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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】切削装置及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240520BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20240520BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240520BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240520BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240520BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240520BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/68 U
H01L21/68 A
B24B27/06 M
B24B41/06 A
B24B41/06 L
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020069936
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021166278
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204929(JP,A)
【文献】特開2013-120794(JP,A)
【文献】特開2020-13892(JP,A)
【文献】特開2019-201145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/673
H01L 21/677
B24B 27/06
B24B 41/06
B24B 53/00
B24B 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードが装着されるスピンドルを備える切削ユニットと、
板状の被加工物がテープを介して環状のフレームに支持された被加工物ユニット又は該フレームに対応した形状のトレーを保持する保持面を備えるチャックテーブルと、
駆動源を備え、該チャックテーブルを加工送り方向に沿って移動させる加工送りユニットと、
駆動源を備え、該切削ユニットを該加工送り方向に垂直な割り出し送り方向に沿って移動させる割り出し送りユニットと、
該被加工物ユニット又は該トレーを収容する容器が載置される載置領域と、
該被加工物ユニット又は該トレーを保持する第1保持パッドを備え、該載置領域と該チャックテーブルとの間で該被加工物ユニット又は該トレーを搬送する搬送ユニットと、
該チャックテーブルの側方に設けられ、該チャックテーブルの該保持面よりも下方に位置し該切削ユニットの調整に使用されるボードを保持する保持面を備えたサブチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該トレーと該サブチャックテーブルとの間で該ボードを搬送するボード搬送ユニットと、を含み、
該ボード搬送ユニットは、
該ボードを保持する第2保持パッドと、
該切削ユニットとともに該割り出し送りユニットに支持され、該サブチャックテーブルに保持された該ボードに該第2保持パッドが接触する位置と、該チャックテーブルの該保持面及び該サブチャックテーブルの該保持面よりも上方の位置と、の間で該加工送り方向と該割り出し送り方向とに垂直な方向に沿って該第2保持パッドを移動させるエア駆動型のアクチュエーターと、を備える切削装置。
【請求項2】
該載置領域の下方の領域に配置され該トレーを収容できるトレー収容領域と、を更に含み、
該搬送ユニットは、該トレー収容領域と該チャックテーブルとの間で該トレーを搬送することを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の切削装置を含む複数の装置
該装置の上方に設置される搬送路と、
走行用の車輪が装着される車両フレームと、該車輪を駆動する駆動源と、該被加工物ユニット又は該トレーを収容する容器と、該車両フレームに設けられ、該容器を吊り下げて昇降させる昇降ユニットと、該駆動源と該昇降ユニットとを制御する制御部と、制御信号を受信する受信機と、を備え、該搬送路を走行する搬送車と、
該被加工物ユニット又は該トレーを収容するカセットが載置される第1載置領域と、該搬送車から降下した該容器が載置される第2載置領域と、制御信号を受信する受信機と、を備え、該第1載置領域に載置された該カセットと該第2載置領域に載置された該容器との間で該被加工物ユニット又は該トレーを搬送するローダー・アンローダーと、
該装置、該搬送車、及び該ローダー・アンローダーに制御信号を送信する送信機と、該送信機から送信される制御信号を生成する信号生成部と、を備える制御ユニットと、を含み、
該制御ユニットからの信号に基づき、該搬送車が該ローダー・アンローダーから受け渡された該被加工物ユニット又は該トレーを該装置に搬送する搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を加工する際に用いられる切削装置、この切削装置で用いられるトレー、及びこの切削装置に対して被加工物を搬送する際に用いられる搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに代表される板状の被加工物を複数のチップへと分割する際には、例えば、環状の切削ブレードを装着した切削装置が使用される。高速に回転させた切削ブレードを被加工物に切り込ませながら、切削ブレードと被加工物とを相対的に移動させることで、この移動の経路に沿って被加工物を切削できる。
【0003】
ところで、回転軸となるスピンドルに対して切削ブレードを装着した直後には、このスピンドルに対して切削ブレードが偏心していたり、切削ブレードの切れ味が十分ではなかったりする可能性が高い。そこで、被加工物を切削する前には、この切削ブレードを回転させて調整用のボード(ドレッシングボード)に切り込ませるドレッシングと呼ばれる作業を行い、切削ブレードの状態を整えている。
【0004】
近年では、被加工物を保持するチャックテーブルとは別に、上述のようなボードを保持するサブチャックテーブルを備えた切削装置が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。この切削装置によれば、チャックテーブルによって被加工物が保持された状態であっても、切削ブレードのドレッシングを遂行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-16175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の切削装置では、ドレッシングを行うタイミングの自由度は向上するものの、サブチャックテーブルに対するボードの着脱が依然としてオペレーターの手作業で行われる。そのため、サブチャックテーブルに対するボードの着脱の際に、時間をロスする可能性が高かった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サブチャックテーブルに対するボードの着脱を効率良く行える切削装置、この切削装置で用いられるトレー、及びこの切削装置に対して被加工物を搬送する際に用いられる搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、切削ブレードが装着されるスピンドルを備える切削ユニットと、板状の被加工物がテープを介して環状のフレームに支持された被加工物ユニット又は該フレームに対応した形状のトレーを保持する保持面を備えるチャックテーブルと、駆動源を備え、該チャックテーブルを加工送り方向に沿って移動させる加工送りユニットと、駆動源を備え、該切削ユニットを該加工送り方向に垂直な割り出し送り方向に沿って移動させる割り出し送りユニットと、該被加工物ユニット又は該トレーを収容する容器が載置される載置領域と、該被加工物ユニット又は該トレーを保持する第1保持パッドを備え、該載置領域と該チャックテーブルとの間で該被加工物ユニット又は該トレーを搬送する搬送ユニットと、該チャックテーブルの側方に設けられ、該チャックテーブルの該保持面よりも下方に位置し該切削ユニットの調整に使用されるボードを保持する保持面を備えたサブチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該トレーと該サブチャックテーブルとの間で該ボードを搬送するボード搬送ユニットと、を含み、該ボード搬送ユニットは、該ボードを保持する第2保持パッドと、該切削ユニットとともに該割り出し送りユニットに支持され、該サブチャックテーブルに保持された該ボードに該第2保持パッドが接触する位置と、該チャックテーブルの該保持面及び該サブチャックテーブルの該保持面よりも上方の位置と、の間で該加工送り方向と該割り出し送り方向とに垂直な方向に沿って該第2保持パッドを移動させるエア駆動型のアクチュエーターと、を備える切削装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該載置領域の下方の領域に配置され該トレーを収容できるトレー収容領域と、を更に含み、該搬送ユニットは、該トレー収容領域と該チャックテーブルとの間で該トレーを搬送する。
【0010】
本発明の別の一態様によれば、上述した切削装置を含む複数の装置、該装置の上方に設置される搬送路と、走行用の車輪が装着される車両フレームと、該車輪を駆動する駆動源と、該被加工物ユニット又は該トレーを収容する容器と、該車両フレームに設けられ、該容器を吊り下げて昇降させる昇降ユニットと、該駆動源と該昇降ユニットとを制御する制御部と、制御信号を受信する受信機と、を備え、該搬送路を走行する搬送車と、該被加工物ユニット又は該トレーを収容するカセットが載置される第1載置領域と、該搬送車から降下した該容器が載置される第2載置領域と、制御信号を受信する受信機と、を備え、該第1載置領域に載置された該カセットと該第2載置領域に載置された該容器との間で該被加工物ユニット又は該トレーを搬送するローダー・アンローダーと、該装置、該搬送車、及び該ローダー・アンローダーに制御信号を送信する送信機と、該送信機から送信される制御信号を生成する信号生成部と、を備える制御ユニットと、を含み、該制御ユニットからの信号に基づき、該搬送車が該ローダー・アンローダーから受け渡された該被加工物ユニット又は該トレーを該装置に搬送する搬送システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる切削装置、トレー、及び搬送システムを用いることにより、サブチャックテーブルに対するドレッシングボードの着脱を効率良く行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、加工装置(切削装置)の内部の構造を示す斜視図である。
図2図2は、チャックテーブル及びその周辺の構造を模式的に示す平面図である。
図3図3は、加工装置(切削装置)の外観等を示す斜視図である。
図4図4は、被加工物が加工される様子を示す側面図である。
図5図5(A)、図5(B)及び図5(C)は、サブチャックテーブルのボードが交換される様子を示す側面図である。
図6図6(A)及び図6(B)は、サブチャックテーブルのボードが交換される様子を示す側面図である。
図7図7は、搬送システムの構成例を示す平面図である。
図8図8は、搬送システムの接続関係の例を示す機能ブロック図である。
図9図9は、ローダー・アンローダーの構成例を模式的に示す側面図である。
図10図10(A)は、外扉が閉じ、内扉が開いた状態を示す一部断面側面図であり、図10(B)は、外扉が開き、内扉が閉じた状態を示す一部断面側面図である。
図11図11(A)は、カセット載置台等を示す一部断面側面図であり、図11(B)は、カセット載置台を示す底面図である。
図12図12(A)は、カセット載置台を内部収容領域から外側に引き出す様子を示す一部断面側面図であり、図12(B)は、ローラーが支持台から脱落した様子を示す一部断面側面図であり、図12(C)は、カセット載置台を内部収容領域に戻す様子を示す一部断面側面図である。
図13図13(A)は、2本の上段ガイドレールに被加工物ユニットを仮置きする様子を示す一部断面側面図であり、図13(B)は、2本の下段ガイドレールに被加工物ユニットを仮置きする様子を示す一部断面側面図である。
図14図14(A)は、2本の上段ガイドレール等を示す平面図であり、図14(B)は、2本の上段ガイドレールの間隔を狭めた様子を示す平面図である。
図15図15(A)は、搬送車の上面側を示す斜視図であり、図15(B)は、搬送車10の底面側を示す斜視図である。
図16図16は、搬送車の前端部を示す拡大斜視図である。
図17図17(A)は、容器を示す斜視図であり、図17(B)は、容器を示す正面図である。
図18図18は、容器が載置領域に載置された状態の搬送車を示す斜視図である。
図19図19は、容器が弾性部材(伸縮部材)を介して吊り下げ部材に接続された搬送車を示す斜視図である。
図20図20(A)は、昇降ユニットの構成例を示す平面図であり、図20(B)は、昇降ユニットの構成例を示す側面図である。
図21図21(A)は、昇降ユニットの他の構成例を示す平面図であり、図21(B)は、昇降ユニットの他の構成例を示す側面図である。
図22図22(A)はリールを示す平面図であり、図22(B)はリールを示す側面図である。
図23図23は、カバーを示す拡大斜視図である。
図24図24(A)は、格納領域に容器が格納されていない状態のカバーを示す側面図であり、図24(B)は、格納領域に容器が格納された状態のカバーを示す側面図である。
図25図25(A)は、格納領域に格納された容器が載置領域に載置される際の搬送車を示す側面図であり、図25(B)は、容器が下降する際のモーターの電流値を示すグラフである。
図26図26(A)は、載置領域に載置された容器が格納領域に格納される際の搬送車を示す側面図であり、図26(B)は、容器が上昇する際のモーターの電流値を示すグラフである。
図27図27は、加工装置(切削装置)に設置された搬送路の一部を示す斜視図である。
図28図28(A)及び図28(B)は、下段フレームを構成する下段フレームユニットを示す斜視図である。
図29図29は、下段フレームを構成する下段フレームユニットの配置を示す平面図である。
図30図30(A)及び図30(B)は、上段フレームを構成する上段フレームユニットを示す斜視図である。
図31図31は、上段フレームを構成する上段フレームユニットの配置を示す平面図である。
図32図32は、複数の路面パネルを並べて構成される搬送路を示す平面図である。
図33図33は、搬送車の制御部を示す機能ブロック図である。
図34図34は、搬送システムの制御方法の例を説明するための図である。
図35図35は、実施形態2にかかる加工装置(切削装置)の内部の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、板状の被加工物11の加工(切削)に用いられる加工装置(切削装置)4の内部の構造を示す斜視図である。なお、以下の説明で用いられるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに概ね垂直である。図1に示すように、加工装置4は、各構成要素を支持する基台202を備えている。
【0014】
基台202の角部には、凹部202aが形成されており、この凹部202aには、昇降機構(不図示)によって昇降する昇降台204が配置されている。昇降台204の上面の載置領域Aには、例えば、被加工物11やボード31等を収容できる後述の搬送車10の容器(カセット)102が載せられる。なお、昇降台204の上面には、容器102の水平方向の位置を規定する複数の位置規定部材(不図示)が設けられており、加工装置4の上方で停車した搬送車10から降下する容器102は、複数の位置規定部材によって決まる載置領域Aに載せられる。
【0015】
各位置規定部材は、例えば、搬送車10から降下する容器102を載置領域Aに向かってガイドする曲面状のガイド面を備え、昇降台204に載置される容器102の側面に対応する位置に固定されている。容器102を昇降台204に向けて下降させる際には、各位置規定部材のガイド面によって容器102がガイドされる。そのため、仮に、容器102が水平方向に揺動したとしても、容器102を載置領域Aに載せることができる。
【0016】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。この被加工物11の表面側は、互いに交差する複数の加工予定ライン(ストリート)によって複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイスが形成されている。
【0017】
被加工物11の裏面側には、被加工物11よりも径の大きいテープ(ダイシングテープ)13が貼付されている。テープ13の外周部分は、被加工物11を囲む環状のフレーム15に固定されている。このように、本実施形態にかかる加工装置4には、テープ13を介してフレーム15に支持された被加工物ユニット17の状態で被加工物11が搬入される。
【0018】
なお、本実施形態の被加工物11は、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであるが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等を被加工物11として用いることもできる。同様に、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物11には、デバイスが形成されていなくても良い。
【0019】
上述したフレーム15の大きさは、被加工物11の大きさ(被加工物11の径等)に応じて設定される。例えば、約300mmの径の被加工物11を支持するフレーム15の外径は、約200mmの径の被加工物11を支持するフレーム15の外径に比べて大きくなる。つまり、大きな被加工物11が使用される場合には、被加工物ユニット17の外径も大きくなる。
【0020】
ボード31は、例えば、ホワイトアランダム(WA)やグリーンカーボランダム(GC)等の砥粒を、樹脂やセラミックス等の結合剤で固定してなる平板状のドレッシングボードである。このようなボード31に対して、回転させた切削ブレード232bを切り込ませることで、切削ブレード232bの状態を整えることができる。ただし、このボード31は、切削ブレード232bを含む加工ユニット232を調整する際に使用されるものであれば良い。
【0021】
よって、ボード31の材質、形状、構造等は、その用途に応じて適切に選択される。例えば、切削ブレード232bを上方からボード31に切り込ませて溝を形成し、この溝に基づいて切削ブレード232bの高さを調整(測定)するような用途には、被加工物11と同じ材質で形成された基板等をボード31として用いることがある。
【0022】
本実施形態にかかる加工装置4には、上述のフレーム15に対応した形状のトレー33に支持された状態でボード31が搬入される。トレー33は、フレーム15と同じ形状の外縁を有する板状の本体部35を備えている。本体部35の表面(一方の面)には、例えば、平面視でL字状に形成された複数の位置規定部材37が設けられている。この位置規定部材37によって、ボード31が配置される第1ボード配置領域39aと第2ボード配置領域39bとが規定される。第1ボード配置領域39aと第2ボード配置領域39bとの詳細については後述する。
【0023】
昇降台204の載置領域Aより下方の領域には、例えば、加工後の被加工物ユニット17を一時的に収容できる被加工物収容領域が形成されている。加工装置4で加工された後の被加工物ユニット17は、搬送車10の容器102に対する搬送の準備が整うまでの間、この被加工物収容領域に収容される。
【0024】
なお、昇降台204の載置領域Aより下方の領域には、被加工物収容領域の他にも、紫外線を照射する照射ユニット、被加工物11のノッチの位置を検出する検出ユニット、被加工物11等に付される識別コードを読み取る読み取りユニット等が配置されることがある。また、昇降台204の載置領域Aより下方の領域には、ボードを支持した状態のトレーを収容できるトレー収容領域が配置されても良い。なお、この場合には、上述した被加工物収容領域をトレー収容領域として用いても良いし、被加工物収容領域とは別のトレー収容領域を設けても良い。
【0025】
凹部202aの側方には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い凹部202bが形成されている。凹部202b内には、ボールねじ式のX軸移動機構(加工送りユニット)206が配置されている。このX軸移動機構206は、ボールねじに連結されるモーター(パルスモーター)等の駆動源を含んでおり、X軸移動テーブル(不図示)をX軸方向に沿って移動させる。X軸移動テーブルの上方には、テーブルカバー206aが配置されている。また、テーブルカバー206aの前後には、蛇腹状の防塵防滴カバー206bが取り付けられている。
【0026】
X軸移動テーブルの上部には、被加工物ユニット17やトレー33を保持するチャックテーブル208がテーブルカバー206aから露出する態様で配置されている。図2は、チャックテーブル208及びその周辺の構造を模式的に示す平面図である。チャックテーブル208は、モーター等の駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向、切り込み送り方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル208は、上述したX軸移動機構206によりX軸方向に沿って移動する(加工送り)。
【0027】
チャックテーブル208の上面は、上述した被加工物ユニット17やトレー33を保持するための保持面208aになっている。保持面208aは、チャックテーブル208の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル208の周囲には、被加工物ユニット17のフレーム15を四方から固定するための4個のクランプ208bが設けられている。
【0028】
チャックテーブル208の斜め後方(側方)には、トレー33から搬出されたボード31を保持するサブチャックテーブル210がテーブルカバー206aから露出する態様で配置されている。このサブチャックテーブル210も、上述したX軸移動機構206によりX軸方向に沿って移動する。
【0029】
サブチャックテーブル210の上面は、ボード31を保持するための保持面210aになっている。保持面210aには、溝210bが形成されており、この溝210bは、サブチャックテーブル210の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0030】
図1に示すように、凹部202bの前側上方には、Y軸方向(左右方向、割り出し送り方向)に概ね平行な状態を維持しながら接近、離隔される一対のガイドレール212が設けられている。一対のガイドレール212は、それぞれ、フレーム15を下方から支持する支持面と、支持面に概ね垂直な側面とを備え、載置領域Aの容器102から引き出された被加工物ユニット17(フレーム15)やトレー33をX軸方向において挟み込んで所定の位置に合わせる。
【0031】
基台202の上方には、門型の第1支持構造214が凹部202bを跨ぐように配置されている。第1支持構造214の前面(ガイドレール212側の面)には、Y軸方向に沿う第1レール216が固定されており、この第1レール216には、第1移動機構218等を介して第1保持ユニット(搬送ユニット)220が連結されている。
【0032】
第1保持ユニット220は、被加工物ユニット17(フレーム15)やトレー33を上方から保持する保持パッド(第1保持パッド)220aを下部に備えており、第1移動機構218によって昇降するとともに、第1レール216に沿ってY軸方向に移動する。また、第1保持ユニット220は、フレーム15やトレー33を側方から把持するための把持機構220bを昇降台204側に備えている。この第1保持ユニット220の保持パッド220aとしては、例えば、真空ポンプ等の吸引源に接続される真空吸着タイプの保持パッドや、高い流速のエアによって生じる負圧を利用するベルヌーイタイプの保持パッド等が使用される。
【0033】
把持機構220bでフレーム15やトレー33を把持して第1保持ユニット220をY軸方向に移動させれば、載置領域Aの容器102から被加工物ユニット17やトレー33を一対のガイドレール212に引き出し、又は、一対のガイドレール212上の被加工物ユニット17やトレー33を載置領域Aの容器102に挿入できる。
【0034】
同様に、把持機構220bでフレーム15を把持して第1保持ユニット220をY軸方向に移動させることで、載置領域Aの下方に配置された被加工物収容領域から被加工物ユニット17を一対のガイドレール212に引き出し、又は、一対のガイドレール212上の被加工物ユニット17を被加工物収容領域に挿入できる。
【0035】
載置領域Aの下方にトレー収容領域が配置されている場合にも、同様に、把持機構220bでトレー33を把持して第1保持ユニット220をY軸方向に移動させることで、載置領域Aの下方に配置されたトレー収容領域からトレー33を一対のガイドレール212に引き出し、又は、一対のガイドレール212上のトレー33をトレー収容領域に挿入できる。
【0036】
なお、一対のガイドレール212で被加工物ユニット17やトレー33の位置を合わせた後には、被加工物ユニット17やトレー33を保持パッド220aで保持してチャックテーブル208へと搬入する。このように、第1保持ユニット220は、載置領域A、チャックテーブル208、及び被加工物収容領域の三者(トレー収容領域が存在する場合には、トレー収容領域を加えた四者)の間で被加工物ユニット17やトレー33を搬送できるように構成されている。
【0037】
また、第1支持構造214の前面には、Y軸方向に沿う第2レール222が第1レール216の上方に固定されている。この第2レール222には、第2移動機構224等を介して第2保持ユニット226が連結されている。第2保持ユニット226は、被加工物ユニット17(フレーム15)やトレー33を上方から保持する保持パッド226aを下部に備えており、第2移動機構224によって昇降するとともに、第2レール222に沿ってY軸方向に移動する。保持パッド226aとしては、真空吸着タイプの保持パッドや、ベルヌーイタイプの保持パッド等が使用される。
【0038】
第1支持構造214の後方には、門型の第2支持構造228が配置されている。第2支持構造228の前面(第1支持構造214側の面)には、それぞれ、ボールねじ式のY軸Z軸移動機構(割り出し送りユニット、切り込み送りユニット)230を介して2組の加工ユニット(切削ユニット)232が設けられている。
【0039】
各Y軸Z軸移動機構230は、Y軸駆動用のボールねじに連結されるモーター(パルスモーター)等の駆動源を含んでおり、各加工ユニット232をY軸方向に沿って移動させる(割り出し送り)。また、各Y軸Z軸移動機構230は、Z軸駆動用のボールねじに連結されるモーター(パルスモーター)等の駆動源を含んでおり、各加工ユニット232をZ軸方向に沿って移動させる(切り込み送り)。
【0040】
図2に示すように、各加工ユニット232は、Y軸方向に概ね平行な回転軸となるスピンドル232aを備えている。各スピンドル232aの一端側には、円環状の切削ブレード232bが装着されている。各スピンドル232aの他端側には、モーター等の駆動源(不図示)が連結されている。
【0041】
また、切削ブレード232bの傍には、被加工物11や切削ブレード232bに純水等の切削液を供給するためのノズルが配置されている。ノズルから切削液を供給しながら、回転させた切削ブレード232bをチャックテーブル208に保持された被加工物11に切り込ませることで、被加工物11を加工(切削)できる。
【0042】
加工ユニット232の前方には、チャックテーブル208に保持された被加工物11等を撮像できる撮像ユニット(カメラ)234が設けられている。また、加工ユニット232の前方には、チャックテーブル208に保持されたトレー33とサブチャックテーブル210との間でボード31を搬送できるボード搬送ユニット236が設けられている。
【0043】
ボード搬送ユニット236は、例えば、エアシリンダと、このエアシリンダに挿入されZ軸方向にスライドできるピストンロッドと、を含むエア駆動型のアクチュエーター236a(図5(B)等参照)を備えている。アクチュエーター236aの下端部には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続される保持パッド(第2保持パッド)236bが固定されている。
【0044】
よって、このアクチュエーター236aを動作させることで、保持パッド236bをZ軸方向に移動させることができる。また、保持パッド236bをアクチュエーター236aでZ軸方向に移動させてボード31に接触させた後に、吸引源の負圧を作用させれば、この保持パッド236bでボード31を保持できる。
【0045】
撮像ユニット234とボード搬送ユニット236とは、加工ユニット232とともに各Y軸Z軸移動機構230に支持されている。すなわち、撮像ユニット234とボード搬送ユニット236とは、加工ユニット232とともにY軸方向に移動し、また、加工ユニット232とともにZ軸方向に移動する。
【0046】
凹部202bに対して昇降台204と反対側の位置には、洗浄ユニット238が配置されている。洗浄ユニット238は、筒状の洗浄空間内で被加工物ユニット17を保持するスピンナテーブル240を備えている。スピンナテーブル240の下部には、スピンナテーブル240を所定の速さで回転させる駆動源(不図示)が連結されている。
【0047】
スピンナテーブル240の上方には、スピンナテーブル240により保持された被加工物ユニット17に向けて洗浄用の流体(代表的には、水とエアーとを混合した混合流体)を噴射する噴射ノズル242が配置されている。被加工物ユニット17を保持したスピンナテーブル240を回転させて、噴射ノズル242から洗浄用の流体を噴射することで、被加工物11を洗浄できる。
【0048】
加工ユニット232で被加工物11を加工した後には、例えば、第2保持ユニット226でフレーム15を保持して被加工物ユニット17を洗浄ユニット238へと搬入する。洗浄ユニット238で被加工物11を洗浄した後には、例えば、第1保持ユニット220でフレーム15を保持して被加工物ユニット17を一対のガイドレール212に載せ、その後、フレーム15を把持機構220bで把持して被加工物ユニット17を載置領域Aの容器102に収容する。
【0049】
図3は、加工装置4の外観等を示す斜視図である。なお、図3では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。図3に示すように、基台202の上面側は、カバー244によって覆われており、上述した各構成要素は、カバー244の内側に収容される。凹部202aの直上の領域には、カバー244の天井244aを上下に貫通する開口(不図示)が設けられている。
【0050】
搬送車10の容器102は、この開口を通じてカバー244の外部から内部へと移動し、この開口を通じてカバー244の内部から外部へと移動する。開口の形状や大きさに制限はないが、この開口は、少なくとも容器102を通過できるように構成される必要がある。
【0051】
上述した加工装置4の各構成要素は、制御装置246に接続されている。制御装置246は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御装置246の機能が実現される。
【0052】
制御装置246には、外部からの信号(情報)を受信して制御装置246に送る受信機248と、制御装置246から受け取った信号(情報)を外部に送信する送信機250と、が更に接続されている。受信機248は、例えば、後述する搬送システム2の制御ユニット12から送信される信号(制御信号)を受信して、制御装置246に送る。
【0053】
制御装置246は、例えば、受信機248から受け取った信号等に基づき、加工装置4の各構成要素の動作を制御する。また、制御装置246は、例えば、通知用の信号を生成して送信機250に送る。送信機250は、例えば、制御装置246から受け取った信号を搬送システム2の制御ユニット12に送信する。
【0054】
基台202の側壁には、各種の配管21が接続される配管接続部202cが設けられている。また、カバー244の側壁には、メンテナンス等の際に開閉される扉244bが設けられている。なお、カバー244の側壁には、制御装置246に対する指示等が入力される操作パネル(不図示)や、加工装置4に関する各種の情報が表示されるディスプレイ(不図示)等が設けられていても良い。
【0055】
図4は、加工装置4で被加工物11が加工される様子を示す側面図である。なお、図4では、一部の構成要素をその断面で表している。被加工物11を加工する際には、まず、被加工物11の表面が上方を向くように、第1保持ユニット220等で保持面208aに被加工物ユニット17を載せて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、被加工物ユニット17のフレーム15をクランプ208bで固定する。これにより、被加工物ユニット17はチャックテーブル208によって保持される。
【0056】
次に、被加工物11の任意の加工予定ラインとX軸方向とが概ね平行になるように、チャックテーブル208の向きを調整した上で、この加工予定ラインの延長線の上方に切削ブレード232bを位置付ける。その後、切削ブレード232bの下端が被加工物11の表面(上面)よりも低くなるように、加工ユニット232を下降させる。
【0057】
この状態で、切削ブレード232bを回転させて、図4に示すように、切削液を供給しながらチャックテーブル208をX軸方向に移動させることで、切削ブレード232bを切り込ませて被加工物11を加工(切削)できる。なお、切削ブレード232bの下端の高さ等の条件は、加工の目的等に応じて任意に調整される。
【0058】
図5(A)、図5(B)、図5(C)、図6(A)及び図6(B)は、サブチャックテーブル210のボード31が交換される様子を示す側面図である。なお、各図では、一部の構成要素をその断面で表している。サブチャックテーブル210のボード31を交換する際には、まず、図5(A)に示すように、ボード31が支持された状態のトレー33を第1保持ユニット220等で保持面208aに載せ、吸引源の負圧を作用させる。これにより、トレー33はチャックテーブル208によって保持される。
【0059】
図5(A)等に示すように、第1ボード配置領域39aには、サブチャックテーブル210に搬入される前のボード31が配置されている。一方、図5(A)の状態では、第2ボード配置領域39bにボード31が配置されていない。この第2ボード配置領域39bには、サブチャックテーブル210から搬出された後のボード31が配置されることになる。
【0060】
トレー33をチャックテーブル208で保持した後には、サブチャックテーブル210に保持されているボード31を搬出して、トレー33の第2ボード配置領域39bに載せる。具体的には、まず、サブチャックテーブル210とボード搬送ユニット236とを相対的に移動させて、図5(B)に示すように、サブチャックテーブル210の上方にボード搬送ユニット236を位置付ける。
【0061】
次に、ボード搬送ユニット236のアクチュエーター236a等で保持パッド236bを下降させて、サブチャックテーブル210上のボード31に保持パッド236bを接触させる。そして、吸引源の負圧を保持パッド236bに作用させる。これにより、ボード31は、保持パッド236bによって保持される。
【0062】
その後、サブチャックテーブル210の保持面210aに作用する負圧を遮断し、図5(B)に示すように、アクチュエーター236a等で保持パッド236bを上昇させる。また、チャックテーブル208とボード搬送ユニット236とを相対的に移動させて、図5(C)に示すように、チャックテーブル208に保持されたトレー33の第2ボード配置領域39bの上方にボード搬送ユニット236を位置付ける。
【0063】
そして、アクチュエーター236a等で保持パッド236bを下降させて、トレー33の第2ボード配置領域39bにボード31を配置する。この状態で、保持パッド236bに作用する吸引源の負圧を遮断すれば、サブチャックテーブル210から搬出されたボード31を第2ボード配置領域39bに載せることができる。なお、ボード31を第2ボード配置領域39bに載せた後には、アクチュエーター236a等で保持パッド236bを上昇させる。
【0064】
サブチャックテーブル210からボード31を搬出して、トレー33の第2ボード配置領域39bに載せた後には、トレー33の第1ボード配置領域39aに配置されている別のボード31をサブチャックテーブル210に搬入する。具体的には、まず、図6(A)に示すように、チャックテーブル208とボード搬送ユニット236とを相対的に移動させて、チャックテーブル208に保持されたトレー33の第1ボード配置領域39aの上方にボード搬送ユニット236を位置付ける。
【0065】
そして、アクチュエーター236a等で保持パッド236bを下降させて、トレー33の第1ボード配置領域39aに配置されているボード31に保持パッド236bを接触させる。そして、吸引源の負圧を保持パッド236bに作用させる。これにより、ボード31は、保持パッド236bによって保持される。
【0066】
その後、図6(A)に示すように、アクチュエーター236a等で保持パッド236bを上昇させる。また、サブチャックテーブル210とボード搬送ユニット236とを相対的に移動させて、図6(B)に示すように、サブチャックテーブル210の上方にボード搬送ユニット236を位置付ける。
【0067】
そして、アクチュエーター236a等で保持パッド236bを下降させて、サブチャックテーブル210の保持面210aにボード31を配置する。この状態で、保持面210aに吸引源の負圧を作用させれば、ボード31をサブチャックテーブル210によって保持できる。なお、サブチャックテーブル210でボード31を保持した後には、保持パッド236bに作用する吸引源の負圧を遮断してアクチュエーター236a等で保持パッド236bを上昇させる。
【0068】
以上のように、本実施形態にかかる加工装置(切削装置)4は、チャックテーブル208に保持されたトレー33とサブチャックテーブル210との間でボード31を搬送するボード搬送ユニット336を含んでいる。そして、このボード搬送ユニット336は、ボード31を保持する保持パッド236bと、加工ユニット(切削ユニット)232とともにY軸Z軸移動機構(割り出し送りユニット)230に支持され、加工送り方向(X軸方向)と割り出し送り方向(Y軸方向)とに垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)に沿って保持パッド236bを移動させるアクチュエーター236aと、を備える。
【0069】
よって、この加工装置4を用いる場合には、サブチャックテーブル210に対するボード31の着脱をオペレーターの手作業で行う必要がなくなる。その結果、サブチャックテーブル210に対するボード31の着脱を効率良く行えるようになる。
【0070】
次に、上述した加工装置(切削装置)4を含む複数の装置のそれぞれに対して被加工物11(被加工物ユニット17)やボード31(トレー33)を搬送できるように構成された搬送システムについて説明する、なお、以下では、被加工物11やボード31の搬送先となる複数の装置がいずれも加工装置(切削装置)4である場合について説明するが、搬送システムは、任意の種類の装置に対して被加工物11等を搬送できるように構成されていれば良い。すなわち、被加工物11等の搬送先は、加工装置(切削装置)4以外の装置でも良い。
【0071】
例えば、搬送システムは、一連の加工に使用される複数の種類の装置に対して順に被加工物11を搬送できるように構成されることがある。また、搬送システムは、被加工物11の加工に付随する任意の処理で使用される様々な装置に被加工物11を搬送できるように構成されることもある。つまり、被加工物11等の搬送先には、被加工物11の加工を目的としないテープ貼付装置、紫外線照射装置、洗浄装置等が含まれ得る。
【0072】
図7は、本実施形態にかかる搬送システム2の構成例を示す平面図であり、図8は、搬送システム2の接続関係の例を示す機能ブロック図である。図7に示すように、本実施形態にかかる搬送システム2は、加工装置(切削装置)4によって加工される被加工物11等を搬送するための搬送路6を含んでいる。
【0073】
なお、上述した加工装置4は、被加工物11等の搬送先として搬送システム2に接続されているが、必ずしも搬送システム2の構成要素ではない。また、図7では、説明の便宜上、1台の加工装置(切削装置)4aのみを示し、図8では、2台の加工装置(切削装置)4a,4bを示しているが、本実施形態では、被加工物11等の搬送先として、2台以上の加工装置4が必要になる。すなわち、搬送システム2に接続される加工装置4の数は、2以上である。
【0074】
搬送路6は、複数の加工装置4を連結するように、各加工装置4の上部に設置されている。この搬送路6を通じて、各加工装置4に被加工物11やボード31が搬送される。なお、搬送路6は、加工装置4の上方に設置されているので、各加工装置4の側面に接続される配管21等に対して搬送路6が干渉することはない。
【0075】
搬送路6の下方には、加工装置4の他に、加工前の被加工物11や加工後の被加工物11、使用前のボード31や使用後のボード31等が収容されるローダー・アンローダー(搬送装置)8が設けられている。ローダー・アンローダー8に収容されている加工前の被加工物11や使用前のボード31は、任意のタイミングで搬送車10へと搬入される。
【0076】
搬送車10は、搬送路6上を走行し、ローダー・アンローダー8から受け取った加工前の被加工物11や使用前のボード31を各加工装置4へと搬送する。また、搬送車10は、加工装置4から加工後の被加工物11や使用後のボード31を受け取ると、搬送路6上を走行し、加工後の被加工物11をローダー・アンローダー8へと搬送する。
【0077】
ただし、複数の種類の装置(加工装置4等)が搬送システム2に接続されている場合には、搬送車10は、ある加工装置4から加工後の被加工物11を受け取ると、搬送路6上を走行し、加工後の被加工物11を次の工程で使用される装置へと搬送することがある。なお、図7及び図8では、2台の搬送車10a,10bを示しているが、搬送車10の数に制限はない。
【0078】
図8に示すように、加工装置4、ローダー・アンローダー8、搬送車10には、これらの動作を制御する制御ユニット12が無線で接続されている。ただし、制御ユニット12は、加工装置4、ローダー・アンローダー8、搬送車10等の動作を制御できるように構成されていれば良く、これらに対して有線で接続されることもある。
【0079】
図9は、ローダー・アンローダー8の構成例を模式的に示す側面図である。なお、図9では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。図9に示すように、ローダー・アンローダー8は、各種の構成要素を収容する筐体22を含む。なお、図9では、説明の便宜上、筐体22を輪郭だけで示している。
【0080】
筐体22内の高さ方向(Z軸方向)に沿って異なる2つの高さの位置には、それぞれ、カセット収容機構24が設けられている。すなわち、本実施形態のローダー・アンローダー8は、第1カセット収容機構24aと、第1カセット収容機構24aの上方に配置された第2カセット収容機構24bと、を含む。ただし、ローダー・アンローダー8が備えるカセット収容機構24の数に制限はない。ローダー・アンローダー8は、1以上のカセット収容機構24を備えていれば良い。
【0081】
各カセット収容機構24は、平板状の支持台26を有する。支持台26の上面側には、ガイド機構(不図示)が設けられており、このガイド機構には、筐体22の奥行方向(Y軸方向)に沿ってスライドできるように平板状のカセット載置台28が装着されている。
【0082】
カセット載置台28の上面には、複数(例えば、10以上)の被加工物11等を収容できるカセット30が載置される。カセット30は、複数の被加工物ユニット17やトレー33をまとめて搬送する際に用いられる。このようなカセット30を用いることで、オペレーターは、複数の被加工物ユニット17やトレー33をまとめてローダー・アンローダー8へと搬入できる。
【0083】
筐体22の各カセット収容機構24に対応する位置には、カセット30が載置されたカセット載置台28を通過させることのできる搬入出口32が形成されている。カセット30の搬入出時には、カセット30が載置されたカセット載置台28をスライドさせることによって、この搬入出口32をカセット30が通過する。
【0084】
筐体22の各搬入出口32に対応する位置には、各搬入出口32を閉じることのできる外扉(第2扉)34が配置されている。外扉34の下部は、例えば、水平な回転軸を持つヒンジ等の回転連結部材36を介して支持台26の外側の端部に連結されており、外扉34は、回転連結部材36の回転軸を中心に回転することによって開閉される。
【0085】
外扉34が開かれた状態では、搬入出口32よりも外側に位置する外部搬入出領域(外部領域)38a(図12(A)等参照)にカセット載置台28を引き出すことができる。なお、筐体22の各搬入出口32に対応する位置には、閉じられた状態の外扉34を開かないように固定するエア駆動型のロック機構(不図示)が設けられている。
【0086】
例えば、オペレーターは、運んできたカセット30を、外部搬入出領域38aに引き出されたカセット載置台28の上に載置する。その後、オペレーターがカセット載置台28を筐体22の内部へ押し込むと、カセット載置台28及びカセット30は、搬入出口32よりも内側に位置する内部収容領域(内部領域)38b(図12(A)等参照)に移動する。
【0087】
なお、本明細書では、この内部収容領域38bを、カセット30が載置される第1載置領域と呼ぶことがある。カセット30をカセット収容機構24から搬出する際には、外扉34を開いた後に、カセット載置台28を内部収容領域38bから外部搬入出領域38aに引き出せば良い。
【0088】
各カセット収容機構24の内部収容領域38bに対して搬入出口32と反対側の位置には、高さ方向に沿って移動できる態様の内扉(第1扉)40が設けられている。第1カセット収容機構24aの内扉40は、第1カセット収容機構24aの内部収容領域38bに隣接する上方の閉位置と下方の開位置との間で移動し、第2カセット収容機構24b側の内扉40は、第2カセット収容機構24bの内部収容領域38bに隣接する上方の開位置と下方の閉位置との間で移動する。よって、2つの内扉40が互いに干渉することはない。
【0089】
図10(A)は、外扉34が閉じ、内扉40が開いた状態の第1カセット収容機構24aを示す一部断面側面図である。なお、図10(A)では、ローダー・アンローダー8の一部の構成要素を機能ブロックで示している。第2カセット収容機構24bの構造及び動作は、内扉40の移動の動作を除いて、第1カセット収容機構24aの構造及び動作と同様である。
【0090】
図10(A)に示すように、内扉40には、昇降機構42が連結されている。昇降機構42は、例えば、空気圧を利用して対象を移動させるエアアクチュエーター(エアシリンダー)であり、シリンダーチューブ42aと、シリンダーチューブ42aに対して移動できるピストンロッド42bと、を有する。
【0091】
シリンダーチューブ42aに収容されるピストンロッド42bの基端部には、ピストン(不図示)が連結されている。また、シリンダーチューブ42aから露出するピストンロッド42bの先端部には、内扉40の内部収容領域38bとは反対側の面に固定された連結部材42cが連結されている。
【0092】
シリンダーチューブ42aへの吸排気を制御してピストン及びピストンロッド42bを上方から下方に移動させれば、第1カセット収容機構24aの内扉40は閉位置から開位置に移動する。また、ピストン及びピストンロッド42bを下方から上方に移動させれば、第1カセット収容機構24aの内扉40は開位置から閉位置に移動する。なお、昇降機構42は、ロッドレスエアシリンダー等の他の機構により実現されても良い。
【0093】
支持台26の内扉40に面する位置には、内扉40が開いているか否かを検知するために用いられる第1センサー44が設けられている。第1センサー44は、例えば、マグネットセンサであり、内扉40の所定の位置に取り付けられた磁石44a(図10(B)参照)による磁場の強さを検知する。
【0094】
例えば、図10(A)に示すように、内扉40が開き、磁石44aが第1センサー44から離れると、磁石44aによる磁場の強さは第1センサー44の位置で弱くなる。そのため、第1センサー44が検知する磁場の強さを利用することで、内扉40が開いているか否かを判断できる。
【0095】
第1センサー44には、ローダー・アンローダー8の各構成要素を制御する制御装置46が接続されており、第1センサー44は、検知した磁場の強さに関する情報を制御装置46に送る。制御装置46は、第1センサー44が検知した磁場の強さが基準より弱くなると、内扉40が開いたと判断し、第1センサー44が検知した磁場の強さが基準より強くなると、内扉40が閉じたと判断する。なお、第1センサー44は、制御装置46に対して無線で接続されても良い。
【0096】
制御装置46は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御装置46の機能が実現される。
【0097】
筐体22の搬入出口32に対応する位置には、外扉34が開いているか否かを検知するために用いられる第2センサー48が設けられている。第2センサー48は、例えば、マグネットセンサであり、外扉34の所定の位置に取り付けられた磁石48aによる磁場の強さを検知する。第2センサー48は、制御装置46に接続されている。なお、第2センサー48は、制御装置46に対して無線で接続されても良い。
【0098】
図10(B)は、外扉34が開き、内扉40が閉じた状態を示す一部断面側面図である。なお、図10(B)では、制御装置46を機能ブロックで示している。図10(B)に示すように、外扉34が開き、磁石48aが第2センサー48から離れると、磁石48aによる磁場の強さは第2センサー48の位置で弱くなる。
【0099】
そのため、第2センサー48が検知する磁場の強さを利用することで、外扉34が開いているか否かを判断できる。具体的には、第2センサー48は、検知した磁場の強さに関する情報を制御装置46に送る。制御装置46は、第2センサー48が検知した磁場の強さが基準より弱くなると、外扉34が開いたと判断し、第2センサー48が検知した磁場の強さが基準より強くなると、外扉34が閉じたと判断する。
【0100】
制御装置46は、ローダー・アンローダー8の外部から内部へのアクセスを制限するための第1安全機構としての機能を備えている。第1安全機構は、閉じられた状態の外扉34を開かないように固定するエア駆動型のロック機構を、制御装置46が適切に制御することによって実現される。
【0101】
具体的には、外扉34が閉じていると判断し、且つ、内扉40が開いていると判断した場合に、制御装置46は、外扉34が開かないようにロック機構で外扉34を固定する。このように、制御装置46が外扉34の開閉の可否を制御することにより、ローダー・アンローダー8の内部に位置する動作中の可動部等にオペレーターが誤ってアクセスすることを防止できる。
【0102】
また、制御装置46は、ローダー・アンローダー8の外部から内部へのアクセスを制限するための第2安全機構としての機能を備えている。第2安全機構は、ローダー・アンローダー8の電源を、制御装置46が適切に管理することによって実現される。具体的には、外扉34が開いていると判断し、且つ、内扉40が閉じていると判断した場合に、何らかの原因で内扉40が開かれると、制御装置46は、ローダー・アンローダー8の電源を落とす。
【0103】
第2安全機構により、外扉34と内扉40とが同時に開くような状況では、ローダー・アンローダー8が停止することになる。このように、制御装置46がローダー・アンローダー8の電源を適切に管理することにより、ローダー・アンローダー8の内部に位置する動作中の可動部等にオペレーターが誤ってアクセスすることを防止できる。
【0104】
図11(A)は、カセット載置台28等を示す一部断面側面図であり、図11(B)は、カセット載置台28を示す底面図である。カセット載置台28の下面28a側には、ストッパー部材50が配置されている。ストッパー部材50は、例えば、奥行方向に長い角棒50aを有している。ただし、この角棒50aの奥行方向の長さは、カセット載置台28の奥行方向の長さよりも短い。また、角棒50aは、例えば、ステンレス鋼等の金属によって形成されている。ただし、角棒50aの材質や形状等に大きな制限はない。
【0105】
奥行方向で内側に位置する角棒50aの一端部(すなわち、内扉40側の端部)には、高さ方向及び奥行方向に対して概ね垂直な幅方向(X軸方向)に沿う回転軸(不図示)が設けられており、この回転軸には、ローラー50bが回転できる態様で支持されている。ローラー50bの径は、カセット載置台28の下面28aと、支持台26の上面26aとの距離よりも小さい。
【0106】
角棒50aの内側の一端と外側の他端との間の位置には、角棒50aを回転できる態様で支持する軸機構52が設けられている。軸機構52は、幅方向に沿う回転軸52aを有している。回転軸52aは、角棒50aの長手方向(奥行方向)の中央よりも他端側(外側)の位置に連結されている。
【0107】
回転軸52aの幅方向の両端部は、カセット載置台28の下面28a側に固定された一対の軸受け52bの軸受け孔に挿入される。これにより、角棒50aは、高さ方向及び奥行方向に対して平行な面内(幅方向に垂直な面内)で回転軸52aの周りに回転できるように、軸受け52bに支持される。
【0108】
上述のように、回転軸52aは、角棒50aの中央よりも他端側の位置に連結されている。よって、ストッパー部材50に作用する重力の回転軸52aの周りのモーメントの向きは、角棒50aの一端を下方に移動させるような向きとなる。つまり、角棒50aに対して十分な力を付与しない限りは、角棒50aの一端の位置は、重力の作用で角棒50aの他端の位置よりも低くなる。
【0109】
そのため、例えば、カセット載置台28の全体が内部収容領域38bに位置付けられた状態では、ローラー50bが支持台26の上面26aに接触する。また、支持台26の上方でカセット載置台28を移動させると、ローラー50bは、支持台26の上面26aを転がる。
【0110】
角棒50aの他端部には、高さ方向に長いピン(押圧部)54の下端部が連結されている。カセット載置台28のピン54に対応する位置には、カセット載置台28を高さ方向に貫通する貫通孔28cが形成されており、ピン54は、この貫通孔28cに挿入されている。貫通孔28cは、挿入されたピン54の高さ方向への移動を阻害しない程度の大きさに形成されている。
【0111】
ピン54の高さ方向の長さは、カセット載置台28の厚さよりも長い。そのため、ローラー50bが支持台26の上面26aに接触した状態では、ピン54の上部がカセット載置台28の上面28b側に露出する。このピン54の露出部分には、ピン54の径よりも大きな外径を有する円盤状のボタン54bが固定されている。
【0112】
ピン54に固定されたボタン54bを上方から押し下げると、角棒50aの他端が下方に移動し、角棒50aの一端が上方に移動する。つまり、ローラー50bが上方に移動する。なお、ピン54の下部の近傍には、貫通孔28cの径よりも大きな外径を有するリング54aが固定されている。
【0113】
図12(A)は、カセット載置台28を内部収容領域38bから外側に引き出す様子を示す一部断面側面図である。カセット載置台28は、上述のガイド機構(不図示)により支持台26に対してスライドできるように装着されており、搬入出口32の外側に向けて引き出される。
【0114】
カセット載置台28が外側にスライドし、ローラー50bが支持台26の上面26aの外側の端部よりも外に出ると、ストッパー部材50に作用する重力の回転軸52aの周りのモーメントによって、角棒50aの一端が下方に移動する。つまり、ローラー50bが支持台26から脱落した状態になる。
【0115】
図12(B)は、ローラー50bが支持台26から脱落した様子を示す一部断面側面図である。ローラー50bが支持台26から脱落すると、このローラー50bは、上面26aよりも低い位置に位置付けられる。その結果、カセット載置台28の内側への移動は、ストッパー部材50が支持台26の外側面26bに接触することにより規制される。なお、ローラー50bの脱落に伴ってピン54は上昇し、リング54aがカセット載置台28の下面28aに接触する。
【0116】
このように、ストッパー部材50及び軸機構52は、カセット載置台28を引き出した際に、内側へのカセット載置台28の移動を規制する移動規制機構として機能する。移動規制機構を設けることにより、例えば、比較的重いカセット30の搬入出を行い易くなるので、カセット30に収容されている被加工物11等が搬入出に伴い破損するリスクを低減できる。
【0117】
すなわち、カセット30をカセット載置台28に載置(搬入)するときに、カセット載置台28が内側へ移動してしまうと、オペレーターがカセット30を落下させるリスクや、オペレーターがカセット30を外扉34に衝突させるリスクが高くなるが、移動規制機構によりカセット載置台28の内側への移動を規制することで、これらのリスクを十分に低く抑えられる。
【0118】
また、オペレーターがカセット30をカセット載置台28から搬出するときに、カセット載置台28が内側へ移動してしまうと、搬出予定のカセット30が搬入出口32の上部に位置する筐体22の一部等に衝突するリスクが高くなるが、移動規制機構によりカセット載置台28の内側への移動を規制することで、このリスクも十分に低く抑えられる。
【0119】
本実施形態の移動規制機構は、高さ方向及び奥行方向に平行な平面内での角棒50aの回転により実現されるので、例えば、カセット載置台28の幅方向の外側の部分に移動規制機構を設ける場合のように、カセット収容機構24が幅方向に大きくなることはない。そのため、カセット載置台28の幅方向の外側の部分に移動規制機構を設ける場合に比べて、幅方向にコンパクトなカセット収容機構24を実現し易くなる。
【0120】
なお、角棒50aの長さ、軸機構52の位置等の条件は、角棒50aが支持台26から脱落した状態で、カセット載置台28上のカセット30が載置される領域が筐体22から完全に露出するように設定されている。それため、オペレーターは、カセット30が完全に筐体22から露出した状態で、カセット載置台28にカセット30を載置(搬入)できる。
【0121】
図12(C)は、カセット載置台28を内部収容領域38bに戻す様子を示す一部断面側面図である。カセット載置台28を内部収容領域38bに戻す際には、オペレーターがボタン54bを押し下げる。オペレーターは、例えば、ボタン54bの下部がカセット載置台28の上面28bに接触するまでボタン54bを押し下げる。これにより、ピン54が下方に押し下げられ、ローラー50bは、支持台26の上面26aよりも上方に移動する。
【0122】
ローラー50bは、例えば、カセット載置台28の下面28aに接触するまで上昇する。その結果、カセット載置台28の内側への移動の規制が解除され、カセット載置台28を内部収容領域38bに戻すことができるようになる。オペレーターは、ボタン54bを押し下げた状態で、カセット載置台28を内部収容領域38bへと押し込めば良い。
【0123】
なお、カセット収容機構24は、上述の例に限定されない。例えば、カセット載置台28の幅方向で異なる2つの位置に、それぞれ、ストッパー部材50が設けられても良い。この場合には、それぞれのピン54に対応する位置に、貫通孔28cが形成される。また、この場合には、2つのストッパー部材50を構成する2つの角棒50aが、任意の位置で互いに連結されても良い。2つの角棒50aを互いに連結すれば、一方のピン54を省略することもできる。
【0124】
また、貫通孔28cは、カセット載置台28のカセット30が配置される領域に形成されても良い。この場合には、カセット載置台28にカセット30を載置すると、カセット30の自重でピン54が押し下げられる。つまり、オペレーターがピン54を押し下げて、ストッパー部材50による規制を解除する必要はなくなる。
【0125】
図9に示すように、ローダー・アンローダー8は、内扉40の内部収容領域38bとは反対側に配置された昇降機構56を備えている。昇降機構56は、高さ方向に長い支持柱56aを有している。支持柱56aの内扉40側には、支持柱56aの長手方向(すなわち、高さ方向)に沿う一対のガイドレール(不図示)が設けられている。
【0126】
昇降機構56の一対のガイドレールには、板状の昇降台58が高さ方向にスライドできる態様で取り付けられている。昇降台58の上面は、概ね平坦に形成されている。昇降台58は、その上面を高さ方向に対して概ね垂直な状態に保ちながら、一対のガイドレールに沿って高さ方向にスライドする。
【0127】
支持柱56aの下部には、モーター(不図示)と、モーターの回転軸に連結された駆動プーリー(不図示)と、が設けられている。また、支持柱56aの上部には、従動プーリー(不図示)が設けられている。駆動プーリーと従動プーリーとには、1本の歯付無端ベルト(不図示)が架けられており、この歯付無端ベルトの一部は、昇降台58に固定されている。そのため、モーターの回転軸を一方向に回転させると、昇降台58は上昇し、モーターの回転軸を他方向に回転させると、昇降台58は下降する。
【0128】
昇降台58の上面側には、カセット収容機構24内のカセット30から搬出された被加工物ユニット17や、カセット収容機構24内のカセット30に搬入される被加工物ユニット17、ボード31が配置されたトレー33が仮置きされる仮置きユニット60が設けられている。仮置きユニット60は、カセット収容機構24側に開口が形成された角筒状の筐体62を有する。筐体62の内部には、被加工物ユニット17やトレー33をそれぞれ把持して奥行方向に移動できる複数の搬送ユニット(搬送機構)64が配置されている。
【0129】
仮置きユニット60と第1カセット収容機構24aの第1カセット30aとの間で被加工物ユニット17やトレー33を受け渡す際には、仮置きユニット60の高さを第1カセット収容機構24aの高さに合わせる。つまり、第1カセット収容機構24aの第1載置領域Aaに対して奥行方向で内扉40側に隣接する第1搬送領域Baに、仮置きユニット60を配置する。
【0130】
仮置きユニット60が第1搬送領域Baに配置され、第1カセット収容機構24aの内扉40が開かれると、搬送ユニット64は、第1載置領域Aaの第1カセット30aにアクセスできるようになる。例えば、搬送ユニット64は、第1カセット30aに収容されている被加工物ユニット17やトレー33を把持して、仮置きユニット60に引き出す。
【0131】
また、搬送ユニット64は、仮置きユニット60に仮置きされている被加工物ユニット17やトレー33を把持して、第1カセット30aに収容する。このように、搬送ユニット64は、第1搬送領域Baの仮置きユニット60と、第1載置領域Aaの第1カセット30aとの間で、被加工物11やボード31を搬送できる。
【0132】
仮置きユニット60と第2カセット収容機構24bの第2カセット30bとの間で被加工物ユニット17やトレー33を受け渡す際には、仮置きユニット60の高さを第2カセット収容機構24bの高さに合わせる。つまり、第2カセット収容機構24bの第1載置領域Abに対して奥行方向で内扉40側に隣接する第1搬送領域Bbに、仮置きユニット60を配置する。
【0133】
仮置きユニット60が第1搬送領域Bbに配置され、第2カセット収容機構24bの内扉40が開かれると、搬送ユニット64は、第1載置領域Abの第2カセット30bにアクセスできるようになる。例えば、搬送ユニット64は、第2カセット30bに収容されている被加工物ユニット17やトレー33を把持して、仮置きユニット60に引き出す。
【0134】
また、搬送ユニット64は、仮置きユニット60に仮置きされている被加工物ユニット17やトレー33を把持して、第2カセット30bに収容する。このように、搬送ユニット64は、第1搬送領域Bbの仮置きユニット60と、第1載置領域Abの第2カセット30bとの間で、被加工物11やボード31を搬送できる。
【0135】
第2カセット収容機構24bの更に上方には、載置台66が設けられている。また、載置台66の直上の領域には、筐体22の天井22aを上下に貫通する開口22bが設けられている。更に、載置台66及び開口22bの直上の領域には、搬送路6を上下に貫通する開口6aが設けられている。
【0136】
搬送車10と仮置きユニット60との間で被加工物ユニット17やトレー33を搬送する際には、まず、被加工物ユニット17やトレー33を収容できる容器(カセット)102を備えた搬送車10を、開口6aの上方に移動させる。そして、容器102を吊り下げ部材112で吊り下げるように降下させて、載置台66の上面(第2載置領域A)に容器102を載置する。
【0137】
また、仮置きユニット60の高さを、載置台66に載置された容器102の高さに合わせる。つまり、載置台66に対して奥行方向で隣接する第2搬送領域Bに仮置きユニット60を配置する。これにより、搬送ユニット64は、第2載置領域Aに載置された容器102にアクセスできるようになる。例えば、搬送ユニット64は、容器102に収容されている被加工物ユニット17やトレー33を把持して、仮置きユニット60に引き出す。
【0138】
また、搬送ユニット64は、仮置きユニット60に仮置きされている被加工物ユニット17やトレー33を把持して、容器102に収容する。このように、搬送ユニット64は、第2搬送領域Bの仮置きユニット60と、載置台66に載置された容器102との間で、被加工物11やボード31を搬送できる。なお、仮置きユニット60を昇降させる昇降機構56や、仮置きユニット60内の搬送ユニット64は、上述の制御装置46に接続されている。昇降機構56や搬送ユニット64の動作は、この制御装置46によって制御される。
【0139】
制御装置46には、外部からの信号(情報)を受信して制御装置46に送る受信機68と、制御装置46から受け取った信号(情報)を外部に送信する送信機70と、が更に接続されている。受信機68は、例えば、搬送システム2の制御ユニット12から送信される信号を受信して制御装置46に送る。
【0140】
制御装置46は、例えば、受信機68から受け取った信号に基づき、ローダー・アンローダー8の各構成要素の動作を制御する。また、制御装置46は、例えば、通知用の信号を生成して送信機70に送る。送信機70は、例えば、制御装置46から受け取った信号を搬送システム2の制御ユニット12に送信する。
【0141】
本実施形態のローダー・アンローダー8は、仮置きユニット60を介して、複数の被加工物ユニット17やトレー33が収容されるカセット30と、搬送車10の容器102と、の間で被加工物ユニット17やトレー33を搬送できる。よって、各加工装置4に対して適時に被加工物11やボード31を搬送でき、また、各加工装置4で加工された被加工物11や使用後のボード31を適時に回収できる。
【0142】
図13(A)は、仮置きユニット60の上段に被加工物ユニット17を仮置きする様子を示す一部断面側面図であり、図13(B)は、仮置きユニット60の上段に被加工物ユニット17を仮置きする様子を示す一部断面側面図である。なお、トレー33が仮置きされる様子も被加工物ユニット17の場合と同様である。仮置きユニット60の筐体62は、例えば、上部に配置される上板62aと、下部に配置される下板62bと、を含む。
【0143】
上板62aの幅方向の2つの端部には、それぞれ、柱(不図示)の上端部が接続されている。また、下板62bの幅方向の2つの端部には、それぞれ、柱の下端部が接続されている。つまり、上板62aと下板62bとは、2組の柱を介して互いに連結されている。上板62aと下板62bとの間の空間には、幅方向に離れた一対の側板62cが配置されている。更に、筐体62のカセット収容機構24側の端部には、開口62dが形成されている。
【0144】
一対の側板62cの内側において同じ高さの位置には、それぞれ、奥行方向に沿って長い上段ガイドレール(第1仮置き部)72aが配置されている。各上段ガイドレール72aは、被加工物ユニット17(フレーム15)等を下方から支持する支持面と、被加工物ユニット17(フレーム15)等の幅方向の位置を規定する側面と、を有している。
【0145】
一対の側板62cの内側において上段ガイドレール72aよりも下方の位置には、それぞれ、奥行方向に沿って長い下段ガイドレール(第2仮置き部)72bが配置されている。各下段ガイドレール72bは、被加工物ユニット17(フレーム15)等を下方から支持する支持面と、被加工物ユニット17(フレーム15)等の幅方向の位置を規定する側面と、を備えている。
【0146】
このように、筐体62の内側の異なる高さの位置に、上段ガイドレール72aと下段ガイドレール72bとを備えることで、仮置きユニット60は、2つの被加工物ユニット17等を同時に収容できる。そのため、仮置きユニットが1つの被加工物ユニット17等だけを収容できる場合に比べて、搬送車10の容器102又はカセット30と、仮置きユニット60と、の間で被加工物ユニット17等を効率良く搬送できる。
【0147】
例えば、上段ガイドレール72aが加工前の被加工物ユニット17等の収容に用いられ、下段ガイドレール72bが加工後の被加工物ユニット17等の収容に用いられる。ただし、被加工物ユニット17等の収容の態様に制限はない。上段ガイドレール72aが加工後の被加工物ユニット17等の収容に用いられ、下段ガイドレール72bが加工前の被加工物ユニット17等の収容に用いられても良い。
【0148】
上段ガイドレール72aに対応する高さの位置には、第1搬送ユニット64aが設けられており、下段ガイドレール72bに対応する高さの位置には、第2搬送ユニット64bが設けられている。各搬送ユニット64は、上下に配置された2枚の板部材を含む把持部を備えている。2枚の板部材は、上側の板部材の下面と下側の板部材の上面とが概ね平行になるように配置されている。
【0149】
各搬送ユニット64の把持部は、2枚の板部材の間隔を調整するアクチュエーター(不図示)を更に含んでいる。このアクチュエーターによって2枚の板部材の間隔を狭めることにより、被加工物ユニット17のフレーム15等が把持される。また、2枚の板部材の間隔を広げることにより、被加工物ユニット17のフレーム15等が2枚の板部材から放される。
【0150】
また、各搬送ユニット64は、把持部を奥行方向に移動させる水平移動機構(不図示)を備えている。水平移動機構は、奥行方向に沿って設けられたリニアガイド(不図示)を有する。このリニアガイドには、搬送ユニット64がスライドできる態様で連結されている。
【0151】
例えば、リニアガイドの一端側には、幅方向に概ね平行な回転軸を持つ従動プーリー(不図示)が設けられている。また、リニアガイドの他端側には、幅方向に概ね平行な回転軸を持つ駆動プーリー(不図示)と、この駆動プーリーに回転軸が連結されたモーター(不図示)と、が設けられている。
【0152】
従動プーリーと駆動プーリーとには、1本の歯付無端ベルト(不図示)が架けられており、この歯付無端ベルトの一部は、把持部に固定されている。そのため、モーターの回転軸を一方向に回転させると、把持部は奥行方向の一方側に移動し、モーターの回転軸を他方向に回転させると、把持部は奥行方向の他方側に移動する。
【0153】
上段ガイドレール72aに被加工物ユニット17等を仮置きする際には、図13(A)に示すように、まず、昇降機構56で仮置きユニット60の高さを調整し、上段ガイドレール72aの高さを、被加工物ユニット17等が収容されている容器102又はカセット30の高さに合わせる。
【0154】
次に、第1搬送ユニット64aの把持部を容器102又はカセット30の内部に移動させる。そして、容器102又はカセット30に収容されている被加工物ユニット17のフレーム15等を第1搬送ユニット64aの把持部で把持する。その後、第1搬送ユニット64aの把持部を容器102又はカセット30から離れる方向に移動させる。これにより、被加工物ユニット17等が上段ガイドレール72aに載置される。
【0155】
上段ガイドレール72aに仮置きされている被加工物ユニット17等を容器102又はカセット30に収容する際の動作も同様である。この場合には、上段ガイドレール72aに仮置きされている被加工物ユニット17等を第1搬送ユニット64aの把持部で把持した後に、この第1搬送ユニット64aの把持部を容器102又はカセット30の内部に移動させれば良い。
【0156】
下段ガイドレール72bに被加工物ユニット17等を仮置きする際には、図13(B)に示すように、まず、昇降機構56で仮置きユニット60の高さを調整し、下段ガイドレール72bの高さを、被加工物ユニット17等が収容されている容器102又はカセット30の高さに合わせる。
【0157】
次に、第2搬送ユニット64bの把持部を容器102又はカセット30の内部に移動させる。そして、容器102又はカセット30に収容されている被加工物ユニット17のフレーム15等を第2搬送ユニット64bの把持部で把持する。その後、第2搬送ユニット64bの把持部を容器102又はカセット30から離れる方向に移動させる。これにより、被加工物ユニット17等が下段ガイドレール72bに載置される。
【0158】
下段ガイドレール72bに仮置きされている被加工物ユニット17等を容器102又はカセット30に収容する際の動作も同様である。この場合には、下段ガイドレール72bに仮置きされている被加工物ユニット17等を第2搬送ユニット64bの把持部で把持した後に、この第2搬送ユニット64bの把持部を容器102又はカセット30の内部に移動させれば良い。
【0159】
カセット30と容器102との間の被加工物ユニット17等の搬送にかかる動作は、例えば、次のようになる。まず、仮置きユニット60の高さを昇降機構56で調整し、カセット30に収容されている加工前の被加工物ユニット17等を上段ガイドレール72aに引き出す。次に、仮置きユニット60を昇降機構56で上昇させ、載置台66上の容器102に収容されている加工後の被加工物ユニット17等を下段ガイドレール72bに引き出す。
【0160】
そして、仮置きユニット60の高さを昇降機構56で調整し、上段ガイドレール72aに仮置きされている加工前の被加工物ユニット17等を載置台66上の容器102に収容する。この動作により、加工後の被加工物ユニット17等の容器102からの搬出(回収)と加工前の被加工物ユニット17等の容器102への搬入(配布)とが効率良く行われる。ただし、被加工物ユニット17等の搬送にかかる動作はこの限りでない。また、上段ガイドレール72aと下段ガイドレール72bとの関係を必要に応じて入れ替えても良い。
【0161】
図14(A)は、2本の上段ガイドレール72a等の平面図である。幅方向の一方側に位置する上段ガイドレール72aと下段ガイドレール72bとは、第1側板62cに固定されている。また、幅方向の他方側に位置する上段ガイドレール72aと下段ガイドレール72bとは、第2側板62cに固定されている。
【0162】
下板62bの奥行方向の一端側には、下板62bの幅方向の一方側の部分を上下に貫通する第1開口62eと、下板62bの幅方向の他方側の部分を上下に貫通する第2開口62eとが形成されている。第1開口62eには、第1側板62cの奥行方向の一端側の一部が挿入されており、第2開口62eには、第2側板62cの奥行方向の一端側の一部が挿入されている。
【0163】
下板62bの下面の第1開口62eと第2開口62eとに隣接する領域には、第1エアアクチュエーター74aの基部と第2エアアクチュエーター74bの基部とが固定されている。第1エアアクチュエーター74aの可動部(例えば、ピストンロッド)は、第1開口62eに挿入された第1側板62cの一部に接続されている。第2エアアクチュエーター74bの可動部(例えば、ピストンロッド)は、第2開口62eに挿入された第2側板62cの一部に接続されている。
【0164】
下板62bの奥行方向の他端側には、第1ガイド機構76aと第2ガイド機構76bとが設けられている。第1ガイド機構76aは、下板62bの上面に固定され幅方向に長いガイドレールと、第1側板62cの下部側に固定され幅方向にスライドできる状態でガイドレールに取り付けられたスライダーと、を含む。また、第2ガイド機構76bは、下板62bの上面に固定されたガイドレールと、第2側板62cの下部側に固定され幅方向にスライドできる状態でガイドレールに取り付けられたスライダーと、を含む。
【0165】
よって、第1エアアクチュエーター74aと第2エアアクチュエーター74bとで第1側板62cと第2側板62cとの間隔を変更すれば、互いに平行な状態を維持しながら2本の上段ガイドレール72aの間隔を変更し、互いに平行な状態を維持しながら2本の下段ガイドレール72bの間隔を変更できる。
【0166】
つまり、第1側板62c、第1エアアクチュエーター74a、第1ガイド機構76a、第2側板62c、第2エアアクチュエーター74b、第2ガイド機構76bは、2本の上段ガイドレール72aの間隔と2本の下段ガイドレール72bの間隔とを調整する間隔調整機構78として機能する。
【0167】
第1エアアクチュエーター74aと第2エアアクチュエーター74bとの動作は、上述の制御装置46により制御される。つまり、制御装置46は、被加工物ユニット17(被加工物11)等の大きさに応じて第1エアアクチュエーター74aと第2エアアクチュエーター74bとの動作を制御し、2本の上段ガイドレール72aの間隔と2本の下段ガイドレール72bの間隔とを調整する。
【0168】
例えば、被加工物11の径が300mmの場合には、約400mmの幅を持つフレーム15が使用される。この場合、制御装置46は、2本の上段ガイドレール72aの側面の間隔72c(2本の下段ガイドレール72bの側面の間隔72c)が400mmよりも僅か(例えば、数mm)に大きくなるように、第1エアアクチュエーター74aと第2エアアクチュエーター74bとを動作させる。
【0169】
また、例えば、被加工物11の径が200mmの場合には、約300mmの幅を持つフレーム15が使用される。この場合、制御装置46は、2本の上段ガイドレール72aの側面の間隔72c(2本の下段ガイドレール72bの側面の間隔72c)が300mmよりも僅か(例えば、数mm)に大きくなるように、第1エアアクチュエーター74aと第2エアアクチュエーター74bとを動作させる。
【0170】
図14(B)は、2本の上段ガイドレール72aの間隔を狭めた様子を示す平面図である。なお、2本の上段ガイドレール72aの間隔を狭めると、2本の下段ガイドレール72bの間隔も狭まる。このように、2本の上段ガイドレール72aの間隔と2本の下段ガイドレール72bの間隔とを被加工物11の径に応じて調整することで、異なる大きさの被加工物11を仮置きユニット60に仮置きできるようになる。つまり、1つの仮置きユニット60で、複数の種類の大きさの被加工物ユニット17等の搬送に対応できる。
【0171】
図15(A)は、搬送路6上を走行して被加工物ユニット17やトレー33を搬送する搬送車10の上面側を示す斜視図であり、図15(B)は、搬送車10の底面側を示す斜視図である。図15(A)及び図15(B)に示すように、搬送車10は、各種の構成要素が搭載される板状の車両フレーム82を備える。車両フレーム82の前方側の両側端部には、一対の車軸84が配置されている。車軸84は、一端側が車両フレーム82の側面から突出するように、車両フレーム82の下面側に装着される。
【0172】
一対の車軸84の一端側には、それぞれ、車輪(前輪)86が固定されている。すなわち、一対の車輪86が、車両フレーム82の幅方向(車幅方向)に離れた2つの位置に配置されている。また、車両フレーム82の後端部の幅方向に離れた2つの位置には、一対の車輪(後輪)88が配置されている。車輪88は、例えば、高さ方向に沿う回転軸の周りに360°回転できるキャスターであり、車両フレーム82の下面側に装着されている。車輪86及び車輪88は、搬送車10が搬送路6上を走行する際の走行用の車輪である。
【0173】
車両フレーム82の前端部には、一対の車輪86を駆動する駆動ユニット90が搭載されている。駆動ユニット90は、それぞれ、車軸84等を介して車輪86に連結された一対のモーター(駆動源)92を備える。モーター92は、回転軸(出力シャフト)92aを備え、車輪86を回転させる動力を生成する。
【0174】
図15(B)に示すように、車軸84の他端側には、プーリー94が設けられている。モーター92の回転軸92aとプーリー94とには、ベルト、チェーン等の無端の連結部材(不図示)が架けられている。モーター92の回転軸92a、プーリー94、及び連結部材によって動力伝達機構が構成され、車軸84とモーター92とが連結される。これにより、モーター92によって生成された動力(回転力)が車輪86に伝達され、車輪86が回転する。
【0175】
駆動ユニット90は、一対のモーター92によって一対の車輪86の回転する方向を独立に制御する。一対の車輪86を同方向に回転させることにより、搬送車10が前進又は後退する。また、一対の車輪86を互いに逆方向に回転させることにより、高さ方向に沿う回転軸の周りに搬送車10を回転させて、搬送車10の進行する方向を制御できる。なお、車輪86及び車輪88の構造に制限はない。例えば、車輪86及び車輪88として、傾斜した樽状(筒状)の複数の回転体が搬送路6と接触する外周面に取り付けられた、いわゆる、メカナムホイールを用いることもできる。
【0176】
駆動ユニット90には、給電用の配線(不図示)を介して、モーター92等に電力を供給するバッテリー(二次電池)96が接続される。バッテリー96は、例えば、車両フレーム82の前端部に装着され、車輪86を回転させるための電力をモーター92に供給する。バッテリー96としては、リチウムイオン電池等が用いられる。
【0177】
図16は、搬送車10の前端部を示す拡大斜視図である。車両フレーム82の前端部の下面側には、充電用の配線(充電配線)98を介してバッテリー96に接続される一対の端子(受電端子)100が設けられている。一対の端子100は、例えば、搬送車10の外部に設置された給電用の端子に接続され、バッテリー96の充電に使用される電力の供給を受ける。なお、端子100を用いるバッテリー96の充電の詳細については後述する。
【0178】
図15(A)及び図15(B)に示すように、車両フレーム82の下側には、被加工物ユニット17やトレー33を収容する容器(カセット)102が格納される格納領域104が設けられている。格納領域104は、一対の車輪86と一対の車輪88とによって周りを囲まれており、且つ、車輪86及び車輪88の下端よりも上方に位置する。この格納領域104には、1又は複数の被加工物ユニット17等を収容できる容器102が配置される。
【0179】
図17(A)は、容器102を示す斜視図であり、図17(B)は、容器102を示す正面図である。容器102は、例えば、平面視で六角柱状に形成され、その内部に被加工物ユニット17やトレー33を収容可能な収容部(収容空間)102aを備える。収容部102aは、容器102の一側面側で開口するスリット状の開口102bを介して容器102の外部の空間に接続されている。被加工物ユニット17やトレー33は、開口102bを通過して収容部102aに搬入されるとともに、開口102bを通過して収容部102aから搬出される。
【0180】
図17(B)に示すように、容器102は、例えば、大きさの異なる2種類の被加工物ユニット17a等及び被加工物ユニット17b等を収容できるように構成されている。容器102の収容部102aには、被加工物ユニット17a等を保持できる一対の第1ガイドレール106と、被加工物ユニット17b等を保持できる一対の第2ガイドレール108とが設けられている。
【0181】
一対の第1ガイドレール106は、所定の間隔で収容部102aの上壁102cに固定されており、被加工物ユニット17a等の下面側を下側から保持する保持面106aと、被加工物ユニット17a等の水平方向の位置を規定する側面106bと、を備える。また、一対の第2ガイドレール108は、所定の間隔で収容部102aの底壁102dに固定されており、被加工物ユニット17b等の下面側を下側から保持する保持面108aを備える。なお、被加工物ユニット17b等の水平方向の位置は、容器102の内側の側面によって規定される。
【0182】
一対の第1ガイドレール106の間隔は、一対の第2ガイドレール108の間隔よりも狭い。そのため、一対の第1ガイドレール106は、第2ガイドレール108によって保持される被加工物ユニット17b等よりも小さい被加工物ユニット17a等を保持できる。例えば、一対の第1ガイドレール106によって約200mm(8インチ)の径の被加工物11が保持され、一対の第2ガイドレール108によって約300mm(12インチ)の径の被加工物11が保持される。
【0183】
上述のように、容器102は、同じ種類(同じ大きさ)の複数の被加工物ユニット17等を収容できるようには構成されていない。この点で、容器102の機能及び用途は、同じ種類の複数の被加工物ユニット17等を収容できるカセット30の機能及び用途とは大きく異なっている。
【0184】
ただし、容器102や収容部102aの構造に制限はない。例えば、収容部102aは、1又は3以上の被加工物ユニット17等を収容できるように構成されることがある。また、収容部102aは、同じ種類の複数の被加工物ユニット17等を収容できるように構成されても良い。
【0185】
被加工物ユニット17やトレー33を搬送車10によって搬送する際には、図15(A)に示すように、容器102が格納領域104に格納される。このとき、容器102の下面は、車輪86の下端や車輪88の下端よりも上方に位置付けられる。そのため、搬送車10の走行中に容器102が搬送路6と接触することはない。
【0186】
格納領域104の上方に位置する車両フレーム82の上面側の領域には、容器102を吊り下げて昇降させる昇降ユニット(昇降機構)110が設けられている。昇降ユニット110は、格納領域104に格納された容器102を降下させて、所定の載置領域に載置する。また、昇降ユニット110は、所定の載置領域に載置された容器102を上昇させて、容器102を格納領域104に格納する。
【0187】
図18は、容器102が載置領域Aに載置された状態の搬送車10を示す斜視図である。昇降ユニット110は、一端側(下端側)が容器102に接続された吊り下げ部材112と、吊り下げ部材112の巻き取り及び送り出しを行う駆動機構114とを備える。なお、載置領域Aは、例えば、ローダー・アンローダー8の載置台66の上面(第2載置領域A図9参照)である。
【0188】
図18に示すように、昇降ユニット110は、4本の吊り下げ部材112を備える。吊り下げ部材112としては、例えば、所定の幅を有するベルトが用いられる。4本の吊り下げ部材112の先端部(下端部)は、それぞれ、容器102の上面側の4つの位置に接続されている。
【0189】
容器102が格納領域104に格納された状態で、駆動機構114によって吊り下げ部材112が送り出されると、容器102が下降して載置領域Aに載置される。また、容器102が載置領域Aに載置された状態で、駆動機構114によって吊り下げ部材112が巻き取られると、容器102が上昇して格納領域104に格納される。
【0190】
吊り下げ部材112としてベルトを用いる場合には、図18に示すように、収容部102aから被加工物ユニット17等が搬出される際に被加工物ユニット17等が開口102bを通過する向きに対して、ベルトの幅方向が沿うように、容器102に対するベルトの向きを調整しておくことが好ましい。容器102はベルトの幅方向に揺れ動き難いので、この態様では、容器102の昇降中に被加工物ユニット17等が開口102bから飛び出る可能性を低く抑えられる。
【0191】
なお、容器102に対するベルトの向きは、収容部102aに対して被加工物ユニット17等が搬入される際に被加工物ユニット17等が開口102bを通過する向きに対して、ベルトの幅方向が沿うように調整されても良い。本実施形態では、ベルトの幅方向が、容器102の開口102bを含む面に対して垂直な方向に沿って配置されるように、ベルトと容器102とが接続されている。なお、吊り下げ部材112としては、巻き取り及び送り出しが可能なワイヤロープ等のベルト以外の部材を用いても良い。
【0192】
図15(B)に示すように、車両フレーム82の下面側には、容器102の上面側に接触する複数の接触部材116が設けられている。複数の接触部材116は、それぞれ、概ね同じ高さの柱状に形成され、車両フレーム82の下面から下方に突出するように車両フレーム82に固定されている。容器102が格納領域104に格納されると、この容器102の上面側が複数の接触部材116の下端部に接触して各接触部材116を上向きに押す。
【0193】
接触部材116は、例えば、容器102が押し当てられると弾性変形を生じる弾性部材により形成される。すなわち、接触部材116は、格納領域104に格納された容器102によって押されると、この容器102の上面側の形状に沿って変形し、容器102を下方に向かって押す復元力を生じる弾性体によって構成される。
【0194】
接触部材116に弾性部材を用いると、例えば、容器102が接触部材116と接触した際の衝撃が緩和され、容器102や容器102内の被加工物ユニット17等が破損し難くなる。また、搬送車10が搬送路6を走行する際にも、接触部材116が緩衝材となり、車両フレーム82の振動が容器102や被加工物ユニット17等に伝わり難くなる。
【0195】
接触部材116として、例えば、ゴム(ウレタンゴム、シリコーンゴム等)、スポンジ等でなる柱状の部材を用いることができる。特に、容器102との間に作用する摩擦力が大きいゴムで構成される接触部材116を用いることによって、搬送中の容器102の位置ずれを抑制できる。なお、接触部材116は、必ずしもその全体が弾性部材で構成される必要はなく、少なくとも接触部材116の容器102と接触する領域(下端部)が弾性部材によって構成されていれば良い。
【0196】
また、接触部材116は、容器102の上面側に対して3以上の位置で接触することが好ましい。本実施形態では、図15(B)に示すように、3つの柱状の接触部材116が車両フレーム82に設けられる。この場合には、容器102の上面が3つの接触部材116の下端を含む平面に沿って配置されるので、容器102は傾き難くなる。ただし、接触部材116の形状、数、配置等の条件は任意に変更され得る。例えば、互いに概ね平行に配置された一対の線状(帯状)の接触部材116が車両フレーム82に設けられても良い。
【0197】
また、車両フレーム82の振動が容器102に伝達され難くするために、容器102は、弾性部材を介して吊り下げ部材112に接続されていても良い。図19は、容器102が弾性部材(伸縮部材)118を介して吊り下げ部材112に接続された搬送車10を示す斜視図である。なお、この場合には、接触部材116が省略されても良い。
【0198】
吊り下げ部材112の先端側(下端側)と容器102との間には、弾性部材118が設けられている。弾性部材118は、吊り下げ部材112に揺れが生じた際に、吊り下げ部材112の長さ方向に沿って伸縮する部材であり、例えば、ゴム、ばね等の伸縮可能な弾性体でなる。また、弾性部材118として、伸縮継手等の伸縮可能な部品を用いることもできる。
【0199】
容器102が格納領域104に格納される際には、容器102の上面側が車両フレーム82や接触部材116と接触しないように、吊り下げ部材112の巻き取り量が調整される。これにより、例えば、車両フレーム82が振動しても、その振動は容器102に対して直接には伝達されない。また、車両フレーム82から昇降ユニット110及び吊り下げ部材112を介して伝達される振動は、弾性部材118の伸縮によって緩和されるので、容器102に伝達され難い。このように、弾性部材118は防振材として機能する。
【0200】
ただし、車両フレーム82の下面側に接触部材116が設けられている場合には、容器102が接触部材116と接触した状態で格納領域104に格納されるように、吊り下げ部材112の巻き取り量が調整されても良い。この場合には、車両フレーム82から容器102への振動の伝達が接触部材116によって緩和されるとともに、吊り下げ部材112から容器102への振動の伝達が弾性部材118によって緩和される。
【0201】
車両フレーム82の後端部の下側には、カバー120が設けられている。カバー120は、容器102が格納領域104に格納される際に、容器102の開口102b(図17(A)参照)を覆う。開口102bがカバー120によって覆われると、搬送車10の走行中に容器102の収容部102aに異物が入り込むことを防止でき、被加工物ユニット17等への異物の付着が防止される。
【0202】
また、搬送車10の走行中に容器102が傾いたり振動したりしても、被加工物ユニット17等の開口102bからの飛び出しがカバー120によって防止される。なお、カバー120の構造及び動作の詳細については後述する(図23図24(A)、図24(B)参照)。
【0203】
車両フレーム82の前端部及び後端部には、一対の第1センサー122が設けられている。すなわち、一対の第1センサー122は、車両フレーム82の長さ方向(車長方向)に離れた2つの位置に設けられている。また、車両フレーム82の両側端部には、一対の第2センサー124が設けられている。すなわち、一対の第2センサー124は、車両フレーム82の幅方向(車幅方向)に離れた2つの位置に配置されている。
【0204】
第1センサー122と第2センサー124とは、それぞれ、搬送車10が走行する搬送路6と対向するように装着され、搬送路6に設けられたマークを検出する。第1センサー122及び第2センサー124によるマークの検出結果に基づいて、搬送車10の走行、旋回、停車等が制御される。第1センサー122及び第2センサー124を用いた搬送車10の制御の詳細については後述する。
【0205】
第1センサー122及び第2センサー124が設置される具体的な位置は、搬送車10が走行する搬送路6の仕様等に応じて調整される。例えば、一対の第1センサー122は、それぞれ、車両フレーム82の前端部と後端部のうちで車両フレーム82の幅方向の中央付近に装着される。また、一対の第2センサー124は、それぞれ、車両フレーム82の両側端部のうちで車両フレーム82の長さ方向の中央付近に装着される。
【0206】
なお、一対の第2センサー124は、一対の車輪86を通る直線上に並ぶように、車両フレーム82に固定されても良い。例えば、一対の第2センサー124は、車両フレーム82の幅方向において一対の車輪86を挟むように、一対の車輪86の外側に設けられる。また、一対の第2センサー124は、車両フレーム82の幅方向において一対の車輪86に挟まれるように、一対の車輪86の内側に設けられても良い。
【0207】
このように、一対の車輪86を通る直線上に一対の第2センサー124を配置することで、一対の第2センサー124が検出の対象とするマークを車輪86が通過するのと同時に、このマークを一対の第2センサー124によって検出できる。したがって、このマークが検出されるタイミングで搬送車10を旋回させたり停車させたりすれば、何らの補正を行うことなく搬送車10の走行を適切に制御できるようになる。
【0208】
一方で、一対の第2センサー124が一対の車輪86を通る直線から離れている場合には、マークが検出されるタイミングに加えて、一対の第2センサー124と一対の車輪86(一対の車軸84)との間の距離や、搬送車10の走行する速度等を用いて、搬送車10の旋回や停車のタイミングを制御すると良い。
【0209】
更に、図16に示すように、車両フレーム82の前端部には、搬送車10が障害物に衝突したことを検知する第3センサー126が設けられている。例えば、車両フレーム82の前端部の両端側に、一対の第3センサー126が装着される。第3センサー126としては、例えば、押しボタン式のスイッチが用いられる。
【0210】
搬送車10の前端部が障害物に衝突すると、第3センサー126が作動して搬送車10の衝突が検知される。そして、第3センサー126によって搬送車10の衝突が検知されると、搬送車10は動作を停止する。なお、搬送車10の衝突を検知できるようであれば、第3センサー126の構造や種類に制限はない。
【0211】
搬送車10は、例えば、衝突等に起因する衝撃を弱めることのできる柔軟な外装カバーによって覆われることがある。この場合には、搬送車10の前端側を覆う外装カバーが障害物に衝突すると、外装カバーが変形して第3センサー126に接触し、搬送車10の衝突が検知される。
【0212】
図15(A)及び図15(B)に示すように、昇降ユニット110の上側には、車両フレーム82に固定された板状の支持台128が設けられている。この支持台128の上面には、搬送車10の動作を制御する制御部(制御ユニット)130が固定されている。制御部130は、搬送車10の各構成要素(駆動ユニット90、昇降ユニット110、第1センサー122、第2センサー124、第3センサー126等)に接続されており、各構成要素の動作を制御する。
【0213】
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部130の機能が実現される。
【0214】
また、支持台128上には、外部からの信号(情報)を受信して制御部130に送る受信機132と、制御部130から受け取った信号(情報)を外部に送信する送信機134と、が固定されている。受信機132と送信機134とは、それぞれ、制御部130に接続されている。
【0215】
受信機132は、例えば、搬送システム2の制御ユニット12から送信される信号を受信して制御部130に送る。制御部130は、例えば、受信機132から受け取った信号に基づき、搬送車10の動作を制御する。また、制御部130は、例えば、通知用の信号を生成して送信機134に送る。送信機134は、例えば、制御部130から受け取った信号を搬送システム2の制御ユニット12(図8参照)に送信する。
【0216】
なお、搬送車10の各構成要素(昇降ユニット110、第1センサー122、第2センサー124、第3センサー126、制御部130、受信機132、送信機134等)は、給電用の配線を介してバッテリー96に接続されており、このバッテリー96から供給される電力によって動作する。
【0217】
図20(A)は、昇降ユニット110の構成例を示す平面図であり、図20(B)は、昇降ユニット110の構成例を示す側面図である。上述のように、昇降ユニット110は、複数の吊り下げ部材112の巻き取り及び送り出しを行う駆動機構114を備える。駆動機構114は、回転軸(出力シャフト)142aを有するモーター142を含む。
【0218】
モーター142は、回転軸142aを回転させることにより、吊り下げ部材112の巻き取り及び送り出しに用いられる動力を生成する。このモーター142を間に挟む2つの位置には、互いに概ね平行に配置された第1回転軸(第1シャフト)144aと第2回転軸(第2シャフト)144bとが設けられている。
【0219】
第1回転軸144aの一端側には、プーリー146が設けられている。モーター142の回転軸142aとプーリー146とには、ベルト、チェーン等の無端の連結部材148が架けられている。モーター142の回転軸142a、プーリー146、及び連結部材148によって動力伝達機構が構成され、モーター142と第1回転軸144aとが連結される。一方、第2回転軸144bの一端側には、モーター142との連結を実現するプーリー等が設けられていない。
【0220】
第1回転軸144aの他端側には、プーリー150aが設けられており、第2回転軸144bの他端側には、プーリー150aと同径のプーリー150bが設けられている。プーリー150aとプーリー150bとには、ベルト、チェーン等の無端の連結部材152が架けられている。プーリー150a、プーリー150b、及び連結部材152によって動力伝達機構が構成され、第1回転軸144aと第2回転軸144bとが連結される。
【0221】
第1回転軸144aの両端部には、それぞれ、吊り下げ部材112が巻き付けられる円柱状のリール154aが固定されている。また、各リール154aより外側(モーター142とは反対側)かつ各リール154aより下方の2つの位置には、それぞれ、吊り下げ部材112を支持する円柱状のローラー156aが回転できるように配置されている。各ローラー156aの回転軸は、第1回転軸144aに対して概ね平行である。
【0222】
一方、第2回転軸144bの両端部には、それぞれ、吊り下げ部材112が巻き付けられる円柱状のリール154bが固定されている。また、各リール154bより外側(モーター142とは反対側)かつ各リール154bより下方の2つの位置には、それぞれ、吊り下げ部材112を支持する円柱状のローラー156bが回転できるように配置されている。各ローラー156bの回転軸は、第2回転軸144bに対して概ね平行である。
【0223】
リール154a及びリール154bには、それぞれ、吊り下げ部材112の基端側が固定されている。リール154aに固定された吊り下げ部材112は、ローラー156aの外側の部分に接触した状態で、下方に垂れ下がる。また、リール154bに固定された吊り下げ部材112は、ローラー156bの外側の部分に接触した状態で、下方に垂れ下がる。
【0224】
なお、リール154aに固定された吊り下げ部材112は、図20(B)に示すように、リール154aの上側を通ってローラー156aに支持される。一方で、リール154bに固定された吊り下げ部材112は、リール154bの下側を通ってローラー156bに支持される。
【0225】
モーター142の回転軸142aを第1方向(図20(B)に矢印Cで示す方向)に回転させると、第1回転軸144aに固定されたリール154aが吊り下げ部材112を送り出す方向(図20(B)に矢印Cで示す方向)に回転する。これにより、吊り下げ部材112がリール154aからローラー156aを介して送り出される。
【0226】
また、第1回転軸144aのトルクが連結部材152によって第2回転軸144bに伝達され、第2回転軸144bに固定されたリール154bが吊り下げ部材112を送り出す方向(図20(B)に矢印Cで示す方向)に回転する。これにより、吊り下げ部材112がリール154bからローラー156bを介して送り出される。
【0227】
一方で、モーター142の回転軸142aを第1方向とは逆方向の第2方向(図20(B)に矢印Dで示す方向)に回転させると、第1回転軸144aに固定されたリール154aが吊り下げ部材112を巻き取る方向(図20(B)に矢印Dで示す方向)に回転する。これにより、吊り下げ部材112がローラー156aを介してリール154aに巻き取られる。
【0228】
また、第1回転軸144aのトルクが連結部材152によって第2回転軸144bに伝達され、第2回転軸144bに固定されたリール154bが吊り下げ部材112を巻き取る方向(図20(B)に矢印Dで示す方向)に回転する。これにより、吊り下げ部材112がローラー156bを介してリール154bに巻き取られる。
【0229】
駆動機構114から各吊り下げ部材112が送り出されると、吊り下げ部材112の先端側に接続された容器102が下降する。これにより、容器102を載置領域Aに載置できる(図18参照)。また、駆動機構114によって各吊り下げ部材112が巻き取られると、吊り下げ部材112の先端側に接続された容器102が上昇する。これにより、容器102を搬送車10の格納領域104に格納できる(図15(A)参照)。
【0230】
なお、上述の駆動機構114とは構造の異なる他の駆動機構が搭載された昇降ユニット110を用いることもできる。図21(A)は、昇降ユニット110の他の構成例を示す平面図であり、図21(B)は、昇降ユニット110の他の構成例を示す側面図である。図21(A)及び図21(B)に示す昇降ユニット110には、上述の駆動機構114の代わりに、駆動機構162が搭載されている。
【0231】
駆動機構162は、回転軸(出力シャフト)164aを備えるモーター164と、互いに概ね平行に配置された第1回転軸(第1シャフト)166a、第2回転軸(第2シャフト)166b、及び第3回転軸(第3シャフト)166cと、を含む。第1回転軸166aは、第2回転軸166bと第3回転軸166cとの間に配置される。
【0232】
モーター164は、例えば、第1回転軸166aと第2回転軸166bとの間に配置され、回転軸164aを回転させることにより、吊り下げ部材112の巻き取り及び送り出しに用いられる動力を生成する。ただし、モーター164は、第1回転軸166aと第3回転軸166cとの間に配置されても良い。
【0233】
第1回転軸166aの一端側には、プーリー168が設けられている。モーター164の回転軸164aとプーリー168とには、ベルト、チェーン等の無端の連結部材170が架けられている。モーター164の回転軸164a、プーリー168、及び連結部材170によって動力伝達機構が構成され、モーター164と第1回転軸166aとが連結される。
【0234】
第1回転軸166aには、吊り下げ部材112が巻き付けられる複数の円柱状のリール172が固定されている。具体的には、第1回転軸166aの両端部に、一対のリール172が固定されている。各リール172には、2本の吊り下げ部材112が固定され、同じ向きに巻き付けられる。
【0235】
図22(A)は、リール172を示す平面図であり、図22(B)は、リール172を示す側面図である。昇降ユニット110は、吊り下げ部材112をリール172に固定するための円柱状の固定部材174を備えており、2本の吊り下げ部材112は、この固定部材174によって、まとめてリール172に固定される。
【0236】
図22(B)に示すように、リール172の外周部の一部には、リール172の回転軸(つまり、第1回転軸166a)に沿う溝(凹部)172aが設けられている。溝172aの内面は、曲面状に形成されている。また、溝172aの両端は、リール172の回転軸方向の両端に達している。2本の吊り下げ部材112は、この溝172aに対して基端部が重なるように、同じ向きに配置される。
【0237】
固定部材174は、溝172aの内面の形状に対応する曲面状の外周面を有している。固定部材174は、溝172aに対して2本の吊り下げ部材112の基端部が重なるように配置された状態で、この2本の吊り下げ部材112の基端部を溝172aの内面に向かって押すように溝172aに嵌め込まれる。これにより、2本の吊り下げ部材112の基端部は、溝172aの内面と固定部材174の外周面とで挟まれ、リール172に固定される。
【0238】
なお、図22(A)に示すように、リール172の外周部には、リール172に固定された2本の吊り下げ部材112を、その幅方向で挟むように、一対の突起(凸部)172bが設けられている。一対の突起172bは、吊り下げ部材112の幅方向の位置のずれを防止するガイドとして機能する。このように構成されたリール172を回転させることで、2本の吊り下げ部材112を巻き取り、又は、2本の吊り下げ部材112を送り出すことができる。
【0239】
図21(A)及び図21(B)に示すように、リール172に固定された2本の吊り下げ部材112の一方は、第2回転軸166bに接触した状態で下方に垂れ下がる。また、リール172に固定された2本の吊り下げ部材112の他方は、第3回転軸166cに接触した状態で下方に垂れ下がる。
【0240】
第2回転軸166bと第3回転軸166cとは、それぞれ、外部から付与される力にしたがって容易に回転できる状態で支持されており、外周面が吊り下げ部材112に接触する。第2回転軸166bと第3回転軸166cとの吊り下げ部材112が接触する領域の両側には、吊り下げ部材112の幅方向の位置のずれを防止する一対のガイド176が設けられている。
【0241】
モーター164の回転軸164aを第1方向(図21(B)に矢印Eで示す方向)に回転させると、リール172が吊り下げ部材112を送り出す方向(図21(B)及び図22(B)に矢印Eで示す方向)に回転する。これにより、2本の吊り下げ部材112がリール172から第2回転軸166bと第3回転軸166cとを介して送り出され、その結果、吊り下げ部材112に接続された容器102が下降する。
【0242】
一方、モーター164の回転軸164aを第1方向とは逆方向の第2方向(図21(B)に矢印Fで示す方向)に回転させると、リール172が吊り下げ部材112を巻き取る方向(図21(B)及び図22(B)に矢印Fで示す方向)に回転する。これにより、2本の吊り下げ部材112が第2回転軸166bと第3回転軸166cとを介してリール172に巻き取られ、その結果、吊り下げ部材112に接続された容器102が上昇する。
【0243】
上述のように、図21(A)に示す駆動機構162は、第1回転軸166aに2つのリール172が固定されているとともに、2つのリール172のそれぞれに2本の吊り下げ部材112が固定されている。そのため、4本の吊り下げ部材112の送り出し及び巻き取りは、第1回転軸166aの回転によって制御される。これにより、駆動機構114を構成する部品の数を少なくして、搬送車10の軽量化、故障の可能性の低減、コストの削減を図ることができる。
【0244】
上述のような昇降ユニット110を用いることにより、被加工物ユニット17やトレー33が収容される容器102を、格納領域104と、この格納領域104よりも下方の載置領域Aと、の間で昇降させることができる。昇降ユニット110の細部は、容器102を適切に昇降できる範囲内で変更され得る。
【0245】
なお、第2回転軸166b及び第3回転軸166cは、回転しない状態で固定されていても良い。この場合には、吊り下げ部材112は、第2回転軸166b又は第3回転軸166cの外周面を滑るように移動しながら、リール172から送り出され、又はリール172に巻き取られる。
【0246】
図23は、カバー120を示す拡大斜視図である。カバー120は、格納領域104に格納された容器102の一側面(後部)に対して対向するように、車両フレーム82の下面側の後端部に配置されている。このカバー120は、車両フレーム82に対して回転できるように車両フレーム82に連結された蓋部182を含む。蓋部182は、容器102の開口102b(図24(B)参照)を覆うことができる形状及び大きさに形成されている。また、蓋部182の上部には、容器102の上面側と接触するように複数の接触部184が固定されている。
【0247】
格納領域104に向かって容器102が上昇すると、容器102の上面側が接触部184の下端部に接触して接触部184を押し上げる。これにより、容器102に対して近付く方向に蓋部182が移動(回転)し、容器102の開口102bが蓋部182によって覆われる。
【0248】
図24(A)は、格納領域104に容器102が格納されていない状態のカバー120を示す側面図であり、図24(B)は、格納領域104に容器102が格納された状態のカバー120を示す側面図である。車両フレーム82の下面には、固定ブロック186が固定されている。固定ブロック186には、車両フレーム82の幅方向(車幅方向)から見た形状がL字状の連結ブロック(L字ブロック)188が回転できる態様で連結される。
【0249】
連結ブロック188は、上方(車両フレーム82側)の連結部188aと、連結部188aより下方の固定部188bと、を含んでいる。連結部188aには、車両フレーム82の幅方向に貫通する貫通孔が設けられており、この貫通孔には、固定ブロック186に固定される連結軸190が挿入される。これにより、連結ブロック188は、連結軸190の周りに回転できる状態で固定ブロック186に連結される。
【0250】
固定部188bの格納領域104側(前側)には、蓋部182が固定される。なお、貫通孔に挿入される連結軸190は、車両フレーム82の幅方向に対して概ね平行なので、蓋部182は、連結ブロック188とともに車両フレーム82の幅方向に対して概ね垂直な面に沿って回転することになる。
【0251】
蓋部182は、連結ブロック188の固定部188bに固定された板状部材182aを備える。板状部材182aの格納領域104側(前側)の面には、柔軟部材182bが設けられている。柔軟部材182bは、容器102の開口102bの全体を覆うことができる形状及び大きさに形成されている。
【0252】
また、板状部材182aの格納領域104側(前側)には、接触部184が配置されている。接触部184は、例えば、柔軟部材182bより上方で板状部材182aに固定される固定部材184aと、固定部材184aの格納領域104側(前側)の部分に支持されるローラー184bと、を含んでいる。
【0253】
ローラー184bは、例えば、ゴム等の弾性部材によって形成され、車両フレーム82の幅方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転できるように固定部材184aに支持されている。また、ローラー184bの下端は、固定部材184aの下端より下方に位置付けられている。そのため、容器102の上面側がローラー184bに接触した状態では、蓋部182の回転に合わせてこのローラー184bも回転する。
【0254】
例えば、格納領域104に向かって容器102が上昇すると、容器102の上面側が接触部184のローラー184bに接触し、この接触部184を押し上げる。すると、カバー120は、連結軸190を中心に、その下端側が容器102に対して近付く方向(図24(B)に矢印Gで示す方向)に回転し、板状部材182aの格納領域104側(前側)の面が車両フレーム82の下面に対して概ね平行になる。そして、蓋部182の柔軟部材182bが容器102の一側面(後部)に接触し、開口102bを塞ぐ。
【0255】
なお、格納領域104に格納された容器102の開口102bが露出したままの場合には、容器102の収容部102aに塵等の異物が入り込む可能性がある。特に、搬送車10の走行中には、搬送路6と車輪88との摩擦で発生する静電気により、例えば、搬送路6が設置されるクリーンルーム内にごく僅かに存在する異物が搬送車10に引き寄せられて、収容部102aに入り込む可能性が高い。
【0256】
そこで、本実施形態では、格納領域104に容器102が格納されると、容器102の開口102bがカバー120によって覆われるようにして、搬送車10の走行中に容器102の収容部102aに異物が入り込まないようにしている。また、搬送車10の走行中に容器102が傾いたり振動したりしても、被加工物ユニット17やトレー33が容器102から飛び出ないようにしている。
【0257】
一方で、容器102を昇降ユニット110によって昇降させる間は、搬送路6と車輪88との摩擦で静電気が発生することはなく、また、搬送車10の移動によって異物が巻き上げられることもない。そのため、容器102の昇降中に容器102の開口102bが覆われていなくても、収容部102aに異物が入り込む可能性は低い。
【0258】
また、カバー120の開口102bに対応する領域には、柔軟部材182bが設けられている。柔軟部材182bは、例えば、容器102に収容された被加工物ユニット17等が衝突すると変形して、この被加工物ユニット17等に作用する衝撃を緩和する。すなわち、柔軟部材182bは、緩衝材として機能する。この柔軟部材182bにより、被加工物ユニット17に含まれる被加工物11等が破損し難くなる。
【0259】
柔軟部材182bの材質や構造等に制限はない。例えば、被加工物ユニット17の被加工物11等が破損しない程度に衝撃を緩和できる柔軟部材182bを用いると良い。より具体的には、柔軟部材182bとして、スポンジ、ゴム、綿、布等でなる部材や、発泡スチロール、気泡緩衝材等を用いることができる。
【0260】
特に、スポンジは、柔軟で変形し易いので、柔軟部材182bとしてスポンジを用いると、被加工物ユニット17等に作用する衝撃を効果的に緩和できる。また、柔軟部材182bとしてスポンジを用いると、容器102に側面の形状に沿って柔軟部材182bが適切に変形し、開口102bが確実に塞がれる。
【0261】
カバー120の各部分の重量は、図24(A)に示すように、格納領域104から容器102を下降させる際に、カバー120が自重によって、その下端部が格納領域104から離れる方向(図24(B)に矢印Gで示す方向とは反対の方向)に回転するように調整されている。よって、格納領域104に容器102が格納されていない状態では、板状部材182aの格納領域104側(前側)の面が車両フレーム82の下面に対して傾く。
【0262】
なお、カバー120の数及び配置に制限はない。例えば、車両フレーム82の後端部に加えて車両フレーム82の前端部にも、容器102の側面に接触するカバー120を設けることができる。この場合には、容器102が格納領域104に格納されると、容器102の2つの側面(前部及び後部)が一対のカバー120によって挟まれる。これにより、容器102の揺れ(振動)が抑制される。なお、この場合には、車両フレーム82の長さ方向(前後方向)における容器102の揺れ(振動)を特に抑制し易い。
【0263】
更に、車両フレーム82の前端部、後端部、及び両側端部に、それぞれカバー120が設けられても良い。この場合には、格納領域104に格納された容器102の4つの側面(前部、後部、両側部)が、それぞれカバー120と接触する。これにより、容器102の揺れ(振動)が抑制される。なお、この場合には、車両フレーム82の長さ方向(前後方向)及び幅方向における容器102の揺れ(振動)を特に抑制し易い。
【0264】
容器102の昇降時には、昇降ユニット110のモーター142等の回転が、制御部130によって制御される。図25(A)は、格納領域104に格納された容器102が載置領域Aに載置される際の搬送車10を示す側面図である。容器102を載置領域Aに載置する際には、駆動機構114から吊り下げ部材112が任意の速度で送り出されるように、モーター142の回転方向及び回転数が制御される。例えば、制御部130は、モーター142の回転数が維持されるように、モーター142の電流値を制御する。
【0265】
図25(B)は、容器102が下降する際のモーター142の電流値を示すグラフである。容器102が下降して載置領域Aに到達すると、容器102が載置領域Aで下側から支持される。その結果、モーター142の回転軸142aに作用する負荷が弱まり、モーター142の電流値が減少する。
【0266】
制御部130は、容器102が載置領域Aに載置された際のモーター142の電流値の変化に基づいて、モーター142の回転を停止させる。例えば、制御部130には、予め所定の閾値が記憶されており、制御部130は、この閾値とモーター142の電流値とを比較する。そして、モーター142の電流値が閾値以下である場合(又は閾値未満である場合)には、制御部130は、モーター142の回転を停止させる。これにより、載置領域Aへの容器102の載置が完了する。
【0267】
図26(A)は、載置領域Aに載置された容器102が格納領域104に格納される際の搬送車10を示す側面図である。容器102を格納領域104に格納する際には、吊り下げ部材112が駆動機構114によって任意の速度で巻き取られるように、モーター142の回転方向及び回転数が制御される。例えば、制御部130は、モーター142の回転数が維持されるように、モーター142の電流値を制御する。
【0268】
図26(B)は、容器102が上昇する際のモーター142の電流値を示すグラフである。容器102が上昇して格納領域104に到達すると、車両フレーム82の下面側に設けられた複数の接触部材116に容器102が押し付けられる。その結果、モーター142の回転軸142aに作用する負荷が強まり、モーター142の電流値が増加する。
【0269】
制御部130は、容器102が接触部材116と接触した際のモーター142の電流値の変化に基づいて、モーター142の回転を停止させる。例えば、制御部130には、予め所定の閾値が記憶されており、制御部130は、この閾値とモーター142の電流値とを比較する。そして、モーター142の電流値が閾値以上である場合(又は閾値を超える場合)には、制御部130は、モーター142の回転を停止させる。これにより、格納領域104への容器102の格納が完了する。
【0270】
上述のように、容器102を昇降させる際のモーター142の動作を、モーター142の電流値に基づいて制御する場合には、容器102を検知するためのセンサーを格納領域104や載置領域Aに設ける必要がない。これにより、搬送車10や載置領域A等の構造が簡略化される。また、搬送車10の重量も低減される。
【0271】
ただし、モーター142の制御方法に制限はない。例えば、車両フレーム82の下面側や載置領域Aの上面側には、容器102が配置されたことを検知するセンサー(押しボタン式のスイッチ等)が設けられても良い。この場合には、センサーによって容器102が検知されると、制御部130は、モーター142の回転を停止させる。なお、センサーによる検知と、モーター142の電流値による検知と、を併用することもできる。
【0272】
なお、載置領域Aに容器102が載置されたことを載置領域A側(例えば、ローダー・アンローダー8側)だけで検知する場合には、搬送システム2の制御ユニット12(図8参照)は、容器102が載置領域Aに載置されたことを載置領域A側から通知された後に、モーター142の回転を停止させるように搬送車10に指示を出す。そして、搬送車10の制御部130がモーター142の回転を停止させる。
【0273】
これに対して、上述のように、載置領域Aに容器102が載置されたことを搬送車10側で検知する場合には、搬送車10の制御部130は、搬送システム2の制御ユニット12からの指示を待つことなく、自らの判断でモーター142の回転を停止させる。これにより、容器102が載置領域Aに載置されてからモーター142の回転を停止させるまでのタイムラグを小さくできる。
【0274】
また、容器102の昇降速度は、必ずしも一定でなくて良い。例えば、容器102が載置領域Aに載置される直前や格納領域104に格納される直前に、モーター142の回転数を下げ、容器102を減速させても良い。これにより、載置領域Aや接触部材116に容器102が接触する際の衝撃を緩和できる。なお、この場合には、制御部130は、例えば、モーター142の回転量等に基づき容器102の高さを監視すれば良い。
【0275】
容器102が載置領域Aに載置されると、制御部130は、容器102の載置が完了した旨を通知するための信号を生成し、送信機134から搬送システム2の制御ユニット12に送信する。また、容器102が格納領域104に格納されると、制御部130は、容器102の格納が完了した旨を通知するための信号を生成し、送信機134から搬送システム2の制御ユニット12(図8参照)に送信する。なお、これらの信号は、加工装置4に送られても良い。
【0276】
本実施形態の搬送システム2は、加工装置4に連動して動作する。例えば、搬送車10は、搬送路6上の停車領域に停車して、被加工物ユニット17等が収容された容器102を、加工装置4の昇降台204の上面(載置領域A)に載置する。昇降台204に容器102が載置されると、搬送車10の制御部130は、その旨を通知するための信号を生成し、送信機134に発信させる。この信号は、送信機134から搬送システム2の制御ユニット12に送信される。
【0277】
制御ユニット12は、搬送車10の送信機134から送信された信号に基づいて、容器102から加工前の被加工物ユニット17等を搬出し、加工後の被加工物ユニット17等を容器102へと搬入する旨を加工装置4に指示するための信号を生成する。制御ユニット12からの信号を加工装置4の受信機248が受信し、この信号に基づく指示を制御装置246が受けると、制御装置246は、昇降台204の上面(載置領域A)に載置された容器102から加工前の被加工物ユニット17等を第1保持ユニット220に搬出させる。これにより、被加工物ユニット17等が一対のガイドレール212に引き出される。
【0278】
例えば、被加工物11の加工が開始されると、制御装置246は、昇降台204の高さを調整し、載置領域Aの下方に設けられている収容領域から加工後の被加工物ユニット17等を一対のガイドレール212に引き出す。そして、一対のガイドレール212上の加工後の被加工物ユニット17等を昇降台204上の容器102に収容する。
【0279】
加工後の被加工物ユニット17等が容器102に収容されると、加工装置4の制御装置246は、その旨を通知するための信号を生成し、送信機250から搬送システム2の制御ユニット12に送信する。制御ユニット12は、加工装置4の送信機250から送信された信号に基づいて、次の目的地へと向かう旨を搬送車10に指示するための信号を生成する。
【0280】
制御ユニット12からの信号を搬送車10の受信機132が受信し、この信号に基づく指示を制御部130が受けると、制御部130は、次の目的地へと向けて搬送車10を走行させる。このように、搬送システム2を利用することで、加工装置4は、加工前の被加工物ユニット17等を適時に受け取り、加工後の被加工物ユニット17等を適時に回収させることができる。
【0281】
図2図7等に示すように、搬送システム2を構成する搬送路6は、各加工装置4がそれぞれ備えるカバー244の天井244aの上面側や、ローダー・アンローダー8が備える筐体22の天井22aの上面側等に設置される。すなわち、搬送路6は、複数の加工装置4やローダー・アンローダー8等の間を接続するように、加工装置4やローダー・アンローダー8等の真上に配置されている。
【0282】
そのため、加工装置4の側面に設けられている配管接続部202cや扉244b等の構造に対して、搬送路6が干渉することはない。つまり、搬送路6を設計する際に、加工装置4の側面の構造を考慮する必要がなくなる。これにより、搬送システム2を容易に構築できる。また、工場の天井等に比べて低い場所に搬送路6が配置されるので、搬送路6の設置にかかる作業も容易になる。
【0283】
そして、例えば、複数の加工装置4等が既に設置されている環境で搬送路6を構築する場合には、工場の天井等に搬送路を設ける場合のように、加工装置4等を移動させて作業スペースを確保する必要がない。更に、既に設置されている加工装置4等が搬送路6の土台になるので、新たに土台を設ける場合等に比べて作業の工数も少なくなる。
【0284】
図27は、加工装置4に設置された搬送路6の一部を示す斜視図である。なお、ローダー・アンローダー8の上方に設置される搬送路6の構造等は、加工装置4の上方に設置される搬送路6の構造等と概ね同じである。複数の加工装置4の天井244aやローダー・アンローダー8の天井22a等には、ねじやボルト等により下段フレーム262が固定される。
【0285】
下段フレーム262は、例えば、アルミニウム等の金属を含む材料で形成された棒状のフレーム部材の複合体であり、例えば、隣接する加工装置4やローダー・アンローダー8との間を連結するような形状に組み上げられている。この下段フレーム262を、各加工装置4の天井244aやローダー・アンローダー8の天井22a等に対して固定することで、搬送路6の土台が形成される。
【0286】
なお、各加工装置4やローダー・アンローダー8等に対して下段フレーム262を固定する際には、下段フレーム262の上面が概ね水平になり、また、下段フレーム262の上面の高さが概ね等しくなるように、各加工装置4やローダー・アンローダー8等に対する下段フレーム262の高さが調整される。
【0287】
これにより、各加工装置4の天井244aやローダー・アンローダー8の天井22a等の高さが完全に等しくない場合でも、水平に、且つ、同じ高さに搬送路6を形成できるようになる。加工装置4やローダー・アンローダー8等に対して下段フレーム262の高さを調整する方法に制限はないが、例えば、各加工装置4の天井244aやローダー・アンローダー8の天井22a等と、下段フレーム262の下面と、の間に高さ調整用の部材を配置する方法を用いることができる。
【0288】
もちろん、加工装置4やローダー・アンローダー8の高さを調整しても良い。例えば、加工装置4やローダー・アンローダー8の下端部(脚部)には、高さ調整用の調整機構が設けられている。よって、この調整機構を用いて加工装置4やローダー・アンローダー8の高さを調整し、各加工装置4の天井244aやローダー・アンローダー8の天井22a等の高さを等しくすれば、搬送路6の土台に適した下段フレーム262を実現できる。
【0289】
下段フレーム262の上面側には、ねじやボルト等により上段フレーム264が固定される。上段フレーム264は、例えば、アルミニウム等の金属を含む材料で構成された棒状のフレーム部材の複合体であり、搬送路6を適切に固定できるように、搬送路6の配置等に合わせた形状に組み上げられている。
【0290】
上段フレーム264の上方には、搬送路6が設けられる。搬送路6は、例えば、平板状の複数の路面パネル266を水平な方向に並べることによって形成される。このように、複数の路面パネル266を組み合わせて搬送路6を形成することで、複数の加工装置4やローダー・アンローダー8の配置等に応じた様々な搬送路6が容易に実現される。
【0291】
路面パネル266は、例えば、ポリアミドやポリカーボネート、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)等の軽量で強度の高い材料を用いて平面視で矩形状に形成され、搬送車10の走行に適した平坦な上面を有している。また、路面パネル266の端部には、この路面パネル266を上下に貫通する貫通孔が形成されている。
【0292】
一方で、上段フレーム264の上面側には、ねじ268の径に対応する径を持つねじ孔(不図示)が、路面パネル266の貫通孔に対応する位置に開口している。よって、路面パネル266を上段フレーム264の上面側に配置した上で、その貫通孔(不図示)を通じて上段フレーム264のねじ孔にねじ268を締め込めば、路面パネル266を上段フレーム264に固定できる。
【0293】
下段フレーム262は、例えば、それぞれが複数の棒状のフレーム部材を含む複数の下段フレームユニット270を組み合わせることにより形成される。同様に、上段フレーム264は、例えば、それぞれが複数の棒状のフレーム部材を含む複数の上段フレームユニット272を組み合わせることにより形成される。
【0294】
このように、複数の下段フレームユニット270を用いて下段フレーム262を形成し、複数の上段フレームユニット272を用いて上段フレーム264を形成する場合には、加工装置4が設置される工場等に対して、下段フレームユニット270及び上段フレームユニット272の形態でフレーム部材が運び込まれる。
【0295】
つまり、安定した環境で生産される高品質な下段フレームユニット270及び上段フレームユニット272を用いて、高品質な下段フレーム262及び上段フレーム264が形成される。また、棒状のフレーム部材を加工装置4の上方で連結する場合のような煩雑な作業も発生しない。よって、高品質な搬送路6を短期間で形成することができる。
【0296】
図28(A)は、下段フレーム262を構成する下段フレームユニット270aを示す斜視図であり、図28(B)は、下段フレーム262を構成する下段フレームユニット270bを示す斜視図である。下段フレームユニット270aと下段フレームユニット270bとは、例えば、搬送路6の態様に合わせて選択的に用いられる。
【0297】
図29は、下段フレーム262を構成する下段フレームユニット270の配置を示す平面図である。図29では、合計で8台の装置(加工装置4やローダー・アンローダー8等)の間で被加工物ユニット17やトレー33を搬送できる搬送路6を形成する場合を示している。例えば、搬送路6の角部を除いた部分に対応する領域(搬送路6の直線状の領域)には、下段フレームユニット270aが使用され、搬送路6の角部に対応する領域には、下段フレームユニット270bが使用される。
【0298】
なお、図29の下段フレーム262には、下段フレームユニット270aを反転させた構造の下段フレームユニット270cと、下段フレームユニット270bを反転させた構造の下段フレームユニット270dと、が併せて使用される。つまり、図29の下段フレーム262には、4種類の下段フレームユニット270が、それぞれ、2つずつ使用される。各下段フレームユニット270は、搬送路6に形成される開口282(図32参照、図9の開口6aに相当)に対して棒状のフレーム部材が重ならないように構成されている。
【0299】
下段フレーム262を形成する際には、例えば、下段フレームユニット270を加工装置4やローダー・アンローダー8等に固定してから、隣接する下段フレームユニット270を互いに連結すると良い。隣接する下段フレームユニット270の連結には、例えば、継手が用いられる。ただし、下段フレームユニット270を連結した上で、加工装置4やローダー・アンローダー8等に固定することもできる。
【0300】
図30(A)は、上段フレーム264を構成する上段フレームユニット272aを示す斜視図であり、図30(B)は、上段フレーム264を構成する上段フレームユニット272bを示す斜視図である。上段フレームユニット272aと上段フレームユニット272bとは、例えば、搬送路6の態様に合わせて選択的に用いられる。
【0301】
図31は、上段フレーム264を構成する上段フレームユニット272の配置を示す平面図である。図31では、図29の下段フレーム262を用いて搬送路6を構成する場合を示している。例えば、隣接する加工装置4やローダー・アンローダー8等を繋ぐ領域の一部には、上段フレームユニット272aが使用され、加工装置4やローダー・アンローダー8の直上の領域には、上段フレームユニット272bが使用される。
【0302】
つまり、図31の上段フレーム264には、2つの上段フレームユニット272aと、8つの上段フレームユニット272bと、が使用される。各上段フレームユニット272は、搬送路6に形成される開口282(図32参照)に対して棒状のフレーム部材が重ならないように構成されている。
【0303】
上段フレーム264を形成する際には、例えば、下段フレーム262に対して、上段フレームユニット272を固定する。なお、隣接する2つの上段フレームユニット272は、互いに連結されておらず、離れていても良い。また、必要に応じて、上段フレームユニット272aを反転させた構造の上段フレームユニット272や、上段フレームユニット272bを反転させた構造の上段フレームユニット272を使用することもできる。
【0304】
図32は、複数の路面パネル266を並べて構成される搬送路6を模式的に示す平面図である。図32では、図29の下段フレーム262及び図31の上段フレーム264を用いて搬送路6を構成する場合を示している。また、図32では、隣接する路面パネル266の境界を破線で示している。
【0305】
搬送路6を形成する際には、例えば、上段フレーム264に対して、路面パネル266を固定する。なお、図31の上段フレーム264では、例えば、隣接する上段フレームユニット272aと上段フレームユニット272bとの間に小さな隙間が形成され、隣接する2つの上段フレームユニット272bの間に大きな隙間が形成される。よって、平面視で矩形状の路面パネル266だけでは、この隙間に対応する部分に搬送路6を形成できない。つまり、搬送路6にも、隙間が形成されてしまう。
【0306】
そこで、これらの隙間を埋めるように、平板状の橋渡しパネル274aと平板状の橋渡しパネル274bとが使用される。隣接する上段フレームユニット272aと上段フレームユニット272bとの間の小さな隙間には、小さな橋渡しパネル274aが配置される。隣接する2つの上段フレームユニット272bの間の大きな隙間には、大きな橋渡しパネル274bが配置される。
【0307】
橋渡しパネル274aや橋渡しパネル274bは、例えば、搬送路6に形成される隙間や段差を十分に小さくするように、上段フレーム264に固定される。これにより、走行中の搬送車10への衝撃を小さく抑えて、被加工物11等の破損を防ぐことができる。なお、搬送路6に小さな隙間が残る場合には、例えば、搬送車10が進行する方向に沿う心材を備えたテープ等を用いて、この隙間を塞ぐと良い。
【0308】
また、橋渡しパネル274aや橋渡しパネル274bの代わりに、搬送車10が進行する方向の両端部にスロープが形成された橋渡しパネルを用いても良い。この場合には、例えば、橋渡しパネルを路面パネル266の上方に重ねて使用できるので、橋渡しパネルの大きさに対する要求が緩和される。これにより、橋渡しパネルの汎用性が高まる。なお、可撓性を有する薄板状の橋渡しパネルを用いて隣接する路面パネル266を繋ぐこともできる。
【0309】
このように構成される搬送路6を搬送車10が走行すると、例えば、搬送車10の車輪86等と、搬送路6と、の摩擦により静電気が生じ、搬送車10の容器102に収容された被加工物11等に悪影響が及ぶことがある。例えば、被加工物11に半導体デバイスが形成されている場合には、この半導体デバイスが静電気によって破壊されるおそれがある。
【0310】
そこで、搬送路6となる路面パネル266の上面の車輪86等が接触する部分には、導電性部材を露出させておくことが好ましい。導電性部材としては、例えば、アルミニウムや銅等の金属の他に、CFRP等が用いられる。なお、路面パネル266がCFRPで構成されている場合には、その上面にもCFRPが露出する。つまり、路面パネル266の上面に導電性部材が露出した状態が実現される。
【0311】
このように、路面パネル266の上面に導電性部材を露出させておくことで、摩擦による静電気の発生と、その蓄積と、を抑制して、被加工物11等に悪影響が及ぶのを防ぐことができる。なお、路面パネル266の上面に露出した導電性部材は、導線(不図示)等を介して接地されても良い。この場合には、車輪86等と路面パネル266との接触により生じた静電気が導線を通じて放電するので、路面パネル266に蓄積しない。よって、被加工物11等は、搬送車10によって、より安全に搬送される。
【0312】
本実施形態の搬送システム2では、原則として、搬送路6の端部に搬送車10が到達しないように、搬送車10の動作が制御される。しかしながら、搬送車10や制御ユニット12等に何らかのトラブルが発生した場合には、搬送路6の端部に搬送車10が到達し、この搬送路6の端部から搬送車10が落下する可能性もある。
【0313】
そこで、搬送路6の端部には、図27に示すように、搬送路6からの搬送車10の落下を防止するための障壁となるガード部276を設けることが望ましい。このガード部276は、例えば、アルミニウム等の金属を含む材料で形成され、上段フレーム264や路面パネル266に固定される。路面パネル266の上面からガード部276の上端までの高さは、例えば、搬送車10の車輪86の半径より大きくなっている。好ましくは、車輪86の直径より大きくなっている。
【0314】
なお、このガード部276は、搬送車10の第3センサー126や外装カバーに接触する高さに形成されても良い。この場合には、搬送車10の第3センサー126や外装カバーにガード部276が接触すると、搬送車10は障害物との衝突を検知して停車する。そのため、より安全に搬送車10を走行させることができる。
【0315】
図32に示すように、搬送路6は、主に搬送車10の走行に使用される走行領域278と、主に搬送車10の停車に使用される停車領域280と、主に搬送車10の待機に使用される待機領域284とを含む。停車領域280に停車した搬送車10と、停車領域280の下方に位置する加工装置4やローダー・アンローダー8等と、の間で被加工物ユニット17やトレー33が搬送される。
【0316】
走行領域278は、例えば、加工装置4やローダー・アンローダー8等の配置に沿う環状に形成される。搬送車10は、例えば、この環状の走行領域278に沿う一方の向きに走行し、他方の向きには走行しない(つまり、一方通行)。これにより、搬送車10を簡単な制御で安全に走行させることができる。
【0317】
ただし、走行領域278の形状、搬送車10の走行の態様等に制限はない。例えば、走行領域278は、搬送車10の双方向への走行を許容するように構成されることがある。また、走行領域278は、終端のない環状に形成されている必要はなく、例えば、終端を持つ直線状に形成されても良い。
【0318】
一方で、停車領域280には、路面パネル266を上下に貫通する開口282が設けられている。開口282は、例えば、容器102の上面及び下面より僅かに大きく形成されており、容器102の上下への通過を許容する。一方で、搬送車10が停車領域280に進入する際の進入の方向に対して垂直な方向での開口282の幅は、搬送車10の一対の車輪86の間隔よりも狭くなっている。これにより、搬送車10が停車領域280に進入する際の進入の方向が適切な場合には、車輪86は開口282に脱落しない。
【0319】
待機領域284は、例えば、搬送車10を待機させる可能性の高い領域に配置される。待機領域284に搬送車10を待機させることで、他の搬送車10は、待機中の搬送車10を追い越すことができる。また、搬送車10の双方向への走行が許容されている場合には、この待機領域284で一時的に搬送車10を待機させることで、2台の搬送車10を行き違わせることができる。なお、搬送路6は、必ずしも待機領域284を含まなくて良い。
【0320】
搬送路6を構成する路面パネル266、橋渡しパネル274a、橋渡しパネル274b等の上面には、搬送車10が備えるセンサーによって検出される複数の種類の誘導用のマーク286(図27参照)が設けられている。搬送車10は、センサーによって検出される各種のマーク286に基づいて、走行、旋回、停車等の制御を行う。
【0321】
図27に示すように、マーク286は、例えば、路面パネル266等の上面の他の領域とは異なる色彩を持つ直線状に構成される。本実施形態では、このマーク286として、図32に示すように、第1マーク286a、第2マーク286b、第3マーク286c、及び第4マーク286dが使用される。
【0322】
ただし、マーク286の態様に制限はない。マーク286は、例えば、曲線を含んでも良いし、破線によって構成されても良い。また、マーク286として、文字、数字、図柄等を用いることもできる。更に、マーク286の色彩等にも制限はない。例えば、異なる色彩の複数のマーク286を用いるとともに、このマーク286の色彩に基づき各種の制御を行うように搬送車10を構成しても良い。
【0323】
走行領域278には、搬送車10が進行する方向に沿う第1マーク286aが設けられている。第1マーク286aは、例えば、走行領域278を走行する搬送車10が通過すべき領域に形成される。より具体的には、第1マーク286aは、走行領域278を走行する搬送車10の一対の第1センサー122の直下に設けられる。
【0324】
図33は、搬送車10の制御部130を示す機能ブロック図である。図33に示すように、搬送車10の制御部130は、一対の第1センサー122のそれぞれに走行領域278等(搬送路6)の上面を監視させて第1マーク286aを検出させる第1センサー制御部130aと、第1センサー122によって検出された第1マーク286aが示す向きを特定し、その向きに沿って搬送車10を走行させる走行指示部130bとを含む。
【0325】
一対の第1センサー122はそれぞれ、第1センサー制御部130aから入力される制御用の信号に従い、第1マーク286aを検出する。第1センサー122によって検出された第1マーク286aに関する情報は、第1センサー制御部130aを介して走行指示部130bへと送られる。
【0326】
走行指示部130bは、第1センサー制御部130aから送られた第1マーク286aの情報に基づいて、第1マーク286aが示す向きを特定する。そして、走行指示部130bは、駆動ユニット90を制御して、特定された向きに沿って搬送車10を走行させる。つまり、搬送車10は、一対の第1センサー122で第1マーク286aを検出し、この第1マーク286aに沿って搬送路6上を走行できる。
【0327】
図32に示すように、走行領域278の所定の部分では、2つの直線状の第1マーク286aが交差している。搬送車10は、一方の第1マーク286aに沿って進行する間に、この一方の第1マーク286aと交差する他方の第1マーク286aを第2センサー124で検出する。第2センサー124で他方の第1マーク286aが検出されると、搬送車10は、必要に応じて旋回する。
【0328】
つまり、2つの直線状の第1マーク286aが交差する任意の交差点で搬送車10の進行する方向が変更される。このように、第2センサー124で検出される上述した他方の第1マーク286aの一部は、搬送車10が旋回する位置を示す第2マーク286bとして機能する。なお、搬送路6には、2つの第1マーク286aが交差する交差点の数に対応する数の第2マーク286bが存在する。つまり、図32の搬送路6には、複数の第2マーク286bが存在している。
【0329】
図33に示すように、搬送車10の制御部130は、第2センサー124に走行領域278等(搬送路6)の上面を監視させて第2マーク286bを検出させる第2センサー制御部130cと、第2センサー124によって検出された第2マーク286bの数をカウントし、カウントされた第2マーク286bの数に基づいて搬送車10を旋回させる旋回指示部130dとを含む。
【0330】
第2センサー124は、第2センサー制御部130cから入力される制御用の信号に従い、第2マーク286bを検出する。そして、第2センサー制御部130cは、例えば、第2センサー124が第2マーク286bを検出する度に、その旨を制御部130の旋回指示部130dに通知する。
【0331】
旋回指示部130dは、第2センサー制御部130cからの通知に基づいて、第2センサー124で検出された第2マーク286bの数をカウントし、例えば、搬送システム2の制御ユニット12からの指示に対応する第2マーク286bの数(所定の数)と比較する。そして、第2センサー124により検出された第2マーク286bの数が制御ユニット12からの指示に対応する第2マーク286bの数に達すると、旋回指示部130dは、駆動ユニット90を制御して、搬送車10を旋回させる。
【0332】
つまり、旋回指示部130dは、検出された第2マーク286bの数に応じて搬送車10の向きを変更する。このように、搬送車10は、第2センサー124で第2マーク286bを検出し、必要に応じて向きを変更できる。なお、第2マーク286bは、例えば、走行領域278の角の部分(搬送路6の角部)や、走行領域278の停車領域280に隣接する部分、走行領域278の待機領域284に隣接する部分等に設けられる。
【0333】
ところで、一対の車輪86を通る直線上に一対の第2センサー124が配置されている場合には、第2マーク286bを車輪86が通過するのと同時に、この第2マーク286bを一対の第2センサー124によって検出できる。したがって、第2マーク286bが検出されるタイミングで搬送車10を旋回させることで、旋回後に検出すべき第1マーク286aから一対の第1センサー122が大きくずれてしまうことはなくなる。つまり、何らの補正を行わなくとも、搬送車10を適切に旋回させることができるようになる。
【0334】
図32に示すように、停車領域280には、搬送車10が進入する方向に沿う第3マーク286cが設けられている。すなわち、第3マーク286cは、停車領域280に対して搬送車10が進入する向きを示している。この第3マーク286cは、例えば、搬送車10の進入する方向に対して垂直な方向で開口282を挟む2つの位置に形成され、搬送車10の第2センサー124により検出される。
【0335】
図33に示すように、搬送車10の制御部130は、第2センサー124によって検出された第3マーク286cが示す向きに沿って搬送車10を停車領域280に進入させる進入制御部130eを含む。進入制御部130eは第2センサー制御部130cに接続されている。
【0336】
第2センサー制御部130cは、第2センサー124に停車領域280等(搬送路6)の上面を監視させて第3マーク286cを検出させる。第2センサー124によって検出された第3マーク286cに関する情報は、第2センサー制御部130cを介して進入制御部130eへと送られる。
【0337】
進入制御部130eは、第2センサー制御部130cから入力された第3マーク286cの情報に基づいて、第3マーク286cが示す向きを特定する。そして、進入制御部130eは、駆動ユニット90を制御して、特定された向きに沿って搬送車10を停車領域280に進入させる。第3マーク286cは、代表的には、搬送車10の車輪86が通るべき領域に設けられる。ただし、第3マーク286cの配置等に制限はない。
【0338】
図32に示すように、停車領域280(又は待機領域284)に対して搬送車10が進入する方向において停車領域280(又は待機領域284)の後側(手前側)には、第1マーク286aや第3マーク286cに対して交差する第4マーク286dが設けられている。この第4マーク286dは、停車領域280(又は待機領域284)の位置を示す。
【0339】
図33に示すように、搬送車10の制御部130は、搬送車10の進行する方向の後側に位置する第1センサー122(一対の第1センサー122の一方)によって第4マーク286dが検出されたときに搬送車10を停車させる停車制御部130fを含む。停車制御部130fは、第1センサー制御部130aに接続されている。
【0340】
第1センサー制御部130aは、第1センサー122に走行領域278や停車領域280等(搬送路6)の上面を監視させて第1センサー122に第4マーク286dを検出させる。第1センサー122によって第4マーク286dが検出されると、その旨が第1センサー制御部130aを介して停車制御部130fへと通知される。
【0341】
停車制御部130fは、第1センサー制御部130aから第4マーク286dが検出された旨が通知されると、駆動ユニット90を制御して、搬送車10を迅速に停止させる。つまり、搬送車10は、例えば、後側の第1センサー122で第4マーク286dを検出すると、直ちに停車する。
【0342】
なお、この第4マーク286dは、停車領域280(又は待機領域284)に対して搬送車10が進入する方向において停車領域280(又は待機領域284)の前側(奥側)に設けられても良い。この場合には、搬送車10は、前側の第1センサー122で第4マーク286dを検出すると、直ちに停車することになる。
【0343】
なお、第4マーク286dは、第2センサー124によって検出できる位置に設けられていても良い。この場合、図33に示す停車制御部130fは、第2センサー制御部130cに接続される。そして、停車制御部130fは、第2センサー制御部130cによって制御された第2センサー124が第4マーク286dを検出すると、駆動ユニット90を制御して、搬送車10を停車させる。
【0344】
また、停車制御部130fは、第1センサー122又は第2センサー124により第4マーク286dが検出されてから所定の時間が経過した後に、搬送車10を停車させても良い。第4マーク286dの検出から搬送車10の停車までの時間は、例えば、第4マーク286dと停車領域280との距離や、搬送車10が走行する速度等に基づいて調整される。
【0345】
図32に示すように、搬送車10が進入する方向において停車領域280及び待機領域284の前側(奥側)の位置には、電源(不図示)に接続された給電用の端子(給電端子)288が配置されている。例えば、停車領域280や待機領域284に搬送車10を停車させて、搬送車10の端子(受電端子)100を端子288に接触させれば、端子100及び充電用の配線(充電配線)98を介して、バッテリー(二次電池)96に充電用の電力が供給される。つまり、バッテリー96を充電できる。
【0346】
図27に示すように、端子288は、路面パネル266又は上段フレーム264に固定された端子支持部290によって支持されており、給電用の配線(給電配線)292に接続されている。つまり、この端子288は、給電用の配線292を介して電源に接続されている。
【0347】
端子支持部290は、例えば、停車領域280又は待機領域284に向けて端子288を付勢する付勢部材(不図示)を備えている。付勢部材によって端子288を付勢することで、端子100に対して端子288を適切に接続できる。ただし、端子288や端子支持部290の構造等に制限はない。
【0348】
例えば、停車領域280で搬送車10が停車した後には、昇降ユニット110によって容器102が昇降される。本実施形態では、停車領域280に給電用の端子288が配置されているので、容器102を昇降させる際にもバッテリー96が充電される。よって、容器102を昇降させる際に昇降ユニット110で消費される大量の電力を十分に賄うことができる。
【0349】
なお、本実施形態では、待機領域284にも端子288が配置されている。よって、例えば、搬送車10を待機領域284で待機させる際にも、バッテリー96が充電される。これにより、搬送車10の稼働できる時間を延ばして、被加工物11やボード31の搬送にかかる効率を高めることができる。
【0350】
搬送路6上のある位置(出発地)から別の位置(目的地)まで搬送車10を移動させる際の動作は、例えば、次の通りである。まず、搬送システム2の制御ユニット12は、移動の対象となる搬送車10に対して、出発地から目的地に移動する旨の指示に相当する信号を送る。
【0351】
制御ユニット12の指示を受けた搬送車10の制御部130は、まず、自身の現在の位置を出発地として目的地までの経路を決定し、この経路に沿って、出発地から搬送車10が旋回すべき各位置までの間に存在する第2マーク286bの数と、旋回すべき各位置での旋回の方向と、を求める。そして、搬送車10の制御部130は、自身が求めた第2マーク286bの数及び旋回の方向に基づいて、駆動ユニット90等を制御する。
【0352】
例えば、搬送車10の制御部130は、第1センサー122及び第2センサー124で搬送路6の上面を監視しながら、搬送車10を走行させる。つまり、制御部130は、第1センサー122によって検出される第1マーク286aの示す方向に沿って搬送車10を走行させながら、第2センサー124が通過する第2マーク286bを、この第2センサー124に検出させる。
【0353】
制御部130は、第2センサー124が通過した第2マーク286bの数が、自身の求めた第2マーク286bの数に達すると、搬送車10を自身の求めた旋回の方向に旋回させる。その後、制御部130は、第1マーク286aの示す方向に沿って搬送車10を再び走行させる。搬送車10が目的地に到着すると、制御部130は、その旨を通知するための信号を制御ユニット12に送る。
【0354】
なお、停車領域280に搬送車10を進入させる際には、制御部130は、第3マーク286cを第2センサー124に検出させて、搬送車10が進行する方向を細やかに調整する。これにより、搬送車10の車輪86が開口282に脱落することを防止できる。この際には、第1マーク286aの示す方向に沿って搬送車10を走行させる時に比べて、走行にかかる速度を低く抑えると良い。その後、制御部130は、第4マーク286dを第1センサー122に検出させて、搬送車10を停車領域280に停車させる。
【0355】
搬送車10は、原則として、進行する方向の前方に車輪86が位置し、進行する方向の後方に車輪88が位置するように走行する。ただし、停車領域280や待機領域284から走行領域278へと移動する際には、搬送車10は、進行する方向の後方に車輪86が位置し、進行する方向の前方に車輪88が位置するように走行することになる。
【0356】
搬送車10が停車領域280に停車すると、容器102が開口282の直上に位置付けられる。また、搬送路6側の端子288に対して搬送車10側の端子100が接触する。これにより、搬送車10は、バッテリー96を充電しながら容器102を降下させて、開口282の下方に位置する載置領域Aに容器102を載せることができる。
【0357】
なお、上述した動作の態様では、第2マーク286bの数や旋回の方向を制御部130が求めているが、制御部130による判断を最小限に留めるようにしても良い。この場合には、例えば、出発地から搬送車10が旋回すべき各位置までの間に存在する第2マーク286bの数と、旋回すべき各位置での旋回の方向に関する情報と、を含む信号が制御ユニット12から送られる。この動作では、第2マーク286bの数や旋回の方向を制御部130が求めなくて良いので、制御部130を簡略化できる。
【0358】
次に、本実施形態にかかる搬送システム2の制御方法の例を説明する。図34は、搬送システム2の制御方法の例を説明するための図である。例えば、加工装置4の制御装置246は、加工前の被加工物11等が新たに必要な状況になると、その旨を通知するための信号(被加工物等要求信号)を生成する。制御装置246で生成された信号(被加工物等要求信号)は、送信機250から制御ユニット12へと送信される。
【0359】
図34に示すように、制御ユニット12は、各種の制御を行うための信号を生成する制御部(信号生成部)302を備えている。この制御部302は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部302の機能が実現される。
【0360】
制御部302には、加工装置4、ローダー・アンローダー8、搬送車10等から送信される信号を受信する受信機304と、加工装置4、ローダー・アンローダー8、搬送車10等に対して信号を送信する送信機306とが接続されている。
【0361】
制御ユニット12の受信機304は、加工装置4の送信機250から送信された通知用の信号(被加工物等要求信号)を受信すると、これを制御部302へと送る。制御部302は、加工装置4からの通知用の信号(被加工物等要求信号)を確認すると、任意の搬送車10に対して、ローダー・アンローダー8の直上の停車領域280に移動し、容器102をローダー・アンローダー8の載置台66の上面(第2載置領域A)に載せるように指示を出す。具体的には、制御部302は、この指示に相当する制御用の信号(第1載置指示信号)を生成し、送信機306から搬送車10へと送信する。
【0362】
搬送車10の受信機132は、制御ユニット12からの信号(第1載置指示信号)を受信すると、これを制御部130へと送る。制御部130は、この信号(第1載置指示信号)に基づき駆動ユニット90等を制御し、搬送車10を搬送路6に沿って走行させる。搬送車10がローダー・アンローダー8の直上の停車領域280で停車すると、容器102が開口282の直上に位置付けられる。
【0363】
搬送車10を停車領域280に停車させた状態で、制御部130は、昇降ユニット110を制御して、吊り下げ部材112を送り出す。これにより、開口282等を通過するように容器102を下降させて、載置台66の上面に容器102を載せることができる。
【0364】
載置台66の上面に容器102を載せた後には、制御部130は、載置台66の上面への容器102の載置が完了した旨を通知するための通知用の信号(第1載置完了信号)を生成する。制御部130で生成された信号(第1載置完了信号)は、送信機134から制御ユニット12へと送信される。
【0365】
制御ユニット12の受信機304は、搬送車10の送信機134から送信された信号(第1載置完了信号)を受信すると、これを制御部302へと送る。制御部302は、搬送車10からの信号(第1載置完了信号)を確認すると、ローダー・アンローダー8に対して、載置台66の上面への容器102の載置が完了した旨を通知する。具体的には、制御部302は、載置台66の上面への容器102の載置が完了した旨を通知するための通知用の信号(第2載置完了信号)を生成し、送信機306からローダー・アンローダー8へと送信する。
【0366】
ローダー・アンローダー8の受信機68は、制御ユニット12からの信号(第2載置完了信号)を受信すると、これを制御装置46へと送る。制御装置46は、この信号(第2載置完了信号)を受け取ると、各構成要素の動作を制御して加工前の被加工物11等を容器102に搬入する。なお、容器102に加工後の被加工物11等が収容されている場合には、加工後の被加工物11等を容器102から搬出した後に、加工前の被加工物11等を容器102に搬入する。
【0367】
加工前の被加工物11等が容器102に搬入されると、制御装置46は、容器102への被加工物11等の搬入が完了した旨を通知するための通知用の信号(第1搬送完了信号)を生成する。制御装置46で生成された信号(第1搬送完了信号)は、送信機70から制御ユニット12へと送信される。
【0368】
制御ユニット12の受信機304は、ローダー・アンローダー8の送信機70から送信された信号(第1搬送完了信号)を受信すると、これを制御部302へと送る。制御部302は、ローダー・アンローダー8からの信号(第1搬送完了信号)を確認すると、搬送車10に対して、加工装置4の直上の停車領域280に移動し、容器102を加工装置4の昇降台204の上面(載置領域A)に載せるように指示を出す。具体的には、制御部302は、この指示に相当する制御用の信号(第2載置指示信号)を生成し、送信機306から搬送車10へと送信する。
【0369】
搬送車10の受信機132は、制御ユニット12からの信号(第2載置指示信号)を受信すると、これを制御部130へと送る。制御部130は、この信号(第2載置指示信号)に基づき昇降ユニット110を制御し、吊り下げ部材112を巻き取る。これにより、開口282等を通過するように容器102を上昇させて、格納領域104に格納できる。その後、制御部130は、駆動ユニット90等を制御して、搬送車10を搬送路6に沿って走行させる。
【0370】
搬送車10が加工装置4の直上の停車領域280で停車すると、容器102が開口282の直上に位置付けられる。搬送車10を停車領域280に停車させた状態で、制御部130は、昇降ユニット110を制御して、吊り下げ部材112を送り出す。これにより、開口282等を通過するように容器102を下降させて、加工装置4の昇降台204の上面に容器102を載せることができる。
【0371】
昇降台204の上面に容器102を載せた後には、制御部130は、昇降台204の上面への容器102の載置が完了した旨を通知するための通知用の信号(第3載置完了信号)を生成する。制御部130で生成された信号(第3載置完了信号)は、送信機134から制御ユニット12へと送信される。
【0372】
制御ユニット12の受信機304は、搬送車10の送信機134から送信された信号(第3載置完了信号)を受信すると、これを制御部302へと送る。制御部302は、搬送車10からの信号(第3載置完了信号)を確認すると、加工装置4に対して、昇降台204の上面への容器102の載置が完了した旨を通知する。具体的には、制御部302は、載置台66の上面への容器102の載置が完了した旨を通知するための通知用の信号(第4載置完了信号)を生成し、送信機306から加工装置4へと送信する。
【0373】
加工装置4の受信機248は、制御ユニット12からの信号(第4載置完了信号)を受信すると、これを制御装置246へと送る。制御装置246は、この信号(第4載置完了信号)を受け取ると、各構成要素の動作を制御して加工前の被加工物11等を容器102から搬出する。なお、加工装置4内に加工後の被加工物11等が存在する場合には、加工前の被加工物11等を容器102から搬出した後に、加工後の被加工物11等を容器102に搬入する。
【0374】
加工前の被加工物11等が容器102から搬出されると、例えば、制御装置246は、容器102からの被加工物11等の搬出が完了した旨を通知するための通知用の信号(第2搬送完了信号)を生成する。制御装置246で生成された信号(第2搬送完了信号)は、送信機250から制御ユニット12へと送信される。
【0375】
このような手順により、ローダー・アンローダー8に収容されている加工前の被加工物11等を任意の加工装置4に対して搬送できる。なお、ここでは、ローダー・アンローダー8から加工装置4に対して被加工物11等を搬送する際の手順について主に説明したが、加工装置4からローダー・アンローダー8に対して被加工物11等を搬送する際の手順等も同様である。
【0376】
なお、上述した手順は、被加工物11等を適切に搬送できる範囲内で任意に変更できる。例えば、上述した手順に含まれている複数のステップを同時に行っても良いし、被加工物11等の搬送に支障が出ない範囲内でステップの順序を入れ替えても良い。同様に、被加工物11等の搬送に支障が出ない範囲内で任意のステップを追加、変更、省略して良い。
【0377】
以上のように、本実施形態にかかる搬送路6、ローダー・アンローダー(搬送装置)8、搬送車10、カセット収容機構24、及び昇降ユニット(昇降機構)110は、いずれも、被加工物11やボード31を効率良く安全に搬送することができるように構成されている。そのため、これらが組み込まれた搬送システム2を用いることで、被加工物11やボード31を効率良く安全に搬送することができる。
【0378】
(実施形態2)
本実施形態では、上述した実施形態とは異なる態様の加工装置(切削装置)について説明する。図35は、本実施形態かかる加工装置(切削装置)402の内部の構造を示す斜視図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と共通する構成要素に同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0379】
加工装置402の昇降台404には、搬送車10の容器102が載置されない。その代わりに、加工装置の昇降台404には、上述した実施形態のローダー・アンローダー8の2段のカセット収容機構24(すなわち、第1カセット収容機構24a及び第2カセット収容機構24b)と同様の2段のカセット収容機構406(第1カセット収容機構406a及び第2カセット収容機構406b)が設けられている。
【0380】
つまり、本実施形態の加工装置402には、カセット30が搬入される。そして、加工装置402にも、ストッパー部材50及び軸機構52でなる移動規制機構が搭載されている。これにより、比較的重いカセット30の搬入出を行い易くなるので、カセット30に収容されている被加工物11等が搬入出に伴い破損するリスクを低減できる。また、幅方向にコンパクトなカセット収容機構406を実現し易くなる。
【0381】
また、本実施形態の加工装置402でも、加工装置402の外部から内部へのアクセスを制限するための第1安全機構と第2安全機構とが実現されている。これにより、加工装置402の内部に位置する動作中の可動部等にオペレーターが誤ってアクセスすることを防止できる。
【0382】
なお、本実施形態の加工装置402は、上述の搬送システム2から独立していても良い。つまり、本実施形態にかかる加工装置402は、必ずしも上述した搬送システム2に接続されなくて良い。
【0383】
本実施形態にかかるカセット収容機構406は、上述した実施形態のカセット収容機構24と同様に、被加工物11等を効率良く安全に搬送することができるように構成されている。そのため、これが組み込まれた加工装置4を用いることで、被加工物11等を効率良く安全に搬送することができる。
【0384】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0385】
2 :搬送システム
4 :加工装置(切削装置)
4a :加工装置(切削装置)
4b :加工装置(切削装置)
6 :搬送路
6a :開口
8 :ローダー・アンローダー(搬送装置)
10 :搬送車
10a :搬送車
10b :搬送車
12 :制御ユニット
21 :配管
22 :筐体
22a :天井
22b :開口
24 :カセット収容機構
24a :第1カセット収容機構
24b :第2カセット収容機構
26 :支持台
26a :上面
26b :外側面
28 :カセット載置台
28a :下面
28b :上面
28c :貫通孔
30 :カセット
30a :第1カセット
30b :第2カセット
32 :搬入出口
34 :外扉(第2扉)
36 :回転連結部材
38a :外部搬入出領域(外部領域)
38b :内部収容領域(内部領域)
40 :内扉(第1扉)
42 :昇降機構
42a :シリンダーチューブ
42b :ピストンロッド
42c :連結部材
44 :第1センサー
44a :磁石
46 :制御装置
48 :第2センサー
48a :磁石
50 :ストッパー部材
50a :角棒
50b :ローラー
52 :軸機構
52a :回転軸
52b :軸受け
54 :ピン(押圧部)
54a :リング
54b :ボタン
56 :昇降機構
56a :支持柱
58 :昇降台
60 :仮置きユニット
62 :筐体
62a :上板
62b :下板
62c :側板
62c :第1側板
62c :第2側板
62d :開口
62e :第1開口
62e :第2開口
64 :搬送ユニット(搬送機構)
64a :第1搬送ユニット
64b :第2搬送ユニット
66 :載置台
68 :受信機
70 :送信機
72a :上段ガイドレール(第1仮置き部)
72b :下段ガイドレール(第2仮置き部)
72c :間隔
74a :第1エアアクチュエーター
74b :第2エアアクチュエーター
76a :第1ガイド機構
76b :第2ガイド機構
78 :間隔調整機構
82 :車両フレーム
84 :車軸
86 :車輪(前輪)
88 :車輪(後輪)
90 :駆動ユニット
92 :モーター(駆動源)
92a :回転軸(出力シャフト)
94 :プーリー
96 :バッテリー(二次電池)
98 :配線(充電配線)
100 :端子(受電端子)
102 :容器(カセット)
102a :収容部(収容空間)
102b :開口
102c :上壁
102d :底壁
104 :格納領域
106 :第1ガイドレール
106a :保持面
106b :側面
108 :第2ガイドレール
108a :保持面
110 :昇降ユニット(昇降機構)
112 :吊り下げ部材
114 :駆動機構
116 :接触部材
118 :弾性部材(伸縮部材)
120 :カバー
122 :第1センサー
124 :第2センサー
126 :第3センサー
128 :支持台
130 :制御部(制御ユニット)
130a :第1センサー制御部
130b :走行指示部
130c :第2センサー制御部
130d :旋回指示部
130e :進入制御部
130f :停車制御部
132 :受信機
134 :送信機
142 :モーター
142a :回転軸(出力シャフト)
144a :第1回転軸(第1シャフト)
144b :第2回転軸(第2シャフト)
146 :プーリー
148 :連結部材
150a :プーリー
150b :プーリー
152 :連結部材
154a :リール
154b :リール
156a :ローラー
156b :ローラー
162 :駆動機構
164 :モーター
164a :回転軸(出力シャフト)
166a :第1回転軸(第1シャフト)
166b :第2回転軸(第2シャフト)
166c :第3回転軸(第3シャフト)
168 :プーリー
170 :連結部材
172 :リール
172a :溝(凹部)
172b :突起(凸部)
174 :固定部材
176 :ガイド
182 :蓋部
182a :板状部材
182b :柔軟部材
184 :接触部
184a :固定部材
184b :ローラー
186 :固定ブロック
188 :連結ブロック(L字ブロック)
188a :連結部
188b :固定部
190 :連結軸
202 :基台
202a :凹部
202b :凹部
202c :配管接続部
204 :昇降台
206 :X軸移動機構(加工送りユニット)
206a :テーブルカバー
206b :防塵防滴カバー
208 :チャックテーブル
208a :保持面
218b :クランプ
210 :サブチャックテーブル
210a :保持面
210b :溝
212 :ガイドレール
214 :第1支持構造
216 :第1レール
218 :第1移動機構
220 :第1保持ユニット
220a :保持パッド(第1保持パッド)
220b :把持機構
222 :第2レール
224 :第2移動機構
226 :第2保持ユニット
228 :第2支持構造
230 :Y軸Z軸移動機構(割り出し送りユニット、切り込み送りユニット)
232 :加工ユニット(切削ユニット)
232a :スピンドル
232b :切削ブレード
234 :撮像ユニット(カメラ)
236 :ボード搬送ユニット
236a :アクチュエーター
236b :保持パッド(第2保持パッド)
238 :洗浄ユニット
240 :スピンナテーブル
242 :噴射ノズル
244 :カバー
244a :天井
244b :扉
246 :制御装置
248 :受信機
250 :送信機
262 :下段フレーム
264 :上段フレーム
266 :路面パネル
268 :ねじ
270 :下段フレームユニット
270a :下段フレームユニット
270b :下段フレームユニット
270c :下段フレームユニット
270d :下段フレームユニット
272 :上段フレームユニット
272a :上段フレームユニット
272b :上段フレームユニット
274a :橋渡しパネル
274b :橋渡しパネル
276 :ガード部
278 :走行領域
280 :停車領域
282 :開口
284 :待機領域
286 :マーク
286a :第1マーク
286b :第2マーク
286c :第3マーク
286d :第4マーク
288 :端子(給電端子)
290 :端子支持部
292 :配線(給電配線)
302 :制御部(信号生成部)
304 :受信機
306 :送信機
402 :加工装置(切削装置)
404 :昇降台
406 :カセット収容機構
406a :第1カセット収容機構
406b :第2カセット収容機構
11 :被加工物
13 :テープ(ダイシングテープ)
15 :フレーム
17 :被加工物ユニット
17a :被加工物ユニット
17b :被加工物ユニット
31 :ボード
33 :トレー
35 :本体部
37 :位置規定部材
39a :第1ボード配置領域 39b :第2ボード配置領域
A :載置領域
a :第1載置領域
b :第1載置領域
:第2載置領域
a :第1搬送領域
b :第1搬送領域
:第2搬送領域
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
:矢印
G :矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図15
図16
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35