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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/672 20060101AFI20240520BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240520BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08G63/672
C09J167/00
G03F7/039 501
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019163379
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2020056010
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2018185979
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入沢 正福
(72)【発明者】
【氏名】友田 和貴
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0172147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274885(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103204837(CN,A)
【文献】特開2007-131710(JP,A)
【文献】特開2006-233137(JP,A)
【文献】特開昭59-116650(JP,A)
【文献】特開2005-205895(JP,A)
【文献】特開平05-059265(JP,A)
【文献】特開2012-067534(JP,A)
【文献】特開2016-089175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63、65
C09J、G03F7
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(Iα)、(Iβ)及び(Iγ)で表される構造からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上重合体の主鎖に有し、
下記一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位を重合体の主鎖に有し、
上記一般式(Iα)、(Iβ)及び(Iγ)で表される構成単位合計の割合が、重合体に対して10質量%以上である、重合体。
【化1A】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、
びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し
は、水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基又はハロゲン原子を表し、
、R及びRで表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は単結合又はメチレン基を表し、
、-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し
合体が(Iα)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR、R、R、R、X及びYは同一でもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【化1B】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10アルキル基を表し
、R及びRで表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は単結合又はメチレン基を表し、
、-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し
合体が(Iβ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR、R、R、R、X及びYは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【化1C】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、
10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し
10、R11及びR12で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は単結合又はメチレン基を表し、
、-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し
合体が(Iγ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR、R10、R11、R12、X及びYは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【化2A】
(式中、Zは、炭素原子数2~12のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、又はチオフェレン基を表し、
重合体が(IIα)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【請求項2】
下記一般式(Iδ)で表される構造からなる構成単位を重合体の主鎖に有し、
下記一般式(IIα’)で表される構造からなる構成単位を重合体の主鎖に有し、
上記一般式(Iδ)で表される構成単位合計の割合が、重合体に対して10質量%以上である、重合体。
【化2B】
(式中、R 13 は、水素原子、ニトリル基、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基又はハロゲン原子を表し、
14 、R 15 、R 16 、R 17 及びR 18 は、それぞれ独立に、水素原子を表し、
は、-O-、-(CH -O-、-O-(CH -O-又は-O-(CH -を表し、nは1~12の整数を表し、
重合体が(Iδ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 及びY は同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【化2C】
(式中、Z 1’ は、炭素原子数8~12のアルキレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、又はチオフェレン基を表し、
重合体が(IIα’)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZ 1’ は同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【請求項3】
下記一般式(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)で表される構造からなる群より選ばれる構成単位を更に1つ以上有する、請求項1又は2に記載の重合体。
【化2D】
(式中、Zは、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIβ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【化2E】
(式中、Zは、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIγ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【化2F】
(式中、Zはそれぞれ独立に、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIδ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは、同一である場合も異なる場合もあり、
*は結合手を表す。)
【請求項4】
上記一般式(Iα)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有する請求項1に記載の重合体。
【請求項5】
上記一般式(Iα)におけるR、R及びRが水素原子を表す、請求項4に記載の重合体。
【請求項6】
上記一般式(Iβ)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有する請求項1に記載の重合体。
【請求項7】
上記一般式(Iβ)におけるRが炭素原子数1~30のアルコキシ基を表す、請求項6に記載の重合体。
【請求項8】
上記一般式(Iδ)におけるR13及びR15~R18が水素原子を表す、請求項に記載の重合体。
【請求項9】
重量平均分子量が1,000~500,000である、請求項1~の何れか1項に記載の重合体。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の重合体を含有する光分解樹脂。
【請求項11】
請求項10に記載の光分解樹脂を含有する組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物を含有する光易解体性接着剤。
【請求項13】
請求項11に記載の組成物を含有するパターン形成剤。
【請求項14】
請求項11に記載の組成物及び活性種を含有する光潜在性触媒。
【請求項15】
請求項10に記載の光分解樹脂に活性エネルギー線を照射する工程を有する光分解樹脂の分解方法。
【請求項16】
請求項10に記載の光分解樹脂に発光ダイオード光を照射する工程を有する光分解樹脂の分解方法。
【請求項17】
請求項11に記載の組成物に発光ダイオード光を照射する工程を有する組成物の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長の光に対して分解性を示す繰り返し単位を有する重合体に関するものである。該重合体を含有する組成物は、特定の波長の光に対し分解性を有し、光照射前後で重合体の性状が変化するために、光易解体性接着剤、パターン形成剤又は光潜在性触媒として活用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、環境低負荷、コスト低減のために光易解体性接着剤や、微細なパターンを形成できるパターン形成剤及び保存安定性に優れる光潜在性触媒に対するニーズが高まっている。
【0003】
特許文献1には、o-ニトロベンジル基を有する光分解性高分子化合物の製造方法が開示されている。特許文献2には、o-ニトロベンジル基を有する光分解性カップリング剤を用いて対象物の被処理面を化学修飾する工程を有するパターン形成方法が開示されている。特許文献3には、クマリン基を有する光分解性カップリング剤を用いて対象物の被処理面を化学修飾する工程を有するパターン形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-131710号公報
【文献】特開2017-120342号公報
【文献】特開2017-160257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の技術は、光分解の感度が低かったり、光分解による分子量低減効果が小さいという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を解決できる重合体、光分解樹脂、組成物、光易解体性接着剤、パターン形成剤及び光潜在性触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を下記結するために鋭意検討を行い、下記〔1〕~〔20〕を提供することにより、上記課題の解決を達成した。
【0008】
[1] 下記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構造からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上有する重合体。
【0009】
【化1A】
【0010】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ニトリル基、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基又はハロゲン原子を表し、
、R及びRで表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
、R及びRで表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は単結合又はメチレン基を表し、
は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
19は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(Iα)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR、R、R、R、X及びYは同一でもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0011】
【化1B】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ニトリル基、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基又はハロゲン原子を表し、
、R及びRで表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
、R及びRで表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は単結合又はメチレン基を表し、
は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
19は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(Iβ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR、R、R、R、X及びYは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0012】
【化1C】
【0013】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、
10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ニトリル基、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基又はハロゲン原子を表し、
10、R11及びR12で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
10、R11及びR12で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は単結合又はメチレン基を表し、
は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
19は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(Iγ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR、R10、R11、R12、X及びYは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0014】
【化1D】
【0015】
(式中、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、ニトリル基、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基又はハロゲン原子を表し、
13、R14、R15、R16、R17及びR18で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
13、R14、R15、R16、R17及びR18で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、を表し、nは1~12の整数を表し、
はで表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
19は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(Iδ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するR13、R14、R15、R16、R17、R18及びYは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0016】
[2] 重合体の主鎖に上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)又は(Iδ)で表される構成単位を有する、[1]に記載の重合体は、光分解により、効率よく重合体の分子量が低下することから好ましい。
【0017】
[3] 上記一般式(Iα)のY、(Iβ)のY又は(Iγ)のYが、-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-であり、nが1~12の整数である、[1]又は[2]に記載の重合体は、化合物の安定性が高く、特定の光による光分解性に優れることから好ましい。
【0018】
[4] 上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構成単位からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上、並びに下記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)で表される構造からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上有する[1]~[3]の何れか1項に記載の重合体は、常温、可視光域下で保存安定性に優れることから好ましい。
【0019】
【化2A】
【0020】
(式中、Zは、炭素原子数1~30の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIα)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0021】
【化2B】
【0022】
(式中、Zは、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIβ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0023】
【化2C】
【0024】
(式中、Zは、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIγ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは同一であってもよく、異なっていてもよく、
*は結合手を表す。)
【0025】
【化2D】
【0026】
(式中、Zはそれぞれ独立に、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表し、
で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~30の基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合があり、
で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR21-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合があり、
21は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
重合体が(IIδ)で表される構成単位を複数含む場合、複数存在するZは、同一である場合も異なる場合もあり、
*は結合手を表す。)
【0027】
[5] 上記一般式(Iα)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有する[4]に記載の重合体。
【0028】
[6] 上記一般式(Iα)におけるR、R及びRが水素原子を表し、
上記一般式(IIα)におけるZが炭素原子数2~12のアルキレン基、炭素原子数6~10のアリーレン基又は芳香族複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表す、[5]に記載の重合体。
【0029】
[7] 上記一般式(Iβ)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有する[4]に記載の重合体。
【0030】
[8] 上記一般式(Iβ)におけるRが炭素原子数1~30のアルコキシ基を表し、
上記一般式(IIα)におけるZが炭素原子数2~12のアルキレン基又は炭素原子数6~10のアリーレン基を表す、[7]請求項7に記載の重合体。
【0031】
[9] 上記一般式(Iδ)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有する[4]に記載の重合体。
【0032】
[10] 上記一般式(Iδ)におけるR13及びR15~R18が水素原子を表し、
上記一般式(IIα)におけるZが炭素原子数2~12のアルキレン基、炭素原子数6~10のアリーレン基又は芳香族複素環を含有する炭素原子数2~30の基を表す、[9]に記載の重合体。
【0033】
[11] 上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構成単位合計の割合が、重合体に対して10質量%以上である[1]~[10]の何れか1項に記載の重合体は、光分解により、効率よく重合体の分子量が低下することから好ましく、20質量%以上である場合は、より好ましく、特に30~60質量%である場合、溶媒溶解性、融点、力学的強度などの物性と光分解性のバランスがよいことから好ましい。
【0034】
[12] 重量平均分子量が1,000~500,000である[1]~[11]の何れか1項に記載の重合体は、光分解前後で溶媒溶解性、融点、力学的強度などの性状が大きく変化することから好ましく、作業性の点から、5,000~100,000のものが特に好ましい。
【0035】
[13] [1]~[12]の何れか1項に記載の重合体を含有する光分解樹脂。
【0036】
[14] [13]に記載の光分解樹脂を含有する組成物。
【0037】
[15] [14]に記載の組成物を含有する光易解体性接着剤。
【0038】
[16] [14]に記載の組成物を含有するパターン形成剤。
【0039】
[17] [14]に記載の組成物及び活性種を含有する光潜在性触媒。
【0040】
[18] [14]に記載の光分解樹脂に活性エネルギー線を照射する工程を有する光分解樹脂の分解方法。
【0041】
[19] [13]に記載の光分解樹脂に発光ダイオード光を照射する工程を有する光分解樹脂の分解方法。
【0042】
[20] [14]に記載の組成物に発光ダイオード光を照射する工程を有する組成物の分解方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、UV等の特定の光に対する分解性が高く、光分解による重量平均分子量低減効果が大きい重合体を提供できる。本発明の化合物を用いれば、優れた光易解体性接着剤、パターン形成剤及び光潜在性触媒を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0045】
<重合体>
本発明の重合体は、上記(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構造からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上有する。
【0046】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のR~R、R~R、及びR10~R19で表される炭素原子数1~30の炭化水素基、並びにR~R、R~R、R10~R18及びY~Yで表される基の水素原子を置換する場合がある炭素原子数1~30の炭化水素基は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数4~30のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基及び炭素原子数7~30のアリールアルキル基等を表す。光分解性に優れることから、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数1~10のアルカンジイル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基及び炭素原子数7~10のアリールアルキル基等が好ましい。
【0047】
上記炭素原子数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びイコシル等の直鎖状のアルキル基、並びにイソプロピル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソアミル、t-アミル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、イソノニル及びイソデシル等の分岐状のアルキル基が挙げられ、上記炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシル等の直鎖状のアルキル基、並びにイソプロピル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソアミル、t-アミル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、イソノニル及びイソデシル等の分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0048】
上記炭素原子数2~30のアルケニル基は、鎖状であってもよく、環状であってもよい。該アルケニル基が鎖状である場合、末端に不飽和結合を有する末端アルケニル基であってもよく、内部に不飽和結合を有する内部アルケニル基であってもよい。炭素原子数が2~30である末端アルケニル基としては、例えば、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル及び5-ヘキセニル等が挙げられる。内部アルケニル基としては、例えば、2-ブテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル及び4-ドデセニル等が挙げられる。環状アルケニル基としては、3-シクロヘキセニル、2,5-シクロヘキサジエニル-1-メチル及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられる。上記炭素原子数2~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル及び4-デセニル等が挙げられる。
【0049】
上記炭素原子数3~30のシクロアルキル基とは、3~30の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。飽和単環式アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が挙げられる。飽和多環式アルキル基としては、例えば、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル及びテトラデカヒドロアントラセニル等が挙げられる。上記炭素原子数3~10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。
【0050】
上記炭素原子数4~30のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された4~30の炭素原子を有する基を意味する。該シクロアルキルアルキル基中のシクロアルキル基は単環であってもよく、多環であってもよい。シクロアルキル基が単環である炭素原子数4~30のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル及びシクロデシルメチル等のシクロアルキルメチル;、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、2-シクロノニルエチル及び2-シクロデシルエチル等のシクロアルキルエチル;3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、3-シクロオクチルプロピル、3-シクロノニルプロピル及び3-シクロデシルプロピル等のシクロアルキルプロピル;並びに4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル、4-シクロヘキシルブチル、4-シクロヘプチルブチル、4-シクロオクチルブチル、4-シクロノニルブチル及び4-シクロデシルブチル等のシクロアルキルブチル、等が挙げられる。シクロアルキル基が多環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。上記炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル及び4-シクロヘキシルブチル等が挙げられる。
【0051】
上記炭素原子数6~30のアリール基は、単環構造を有するものであってもよく、縮環構造を有するものであってもよい。更に、上記アリール基は、単環構造のアリール基と単環構造のアリール基とを連結したものであってもよく、単環構造のアリール基と縮合構造のアリール基とを連結したものであってもよく、或いは縮合構造のアリール基と縮合構造のアリール基とを連結したものであってもよい。単環構造を有するアリール基としては、例えば、フェニル、及びビフェニリル等が挙げられる。縮環構造を有するアリール基としては、例えば、ナフチル、アンスリル及びフェナントレニル等が挙げられる。炭素原子数6~30のアリール基の1又は2以上水素原子が置換基によって置換される場合がある。該置換基としては、上記アルキル基、上記アルケニル基、カルボキシル基及びハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基としては、例えば、トリル、キシリル、エチルフェニル、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等の単環構造の置換アリール基が挙げられる。上記炭素原子数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル及びナフチル等や、上記アルキル基、上記アルケニル基やカルボキシル基、ハロゲン原子等で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アンスリル等、例えば、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0052】
上記炭素原子数7~30のアリールアルキル基とは、上記アルキル基の水素原子が、上記アリール基で置換された7~30の炭素原子を有する基を意味する。例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル等が挙げられ、上記炭素原子数7~30のアリールアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、アリール基で置換された7~30の炭素原子を有する基を意味する。例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル及びフェニルエチル等が挙げられる。
【0053】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のY~Yで表される炭素原子数1~30の炭化水素基としては、R等で例示した炭素原子数1~30の炭化水素基から水素原子1つを取り除いた2価の基が挙げられる。
【0054】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のR~R、及びR~R、R10~R18で表される複素環を含有する炭素原子数2~30の基、並びにR~R、R~R、R10~R18及びY~Yで表される基の水素原子を置換する場合のある複素環を含有する炭素原子数2~30の基は、特に限定されるものではないが、芳香族であってもよく、脂肪族であってもよい。また、該複素環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、該複素環基の1又は2以上水素原子は炭素原子数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
芳香族複素環基としては、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリジルエチル、ピリミジル、ピリダジル、ピラゾリル、トリアジル、トリアジルメチル、イミダゾリル及びトリアゾリル等の環中に窒素と炭素とを含む単環の芳香族複素環基;チエニル及びチオフェニル等の環中に硫黄と炭素とを含む単環の芳香族複素環基;ピラニル、フリル、フラニル及びイソチアゾリル等の環中に窒素と炭素とを含む単環の芳香族複素環基;チアジアゾリル及びチアゾリル等の窒素と硫黄と炭素とを含む単環の芳香族複素環基;オキサゾリル及びイソオキサゾリル等の窒素と酸素と炭素とを含む単環の芳香族複素環基;キノリル、イソキノリル、ベンゾイミダゾリル及びインドリル等の環中に窒素と炭素とを含む縮合環の芳香族複素環基;ベンゾフラニル等の環中に窒素と酸素とを含む縮合環の芳香族複素環基;ベンゾチオフェニル等の環中に硫黄と炭素とを含む縮合環の芳香族複素環基;ベンゾチアゾリル等の環中に窒素と硫黄と炭素とを含む縮合環の芳香族複素環基;並びにベンゾオキサゾリル等の環中に窒素と硫黄と酸素とを含む縮合環の複素環基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、ピペラジル、ピペリジル、ピラニルエチル、ピロリジル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等の環中に窒素と炭素とを含む単環の脂肪族複素環基;モルフォリニル等の環中に窒素と酸素と炭素とを含む単環の脂肪族複素環基;チオモルフォリニル等の環中に窒素と硫黄と炭素とを含む単環の脂肪族複素環基;並びに、ユロリジル等の環中に窒素と炭素とを含む縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。置換基等を含めて具体的に記載すると下記の構造を有する基等が挙げられる。
【0055】
【化3】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
Zは直接結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基を表し、
*は結合手を表す。)
【0056】
上記炭素原子数1~6のアルキル基としては、炭素原子数1~30のアルキル基として上記で例示したものの中の、炭素原子数1~6のものが挙げられる。
【0057】
上記炭素原子数1~6のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等が挙げられる。
【0058】
、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12で表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-又は-S-に、これらが隣り合わない条件で置換されている場合がある。例えば、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12が炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、この炭素原子数1~30の炭化水素基中の1つのメチレン基が-O-で置換されている場合、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、炭素原子数1~30の炭化水素基で表される基中のメチレン基が-O-で置換された基を表す。本発明においては、R、R、R、R、R、R、R10、R11又はR12が、炭素原子数2~30のアルキル基中の1つのメチレン基が-O-で置換された基であることが好ましい。
【0059】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のY~Yで表される複素環を含有する炭素原子数2~30の基は、R等で例示した複素環を含有する炭素原子数2~30の基から水素原子1つを取り除いた2価の基が挙げられる。
【0060】
、Y、Y及びYで表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合がある。例えば、Y、Y、Y及びYが炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、この炭素原子数1~30の炭化水素基で表される基中の1つのメチレン基が-O-で置換されている場合、Y、Y、Y及びYは、炭素原子数1~30の炭化水素基で表される基中のメチレン基が-O-で置換された基を表す。
【0061】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のR~R、R~R及びR10~R18で表されるハロゲン原子並びにR~R、R~R、R10~R18及びY~Yで表される基中の水素原子を置換する場合のあるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の何れかである。
【0062】
本発明の重合体は、その主鎖に上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)又は(Iδ)で表される構成単位を有することが、光分解により、効率よく重合体の分子量が低下することから好ましい。本発明おいて重合体の主鎖とは、重合体における炭素原子数が最大となる幹に当たる部分を指す。
【0063】
上記一般式(Iα)のY、(Iβ)のY又は(Iγ)のYが、-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-(CH-O-、-O-(CH-O-又は-O-(CH-、-O-(CH2)-であり、nが1~12、特に3~10の整数である重合体は、化合物の安定性が高く、特定の光による光分解性に優れることから好ましい。
【0064】
本発明において、上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構成単位からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上、並びに下記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)で表される構造からなる群より選ばれる構成単位を1つ以上有する重合体は、常温、可視光域下で保存安定性に優れることから好ましい。
【0065】
本発明の重合体は、上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構成単位合計の割合が該重合体に対し10質量%以上であることが、光分解により、効率よく重合体の分子量が低下することから好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30~60質量%である場合、溶媒溶解性、融点、力学的強度などの物性と光分解性のバランスがよいことから特に好ましい。
【0066】
本発明の重合体は、その重量平均分子量が1,000~500,000であると、光分解前後で溶媒溶解性、融点、力学的強度などの性状が大きく変化することから好ましく、作業性の点から、5,000~100,000であると特に好ましい。
【0067】
本発明の重合体は、その多分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が1~2.5であることが、光分解性をコントロールしやすいので好ましく、特に1~2.0が好ましい。
【0068】
重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
上記数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、例えば、日本分光(株)製のGPC(LC-2000plusシリーズ)を用い、溶出溶剤をテトラヒドロフランとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw1110000、707000、397000、189000、98900、37200、13700、9490、5430、3120、1010、589(東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)とし、測定カラムをKF-804、KF-803、KF-802(昭和電工(株)製)として測定して得ることができる。
また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0069】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)で表される構造の中でも、(Iα)~(Iγ)で表される構造を有する重合体は、光分解性に優れることから好ましい。製造が容易で重合体が保存安定性に優れることから(Iα)及び(Iβ)が特に好ましい。
【0070】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のR、R、R、R14及びR15で表される基が、水素原子である化合物は、重合体が保存安定性に優れることから特に好ましい。
【0071】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のR~R、R~R、R10~R12並びにR13及びR15~R18で表される基の少なくとも1つが、水素原子;炭素原子数2~30のアルキル基中のメチレン基中の1つが-O-で置換された基、特にアルコキシ基;ハロゲン原子、特にフルオロ基;トリフルオロメトキシ基等のパーフルオロアルコキシ基;トリフルオロメチル基等のパーフルオロアルキル基;又はニトリル基である重合体は光分解性に優れることから好ましく、製造が容易で重合体が保存安定性に優れることから水素原子が特に好ましい。
【0072】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のR、R及びRで表される基が、メチル基である化合物は、光分解後の光分解樹脂及び組成物の着色が少ないことから好ましい。
【0073】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のX~Xで表される基が、単結合である化合物は、重合体が保存安定性に優れることから水素原子が特に好ましい。
【0074】
上記一般式(Iα)、(Iβ)、(Iγ)及び(Iδ)中のX~Xで表される基が、メチレン基である化合物は、光分解後の光分解樹脂及び組成物の着色が少ないことから好ましい。
【0075】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)中のR21で表される炭素原子数1~30の炭化水素基並びにZ~Zで表される基中の水素原子を置換する場合のある炭素原子数1~30の炭化水素基は、上記R等で例示した炭素原子数1~30の炭化水素と同様である。
【0076】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)中のZ~Zで表される炭素原子数1~30の炭化水素基は、上記Y等で例示した炭素原子数1~30の炭化水素と同様である。
【0077】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)中のZ~Zで表される基中の水素原子を置換する場合のある複素環を含有する炭素原子数2~30の基は、上記R等で例示した複素環を含有する炭素原子数2~30の基と同様である。
【0078】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)中のZ~Zで表される複素環を含有する炭素原子数2~30の基は、上記Y等で例示した複素環を含有する炭素原子数2~30の基と同様である。
【0079】
、Z、Z及びZで表される基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に、これらが隣り合わない条件で置換される場合がある。例えば、Z、Z、Z及びZが炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、この炭素原子数1~30の炭化水素基で表される基中の1つのメチレン基が-O-で置換されている場合、Z、Z、Z及びZは、炭素原子数1~30の炭化水素基で表される基中のメチレン基が-O-で置換された基を表す。
【0080】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)中のZ~Zで表される基中の水素原子を置換する場合のあるハロゲン原子は、上記R等で例示したハロゲン原子と同様である。
【0081】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)で表される構造の中でも、(IIα)及び(IIβ)で表される構造は、分子量などの物性変化が大きくなることから好ましい。
【0082】
上記一般式(IIα)、(IIβ)、(IIγ)及び(IIδ)中のZ~Zで表される基は、炭素原子数2~12のアルキレン基、炭素原子数6~10の単環構造若しくは縮合構造を有するアリーレン基又は芳香族複素環を含有する炭素原子数2~30の基が好ましい。炭素原子数6~10の単環構造を有するアリーレン基はフェニレン基が好ましい。炭素原子数6~10の縮合構造を有するアリーレン基はナフチレン基が好ましい。芳香族複素環を含有する炭素原子数2~30の基に含まれる芳香族複素環は単環の芳香族複素環が好ましく、環中に窒素と炭素とを含む単環の芳香族複素環基;又は環中に硫黄と炭素とを含む単環の芳香族複素環基がより好ましい。環中に窒素と炭素とを含む単環の芳香族複素環基を含有する炭素原子数2~30の基は、ピリジレンが好ましい。環中に硫黄と炭素とを含む単環の芳香族複素環基を含有する炭素原子数2~30の基はチオフェレン基が好ましい。炭素原子数2~12のアルキレン基としては、例えば、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-へプチレン及びn-オクチレン等の直鎖のアルキレン基;並びにメチルエチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、1,2-ジメチルプロピレン、1,3-メチルプロピレン、1-メチルブチレン、2-メチルブチレン、3-メチルブチレン、2,4-ジメチルブチレン及び1,3-ジメチルブチレン等の分岐のアルキレン基が挙げられる。
【0083】
本発明の重合体は、上記一般式(Iα)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有することが好ましい。また、上記一般式(Iβ)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有することも好ましい。また、上記一般式(Iγ)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有することも好ましい。更に、また、上記一般式(Iδ)で表される構成単位と、上記一般式(IIα)で表される構成単位とを有することも好ましい。
本発明の重合体は、上記一般式(IIα)で表される構成単位を含有することが好ましい。
【0084】
本発明の重合体は、o-ニトロベンジル構造を有したジオール化合物、クマリン構造を有したジオール化合物などの光分解性基を有した化合物と、ジクロリド化合物、ジカルボン酸化合物などをモノマーとして適時共重合することで得られる。反応が速やかに進行し。高分子量体が得やすいことから、ジカルボン酸化合物よりジクロリド化合物の方が好ましい。
【0085】
上記o-ニトロベンジル構造を有したジオール化合物としては、例えば、4-ヒドロキシ-2-ニトロベンゼンメタノール、3-クロロ-4-ヒドロキシ-2-ニトロベンゼンメタノール、4-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メトキシ-2-ニトロベンゼンメタノール、4-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メトキシ-α-メチル-2-ニトロベンゼンメタノール、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール、2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール)等が挙げられ、光分解性に優れることから(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール及び2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール)等が好ましい。
【0086】
上記クマリン構造を有したジオール化合物としては、例えば、4-(ヒドロキシメチル)-7-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2H-クロメン-2-オン等が挙げられる。
【0087】
上記ジクロリド化合物としては、例えば、チオフェン-2,5-ジカルボニルジクロリド、ナフタレン-2,6-ジカルボニルジクロリド、1,8-オクタンジカルボニルジクロリド、1,6-ヘキサンジカルボニルジクロリド、1,4-ブタンジカルボニルジクロリド等が挙げられ、高分子量の重合体が得られ、重合体の安定性、光分解性に優れることから、1,8-オクタンジカルボニルジクロリド、1,6-ヘキサンジカルボニルジクロリド、1,4-ブタンジカルボニルジクロリド等が特に好ましい。
【0088】
上記ジカルボン酸化合物としては、例えば、チオフェン-2,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボニルジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸等が挙げられ、高分子量の重合体が得られ、重合体の安定性、光分解性に優れることから、1,8-オクタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸等が特に好ましい。
【0089】
本発明の重合体の製造方法については、特に限定されないが、例えば、o-ニトロベンジル構造を有したジオール化合物又はクマリン構造を有するジオール化合物とジクロリド化合物とを、トリエチルアミン、4-メチルアミノピリジン存在下で反応させる公知の方法によって本発明の重合体を得ることができる。
【0090】
<光分解樹脂>
本発明の重合体は、光分解性に優れることから光分解樹脂として有用である。光分解樹脂とは、可視光線、紫外線、X線、電子線、高周波のような活性エネルギー線により、容易に分解する重合体を意味する。保存安定性が悪いことから可視光線のみで分解する重合体は好ましくなく、取扱いの容易さから紫外線で分解する光分解樹脂が好ましい。
【0091】
光分解樹脂を紫外線によって分解する場合、好ましい照射量は0.1~100J/cmであり、更に好ましくは0.5~10J/cmである。上記の照射量において分解する光分解樹脂は、保存安定性と光分解性のバランスがよく幅広い用途で使用できる。
【0092】
<組成物>
本発明の組成物は、上記光分解樹脂を含有すればよく、特に制限されないが、組成物中に含まれる重量平均分子量が1,000以上の成分100質量部中に光分解樹脂を50質量%以上含有する組成物は分解性に優れることから好ましい。
【0093】
また、本発明の組成物には、必要に応じて、重合性化合物、重合開始剤、着色剤、無機化合物、潜在性添加剤、有機重合体、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカプリング剤、メラミン化合物、熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;レベリング剤;表面調整剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;分散助剤;凝集防止剤;触媒;効果促進剤;架橋剤;増粘剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0094】
本発明の組成物の用途は、光易解体性接着剤、パターン形成剤、光潜在性触媒、記録媒体、液晶表示装置、配線基板、インク組成物、防塵膜など多岐にわたるが、本発明の組成物の用途としては、光易解体性接着剤、パターン形成剤、光潜在性触媒が特に好ましい。
【0095】
<光易解体性接着剤>
上記光易解体性接着剤とは、光分解樹脂を含有する接着剤であればよく特に限定されない。光易解体性接着剤を用いることで、一度接着させた2種の部材の光易解体性接着剤層に特定の活性エネルギー線を照射することにより、接着剤が分解することで2種の部材を分離できる。操作が容易なことから、紫外線によって分解する光易解体性接着剤が好ましい。また、光を透過することから2種の部材のうち1つ以上が、透明な用途が特に好ましい。
光易解体性接着剤には、本発明の組成物と同様の添加物を適時加えることができる。
【0096】
<パターン形成剤>
本発明のパターン形成剤は、本発明の光分解樹脂を含有するものである。本発明のパターン形成剤は、フォトリソ性を有するものであり、具体的には、マスクを介して光照射した後、現像液を用いて現像することにより、1,000μm以下のパターンを±10%以内の精度で再現よく形成できる。本発明のパターン形成剤を用いることで、従来の酸発生剤を使用する手法に比べ、酸又は酸発生剤がパターン部に残存しないというメリットがある。操作が容易なことから、紫外線によって分解するパターン形成剤が好ましい。パターン形成剤には、本発明の組成物と同様の添加物を適時加えることができる。
【0097】
<光潜在性触媒>
上記光潜在性触媒とは、特定の活性エネルギー線を照射することにより、活性種を提供できる触媒である。本発明の光潜在性触媒は、活性種を本発明の光分解樹脂又は本発明の組成物で包括しており、特定の活性エネルギー線を照射することにより、光分解樹脂が分解し、内包されていた活性種が系内に溶出することで、重合反応などを起こすことができる。従来の光重合開始剤などと比較して、より活性の高い活性種を内包させることができることから、光分解樹脂が分解後に瞬時に重合する性能を有しながら、保存時は安定性に優れた組成物を形成できるというメリットがある。
【0098】
光潜在性触媒に使用する光分解樹脂としては、常温常圧で固体のもの、組成物、内包する活性種に対して溶解性の少ないことから重量平均分子量3,000~500,000のものが好ましく、作業性の点から、5,000~100,000のものが特に好ましい。
【0099】
光分解性触媒の製造方法としては、特に限定されないが、光分解樹脂と活性種を混練する方法や、活性種を光分解樹脂でコーティングしたカプセルを形成する方法などが挙げられる。
【0100】
<光分解樹脂又は組成物の分解方法>
本発明の光分解樹脂又は本発明の組成物の分解方法について説明する。本発明の光分解樹脂又は本発明の組成物に対して活性エネルギー線を照射することによって分解することができる。活性エネルギー線を照射する工程において、本発明の光分解樹脂又は本発明の組成物に対して直接照射しても、基材などの透明材料を介して照射しても構わない。活性エネルギー線としては、取扱いの容易さから紫外線が好ましい。光源としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。取扱いの容易さから、発光ダイオード光源(以下、「LED光源」という。)を用いることが好ましい。LED光源を用いる場合、その波長は365~405nmであることが好ましく、365~395nmであることがより好ましい。
【実施例
【0101】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0102】
<製造例1:2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール)の合成>
還流管付反応フラスコに、2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)二酢酸を4.3g、THFを26g量り取った。攪拌しながら5℃まで冷却させ、0.9mol/Lボラン-THFコンプレックスを100mL(90mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、そのまま17時間攪拌した。5℃に冷却したメタノールを100g反応液を滴下後、更に、水を30g滴下し、攪拌した。溶媒を減圧留去した残渣に酢酸エチルを35g加え、析出物を濾過した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=84:16)により、分離精製を行い、薄黄色粉体として下記に記載する目的物を2.5g(収率65%)得た。
得られた目的物の1H-NMRを測定した。スペクトルを下記に示す。
H-NMR(DMSO-d)δ/ppm:7.75(s,1H),7.49(d,1H),7.41(d,1H),4.72(dt,2H),3.5-3.7(m,4H),2.95(t,2H),2.79(t,2H)
【0103】
【化4】
【0104】
<実施例1:重合体N-1の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、3-(4-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ)プロパン-1-オールを1.2g(4.7mmol)、トリエチルアミンを1.4g(14mmol)、4-ジメチルアミノピリジンを0.057g(0.47mmol)、THFを24g量り取った。5℃に冷却後、5.7gのTHFに溶解させたセバコイルクロリドを1.2g(4.9mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、3時間攪拌後、昇温して還流下で4時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣をアセトン 6.0gで溶解後、メタノール 40gに滴下し、沈殿物を回収した。沈殿物を再度アセトン4.0gで溶解後、メタノール 40gに滴下し、沈殿物を同様に回収し、乾燥させ黄色粘性液体を1.0g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、重量平均分子量(Mw)=9300、多分散度(Mw/Mn=1.39)であった。得られた重合体N-1は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-1における一般式(Iβ)で表される構成単位の割合は、60質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、40質量%であった。
重合体N-1における構成単位の割合は、重合体N-1の1H-NMRより算出した。以下の実施例についても同様の方法で算出した。
【0105】
【化5】
【0106】
<実施例2:重合体N-2の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、3-(4-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ)プロパン-1-オール 1.3g(4.9mmol)、トリエチルアミン 1.5g(15mmol)、4-ジメチルアミノピリジン
0.060g(0.49mmol)、 THF 25gを量り取った。5℃に冷却後、THF 4.5gに溶解させたアジポイルクロリド 0.9g(4.9mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、2時間攪拌後、昇温して還流下で4時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣をアセトン 6.0gで溶解後、メタノール 30gに滴下し、沈殿物を回収した。沈殿物を再度アセトン4.0gで溶解後、-10℃以下に冷却したメタノール 40gに滴下し、沈殿物を同様に回収した。次いで、乾燥させ黄色粘性液体を0.8g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=2400、多分散度(Mw/Mn=1.38)であった。得られた重合体N-2は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-2における一般式(Iβ)で表される構成単位の割合は、69質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、31質量%であった。
【0107】
【化6】
【0108】
<実施例3:重合体N-3の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、4-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノール 1.3g(6.4mmol)、トリエチルアミン 2.0g(20mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.079g(0.65mmol)を量り取り、THF 26gに溶解させた。5℃に冷却後、THF 5.9gに溶解させたアジポイルクロリド 1.2g(6.6mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、2時間攪拌後、昇温して還流下で4時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣にアセトン 10gを加え、-10℃以下に冷却し、生じた沈殿物を回収した。沈殿物に再度アセトン 15gを加え、-10℃以下で冷却し、生じた沈殿物を除去した。溶液を脱溶媒し、乾燥させ黄色結晶0.8g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=2400多分散度(Mw/Mn=1.69)であった。得られた重合体N-3は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-3における一般式(Iβ)で表される構成単位の割合は、64質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、36質量%であった。
【0109】
【化7】
【0110】
<実施例4:重合体N-4の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール1.1g(5.8mmol)、トリエチルアミン 1.8g(17mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.070g(0.57mmol)を量り取り、THF 20gに溶解させた。5℃に冷却後、THF 7.0gに溶解させたセバコイルクロリド 1.4g(5.8mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で5時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、濾過により析出物を回収し、メタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣にアセトン 6gを加え、5℃に冷却し、生じた沈殿物を回収した。もう一度同じ操作を繰り返した後、乾燥させ淡黄色粘性液体1.0g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=11500、多分散度(Mw/Mn=1.40)であった。得られた重合体N-4は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-4における一般式(Iα)で表される構成単位の割合は、52質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、48質量%であった。
【0111】
【化8】
【0112】
<実施例5:重合体N-5の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、3-(4-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ)プロパン-1-オール 1.2g(4.7mmol)、トリエチルアミン 1.4g(14mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.058g(0.47mmol)、 THF 24gを量り取った。5℃に冷却後、THF 4.7gに溶解させたテレフタロイルクロリド 1.0g(4.7mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で6時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、濾過により析出物を回収し、メタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。この残渣を水で掛け洗いながら、再度濾過を行い、残留物を乾燥させ淡黄色粉体1.0g得た。本重合体はTHF、クロロホルムに不溶であり、GPCによる分子量測定ができなかった。得られた重合体N-5の構造は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-5における一般式(Iβ)で表される構成単位の割合は、66質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、34質量%であった。
【化9】
【0113】
<実施例6:重合体N-6の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール 1.2g(6.4mmol)、トリエチルアミン 2.0g(19mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.079g(0.65mmol)を量り取り、THF 23gに溶解させた。5℃に冷却後、THF 6.5gに溶解させたテレフタロイルクロリド 1.3g(6.4mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、7時間反応を行った。反応液の濾過により析出物を回収し、メタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。この残渣を水、アセトンの順で掛け洗いながら、再度濾過を行い、残留物を乾燥させ白色粉体1.4g得た。本重合体はTHF、クロロホルムに不溶であり、GPCによる分子量測定ができなかった。得られた重合体N-6は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-6における一般式(Iα)で表される構成単位の割合は、58質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、42質量%であった。
【0114】
【化10】
【0115】
<実施例7:重合体N-7の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール 5.0g(27mmol)、トリエチルアミン 8.3g(82mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.33g(2.7mmol)を量り取り、THF 100gに溶解させた。5℃に冷却後、THF 30gに溶解させたテレフタロイルクロリド 2.7g(13mmol)、セバコイルクロリド 3.3g(14mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で6時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール50gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣にアセトン 20gを加えた後、濾過することで固体を回収し、乾燥させ淡黄色粉体4.9g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=23200多分散度(Mw/Mn=1.40)であった。重合体N-7は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-7における一般式(Iα)で表される構成単位の割合は、55質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、45質量%であった。
【0116】
【化11】
【0117】
<実施例8:重合体N-8の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール 0.55g(3.0mmol), トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol), 4-ジメチルアミノピリジン 0.038g(0.3mmol)をTHF12gに溶解させた。5℃に冷却後、THF4gに溶解させたチオフェン-2,5-ジカルボニルジクロリド 0.65g(3.0mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温し、還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール20gを加え30分攪拌後、脱溶媒した。残渣にメタノール20gを加え、析出物を濾過し、ろ物を水10g、メタノール10gの順に洗浄し、乾燥させ、淡黄色結晶0.80g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=3300、多分散度(Mw/Mn=1.87)であった。得られた重合体N-8は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-8における一般式(Iα)で表される構成単位の割合は、57質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、43質量%であった。
【0118】
【化12】
【0119】
<実施例9:重合体N-9の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール 0.55g(3.0mmol), トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol), 4-ジメチルアミノピリジン 0.038g(0.3mmol)をTHF12gに溶解させた。5℃に冷却後、THF4gに溶解させたナフタレン-2,6-ジカルボニルジクロリド 0.25g(1.0mmol)とセバコイルクロリド 0.48g(2.0mmol)の混合物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温し、還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール20gを加え30分攪拌後、脱溶媒した。残渣にメタノール20gを加えると黄色の粘稠体が生成した。上澄みの溶媒を除いた後に、減圧下で脱溶媒し乾燥させることで、淡黄色不定形固体を0.80g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=12400、多分散度(Mw/Mn=1.55)であった。重合体N-9は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-9における一般式(Iα)で表される構成単位の割合は、51質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、49質量%であった。
【0120】
【化13】
【0121】
<実施例10:重合体N-10の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、(2-ニトロ-1,3-フェニレン)ジメタノール 0.37g(2.0mmol), 2,6-ピリジンジメタノール
0.14g(1.0mmol), トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol), 4-ジメチルアミノピリジン 0.038g(0.3mmol)をTHF18gに溶解させた。5℃に冷却後、THF4gに溶解させたテレフタロイルジクロリド 0.30g(1.5mmol)とセバコイルクロリド 0.36g(1.5mmol)の混合物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温し、還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール20gを加え30分攪拌後、脱溶媒した。残渣にメタノール20gを加えると黄色の粘稠体が生成した。上澄みの溶媒を除いた後に、減圧下で脱溶媒し乾燥させることで、淡黄色高粘性液体を0.77g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=6,000、多分散度(Mw/Mn=1.44)であった。重合体N-10は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-10における一般式(Iα)で表される構成単位の割合は、35質量%であり、一般式(IIα)及び(IIβ)で表される構造からなる構成単位の合計の割合は、65質量%であった。
【0122】
【化14】
【0123】
<実施例11:重合体N-11の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール) 1.2g(5.6mmol)、トリエチルアミン 1.7g(17mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.070g(0.57mmol)を量り取り、THF 24gに溶解させた。5℃に冷却後、THF 6.2gに溶解させたテレフタロイルクロリド 0.57g(2.8mmol)、セバコイルクロリド 0.68g(2.8mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣にアセトン 10gを加え、-10℃以下に冷却し、生じた沈殿物を回収した。更に2回同じ操作を繰り返した後、乾燥させ薄黄色粘性液体を0.52g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=8900、多分散度(Mw/Mn=1.33)であった。重合体N-11は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-11における一般式(Iβ)で表される構成単位の割合は、58質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、42質量%であった。
【0124】
【化15】
【0125】
<実施例12:重合体N-12の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール) 1.2g(5.6mmol)、トリエチルアミン 1.8g(17mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.070g(0.56mmol)を量り取り、THF 24gに溶解させた。5℃に冷却後、THF 5.7gに溶解させたテレフタロイルクロリド 1.1g(5.6mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で6時間反応を行った。反応液の濾過により析出物を回収し、メタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。この残渣を水、メタノールの順で掛け洗いながら、再度濾過を行い、残留物を乾燥させ白色粉体を0.47g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=11100多分散度(Mw/Mn=1.72)であった。得られた重合体N-12は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体N-12における一般式(Iβ)で表される構成単位の割合は、61質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、39質量%であった。
【0126】
【化16】
【0127】
<実施例13:重合体C-1の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、7-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-2H-クロメン-2-オン 1.1g(5.6mmol)、トリエチルアミン 1.8g(18mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.068g(0.56mmol)、THF 22gを量り取った。5℃に冷却後、THF 6.7gに溶解させたセバコイルクロリド 1.3g(5.6mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、濾過により析出物を回収し、メタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。この残渣を水、アセトンの順で掛け洗いながら、再度濾過を行い、残留物を乾燥させ白色粉体を1.2g得た。本重合体はTHF、クロロホルムに不溶であり、GPCによる分子量測定ができなかった。得られた重合体C-1は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体C-1における一般式(Iδ)で表される構成単位の割合は、53質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、47質量%であった。
【0128】
【化17】
【0129】
<実施例14:重合体C-2の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、4-(ヒドロキシメチル)-7-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2H-クロメン-2-オン 1.5g(6.0mmol)、トリエチルアミン 1.8g(18mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.076g(0.62mmol)、THF 31gを量り取った。5℃に冷却後、THF
7.5gに溶解させたセバコイルクロリド 1.5g(6.2mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で6時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール30gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣を塩化メチレン 10gに溶解し、アセトンを20g添加することで生じた沈殿物を回収した。沈殿物を乾燥し固化させた後、アセトン、水の順で掛け洗いながら濾過を行った。残留物を乾燥させ、淡黄色粉体の重合体を1.7g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=12800、多分散度(Mw/Mn=1.62)であった。得られた重合体C-2は、下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体C-2における一般式(Iδ)で表される構成単位の割合は、60質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、40質量%であった。
【0130】
【化18】
【0131】
<実施例15:重合体C-3の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、7-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-2H-クロメン2-オン 0.58g(3.0mmol), トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol), 4-ジメチルアミノピリジン 0.038g(0.3mmol)をTHF18gに溶解させた。5℃に冷却後、THF4gに溶解させたチオフェン-2,5-ジカルボニルジクロリド 0.31g(1.5mmol)とセバコイルクロリド 0.36g(1.5mmol)の混合物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温し、還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール20gを加え30分攪拌後、濾過した。残渣を水10g,メタノール10gの順に洗浄後、乾燥させることで、淡褐色固体の重合体を0.74g得た。本重合体はTHF、クロロホルムに不溶であり、GPCによる分子量測定ができなかった。重合体C-3は下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体C-3における一般式(Iδ)で表される構成単位の割合は、55質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、45質量%であった。
【0132】
【化19】
【0133】
<実施例16:重合体C-4の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、7-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-2H-クロメン2-オン0.58g(3.0mmol), トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol), 4-ジメチルアミノピリジン 0.038g(0.3mmol)をTHF18gに溶解させた。5℃に冷却後、THF4gに溶解させたナフタレン-2,6-ジカルボニルジクロリド 0.25g(1.0mmol)とアジピン酸ジクロリド 0.37g(2.0mmol)の混合物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温し、還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール20gを加え30分攪拌後、濾過した。残渣を水10g,メタノール20g,アセトン20gの順に洗浄後、乾燥させることで、淡黄色固体の重合体を0.60g得た。本重合体はTHF、クロロホルムに不溶であり、GPCによる分子量測定ができなかった。重合体C-4は下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体C-4における一般式(Iδ)で表される構成単位の割合は、58質量%であり、一般式(IIα)で表される構造からなる構成単位の割合は、42質量%であった。
【0134】
【化20】
【0135】
<実施例17:重合体C-5の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、7-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-2H-クロメン2-オン 0.38g(2.0mmol), 2,6-ピリジンジメタノール 0.14g(1.0mmol),トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol), 4-ジメチルアミノピリジン 0.038g(0.3mmol)をTHF18gに溶解させた。5℃に冷却後、THF4gに溶解させたセバコイルクロリド0.72g(3.0mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温し、還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、脱溶媒後の残渣にメタノール20gを加え、氷水冷下で生成した析出物を濾過し、乾燥させることで、淡黄色固体の重合体を0.27g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、Mw=3400、多分散度(Mw/Mn=1.37)であった。重合体C-5は下記の構成単位を主鎖に有するものであった。重合体C-5における一般式(Iδ)で表される構成単位の割合は、20質量%であり、一般式(IIα)及び(IIβ)で表される構造からなる構成単位の合計の割合は、80質量%であった。
【0136】
【化21】
【0137】
<比較例1:比較重合体R-1の合成>
乾燥させ窒素ガスで置換した還流管付反応フラスコに、1,4-ベンゼンジメタノール
0.41g(3.0mmol)、トリエチルアミン 0.91g(9.0mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 0.04g(0.3mmol)、 THF 18gを量り取った。5℃に冷却後、THF 4.0gに溶解させたセバコイルクロリド 0.36g(1.5mmol)とテレフタロイルジクロリド 0.30g(1.5mmol)の混合溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻し、1時間攪拌後、昇温して還流下で7時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾過し、濾液にメタノール20gを加え30分間攪拌後、脱溶媒した。残渣にメタノール20gを加え、攪拌後、析出物を濾別し、乾燥させ淡黄色粉体0.49g得た。GPC測定によって分子量を算出したところ、重量平均分子量(Mw)=3200、多分散度(Mw/Mn=1.38]であった。比較重合体R-1は、下記の構成単位を有する。
【0138】
【化22】
【0139】
得られた重合体について、光分解による分子量の低下、接着性の変化、パターン形成及び光潜在性触媒能を下記の手順で評価した。評価の詳細を下記に示す。
【0140】
(光分解による分子量の低下)
重合体N-7、C-2及びR-1のクロロホルム溶液(濃度:1.0×10-2mol/L)をそれぞれ調製した。調製した溶液に、高圧水銀ランプ(20mW/cm(@365nm))を使用し、紫外線を10J/cm照射した。その後、照射後の重合体の重量平均分子量(Mw)をGPC測定で算出し、下記の計算式で分子量変化率(%)を求めた。結果を[表1]に示す。

分子量変化率(%)=光照射後のMw/光照射前のMw×100
【0141】
【表1】
【0142】
[表1]より、本発明の重合体N-7及びC-2は何れも光照射によって分子量が小さくなったが、一般式(Iα)~(Iδ)で表される構成単位を有さないR-1は分子量がほとんど変わらなかった。よって、本発明の重合体が光分解樹脂として優れることは明らかである。
【0143】
(光分解による接着性の変化)
基板の作成:100℃に加熱したガラス基板(コーニング製イーグルXG)上に重合体N-9又は比較重合体R-1を載せて溶融させ、もう一枚のガラス基板の間に挟み込み、評価用基板とした。その後、高圧水銀ランプ(20mW/cm(@365nm))を使用し、評価基盤に紫外線を10J/cm照射した。
その結果、重合体N-9を用いた基板は、光照射前はガラス基板の間に挟んだ重合体が接着していたが、光照射後、一部が剥がれた。一方で比較重合体R-1を用いた基板は、光照射前後の接着力変化がなかった。
このことから、本発明の重合体は光照射により接着力が低下する材料であり、光易解体性接着剤として有用であることがわかった。
【0144】
(パターン形成)
重合体N-7又は比較重合体R-1の重合体のクロロホルム溶液(濃度:10%)を調製した。調製した溶液をガラス基板(コーニング製イーグルXG)上に膜厚が約1μmとなるようスピンコーターの回転数を調整して塗布した。溶液を塗工したガラス基板を100℃で1分加熱、乾燥を行い評価サンプルを作成した。
評価サンプルを室温まで冷却し、フォトマスク(LINE/SPACE=50μm/50μm)を介し、高圧水銀ランプ(20mW/cm(@365nm))を用い、紫外光を10J/cm照射し、23℃のアセトンに1分間浸漬した後、エアーガンで付着した溶媒を除去し、基板を100℃で1分乾燥させた。
乾燥後のパターンをレーザー顕微鏡で確認したところ、重合体N-7を用いた評価サンプルは、露光部の膜が現像され、未露光部の膜はそのままの状態でパターンが形成されていた。一方、比較重合体R-1を用いた評価サンプルは、全面が一様であり、パターンが形成されていなかった。
このことから本発明の重合体は、露光部を現像液で除去する工程でパターンを作製する、ポジ型パターン形成材料として有用であることがわかった。
【0145】
(光潜在性触媒能)
1)1.0gの重合体N-7と1.0gのm-キシリレンジアミンとをジクロロメタン5.0mLに溶解させた。室温で10分攪拌した後、減圧留去し、淡黄色不定形固体を得た。
2)組成物Aの調製: 1)で調製した組成物に、エポキシ樹脂組成物(EP-4100E((株)ADEKA製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂)とED-523T((株)ADEKA製 ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)の60/40(質量比)混合物)5.0gを混合した。
3)比較組成物Bの調製(比較例):2)で使用したエポキシ樹脂組成物5.0gにm-キシリレンジアミン1.0gを混合させた。
4)比較組成物Cの調製(比較例)組成物Aの重合体N-7を比較重合体R-1に変更した以外は同一の操作を行い、淡黄色不定形固体を得た。
5)結果:組成物A、比較組成物B及び比較組成物Cを室温下で放置し、24時間後の状態を確認したところ、組成物Bは固化し、流動性が消失していたが、組成物A及び比較組成物Cは調製後と変わらず流動性を有しており、変化が確認できなかった。組成物Aをガラス基板(コーニング製イーグルXG)上に塗工し、高圧水銀ランプ(20mW/cm(@365nm))を用い、紫外光を5J/cm照射したところ、組成物Aは、表面にタックがなくなったが、比較組成物Cは、表面にタックが残っていた。
上記より、本発明の重合体で反応性物質(触媒)を被覆することでその機能(反応性)を潜在化させることができ、光照射によってその反応性物質の機能を発現させることが確認された。本発明の重合体によって活性種を被覆させた組成物は、光潜在性触媒として有用であることは明らかである。
【0146】
(LED光源)
重合体N-7又は比較重合体R-1の重合体のクロロホルム溶液(濃度:10%)を調製した。調製した溶液をガラス基板(コーニング製イーグルXG)上に膜厚が約3μmとなるようスピンコーターの回転数を調整して塗布した。溶液を塗工したガラス基板を100℃で1分加熱、乾燥を行い、評価用基板を作成した。作成した評価用基板の半分をアルミホイルで被覆し、該基板にLED光源(365nm、50mW/cm)を使用し、10mJ/cmに相当する光を照射した。重合体N-7の塗膜を形成した基板は、照射された部の表面が脆化し、23℃のアセトンに1分間浸漬したところ、照射された部分のガラス面が露出した。これに対し、重合体R-1の塗膜を形成した基板は、照射された部分の表面の変化がなく、23℃のアセトンに1分間浸漬しても重合体が残存した。この結果から、本発明の重合体は、LED光源でも分解が進行することがわかった。