(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】流体供給システム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240516BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/448
(21)【出願番号】P 2023008002
(22)【出願日】2023-01-23
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022032401
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
(72)【発明者】
【氏名】五島 健太郎
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009250(JP,A)
【文献】特開2020-085190(JP,A)
【文献】特開昭63-099523(JP,A)
【文献】特開2019-178430(JP,A)
【文献】特開2014-192258(JP,A)
【文献】特開2000-200780(JP,A)
【文献】特開2003-273026(JP,A)
【文献】特開2003-268551(JP,A)
【文献】特開2017-180619(JP,A)
【文献】特開2009-149939(JP,A)
【文献】特開2013-015308(JP,A)
【文献】特開平11-063400(JP,A)
【文献】特開平06-020964(JP,A)
【文献】特開平11-236673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を流れる流体の量を制御する流量制御器と、前記流量制御器の少なくとも下流側に調整ガスを供給する調整部と、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側の圧力との差に応じて前記調整部から前記調整ガスを供給させることにより、断熱膨張による温度低下に伴う前記流体の相変化を抑止することが可能に構成されている制御部と、を備えた流体供給システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側の圧力との差が予め設定される第1所定値以下のときに、前記流量制御器によって
処理室に前記流体を供給させるよう構成されている請求項1記載の流体供給システム。
【請求項3】
前記調整ガスの流量供給時間は、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側の圧力との差が前記第1所定値以下となるまでに必要な時間によって決定される、請求項2に記載の
流体供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側の圧力との差を、前記流量制御器の制御可能な圧力範囲内に調整することが可能なように構成されている請求項1記載の流体供給システム。
【請求項5】
更に、前記流体を処理室に供給することが可能に構成される開閉部を有し、前記開閉部のバルブ特性値は、0.4以上0.7以下に設定される請求項1記載の流体供給システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側の圧力との差と予め設定される第1所定値とを比較し、前記第1所定値より高い場合に前記調整ガスを前記流量制御器の下流側の配管に供給させるよう構成されている請求項2記載の流体供給システム。
【請求項7】
更に、前記制御部は、前記流体の元になる原料の蒸気圧曲線を含む特性データを格納する記憶部を有するよう構成されている請求項1記載の流体供給システム。
【請求項8】
更に、前記制御部は、前記流量制御器の制御制限範囲を含む特性データを格納する記憶部を有するよう構成されている請求項1記載の流体供給システム。
【請求項9】
前記第1所定値は、断熱膨張による相変化を防ぐ下限圧力である請求項2記載の流体供給システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記流量制御器直後の配管内の圧力を、前記流量制御器の制御可能な状態を維持できる制御限界値より低くするよう構成されている請求項1記載の流体供給システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記流量制御器直後の配管内の圧力を、断熱膨張による相変化を防ぐ圧力下限より高くするよう構成されている請求項10記載の流体供給システム。
【請求項12】
更に、前記流体を生成する原料ソースを有し、前記原料ソースは、固体原料を昇華し原料ガスを生成する原料タンク、または、液体原料を気化し原料ガスを生成する気化器のうちどちらか一方である請求項1記載の流体供給システム。
【請求項13】
前記原料ソースは、前記原料タンクまたは前記気化器を加熱するサブヒータを有し、前記サブヒータの加熱により、前記原料ガスが気体状に変位する温度以上の温度に制御可能に構成されている請求項12記載の流体供給システム。
【請求項14】
更に、前記配管、前記流量制御器、
圧力センサ、開閉部のうち少なくとも一つ以上を加熱する加熱部を有し、前記加熱部は、前記流体の元になる原料の気化温度以上になるように温度制御されている請求項1記載の流体供給システム。
【請求項15】
更に、前記流量制御器と
開閉弁の間で前記流体を貯留する容器を有し、前記制御部は、
原料ソースで生成された前記流体を、前記容器に一時的に溜めておき、
処理室にフラッシュ供給する、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項16】
更に、前記調整部は、前記調整ガスを前記流体の昇華温度または気化温度以上に加熱する加熱機構を有し、前記流体は、前記調整ガスと混合されることにより加熱される請求項1記載の流体供給システム。
【請求項17】
前記調整部は、前記流量制御器の直下に設けられる請求項1記載の流体供給システム。
【請求項18】
配管内を流れる流体の量を制御する流量制御器と、前記流量制御器の少なくとも下流側に調整ガスを供給する供給部と、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側圧力の差に応じて前記供給部から前記調整ガスを供給させることにより、断熱膨張による温度低下に伴う前記流体の相変化を抑止することが可能に構成されている制御部と、を備えた処理装置。
【請求項19】
配管内を流れる流体の量を制御する流量制御器と、前記流量制御器の少なくとも下流側に調整ガスを供給する供給部と、制御部と、を備えた処理装置で実行されるプログラムであって、前記制御部に、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側圧力の差に応じて前記供給部から前記調整ガスを供給させることにより、断熱膨張による温度低下に伴う前記流体の相変化を抑止する手順を実行させるプログラム。
【請求項20】
被処理体の表面上に原料ガスを吸着させる工程を有し、前記工程では、流量制御器の内部圧力と流量制御器の下流側圧力の差に応じて調整ガスを供給させることにより、断熱膨張による温度低下に伴う前記原料ガスの相変化を抑止する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体供給システム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法並びにプログラム
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板処理装置の一例として、半導体装置を製造する半導体製造装置が知られている。例えば、処理ガスを反応管内に供給させ、基板(以下、「ウエハ」ともいう)を所定の処理条件で処理する基板処理が行われる。一般的に、処理ガスの供給には、流量制御器としてのマスフローコントローラMFC(Mass Flow Controller)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。以降、流量制御器(マスフローコントローラ)を単にMFCと称することがある。
【0003】
近年、液体を気化させたガス、または固体を昇華させたガス等、種々の処理ガスが使用されている。これらの処理ガスをMFCで制御すると、MFCの後段で断熱膨張が発生することが知られている。
【0004】
この断熱膨張による温度低下により処理ガスが再固化(または再液化)して、固体(または液体)の状態(微粉末またはミストの状態)で反応管内に到達すると、パーティクルの発生要因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、処理ガスを相変化させることなく供給する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、配管内を流れる流体の量を制御する流量制御器と、
前記流量制御器の少なくとも下流側に調整ガスを供給する供給部と、
前記流体を処理室に供給することが可能に構成される開閉部と、
前記開閉部を閉の状態で、前記流量制御器の内部圧力と前記流量制御器の下流側圧力の差に応じて前記供給部から前記調整ガスを供給させることにより、断熱膨張による温度低下に伴う前記流体の相変化を抑止することが可能に構成されている制御部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、処理ガスを相変化させることなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の処理炉の概略構成を示す縦断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の流体供給システムを示す概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る流量制御器の概略構成の一例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理工程のフローチャートである。
【
図7】本開示の一実施形態に係る流量制御器の特性を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態における固体原料の蒸気圧曲線と原料ガスの状態推移を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の流体供給システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<基板処理装置の構造>
図1、
図2は、処理装置の一例である基板処理装置に用いられる縦型の処理炉29を示すものである。先ず、
図1により本開示が適用される基板処理装置の動作の概略を説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
保持具としてのボート32に所定枚数の被処理体としての基板31が移載されて装填されると、ボートエレベータによりボート32が上昇され、ボート32が処理炉29内部に搬入される。ボート32が完全に搬入された状態では、シールキャップ35により処理炉29が気密に閉塞される。気密に閉塞された処理炉29内では、選択された処理レシピに従い、処理ガスが処理炉29内に供給され、ガス排気管66から図示しない排気装置によって処理室2の雰囲気が排出されつつ、基板31に処理がなされる。ここで、処理ガスとしては、例えば、原料ガス、反応ガス、およびこれらのガスとキャリアガスとの混合ガス等がある。これらのような基板31の処理に寄与するガス全般のことを、本明細書では処理ガスと称することがある。また、この処理ガスと基板31の処理に寄与しないガスとしての不活性ガスとを含み、処理炉29に供給されるガス全般を単に流体ということもある。
【0012】
次に、
図1、
図2により処理炉29について説明する。加熱装置(加熱手段)であるヒータ42の内側に反応管1が設けられ、反応管1の下端には、例えばステンレス等によりマニホールド44が気密部材であるOリング46を介して連設され、マニホールド44の下端開口部(炉口部)は蓋体であるシールキャップ35により気密部材であるOリング18を介して気密に閉塞される。少なくとも、反応管1、マニホールド44及びシールキャップ35により処理室2が画成される。
【0013】
シールキャップ35にはボート支持台45を介してボート32が立設され、ボート支持台45はボート32を保持する保持体となっている。
【0014】
処理室2へは複数種類、ここでは2種類の処理ガスを供給する供給経路としての2本のガス供給管(第1ガス供給管47、第2ガス供給管48)が設けられている。
【0015】
第1ガス供給管47には上流から順に、原料ソース91、流量制御器(流量制御装置)である第1マスフローコントローラ(以後、第1MFCということがある。)100、圧力センサ109、第1開閉弁としてのバルブ97(以下、開閉部ということがある)が設けられている。なお、圧力センサ109の上流であって第1MFC100の下流側の配管に図示しない供給用のバルブが設けられている。
【0016】
また、開閉弁97の下流側には、不活性ガスを供給する第1キャリアガス供給管53が合流される。第1キャリアガス供給管53には上流から順に、キャリアガス源72、流量制御装置(流量制御手段)としてのMFC54、及び開閉弁であるバルブ55が設けられている。また、第1ガス供給管47の先端部には、反応管1の内壁に沿って下部から上部に亘り、第1ノズル56が設けられ、第1ノズル56の側面にはガスを供給する第1ガス供給孔57が設けられている。第1ガス供給孔57は、下部から上部に亘って同一のピッチで設けられ、それぞれ同一の開口面積を有している。なお、MFC54の代わりに、レギュレータ(自動圧力制御弁)を設けるようにしてもよい。
【0017】
本実施形態においては、キャリアガス源72から供給される不活性ガスであるキャリアガス(例えば、N2ガス)は、調整ガスとして、圧力センサ109の圧力を調整するために使用される。詳細は後述する。また、調整ガス(キャリアガス)は、バルブ95を介して第1MFC100と開閉弁97の間の供給管47aに、調整ガス供給管としての配管76により供給される。本実施形態においては、このバルブ95を介して第1MFC100と開閉弁97の間の供給管47aに調整ガスを供給するための構成を調整部(以後、流量調整部ともいう)ということがある。つまり、調整部は、キャリアガス源72、MFC54、調整ガスとしての不活性ガスを供給管47aに供給する配管76(以後、調整ガス供給管ともいう)およびバルブ95を少なくとも含む構成である。本実施形態においては、キャリアガス源72およびMFC54は、反応管1内に不活性ガスを供給する供給系と一体的な構成となっているが、特にこの形態に限定されず、調整部として、キャリアガス源およびMFCを個別に設けるようにしてもよい。
【0018】
ここで、第1ガス供給管47、原料ソース91、第1MFC100、圧力センサ109、開閉弁97をまとめて第1ガス供給部(第1ガス供給ライン)と呼ぶ。また、第1ノズル56を含めて第1ガス供給部としてもよい。尚、第1キャリアガス供給管53、キャリアガス源72、MFC54、バルブ55を第1ガス供給部に含めても良い。
【0019】
(原料ソース)
原料ソース91から収容される、液体原料、固体原料等の原料は、原料ソース91内で原料ガス(気体状の流体)が生成される。この原料ガスは、第1MFC100、開閉弁97を介し、第1キャリアガス供給管53と合流し、更に第1ノズル56を介して処理室2に供給される。本実施の形態において、固体原料が処理室2に供給される際は、原料ソース91は原料タンク91として構成される。つまり、原料タンク91内にて昇華された状態の処理ガスが処理室2に供給される。具体的には、原料タンク91内に固体原料が配置され、ここでは図示しない加熱手段としてのサブヒータにより原料タンク91は加熱され、加熱された固体原料は昇華され、気体状の原料ガスが処理室2に供給される。なお、液体原料が処理室2に供給される際は、原料ソース91は気化器として構成される。つまり、サブヒータにより気化器91は加熱され、気化器91内にて気化された状態(気体状)の原料ガスが処理室2に供給される。また、キャリアガスや調整ガスとしての不活性ガスが原料ガスと混合されたガスも処理ガスに含む。なお、特に説明は省略するが、原料ソース91は、常温で気体の原料ガス源も含む。
【0020】
(原料タンク)
原料タンク91は、処理ガスとしての原料ガスを、固体原料を加熱して昇華させることにより生成するように構成されている。
【0021】
(気化器)
気化器91は、処理ガスとしての原料ガスを、液体で供給された原料を加熱して気化させることにより生成するように構成されている。
【0022】
また、原料ソース91は、図示しないサブヒータを有することができる。このサブヒータの加熱により、上述の原料が気体状に変位する温度以上の温度に制御可能に構成されている。更に、第1MFC100と開閉弁97の間の供給管47aと、開閉弁97と第1ノズル56の間の供給管47bと、第1MFC100、開閉部97等をそれぞれ加熱する加熱部を有する。なお、上述の原料、流体の元となる原料の気化状温度以上になるように温度制御されているのが好ましい。
【0023】
第2ガス供給管48には上流方向から順に、反応ガス源73、流量制御器である第3MFC58、開閉弁であるバルブ59が設けられ、バルブ59の下流側にキャリアガスを供給する第2キャリアガス供給管61が合流されている。第2キャリアガス供給管61には上流から順に、キャリアガス源74、流量制御器である第4MFC62、及び開閉弁であるバルブ63が設けられている。第2ガス供給管48の先端部には、第1ノズル56と平行に第2ノズル64が設けられ、第2ノズル64の側面にはガスを供給する供給孔である第2ガス供給孔65が設けられている。第2ガス供給孔65は、下部から上部に亘って同一のピッチで設けられ、それぞれ同一の開口面積を有している。
【0024】
ここで、第2ガス供給管48、第3MFC58、バルブ59、第2ノズル64をまとめて第2ガス供給部(第2ガス供給ライン)と呼ぶ。尚、第2キャリアガス供給管61、第4MFC62、バルブ63を第2ガス供給部に含めても良い。更には、反応ガス源73、キャリアガス源74を第2ガス供給部に含めても良い。また、反応ガス源73から供給される反応ガスは、第3MFC58、バルブ59を介し、第2キャリアガス供給管61と合流し、第2ノズル64を介して処理室2に供給される。ここで、処理ガスは、反応ガスを含むのは言うまでもない。
【0025】
処理室2は、ガスを排気するガス排気管66を介して排気装置(排気手段)である真空ポンプ68に接続され、真空排気される。尚、圧力調整バルブとしてのバルブ67は、弁を開閉して処理室2の真空排気及び真空排気停止が可能であり、かつ弁の開度を調節して圧力調整可能な第2の開閉弁である。
【0026】
シールキャップ35にはボート回転機構69が設けられ、ボート回転機構69は、処理の均一性を向上する為にボート32を回転する。
【0027】
次に、本実施形態に係る管理対象となる流体供給システムについて、
図3乃至
図5を参照して具体的に説明する。なお、
図3は、原料ガスを供給するための供給管47aの要部を拡大した図である。ここで、
図1と同じ構成である場合には、図示を省略することがある。
【0028】
図3に示す通り第1ガス供給ラインは、供給管47a内を流れる処理ガス等の流体の量を制御するMFC100と、MFC100の二次側(出力側)の供給管47a内の圧力を検知する圧力センサとしての圧力計109と、供給管47aの少なくともMFC100より下流側に調整ガスとしての不活性ガスを流量調整された量で供給するMFC54と、流体を処理室2に供給することが可能に構成される開閉部97と、を少なくとも含む第1ガス供給ラインの要部構成である。そして、MFC54、MFC100、圧力計109、開閉部97は、それぞれコントローラ41に電気的に接続されている。
【0029】
(制御部)
コントローラ41は、本開示の「制御部」に相当し、MFC100の内部圧力とMFC100の二次側の圧力との差に応じてMFC54を介して調整ガスを供給させることができる構成となっている。この詳細については後述する。なお、コントローラ41の構成については後述する。
【0030】
(開閉部)
開閉弁97のCv値(以後、バルブ特性値ともいう)は、一般的に、0.05以上0.7以下の範囲で設定されている。ここで、バルブ特性値(Cv値)とは、JIS B 0100:2013で定義されており、いわゆるバルブ固有の流れやすさを示す容量係数であり、流体がある前後差圧においてバルブを流れるときの容量を表す値である。本実施形態では、0.4以上0.7以下の範囲の所定値に設定されている。このようなバルブ特性値であれば、
図3に示す開閉弁97を開のままで、MFC54により流量調整された調整ガス(不活性ガス)を供給することにより、第1MFC100の二次側(出力側)の圧力、つまり、第1MFC100の下流側の圧力P2を増加させることができる。なお、第1MFC100により大流量の原料ガスを供給するには、バルブ特性値の大きい値が好ましく、最適なバルブ特性値は0.7である。但し、調整ガスの流量によらず、0.4以上であれば所望の原料ガスを供給することが可能である。
【0031】
ここで、バルブ特性値を0.4未満とすると、調整ガス(不活性ガス)の流量に対し、圧力の変動が大きくなりすぎて、圧力制御が不能となり、その結果、流量制御が不安定になるというデメリットがある。また、バルブ特性値を0.7より大きくすると、断熱膨張による温度低下に起因する再固化を抑えるために、大量の調整ガス(不活性ガス)が必要となり、その結果、処理炉29内の圧力制御が困難になることがある。更に、基板31面内、および基板31面間におけるガスの分布の調整が崩れる(均一ではなくなる)可能性があり、基板処理の品質低下の恐れがある。バルブ特性値が、0.4以上0.7以下であれば、適切な調整ガス(不活性ガス)の供給により、断熱膨張を安定的に抑えつつ、処理炉29内の圧力も制御可能であり、パーティクル発生を抑えつつ、基板31面内、および基板31面間において、所望のガス分布を得ることが可能である。
【0032】
(第1MFC)
図4に示すように、第1MFC100は、プレフィルタ101と、制御弁102と、第1圧力センサ103と、温度センサ105と、オリフィス107と、第2圧力センサ109と、制御部111と、を有する。なお、
図4では図示を省略するが、第1MFC100は、制御弁102の後段に、供給管47aの流路を開閉する図示しない供給用のバルブが設けられている。そして、第1MFC100の下流の供給管47aには、開閉弁(開閉部)97が設けられている。
【0033】
制御部111には、内部圧力センサ103、温度センサ105及び第2圧力センサ109が接続されている。また、制御部111には、開閉弁97が接続されている。また、制御部111は、後述するコントローラ41(
図5参照)に接続されている。制御部111は、下流側に流れる流体としての原料ガスの流量を所定値に制御する。なお、制御部111とコントローラ41とは、別々ではなく、一体的に実現されてもよい。つまり、上述の調整ガスを供給させる制御を行わせるように構成してもよい。
【0034】
本実施形態の第1MFC100は、オリフィス内のチョーク流れを利用する圧力制御式であり、第1MFC100内のオリフィス内のチョーク流れ条件を満たす圧力値を維持するように制御されている。具体的には、オリフィス上流側の原料ソース91からの原料ガスの供給圧力をP1、オリフィス下流側の圧力P2としたとき、圧力P2は、「P1≧2P2」のオリフィス内のチョーク流れ条件式を満たす圧力値に維持される。また、原料ソース91の圧力変動に対して原料ガスの流量を一定に保つことが可能であるように構成されている。
【0035】
図7に第1MFC100の特性概念図を示す。
図7に示すように、領域Aが、差圧(圧力P2―圧力P1)不足で制御が不可能な領域であり、領域Bが制御可能な領域であり、領域Cが制御可能であるがパーティクル発生の恐れがある領域である。
【0036】
近年の半導体デバイスの微細化に伴い、基板31表面の構造が複雑化している一方で、単一の基板31の面内膜厚均一性及び各基板31間の膜厚均一性の要求は厳しくなる一方である。これらの要求に応えるために、基板31の表面積の増大に均等にガスを供給する必要性が大きくなるにつれて、大流量の原料ガスを処理室2に供給しなければならない。
【0037】
ここで、
図7に示すように、MFC100から大流量の原料ガスを出力しようとすると、パーティクルが発生する可能性が大きくなる(領域C)。これは、MFC100後段で断熱膨張が発生することにより温度低下が生じてしまい、結果として、気体状の原料ガスが相変化して、元の固体(または、液体)に変位して、微粉末(またはミスト)が発生する。特に差圧(圧力P2―圧力P1)が大きい場合は、この微粉末(またはミスト)が原料ガスと共にチョーク流れに乗り、処理室2に到達して、パーティクルの要因となってしまう。従い、差圧(圧力P2―圧力P1)を小さくしなければならない(領域B)。ここで、MFC100から大流量の原料ガスを出力する場合には、MFCの制御限界値を超えないように調整する必要がある(領域A)。この制御限界値は、MFCによるが一般的には、20Torr以上100Torr以下である。
【0038】
次に、制御部(制御手段)であるコントローラ41について説明する。
図5に示すように、コントローラ41は、CPU(Central Processing Unit)41a、RAM(Random Access Memory)41b、記憶装置41c、I/Oポート41dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM41b、記憶装置41c、I/Oポート41dは、内部バス41eを介して、CPU41aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ41には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置411や、外部記憶装置412が接続可能に構成されている。更に、上位装置75にネットワークを介して接続される受信部413が設けられる。受信部413は、上位装置75から他の装置の情報を受信することが可能である。
【0039】
記憶装置41cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置41c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピや、補正レシピ等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピや、補正レシピは、基板処理モードで実施される基板処理工程や、特性確認工程における各手順をコントローラ41に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピや、補正レシピのみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM41bは、CPU41aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。なお、本実施形態において、記憶装置41c内には、
図7に示す流量制御器(特に、MFC100)の制御制限範囲を含む特性データ、および
図8に示す種々の固体原料や液体原料等の原料の蒸気圧曲線を含む特性データが保存されている。また、予め設定されている閾値(例えば、差圧(P1-P2)、バルブ特性値)が保存されている。また、I/Oポート41dは、昇降部材、ヒータ、マスフローコントローラ、各MFC、各バルブ等に接続されている。
【0040】
制御部であるコントローラ41は、基板処理装置が備えるMFCの流量調整、バルブの開閉動作、ヒータの温度調整、真空ポンプの起動及び停止、ボート回転機構の回転速度調節、ボート昇降機構の昇降動作制御、また、本実施形態では、記憶装置41cに保存されている
図7および
図8に示す各特性データおよび予め設定されている差圧(P1-P2)やバルブ特性値等の閾値を取得し、これらの特性データおよび閾値に基づいて、MFC54、MFC100、圧力計109、バルブ95等の動作制御等を行う。
【0041】
そして、コントローラ41は、キャリアガス源72からMFC54により流量調整された調整ガスを第1MFC100の下流側の供給管47aに供給させ、第1MFC100の制御限界値を超えないように、第1MFC100の内部圧力(P1)と第1MFC100の下流側の圧力(P2)の圧力差を差圧(P1-P2)の閾値に基づき調整することにより、原料ソース91から供給管47aを流れる原料ガスを
図8(c)の条件にすることができるため、原料ガスの相変化を抑止することができる。
【0042】
なお、コントローラ41は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていても良い。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ等)412を用意し、係る外部記憶装置412を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ41を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置412を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置412を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置41cや外部記憶装置412は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置41c単体のみを含む場合、外部記憶装置412単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。
【0043】
<基板処理方法>
次に、基板を処理する例について説明する。ここでは、半導体デバイスの製造工程の一例として、ソースガス(原料ガス)とリアクタントガス(反応ガス)を交互に処理室に供給することで処理を行うサイクル処理を説明する。本実施形態においては、基板上で膜を形成する例を説明する。
【0044】
本実施形態における処理では、処理室2の基板31に対して原料ガスを供給する工程(成膜工程1:
図6中のステップS3)と、処理室2から原料ガス(残留ガス)を除去するパージ工程(成膜工程2:
図6中のステップS4)と、処理室2の基板31に対して窒素含有ガスを供給する工程(成膜工程3:
図6中のステップS5)と、処理室2から窒素含有ガス(残留ガス)を除去するパージ工程(成膜工程4:
図6中のステップS6)と、を非同時に行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことで、基板31上に膜を形成する。
【0045】
先ず、上述した様に基板31をボート32に装填し、処理室2に搬入する(
図6中のステップS1)。このとき、ボート32を処理室2に搬入後、処理室2内の圧力及び温度を調整する(
図6中のステップS2)。次に、成膜工程1~4の4つのステップを順次実行する。以下、それぞれのステップを詳細に説明する。
【0046】
(成膜工程1)
成膜工程1では、まず、基板31の表面上に原料ガスを吸着させる。具体的には、第1ガス供給ラインにおいて、開閉弁97を開状態にし、第1MFC100によって、原料ソース91で生成された原料ガスを処理室2へ供給する。
【0047】
ここで、本実施形態では、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲内である場合(つまり、領域Bの状態)であれば、供給管47aに調整ガスを供給することなく、第1MFC100によって、原料ソース91で生成された原料ガスを処理室2へ供給させる。
【0048】
一方、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲外である場合(つまり、領域Cの状態)であれば、
図7に示す領域Bの状態で第1MFC100を動作させるために、MFC54より流量制御された調整ガスを供給管47aに供給する。そして、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲内になると調整ガスの供給を停止させ、第1MFC100によって、原料ソース91で生成された原料ガスと調整ガスの混合ガスを処理室2へ供給させる。なお、調整ガスの供給は停止させることなく成膜に影響しない程度の微量の調整ガスを供給してもよいのは言うまでもない。
【0049】
また、予め設定された範囲(第1MFC100が制御可能な範囲)内において、第1所定値としての閾値を決めていてもよい。この場合、コントローラ41は、調整ガスの流量供給時間を、第1MFC100のの内部圧力と第1MFC100のの二次側の圧力との差が予め設定される第1所定値以下となるまでに必要な時間に決定することができる。これにより、領域Cの第1MFC100を領域Bの状態に変更することができる。そして、第1MFC100によって、原料ソース91で生成された原料ガスと調整ガスの混合ガスを処理室2へ供給させる。例えば、第1所定値は、断熱膨張による相変化を防ぐ下限圧力が設定されている。なお、下限圧力から少しマージを持たせた値でも構わない。
【0050】
また、上述の第1MFC100を領域Cの状態から領域Bの状態に遷移させる制御は、成膜工程1~4の4つのステップを順次実行し、成膜工程1になるまでには完了させなければならないが、本実施形態によれば、MFC54により流量制御された一定の流量を供給することができるため、予め次の成膜工程1に間に合わせることはたやすいことである。
【0051】
(成膜工程2)
成膜工程2では、第1ガス供給管47の開閉弁97及び第1キャリアガス供給管53のバルブ55を閉めて、原料ガスとキャリアガスの供給を止める。ガス排気管66のバルブ67は開いたままにし、真空ポンプ68により、処理炉29を20Pa以下に排気し、残留原料ガスを処理室2から排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理炉29に供給すると、更に残留原料ガスを排除する効果が高まる。
【0052】
(成膜工程3)
成膜工程3では、窒素含有ガスとキャリアガスを流す。まず第2ガス供給管48に設けたバルブ59、第2キャリアガス供給管61に設けたバルブ63を共に開けて、第2ガス供給管48から第3MFC58により流量調整された窒素含有ガスと、第2キャリアガス供給管61から第3MFC62により流量調整されたキャリアガスとを混合し、第2ノズル64の第2ガス供給孔65から処理室2に供給しつつガス排気管66から排気する。窒素含有ガスの供給により、基板31の下地膜上の膜と窒素含有ガスとが反応して、基板31上に窒化膜が形成される。
【0053】
(成膜工程4)
成膜工程4では、膜を形成後、バルブ59及びバルブ63を閉じ、排気装置としての真空ポンプ68により処理室2を真空排気し、成膜に寄与した後に残留する窒素含有ガスを排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理室2に供給すると、更に残留する窒素含有ガスを処理室2から排除する効果が高まる。
【0054】
そして、上述した成膜工程1~4を1サイクルとし、
図6中のステップS7において、成膜工程1~4のサイクルを所定回数実施することにより、基板31上に所定の膜厚の膜を形成することができる。本実施形態では、成膜工程1~4は複数回繰返される。
【0055】
上述の成膜処理が完了した後、
図6中のステップS8において、処理室2の圧力を常圧(大気圧)に復帰させる。具体的には、例えば、N2ガス等の不活性ガスを処理室2へ供給して排気する。これにより、処理室2が不活性ガスでパージされ、処理室2に残留するガス等が処理室2から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室2の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室2の圧力が常圧(大気圧)に復帰される。そして、
図6中のステップS9において、処理室2から基板31を搬出すれば、本実施形態に係る基板処理が終了する。
【0056】
(実施例)
図8は、原料の一例として固体原料の蒸気圧曲線と流体(この場合は固体原料を昇華された原料ガス)の状態推移を示す。この
図8を用いて本実施形態に関して詳述する。
【0057】
図8(a)は、原料ソース91から第1MFC100に供給されるときの原料ガスの状態を示す。この状態は、昇華させるだけであればサブヒータにより温度を高くすればよいが、温度が高いほど固化リスク、腐食リスクは高まるため、過剰に高温にすべきではなく、ほぼ昇華温度近傍(蒸気圧曲線の近傍)になるように温度制御されている。
【0058】
図8(b)は、第1MFC100が
図7に示す領域Cの条件で原料ガスを出力した時の結果を示す。そして、
図8(c)は、本実施形態において、第1MFC100から大流量の原料ガスを出力する際に、第1MFCの制御限界値を超えない(
図7に示す領域Aに入らない)ように調整ガスにより差圧(P1-P2)を調整した時の結果を示す。つまり、第1MFC100が
図7に示す領域Bの条件で、かつ、差圧(P1-P2)を第1MFCの制御限界値付近まで調整して、原料ガスを出力した時の結果である。
【0059】
ここで、
図8(b)と
図8(c)を比較すると、
図8(c)は、
図8(b)よりも状態推移が極めて小さくなっている。つまり、第1MFC100から原料ガスが放出されるときの断熱膨張による状態推移が小さくなっていることが分かる。これは、原料ガスを処理室2に供給する前に、第1MFC100の下流側(二次側)に調整ガスを供給することで第1MFC100の下流側(二次側)の圧力(P2)を増加させて、差圧(P1-P2)の値を小さくして断熱膨張による影響を小さくすることができたためである。
【0060】
このように、本実施形態によれば、コントローラ41が、気体状の原料ガス(
図8(a))が、MFC100により大流量を放出するときの断熱膨張による温度低下により相変化(Vapor→Solid)が生じる条件を予め検出し、断熱膨張による温度低下が発生しても相変化(Vapor→Solid)が生じないように、差圧(P1-P2)を調整することができる。例えば、断熱膨張による相変化を防ぐ下限圧力近傍の値を閾値(第1設定値)を設定しておき、コントローラ41が、差圧(P1-P2)と閾値とを比較するにしてもよい。
【0061】
本実施形態では、供給管47a内を流れる原料ガスの量を制御する第1MFC100と、第1MFC100の二次側の圧力を検知する圧力計109と、第1MFC100の少なくとも二次側(下流側)に調整ガス(不活性ガス)を供給する供給部と、第1MFC100の内部圧力(P1)と第1MFC100の二次側(下流側)の圧力P2との差に応じて調整部から調整ガスを供給させることにより、原料ガスの相変化を抑止することが可能に構成されているコントローラ41と、を備えた構成を有するため、大流量の原料ガスを処理室2に供給することができる。よって、基板31の表面上に形成される膜のステップカバレッジ及び再現性が向上させることができるので、基板の面内膜厚均一性及び各基板間の膜厚均一性を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1MFC100の内部圧力(P1)と第1MFC100の二次側(下流側)の圧力P2との差に応じて調整部から調整ガスを供給させることにより、第1MFC100から大流量の原料ガスが放出されることによる断熱膨張の影響を抑制することができるため、原料ガスの再固化(または再液化)を抑制することが可能になる。特に、コントローラ41は、第1MFC100の制御限界値を超えないように、差圧(P1-P2)を最大限に小さくすることができるため、大流量ガスを処理室2に連続的に供給することができる。
【0063】
なお、原料ソース91内の容量を拡大したり、流路のオリフィス107の大口径化を図ったりすることによって、フラッシュ供給を図ることもできる。また、本実施形態では、MFC100と開閉弁97の間に処理ガスを貯めておく容器を配置することが可能であり、これにより、第1ノズル56によって原料ガスを減圧された処理室2に吐出するので、基板の面内膜厚均一性及び各基板間の膜厚均一性を高めるフラッシュ供給を行うことができる。
【0064】
(変形例)
図9は、
図3の変形例を示す。
図3との違いは、調整ガスとしての不活性ガス(キャリアガス)を加熱する加熱機構98を設けたことである。その他に関しては、
図3に示す流体供給システムと同じ構成である。なお、
図1および
図3と同じ構成である場合には、
図9での図示を省略している。従い、ここでは、加熱機構98に関連することについて説明する。
【0065】
図9に示すように、調整ガスとしての不活性ガス(キャリアガス)を処理室2に供給する流体の昇華温度または気化温度以上に加熱する加熱機構98を有する構成である。処理室2に供給される流体は、この加熱機構98により加熱された調整ガスと混合されることにより加熱されるよう構成されている。これにより、流体に対して直接調整ガスを接触させることができるため、流体の温度を配管の外側に加熱手段としてヒータなどを設けるよりも効率よく上昇させることができる。
【0066】
例えば、
図8における状態を右側に推移させることができるため、
図8における固体(Solid)状態を気相(Vapor)状態にすることが可能である。具体的には、処理室2に供給される流体が、この加熱機構98により加熱された調整ガスとの熱伝導等による加熱により、調整ガスによる断熱膨張による温度低下の抑制に加え、流体の加熱による温度上昇効果が期待される。これにより、流体(特に原料ガス)の再固化(または再液化)を抑制することが可能になる。
【0067】
特に、調整ガスによる上記効果は、第1MFC等の流量制御器の直後の下流側配管で、処理室2に供給される流体と混合されることにより、発揮される。従い、
図9に示す構成が、調整ガスによる断熱膨張による温度低下の抑制、および流体の加熱による温度上昇の効果が最も期待される。
【0068】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0069】
例えば、本実施形態では、流量調整部の構成物として配管76、バルブ95が設けられた場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。図示を省略するが、開閉弁97を配管47b、つまり、MFC54とノズル56の間(好ましくはノズル56近傍)に設けてもよい。この場合、不活性ガス源72、MFC54により第1MFC100の下流側に調整ガスとして不活性ガスを供給することができ、本実施形態における配管76、バルブ95を省略することができる。また、一方、不活性ガス源72、MFC54とは個別に(独立して)、調整ガス供給部としての不活性ガス源、MFC、バルブ、配管等を直接第1MFC100の下流側に接続するようにしてもよい。
【0070】
また、第1MFC100の上流側の供給管47aに圧力計を設け、原料ソース91からの原料ガスの供給圧力P1を計測するようにしてもよい。この場合、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲外である場合(つまり、領域Cの状態)であれば、
図7に示す領域Bの状態で第1MFC100を動作させるために、MFC54より流量制御された調整ガスを供給管47aに供給する。そして、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲内(または予め設定されている閾値(第1所定値))になると調整ガスの供給を停止させ、制御弁102を開状態にして、原料ガスと調整ガスの混合ガスを処理室2に供給させる。これにより、MFCの制御限界値を超えないように、第1MFC100の領域Bの条件に調整することができるため、原料ガスを相変化(固体原料の場合は固化)させることなく、大流量の原料ガスを処理室2に供給することができる。これにより、基板31の表面に原料ガスを行き渡らせることができ、単一の基板31の面内膜厚均一性及び各基板31間の膜厚均一性を向上させることができる。
【0071】
また、第1MFC100は、オリフィス内のチョーク流れを利用する圧力制御式であったが、熱制御式のMFCであってもよい。熱制御式は、流路に2か所設けられる温度検出部の温度の変化により流量を制御する方式である。具体的には、ガスの流路をバイパスラインとセンサラインに分離し、センサラインの上流側と下流側の2か所に設けられる温度センサから温度の変化を検出し、これにより流量を制御するものである。ここで、全流量(Q)は、センサ流量(Q1)+バイパス流量(Q2)である。上流側の温度センサの温度T1、下流側の温度センサの温度T2、分流比k=Q2/Q1とすると、流量Q=k×(T1-T2)で表される。
【0072】
この熱式のMFCを採用した時でも、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲かどうかを確認し、範囲外であれば
図7に示す領域Bの状態で熱式MFCを動作させるために、調整ガスを供給管47aに供給させることができる。つまり、熱式MFCは、本開示に適用可能である。
【0073】
開閉弁97のバルブ特性値がどんな値であっても、開閉弁97を閉とすることにより、MFC100の下流側の圧力P2を増加させることができる。具体的には、コントローラ41は、差圧(P1-P2)が予め設定された範囲外である場合(つまり、領域Cの状態)で、開閉弁97のコンダクタンスの値が、0.05以上0.7以下の範囲でない場合でも、開閉弁97を閉状態とすることにより、MFC54より流量制御された調整ガスを供給管47aに供給して、第1MFC100の下流側の圧力P2を増加させることができる。しかしながら、バルブ特性値が高ければ不活性ガスを多く必要とし、バルブ特性値が低すぎると原料ガスは小流量となり、所望の原料ガス流量を処理室2に供給できなくなる恐れがある。特に、サイクリックプロセスなどで原料ガスを供給する時間が短くなる場合には適用が困難となる。
【0074】
また、例えば、上述の実施形態では、基板処理装置が行う成膜処理として、原料ソースとして固体原料を用い、固体原料を加熱して昇華させ、原料ガスが生成するように構成されている。リアクタント(反応ガス)として窒素含有ガスを用いて、それらを交互に供給することによって基板31上に窒化膜を形成する場合を例にあげたが、本開示がこれに限定されることはない。
【0075】
ここで、固体原料として、固体原料化学物質、特に無機固体原料金属、または半導体前駆体があり、例えば、HfCl4、ZrCl4、AlCl3、MoO2Cl2、MoCl5またはSiI4等が固体原料として採用されつつある。
【0076】
また、液体で供給された原料を加熱して気化し原料ガスを生成するように構成されている。このような液体原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガス、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガス、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、略称:TEOS)ガス等の有機系シラン原料ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。つまり、加圧や冷却によって液体で貯蔵される原料も含まれうる。
【0077】
窒素含有ガスとしては、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、アンモニア(NH3)ガス等のうち1以上を用いることができる。
【0078】
また、リアクタントとしては、窒素含有ガスに限らず、ソースと反応して膜処理を行うガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いて成膜処理を行ってもよい。
【0079】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う処理として半導体装置における成膜処理を例にあげたが、本開示がこれに限定されることはない。本開示の技術は、高アスペクト比の(つまり幅よりも深さが大きい)パターンが形成された被処理体を気化したガスに曝露して行う全ての処理に適用されうる。すなわち、成膜処理の他、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理であってもよい。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理にも好適に適用できる。
【0080】
さらに、本開示は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも好適に適用できる。また、本開示は、これらの装置が混在していてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、半導体製造プロセスについて説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、液晶デバイスの製造工程、太陽電池の製造工程、発光デバイスの製造工程、ガラス基板の処理工程、セラミック基板の処理工程、導電性基板の処理工程、などの基板処理に対しても本開示を適用できる。
【0082】
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0083】
また、上述の実施形態では、不活性ガスとして、N2ガスを用いる例について説明しているが、これに限らず、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。但し、この場合、希ガス源の準備が必要である。また、この希ガス源を第1ガス供給管47に繋ぎ、希ガスを導入可能なように構成する必要がある。
【符号の説明】
【0084】
2 処理室
41 コントローラ(制御部)
47a 供給管(配管)
91 原料ソース
100 流量制御器