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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240520BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20240520BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08L101/00
C08G77/04
C08L83/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022565295
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042537
(87)【国際公開番号】W WO2022113892
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020196439
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 良範
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-335860(JP,A)
【文献】特表2014-532787(JP,A)
【文献】特開2016-069516(JP,A)
【文献】特開2010-237479(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135045(WO,A1)
【文献】特表2020-523425(JP,A)
【文献】特開2020-075881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性樹脂100質量部に対し、(B)体積平均粒径が0.1~30μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子1~35質量部を含み、
該ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子中のCH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位のモル比(CH3SiO3/2単位:C65SiO3/2単位)が95:5~55:45である熱硬化性樹脂組成物であり、(A)成分の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド樹脂から選ばれる1種類以上であり、(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子により硬化物が低弾性化する、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)熱硬化性樹脂100質量部に対し、(B)体積平均粒径が0.1~30μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子1~35質量部を含み、
該ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が、CH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位からなり、CH3SiO3/2単位とC65SiO3/2単位のモル比(CH3SiO3/2単位:C65SiO3/2単位)が95:5~55:45である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
熱重量測定装置にて、空気雰囲気で、10℃/分の昇温速度の条件での測定による、(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の熱分解温度が400℃以上である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項5】
(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子により硬化物が低弾性化された、請求項4に記載の硬化物。
【請求項6】
JIS K 7171:2016記載の方法で測定した曲げ弾性率の変化率が6.1%以上である請求項5に記載の硬化物。
【請求項7】
JIS K 7171:2016記載の方法で測定した曲げ強さの変化率が22.4%以上である請求項5に記載の硬化物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化し、(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子により硬化物を低弾性化する、硬化物の低弾性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、特には電子、電気部品のパッケージング剤やプリント配線基板として好適な熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン、超薄型の液晶TV、軽量ノート型パソコンなど、電子機器の小型化が進んでいる。そのため、これらに使用される電子部品は高密度集積化、さらには高密度実装化等が進んでいる。そして、これら電子部品に用いられる樹脂材料は、電子部品の熱膨張による応力により破損しないよう低弾性率化が求められている。また、樹脂材料は、モバイル機器に使用されているプリント配線基板においては、落下の衝撃により破損しないよう弾性率が低いものが求められている。
【0003】
エポキシ樹脂組成物にシリコーンゴム粒子を配合することで、その組成物の硬化物の弾性率を低下させ、応力を低下させることが開示されている(特許文献1)。しかし、熱硬化性樹脂成分が有機溶剤を含んでいる場合、シリコーンゴム粒子が有機溶剤により膨潤し、成形性に不具合を生じる問題がある。また、熱硬化性樹脂成分の硬化温度がシリコーンゴム粒子の分解温度より高い場合には、適用できない。
【0004】
一方、構造式がRSiO3/2(Rは有機置換基)で示されるポリオルガノシルセスキオキサン粒子を配合したエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。特許文献2に例示の構造式がCH3SiO3/2で示されるポリメチルシルセスキオキサン粒子は、有機溶剤で膨潤せず、またシリコーンゴム粒子より分解温度が高いが、樹脂の低応力化性能が低い。特許文献2に例示の構造式がC65SiO3/2で示されるポリフェニルシルセスキオキサン粒子は、シリコーンゴム粒子より分解温度が高いが、有機溶剤に溶解する。特許文献2に例示のCH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位からなり、CH3SiO3/2単位とC65SiO3/2単位のモル比が1:1の構造であるポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、有機溶剤で膨潤せず、またシリコーンゴム粒子より分解温度が高く、樹脂の低応力化性能も有する。しかしながら、この粒子は凝集性が高いため、製造装置の壁への付着が多い、樹脂への分散性が悪い等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-104029号公報
【文献】特開昭61-160955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、熱硬化性樹脂成分が有機溶剤を含んでいたり、硬化温度が高かったりしても、得られる硬化物を低弾性化することが可能な熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、凝集性の低い特定のポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を使用することにより、下記熱硬化性樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
[1]
(A)熱硬化性樹脂100質量部に対し、(B)体積平均粒径が0.1~30μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子1~35質量部を含み、
該ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子中のCH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位のモル比(CH3SiO3/2単位:C65SiO3/2単位)が95:5~55:45である熱硬化性樹脂組成物。

[2]
(A)熱硬化性樹脂100質量部に対し、(B)体積平均粒径が0.1~30μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子1~35質量部を含み、
該ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が、CH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位からなり、CH3SiO3/2単位とC65SiO3/2単位のモル比(CH3SiO3/2単位:C65SiO3/2単位)が95:5~55:45である[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[3]
熱重量測定装置にて、空気雰囲気で、10℃/分の昇温速度の条件での測定による、(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の熱分解温度が400℃以上である[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[4]
(A)成分の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド樹脂から選ばれる1種類以上である[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物。

[5]
[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を含んでいたり、硬化温度が高かったりする熱硬化性樹脂であっても、得られる硬化物を低弾性化することができるため、該組成物は、電子、電気部品のパッケージング剤やプリント配線基板として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分は熱硬化性樹脂であり、電子、電気部品のパッケージング剤やプリント配線基板として使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種類単独でも用いることができ、2種類以上を併用することもできる。
【0012】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格変性エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;上記エポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもでき、1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用することもできる。
【0013】
フェノール樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもでき、これらの1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用することもできる。
【0014】
シアネート樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したり、これらの1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用することもできる。
【0015】
マレイミド樹脂としては、特に限定されないが、N,N’-(4,4’-ジフェニルメン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもでき、これらの1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用することもできる。また、更に上記以外のマレイミド樹脂を1種類又は2種類以上併用したりすることもできる。
【0016】
[(B)成分]
(B)成分は、体積平均粒径が0.1~30μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子である。体積平均粒径は、0.5~10μmが好ましく、より好ましくは1~5μmである。0.1μm未満であると、凝集性が高くなることにより、粒子の製造、取り扱いが困難となるし、粒子を組成物に均一に分散させることが困難となる。30μmを超えると、組成物の硬化物の低応力化性能が低くなる。
【0017】
なお、本明細書において、体積平均粒径(MV値)は、電気抵抗法により測定された値である。また、本明細書において、「球状」とは、粒子の形状が、真球だけを意味するものではなく、略球状も含む。例えば、最長軸の長さ/最短軸の長さ(アスペクト比)が平均して、通常、1~4、好ましくは1~2、より好ましくは1~1.6、さらに好ましくは1~1.4の範囲にある変形した楕円体も含むことを意味する。粒子の形状は粒子を光学顕微鏡や電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。また、粒径の分散性については単分散、多分散であってもよい。
【0018】
(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子中のCH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位のモル比(CH3SiO3/2単位:C65SiO3/2単位)が95:5~55:45の範囲であり、80:20~60:40の範囲がより好ましい。また、(B)成分の球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、CH3SiO3/2で示される単位及びC65SiO3/2で示される単位からなるものが好ましい。(B)成分中のCH3SiO3/2単位が95モル%を超えると、組成物の硬化物の低応力化性能が乏しくなる。(B)成分中のC65SiO3/2単位が45モル%を超えると、粒子の凝集性が高くなるので、粒子の製造、取り扱いが困難となるし、粒子を組成物に均一に分散させることが困難となる。また、(B)成分中のC65SiO3/2単位が50モル%を超えると、アセトンなどの有機溶剤に一部又は全量が溶解するものとなり、有機溶剤を含む組成物には使用できない。
【0019】
(B)成分は、粒子の非凝集性、分散性等の特性を損なわない範囲で、R1 2SiO2/2単位、R1 3SiO1/2単位、SiO4/2単位及びR2SiO3/2の1種類以上のシロキサン単位を含んでいてもよい。R1 2SiO2/2単位、R1 3SiO1/2単位、SiO4/2単位及びR2SiO3/2から選ばれる1種以上の単位の含有量は、(B)成分中0~20%であることが好ましく、0~10%であることがより好ましく、0~5%であることが更に好ましい。
前記式中のR1は炭素数1~20の1価有機基である。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。
上記式中のR2は、メチル基とフェニル基を除く、炭素数1~20の1価有機基である。R2としては、R1として例示したもののうち、メチル基とフェニル基を除いたものが挙げられる。
【0020】
(B)成分は、熱分解温度が高いものが好ましい。該熱分解温度が高いと(A)成分の硬化温度が高い場合でも(B)成分を使用できるためである。具体的には、(B)成分の熱分解温度は、熱重量測定装置にて、空気雰囲気で、10℃/分の昇温速度の条件での測定で、400℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。
【0021】
(B)成分は、公知の方法により、製造することができる。
例えば、まず、アルカリ性の水溶液に、一般式CH3Si(OR33(式中、R3は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)で表されるメチルトリアルコキシシラン及び一般式C65Si(OR33(式中、R3は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)で表されるフェニルトリアルコキシシランをそれぞれ1種類又は2種類以上添加し、加水分解及び縮合反応させて粒子の水性分散液を得る。
または、酸性の水溶液に、一般式CH3Si(OR33(式中、R3は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)で表されるメチルトリアルコキシシラン及び一般式C65Si(OR33(式中、R3は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)で表されるフェニルトリアルコキシシランをそれぞれ1種類又は2種類以上添加し加水分解し、そこにアルカリ性物質を添加し、縮合反応させて粒子の水性分散液を得る。
次に、このようにして得られた水性分散液から、水及び副生成アルコールを加熱乾燥等により除去する。
その結果、球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得ることができる。
得られた粒子が凝集している場合には、粉砕機で解砕され得る。
【0022】
上記式中のR3は、非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。R3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0023】
粒子の水性分散液を得る工程は、ゲル状物が生成することなく製造できることから、前記の2つの方法のうち、酸性物質の水溶液にメチルトリアルコキシシラン及びフェニルトリアルコキシシランを添加し加水分解し、そこにアルカリ性物質を添加し、縮合反応させる方法が好ましい。
さらに、詳細には、下記工程(i)~(iv)
工程(i)
メチルトリメトキシシランをpHが4.0~7.0の水に添加し、加水分解反応を行い、透明な水溶液を得る工程、
工程(ii)
工程(i)で得られた透明な水溶液にフェニルトリメトキシシランを添加し、加水分解反応を行い、透明なシラン水溶液を得る工程、
工程(iii)
工程(ii)で得られた透明なシラン水溶液を0~15℃の温度に調節し、これにアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加し、撹拌混合して混合液を得る工程、及び
工程(iv)
工程(iii)で得られた混合液を静置し、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を析出させる工程
を含む方法がより好ましい。
【0024】
上記工程(i)及び工程(ii)において、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとの合計量が水100質量部に対して5~30質量部である方法が好ましい。
【0025】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分100質量部に対して(B)成分の含有量が1~35質量部であり、好ましくは2~25質量部、より好ましくは3~20質量部である。(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量が、1質量部より少ないと組成物の硬化物の低応力化性能が低くなる一方、35質量部より多いと硬化物の強度が低下する。
【0026】
任意成分
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、(A)成分及び(B)成分以外の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。例えば、硬化剤(4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン等)、無機充填剤(シリカ、ガラス繊維等)、合成繊維、硬化促進剤(イミダゾール類、トリフェニルホスフィン、4級ホスホニウム塩等)、重合開始剤、離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤、カップリング剤、有機溶剤等が挙げられる。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計量は、5~100質量%であることが好ましく、10~100質量%であることがより好ましく、20~100質量%であることが更に好ましい。
【0027】
製造方法
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び任意成分を必要により加熱処理を行いながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、擂潰機等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。得られた熱硬化性樹脂組成物は成形材料として使用できる。
【0028】
成形方法
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、公知の成形方法で成形することができる。該成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。
トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5~20N/mm2、成形温度120~190℃で成形時間30~500秒、好ましくは成形温度150~185℃で成形時間30~300秒で行うことが好ましい。
また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120~190℃で成形時間30~900秒、好ましくは成形温度130~160℃で成形時間120~600秒で行うことが好ましい。
更に、いずれの成形法においても、後硬化を150~225℃で0.5~20時間行ってもよい。
【実施例
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
製造例におけるアセトン溶解量及び熱分解温度の測定方法を説明する。
[アセトン溶解量の測定]
25mLガラス瓶に、試料5g及びアセトン15gを量り取り、試料と3倍量のアセトンを混合してアセトン懸濁液を調製する。フタをして30分間該アセトン懸濁液を振とうする。該アセトン懸濁液をろ紙にてろ過し、ろ液約2gをアルミニウム製のシャーレに量り取り、105℃の乾燥機にて乾燥したのち、乾燥残分の重量を計量し、ろ液の重量と乾燥残分の重量とから試料のアセトン溶解量(%)を算出する。この際、試料は3倍量のアセトンで抽出されているため、乾燥残分量を3倍して、アセトン溶解量(%)を算出する。
[熱分解温度の測定]
熱重量測定装置にて、空気雰囲気で、10℃/分の昇温速度の条件での測定で、重量減量率の変化から熱分解温度を決定する。
【0031】
[製造例1]
1リットルのガラスフラスコ中にイオン交換水801gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン95.5gをガラスフラスコ中に投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。3分後に透明な状態になり、さらに7分間撹拌した。次いで、フェニルトリメトキシシラン62.5gをガラスフラスコ中に投入し、20~25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、50分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分間かけて、5℃まで冷却した。さらに、28質量%アンモニア水溶液0.53gとイオン交換水2.65gの混合溶解液をガラスフラスコ中に投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止12秒後に白濁が起こった。
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gをガラスフラスコ中に添加し、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、0%であった。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
得られたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、原料のメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの量から、メチルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位のモル比率は69:31と計算された。
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、アスペクト比が1の球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.1μmであった。上記の方法で、熱分解温度を測定したところ、約500℃であった。
【0032】
[製造例2]
1リットルのガラスフラスコ中にイオン交換水815gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン77.6gをガラスフラスコ中に投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。3分後に透明な状態になり、さらに7分間撹拌した。次いで、フェニルトリメトキシシラン66.4gをガラスフラスコ中に投入し、20~25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、55分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分間かけて、5℃まで冷却した。さらに、28質量%アンモニア水溶液0.54gとイオン交換水2.7gの混合溶解液をガラスフラスコ中に投入し、20秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止12秒後に白濁が起こった。
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gをガラスフラスコ中に添加し、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、0%であった。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
得られたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、原料のメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの量から、メチルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位のモル比率は63:37と計算された。
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、アスペクト比が1の球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.1μmであった。上記の方法で、熱分解温度を測定したところ、約510℃であった。
【0033】
[製造例3]
1リットルのガラスフラスコ中にイオン交換水789gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.8であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン110.5gをガラスフラスコ中に投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。4分後に透明な状態になり、さらに6分間撹拌した。次いで、フェニルトリメトキシシラン59.5gをガラスフラスコ中に投入し、20~25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、45分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分間かけて、5℃まで冷却した。さらに、28質量%アンモニア水溶液0.52gとイオン交換水2.6gの混合溶解液をガラスフラスコ中に投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止30秒後に白濁が起こった。
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gをガラスフラスコ中に添加し、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、0%であった。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
得られたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、原料のメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの量から、メチルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位のモル比率は73:27と計算された。
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、アスペクト比が1の球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.2μmであった。上記の方法で、熱分解温度を測定したところ、約490℃であった。
【0034】
[製造例4]
1リットルのガラスフラスコ中にイオン交換水772gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン113.1gをガラスフラスコ中に投入したところ発熱が起こり25℃まで温度が上昇した。3分後に透明な状態になり、さらに7分間撹拌した。次いで、フェニルトリメトキシシラン73.9gをガラスフラスコ中に投入し、20~25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、45分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分間かけて、5℃まで冷却した。さらに、28質量%アンモニア水溶液0.53gとイオン交換水2.65gの混合溶解液をガラスフラスコ中に投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止12秒後に白濁が起こった。
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gをガラスフラスコ中に添加し、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、0%であった。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
得られたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、原料のメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの量から、メチルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位のモル比率は69:31と計算された。
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、アスペクト比が1の球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、3.6μmであった。上記の方法で、熱分解温度を測定したところ、約500℃であった。
【0035】
[製造例5]比較品
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水824gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン133gをガラスフラスコ中に投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。3分後に透明な状態になり、さらに24℃の温度を保ち90分間撹拌した。次いで、28質量%アンモニア水溶液1.0gとイオン交換水5.0gの混合溶解液をガラスフラスコ中に投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止110秒後に白濁が起こった。
1時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、さらに、28質量%アンモニア水溶液37gをガラスフラスコ中に添加し、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、0%であった。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕して、メチルシルセスキオキサン単位のみで構成されたポリメチルシルセスキオキサン粒子を得た。
得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、アスペクト比が1の球状であった。ポリメチルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.1μmであった。上記の方法で、熱分解温度を測定したところ、約430℃であった。
【0036】
[製造例6]比較品
1リットルのガラスフラスコ中にイオン交換水810gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン60.7gをガラスフラスコ中に投入したところ発熱が起こり25℃まで温度が上昇した。2分後に透明な状態になり、さらに8分間撹拌した。次いで、フェニルトリメトキシシラン88.3gをガラスフラスコ中に投入し、20~25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、45分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分間かけて、5℃まで冷却した。さらに、28質量%アンモニア水溶液0.53gとイオン交換水2.65gの混合溶解液をガラスフラスコ中に投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止5秒後に白濁が起こった。
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gをガラスフラスコ中に添加し、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、0%であった。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕したが、粒子の凝集性が高いため、解砕処理がしづらかった。また、前記乾燥物の装置壁内への付着が多かったため、回収できたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子も少なかったので、下記比較例としての評価に供することはしなかった。
得られたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、原料のメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの量から、メチルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位のモル比率は50:50と計算された。
【0037】
[製造例7]比較品
1リットルのガラスフラスコ中にイオン交換水801g及び28質量%アンモニア水溶液19gを仕込み、水温を20℃とした。アンモニア水溶液のpHを測定したところ11.4であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、フェニルトリメトキシシラン180gを3時間かけて滴下ガラスフラスコ中に滴下し、この間、20~22℃の温度を保った。フェニルトリメトキシシラン滴下約20分後には白濁が起こった。
フェニルトリメトキシシラン滴下終了後、20~22℃の温度を保った後、さらに73~77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物を得た。
得られた乾燥物をジェットミルで解砕したが、粒子の凝集性が非常に高く、解砕処理がしづらかった上に、回収できたポリフェニルシルセスキオキサン粒子も少なかったので、下記比較例としての評価に供することはしなかった。
また、得られた乾燥物はフェニルシルセスキオキサン単位のみで構成されたポリフェニルシルセスキオキサンであるが、上記の方法でアセトン溶解量を測定したところ、100%であった。このことから、有機溶剤を含有する組成物には適用できないことが明らかとなった。
【0038】
[実施例1~6、比較例1~2]
表1に示す組成で、各成分(グラム)を量り取り、プラネタリーミキサーにて、減圧下、15分間撹拌し、熱硬化性樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を金型に流し込み、150℃で4時間の条件で硬化させ、幅10mm、長さ100mm、厚さ5mmの成形物(硬化物)を得た。
得られた成形物を試験片とし、JIS K 7171:2016記載の方法で曲げ弾性率及び曲げ強さを測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1~6で使用した(B)成分のポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子、及び、比較例2で使用した(B)成分ではないポリメチルシルセスキオキサン粒子は、凝集することなく、組成物中に均一に分散した。
また、実施例1~6は、(B)成分が配合されていない比較例1や(B)成分ではないポリメチルシルセスキオキサン粒子が配合された比較例2と比較して、弾性率が低かった。
【0041】
以上の結果から、熱硬化性樹脂((A)成分)が有機溶剤を含んでいたり、硬化温度が高かったりしても、特定のポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子((B)成分)を使用することにより、(A)成分及び(B)成分を含む組成物の硬化物の弾性率を低くできることが明らかとなった。したがって、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、電子、電気部品のパッケージング剤やプリント配線基板として有用である。