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特許7489819非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法および非水電解液二次電池用積層セパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法および非水電解液二次電池用積層セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20240517BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240517BHJP
   C08J 9/42 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240517BHJP
   B32B 37/06 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240517BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/423
H01M50/414
C08J9/42 CES
B32B5/32
B32B7/022
B32B37/06
B32B27/32 Z
B32B27/30 A
B32B7/025
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020078555
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021174709
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩史
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212445(JP,A)
【文献】特開2019-212446(JP,A)
【文献】特開2017-081164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
C08J 9/42
B32B 5/32
B32B 7/022
B32B 37/06
B32B 27/32
B32B 27/30
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備える非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法であって、
減率乾燥期間において前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層とを備えるセパレータ原反を加熱する温度を調節することにより、前記非水電解液二次電池用積層セパレータが下記式(1)を満たすように制御する工程を含む、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
100×(TL1-TL0)/TL0-100×(TB1-TB0)/TB0<22 ・・・(1)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L1:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B1:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
【請求項2】
前記減率乾燥期間において前記非水電解液二次電池用積層セパレータがさらに下記式(2)を満たすように制御する、請求項1に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
100×(TL2-TL0)/TL0-100×(TB2-TB0)/TB0<36 ・・・(2)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L2:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B2:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
【請求項3】
前記減率乾燥期間において前記非水電解液二次電池用積層セパレータがさらに下記式(3)を満たすように制御する、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
100×(TL3-TL0)/TL0-100×(TB3-TB0)/TB0<60 ・・・(3)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L3:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B3:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
【請求項4】
前記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミド系樹脂がアラミド樹脂である、請求項4に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
【請求項6】
ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備え、下記式(1)を満たす、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
100×(TL1-TL0)/TL0-100×(TB1-TB0)/TB0<22 ・・・(1)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L1:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B1:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
【請求項7】
さらに下記式(2)を満たす、請求項6に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
100×(TL2-TL0)/TL0-100×(TB2-TB0)/TB0<36 ・・・(2)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L2:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B2:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
【請求項8】
さらに下記式(3)を満たす、請求項6または7に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
100×(TL3-TL0)/TL0-100×(TB3-TB0)/TB0<60 ・・・(3)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L3:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B3:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
【請求項9】
前記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される樹脂である、請求項6~8のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項10】
前記ポリアミド系樹脂がアラミド樹脂である、請求項9に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法および非水電解液二次電池用積層セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められてきている。その非水電解液二次電池の部材として、セパレータの開発が進められている。
【0003】
ところで、特許文献1には、ポリエチレン樹脂からなる微多孔膜が開示されており、非水電解液系電池用セパレータとしても利用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-016930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セパレータとしては、基材上に、樹脂を含む多孔質層を積層させた積層セパレータも知られている。しかしながら、上述のような従来技術では、基材の製造方法が開示されているにすぎず、積層セパレータに適した製造方法、カール量を抑えた、またはカールの無い積層セパレータを実現する観点からは改善の余地があった。
【0006】
本発明の一態様は、カール量を抑えた、またはカールの無い積層セパレータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を行った結果、積層セパレータが特定の式を満たすように減率乾燥期間における温度を調節することにより、得られる積層セパレータのカールを改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の態様を含む。
【0008】
<1>ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備える非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法であって、減率乾燥期間において前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層とを備えるセパレータ原反を加熱する温度を調節することにより、前記非水電解液二次電池用積層セパレータが下記式(1)を満たすように制御する工程を含む、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
100×(TL1-TL0)/TL0-100×(TB1-TB0)/TB0<22 ・・・(1)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L1:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B1:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0009】
<2>前記減率乾燥期間において前記非水電解液二次電池用積層セパレータがさらに下記式(2)を満たすように制御する、<1>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
100×(TL2-TL0)/TL0-100×(TB2-TB0)/TB0<36 ・・・(2)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L2:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B2:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0010】
<3>前記減率乾燥期間において前記非水電解液二次電池用積層セパレータがさらに下記式(3)を満たすように制御する、<1>または<2>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
100×(TL3-TL0)/TL0-100×(TB3-TB0)/TB0<60 ・・・(3)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L3:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B3:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0011】
<4>前記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される樹脂である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
【0012】
<5>前記ポリアミド系樹脂がアラミド樹脂である、<4>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法。
【0013】
<6>ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備え、下記式(1)を満たす、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
100×(TL1-TL0)/TL0-100×(TB1-TB0)/TB0<22 ・・・(1)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L1:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B1:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0014】
<7>さらに下記式(2)を満たす、<6>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
100×(TL2-TL0)/TL0-100×(TB2-TB0)/TB0<36 ・・・(2)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L2:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B2:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0015】
<8>さらに下記式(3)を満たす、<6>または<7>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
100×(TL3-TL0)/TL0-100×(TB3-TB0)/TB0<60 ・・・(3)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L3:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B3:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0016】
<9>前記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される樹脂である、<6>~<8>のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0017】
<10>前記ポリアミド系樹脂がアラミド樹脂である、<9>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、カール量を抑えた、またはカールの無い積層セパレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】カール発生の原理を説明するための模式図である。
図2】乾燥期間の分類を説明するための図である。
図3】実施例におけるカール量測定装置の概略図である。
図4図3におけるCC’を積層セパレータ10の面に垂直な方向から見た拡大図である。
図5図4の積層セパレータ10をCC’方向から見たD-D’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0021】
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書において、MD方向とは、セパレータ原反の搬送方向を意図している。また、TD方向とは、セパレータ原反の面に水平な方向であって、かつ、MD方向に垂直な方向を意図している。
【0022】
〔1.カール発生の原理〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備える。本明細書において、非水電解液二次電池用積層セパレータを単に「積層セパレータ」とも称する。また、ポリオレフィン多孔質フィルムを単に「多孔質フィルム」とも称する。本明細書において、セパレータ原反とは、裁断する前の長尺かつ幅広の積層セパレータを意味する。
【0023】
セパレータ原反および積層セパレータは、例えば、基材となる多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む塗工液を塗布し、次いで乾燥させる方法により得られる。この乾燥によって多孔質層が収縮し、その結果、積層セパレータにカールが発生し得る。
【0024】
図1は、カール発生の原理を説明するための模式図である。多孔質フィルム1上に多孔質層2を備えたセパレータ原反10aを乾燥させると、溶媒の蒸発に伴って多孔質層2が収縮し易いため、セパレータ原反10bのように多孔質層2側へカールする。さらに乾燥が進むと多孔質層2の収縮率と多孔質フィルム1の収縮率のバランスが最適化され、セパレータ原反10cのようにカールが解消される。しかし、過度に乾燥が進むと、多孔質層2に比べて多孔質フィルム1の収縮が大きくなり、セパレータ原反10dのように多孔質フィルム1側へカールする。このことから、本発明者は、乾燥条件を最適化することにより、カール量を抑えた、またはカールの無い積層セパレータを実現できることを見出した。
【0025】
また、一般的な材料の乾燥期間は、3段階に分類される。図2は、乾燥期間の分類を説明するための図である。なお、図2に示される曲線の形状はあくまで一例である。まず、乾燥時間が進むにつれて、材料の表面温度が上昇するとともに含水率が徐々に低下し始める加熱期間がある。次に、材料の表面温度がほぼ一定であるが、含水率の低下が進む恒率乾燥期間が訪れる。その後、材料の表面温度が再び上昇し、含水率が平衡含水率に近づく減率乾燥期間が訪れる。
【0026】
積層セパレータの場合、この乾燥期間における多孔質フィルムの収縮率と多孔質層の収縮率との差が大きいとカール量が大きくなる。特に、上述の多孔質層側へのカールが一旦解消されて、その後、多孔質フィルム側へのカールが生じる現象は、減率乾燥期間において生じる傾向にあることを本発明者は見出した。このことから、本発明者は、減率乾燥期間においてセパレータ原反を加熱する温度を調節することに着目した。
【0027】
さらに、本発明者は鋭意研究を重ね、引張試験における積層セパレータの引張伸度と、該積層セパレータから剥離した多孔質フィルムの引張伸度との差がカール量を反映していること、また、減率乾燥期間における温度の調節により引張伸度の差を制御できることを見出した。これらに基づき、本発明者は、後述する本発明の一実施形態に係る製造方法を完成させるに至った。
【0028】
〔2.非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法は、ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備える非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法であって、減率乾燥期間において前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層とを備えるセパレータ原反を加熱する温度を調節することにより、前記非水電解液二次電池用積層セパレータが下記式(1)を満たすように制御する工程を含む。
100×(TL1-TL0)/TL0-100×(TB1-TB0)/TB0<22 ・・・(1)
L0:非水電解液二次電池用積層セパレータのTD方向の長さ。
L1:非水電解液二次電池用積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
B0:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の長さ。
B1:非水電解液二次電池用積層セパレータから剥離したポリオレフィン多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaとなるときのTD方向の長さ。
【0029】
式(1)中、100×(TL1-TL0)/TL0は、積層セパレータの引張伸度を表している。また、100×(TB1-TB0)/TB0は、積層セパレータから剥離された多孔質フィルムの引張伸度を表している。すなわち、式(1)の左辺は引張伸度の差を表している。本明細書において、この式(1)の左辺で表される引張伸度の差を、「80MPa引張伸度差」とも称する。本発明者は、この80MPa引張伸度差が22%未満である場合に、カール量を抑えた、またはカールの無い積層セパレータを得られることを見出した。そして、上述のように減率乾燥期間における温度を調節することにより、80MPa引張伸度差を制御することができる。80MPa引張伸度差は20%以下であることがより好ましく、18%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
また、前記非水電解液二次電池用積層セパレータがさらに下記式(2)を満たすように制御することが好ましい。
100×(TL2-TL0)/TL0-100×(TB2-TB0)/TB0<36 ・・・(2)
L0およびTB0は上述のとおりである。TL2は、積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さを表す。TB2は、積層セパレータから剥離した多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が100MPaとなるときのTD方向の長さを表す。本明細書において、この式(2)の左辺で表される引張伸度の差を、「100MPa引張伸度差」とも称する。100MPa引張伸度差は35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
また、前記非水電解液二次電池用積層セパレータがさらに下記式(3)を満たすように制御することが好ましい。
100×(TL3-TL0)/TL0-100×(TB3-TB0)/TB0<60 ・・・(3)
L0およびTB0は上述のとおりである。TL3は、積層セパレータを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さである。TB3は、積層セパレータから剥離した多孔質フィルムを23℃でTD方向に引っ張って引張応力が120MPaとなるときのTD方向の長さである。本明細書において、この式(2)の左辺で表される引張伸度の差を、「120MPa引張伸度差」とも称する。120MPa引張伸度差は55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
<ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法>
多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であり、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、ポリオレフィン系樹脂と、無機充填剤または可塑剤等の孔形成剤と、任意で酸化防止剤等とを混練した後に押し出すことにより、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を作製する。そして、適当な溶媒にて孔形成剤をシート状のポリオレフィン樹脂組成物から除去する。その後、当該孔形成剤が除去されたポリオレフィン樹脂組成物を延伸することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを製造することができる。
【0034】
前記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が5×10~15×10の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、非水電解液二次電池用セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂である前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体が挙げられる。前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0036】
このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。なお、この過大電流が流れることを阻止することをシャットダウンともいう。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0037】
上記無機充填剤としては、特に限定されるものではなく、無機フィラー、具体的には炭酸カルシウム等が挙げられる。上記可塑剤としては、特に限定されるものではなく、流動パラフィン等の低分子量の炭化水素が挙げられる。
【0038】
多孔質フィルムの製造方法として、具体的には、以下に示すような工程を含む方法を挙げることができる。
【0039】
(i)超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウムまたは可塑剤等の孔形成剤と、酸化防止剤とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程。
【0040】
(ii)得られたポリオレフィン樹脂組成物を一対の圧延ローラで圧延し、速度比を変えた巻き取りローラで引っ張りながら段階的に冷却し、シートを成形する工程。
【0041】
(iii)得られたシートの中から適当な溶媒にて孔形成剤を除去する工程。
【0042】
(iv)孔形成剤が除去されたシートを適当な延伸倍率にて延伸する工程。
【0043】
多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、6~15μmであることがさらに好ましい。
【0044】
多孔質フィルムの重量目付は、強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。ただし、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、前記重量目付は、4~20g/mであることが好ましく、4~12g/mであることがより好ましく、5~10g/mであることがさらに好ましい。
【0045】
多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30~500s/100mLであることが好ましく、50~300s/100mLであることがより好ましい。多孔質フィルムが前記透気度を有することにより、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0046】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止する機能を得ることができるように、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極および負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0047】
<多孔質層の製造方法>
多孔質層は、多孔質フィルムの片面または両面に形成され得る。多孔質層は、絶縁性の多孔質層であることが好ましい。
【0048】
樹脂を溶媒に溶解または分散させると共に、フィラーを分散させることにより得られた塗工液を用いて、多孔質層を形成することができる。なお、前記溶媒は、樹脂を溶解させる溶媒であるとともに、樹脂またはフィラーを分散させる分散媒であるとも言える。塗工液の形成方法としては、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法等が挙げられる。
【0049】
多孔質層の形成方法としては、例えば、塗工液を多孔質フィルムの表面に塗布した後、溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0050】
前記樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0051】
前記樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0052】
上述の樹脂のうち、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーが好ましい。
【0053】
含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体およびエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等、並びに、前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムを挙げることができる。
【0054】
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどのアラミド樹脂が好ましい。
【0055】
アラミド樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0056】
ポリエステル系樹脂としては、ポリアリレートなどの芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルが好ましい。
【0057】
ゴム類としては、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0058】
融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド等を挙げることができる。
【0059】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。
【0060】
なお、多孔質層に用いられる樹脂としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
フィラーとしては、有機微粒子および無機微粒子が挙げられる。有機微粒子としては、上述の樹脂からなる微粒子が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライトおよびガラス等の無機物からなる微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子は、絶縁性微粒子である。上記微粒子は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記微粒子のうち、無機物からなる微粒子が好適であり、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、水酸化アルミニウム、またはベーマイト等の無機酸化物からなる微粒子がより好ましく、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、ベーマイトおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の微粒子がさらに好ましく、アルミナが特に好ましい。
【0063】
多孔質層における微粒子の含有量は、多孔質層の10~99重量%であることが好ましく、20~95重量%であることがより好ましい。微粒子の含有量を上記範囲とすることにより、十分なイオン透過性を得ることができると共に、多孔質層の力学特性および耐熱性を向上させることができる。
【0064】
前記溶媒は基材に悪影響を及ぼさず、前記樹脂を均一かつ安定に溶解し、前記フィラーを均一かつ安定に分散させる溶媒であることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、アルコール類(イソプロピルアルコール、エタノール等)および水、並びにこれら2種類以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0065】
前記塗工液は、樹脂およびフィラー以外の成分として、分散剤、可塑剤、界面活性剤およびpH調整剤等を適宜含んでいてもよい。
【0066】
塗工液の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、およびダイコーター法等が挙げられる。
【0067】
塗工液がアラミド樹脂を含む場合、塗布面に湿度を与えることによってアラミド樹脂を析出させることができる。これにより、多孔質層を形成してもよい。
【0068】
アラミド樹脂の調製方法としては、特に限定されないが、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合重合法が挙げられる。その場合、得られるアラミド樹脂は、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位で結合される繰り返し単位から実質的になる。パラ位に準じた配向位とは、例えば、4,4’-ビフェニレン、1,5-ナフタレン、2,6-ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に延びる配向位である。
【0069】
ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の溶液を調製する具体的な方法として、例えば、以下の(1)~(4)に示す工程を含む方法が挙げられる。
【0070】
(1)乾燥したフラスコにN-メチル-2-ピロリドンを仕込み、200℃で2時間乾燥した塩化カルシウムを添加して100℃に昇温し、上記塩化カルシウムを完全に溶解させる。
【0071】
(2)(1)にて得られた溶液の温度を室温に戻した後、パラフェニレンジアミンを添加し、このパラフェニレンジアミンを完全に溶解させる。
【0072】
(3)(2)にて得られた溶液の温度を20±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライドを10分割して約5分間おきに添加する。
【0073】
(4)(3)にて得られた溶液の温度を20±2℃に保ったまま1時間熟成し、次いで減圧下にて30分間撹拌して気泡を抜くことにより、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の溶液を得る。
【0074】
多孔質フィルムおよび析出後の多孔質層を洗浄する工程を含んでいてもよい。多孔質層がアラミド樹脂を含む場合には、洗浄液として、例えば、水、水系溶液、またはアルコール系溶液が好適に用いられる。
【0075】
<乾燥工程>
積層セパレータの製造方法は、洗浄後の多孔質層を乾燥させる乾燥工程を含み得る。乾燥工程において、少なくとも減率乾燥期間における温度を調節すればよい。減率乾燥期間における温度は、100℃超であることが好ましく、100℃超120℃以下であることがより好ましく、105~120℃であることがさらに好ましく、105~115℃であることが特に好ましい。
【0076】
乾燥工程において、異なる複数の温度で段階的に加熱してもよい。減率乾燥期間に至る前、すなわち、加熱期間および恒率乾燥期間において減率乾燥期間よりも低温で加熱してもよい。また、加熱期間、恒率乾燥期間および減率乾燥期間の順に温度を上昇させてもよい。加熱期間における温度は、100℃未満であることが好ましく、90℃以上100℃未満であることがより好ましい。恒率乾燥期間における温度は、90~110℃であることが好ましく、95~105℃であることがより好ましく、95~100℃であることがさらに好ましい。
【0077】
例えば、積層セパレータの製造方法は、乾燥工程として、第一の乾燥工程、第二の乾燥工程および第三の乾燥工程を含んでもよい。この第一の乾燥工程、第二の乾燥工程および第三の乾燥工程をそれぞれ、上述の加熱期間、恒率乾燥期間および減率乾燥期間に対応させてもよい。
【0078】
乾燥の手段としては、熱風乾燥およびローラ加熱が挙げられる。ローラ加熱では、加熱されたローラに、セパレータ原反を接触させることで、当該セパレータ原反を乾燥させる。ローラを加熱する方法としては、例えば、ローラ内部に熱媒を供給し、循環させる方法が挙げられる。この場合、上述の加熱温度は、熱媒の温度を表す。また、異なる種類の熱媒を用いることによって、セパレータ原反を異なる温度で加熱することができる。熱媒としては、例えば、温水、油、スチーム等が用いられる。例えば、低温のローラには温水を供給し、高温のローラにはスチームを供給してもよい。
【0079】
例えば、乾燥の手段として第一の加熱ローラ群、第二の加熱ローラ群および第三の加熱ローラ群を用いてもよい。これらを上述の加熱期間、恒率乾燥期間および減率乾燥期間に対応させてもよい。
【0080】
〔3.非水電解液二次電池用積層セパレータ〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも片面に樹脂を含む多孔質層とを備え、上述の式(1)を満たす。また、当該積層セパレータは、さらに上述の式(2)および/または式(3)を満たすことが好ましい。
【0081】
多孔質層は、非水電解液二次電池を構成する部材として、多孔質フィルムと、正極および負極の少なくともいずれか一方との間に配置され得る。多孔質層は、多孔質フィルムと、正極および負極の少なくともいずれか一方との間に、これらと接するように配置されてもよい。多孔質フィルムと正極および負極の少なくともいずれか一方との間に配置される多孔質層は1層でもよく2層以上であってもよい。多孔質層は、絶縁性の多孔質層であることが好ましい。
【0082】
多孔質フィルムの片面に多孔質層が積層される場合には、当該多孔質層は、好ましくは、多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層される。より好ましくは、当該多孔質層は、正極と接する面に積層される。
【0083】
多孔質層の膜厚は、電池安全性および高エネルギー密度を確保する観点から、多孔質層一層当たり0.5μm~10μmの範囲であることが好ましく、1μm~8μmの範囲であることがより好ましい。多孔質層の膜厚が一層当たり0.5μm以上であると、非水電解液二次電池の破損等による内部短絡を充分に抑制することができ、また、多孔質層における電解液の保持量が充分となる。一方、多孔質層の膜厚が一層当たり10μm以下であれば、非水電解液二次電池において、リチウムイオンの透過抵抗が抑えられるので、レート特性およびサイクル特性の低下を抑えることができる。また、正極および負極間の距離の増加も抑えられるので非水電解液二次電池の内部容積効率の低下を抑えることができる。
【0084】
多孔質層の重量目付は、多孔質層の強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。多孔質層の重量目付は、多孔質層一層当たり、0.5~10.0g/mであることが好ましく、0.5~8.0g/mであることがより好ましく、0.5~5.0g/mであることが更に好ましい。多孔質層の重量目付をこれらの数値範囲とすることにより、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができる。多孔質層の重量目付が前記範囲を超える場合には、非水電解液二次電池が重くなる傾向がある。
【0085】
多孔質層の空隙率は、充分なイオン透過性を得ることができるように、20~90体積%であることが好ましく、30~80体積%であることがより好ましい。また、多孔質層が有する細孔の孔径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。細孔の孔径をこれらのサイズとすることにより、非水電解液二次電池は、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0086】
〔4.非水電解液二次電池用部材、非水電解液二次電池〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されている。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータを備える。非水電解液二次電池の形状は、特に限定されるものではなく、薄板(ペーパー)型、円盤型、円筒型、直方体等の角柱型等であってもよい。
【0087】
非水電解液二次電池の製造方法としては、従来公知の製造方法を採用することができる。例えば、正極、積層セパレータおよび負極をこの順で配置することにより非水電解液二次電池用部材を形成する。ここで、多孔質層は、ポリオレフィン多孔質フィルムと正極および負極の少なくとも一方との間に存在し得る。次いで、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れる。当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉する。これにより、非水電解液二次電池を製造することができる。
【0088】
<正極>
本発明の一実施形態における正極は、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されない。例えば、正極として、正極活物質および結着剤を含む活物質層が正極集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0089】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンまたはナトリウムイオン等の金属イオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、CoおよびNi等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0090】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0092】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Niおよびステンレス等の導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0093】
正極シートの製造方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にした後、当該ペーストを正極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0094】
<負極>
本発明の一実施形態における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されない。例えば、負極として、負極活物質および結着剤を含む活物質層が負極集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0095】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンまたはナトリウムイオン等の金属イオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、例えば、炭素質材料等が挙げられる。炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックおよび熱分解炭素類等が挙げられる。
【0096】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Niおよびステンレス等が挙げられる。リチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0097】
負極シートの製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にした後、当該ペーストを負極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは上述の導電剤および結着剤が含まれる。
【0098】
<非水電解液>
本発明の一実施形態における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であれば特に限定されない。前記非水電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩およびLiAlCl等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、カーバメート類および含硫黄化合物、並びにこれらの有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例
【0100】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0101】
〔測定方法〕
実施例および比較例における各種の測定を、以下の方法によって行った。
【0102】
<TD方向の引張伸度差>
実施例および比較例で得られた積層セパレータからMD方向5mm×TD方向55mmの試験片(A)を切り出した。この試験片(A)のTD方向の長さ(mm)をTL0とした。
【0103】
試験片(A)を、引張強度試験機を用いて引張速度10mm/minにて23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaに達した時のTD方向の長さを測定した。この時のTD方向の長さ(mm)をTL1とした。
【0104】
同様にして実施例で得られた積層セパレータの多孔質層側に剥離テープを貼付し、当該剥離テープを剥離することで、多孔質層が除去されたポリオレフィン多孔質フィルムを得た。このポリオレフィン多孔質フィルムをMD方向5mm×TD方向55mmに切り出し、試験片(B)を得た。この試験片(B)のTD方向の長さ(mm)をTB0とした。
【0105】
試験片(B)を、引張強度試験機を用いて引張速度10mm/minにて23℃でTD方向に引っ張って引張応力が80MPaに達した時のTD方向の長さを測定した。この時のTD方向の長さ(mm)をTB1とした。
【0106】
得られたTL0、TL1、TB0、TB1から下記式(1’)を用いて80MPa引張伸度差を求めた。
80MPa引張伸度差(%)=100×(TL1-TL0)/TL0-100×(TB1-TB0)/TB0 (1’)
同様にして、試験片(A)をTD方向に引っ張って引張応力が100MPaに達した時のTD方向の長さを測定した。この時のTD方向の長さ(mm)をTL2とした。また、試験片(B)をTD方向に引っ張って引張応力が100MPaに達した時のTD方向の長さを測定した。この時のTD方向の長さ(mm)をTB2とした。
【0107】
得られたTL0、TL2、TB0、TB2から下記式(2’)を用いて100MPa引張伸度差を求めた。
100MPa引張伸度差(%)=100×(TL2-TL0)/TL0-100×(TB2-TB0)/TB0 (2’)
さらに同様にして、試験片(A)をTD方向に引っ張って引張応力が120MPaに達した時のTD方向の長さを測定した。この時のTD方向の長さ(mm)をTL3とした。また、試験片(B)をTD方向に引っ張って引張応力が120MPaに達した時のTD方向の長さを測定した。この時のTD方向の長さ(mm)をTB3とした。
【0108】
得られたTL0、TL3、TB0、TB3から下記式(3’)を用いて120MPa引張伸度差を求めた。
100MPa引張伸度差(%)=100×(TL3-TL0)/TL0-100×(TB3-TB0)/TB0 (3’)
<カール量>
図3は、積層セパレータ10のカール量Wの測定に用いる測定装置の概略図である。測定装置6は、コア101と、ローラ102aおよび102bと、ストッパー103と、錘104とを含む。
【0109】
ローラ102aおよび102bは、互いに平行に配置されている。ローラ102aおよび102bは、互いに等しい直径を有する。Cは、ローラ102aと積層セパレータ10との接点である。C’は、ローラ102bと積層セパレータ10との接点である。CC’間の距離は1mである。
【0110】
以下にカール量の測定方法を説明する。まず、実施例および比較例で得られた積層セパレータ10をTD方向の長さが66.6mmとなるようにスリットし、MD方向に切り出した。その後、積層セパレータ10を、多孔質フィルム側を表にしてコア101に捲回した。
【0111】
次に積層セパレータ10をローラ102a、102bの順に経由するようにコア101から捲き出した。その後、コア101が回転しないようにストッパー103で固定した。積層セパレータ10の先端、すなわちコア101とは反対側の端部に錘104を取り付けた。
【0112】
図4は、図3のCC’間を積層セパレータ10の面に垂直な方向から見た拡大図である。CC’間の中心を、図4に示すようにDD’とする。DD’はCC’間で最もカール量が大きい箇所である。
【0113】
図5は、図4の積層セパレータ10をCC’方向から見たD-D’断面図である。図5は、上面側である多孔質フィルム側にカールしている積層セパレータ10を例示している。破線で示される積層セパレータ10’は、積層セパレータ10がカールしなかった場合の形状を想定しており、このときの積層セパレータ10のTD方向の長さをW1と定める。また、積層セパレータ10の面に対して垂直方向から投影した、最もカール量が大きい箇所の長さをW2と定める。なお、多孔質層側にカールしている積層セパレータにおいても同様にW1およびW2を規定できる。
【0114】
実施例および比較例で得られた積層セパレータに対して、カール量Wを下記式より求めた。
カール量W=W1-W2
なお、積層セパレータ10にかかる張力が22N/mとなるように150gの錘104を用いた場合と、張力が74N/mとなるように500gの錘104を用いた場合と、張力が90N/mとなるように610gの錘104を用いた場合とでカール量を測定した。これらのカール量をそれぞれ「22N/mカール量」、「74N/mカール量」、「90N/mカール量」とも称する。カール量の測定環境は、温度21℃、相対湿度57%、露点12.6℃であった。
【0115】
〔比較例1〕
<塗工液の作製>
攪拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコに、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)2200g、塩化カルシウム粉末151gを加えた。次いで、当該セパラブルフラスコの内容物を摂氏100度に昇温して、当該塩化カルシウム粉末を完全に溶解させた。次いで、当該セパラブルフラスコの内容物を室温に冷却した後に、パラフェニレンジアミン68.23gを加え完全に溶解させた。次いで、テレフタル酸ジクロライド124.97gをセパラブルフラスコに加え、摂氏20度において1時間撹拌した。これにより、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(以下PPTA)の6重量パーセント溶液を得た。得られたPPTA溶液100gに、NMP300gを加え、PPTAの1.5重量パーセント溶液を得た。得られた1.5重量パーセント溶液にアルミナC(日本アエロジル社製)6g、アドバンスドアルミナAA-03(住友化学社製)6gを加え、240分間攪拌した。さらに炭酸カルシウム0.73gを加え、240分間攪拌し、スラリー状塗工液を得た。
【0116】
<積層セパレータの作製>
膜厚10μmのポリエチレン多孔質フィルム上にスラリー状塗工液を連続塗工した。続いて、形成した塗布膜を、50℃、相対湿度70%の雰囲気下に導き、PPTAを析出させた。次に、PPTAを析出させた塗布膜を水洗することにより、塩化カルシウムおよび溶媒を除去した。その後、95℃の第一の加熱ローラ群と、95~100℃の第二の加熱ローラ群と、90~100℃の第三の加熱ローラ群とを順に用いて連続的に塗布膜を乾燥させることで、積層セパレータ捲回体を得た。主に、第一の加熱ローラ群は加熱期間、第二の加熱ローラ群は効率乾燥期間、第三の加熱ローラ群は減率乾燥期間に対応する。
【0117】
〔実施例1〕
第三の加熱ローラ群の温度を108~110℃に変更したこと以外は比較例1と同様にして、積層セパレータ捲回体を得た。
【0118】
〔実施例2〕
第三の加熱ローラ群の温度を111~113℃に変更したこと以外は比較例1と同様にして、積層セパレータ捲回体を得た。
【0119】
〔実施例3〕
第三の加熱ローラ群の温度を114~115℃に変更したこと以外は比較例1と同様にして、積層セパレータ捲回体を得た。
【0120】
〔実施例4〕
第三の加熱ローラ群の温度を117~118℃に変更したこと以外は比較例1と同様にして、積層セパレータ捲回体を得た。
【0121】
〔測定結果〕
測定結果を下記表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
80MPa引張伸度差が22%未満となるように減率乾燥温度を調整した実施例1~4は、80MPa引張伸度差が22%である比較例1に比べてカール量が抑えられていた。なお、カール量を測定する際に付与する張力が大きいほど、カール量は小さくなる。すなわち、各実施例間のカール量の差を観察しにくい。一方、カール量を測定する際に付与する張力が小さいほど、カール量は大きくなり易い。すなわち、各実施例間のカール量の差を観察し易い。実施例1~4は、22N/mという比較的小さな張力を付与した場合にも、74N/mまたは90N/mという比較的大きな張力を付与した場合にも、比較例1に比べてカール量が抑えられていることが分かる。積層セパレータは、リチウムイオン二次電池を作製する際、円筒型や、角型、ラミネート型等、電池形状に応じてさまざまな張力条件下において電極と積層され得る。実施例1~4の積層セパレータは、表1に示すように、種々の張力条件下においてもカールが小さい。すなわち、本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、リチウムイオン二次電池を作製する際の加工適性に優れていると言える。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の一態様は、カール量を抑えた、またはカールの無い非水電解液二次電池用積層セパレータの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 多孔質フィルム(ポリオレフィン多孔質フィルム)
2 多孔質層
10、10’ 積層セパレータ(非水電解液二次電池用積層セパレータ)
10a~d セパレータ原反
図1
図2
図3
図4
図5