IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プランテックの特許一覧 ▶ 国立大学法人広島大学の特許一覧

特許7490186廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法
<>
  • 特許-廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法 図1
  • 特許-廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法 図2
  • 特許-廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20240520BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20240520BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20240520BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F23J15/00 Z
F22B1/18 D
F23G5/46 A
F25B27/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022209968
(22)【出願日】2022-12-27
【審査請求日】2022-12-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、独立行政法人環境再生保全機構環境研究総合推進費「水蒸気回収膜を用いた新規な環境配慮型廃棄物処理システムの実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 良二
(72)【発明者】
【氏名】増田 倹吾
(72)【発明者】
【氏名】都留 稔了
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089611(JP,A)
【文献】特開平08-121901(JP,A)
【文献】特開平09-256818(JP,A)
【文献】特開2019-173992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00
F22B 1/18
F23G 5/46
F25B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を回収する熱回収手段と、
前記熱回収手段で排熱が回収された後の燃焼排ガスを浄化するバグフィルタと、
前記バグフィルタ通過後の燃焼排ガスから水蒸気を選択的に分離する水蒸気分離膜と、
前記水蒸気分離膜で分離された水蒸気から潜熱を回収する水蒸気潜熱回収手段を備え
前記水蒸気潜熱回収手段が、前記水蒸気を吸収液の再生のための熱源として使用して冷熱を生成する吸収式冷凍機である、
廃棄物処理設備の排熱回収システム。
【請求項2】
前記熱回収手段が蒸気を発生させる排熱回収ボイラであり、
前記排熱回収ボイラで発生した蒸気で駆動するとともに発電機を駆動せしめる蒸気タービン、及び、
前記蒸気タービンから排出されたタービン排気を冷却する空冷式復水器をさらに備え、
前記空冷式復水器で冷却されたタービン排気を前記吸収式冷凍機で生成された冷熱を用いてさらに冷却する水冷式復水器を備える、
請求項に記載の廃棄物処理設備の排熱回収システム。
【請求項3】
前記熱回収手段が蒸気を発生させる排熱回収ボイラであり、
前記排熱回収ボイラで発生した蒸気で駆動するとともに発電機を駆動せしめる蒸気タービン、
前記蒸気タービンから排出されたタービン排気を第一タービン排気と第二タービン排気に分岐する分岐路、
前記第一タービン排気を冷却する空冷式復水器、
前記吸収式冷凍機で生成された冷熱を用いて前記第二タービン排気を冷却する水冷式復水器を備える、
請求項に記載の廃棄物処理設備の排熱回収システム。
【請求項4】
廃棄物の焼却によって発生した燃焼排ガスの排熱を回収するステップ、
排熱が回収された後の燃焼排ガスを浄化するステップ、
浄化後の燃焼排ガスから水蒸気を選択的に分離するステップ、
前記水蒸気を分離するステップで選択的に分離された水蒸気から潜熱を回収するステップ、
を備え
前記水蒸気から潜熱を回収するステップが、前記水蒸気を吸収液の再生のための熱源として使用して冷熱を生成するステップである、
廃棄物処理設備の排熱回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法に関し、特に、廃棄物を焼却した際に発生する燃焼排ガスが保有する排熱を回収するにあたり、燃焼排ガス中の水蒸気が持つ潜熱を回収するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物の焼却炉から排出される燃焼排ガスから排熱を回収するに際し、焼却炉と一体または別体とした排熱回収ボイラに配設された伝熱管で排熱を回収する。伝熱管で排熱を回収したボイラ給水は蒸気となり、排熱回収ボイラで発生した蒸気は発電機に連接された蒸気タービンを回転させるための動力となる。排熱回収ボイラで排熱を回収された燃焼排ガスは、エコノマイザにおいて排熱回収ボイラに供給されるボイラ給水の加熱の用に供されたのち、冷却水を噴霧する型式の減温塔で冷却され、さらに、集じん装置でばいじんや塩化水素、硫黄酸化物等の有害物質が除去され、煙突から排出される。
【0003】
このような排熱回収システムにおいて、燃焼排ガスが有する排熱をできるだけ多く回収することは、システムの熱効率を向上させるために重要なことである。
【0004】
より多くの排熱を回収するために、燃焼排ガスに冷却水を噴霧する型式の減温塔を廃し、エコノマイザ出口排ガス温度が160℃程度となるまで排熱を回収することが行われている。このようにすることで、排熱を無駄にすることなく回収することができ、蒸気の蒸発量を増加させることができる。
【0005】
燃焼排ガスが有する排熱を効率的に回収するための技術としては、特許文献1に示されるような、エコノマイザへ供給するボイラ給水を予熱する給水加熱器を、エコノマイザ後段における排ガス処理した後の燃焼排ガスが流通する排ガス煙道に設置する技術が知られている(特許文献1)。また、非特許文献1には、通常の空冷式復水器と並列に配置した水冷式復水器を併せて冷却に用いる設備の稼働状況が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-204972号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「次世代型流動床式ガス化燃焼炉 はつかいちエネルギークリーンセンターの稼働状況」、環境技術会誌、一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会、2020年7月、2020第80号、p.79-80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術は、エコノマイザの下流でバグフィルタにより不純物を除去された200℃以下の燃焼排ガスを給水加熱器に供給して燃焼排ガスから排熱の回収を行うものである。ここで、引用文献1に開示された給水加熱器は燃焼排ガスの潜熱まで回収するもので、燃焼排ガス中の水蒸気が概ね100℃以下になるまで熱交換を行うものである。
【0009】
しかしながら、燃焼排ガス中には硫黄酸化物等の酸性成分が残存しており、給水加熱器の熱交換器表面温度は飽和水蒸気圧の排ガス温度より低いため、水管表面は結露し酸露点腐食の原因となる。
【0010】
そこで、燃焼排ガスの一部を、給水加熱器をバイパスさせる排出ガス迂回ラインが設けられており、迂回する排ガス流量を制御して収熱量をコントロールすることにより、煙突内における酸露点腐食やダクト等での結露を防止することができるようになっている。ところが、排出ガス迂回ラインに供給する排ガス流量の制御が複雑になるとともに、バイパス給水加熱器からバイパスする排出ガス迂回ラインのダクト等においても、同様に、腐食の問題が生じることがある。また、水蒸気の潜熱だけを回収するのではなく、排ガス中の他成分とも熱交換するため、熱交換器が過大になるという問題がある。
【0011】
非特許文献1には、空冷式復水器と並列にLNGを気化する際に熱交換してできる冷水を用いた水冷式復水器を設ける技術が開示されている。
【0012】
しかしながら、ここで用いられる冷水は、LNGの気化に伴い生じるものであり、外部のLNGの気化が不要な時には冷水を得られないことになり、結局は全てのタービン排気を冷却できる過大な空冷式復水器を設置する必要がある。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ダクト等の酸露点腐食を防止しつつ効率的に燃焼排ガスからの排熱を回収することができるとともに、熱交換器の設置面積を削減するという、相反する効果を同時に奏することが可能な廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0015】
第1の特徴に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムは、ごみ焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を回収する熱回収手段と、熱回収手段で排熱が回収された後の燃焼排ガスを浄化するバグフィルタと、バグフィルタ通過後の燃焼排ガスから水蒸気を選択的に分離する水蒸気分離膜と、水蒸気分離膜で分離された水蒸気から潜熱を回収する水蒸気潜熱回収手段を備える。
【0016】
第1の特徴に係る発明によれば、燃焼排ガスから排熱を直接回収するのではなく、バグフィルタで浄化後の燃焼排ガスから選択的に分離された水蒸気から潜熱を回収することで、ダクト等における酸露点腐食の問題を回避しつつ潜熱を回収することができる。また、実質的に水蒸気の潜熱のみを回収することになり、他の排ガス成分を含まないため、効率的に排熱回収を行うことができる。また、燃焼排ガスから水蒸気を分離するため、煙突からの白煙を防止することができる。
【0017】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、水蒸気潜熱回収手段が、水蒸気を吸収液の再生のための熱源として使用して冷熱を生成する吸収式冷凍機である。
【0018】
第2の特徴に係る発明によれば、燃焼排ガスから選択的に分離された水蒸気を吸収式冷凍機の吸収液再生のための熱源として用いることで、燃焼排ガスの排熱から各機器を冷却するための冷熱を生成することができる。
【0019】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、熱回収手段が蒸気を発生させる排熱回収ボイラであり、排熱回収ボイラで発生した蒸気で駆動するとともに発電機を駆動せしめる蒸気タービン、蒸気タービンから排出されたタービン排気を冷却する空冷式復水器をさらに備え、空冷式復水器で冷却されたタービン排気を吸収式冷凍機で生成された冷熱を用いてさらに冷却する水冷式復水器を備える。
【0020】
第3の特徴に係る発明によれば、熱回収手段が排熱回収ボイラであり、排熱回収ボイラで発生した蒸気で蒸気タービンを駆動しさらに発電機を駆動せしめるため、燃焼排ガスの排熱を利用して発電を行うことができる。そして、タービン排気を冷却する空冷式復水器からのタービン排気をさらに冷却する水冷式復水器を備えるため、空冷式復水器のみを使用するよりもタービン排気を低温にすることができ発電量を増加させることができる。そして、水冷式復水器の冷熱源として吸収式冷凍機で生成された冷熱を用いるため、燃焼排ガスの排熱をさらに活用して発電量を増加させることができる。
【0021】
第4の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、熱回収手段が蒸気を発生させる排熱回収ボイラであり、排熱回収ボイラで発生した蒸気で駆動するとともに発電機を駆動せしめる蒸気タービン、蒸気タービンから排出されたタービン排気を第一タービン排気と第二タービン排気に分岐する分岐路、第一タービン排気を冷却する空冷式復水器、吸収式冷凍機で生成された冷熱を用いて第二タービン排気を冷却する水冷式復水器を備える。
【0022】
第4の特徴に係る発明によれば、熱回収手段が排熱回収ボイラであり、排熱回収ボイラで発生した蒸気で蒸気タービンを駆動しさらに発電機を駆動せしめるため、燃焼排ガスの排熱を利用して発電を行うことができる。そして、蒸気タービンから排出されたタービン排気を二系統に分岐し、一方を空冷式復水器で、他方を水冷式復水器で冷却するため、空冷式復水器の設置面積を削減してコンパクトに構成することができ、その動力も削減することができる。しかも、他方のタービン排気を冷却する水冷式復水器の冷熱源として吸収式冷凍機で生成された冷熱を用いるため、燃焼排ガスの排熱をさらに活用して空冷式復水器の設置面積を削減してコンパクトに構成することでき、その動力も削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ダクト等の酸露点腐食を防止しつつ効率的に燃焼排ガスからの排熱を回収することができるとともに、熱交換器の設置面積を削減するという、相反する効果を同時に奏することが可能な廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第一実施形態に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムの概略系統図である。
図2図2は、本発明に係る排熱回収システムを用いた排熱回収方法のフロー図である。
図3図3は、第二実施形態に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムの概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0026】
[第一実施形態に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムの構成]
図1を用いて、第一実施形態に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムの構成を説明する。
【0027】
図1は、第一実施形態にかかる排熱回収システムを用いた廃棄物処理設備の概略系統図を示したものであり、当該廃棄物処理設備は、ごみ焼却炉1と、排熱回収ボイラ(熱回収手段)2と、バグフィルタ3と、誘引通風機4と、水蒸気分離膜5と、吸収式冷凍機(水蒸気潜熱回収手段)6と、煙突7と、蒸気タービン8と、発電機9と、復水器10と、復水タンク11と、再循環送風機12と、図示しない制御装置とによって構成される。
【0028】
ごみ焼却炉1は、不定形の一般廃棄物や、産業廃棄物や、所定の形状を呈する梱包に入れられた感染性医療廃棄物等の廃棄物を焼却処理するものであり、ストーカ式、流動層式、竪型等、任意の形式の焼却炉が用いられる。
【0029】
排熱回収ボイラ2は、本発明における熱回収手段の一実施形態であり、ごみ焼却炉1で廃棄物を焼却処理した際に発生する高温の燃焼排ガスから排熱を回収しボイラ給水を加熱することで蒸気を発生させるものである。排熱回収ボイラ2は、ボイラ給水が流通する伝熱管を組み合わせることによって壁を形成した伝熱管壁、伝熱管壁内でボイラ給水が加熱されることで発生した蒸気を汽水分離する蒸気ドラム、蒸気をさらに過熱する過熱器、及び、排熱回収ボイラ2から発生する蒸気の蒸発量を検出する蒸発量検出手段などによって構成されるが、形式はそれに限られるものではない。
【0030】
バグフィルタ3は、排熱回収ボイラ2で減温されたん燃焼排ガスをろ過することで、燃焼排ガス中に含まれる煤塵や有害成分を除去するものであって、煤塵や有害成分をろ過するためのろ布を備える。バグフィルタ3入口における排ガス煙道には、バグフィルタ3に薬剤を吹き込むための図示しない薬剤供給装置が配設される。薬剤供給装置から供給されるアルカリ薬剤が、バグフィルタ3のろ布上において燃焼排ガス中の酸性成分と中和反応を起こすことにより、燃焼排ガスの浄化が行われる。
【0031】
第一実施形態においては、薬剤供給装置から供給されるアルカリ薬剤としてナトリウム系薬剤が使用される。
【0032】
そして、第一実施形態においては、薬剤供給装置から排ガス煙道を介してバグフィルタ3内にアルカリ薬剤を所定時間にわたって供給することで、バグフィルタ3のろ布の表面に所定厚さの薬剤及び吸着剤のプレコート層を形成するプレコート処理を行っている。
【0033】
誘引通風機4は、バグフィルタ3の下流に配設される通風機であり、バグフィルタ3で浄化された排ガスを吸引して、煙突6から排ガスを大気に放出するためのものである。
【0034】
水蒸気分離膜5は、バグフィルタ3で浄化された燃焼排ガスから水蒸気を選択的に分離回収するものである。回収される水蒸気の温度は約160℃である。
【0035】
吸収式冷凍機6は、本発明における水蒸気潜熱回収手段の一実施形態であり、水蒸気分離膜5で分離された約160℃の水蒸気から潜熱を回収し、吸収液再生のための熱源として利用して冷熱を生成するものである。
【0036】
一般的な吸収式冷凍機は、吸収液による水蒸気の吸収工程、吸収工程で生成された吸収液と水の混合液を加熱して水のみを蒸発させることによる吸収液の再生工程、再生工程で分離された水蒸気を大気との熱交換によって冷却することによる水蒸気の凝縮工程、凝縮された水を膨張させることにより蒸発させ熱を奪う蒸発工程、という四つの工程からなるサイクルによって冷熱を生成するものであるが、第一実施形態に係る吸収式冷凍機6においては、再生工程における混合液の加熱に、水蒸気分離膜5で分離された約160℃の水蒸気を用いる。そして、蒸発工程において水が蒸発して水蒸気となる際に熱を奪うことで冷熱を生成する。
【0037】
煙突7は、バグフィルタ3で浄化され、さらに、水蒸気分離膜5で水分を分離された燃焼排ガスを大気に排出するものである。
【0038】
蒸気タービン8は、排熱回収ボイラ2で生成された高温高圧の蒸気によって回転駆動するものであり、蒸気タービン8の駆動に伴い、蒸気タービン8と同軸に連結された発電機9が駆動する。
【0039】
復水器10は蒸気タービン8から排出された低圧の湿り蒸気であるタービン排気を凝縮して復水とするものである。復水器10で凝縮された復水は復水タンク11に貯留され、その後、排熱回収ボイラ2への給水となる。第一実施形態においては、復水器10は空冷式復水器10aと水冷式復水器10bが直列に接続されることによって構成される。
【0040】
空冷式復水器10aは、冷却媒体として空気を使用することによって、蒸気タービン8から排出されたタービン排気を冷却(凝縮)するものであり、タービン排気が流通する伝熱管群と、伝熱管群に空気を送気する電動式の送風装置によって構成される。
【0041】
第一実施形態に係る水冷式復水器10bは、空冷式復水器10aで冷却され凝縮されたタービン排気を冷却媒体との熱交換によってさらに冷却するものであり、冷却媒体として吸収式冷凍機6で生成された冷却水が使用される。
【0042】
なお、水冷式復水器10bとしては、タービン排気が流通するケーシング中に冷却水が流通する複数の伝熱管が配設された形式のものが使用されるが、この形式に限ったものではない。
【0043】
再循環送風機12は、バグフィルタ3で浄化され、さらに、水蒸気分離膜5で水分を分離された燃焼排ガスを、ごみ焼却炉1に再循環させるものである。
【0044】
図示しない制御装置は、図示しない各種計測機器で計測された物理量に基づいて、システムの各部を制御するものである。
【0045】
〔排熱回収システムを用いた排熱回収方法〕
次に、図2を用いて、第一実施形態にかかる排熱回収システムを用いた排熱回収方法について説明する。
【0046】
図2においては、ごみ焼却炉1を定常運転をしている際の手順について説明する。
【0047】
〔ステップS100:排熱回収(蒸気の生成)〕
ごみ焼却炉1において廃棄物を焼却することで、高温の燃焼排ガスが生成される。ごみ焼却炉1で生成された高温の燃焼排ガスから排熱回収ボイラ2において排熱が回収されてボイラ給水を加熱し、高温高圧の蒸気を生成する(ステップS100)。排熱回収ボイラ2で生成された蒸気は、蒸気ドラムで汽水分離され、必要に応じて過熱器で過熱されたのち、蒸気タービン8に送出される。
【0048】
なお、排熱回収ボイラ2は図示しないエコノマイザを含み、エコノマイザ通過後つまり排熱回収ボイラ2出口の燃焼排ガス温度が200℃程度となるよう排熱が回収される。
【0049】
〔ステップS110:蒸気タービンの駆動〕
次に、ステップS100で生成された蒸気は蒸気タービン8に送出され、蒸気タービン8を駆動する(ステップS110)。ここで、蒸気タービン8は発電機9と同軸で連結されており、蒸気タービン8の回転に伴って発電機9を駆動せしめ、電力を発生させる。
【0050】
〔ステップS120:燃焼排ガスの浄化〕
ステップS110において排熱回収ボイラ2で200℃程度となるまで排熱を回収された後の燃焼排ガスは、バグフィルタ3で浄化される(ステップS120)。
【0051】
第一実施形態においては、バグフィルタ3として、ナトリウム系薬剤(例えば微粉砕した炭酸水素ナトリウムや多孔質の炭酸ナトリウム)を所定時間にわたって供給することでろ布の表面にナトリウム系薬剤の反応層を形成するプレコート式バグフィルタが採用される。
【0052】
ナトリウム系薬剤を中和剤として使用することにより、排ガス温度が200℃と比較的高い領域であっても、塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガスを効率的に中和することができる。
【0053】
また、バグフィルタ3としてプレコート式バグフィルタを用いることで、燃焼排ガス中に含まれる酸性ガスはプレコートされた反応層によって中和され、生成された塩がろ布に捕捉される。また、燃焼排ガス中に含まれるばいじんも同様に、ろ布に捕捉される。プレコート式バグフィルタを用いることにより、薬剤と酸性成分との反応率を向上させることができるため、少ない薬剤の使用量で十分な反応を得ることができるとともに、ろ布の払落しを行った後にバグフィルタから排出されるダストの量を低減することができる。
【0054】
なお、バグフィルタ3の形式はプレコート式バグフィルタに限ったものではない。バグフィルタ3入口においてナトリウム系薬剤を吹き込む形式のものであっても良い。
【0055】
このように、ナトリウム系薬剤やそれを用いたプレコート式バグフィルタによる排ガスの浄化により、塩化水素及び硫黄酸化物濃度が10ppm以下にまで低減される。
【0056】
〔ステップS130:水蒸気の分離〕
ステップS120において浄化された燃焼排ガスは、誘引通風機4によって下流に流れ、水蒸気分離膜5を通過することによって燃焼排ガス中の水蒸気が選択的に分離される(ステップS130)。
【0057】
ここで、水蒸気分離膜5を通過する燃焼排ガスは、バグフィルタ3によってばいじんが除去され酸性ガスが中和されたことにより水分濃度が高められた状態であるため、効率的に水蒸気を分離回収することができる。また、燃焼排ガスから水蒸気を分離するため、煙突からの白煙を防止することができる。
【0058】
〔ステップS140:水蒸気からの潜熱の回収〕
ステップS130において燃焼排ガスから分離された水蒸気からは、水蒸気潜熱回収手段(吸収式冷凍機6)によって潜熱が回収される(ステップS140)。
【0059】
第一実施形態においては、水蒸気潜熱回収手段として、吸収液再生のための加熱源として水蒸気の潜熱を用いる吸収式冷凍機6が用いられる。つまり、第一実施形態に係る吸収式冷凍機6においては、吸収液再生工程における吸収液と水の混合液の加熱に、ステップS130において水蒸気分離膜5で分離された約160℃の水蒸気が用いられる。なお、混合液の加熱に用いられ潜熱を回収され凝縮した温水は所内や近隣へ供給され利用される。
【0060】
そして、吸収式冷凍機6の混合液の加熱によって蒸発した水蒸気は続く凝縮工程において冷却されて水となり、その後の蒸発工程において、膨張して水が蒸発して水蒸気となる際に熱を奪うことで冷熱を生成する。
【0061】
吸収式冷凍機6で生成された冷熱は様々な用途に利用され得る。後述するタービン排気の冷却のみならず、ごみ焼却炉1の炉壁の冷却や、炉底において焼却灰を冷却する灰水槽の冷却にも使用することが可能である。あるいは、災害時など売電が必要ない場合には、製氷を行うことも可能である。
【0062】
〔ステップS150:タービン排気の冷却〕
ステップS110で蒸気タービン8を駆動した後、蒸気タービン8から排出された蒸気であるタービン排気は復水器10で凝縮されて復水となり復水タンク11に貯留され、復水タンク11に貯留された復水はボイラ給水として使用される。
【0063】
第一実施形態においては、復水器10は空冷式復水器10aと水冷式復水器10bを直列に接続することによって構成される。空冷式復水器10aにおいては送風装置によって送給される空気によってタービン排気を約60℃まで冷却し、水冷式復水器10bにおいては空冷式復水器10aで冷却され凝縮されたタービン排気を、冷却水を冷却媒体として使用してさらに約40℃まで冷却する。
【0064】
そして、第一実施形態においては、水冷式復水器10bの冷却媒体として、吸収式冷凍機6で生成した冷熱によって約7℃まで冷却された冷却水が使用される。
【0065】
このように、タービン排気を冷却する空冷式復水器10aからのタービン排気をさらに冷却する水冷式復水器10bを備えるため、空冷式復水器10aのみを使用するよりもタービン排気を低温にすることができ発電量を増加させることができる。そして、水冷式復水器10bの冷熱源として吸収式冷凍機6で生成された冷熱を用いるため、燃焼排ガスの排熱をさらに活用して発電量を増加させることができる。
【0066】
[第二実施形態に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムの構成]
図3を用いて、第二実施形態に係る廃棄物処理設備の排熱回収システムの構成を説明する。なお、第一実施形態と共通する箇所については説明を省略し、第一実施形態と異なる箇所についてのみ説明する。
【0067】
図3は、第二実施形態に係る排熱回収システムを用いた廃棄物処理設備の概略系統図を示したものであり、復水器10の構成が第一実施形態に係る排熱回収システムと異なる。
【0068】
第一実施形態においては、空冷式復水器10aと水冷式復水器10bは直列に接続されていたが、第二実施形態においては、空冷式復水器10aと水冷式復水器10bは並列に配設される。
【0069】
つまり、第二実施形態においては、タービン排気を第一タービン排気と第二タービン排気の二つに分岐する分岐路13があり、第一タービン排気が空冷式復水器10aによって約60℃まで冷却され、第二タービン排気が水冷式復水器10bによって約60℃まで冷却される。空冷式復水器10aによって冷却された第一タービン排気と水冷式復水器10bによって冷却された第二タービン排気はそれぞれ、復水タンク11に流入する。
【0070】
冷却後のタービン排気の温度は約60℃と同等ではあるものの、タービン排気を二系統に分岐させることにより、空冷式復水器10aで冷却すべきタービン排気の流量を減ずることができる。そのため、空冷式復水器10aの容量を小さくコンパクトに構成することができ、結果として空冷式復水器10aの設置面積及び送風装置の動力を削減することができる。
【0071】
しかも、第二タービン排気を冷却する水冷式復水器10bの冷熱源として吸収式冷凍機6で生成された冷熱を用いるため、燃焼排ガスの排熱をさらに活用して空冷式復水器10aの設置面積を削減してコンパクトに構成することでき、その動力も削減することが可能となる。
【0072】
以上、まとめると、本発明の効果は以下の通りとなる。
【0073】
本発明においては、燃焼排ガスから排熱を直接回収するのではなく、バグフィルタ3で浄化後の燃焼排ガスから選択的に分離された水蒸気から潜熱を回収することで、ダクト等における酸露点腐食の問題を回避しつつ潜熱を回収することができる。また、実質的に水蒸気の潜熱のみを回収することになり、他の排ガス成分を含まないため、効率的に排熱回収を行うことができる。また、燃焼排ガスから水蒸気を分離するため、煙突からの白煙を防止することができる。
【0074】
また、燃焼排ガスから選択的に分離された水蒸気を吸収式冷凍機6の吸収液再生のための熱源として用いることで、燃焼排ガスの排熱から各機器を冷却するための冷熱を生成することができる。
【0075】
ここで、熱回収手段が排熱回収ボイラ2であり、排熱回収ボイラ2で発生した蒸気で蒸気タービン8を駆動しさらに発電機9を駆動せしめるため、燃焼排ガスの排熱を利用して発電を行うことができる。そして、タービン排気を冷却する空冷式復水器10aからのタービン排気をさらに冷却する水冷式復水器10bを備えるため、空冷式復水器10aのみを使用するよりもタービン排気を低温にすることができ発電量を増加させることができる。そして、水冷式復水器10bの冷熱源として吸収式冷凍機6で生成された冷熱を用いるため、燃焼排ガスの排熱をさらに活用して発電量を増加させることができる。
【0076】
あるいは、蒸気タービン8から排出されたタービン排気を二系統に分岐し、一方を空冷式復水器10aで、他方を水冷式復水器10bで冷却することで、空冷式復水器10aの設置面積を削減してコンパクトに構成することができ、その動力も削減することができる。しかも、他方のタービン排気を冷却する水冷式復水器10bの冷熱源として吸収式冷凍機6で生成された冷熱を用いるため、燃焼排ガスの排熱をさらに活用して空冷式復水器10aの設置面積を削減してコンパクトに構成することでき、その動力も削減することが可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0078】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明の排熱回収システム及び排熱回収方法は、種々の廃棄物を焼却処理する廃棄物焼却処理設備全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ごみ焼却炉
2 排熱回収ボイラ(熱回収手段)
3 バグフィルタ
4 誘引通風機
5 水蒸気分離膜
6 吸収式冷凍機(水蒸気潜熱回収手段)
7 煙突
8 蒸気タービン
9 発電機
10 復水器
10a 空冷式復水器
10b 水冷式復水器
11 復水タンク
【要約】
【課題】ダクト等の酸露点腐食を防止しつつ効率的に燃焼排ガスからの排熱を回収することができるとともに、熱交換器の設置面積を削減するという、相反する効果を同時に奏することが可能な廃棄物処理設備の排熱回収システム及び排熱回収方法を提供する。
【解決手段】本発明の廃棄物焼却処理施設の排熱回収システムは、ごみ焼却炉1で発生した燃焼排ガスの排熱を回収する熱回収手段2と、熱回収手段2で排熱が回収された後の燃焼排ガスを浄化するバグフィルタ3と、バグフィルタ3通過後の燃焼排ガスから水蒸気を選択的に分離する水蒸気分離膜5と、水蒸気分離膜5で分離された水蒸気から潜熱を回収する水蒸気潜熱回収手段6を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3