(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】追い種注ぎ具、及び該追い種注ぎ具を用いた揚げ物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20240520BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20240520BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240520BHJP
【FI】
A47J37/12 371
A23L7/157
A23L5/10 E
(21)【出願番号】P 2020059809
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章浩
(72)【発明者】
【氏名】藤山 卓哉
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-098481(JP,U)
【文献】特開2016-158596(JP,A)
【文献】特開2011-062154(JP,A)
【文献】特開2002-051921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0282674(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
A23L 7/157
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚げ物バッターを付着させた具材を油ちょうする油ちょう工程と、
油ちょう中の具材に、追い種を付着させる追い種付着工程と、を行う揚げ物の製造方法であって、
前記追い種付着工程では、
把持部と、
追い種保持部と、からなり、
追い種保持部は、螺旋構造、複数の凹凸、および、複数の突起物から選択される1以上の形状を有し、
追い種保持部による追い種の保持量が1.5~15gである、追い種注ぎ具を用いて、15±1℃におけるみかけの粘度が300~2100mPa・sの追い種を
、5秒間の追い種量が2~6gとなるように油中に注ぐことにより、前記具材に追い種を付着させる、揚げ物の製造方法。
【請求項2】
前記追い種保持部は、螺旋構造から成る追い種保持部、全周表面に複数の凹凸を成す追い種保持部、および、全周表面に複数の突起物を成す追い種保持部から選択される1以上の追い種保持部である、請求項1に記載の揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物を油ちょうする際に追い種を注ぐための器具に関する。より詳しくは、揚げ物の衣に、適度な花散りを付すことができる追い種注ぎ具、及び該追い種注ぎ具を用いた揚げ物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物の製造は、一般的に、具材に打ち粉をし、これに小麦粉等を水に溶いた衣液を全体にからめ、油ちょうする方法が採用されている。揚げ物は、家庭や専門店にて揚げたてが喫食される他、油ちょう後、スーパー等の惣菜コーナーでバットや皿等に並べて販売される。スーパー等の惣菜コーナー等においては、商品の味や食感だけでなく、外観が売り上げに大きく寄与するため、外観に優れた揚げ物を製造することも大変重要である。
【0003】
揚げ物の外観や食感を向上させるために、油槽で油ちょう中の揚げ物に、追い種(揚げ途中の揚げ物の表面に衣液を付け足し、衣にボリュームを与えること)を行い、適度に花散り(「花咲き」ともいわれる細かい凹凸の針状の衣)を付ける技法が行われている。具体的には、具材に衣液を付着させたものを油中に投入して油面から一定の深さに沈めた後、手や、匙、天ぷら用箸等を用いて衣液をすくい、油中の揚げ途中の揚げ物の表面めがけて衣液を油中に投入する手法が一般的であるが、調理者は熟練した技量が必要である。
【0004】
しかしながら、一般に、スーパー等のバックヤードで揚げ物を調理する場合は、専門店とは異なり、熟練した調理者を確保することは難しく、良好な外観及び食感の揚げ物を安定的に製造することは困難である。また、手を用いて追い種を行う場合は、手の洗浄が必要となり、作業性や衛生面等の問題も生じる。
【0005】
このような問題を鑑み、例えば、特許文献1では、天ぷら具材を吊下げるように保持し、当該天ぷら具材を回転しながら周囲に衣液を噴き付けたり滴下したりするなどして不規則に付着させたうえ、回転させながら加熱された油中に入れ、遠心力により天ぷらの衣の表面に不規則な凹凸が多数出来るようにすることで、機械的に花揚げ天ぷらを製造する方法が提案されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2では、天ぷらの衣原料を収容する衣原料収容部と、前記衣原料収容部に連通し、且つ、前記衣原料収容部に収容された前記天ぷらの衣原料を天ぷら用素材に注ぐための開口を有するノズルと、前記ノズルの開口を閉鎖する閉鎖位置と前記ノズルの開口を開放する開放位置との間で移動可能に配置された栓部材と、前記栓部材を前記閉鎖位置と前記開放位置との間で移動させる操作部と、を備え、前記操作部により前記栓部材を前記開放位置に移動させることで前記衣原料収容部に収容された前記天ぷらの衣原料を自重により前記ノズルの開口から注ぐことにより、熟練しなくとも、適量の衣原料を天ぷら用素材に注加して、華を咲かせた天ぷらを製造することを可能にする衣原料注ぎ具が提案されている。
【0007】
また、例えば、特許文献3では、バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1~6質量%、及び食用油脂を1~5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4~2.5であり、且つ粘度V12rpmが、750~1600mPa・sとなるように調製したバッターについて、チキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5~1であることにより、調理者の技量に依らず、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つ良好な食感が長時間維持される天ぷらを容易に製造することができる天ぷら用バッターミックスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-191918号公報
【文献】特開2012-40297号公報
【文献】特開2016-158596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の通り、揚げ物の衣に、適度な花散りを付す技術は開発されつつあるが、装置が大型化する等の問題もあり、更なる技術の開発が望まれているのが実情である。
【0010】
そこで、本発明では、調理者の技量に依らず、小型の調理器具によって、揚げ物の衣に、適度な花散りを付す技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術では、まず、
揚げ物を油ちょうする際に追い種を注ぐための器具であって、
把持部と、
追い種保持部と、からなり、
追い種保持部は、螺旋構造、複数の凹凸、および、複数の突起物から選択される1以上の形状を有し、
追い種保持部による追い種の保持量が1.5~15gである、追い種注ぎ具を提供する。
【0012】
本技術では、次に、
揚げ物バッターを付着させた具材を油ちょうする油ちょう工程と、
油ちょう中の具材に、追い種を付着させる追い種付着工程と、を行う揚げ物の製造方法であって、
前記追い種付着工程では、前記の追い種注ぎ具を用いて、15±1℃におけるみかけの粘度が300~2100mPa・sの追い種を油中に注ぐことにより、前記具材に追い種を付着させる、揚げ物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、調理者の技量に依らず、小型の調理器具によって、揚げ物の衣に、適度な花散りを付すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本技術に係る追い種注ぎ具1の第1実施形態~第3実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【
図2】本技術に係る追い種注ぎ具1の第4実施形態~第7実施形態を示す模式概念図である。
【
図3】従来、追い種を行う際に用いられてきた調理器具を模式的に示す模式概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
[追い種注ぎ具1]
本技術に係る追い種注ぎ具1は、(1)把持部11と、(2)追い種保持部12と、からなる。以下、各部について詳細に説明する。
【0017】
(1)把持部11
把持部11は、追い種を注ぐ際に調理者が把持する部分である。把持部11の材質は、本技術の効果を損なわない限り、調理器具に用いることができる材質を自由に選択することができる。例えば、木材;アルミニウムやステンレス等の金属;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)、フェノール樹脂(PF)、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等の樹脂等を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
把持部11の形態は、調理者が把持しやすい形態であれば、本技術の効果を損なわない限り、自由に設計することができる。例えば、把持しやすくするために、図示しないが一部を曲線形状にしたり、段差や凹凸を設けたりすることも自由である。
【0019】
(2)追い種保持部12
追い種保持部12は、追い種を注ぐ際に、追い種が保持される部位である。本技術に係る追い種注ぎ具1の追い種保持部12は、螺旋構造、複数の凹凸、および、複数の突起物から選択される1以上の形状を有し、追い種保持部による追い種の保持量が1.5~15gであることを特徴とする。
【0020】
例えば、
図3(1)に示すような従来のスプーンやお玉等の液体をすくうための調理器具では、一気に追い種が流れ出てしまわないようにするため、追い種を落とす際の調理器具を傾ける角度を調整しながら衣液を一定量落とし続けなければ、揚げ物の衣に適度な花散りを付与することができない。
【0021】
また、例えば
図3(2)に示すような従来の天ぷら用箸は、保持できる追い種の量が非常に少なく、2本の棒のみで追い種をすくう作業をするため、熟練の技量がなければ、効率的な揚げ物の製造ができない。
【0022】
更に、例えば、手を用いて追い種を行う場合、調理者は熟練した技量が必要であると共に、衛生面の問題が生じたり、手の洗浄が必要となったり、作業性でも問題があった。
【0023】
一方、本技術に係る追い種注ぎ具1の追い種保持部12は、適度な量の追い種が保持でき、かつ、一気に追い種が流れ出ることがないため、調理者の技量に依らず、揚げ物の衣に、適度な花散りを付すことができる。
【0024】
追い種保持部12の材質は、本技術の効果を損なわない限り、調理器具に用いることができる材質を自由に選択することができる。例えば、木材;アルミニウムやステンレス等の金属;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)、フェノール樹脂(PF)、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等の樹脂等を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
追い種保持部12の形態は、螺旋構造、複数の凹凸、および、複数の突起物から選択される1以上の形状を有し、追い種保持部による追い種の保持量が1.5~15gである限り、特に限定されず、自由に設計することができる。以下、実施形態に従って、追い種保持部12の具体的形態を例示する。
【0026】
<実施形態1>
図1Aは、本技術に係る追い種注ぎ具1の第1実施形態を示す模式概念図である。第1実施形態の追い種注ぎ具1は、把持部11の片側に、複数の突起物を有する追い種保持部12を有する。この突起物の表面及び突起物間に、追い種が保持される。
【0027】
突起は、
図1Aに示す第1実施形態のように、前記の材質を用いた硬質素材で形成することも可能であるし、前記の材質を用いて可撓性のある素材で形成することもできる。また、前記の材質を用いた繊維質を用いて、一つの突起物を複数の繊維質の束で構成することもできる。一つの突起物を複数の繊維質の束で構成することで、突起物を構成する繊維質間にも追い種を保持することができる。
【0028】
図1Aに示す第1実施形態では、把持部11の片側に複数の突起物を有する構造となっているが、これに限定されず、把持部11の全周囲方向に複数の突起物を有する構造としてもよい。
【0029】
<実施形態2および3>
図1BおよびCは、本技術に係る追い種注ぎ具1の第2実施形態および第3実施形態を示す模式概念図である。
図1BおよびCに示す第2実施形態および第3実施形態に係る追い種注ぎ具1は、把持部11の先端に、全周表面に複数の凹凸を成す追い種保持部12を備える。複数の凹凸とは、2つ以上の凹みを有する形状であり、3つ以上の凹みがより好ましい。第2実施形態および第3実施形態に係る追い種注ぎ具1は、この複数の凹凸の表面及び凹部に、追い種が保持される。
【0030】
本技術では、複数の凹凸や突起物を有する追い種保持部12の場合、
図1BおよびCに示す第2実施形態および第3実施形態に係る追い種注ぎ具1のように、追い種保持部12の全周にわたって複数の凹凸や突起物を有する形状であることが好ましい。このような形状とすることで、どのような角度でも追い種を一定量、保持することができるため、調理者の技量に依らず、必要な量の追い種を保持することができる。
【0031】
<実施形態4~7>
図2D~Gは、本技術に係る追い種注ぎ具1の第4実施形態~第7実施形態を示す模式概念図である。第4実施形態~第7実施形態に係る追い種注ぎ具1は、把持部11の先端に、螺旋構造から成る追い種保持部12を備える。第4実施形態~第7実施形態に係る追い種注ぎ具1は、この螺旋構造の表面及び螺旋構造間に、追い種が保持される。
【0032】
螺旋構造の大きさ等の形態は、保持する追い種の粘度や目的の量等に応じて、第4実施形態~第7実施形態のように、自由に設計することができる。
【0033】
螺旋構造の内部は、第4実施形態~第6実施形態のように、空洞となっていても良いし、
図2Gに示す第7実施形態のように、前記の材質で充填されていても良い。この場合、内部の材質と螺旋構造の材質は、同一の材質を用いても良いし、異なる材質を用いても良い。
【0034】
以上説明した追い種保持部12は、追い種を注ぐ際に、追い種が一点から一定の速度で落ちることが好ましい。例えば、
図1Aに示す第1実施形態に係る追い種注ぎ具1は、追い種を注ぐ際に、傾き方を工夫することで、追い種を一点から一定の速度で落とすことができるが、例えば、
図1BおよびCに示す第2実施形態および第3実施形態や、
図2D~Gに示す第4実施形態~第7実施形態に係る追い種注ぎ具1の追い種保持部12のように、把持部11と反対側方向に窄まる形態を成すことで、追い種保持部12の把持部11との接続側とは反対側の先端から追い種が落ちるようになるため、追い種を注ぐ際に、調理者の技量に依らず、追い種を一点から一定の速度で落とすことができる。
【0035】
また、追い種保持部12は、R面で繋続する構造であることが好ましい。例えば、エッジを有する場合、追い種を注ぐ際に、エッジ部分からも追い種が滴ってしまう場合があるが、R面で繋続する構造であることで、追い種を注ぐ際に、追い種がR面に沿って移動し、誤った箇所から追い種が滴ってしまうのを防止することができる。
【0036】
更に、追い種保持部12の追い種保持量は、1.5~15gの範囲であれば本発明の効果を発揮するが、好ましくは、3~10g、より好ましくは、5~7gである。この範囲にすることで、作業性と天ぷらの外観をより良好にすることができる。
【0037】
加えて、追い種保持部12の5秒間の追い種の量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、本技術では、好ましくは、3~6gである。この範囲にすることで、作業性と天ぷらの外観をより良好にすることができる。
【0038】
[揚げ物の製造方法]
本技術に係る揚げ物を製造方法は、(1)油ちょう工程と、(2)追い種付着工程と、を少なくとも行う方法である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0039】
(1)油ちょう工程
油ちょう工程は、衣液を付着させた具材を油ちょうする工程である。油ちょう工程における具体的な油ちょう時の温度、時間等の条件は、特に限定されず、具材や衣液の種類等に応じて、自由に設定することができる。
【0040】
本技術で用いることのできる具材も特に限定されず、揚げ物に用いることができる具材を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、エビ、イカ、ホタテ、キス、ハゼ、アジ、アナゴ、イワシ、アユ、カキ等の魚介類;牛肉、豚肉、鶏肉等の肉類;ニンジン、玉ねぎ、ナス、カボチャ、ゴボウ、アスパラガス、レンコン、シシトウ、ズッキーニ、タラの芽等の野菜類;サツマイモ、ジャガイモ等の芋類;シイタケ、マイタケ、エノキ、エリンギ、マツタケ等のキノコ類;インゲンマメ、ソラマメ等の豆類;卵類;さらにはちくわ等の練り製品等が挙げられる。
【0041】
本技術で用いることのできる衣液も特に限定されず、揚げ物に用いることができる衣液を自由に選択して用いることができる。例えば、小麦粉等の穀粉を主体とし、澱粉、加工澱粉、植物性蛋白、膨張剤、卵、粉末油脂、乳化剤、食塩、糖類、増粘剤、着色料等を1種又は2種以上自由に組み合わせて衣液とすることができる。
【0042】
本技術では、具材に衣液を付着させる前に、具材に打ち粉をすることも可能である。本技術で用いることができる打ち粉も特に限定されず、揚げ物に用いることができる打ち粉を自由に選択して用いることができる。例えば、小麦粉や、小麦粉等の穀粉を主体とし、卵白粉等の蛋白質粉末を含む粉体を打ち粉として用いることができる。
【0043】
(2)追い種付着工程
追い種付着工程は、油ちょう中の具材に、追い種を付着させる工程である。本技術では、この追い種付着工程において、前述した追い種注ぎ具1を用いることを特徴とする。追い種注ぎ具1の詳細は、前述した通りであるため、ここでは説明を割愛する。
【0044】
本技術に係る揚げ物の製造方法では、15±1℃におけるみかけの粘度が300~2100mPa・sの追い種を用いることも特徴とする。本技術で用いることができる追い種は、15±1℃におけるみかけの粘度が300~2100mPa・sであれば、前述した衣液をそのまま追い種として用いることもできるし、前述したバッターとは異なる組成の追い種を用いることも可能である。なお、本技術で用いることができる追い種に用いる材料は、前述したバッターと同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0045】
本技術に用いる追い種の15±1℃におけるみかけの粘度は、300~2100mPa・sであればよいが、より好ましくは400~1500mPa・s、更に好ましくは500~1000mPa・sである。この範囲のみかけの粘度を呈する追い種を用いることで、一定の速度で一定量の追い種を落とすことができ、その結果、揚げ物の衣に、適度な花散りを付すことができる。
【0046】
なお、本技術において、みかけの粘度は、以下の測定条件にて測定した値である。
[みかけの粘度の測定条件]
B型粘度計:TVB-10M (東機産業株式会社製)
ローター:TM3
回転数:12rpm
測定時間:1分間
測定容器:ビーカー 250mL
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0048】
<実験例1>
実験例1では、15℃±1℃におけるみかけの粘度が700mPa・sの追い種を用いて、追い種を注ぐ際の作業性、および、出来上がった天ぷらの外観について、追い種注ぎ具の形態の違いによる効果の違いを検証した。
【0049】
(1)バッターの調製
天ぷら粉(「天ぷら粉黄金」:昭和産業株式会社製)100質量部、水150質量部を用いて、天ぷら用バッターを調製した。
【0050】
(2)天ぷらの製造
2Lサイズのえびに、薄力粉の打ち粉を付着させた後、衣液に浸漬したもの(本体)を、170℃の油中に投入し、本体を油面から1cm沈めて、実施例1~7、比較例1、および2の追い種保持具を用いて、追い種を注ぎ、2分30秒間油ちょうし、天ぷらを得た。
【0051】
(3)評価
[作業性]
5人の素人が、3回ずつ天ぷらの製造を行い、下記の基準に基づき、追い種について評価した点数の平均点を評価点とした。
5:簡単に一定量を均一に滴下することができる
4:均一に一定量を滴下することができる
3:どうにか一定量を滴下することができる
2:一定量を滴下することが難しい
1:一定量を滴下することが非常に難しい
【0052】
[外観]
5人の素人が製造した天ぷらについて、天ぷらの専門パネル5人が下記の基準に基づいて評価した点数の平均点を評価点とした。
5:均一な花散りが全体につき、見た目が非常に良好
4:花散りが全体につき、見た目が良好
3:花散りがついており、見た目がやや良好
2:花散りのつきが不揃いで、見た目がやや悪い
1:花散りになっておらず、見た目が悪い
【0053】
(4)結果
結果を下記の表1に示す。
【0054】
【0055】
(5)考察
表1に示す通り、追い種保持具として、一般的なスプーンを用いた比較例1の場合、追い種を一定量滴下することが難しく、製造した天ぷらの外観についても、花散りのつきが不揃いであった。また、追い種保持具として、一般的な天ぷら用箸を用いた比較例2の場合、製造した天ぷらの外観は、比較例1に比べると高い評価があったものの、熟練した職人技が必要であり、素人による作業性は厳しいものであった。
【0056】
これに比べて、螺旋構造、複数の凹凸、および、複数の突起物から選択される1以上の形状を有し、追い種保持部による追い種の保持量が1.5~15gの範囲である実施例1~7の追い種保持具を用いた場合、素人による作業性も良好で、製造された天ぷらの外観も良好であった。
【0057】
実施例の中で比較すると、把持部11と反対側方向に窄まる形態を成す追い種保持部12を有する追い種保持具1を用いた実施例2~7の方が、実施例1に比べて、作業性および天ぷらの外観の評価が良好であった。また、その中でも、追い種保持量が3~10g、5秒間の追い種の量が3~6gの実施例2、3、5~7の作業性の効果がより良好であり、更に、追い種保持量が5~7gの実施例2、3、6の天ぷらの外観の効果がより良好であった。この結果から、追い種保持量は、1.5~15gの範囲であれば本発明の効果を発揮するが、好ましくは、3~10g、より好ましくは、5~7gであることが分かった。また、5秒間の追い種の量は、好ましくは、3~6gであることが分かった。
【0058】
<実験例2>
実験例2では、15℃±1℃におけるみかけの粘度が300~2100mPa・sの追い種、追い種注ぎ具として
図1-Bを用いて、追い種を注ぐ際の作業性、および、出来上がった天ぷらの外観について、追い種のみかけの粘度の違いによる効果の違いを検証した。
【0059】
(1)バッターの調製
表2の通り、小麦粉(薄力粉:昭和産業株式会社製)、コーンスターチ(昭和産業株式会社製)、加工でん粉(「SF-400」:昭和産業株式会社製)、α化でん粉(「マツノリンXA80M」:松谷化学工業株式会社製)、粉末水あめ(「J-SPD」:昭和産業株式会社製)、ベーキングパウダー、水を用いて、天ぷら用バッターを調製した。
【0060】
(2)天ぷらの製造
前記実験例1と同様の方法で、天ぷらを得た。
【0061】
(3)評価
前記実施例1と同様の評価基準に基づいて、追い種の作業性および天ぷらの外観について、評価を行った。
【0062】
(4)結果
結果を下記の表2に示す。
【0063】
【0064】
(5)考察
表2に示す通り、追い種の15±1℃におけるみかけの粘度が300~2100mPa・sである実施例8~14は、全て作業性および天ぷらの外観とも、良好な結果であった。この中で比較すると、粘度が400mPa・s未満の実施例8では、追い種保持部12から追い種が自重で落ちにくく、作業性の効果が若干低い傾向であったが許容範囲であった。また、粘度が1500mPa・sを超える実施例14は、追い種が追い種保持部12に結着して落ちにくくなるため、作業性の効果が若干低い傾向であったが許容範囲であった。
【0065】
更に、追い種の粘度と追い種保持量との関係をみると、追い種の粘度が高くなるにしたがって追い種保持量は多くなることが分かった。加えて、追い種の粘度と5秒間の追い種量との関係をみると、追い種の粘度が高くなるにしたがって5秒間の追い種量は多くなるが、追い種の粘度が1000mPa・sを超えたあたりから、追い種が追い種保持部12に結着して落ちにくくなるため、5秒間の追い種量が少なくなることが分かった。
【0066】
これらの結果から、本技術に用いる追い種の15±1℃におけるみかけの粘度は、300~2100mPa・sであればよいが、より好ましくは400~1500mPa・sであり、更に好ましくは500~1000mPa・sであることが分かった。
【符号の説明】
【0067】
1 追い種注ぎ具
11 把持部
12 追い種保持部