知のように、基体上の単層膜の波長λでの振幅反射率r及びr(すなわち、それぞれp及びs偏光についての電界の複素反射率)が、次式によって与えられ、
【数1】
ここに、
【数2】
は、光学材料層202を一度横断するときの位相変化であり、
【数3】
は、j側から層jと層kとの間の界面に入射するp偏光についてのフレネル反射率であり、
【数4】
は、j側から層jと層kとの間の界面に入射するs偏光についてのフレネル反射率であり、Tは、層jの厚さ(すなわち、図2のT=T-202)であり、nは、層jの屈折率であり、θは、層jの境界における入射角であり(例えば、図2のθ及びθは、それぞれ、外部媒体220及び光学材料層202についてのものであり)、層添字j並びにk=0、1及び2は、それぞれ、外部媒体220、光学材料層202、及び基体201を指す。例えば、Fujiwaraの「Spectroscopic Ellipsometry,Principles and Applications」、pp43~48及びpp347~348を参照されたい。光学材料層202内の入射角θと基体201内の入射角θは、スネルの法則によってθ(表面202Tでの入射角)から計算されてもよい。
【0037】
強度又はパワー反射係数R及びRは、次式のように、その偏光についての振幅反射係数についての係数の2乗にそれぞれ等しい。
【数5】
【0038】
一実施形態では、SrB層202は、その厚さT-202が、受け取られた光部分203の波長λ-203において所望の弱め合う干渉を生成するように形成されている。例えば、r01,p及びr12,pは、同じ符号を有する実数である(すなわち、全ての材料は、波長λ-203において実質的に非吸収型であり、両方の界面での位相変化は、等しい)ならば、光学材料202内での光の波長のほぼ4分の1に等しい厚さT-202を有する層202が生成され(すなわち、T-202は、
【数6】
にほぼ等しくなければならない)、しかし、r01,p及びr12,pが、逆の符号を有する(すなわち、全ての材料が、波長λ-203において実質的に非吸収型であり、一方の界面での位相変化が、別の界面でのそれに対して180°である)ならば、光学材料202内での光の波長のほぼ2分の1に等しい厚さT-202を有する層202が生成される
(すなわち、T-202は、
【数7】
にほぼ等しくなければならない)。SBOが、最も一般的に用いられるDUV及びVUV基体並びに非線形結晶材料(石英ガラス、CaF、及びCLBO等)の屈折率よりも大きい屈折率を有するので、r01,p及びr12,pは、典型的に(そして、r01,s及びr12,sについてと同様に)逆の符号を有し、厚さT-202は、SBOがかかる材料を被覆するために用いられるときの半波にほぼ等しいことが必要である。
【0039】
別の一実施形態では、光学構成要素200は、最上面201Tから離れる方に誘導される受け取られた光部分203の量を最大化するように光学材料層202を構成することによって、ミラーとして機能するように構成されてもよい。この実施形態では、SrB層202の厚さT-202は、強め合う干渉が、光学構成要素の反射率を向上させるように生じ得るように選ばれてもよい(例えば、層202は、厚さT-202を伴って生成され、それにより、波長λ-203において、一往復のかかる透過ビーム205、201Tでの反射による位相変化、及び反射ビーム206は、反射204と実質的に同位相で面202Tに戻って到達する)。これは、また、ミラーとして構成された光学構成要素200を組み込むシステムにおける光損失を減少させることになる。基体201が最小の吸収を有する、すなわち、その屈折率nの任意の虚数部が無視可能であるならば、振幅反射係数r12,p及びr12,sは、実質的に実数であり、この界面での反射における位相シフトは、r12,p及びr12,sの符号に従って0°又は180°であり、そして、厚さT-202に起因する360°又は180°の位相シフトは、r01,p及びr01,sの位相シフトに一致するように、面202Tにおいて強め合う干渉を与えるのに適切であるように選ばれてもよい。アルミニウムは、波長の広い範囲にわたる使用を意図とするDUV及びVUVミラーのための便利な基体であり、その理由は、アルミニウムが、DUV及びVUVスペクトル全体にわたって高い反射率(例えば、約90%以上)を有するからである。基体201がアルミニウム等の金属を含むならば、基体の屈折率nは、複素数である。上記の式が用いられて反射率を計算してもよいけれども、振幅反射係数r12,p及びr12,sは複素数になる、すなわち、反射は、0°でも180°でもない位相変化をもたらす。適切な厚さT-202が、面202Tにおいて強め合う干渉を生成するように選ばれてもよい。
【0040】
レンズ又はミラー等の光学構成要素は、湾曲面を有してもよいことに留意する。いずれの曲率半径も、層202の厚さT-202よりもずっと大きく、したがって、面上のいずか1つの場所での反射率は、上記の式によって十分な正確さを伴って計算されてもよい。曲率のために、光203の入射角θは、光学構成要素の面上の場所とともに変化してもよい。光学構成要素の面上の全ての場所において最小又は最大の反射率を達成することが可能でない場合がある。かかる場合、厚さT-202は、必要に応じて、構成要素の平均反射率を最小化又は最大化するように選ばれてもよい。
【0041】
更に別の一実施形態では、光学構成要素200は、ビームスプリッタとして構成されてもよい。この実施形態では、SrB層の厚さは、例えば、入射光の約50%が反射され、約50%が透過されるように選ばれてもよい。ビームスプリッタの別の一例では、SrB層の厚さは、入射光の1つの偏光状態が実質的に反射され、直交偏光が実質的に透過されるように選択されてもよい。ビームスプリッタの透過と反射との間の別の関係が、ビームスプリッタの所望の関与に応じて選択されてもよい。
【0042】
SrBは、およその単位胞寸法a=4.43Å、b=10.71Å、及びc=4.23Åを有する直方晶系、Pnm2に結晶する。全てのホウ素原子は、四面体で配位され、酸素原子は、3つの四面体に共通である。四面体の3次元ネットワークにもかかわらず、ホウ酸塩ネットワークは、単位胞のc方向のリンクが比較的少ないので、層状構造として現れる。
【0043】
SrBは独特の光学的及び機械的特性を示す。SrBの透過度範囲は、波長が130~3200nmである。この広い透過窓は、特にDUV及びVUV波長範囲に対して、SrBを光学被覆材料の良好な候補にする。SrBの屈折率は、MgF等のVUV波長に適した別の被覆材料と比較して高い。例えば、266nmでの屈折率は、x方向に1.7883、y方向に1.7909、及びz方向に1.7936である。これらの屈折率の間の差が小さく、それ故、SrBにおける第2高調波発生と和周波発生との位相整合プロセスが不可能であることに留意する。光損傷閾値は、MgF等の別のVUV透過性材料と比較して非常に高い(14.7GW/cm)。SrBの微小硬度は、また、高い(x方向に1750kg/mm、y方向に1460kg/mm、及びz方向に1350kg/mm)。高い光損傷閾値及び微小硬度は、SrB被覆がDUV及びVUV放射に暴露されるときに極限状態に耐えることを可能にする。DUV及びVUVレーザは、数ミリワット(mW)から10ワット(W)以上までの高電力レベル、及び高光子エネルギ(例えば、193nmで6.5eV、及び266nmで4.66eV)を有してもよい。パルスレーザは、短いパルス長(ナノ秒以下)及び高い繰返し率(数十kHz以上)を有してもよい。
【0044】
図3(A)及び3(B)は、基体301の最上面301T上に形成された多層被覆を含む例示的な光学構成要素300A及び300Bを示しており、それぞれの多層被覆を形成する光学材料層のうちの少なくとも1つは、基本的にSrBから構成される。図2を参照して上記したように、基体301は、説明目的のために一般化形式で表され、検査及び測定システム(例えば、図1に示す構成要素200-0から200-5までのいずれか)に見られるいずれかの光学構成要素を実施するのに必要ないずれかの好適な材料及び形式を含んでもよい。基体301は、ミラー、レンズ、ビームスプリッタ、プリズム、プラズマアークランプ被覆等の反射又は透過光学系から、DUV及びVUVレーザ内の結晶質被覆及びレーザキャビティ被覆までの検査及び測定システムにおいて見られるいずれかの光学構成要素の一部であってもよい。
【0045】
図3(A)は、基体301の最上面301T上に配設された下側光学材料層302Aと、下側層302Aの上側面302T上に配設された上側光学材料層303Aとを含む2層被覆を有する例示な光学構成要素を示す。上記のように、層のうちの少なくとも1つが、SrBを含むか、又はそれから構成されている。例えば、一実施形態では、下側光学材料層302Aは、基本的にSrBから構成され、上側光学材料層303Aは、従来の光学材料(例えば、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、又はフッ化マグネシウム)から構成されている。別の一実施形態では、下側光学材料層302Aは、従来の光学材料から構成され、上側光学材料層303Aは、基本的にSrBから構成されている。それぞれの層302A及び303Aの厚さは、当該技術分野で公知の技術を用いる所望の反射率又は反射率帯域幅を達成するように選ばれてもよい。多層被覆の光学的損傷閾値及び微小硬度は、単一のSrB層と比較して低減されることがあるけれども、UV光源に近接していない構成要素のような、UVパワー密度が高すぎない場合に用いられる光学構成要素にはそれでも許容されることがある。図3Aに示す2層被覆は、2層被覆が所望の反射率又は反射率帯域幅をより厳密に達成することができ、損傷閾値の低下がその構成要素の意図された用途について許容される場合には、単層被覆(例えば、図2に示すような)よりも好ましいことがある。
【0046】
図3(B)は、多層被覆を有する例示的な光学構成要素300Bを示し、該光学構成要素は、基体301の最上面301T上に形成された最下光学材料層302Bと、最下層302Bの上側面に形成された下側中間光学材料層303Bと、下側中間層303B上に形成された上側中間光学材料層304と、上側中間層304上に形成された最上光学材料層305と、を含む。被覆は、示すような4つの層から構成されてもよく、5つ以上の層(明示的には図示せず)を含んでもよい。層302B、303B、304、及び305のうちの少なくとも1つは、基本的にSrBから構成され、残りの層は、従来の光学材料(例えば、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、又はフッ化マグネシウム)から構成されている。例示的な一実施形態において、最上層305が基本的にSrBから構成されていることにより、その下にある層302B、303B、及び304、並びに基体301の保護を強化する。層の厚さは、所望の反射率又は反射率帯域幅を達成するように選択されてもよい。光損傷閾値及び微小硬度は、単一のSrB層と比較して低減されることがあるけれども、UV光源に近接していないか、そうでなく低いUVパワー密度を受ける光学構成要素にはそれでも許容可能であってもよい。多層被覆は、多層被覆が所望の反射率又は反射率帯域幅をより厳密に達成することができ、そして損傷閾値の低下がその構成要素に対して許容可能である場合には、単層又は2層被覆よりも好ましいことがある。
【0047】
いくつかの実施形態では、光学構成要素300Bは、高低が交互する屈折率材料によって被覆されてもよく、例えば、第1層302B及び第3層304は、高屈折率材料を含んでもよく、第2層303B及び第4層305は、低屈折率材料を含んでもよく、その代替として、302B及び304は、低屈折率材料を含んでもよく、303B及び305は、高屈折率材料を含んでもよい。高屈折率材料は、SrBを含んでもよい。低屈折率材料は、SrBよりも低い屈折率を有するMgF又は別の材料を含んでもよい。当業者であれば、所望の反射率を達成するために、層の数及び層の厚さをどのように選択すべきかを理解するであろう。多層被覆は、当該技術分野において周知であるけれども、現在まで、VUV波長に対して有効な多層被覆が可能ではなく、その理由は、広い範囲のVUV波長にわたって低い吸収性及び高い損傷閾値を有する高屈折率材料がなかったからである。
【0048】
追加の被覆層が、光学構成要素300Bの最上部に設置されてもよい。多層被覆は、2、3、4、5以上の数の層を含んでもよい。交互する高低の対の指数を有する被覆は、高反射率及び低反射率の面を作製するのに便利であるけれども、別の構成が可能であり、本発明の範囲内にある。
【0049】
図4は、SrBについての典型的な透過曲線(Y.S.Oseledchik,A.L.Prosvinin,A.I.Pisarevskiy,V.V.Starshenko,V.V.Osadchuk,S.P.Belokrys,N.V.Svitanko,A.S.Korol,S.A.Krikunov及びA.F.Selevichの「New nonlinear optical crystals:strontium and lead tetraborates」、Opt.Mater.4,669(1995))を示す。透過曲線400に示すように、SrBの透過度範囲は、非常に広い、すなわち約130nmから約3200nmまでであり、これは、VUV、DUV、可視及び近赤外(IR)波長範囲を網羅する。VUV及びDUV範囲は、半導体検査及び測定に対して特に重要である。様々な被覆設計が、図2、3(A)及び3(B)に関して上記したように実装されてもよい。また、透過率が高いことにも留意する。例えば、透過率は、約250nmから約2500nmまでで80%を超える。この高い透過率は、SrBを特にUV波長範囲についての光学被覆材料の良好な候補にする。
【0050】
図5は、本開示に従う、源材料としてのSrBを有する電子ビームスパッタリング被覆チャンバを示す。電子ビーム技術が、基体を被覆するために広く用いられている。被覆チャンバ500において、SrBを含む源材料又は被覆材料502が坩堝501内に置かれる。その代替として、SrBが電子銃の「ポケット」内に置かれてもよい。電子銃503は、坩堝501に近接して位置している。電源510が、電子銃503に印加されることにより、矢印511が示すように、電子によって衝撃を被覆材料502に付与するようにさせることにより、SrB分子505が放出される。これらの分子508のうちのいくつかは、矢印506が示すように、基体507に向かって移動して、基体507上に堆積される。電子銃503によって生成された電子の流れは、好ましくは、一連の電磁石(図示せず)によって被覆材料SrB502上に導かれてもよい。均一性を向上させるために、基体507は、矢印509が示すように回転させられてもよい。被覆されるべき複数の部分があるならば、2つ以上の基体が被覆チャンバ500内に置かれてもよい。耐久性を改善するために、被覆チャンバ500が加熱されてもよく、イオンビーム銃504が追加されてもよく、該イオンビーム銃は、基体507に誘導されて被覆密度を増大させる。電子ビームシステムは、通常、汎用性があり、単に源材料を変えることによって、1つの被覆タイプから別の被覆タイプに再構成されてもよい。多層被覆が望まれるとき、被覆チャンバ500は、坩堝501に類似した複数の坩堝(図示せず)を含んでもよい。それぞれの坩堝は、異なる材料を含んでもよい。コントローラ(図示せず)は、例えば、シャッタ(図示せず)を移動させることによって、被覆プロセスにおける異なる時間に異なる坩堝のふたを取ってもよく、さもなければ、電子ビームを適切な時間に適切な坩堝に向けてもよく、それにより、基体507上に所望の被覆構造を達成する。
【0051】
図6は、全外周面を覆ってSrBが被覆された非線形光学結晶(基体)601を有する別の光学構成要素600を示す。図1に示す検査又は計測システム100の実施形態において、照明源102は、300nmよりも短い波長等の深UV波長を発生するレーザを含む。例えば、照明源102は、固体又はファイバレーザによって発生された約1064nm波長光の第4高調波を発生することによって、266nmに近い波長を発生するように構成されたレーザを含んでもよい。レーザは、適切に構成された三ホウ酸リチウム(LBO)結晶を用いることによって1064nm光の第2高調波を発生してもよい。LBOは、吸湿性ではなくて、数十Wのレーザパワーレベルが用いられるときでも、空気中で作動させられてもよい。第4高調波は、第2高調波光の周波数を2倍にするように構成されたCLBO結晶を用いて発生されてもよい。CLBOは、吸湿性であり、レーザが作動しているか否かにかかわらず、常に非常に低い湿度環境内に維持されなければならない。約10W以上の第4高調波電力等、高電力作動のためには、大気の酸素レベルよりも十分に低い、結晶の環境の酸素レベルを低下させることにより、結晶への表面損傷を最小化することが望ましい場合がある。別の例として、照明源102が、周波数変換結晶(光学構成要素)200-0によって代表されるような、複数の非線形光学結晶の高調波発生及び周波数和を用いることによって213nmに近い又は193nmに近い波長を発生するように構成されたレーザを含んでもよい。CLBO及びCBOは、かかる波長での周波数変換について最も有用な材料であるけれども、両方の材料は吸湿性である。図6は、周波数変換結晶600を示し、該周波数変換結晶は、CLBO及びCBOのうちの1つを構成する基体601を備え、例えば、523nmに近い波長を有する光の周波数を2倍にするように構成された深UV波長を発生するように構成されているか、又は266nmに近い及び1064nmに近い波長を有する光の周波数を合計して、213nmに近い波長を有する光を発生するように構成されている。
【0052】
図6を参照すると、非線形結晶(CLBO又はCBO)基体601の全周面は、SrBから基本的に構成されている層602によって覆われている(包囲されている)。図示された例では、結晶(CLBO又はCBO)基体601は、周波数変換結晶600の光流入口及び光流出口をそれぞれ形成する、対向する最上及び底面601T及び601Bと、対向する側面601S1及び601S2と、対向する端面601E1及び601E2と、を有する矩形プリズム(直方体)形状を有する。この例では、SrB層602は、6つの面601T、601B、601S1、601S2、601E1、及び601E2の全ての上方に延在する部分を有する完全な直方体構造を含む。図6Aは、例示的な周波数変換結晶600Aを示し、該周波数変換結晶において、SrB層602Aが、基体601の周面601P(例えば、最上面及び底面601T及び601B、並びに端面601E1及び601E2)上に直接単層被覆を形成している。別の一実施形態では、SrB層は、1つ又は複数の従来の光学材料層を含む多層封止構造の一部であってもよい。例えば、図6Bは、多層被覆構造を含む別の例示的な周波数変換結晶600Bを示し、該多層被覆構造において、従来の光学材料層603Bが基体601の周面上に形成され、SrB層602Bが層603B上に形成されている。図6Cは、代替の多層被覆構造を有する別の例示的な周波数変換結晶600Cを示し、該多層被覆構造において、SrB層602Cが基体601の周面上に形成され、従来の光学材料層603Cが層602C上に形成されている。それぞれの実施形態において、SrB層602の厚さは、少なくとも水が結晶基体601内に浸透することを遅延させるか又は防止するように選ばれる。SrB層602の厚さは、約10nm以上、又は約100nmであってもよい。SrB層602の厚さは、少なくとも水の拡散を遅延させるか又は防止するのに十分な厚さである限り、及び層がピンホールを含まない限り、均一である必要はない。流入面601E1及び流出面601E2上のSrB層の厚さは、周波数変換において用いられるか又は発生される1つ又は複数の波長の反射率を低減するように更に選ばれてもよい。図6B及び6Cに示すように、流入面601E1及び流出面601E2の一方又は両方が、SrB層の上又は下の追加の層によって被覆されて、1つ又は複数の関心のある波長における反射率を低減してもよい。端面601E1及び601E2上の被覆の均一性は、これらの面の反射率等の光学特性における過度の変動を回避するように制御されなければならない。たとえSrB被覆が水及び酸素に対して完全に不透過性でなくても、もし、それがこれらの分子の拡散を十分に呈するならば、それは、被覆されていない結晶よりも高い水及び酸素含有量を有する環境内での吸湿性の非線形結晶の貯蔵及び/又は作動を可能にしてもよく、それで、濾過及び作動コストを低減することができる。結晶基体601が被覆処理中に保持されなければならないので、一実施形態では、2つの被覆作用が用いられて表面全体を被覆する。
【0053】
説明された実施形態に対する様々な変更が、当業者には明らかであり、本明細書に規定された一般的原理が、別の実施形態に適用されてもよい。本明細書に開示された光学被覆材料は、半導体検査及び測定システムにおいて特に有用であると予想されるけれども、これらの被覆及び材料は、VUV及びDUV放射が光学リソグラフィシステム等に存在し、可視又はIR放射がIRカメラシステム等に存在する別の用途において有用であり得ることがまた想定される。
【0054】
本明細書に記載された被覆材料及び方法は、示され説明された特定実施形態に限定されることを意図するものではないけれども、本明細書で開示された原理及び新規な特徴と整合する最も広い範囲が付与されるべきである。
【0055】
本開示は、1つ又は複数の特定実施形態に関して説明されてきたけれども、本開示の別の実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく成され得ることが理解されるであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその妥当な解釈によってのみ限定されるものとみなされる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図6A
図6B
図6C