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特許7489713キャパシタ寿命診断装置及びキャパシタ寿命診断方法
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  • 特許-キャパシタ寿命診断装置及びキャパシタ寿命診断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】キャパシタ寿命診断装置及びキャパシタ寿命診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240517BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01R31/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020186497
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076194
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一徳
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0155729(US,A1)
【文献】国際公開第2011/016214(WO,A1)
【文献】特開2017-011263(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183118(WO,A1)
【文献】特開平04-252505(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1590442(KR,B1)
【文献】国際公開第2021/014604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01R 31/00 - 31/01
G01R 31/36 - 31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相又は三相の入力電源とモータとの間に接続されるインバータに用いられるキャパシタの寿命を診断するためのキャパシタ寿命診断装置であって、
前記入力電源の電源電圧と、前記インバータの出力電力とから、前記電源電圧の整流後の整流器電圧を演算する整流器電圧演算手段と、
前記整流器電圧と、前記インバータ内のフィルタインダクタンス値とから、前記キャパシタのリプル電流を演算するリプル電流演算手段と、
前記リプル電流と、前記キャパシタに印加されるキャパシタ電圧をそれぞれ高速フーリエ変換して周波数成分毎に分離する高速フーリエ変換手段と、
周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して、前記キャパシタにおけるインピーダンスの周波数特性を演算する周波数特性演算手段と、
前記インピーダンスの周波数特性から、前記キャパシタにおける等価直列抵抗及びキャパシタンスを演算するESR及びキャパシタンス演算手段と、
予め設定された寿命判定基準と、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを比較して、前記キャパシタの寿命を判定する寿命判定手段とを備えたことを特徴とするキャパシタ寿命診断装置。
【請求項2】
請求項1記載のキャパシタ寿命診断装置において、前記周波数特性演算手段は、周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して求められる周波数成分毎のインピーダンス値を最小二乗法により近似して前記インピーダンスの周波数特性曲線を作成し、前記ESR及びキャパシタンス演算手段は、前記インピーダンスの周波数特性曲線に基づいて、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを算出することを特徴とするキャパシタ寿命診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のキャパシタ寿命診断装置において、前記寿命判定手段は、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスのいずれか一方又は双方が前記寿命判定基準を満たさない時に、前記キャパシタは寿命であると判定することを特徴とするキャパシタ寿命診断装置。
【請求項4】
単相又は三相の入力電源とモータとの間に接続されるインバータに用いられるキャパシタの寿命を診断するためのキャパシタ寿命診断方法であって、
前記入力電源の電源電圧と、前記インバータの出力電力とから、前記電源電圧の整流後の整流器電圧を演算する第1の工程と、
前記整流器電圧と、前記インバータ内のフィルタインダクタンス値とから、前記キャパシタのリプル電流を演算する第2の工程と、
前記リプル電流と、前記キャパシタに印加されるキャパシタ電圧をそれぞれ高速フーリエ変換して周波数成分毎に分離する第3の工程と、
周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して、前記キャパシタにおけるインピーダンスの周波数特性を演算する第4の工程と、
前記インピーダンスの周波数特性から、前記キャパシタにおける等価直列抵抗及びキャパシタンスを演算する第5の工程と、
予め設定された寿命判定基準と、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを比較して、前記キャパシタの寿命を判定する第6の工程とを備えたことを特徴とするキャパシタ寿命診断方法。
【請求項5】
請求項4記載のキャパシタ寿命診断方法において、前記第4の工程では、周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して求められる周波数成分毎のインピーダンス値を最小二乗法により近似して前記インピーダンスの周波数特性曲線を作成し、前記第5の工程では、前記インピーダンスの周波数特性曲線に基づいて、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを算出することを特徴とするキャパシタ寿命診断方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載のキャパシタ寿命診断方法において、前記第6の工程では、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスのいずれか一方又は双方が前記寿命判定基準を満たさない時に、前記キャパシタは寿命であると判定することを特徴とするキャパシタ寿命診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に産業用モータ駆動システム等におけるモータの駆動(制御)に用いられるインバータ内のキャパシタの寿命を、電流センサを用いることなく診断することができるキャパシタ寿命診断装置及びキャパシタ寿命診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械、産業機械及び各種ロボット等におけるモータの駆動(制御)にはインバータが用いられている。このインバータは、交流電源から入力される交流電力を整流器(コンバータ回路、順変換器)により一旦、直流電力に変換(整流)した後、その直流電力をインバータ回路(逆変換器)により交流電力に変換して、モータの駆動電力として供給し、モータの速度、トルク又は回転子の位置を制御するものである。整流器とインバータ回路の間には、整流器で整流された電圧の変動を平滑化するためにキャパシタ(コンデンサ)が設けられるが、このキャパシタは充放電の繰り返しにより劣化し、キャパシタンス(静電容量)が減少して寿命に至る。従って、キャパシタの寿命を適宜、診断(モニタリング)し、交換する必要がある。そこで、従来、キャパシタ寿命診断のためのモニタリング手法として、等価直列抵抗(ESR)のみを対象とした簡易な手法が用いられてきたが、現在では、ESRだけでなく、キャパシタンスのモニタリングも必要不可欠であることが解明されている。また、その他の従来技術として、キャパシタのモニタリングのために、電流センサを用いる手法(例えば、特許文献1、特許文献2)や、電流センサを用いずキャパシタ電流を推定する手法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-164453号公報
【文献】特開2009-128194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のうち、電流センサを用いる手法は広く用いられているが、電流センサの追加コストが必要となるだけでなく、回路構造の大きな変更が必要であり、大幅なコスト増加を招くという課題があった。また、電流センサを用いずキャパシタ電流を推定する手法では、キャパシタ寿命診断の指標であるESRとキャパシタンスの双方をモニタリングすることは不可能であり、信頼性に欠けるという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、電流センサを用いることなく、ESRとキャパシタンスの双方をモニタリングすることができ、低コストで高精度なキャパシタ寿命診断を実現してインバータの信頼性を向上させ、モータ駆動用インバータの普及拡大を図り、省エネルギー化に貢献できるキャパシタ寿命診断装置及びキャパシタ寿命診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係るキャパシタ寿命診断装置は、単相又は三相の入力電源とモータとの間に接続されるインバータに用いられるキャパシタの寿命を診断するためのキャパシタ寿命診断装置であって、
前記入力電源の電源電圧と、前記インバータの出力電力とから、前記電源電圧の整流後の整流器電圧を演算する整流器電圧演算手段と、
前記整流器電圧と、前記インバータ内のフィルタインダクタンス値とから、前記キャパシタのリプル電流を演算するリプル電流演算手段と、
前記リプル電流と、前記キャパシタに印加されるキャパシタ電圧をそれぞれ高速フーリエ変換して周波数成分毎に分離する高速フーリエ変換手段と、
周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して、前記キャパシタにおけるインピーダンスの周波数特性を演算する周波数特性演算手段と、
前記インピーダンスの周波数特性から、前記キャパシタにおける等価直列抵抗及びキャパシタンスを演算するESR及びキャパシタンス演算手段と、
予め設定された寿命判定基準と、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを比較して、前記キャパシタの寿命を判定する寿命判定手段とを備える。
【0006】
第1の発明に係るキャパシタ寿命診断装置において、前記周波数特性演算手段は、周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して求められる周波数成分毎のインピーダンス値を最小二乗法により近似して前記インピーダンスの周波数特性曲線を作成し、前記ESR及びキャパシタンス演算手段は、前記インピーダンスの周波数特性曲線に基づいて、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを算出することが好ましい。
【0007】
第1の発明に係るキャパシタ寿命診断装置において、前記寿命判定手段は、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスのいずれか一方又は双方が前記寿命判定基準を満たさない時に、前記キャパシタは寿命であると判定することが好ましい。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るキャパシタ寿命診断方法は、単相又は三相の入力電源とモータとの間に接続されるインバータに用いられるキャパシタの寿命を診断するためのキャパシタ寿命診断方法であって、
前記入力電源の電源電圧と、前記インバータの出力電力とから、前記電源電圧の整流後の整流器電圧を演算する第1の工程と、
前記整流器電圧と、前記インバータ内のフィルタインダクタンス値とから、前記キャパシタのリプル電流を演算する第2の工程と、
前記リプル電流と、前記キャパシタに印加されるキャパシタ電圧をそれぞれ高速フーリエ変換して周波数成分毎に分離する第3の工程と、
周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して、前記キャパシタにおけるインピーダンスの周波数特性を演算する第4の工程と、
前記インピーダンスの周波数特性から、前記キャパシタにおける等価直列抵抗及びキャパシタンスを演算する第5の工程と、
予め設定された寿命判定基準と、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを比較して、前記キャパシタの寿命を判定する第6の工程とを備える。
【0009】
第2の発明に係るキャパシタ寿命診断方法において、前記第4の工程では、周波数成分毎に分離された前記キャパシタ電圧を周波数成分毎に分離された前記リプル電流で除して求められる周波数成分毎のインピーダンス値を最小二乗法により近似して前記インピーダンスの周波数特性曲線を作成し、前記第5の工程では、前記インピーダンスの周波数特性曲線に基づいて、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスを算出することが好ましい。
【0010】
第2の発明に係るキャパシタ寿命診断方法において、前記第6の工程では、前記等価直列抵抗及び前記キャパシタンスのいずれか一方又は双方が前記寿命判定基準を満たさない時に、前記キャパシタは寿命であると判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係るキャパシタ寿命診断装置及び第2の発明に係るキャパシタ寿命診断方法は、電流センサを用いることなく、電源電圧、フィルタインダクタンス値及び出力電力からキャパシタのリプル電流を算出し、そのリプル電流とキャパシタ電圧をそれぞれ高速フーリエ変換(FFT)して周波数成分を抽出し、キャパシタにおけるインピーダンスの周波数特性を求め、ESRとキャパシタンスの双方をモニタリングすることにより、低コストでありながら高精度な寿命診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係るキャパシタ寿命診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】同装置及び同装置で用いられるキャパシタ寿命診断方法が適用されるモータ駆動システムの構成図である。
図3】同方法の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1に示す本発明の一実施の形態に係るキャパシタ寿命診断装置10及びキャパシタ寿命診断方法は、図2に示すモータ駆動システム11に適用されて、モータ12の駆動(制御)に用いられるインバータ13内のキャパシタ14の寿命を、電流センサを用いることなく診断するものである。
モータ駆動システム11は、図2に示すように、三相の入力電源(交流電源)16から入力される交流電力をインバータ13内の整流器17により一旦、直流電力に変換(整流)した後、その直流電力をインバータ13内のインバータ回路18により交流電力に変換して、モータ12の駆動電力として供給し、モータ12の速度、トルク又は回転子の位置を制御している。ここで、整流器17で整流された電圧の変動を平滑化するために、整流器17とインバータ回路18の間に、キャパシタ14が設けられている。また、整流器17とキャパシタ14の間には、高調波(ノイズ)を抑制するために、フィルタインダクタ(直流リアクトル、Ldc)19が設けられている。なお、図2は、モータ駆動システム11の基本的な構成を示しているが、キャパシタ寿命診断装置10及びキャパシタ寿命診断方法の適用対象は、これに限定されるものではなく、キャパシタを内蔵したインバータに広く適用することができる。
【0014】
図1に示すように、キャパシタ寿命診断装置10は、入力電源16の電源電圧Vと、インバータ13の出力電力Pとから、電源電圧Vの整流後の整流器電圧Vを演算する整流器電圧演算手段20を有する。ここで、整流器電圧Vは、三相の電源電圧Vを全波整流したものである。
次に、キャパシタ寿命診断装置10は、整流器電圧Vと、インバータ13内のフィルタインダクタンス値(フィルタインダクタ19のインピーダンス)とから、キャパシタ14のリプル電流I(t)を演算するリプル電流演算手段21を有する。
また、キャパシタ寿命診断装置10は、リプル電流演算手段21で求められたリプル電流I(t)と、キャパシタ14に印加されるキャパシタ電圧Vをそれぞれ高速フーリエ変換して周波数成分毎に分離する高速フーリエ変換手段22を有する。
【0015】
さらに、キャパシタ寿命診断装置10は、周波数成分毎に分離されたキャパシタ電圧V(f)を周波数成分毎に分離されたリプル電流I(f)で除して、キャパシタ14におけるインピーダンスZ(f)の周波数特性を演算する周波数特性演算手段23と、周波数特性演算手段23で求められたインピーダンスZ(f)の周波数特性から、キャパシタ14における等価直列抵抗(ESR)及びキャパシタンスを演算するESR及びキャパシタンス演算手段24を有する。ここで、周波数特性演算手段23としては、周波数成分毎に分離されたキャパシタ電圧V(f)を周波数成分毎に分離されたリプル電流I(f)で除して求められる周波数成分毎のインピーダンス値を最小二乗法により近似してインピーダンスZ(f)の周波数特性曲線を作成するものが好適に用いられ、ESR及びキャパシタンス演算手段24は、作成されたインピーダンスZ(f)の周波数特性曲線に基づいて、等価直列抵抗及びキャパシタンスを算出することができる。
【0016】
そして、キャパシタ寿命診断装置10は、予め設定された寿命判定基準と、等価直列抵抗及びキャパシタンスを比較して、キャパシタ14の寿命を判定する寿命判定手段25を有する。寿命判定手段25は、等価直列抵抗及びキャパシタンスのいずれか一方又は双方が寿命判定基準を満たさない時に、キャパシタ14が寿命であると判定することができる。寿命判定手段25は、例えば、健全な(初期の)等価直列抵抗の値の2倍及び健全な(初期の)キャパシタンスの値の0.8倍を、等価直列抵抗及びキャパシタンスの寿命判定基準として、求められた等価直列抵抗の値が、健全な(初期の)等価直列抵抗の値の2倍を超えた時、或いは、求められたキャパシタンスの値が、健全な(初期の)キャパシタンスの値の0.8倍未満(健全なキャパシタンスの値より20%を超えて減少)になった時に、寿命であると判定することが好ましいが、寿命判定基準は、これに限定されるものではない。
【0017】
キャパシタ寿命診断装置10としては、RAM、CPU、ROM等を備えた従来公知の演算器(即ち、コンピュータ又はマイコンボード)を用いることができる。そして、キャパシタ寿命診断方法を実行するプログラム(ソフトウェア)が、キャパシタ寿命診断装置10にインストールされ、実行されることにより、キャパシタ寿命診断装置10を上記の整流器電圧演算手段20、リプル電流演算手段21、高速フーリエ変換手段22、インピーダンスの周波数特性演算手段23、ESR及びキャパシタンス演算手段24及び寿命判定手段25として機能させることができる。
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るキャパシタ寿命診断装置10で用いられるキャパシタ寿命診断方法を各手段の動作に基づいて説明する。
図3に示すように、まず、入力電源16の電源電圧Vと、インバータ13の出力電力Pが、整流器電圧演算手段20に入力され、電源電圧Vの整流後の整流器電圧Vが求められる(以上、第1の工程)。
次に、整流器電圧演算手段20で求められた整流器電圧Vと、インバータ13内のフィルタインダクタンス値(フィルタインダクタ19のインピーダンス)が、リプル電流演算手段21に入力され、キャパシタ14のリプル電流I(t)が求められる(以上、第2の工程)。
次に、リプル電流演算手段21で求められたリプル電流I(t)と、キャパシタ14に印加されるキャパシタ電圧Vが、高速フーリエ変換手段22でそれぞれ高速フーリエ変換され、周波数成分毎に分離される(以上、第3の工程)。
次に、周波数特性演算手段23で、周波数成分毎に分離されたキャパシタ電圧V(f)が、周波数成分毎に分離されたリプル電流I(f)で除されて、キャパシタ14におけるインピーダンスZ(f)の周波数特性が求められる。このとき、周波数特性演算手段23は、周波数成分毎に分離されたキャパシタ電圧V(f)を周波数成分毎に分離されたリプル電流I(f)で除して求められる周波数成分毎のインピーダンス値を最小二乗法により近似してインピーダンスZ(f)の周波数特性曲線を作成することが好ましい。なお、周波数特性曲線を最小二乗法以外の方法で近似できる場合は、その他の近似方法を用いてもよい(以上、第4の工程)。
次に、ESR及びキャパシタンス演算手段24で、周波数特性演算手段23で求められたインピーダンスZ(f)の周波数特性から、キャパシタ14における等価直列抵抗及びキャパシタンスが求められる。このとき、インピーダンスZ(f)の周波数特性曲線が作成されていれば、それに基づいて、等価直列抵抗及びキャパシタンスを容易に算出することができる(以上、第5の工程)。
次に、寿命判定手段25で、予め設定された寿命判定基準と、ESR及びキャパシタンス演算手段24で求められた等価直列抵抗及びキャパシタンスが比較され、キャパシタ14の寿命が判定される。このとき、等価直列抵抗及びキャパシタンスのいずれか一方でも寿命判定基準を満たさない時に、キャパシタ14が寿命であると判定することにより、キャパシタ14の寿命を的確に判断することができる(以上、第6の工程)。
【0019】
以上説明したように、キャパシタ寿命診断装置10及びキャパシタ寿命診断方法を用いることにより、電流センサを用いることなく、対象となるモータ駆動システム11のキャパシタ14における等価直列抵抗及びキャパシタンスをモニタリングして、キャパシタ14の寿命を的確に判定することができる。また、このように電流センサを用いないキャパシタ寿命診断装置10及びキャパシタ寿命診断方法は、既存のモータ駆動システム(インバータ)に対して、回路の変更(改造)等を行うことなく容易に適用することができ、低コストで精度の高い寿命診断を実現してインバータの信頼性を向上させ、モータ駆動用インバータの普及拡大を図り、省エネルギー化にも貢献することができる。
【0020】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
なお、上記実施の形態では、モータ駆動システムに対して、三相の入力電源から交流電力が入力される場合について説明したが、入力電源は単相でもよい。
【符号の説明】
【0021】
10:キャパシタ寿命診断装置、11:モータ駆動システム、12:モータ、13:インバータ、14:キャパシタ、16:入力電源(交流電源)、17:整流器、18:インバータ回路、19:フィルタインダクタ、20:整流器電圧演算手段、21:リプル電流演算手段、22:高速フーリエ変換手段、23:周波数特性演算手段、24:ESR及びキャパシタンス演算手段、25:寿命判定手段
図1
図2
図3