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特許7490169飛行システム及びそれに用いられる係留具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】飛行システム及びそれに用いられる係留具
(51)【国際特許分類】
   B64U 10/60 20230101AFI20240520BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240520BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20240520BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240520BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240520BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240520BHJP
   E04G 23/00 20060101ALI20240520BHJP
   F16B 2/04 20060101ALI20240520BHJP
   B64U 101/26 20230101ALN20240520BHJP
【FI】
B64U10/60
B64C13/18 Z
B64C13/20 Z
B64C27/08
B64C39/02
B64U10/13
E04G23/00
F16B2/04 B
B64U101:26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023042699
(22)【出願日】2023-03-17
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501267357
【氏名又は名称】国立研究開発法人建築研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】宮内 博之
(72)【発明者】
【氏名】兼松 学
(72)【発明者】
【氏名】古藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】二村 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】川前 勝三郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 亮
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特許第6877013(JP,B1)
【文献】特開2022-093808(JP,A)
【文献】特開2021-075105(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032262(WO,A1)
【文献】特開2017-089211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 10/60
B64C 13/18
B64C 13/20
B64C 27/08
B64C 39/02
B64U 10/13
E04G 23/00
F16B 2/04
B64U 101/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の立設面に立設された建設物の外壁に沿ってドローンを飛行させる飛行システムであって、
ドローンと、前記建設物の一部である係留対象に係留する係留具と、前記係留具から延びて前記ドローンに挿通されるガイドワイヤーと、前記ドローンに挿通された前記ガイドワイヤーを前記立設面で支持する支持手段と、を備え、
前記支持手段は、前記ガイドワイヤーを巻取り及び巻出し可能に構成され、
前記係留具は、前記係留対象に係止する係留具本体を有し
前記係留具本体は、全体が柔軟性を有する素材により形成された細長状体であり、内部に空洞が設けられたソフトマテリアルにより形成されることで、前記空洞への空気の流入及び流出でもって膨張及び収縮可能に構成され、
前記係留具本体には、前記空洞に空気を注入するための流路部が設けられている、飛行システム。
【請求項2】
前記係留具本体は、膨張状態において、略鉤形状に湾曲する、請求項1に記載の飛行システム。
【請求項3】
前記係留具は、複数の前記係留具本体の基端側を固定し、前記各係留具本体を隣接配置するブラケットを有し、
前記各係留具本体は、膨張状態において、それぞれ異なる方向に湾曲する、請求項2に記載の飛行システム。
【請求項4】
前記ブラケットは、膨張した前記各係留具本体と共に、前記係留対象を挟持可能に構成されている、請求項3に記載の飛行システム。
【請求項5】
前記係留具は、前記各係留具本体の先端側にその端部が取付けられた牽引索を有し、
前記各牽引索は、結束された状態で、前記各係留具本体の基端側に引出され、
前記各係留具本体は、前記牽引索が基端側に牽引されることで、その曲率が減少するように変形する、請求項4に記載の飛行システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の飛行システムに用いられる係留具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンを飛行させる飛行システム及びそれに用いられる係留具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやインターネットといったテクノロジーの発展を背景に、ドローンが世界的に普及している。ドローンとは、遠隔操作や自動制御によって無人で飛行できる航空機であり、マルチコプターとも呼ばれる。
【0003】
ドローンの利用用途としては、予め装着されたカメラや点検器具を用いて、特に高層ビルの外壁等、人力のみで実施困難な範囲の空撮や点検等を行う、荷物を運搬するといった用途が挙げられる。
【0004】
特に、外壁点検を実施するにあたって、特許文献1に示すように、所定の点検装置を外壁に容易に位置決めすることが可能な、ドローンを用いた外壁点検システムが、本発明の発明者らによって提案されている。
この外壁点検システムは、ウィンチ装置により構成されるワイヤー支持手段を、建設物の立設面や屋上に設置することで、外壁に沿ってガイドラインを設け、このガイドラインに点検装置(及びドローン)を取付けることで、構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6877013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の外壁点検システムは、上記の通り、構築にあたって、複数のウィンチ装置が必要となることから、特に屋上へ設置する際等には、作業者にとって負担となり、改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであって、より簡便に構築でき、ドローンを外壁に沿って安定的に飛行させることが可能な、飛行システム及びそれに用いられる係留具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、所定の立設面に立設された建設物の外壁に沿ってドローンを飛行させる飛行システムであって、
ドローンと、前記建設物の一部である係留対象に係留する係留具と、前記係留具から延びて前記ドローンに挿通されるガイドワイヤーと、前記ドローンに挿通された前記ガイドワイヤーを前記立設面で支持する支持手段と、を備え、
前記支持手段は、前記ガイドワイヤーを巻取り及び巻出し可能に構成され、
前記係留具は、前記係留対象に係止する係留具本体を有している。
【0009】
本発明によれば、作業者は、建設物の一部である係留対象に係留する係留具により、建設物に対して容易に係留点を形成することができ、ガイドワイヤーを外壁に沿って設ける等、本飛行システムの構築作業を簡便なものとすることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記係留具本体は、少なくともその外周面が、柔軟性を有する素材により形成されている。
【0011】
このような構成とすることで、係留具本体の外周面が柔軟性を有する素材により形成されていることで、作業者は、係留具を係留対象に係留させる際、係留対象を損傷させることなく、本飛行システムを建設物に適用することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記係留具本体は、全体が柔軟性を有する素材により形成された細長状体である。
【0013】
このような構成とすることで、特に係留対象が手摺等の棒状体である場合に、作業者は、係留具本体を係留対象に巻付けて締結する態様で、容易に係留具を係留させることができ、作業性が向上する。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記係留具本体は、内部に空洞が設けられたソフトマテリアルにより形成されることで、前記空洞への空気の流入及び流出でもって膨張及び収縮可能に構成され、前記係留具本体には、前記空洞に空気を注入するための流路部が設けられている。
【0015】
このような構成とすることで、特に係留対象が手摺子である場合に、作業者は、係留具本体を、各手摺子の間に挿通させ、流路部を介してエアコンプレッサー等で膨張させることで、容易に係留具を係留させることができ、作業性が向上する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記係留具本体は、膨張状態において、略鉤形状に湾曲する。
【0017】
このような構成とすることで、特に係留対象が手摺や手摺子である場合に、係留具本体が、より確実に手摺子に係止する態様となり、係留状態の安定性が向上する。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記係留具は、複数の前記係留具本体の基端側を固定し、前記各係留具本体を隣接配置するブラケットを有し、前記各係留具本体は、膨張状態において、それぞれ異なる方向に湾曲する。
【0019】
このような構成とすることで、特に係留対象が手摺や手摺子である場合に、隣接する手摺子や上部の手摺に、各係留具本体を同時に係留させることができ、係留状態の安定性がより向上する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記ブラケットは、膨張した前記各係留具本体と共に、前記係留対象を挟持可能に構成されている。
【0021】
このような構成とすることで、係留時の係留具全体のブレが抑制され、係留状態の安定性がより向上する。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記係留具は、前記各係留具本体の先端側にその端部が取付けられた牽引索を有し、前記各牽引索は、結束された状態で、前記各係留具本体の基端側に引出され、前記各係留具本体は、前記牽引索が基端側に牽引されることで、その曲率が減少するように変形する。
【0023】
このような構成とすることで、特に係留対象が手摺や手摺子である場合に、作業者が係留具を手摺子の間に挿込む、或いは手摺子の間から引抜くにあたって、牽引索を基端側に牽引することで、各係留具本体が手摺や手摺子に引掛かるような事態を抑制し、スムーズな挿込み、引抜き作業を行うことができる。
【0024】
また、本発明は、上記した飛行システムに用いられる係留具である。
【発明の効果】
【0025】
より簡便に構築でき、ドローンを外壁に沿って安定的に飛行させることが可能な、飛行システム及びそれに用いられる係留具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る飛行システムの一部を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る係留具を示す図であって、(a)正面図、(b)PP´線断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る係留具を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る係留具が収縮状態から膨張状態となるまでの流れを示すPP´線断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る係留具が収縮状態から膨張状態となるまでの流れを示すPP´線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る飛行システムを示す概略図である。
図7】本発明の実施形態に係る係留具を係留対象に係留させる流れを示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係る係留具を係留対象に係留させる流れを示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る飛行システムを用いてドローンを飛行させる様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1図9を用いて、本発明の実施形態に係る飛行システムについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る飛行システムを示す。
【0028】
<構成>
以下、図1図5を用いて、飛行システムXの構成について説明する。
なお、以下、説明の便宜上、図1に示す矢印方向を先端側或いは前方、これに対向する方向を基端側或いは後方と称することとする。
【0029】
飛行システムXは、所定の立設面G(図6等参照)に立設された建設物Z(図6等参照)の外壁W(図6等参照)に沿ってドローンAを飛行させるものであって、図1に示すように、ドローンAと、建設物Zの一部である係留対象K(図6等参照)に係留する係留具Bと、係留具Bから延びてドローンAに挿通されるガイドワイヤーCと、ドローンAに挿通されたガイドワイヤーCを立設面Gで支持する支持手段D(図6等参照)と、を備えている。
【0030】
ドローンAは、本実施形態においては、一般的に流通しているものと略同様の構成であり、バッテリー等が内蔵されたドローン本体A1と、ドローン本体A1から四方に延びるアームA2と、各アームA2に取付けられたプロペラA3と、ドローン本体A1から下方に突設された一対の脚部A4と、を有している。
【0031】
ドローン本体A1の上面には、挿通孔tが形成されたワイヤー挿通部Tが設けられている。挿通孔tには、後述する第一ワイヤーC1が挿通され、後述する第二ワイヤーが締結されている。
なお、ワイヤー挿通部Tは、ドローン本体A1に一体として設けられていても良いし、後付けでアタッチメントとして取付けられても良い。
【0032】
係留具Bは、係留対象Kに係止する複数の係留具本体B1と、各係留具本体B1の基端側を固定し、各係留具本体B1を隣接配置するブラケットB2と、各係留具本体B1の先端側にその端部が取付けられた牽引索B3と、を有している。
【0033】
各係留具本体B1は、内部に空洞S(図4等参照)が設けられたソフトマテリアルにより形成された、略直方体の細長状体であり、空洞Sへの空気の流入及び流出でもって膨張及び収縮可能に構成されている。
なお、各係留具本体B1は、全体がシリコーンにより形成されているが、空洞Sへの空気の流入及び流出でもって膨張及び収縮可能なソフトマテリアルであれば、これに限られない。
【0034】
ブラケットB2は、中空且つ一方が開口した略円筒状のブラケット本体B2aと、ブラケット本体B2aの開口を塞ぐように設けられた、略円盤状のフランジ部B2bとを有している。
【0035】
各牽引索B3は、各係留具本体B1の先端側にその端部が取付けられ、結び目n1でもって結束された状態で、各係留具本体B1の基端側に引出されている。
また、結束された各牽引索B3の基端には、作業者の指を引掛けるための輪状体r1が取付けられている。
なお、図1等において、各牽引索B3は、黒色の一点鎖線で示している。
【0036】
ガイドワイヤーCは、挿通孔tに挿通され、後述する第一支持手段D1に巻回される第一ワイヤーC1と、挿通孔tに締結され、後述する第二支持手段D2に巻回される第二ワイヤーC2と、ブラケット本体B2aの後方から延び、結び目n2でもって第一ワイヤーC1に結束される第三ワイヤーC3と、を有している。
なお、図1等において、第一ワイヤーC1は黒色の実線、第二ワイヤーC2は灰色の実線、第三ワイヤーC3は黒色の二点鎖線で、それぞれ示している。
また、結び目n2の大きさ(直径)は、挿通孔tの径よりも小さく構成されている。
【0037】
支持手段Dは、第一ワイヤーC1が巻回される第一支持手段D1と、第二ワイヤーC2が巻回される第二支持手段D2と、を有している(図6等参照)。
また、支持手段Dとしては、電動或いは手動で、第一ワイヤーC1或いは第二ワイヤーC2の巻出し及び巻取りが可能なウィンチが好適に用いられる。
【0038】
以下、図2図5を用いて、係留具Bのより詳細な構成について詳述する。
【0039】
図2(a)に示すように、フランジ部B2bには、その周方向に沿って等角(120度毎)に、各係留具本体B1の基端側が固定支持する支持孔j1~j3が設けられ、その略中央に、結束された各牽引索B3が挿通される挿通孔h1が設けられている。
なお、図2(a)においては、フランジ部B2bのみ示している。
【0040】
ここで、以下、説明の便宜上、支持孔j1~j3に固定支持される係留具本体B1を、それぞれ係留具本体B11~B13と称することとする。
また、係留具本体B11~B13を総称する際には、単に各係留具本体B1と称する。
【0041】
図2(b)に示すように、各係留具本体B1は、その基端に、フランジ部B2bの背面に当接し、各係留具本体B1の抜けを防止する係留具フランジf1と、空洞Sに空気を注入するための流路部f2と、が設けられている。
【0042】
係留具フランジf1は、シリコーンにより、係留具本体B1と一体形成されている。
流路部f2は、その先端が係留具フランジf1に挿通された、可撓性のシリコーンチューブであり、その外周面が、係留具フランジf1の内周面に接着されている。
なお、係留具フランジf1は、必須の構成ではなく、各係留具本体B1の基端を、溶着等により、直接ブラケットB2(支持孔j1~j3の周縁等)に固定する態様としても良い。
【0043】
図2(b)に示すように、ブラケット本体B2aには、その背面に、結束された各牽引索B3を外部(基端側)に引出すための挿通孔h2と、流路部f2を外部(基端側)に引出すための挿通孔h3と、第三ワイヤーC3の一端が巻回される巻取り機r2と、が設けられている。
【0044】
挿通孔h2は、正面視で挿通孔h1と連通している。
挿通孔h3は、図2(b)においては一つのみ示しているが、各係留具本体B1に設けられた流路部f2に対応して一つずつ(計三つ)設けられている。
【0045】
巻取り機r2は、例えば、建築業界において一般的に用いられ、糸の巻出し・巻取りが可能な簡易の糸巻機である所謂墨ツボ等が好適に用いられる。
【0046】
なお、図2(b)において、ブラケットB2を断面図で示しており、係留具本体B1については、係留具本体B11のみ示し、係留具フランジf1及び流路部f2含め、断面図で示していない。
【0047】
図3に示すように、係留具本体B12、B13に設けられる流路部f2は、挿通孔h3から基端側に引出された後、一本の流路に統合されている。
なお、図3においては、係留具本体B11の流路部f2は省略している。
【0048】
また、各係留具本体B1は、特に膨張状態から収縮状態に変化した際に、図3(a)に示すように、その先端側が放射状に広がった状態となる。
このとき、作業者は、輪状体r1に指を引掛け、牽引索B3を基端側に牽引することで、各係留具本体B1を、図3(b)に示す状態とすることができる。
詳述すれば、各係留具本体B1は、牽引索B3が基端側に牽引されることで、その曲率が減少するように(即ち、先端側が中心に向かって移動し、より直線度合いが高くなるように)変形する。
【0049】
以下、図4及び図5を用いて、各係留具本体B1が収縮状態から膨張状態に変化するまでの流れについて説明する。
なお、図4及び図5においては、一の係留具本体B1について説明するが、他の係留具本体B1も、その内部構成を含めて同様である。
【0050】
各係留具本体B1には、図4及び図5に示すように、可撓性の薄板状体P(例えば、プラスチック製の下敷きを細長形状としたもの)が、各係留具本体B1の長さ方向の略全長に亘って包含されている。
例えば、係留具本体B1には、その上部に薄板状体Pが包含されている。
【0051】
上記の内部構成となされた各係留具本体B1は、図4(a)に示す収縮状態から、流路部f2を介して空洞Sに空気が流入すると、図4(b)に示す状態となる。
即ち、薄板状体Pが設けられていない側が、設けられている側に比して、空気圧により膨張しやすく、また、各係留具本体B1の先端面も膨張していくことから、各係留具本体B1は、薄板状体Pが設けられていない側に山なりに湾曲する。
【0052】
各係留具本体B1は、図4(b)に示す状態からさらに空洞Sに空気が流入することで、さらに山なりに湾曲し、図5(a)に示す略L字形状を経て、図5(b)に示す略鉤形状に湾曲する。
【0053】
なお、例えば、各流路部f2の基端と後述するエアコンプレッサーmとの間に開閉弁(図示せず)を設けることができる。
これにより、作業者は、各係留具本体B1が膨張状態となった際には、開閉弁を閉じることで膨張状態を維持し、係留具Bを係留対象Kから取外す際等、収縮状態とする際には、開閉弁を開くことで内部の空気を流出させる。
【0054】
<使用態様>
以下、図6図9を用いて、飛行システムXの使用態様について説明する。
【0055】
図6は、立設面Gに立設された建設物Zに飛行システムXを適用した例であり、係留対象Kとして最上階のベランダの手摺k1及び手摺子k2を用いた例である。
【0056】
図6のような状態とするために、まず、作業者は、エアコンプレッサーmと共に係留具Bを最上階のベランダまで運搬し、図7(a)に示すように、外方から内方(建設物Z側)に向かって各係留具本体B1を挿込む。
このとき、作業者は、各係留具本体B1を隣接する手摺子k2の間に挿通させ、各手摺子k2にフランジ部B2bを当接させる。
【0057】
次に、作業者は、図7(b)に示すように、流路部f2の端部にエアコンプレッサーmを接続し、各係留具本体B1に空気を流入させることで、膨張状態とする。
これにより、略鉤形状となされた各係留具本体B1が、各手摺子k2(及び手摺k1)に巻付くように係止し、フランジ部B2bと共に各手摺子k2を挟持する態様で、係留具Bが手摺k1及び手摺子k2に係留される。
【0058】
図7は、係留具本体B12、B13を膨張状態とする例を示した平面図であり、係留具本体B12、B13は、それぞれ左右方向に延びつつ、先端がブラケットB2側に向くように湾曲することで、各手摺子k2に係留する。
【0059】
なお、図7では、係留具本体B11(及びこれに設けられた流路部f2)や牽引索B3、第三ワイヤーC3を省略し、手摺k1を点線で示している。
また、上記の通り、係留具本体B12、B13の流路部f2は統合されているため、それぞれを一挙に膨張状態とすることができる。
さらに、上記の通り、係留具本体B11の流路部f2は、係留具本体B12、B13の流路部f2とは別体で設けられているため、作業者は、係留具本体B11の膨張・収縮状態、係留具本体B12、B13の膨張・収縮状態、それぞれを独立して制御できる。
【0060】
図8は、図7の斜視図であり、図8(b)に示すように、係留具本体B11は、上方に延びつつ、先端がブラケットB2側に向くように湾曲することで、手摺k1に係留する。
【0061】
なお、図8では、エアコンプレッサーmや流路部f2、第三ワイヤーC3を省略し、図8(a)においては、手摺k1及びフランジ部B2bが当接する手摺子k2を点線で示している。
【0062】
上記の流れで、係留具Bを係留対象K(手摺k1及び手摺子k2)に係留させた後、作業者は、第三ワイヤーC3を下方に垂らし、第一ワイヤーC1と締結する。
詳述すれば、作業者は、予め図1に示したように、第一支持手段D1から巻出された第一ワイヤーC1を挿通孔tに挿通させ、第二支持手段D2から巻出された第二ワイヤーC2を挿通孔tに締結しておき、ドローンAを立設面Gに配置する。
そして、作業者は、この状態で第三ワイヤーC3をドローンA近傍に垂らし、第三ワイヤーC3と第一ワイヤーC1とを締結する。
【0063】
これにより、図9に示すように、ドローンAは、外壁Wに沿って延びるガイドワイヤーCにより、その飛行範囲が一定に制限されつつ、外壁Wに沿って安定的に飛行することができる。
また、この飛行動作により、作業者は、ドローンAを用いた外壁点検や荷物の運搬等、種々の作業を安定的に実施することができる。
【0064】
<効果>
本実施形態によれば、係留対象K(手摺k1及び手摺子k2)に係留する係留具Bにより、飛行システムXの構築を簡便なものとすることができる。
【0065】
また、各係留具本体B1が、全体がシリコーンにより形成されていることで、作業者が飛行システムXを建設物Zに適用するにあたって、係留対象Kを損傷させることがない。
【0066】
また、係留具本体B1の内部構成により、作業者は、係留具本体B1を膨張させることで、容易に係留具Bを係留させることができ、作業性が向上する。
【0067】
また、係留具本体B1が膨張状態において略鉤形状に湾曲することで、係留具本体B1が、より確実に手摺k1や手摺子k2に係止する態様となり、係留状態の安定性が向上する。
【0068】
また、異なる方向に湾曲する各係留具本体B1により、隣接する手摺子k2や上部の手摺k1に、各係留具本体B1を同時に係留させることができ、係留状態の安定性がより向上する。
【0069】
また、ブラケットB2(フランジ部B2b)が、膨張した各係留具本体B1と共に、手摺子k2を挟持することで、係留時の係留具B全体のブレが抑制され、係留状態の安定性がより向上する。
【0070】
また、牽引索B3により、作業者が係留具Bを手摺子k2の間に挿込む、或いは手摺子k2の間から引抜くにあたって、牽引索B3を基端側に牽引することで、各係留具本体B1が手摺k1や手摺子k2に引掛かる事態を抑制し、スムーズな挿込み、引抜き作業を行うことができる。
【0071】
<変更例>
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、本実施形態においては、一つの係留具Bと、第一支持手段D1と、第二支持手段D2と、による三点係留としたが、係留具Bを二つ用いて四点係留としても良いし、一つの係留具Bと、第一支持手段D1とによる二点係留としても良い。
この他、二つの係留具Bと、第一支持手段D1と、による三点係留としても良く、係留具Bと支持手段Dがそれぞれ一つ以上あれば、何点係留であっても良い。
【0073】
また、係留具Bの係留対象Kは、最上階の手摺k1及び手摺子k2に限られず、当然に、より下の階の手摺k1及び手摺子k2でも良く、任意に係留位置を変更可能であり、建設物Xの一部として、上下に延びる配管や梯子等を係留対象Kとして活用しても良い。
【0074】
また、係留具本体B1の数は三つに限られず、一つや二つ、或いは四つ以上であっても良く、それぞれ同一の方向に湾曲しても良い。
【0075】
また、係留具本体B1は、膨張状態において略鉤形状となる必要はなく、例えば、一つの係留具本体B1が、隣接する手摺子k2の間隔よりも大きい幅となるように、一般的な風船のように膨張することで、各手摺子k2に係留されても良い。
【0076】
また、係留具本体B1は、必ずしも空気の流入による膨張でもって、係留対象Kに係留する構成である必要はなく、例えば、内部を、薄板状体Pを包含しない中実状とし、係留具本体B1を係留対象Kに巻付けて、紐状部材等で締結することで係留させても良い。
【0077】
また、係留具本体B1は、必ずしも全体がシリコーン等の柔軟性を有する素材により形成されている必要はなく、例えば、略鉤形状の剛性体の外周面を、布等の柔軟性を有する素材により形成された部材で覆うことで、係留対象Kの損傷を防止しても良い。
【0078】
また、飛行システムXを実施する流れとして、作業者が、エアコンプレッサーmと共に係留具Bを係留対象Kまで運搬する例を示したが、ドローンAに係留具B及びエアコンプレッサーmを積載することで、ドローンAにこれらを運搬させても良い。
このとき、第一ワイヤーC1と第三ワイヤーC3を予め締結しておく、或いは一本のワイヤーとしておくことで、作業者は、係留具B及びエアコンプレッサーmの運搬や各ワイヤーC1、C3の締結作業が不要となる。
【符号の説明】
【0079】
X 飛行システム
A ドローン
B 係留具
C ガイドワイヤー
D 支持手段
G 立設面
Z 建設物
W 外壁
K 係留対象
【要約】      (修正有)
【課題】より簡便に構築でき、ドローンを外壁に沿って安定的に飛行させることが可能な、飛行システム及びそれに用いられる係留具を提供する。
【解決手段】所定の立設面Gに立設された建設物Zの外壁Wに沿ってドローンAを飛行させる飛行システムXであって、ドローンAと、建設物Zに隣接配置された係留対象Kに係留する係留具Bと、係留具Bから延びてドローンAに挿通されるガイドワイヤーCと、ドローンAに挿通されたガイドワイヤーCを立設面Gで支持する支持手段Dと、を備え、支持手段Dは、ガイドワイヤーCを巻取り及び巻出し可能に構成され、係留具Bは、係留対象Kに係止する係留具本体Bを有している。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9