(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】クリーニング装置及びクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240520BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20240520BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20240520BHJP
B23K 26/122 20140101ALI20240520BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240520BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L21/304 645D
B23K26/16
B23K26/70
B23K26/122
B23K26/03
B08B7/00
H01L21/304 648G
H01L21/304 645A
H01L21/304 645B
(21)【出願番号】P 2020026208
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦充
(72)【発明者】
【氏名】村澤 尚樹
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-200330(JP,A)
【文献】特開2006-128489(JP,A)
【文献】特開2014-136239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0023902(US,A1)
【文献】特開2006-344718(JP,A)
【文献】特開2010-099716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/02 -21/033
B23K 26/00 -26/70
B08B 1/00 -17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを対象物に照射して該対象物に付着した付着物を除去するクリーニング装置であって、
該対象物を冷却する冷却ユニットと、
該冷却ユニットにより冷却された該対象物にガスを供給するガス供給ユニットと、
レーザー発振器と、開口を有するノズル
と、該開口に支持された集光レンズと、を有し、
該レーザー発振器から出射した該レーザービームを該開口に入射させて該集光レンズを通過させ、該対象物に該レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、を有し、
該ノズルは、該ノズルの内部に設けられ、一端が該ノズルの該開口で開口し、他端が該ガス供給ユニットに接続された流路を有し、
該流路は、該流路の該一端から噴射された該ガスが流動する経路上に該レーザービームの集光点が配置されるように構成されており、
該ガス供給ユニットは、該ノズル
の該流路を介して該ガスを該冷却ユニットによって冷却された該対象物に供給し、該対象物の該付着物が付着した領域で該ガスを凝縮させることによって、該付着物を液体で覆い、
該レーザービームは、該液体に吸収される波長に設定され、
該レーザービーム照射ユニットは、
該集光レンズを介して該液体に該レーザービームを照射することにより、該液体を蒸発させて該付着物を該対象物から除去することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
該液体は、該付着物の全体を覆うことを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
該対象物は、保持テーブルの保持面であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
該保持面は吸引源に接続されており、該保持テーブルは該吸引源を作動させることにより該保持面に負圧が作用するように構成されており、
該保持面への該ガスの供給及び該レーザービームの照射は、
該吸引源を作動させず、該保持面に負圧が作用していない状態で行われることを特徴とする請求項
3に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
該対象物を撮像する撮像ユニットと、
該撮像ユニットによって撮像された該対象物の該付着物が付着した領域の位置を記憶する記憶部と、
該ガスが供給される位置及び該レーザービームの集光点を、該対象物の該付着物が付着した領域に位置付ける位置付けユニットと、を更に有することを特徴とする、請求項1乃至
4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項6】
レーザービームを対象物に照射して該対象物に付着した付着物を除去するクリーニング方法であって、
該対象物を冷却する冷却ステップと、
冷却された該対象物の該付着物が付着した領域に
ガス供給ユニットによりガスを供給して凝縮させ、該付着物を液体で覆うガス供給ステップと、
該付着物を覆う該液体に
レーザービーム照射ユニットにより該レーザービームを照射することにより、該液体を蒸発させて該付着物を該対象物から除去するレーザービーム照射ステップと、を有し、
該レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、開口を有するノズルと、該開口に支持された集光レンズと、を有し、該レーザー発振器から出射した該レーザービームを該開口に入射させて該集光レンズを通過させ、該対象物に該レーザービームを照射するように構成されており、
該ノズルは、該ノズルの内部に設けられ、一端が該ノズルの該開口に開口し、他端が該ガス供給ユニットに接続された流路を有し、該流路に該ガスが供給されるように構成されており、
該流路は、該流路の該一端から噴射された該ガスが流動する経路上に該レーザービームの集光点が配置されるように構成されており、
該ガス供給ステップでは、
該ノズル
の該流路を介して該ガスを供給し、
該レーザービームは、該液体に吸収される波長に設定され、
該レーザービーム照射ステップでは、
該集光レンズを介して該レーザービームを照射することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項7】
該液体は、該付着物の全体を覆うことを特徴とする請求項
6に記載のクリーニング方法。
【請求項8】
該対象物は、保持テーブルの保持面であることを特徴とする請求項
6又は7に記載のクリーニング方法。
【請求項9】
該保持面は吸引源に接続されており、該保持テーブルは該吸引源を作動させることにより該保持面に負圧が作用するように構成されており、
該ガス供給ステップ及び該レーザービーム照射ステップは、
該吸引源を作動させず、該保持面に負圧が作用していない状態で行われることを特徴とする請求項
8に記載のクリーニング方法。
【請求項10】
該対象物を撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップで撮像された該対象物の該付着物が付着した領域の位置を記憶する記憶ステップと、
該ガスが供給される位置及び該レーザービームの集光点を、該対象物の該付着物が付着した領域に位置付ける位置付けステップと、を更に有することを特徴とする、請求項
6乃至
9のいずれかに記載のクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームを対象物に照射して対象物に付着した付着物を除去するクリーニング装置及びクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域にそれぞれIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハを分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。
【0003】
近年では、レーザー加工によってウェーハを加工するプロセスが広く実用化されている。例えば、レーザービームの照射によるアブレーション加工によって、ウェーハの分割予定ラインに沿って溝を形成し、この溝を分割起点(分割のきっかけ)としてウェーハを分割する手法等が用いられている。
【0004】
ウェーハにレーザー加工を施すと、レーザービームが照射された領域でデブリ(加工屑)が発生し、このデブリがウェーハやウェーハを保持する保持テーブルに付着することがある。そして、ウェーハや保持テーブルにデブリが残存すると、デバイスチップの品質が低下したり、保持テーブルによるウェーハの保持や保持テーブルからのウェーハの搬送が妨げられたりする。そのため、ウェーハの加工後には、ウェーハや保持テーブルに付着している付着物を除去する洗浄処理が施される。
【0005】
ここで、例えば原子力施設、航空機、船舶、建築物等の分野においては、レーザービームの照射によるアブレーションによって、所定の部材に付着した付着物を除去する手法が提案されている(特許文献1参照)。そして、このようなレーザービームの照射によって付着物を除去する手法は、ウェーハの加工に用いられる加工装置にも応用されている。特許文献2には、ウェーハを保持する保持テーブルに付着した付着物を、レーザービームの照射によって除去することが可能なレーザー加工装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、ウェーハや保持テーブル等の対象物に付着した付着物をレーザービームの照射によって除去すると、対象物自体も意図せずレーザービームによって加工され、対象物に加工痕が残存したり対象物が損傷したりするおそれがある。そこで、対象物に付着した付着物を覆うように水膜を形成した後、この水膜を蒸発させることによって付着物を飛散させて除去する手法が提案されている(非特許文献1参照)。この手法を用いると、レーザービームを対象物に直接照射して付着物を除去する場合と比較して、レーザービームの出力を低く抑えることができ、加工痕の残存や対象物の損傷が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-225300号公報
【文献】特開2010-99716号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】P.Leiderer et. al, ”Laser-induced Particle Removal from Silicon Wafers”, Proc. SPIE 4065, 249-259, 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、対象物に付着した付着物(異物)を覆う水膜にレーザービームを照射して付着物を除去する手法を用いることにより、対象物のダメージが低減される。ここで、例えばウェーハの表面に付着したデブリを除去する場合のように、対象物の表面の広範囲にわたって付着した付着物を除去する際には、付着物が確実に液体で覆われるように、対象物の表面の全体に所定の厚さの水膜が形成される。
【0010】
しかしながら、対象物の表面の全体を水膜で被覆するためには、水膜を形成するための大掛かりな設備を準備する必要がある。例えば、対象物に水を供給して水膜を形成する場合には、水の供給量を正確に制御可能な給水設備や、水膜の形成時に使用された水を排出するための排水設備等が必要となる。そのため、水膜にレーザービームを照射して対象物から付着物を除去するクリーニング方法を採用すると、設備の準備や稼働が負担になり、コストも増大する。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、対象物に付着した付着物を簡易に除去可能なクリーニング装置及びクリーニング方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、レーザービームを対象物に照射して該対象物に付着した付着物を除去するクリーニング装置であって、該対象物を冷却する冷却ユニットと、該冷却ユニットにより冷却された該対象物にガスを供給するガス供給ユニットと、レーザー発振器と、開口を有するノズルと、該開口に支持された集光レンズと、を有し、該レーザー発振器から出射した該レーザービームを該開口に入射させて該集光レンズを通過させ、該対象物に該レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、を有し、該ノズルは、該ノズルの内部に設けられ、一端が該ノズルの該開口で開口し、他端が該ガス供給ユニットに接続された流路を有し、該流路は、該流路の該一端から噴射された該ガスが流動する経路上に該レーザービームの集光点が配置されるように構成されており、該ガス供給ユニットは、該ノズルの該流路を介して該ガスを該冷却ユニットによって冷却された該対象物に供給し、該対象物の該付着物が付着した領域で該ガスを凝縮させることによって、該付着物を液体で覆い、該レーザービームは、該液体に吸収される波長に設定され、該レーザービーム照射ユニットは、該集光レンズを介して該液体に該レーザービームを照射することにより、該液体を蒸発させて該付着物を該対象物から除去することを特徴とするクリーニング装置が提供される。
【0013】
なお、好ましくは、該液体は、該付着物の全体を覆う。また、好ましくは、該レーザービームは、該液体に吸収される。また、好ましくは、該対象物は、保持テーブルの保持面である。また、好ましくは、該保持面は吸引源に接続されており、該保持テーブルは該吸引源を作動させることにより該保持面に負圧が作用するように構成されており、該保持面への該ガスの供給及び該レーザービームの照射は、該吸引源を作動させず、該保持面に負圧が作用していない状態で行われる。また、好ましくは、該クリーニング装置は、該対象物を撮像する撮像ユニットと、該撮像ユニットによって撮像された該対象物の該付着物が付着した領域の位置を記憶する記憶部と、該ガスが供給される位置及び該レーザービームの集光点を、該対象物の該付着物が付着した領域に位置付ける位置付けユニットと、を更に有する。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、レーザービームを対象物に照射して該対象物に付着した付着物を除去するクリーニング方法であって、該対象物を冷却する冷却ステップと、冷却された該対象物の該付着物が付着した領域にガス供給ユニットによりガスを供給して凝縮させ、該付着物を液体で覆うガス供給ステップと、該付着物を覆う該液体にレーザービーム照射ユニットにより該レーザービームを照射することにより、該液体を蒸発させて該付着物を該対象物から除去するレーザービーム照射ステップと、を有し、該レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、開口を有するノズルと、該開口に支持された集光レンズと、を有し、該レーザー発振器から出射した該レーザービームを該開口に入射させて該集光レンズを通過させ、該対象物に該レーザービームを照射するように構成されており、該ノズルは、一端が該ノズルの該開口に開口し、他端が該ガス供給ユニットに接続された流路を有し、該流路に該ガスが供給されるように構成されており、該流路は、該流路の該一端から噴射された該ガスが流動する経路上に該レーザービームの集光点が配置されるように構成されており、該ガス供給ステップでは、該ノズルの該流路を介して該ガスを供給し、該レーザービームは、該液体に吸収される波長に設定され、該レーザービーム照射ステップでは、該集光レンズを介して該レーザービームを照射するクリーニング方法が提供される。
【0015】
なお、好ましくは、該液体は、該付着物の全体を覆う。また、好ましくは、該レーザービームは、該液体に吸収される。また、好ましくは、該対象物は、保持テーブルの保持面である。また、好ましくは、該保持面は吸引源に接続されており、該保持テーブルは該吸引源を作動させることにより該保持面に負圧が作用するように構成されており、該ガス供給ステップ及び該レーザービーム照射ステップは、該吸引源を作動させず、該保持面に負圧が作用していない状態で行われる。また、好ましくは、該クリーニング方法は、該対象物を撮像する撮像ステップと、該撮像ステップで撮像された該対象物の該付着物が付着した領域の位置を記憶する記憶ステップと、該ガスが供給される位置及び該レーザービームの集光点を、該対象物の該付着物が付着した領域に位置付ける位置付けステップと、を更に有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係るクリーニング装置及びクリーニング方法では、対象物の付着物が付着した領域でガスを凝縮させることによって付着物を液体で覆った後、この液体をレーザービームの照射によって蒸発させ、付着物を対象物から除去する。これにより、大掛かりな設備を準備及び稼働することなく付着物を覆う液体を局所的に形成でき、対象物から付着物を簡易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】対象物から付着物を除去するクリーニング装置を示す断面図である。
【
図3】クリーニング装置を用いたクリーニング方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るクリーニング装置の構成例について説明する。
図1は、クリーニング装置2を示す斜視図である。クリーニング装置2は、レーザービームの照射によって、所定の対象物に付着した付着物(異物)を除去する。
【0019】
クリーニング装置2は、クリーニング装置2を構成する各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面は、X軸方向(加工送り方向、左右方向、第1水平方向)及びY軸方向(割り出し送り方向、前後方向、第2水平方向)と概ね平行に形成されており、基台4の上面上には位置付けユニット(位置付け機構、移動ユニット、移動機構)6が設けられている。位置付けユニット6は、Y軸移動機構(Y軸移動ユニット)8と、X軸移動機構(X軸移動ユニット)18と、Z軸移動機構(Z軸移動ユニット)34とを備える。
【0020】
Y軸移動機構8は、基台4の上面上にY軸方向に沿って配置された一対のY軸ガイドレール10を備える。一対のY軸ガイドレール10には、板状のY軸移動テーブル12がY軸ガイドレール10に沿ってスライド可能な状態で装着されている。
【0021】
Y軸移動テーブル12の裏面(下面)側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部は、一対のY軸ガイドレール10の間にY軸方向に沿って配置されたY軸ボールねじ14に螺合されている。また、Y軸ボールねじ14の端部には、Y軸ボールねじ14を回転させるY軸パルスモータ16が連結されている。Y軸パルスモータ16でY軸ボールねじ14を回転させると、Y軸移動テーブル12が一対のY軸ガイドレール10に沿ってY軸方向に移動する。
【0022】
X軸移動機構18は、Y軸移動テーブル12の表面(上面)側にX軸方向に沿って配置された一対のX軸ガイドレール20を備える。一対のX軸ガイドレール20には、板状のX軸移動テーブル22がX軸ガイドレール20に沿ってスライド可能な状態で装着されている。
【0023】
X軸移動テーブル22の裏面(下面)側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部は、一対のX軸ガイドレール20の間にX軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ24に螺合されている。また、X軸ボールねじ24の端部には、X軸ボールねじ24を回転させるX軸パルスモータ26が連結されている。X軸パルスモータ26でX軸ボールねじ24を回転させると、X軸移動テーブル22が一対のX軸ガイドレール20に沿ってX軸方向に移動する。
【0024】
X軸移動テーブル22の表面(上面)上には、クリーニング装置2によるクリーニングの対象となる対象物(被洗浄物、被加工物)11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)28が固定されている。チャックテーブル28の上面は、対象物11を保持する保持面28aを構成する。保持面28aは、例えば平面視で円形の平坦面であり、X軸方向及びY軸方向に概ね平行に形成されている。また、チャックテーブル28の周囲には、対象物11を支持するフレーム15を把持して固定する複数(
図1では4個)のクランプ30が設けられている。
【0025】
対象物11は、例えばシリコン等の半導体でなる円盤状の半導体ウェーハであり、互いに概ね平行な表面11a(第1面)及び裏面11b(第2面)を備える。対象物11の裏面11b側には、対象物11より径の大きい円形のテープ13が貼付されている。例えばテープ13は、フィルム状の基材と、基材上に形成された粘着層(糊層)とを備える。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。
【0026】
テープ13の外周部は、金属等でなり、対象物11より径の大きい円形の開口を中央部に備える環状のフレーム15に貼付される。対象物11は、フレーム15の開口の内側に配置された状態で、テープ13を介してフレーム15によって支持される。
【0027】
例えば、対象物11の表面11a側は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)によって、複数の矩形状の領域に区画されている。そして、この領域にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)等のデバイスが形成されている。対象物11を分割予定ラインに沿って分割すると、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。
【0028】
ただし、対象物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば対象物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる任意の形状のウェーハであってもよい。また、対象物11は、ミラー、レンズ等の光学部品であってもよい。
【0029】
Y軸移動テーブル12をY軸方向に沿って移動させると、チャックテーブル28が割り出し送り方向に移動する。また、X軸移動テーブル22をX軸方向に沿って移動させると、チャックテーブル28が加工送り方向に移動する。すなわち、Y軸移動機構8は割り出し送り機構として機能し、X軸移動機構18は加工送り機構として機能する。また、チャックテーブル28にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、この回転駆動源はチャックテーブル28をZ軸方向(鉛直方向、上下方向)に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。
【0030】
チャックテーブル28には、チャックテーブル28と、チャックテーブル28によって保持された対象物11とを冷却する冷却ユニット(冷却機構)32が備えられている。冷却ユニット32は、チャックテーブル28によって保持された対象物11を冷却する冷却器として機能する。冷却ユニット32の具体的な構成例は後述する。
【0031】
基台4の後端部(Y軸移動機構8、X軸移動機構18、及びチャックテーブル28の後方)には、Z軸移動機構34が設けられている。Z軸移動機構34は、基台4の上面上に配置された直方体状の基部36aと、基部36aの端部から上方に突出する柱状の支持部36bとを含む支持構造36を備える。支持部36bの表面(側面)は、Z軸方向に沿って平面状に形成されている。
【0032】
支持部36bの表面には、一対のZ軸ガイドレール38がZ軸方向に沿って設けられている。一対のZ軸ガイドレール38には、板状のZ軸移動テーブル40がZ軸ガイドレール38に沿ってスライド可能な状態で装着されている。
【0033】
Z軸移動テーブル40の裏面側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部は、一対のZ軸ガイドレール38の間にZ軸方向に沿って配置されたZ軸ボールねじ(不図示)に螺合されている。また、Z軸ボールねじの端部には、Z軸ボールねじを回転させるZ軸パルスモータ42が連結されている。Z軸パルスモータ42でZ軸ボールねじを回転させると、Z軸移動テーブル40が一対のZ軸ガイドレール38に沿ってZ軸方向に移動する。
【0034】
Z軸移動テーブル40の表面側には、支持部材44が固定されている。この支持部材44は、チャックテーブル28によって保持された対象物11にレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニット46を支持している。また、レーザービーム照射ユニット46には、チャックテーブル28によって保持された対象物11にガスを供給するガス供給ユニット48が接続されている。
【0035】
更に、レーザービーム照射ユニット46の先端部には、チャックテーブル28によって保持された対象物11等を撮像する撮像ユニット50が設けられている。例えば撮像ユニット50は、可視光を受光して電気信号に変換する撮像素子を備える可視光カメラや、赤外線を受光して電気信号に変換する撮像素子を備える赤外線カメラ等によって構成される。なお、撮像ユニット50は、異なる波長域の光を検出可能な2以上のカメラ(可視光カメラと赤外線カメラ等)を備えていてもよいし、倍率が異なる2以上のカメラを備えていてもよい。
【0036】
例えば撮像ユニット50は、レーザービーム照射ユニット46とX軸方向において隣接するように配置される。そして、撮像ユニット50で対象物11を撮像することによって取得された画像に基づいて、チャックテーブル28とレーザービーム照射ユニット46との位置合わせや、対象物11の状態の確認等が行われる。
【0037】
Z軸移動テーブル40をZ軸方向に沿って移動させると、レーザービーム照射ユニット46及び撮像ユニット50がZ軸方向に移動する。これにより、レーザービーム照射ユニット46から照射されるレーザービームの集光点の高さ位置の調整と、撮像ユニット50のピント合わせとが行われる。
【0038】
Y軸移動機構8、X軸移動機構18、Z軸移動機構34によって、チャックテーブル28(及びチャックテーブル28によって保持された対象物11)と、レーザービーム照射ユニット46及び撮像ユニット50との位置関係を調整する位置付けユニット6が構成される。この位置付けユニット6によって、レーザービームの照射位置、ガスの供給位置、撮像位置等が制御される。
【0039】
また、クリーニング装置2は、クリーニング装置2を構成する各構成要素(位置付けユニット6、チャックテーブル28、クランプ30、冷却ユニット32、レーザービーム照射ユニット46、ガス供給ユニット48、撮像ユニット50等)に接続された制御ユニット(制御部)52を備える。制御ユニット52は、クリーニング装置2の構成要素それぞれの動作を制御する。
【0040】
例えば、制御ユニット52はコンピュータによって構成され、クリーニング装置2の稼働に必要な各種の処理(演算等)を行う処理部54と、処理部54による処理に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)が記憶される記憶部56とを含む。処理部54は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリによって構成される。処理部54と記憶部56とは、バスを介して互いに接続されている。
【0041】
クリーニング装置2は、付着物(異物)が付着した状態の対象物11に対して、ガスを供給した後にレーザービームを照射することにより、対象物11から付着物を除去する。付着物の例としては、対象物11に所定の加工(切削加工、研削加工、研磨加工、レーザー加工等)が施された際に生じた加工屑や、対象物11の保管、加工、又は搬送の際に対象物11に付着したダスト等が挙げられる。
【0042】
例えば、対象物11が半導体ウェーハである場合には、対象物11を複数のデバイスチップに分割するため、対象物11に対してレーザービームの照射によるアブレーション加工が施されることがある。この場合、対象物11のレーザービームが照射された領域ではデブリ(溶融物等)が発生し、このデブリが対象物11の表面11a側に付着することがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、対象物11に付着したデブリ等の付着物を、クリーニング装置2によって除去する。
図2は、対象物11から付着物を除去するクリーニング装置2を示す断面図である。
【0044】
チャックテーブル28は、SUS(ステンレス鋼)等の金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなる円柱状の枠体(本体部)60を備える。枠体60の上面60a側の中央部には、円柱状の凹部60bが形成されている。この凹部60bには、ポーラスセラミックス等の多孔質部材でなる円盤状の吸引部62が嵌め込まれている。なお、吸引部62の厚さは凹部60bの深さと概ね同一に設定されており、枠体60の上面60aと吸引部62の上面(吸引面)62aとによってチャックテーブル28の保持面28aが構成される。
【0045】
また、チャックテーブル28には、チャックテーブル28と、チャックテーブル28によって保持された対象物11とを冷却する冷却ユニット32が搭載されている。例えば冷却ユニット32は、冷却液等の冷媒をチャックテーブル28の内部で流動させることにより、チャックテーブル28及び対象物11を冷却する。
【0046】
具体的には、凹部60bの底側には、複数の流路(吸引路、凹部)64が設けられている。凹部60bに嵌め込まれた吸引部62は、流路64及びバルブ66を介して、エジェクタ等の吸引源68に接続されている。また、枠体60の中央部の底側には、冷媒が供給される流路(冷媒循環路、凹部)70が設けられている。凹部60bに嵌め込まれた吸引部62は、流路70及びバルブ72を介して、冷媒を供給する冷媒供給源74に接続されている。
【0047】
冷媒供給源74は、例えば所定の温度に維持された冷却液(水等)を冷媒として流路70に供給する。そして、冷媒は、ポーラス状の吸引部62の内部を流動した後、流路64を介して吸引源68によって回収される。このように、冷却ユニット32は、流路64、バルブ66、吸引源68、流路70、バルブ72、冷媒供給源74を含んで構成される。なお、冷媒供給源74から供給される冷媒に制限はない。例えば冷媒は、水以外の液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0048】
また、冷却ユニット32の構成は、チャックテーブル28及び対象物11の冷却が可能であれば制限はない。例えば冷却ユニット32は、チャックテーブル28とは独立して設けられ、圧縮空気を噴出口から噴出してチャックテーブル28及び対象物11に冷気を供給するエアークーラー(ジェットクーラー)等であってもよい。この場合、エアークーラーは、噴出口がチャックテーブル28の保持面28aと対向するように設置される。そして、チャックテーブル28及び対象物11のうち冷気が供給された領域が、局所的に冷却される。
【0049】
レーザービーム照射ユニット46は、レーザービームをパルス発振するレーザー発振器80を備える。レーザー発振器80の種類は適宜選択でき、例えばYAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)等が用いられる。レーザー発振器80によって発振されたレーザービームは、ミラー82で反射し、集光レンズ84に入射する。
【0050】
また、レーザービーム照射ユニット46は、チャックテーブル28の上方に配置された円柱状のノズル86を備える。ノズル86の中央部には、ノズル86を上下に貫通する円柱状の開口86aが設けられており、この開口86aの内側で集光レンズ84が支持される。そして、ミラー82で反射したレーザービームは開口86aに入射して集光レンズ84を通過し、集光レンズ84によって所定の位置で集光される。
【0051】
ノズル86には、ガス供給ユニット48が接続されている。例えばガス供給ユニット48は、水等の液体92を貯留する容器90を備える。容器90には、外部から容器90に流入するガスが流れるガス流入路94と、容器90から外部に流出するガスが流れるガス流出路96とが接続されている。
【0052】
ガス流入路94の一端側は容器90の内部に接続され、ガス流入路94の他端側は所定のガス(エアー、N2ガス等)を供給するガス供給源(不図示)に接続されている。また、ガス流出路96の一端側は容器90の内部に接続され、ガス流出路96の他端側はノズル86に接続されている。
【0053】
ノズル86の内部には、ノズル86の周方向に沿って形成された環状の第1流路86bと、一端側が第1流路86bに接続され他端側が開口86aの下端部で開口する複数の第2流路86cとが設けられている。複数の第2流路86cは、例えばノズル86の周方向に沿って概ね等間隔に設けられる。
【0054】
ガス供給ユニット48のガス流出路96は、ノズル86の第1流路86bに接続される。例えば、液体92として水が注入された容器90を加熱しつつ、ガス供給源からガス(エアー、N2ガス等)を供給すると、蒸気(水蒸気)を含むガスがガス流出路96を介してノズル86に供給される。そして、蒸気を含むガスは、第1流路86bを介して複数の第2流路86cに供給され、開口86aの内側で露出する第2流路86cの端部(開口、噴射口)86dから下方(チャックテーブル28側)に向かって噴射される。
【0055】
なお、ガス流入路94を介して容器90に供給されるガスの成分や、容器90に貯留される液体92の種類は、適宜変更できる。また、容器90に供給されるガス及び容器90に貯留された液体92の温度は、蒸気を含むガスが適切に生成されるように、ガスの成分や液体92の種類に応じて制御される。
【0056】
第2流路86cは、第2流路86cの端部86dから噴射されたガスが、集光レンズ84によって集光されたレーザービームの集光点を通過するように形成される。具体的には、第2流路86cの端部86dから噴射されたガスが流動する経路上にレーザービームの集光点が配置されるように、第2流路86cの位置、形状、大きさ、角度等が設定される。これにより、ノズル86を移動させることなく、レーザービームの集光点とガスが供給される位置(ガス供給位置)とを同じ位置に位置付けることができる。
【0057】
次に、上記のクリーニング装置2を用いて対象物11に付着した付着物を除去するクリーニング方法の具体例を、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図3は、クリーニング装置2を用いたクリーニング方法のフローチャートである。なお、以下のクリーニングを実施する際におけるクリーニング装置2の各構成要素の動作は、制御ユニット52(
図1参照)によって制御される。
【0058】
対象物11のクリーニングを実施する際は、まず、付着物が付着した状態の対象物11をチャックテーブル28によって保持する。例えば、対象物11の表面11a側にデブリ等の付着物が付着している場合には、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側(テープ13側)が保持面28aと対向するように、対象物11をチャックテーブル28上に配置する。また、対象物11を支持しているフレーム15(
図1参照)を、複数のクランプ30(
図1参照)で固定する。
【0059】
この状態で、バルブ66を開き、吸引源68の負圧を吸引部62に作用させる。これにより、対象物11の裏面11b側がテープ13を介して吸引部62の上面62aに吸引され、対象物11がチャックテーブル28によって保持される。
【0060】
次に、対象物11を冷却する(冷却ステップS1)。冷却ステップS1では、冷却ユニット32によって対象物11を冷却する。具体的には、バルブ66を開いた状態で、更にバルブ72を開き、冷媒供給源74から流路70に冷媒を供給する。冷媒としては、例えば所定の温度に維持された冷却液(水等)が用いられる。
【0061】
冷媒供給源74から供給された冷媒は、流路70を介してポーラス状の吸引部62の内部に入り込む。そして、吸引部62の内部の冷媒は、複数の流路64及びバルブ66を介して吸引源68に吸引される。このように、冷媒が枠体60及び吸引部62の内部を流動することにより、チャックテーブル28が冷却される。そして、チャックテーブル28が冷却されると、チャックテーブル28の保持面28aに接触した状態のテープ13が冷却されるとともに、テープ13に貼付された対象物11が冷却される。
【0062】
なお、冷却ユニット32は、対象物11の温度を測定する温度測定ユニット(不図示)を備えていてもよい。例えば温度測定ユニットは、対象物11の温度を直接測定する温度計や、チャックテーブル28の温度を測定することによって対象物11の温度を間接的に測定する温度計等によって構成される。
【0063】
温度測定ユニットによって測定された対象物11の温度は、制御ユニット52(
図1参照)に入力される。そして、制御ユニット52は、温度測定ユニットから入力された温度の値と、予め記憶部56に記憶された基準値(閾値)とを比較し、対象物11の温度が基準値以下であるか否かを判定する。対象物11の温度が基準値以下であると判定されると、制御ユニット52は冷却ユニット32に制御信号を出力し、冷却ユニット32によるチャックテーブル28及び対象物11の冷却を停止させる。
【0064】
また、チャックテーブル28の冷却は、対象物11がチャックテーブル28によって保持される前に開始してもよい。この場合には、既に冷却された状態のチャックテーブル28上に対象物11が配置され、対象物11が冷却される。
【0065】
次に、Y軸移動機構8及びX軸移動機構18(
図1参照)によってチャックテーブル28を撮像ユニット50(
図1参照)の下方に配置する。そして、Z軸移動機構34(
図1参照)によって撮像ユニット50の高さ位置を調整した後、撮像ユニット50で対象物11を撮像する(撮像ステップS2)。これにより、チャックテーブル28によって保持された対象物11の表面11a側が表された画像(撮像画像)が取得される。
【0066】
図4は、撮像画像100を示す画像図である。撮像画像100には、対象物11の表面11a側に付着した複数の付着物17が表示されている。なお、
図4では説明の便宜上、付着物17を視認可能な大きさで表しているが、例えば粒径が1μm以下の微細な粒子が付着物17として付着している場合もある。
【0067】
撮像ユニット50によって取得された撮像画像は、制御ユニット52(
図1参照)に入力される。そして、制御ユニット52は撮像画像に所定の画像処理を施すことにより、対象物11に付着している付着物17の位置を特定する。例えば、処理部54は撮像画像に対して二値化処理等を施し、対象物11のうち付着物17が付着している領域と、その他の領域とを区別する。そして、処理部54は、画像処理が施された撮像画像の階調等に基づいて、付着物17が付着している領域の位置を特定する。
【0068】
ただし、付着物17が付着している領域の位置の特定方法に制限はない。例えば、クリーニング装置2に備えられた表示部(タッチパネル式のディスプレイ等)に撮像画像を拡大して表示させ、オペレーターがこの撮像画像を確認して付着物17が付着している領域の位置を特定してクリーニング装置2に入力してもよい。
【0069】
そして、対象物11の付着物17が付着している領域の位置を、記憶部56に記憶する(記憶ステップS3)。具体的には、付着物17が付着している領域の位置が特定されると、処理部54は記憶部56にアクセスし、該位置の情報(座標等)を記憶部56に記憶する。なお、対象物11に複数の付着物17が付着している場合には、全ての付着物17の位置情報が記憶されてもよいし、対象物11の所定の領域内に存在する各付着物17の位置情報が記憶されてもよい。
【0070】
次に、ガスが供給される位置(ガス供給位置)及びレーザービームの集光点を、対象物11の付着物17が付着した領域に位置付ける(位置付けステップS4)。位置付けステップでは、まず、処理部54が記憶部56にアクセスし、付着物17が付着している位置の情報を記憶部56から読み出す。そして、制御ユニット52によって位置付けユニット6(
図1参照)が制御され、位置付けユニット6は、ガス供給位置及びレーザービーム120の集光点を、対象物11の付着物17が付着している領域に位置付ける。
【0071】
図2に示すように、クリーニング装置2では、ガス供給ユニット48からノズル86を介してチャックテーブル28に向かってガス110が供給されるとともに、レーザービーム照射ユニット46からチャックテーブル28に向かってレーザービーム120が照射される。そして、前述の通り、ガス110はレーザービーム120の集光点を通過するように噴射される。
【0072】
そのため、レーザービーム120の集光点を対象物11の付着物17が付着した領域に位置付けると、ガス供給位置も該領域に自動的に位置付けられる。すなわち、対象物11及びレーザービーム120の集光点の位置合わせと、対象物11及びガス供給位置の位置合わせとが同時に実施される。これにより、位置合わせの際のクリーニング装置2の動作が簡略化される。
【0073】
次に、対象物11の付着物17が付着した領域にガス110を供給する(ガス供給ステップS5)。ガス供給ステップS5では、ガス供給ユニット48からノズル86に供給されたガス110が、第2流路86cの端部86dから対象物11の付着物17が付着した領域に向かって噴出する。これにより、対象物11の付着物17が付着した領域に、局所的にガス110が供給される。
【0074】
このとき、対象物11は冷却ユニット32によって冷却されている。この状態で、対象物11の付着物17が付着した領域にガス110が供給されると、付着物17を核としてガス110が凝縮する。その結果、対象物11の表面11a側には、付着物17を覆う液体19が形成される。例えば、ガス110に水蒸気が含まれる場合には、水蒸気が凝縮して水滴になり、付着物17が水によって覆われる。なお、
図2では説明の便宜上、付着物17及び液体19を拡大して示している。
【0075】
このように、付着物17の付近にガス110を供給すると、付着物17を覆う液体19が局所的に形成される。これにより、付着物17が存在する領域のみに微細な液滴を選択的に形成できる。なお、液体19の形状は、付着物17の大きさや密度(数)に応じて異なる。例えば、付着物17を覆う液滴(水滴)が離れた位置に複数形成されることもあるし、複数の液滴が連結して液膜(水膜)が局所的に形成されることもある。
【0076】
上記の方法で付着物17を覆う液体19を形成する場合、対象物11に水を正確な流量で供給して付着物17を覆う水膜を形成する給水設備や、水膜の形成に使用された水を排出する排水設備等を、新たにクリーニング装置2に設置する必要がない。これにより、大掛かりな設備を準備及び稼働することなく、付着物17を覆う液体19を簡易に形成できる。
【0077】
なお、対象物11の温度は、ガス110が対象物11に到達した際にガス110が凝縮して液体19が形成されるように、冷却ユニット32によって調整される。例えば、ガス110が水蒸気を含む場合、冷却ユニット32は、対象物11の温度が露点温度以下となるように対象物11を冷却する。
【0078】
次に、付着物17を覆う液体19にレーザービーム120を照射する(レーザービーム照射ステップS6)。レーザービーム照射ステップでは、ノズル86から照射されたレーザービーム120が、対象物11の付着物17が付着した領域で集光される。その結果、付着物17を覆う液体19がレーザービーム120を吸収して瞬時に蒸発し、その際に生じる圧力(蒸発反力)によって付着物17が飛散し、対象物11から離脱する。これにより、付着物17が対象物11から除去される。
【0079】
上記のように、液体19の蒸発によって付着物17を除去する場合、必ずしも付着物17自体にアブレーション加工を施す必要がない。そのため、レーザービーム120の出力を低く抑えることができ、対象物11の損傷が抑制される。なお、レーザービーム120の照射条件は、液体19が蒸発して付着物17が除去されるように設定される。
【0080】
例えば、液体19が水である場合、付着物17を除去するためのレーザービーム120の照射条件は以下のように設定できる。ただし、レーザービーム120の照射条件は、対象物11や付着物17に応じて適宜変更できる。例えば、対象物11の寸法や材質、付着物17の大きさ等に応じて、パルスエネルギーの値が調整される。
レーザー発振器 :YAGレーザー
波長 :1064nm
パルス幅 :20ns
パルスエネルギー:10~100mJ
スポット径 :5mm
【0081】
その後、対象物11に他の付着物17が付着しているか否かを判定する(判断ステップS7)。そして、対象物11に他の付着物17が付着している場合には(判断ステップS7でNO)、更に位置付けステップS4、ガス供給ステップS5、レーザービーム照射ステップS6を実施して、他の付着物17を除去する。そして、対象物11に付着している全ての付着物17(又は、対象物11の所定の領域内に存在する全ての付着物17)が除去されると(判断ステップS7でYES)、対象物11のクリーニングが完了する。
【0082】
上記の対象物11のクリーニングは、例えば、記憶部56に記憶されたプログラムを処理部54が実行することによって実現される。具体的には、対象物11のクリーニングに必要な各ステップ(
図3のステップS1~S7等)を実施するために必要なクリーニング装置2の各構成要素の一連の動作を記述するプログラムが、記憶部56に予め記憶されている。そして、オペレーターがクリーニング装置2に対して対象物11のクリーニングを実施する旨の指示を与えると、処理部54は記憶部56から該プログラムを読み出して実行し、クリーニング装置2の各構成要素の動作を制御するための制御信号を順次生成する。
【0083】
以上の通り、本実施形態に係るクリーニング装置及びクリーニング方法では、対象物11の付着物17が付着した領域でガス110を凝縮させることによって付着物17を液体19で覆った後、この液体19をレーザービーム120の照射によって蒸発させ、付着物17を対象物11から除去する。これにより、給水設備、排水設備等の大掛かりな設備を準備及び稼働することなく付着物17を覆う液体19を局所的に形成でき、対象物11から付着物17を簡易に除去できる。
【0084】
なお、上記実施形態で説明したクリーニング方法に含まれる各ステップの順序は、付着物17の除去に支障がない範囲内で適宜変更できる。例えば、冷却ステップS1は、撮像ステップS2とガス供給ステップS5との間の任意のタイミングで実施できる。また、冷却ステップS1は、撮像ステップS2、記憶ステップS3、又は位置付けステップS4と同時進行で実施されてもよい。
【0085】
また、冷却ユニット32が対象物11の一部を局所的に冷却できる場合には、対象物11のうち付着物17が付着した領域のみを冷却してもよい。この場合には、記憶ステップS3の実施後に、記憶部56に記憶された位置(対象物11の付着物17が付着した位置)を冷却ユニット32で局所的に冷却する冷却ステップS1が実施される。
【0086】
なお、対象物11の局所的な冷却には、ノズル86を用いることもできる。例えば、ノズル86の第1流路86bには、ノズル86にエアーを供給するエアー供給源(不図示)が接続されていてもよい。エアー供給源は、圧縮空気を噴出してノズル86に冷気を供給するエアークーラー(ジェットクーラー)等によって構成される。
【0087】
エアー供給源からノズル86に供給された冷気は、第1流路86b及び第2流路86cを流動し、第2流路86cの端部86dからチャックテーブル28に向かって噴出する。この冷気により、対象物11が局所的に冷却される。
【0088】
例えば、位置付けステップS4の実施後、エアー供給源からノズル86に冷気を供給すると、対象物11の付着物17が付着した領域に冷気が供給される。これにより、対象物11の付着物17が付着した領域が局所的に冷却される(冷却ステップS1)。その後、エアー供給源からノズル86への冷気の供給を停止するとともに、ガス供給ユニット48からノズル86にガス110を供給する。これにより、対象物11の付着物17が付着した領域にガス110が局所的に供給される(ガス供給ステップS5)。
【0089】
また、クリーニング装置2は、対象物11のクリーニングのみでなく、対象物11にレーザー加工を施す機能を備えていてもよい。例えば、レーザービーム照射ユニット46から照射されるレーザービームの波長を、少なくともレーザービームの一部が対象物11に吸収されるように設定し、このレーザービームを対象物11に照射して対象物11にアブレーション加工を施してもよい。この場合、クリーニング装置2はレーザー加工装置としての機能も有する。
【0090】
さらに、本実施形態では、クリーニングの対象が半導体ウェーハ等の対象物11である場合について説明したが、クリーニングの対象に制限はない。例えば、対象物11にレーザー加工を施すと、レーザービームによって溶融されたテープ13の一部が、チャックテーブル28の保持面28aに付着物として付着することがある。この場合には、クリーニング装置2によるクリーニングの対象をチャックテーブル28の保持面28aに設定し、保持面28aから付着物を除去してもよい。
【0091】
なお、チャックテーブル28の保持面28aにクリーニングを施す場合には、バルブ66を閉じ、吸引源68の負圧が吸引部62に作用していない状態でガス110を供給することが好ましい。これにより、ガス110が凝縮して液体が生成されても、その液体が吸引部62や流路64に入り込みにくくなる。
【0092】
その他、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0093】
11 対象物(被洗浄物、被加工物)
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
13 テープ
15 フレーム
17 付着物
19 液体
2 クリーニング装置(レーザー加工装置)
4 基台
6 位置付けユニット(位置付け機構、移動ユニット、移動機構)
8 Y軸移動機構(Y軸移動ユニット)
10 Y軸ガイドレール
12 Y軸移動テーブル
14 Y軸ボールねじ
16 Y軸パルスモータ
18 X軸移動機構(X軸移動ユニット)
20 X軸ガイドレール
22 X軸移動テーブル
24 X軸ボールねじ
26 X軸パルスモータ
28 チャックテーブル(保持テーブル)
28a 保持面
30 クランプ
32 冷却ユニット(冷却機構)
34 Z軸移動機構(Z軸移動ユニット)
36 支持構造
36a 基部
36b 支持部
38 Z軸ガイドレール
40 Z軸移動テーブル
42 Z軸パルスモータ
44 支持部材
46 レーザービーム照射ユニット
48 ガス供給ユニット
50 撮像ユニット
52 制御ユニット(制御部)
54 処理部
56 記憶部
60 枠体(本体部)
60a 上面
60b 凹部
62 吸引部
62a 上面(吸引面)
64 流路(吸引路、凹部)
66 バルブ
68 吸引源
70 流路(冷媒循環路、凹部)
72 バルブ
74 冷媒供給源
80 レーザー発振器
82 ミラー
84 集光レンズ
86 ノズル
86a 開口
86b 第1流路
86c 第2流路
86d 端部(開口、噴射口)
90 容器
92 液体
94 ガス流入路
96 ガス流出路
100 撮像画像
110 ガス
120 レーザービーム