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特許7490379保温耐性のある型焼き菓子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】保温耐性のある型焼き菓子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/36 20060101AFI20240520BHJP
   A21D 10/02 20060101ALI20240520BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20240520BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240520BHJP
   A23G 3/48 20060101ALI20240520BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240520BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D10/02
A21D13/31
A23G3/34 102
A23G3/48
A23L7/10 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020020670
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126047
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 早苗
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-188206(JP,A)
【文献】特開2015-033362(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122900(WO,A1)
【文献】特開2010-226971(JP,A)
【文献】国際公開第2021/141114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/36
A23G 3/34
A23G 3/48
A21D 10/02
A21D 13/31
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)を含む、型焼き菓子用小麦粉組成物であって、
前記型焼き菓子が、加温保管用である、前記型焼き菓子用小麦粉組成物。
【請求項2】
小麦粉の全量に対するGA-SX小麦粉の含有量が30~90質量%である、請求項1に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物。
【請求項3】
前記GA-SX小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SA小麦粉)である、請求項1または2に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物を含む加温保管用型焼き菓子用生地。
【請求項5】
請求項4記載の型焼き菓子用生地を焼成してなる、加温保管用型焼き菓子。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物を使用することを特徴とする、加温保管用型焼き菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温耐性のある型焼き菓子及びその製造方法に関する。具体的には、ホットショーケース等の保温器で保管しても食感劣化が起こり難い型焼き菓子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで購入後すぐに食することができる即食食品の需要が高まっている。そのような即食食品として、容易に湯戻しできるカップスープやカップ麺等の乾燥食品、電子レンジやフライヤー等で加熱調理するチルド食品又は冷凍食品、加熱調理済み食品をホットショーケースに陳列される保温食品等が広く普及している。中でも、購入後直ちに食することができる保温食品が最も手軽であり、購入者及び店舗にとって利便性の高い即食食品である。そのような保温食品としては、フライ食品(から揚げ、コロッケ類、フライドポテト等)や家禽肉又は蓄肉加工食品(焼き鳥、つくね、フランクフルト等)が主流である。大判焼き、ワッフル、たい焼き、今川焼き、回転焼き、人形焼き等の型焼き菓子も一部には保温食品として提供されていることがあるが、保温中の水分飛散(乾燥)により硬くパサついた食感になりやすいという問題があった。ホットショーケースに保湿機能(湿度40~70%)を搭載すること、型焼き菓子を紙製等の包装袋を用いて非密封包装することなどにより、保温中の焼き菓子類の水分飛散を軽減することが試みられているが、十分に食感劣化を抑制できるものではなかった。
特許文献1には、中華まんじゅう等の小麦粉等を主原料とする食品について、加熱の際の水分飛散を抑制する技術として、生地原料における油脂含量を増加させること及び乳化剤を添加することが開示されている。型焼き菓子においても生地原料の油脂含量を増加させること及び乳化剤を添加することにより保温中の水分飛散を軽減することが試みられているが、添加剤として水分飛散を抑制するに足る乳化剤を添加すると、口溶け等の食感が悪くなることが経験的に知られている。
また特許文献2では、特定量の澱粉と乳蛋白と乳化剤を含有する、たい焼き、ホットケーキまたはワッフル用のベーカリーミックスが開示されており、特定量の乳化剤を含有させることでホットウォーマーなどの保温器に数時間保管しても食感が劣化することなく焼き立て時のサクサクした食感を維持するベーカリー食品を得ることが記載されている。しかしながら、これらの技術は何らかの添加物を必要とするものであって、原料となる小麦粉を工夫することについては何ら記載が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平03-22941号公報
【文献】特開2014-132907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ホットショーケース等の保温器で加温保管しても食感劣化が起こり難い型焼き菓子及びその製造方法を提供することにある。特に、焼成後冷凍した型焼き菓子を再加熱後加温保管しても再加熱及び加温保管した際の食感劣化が起こり難い型焼き菓子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、型焼き菓子の製造において、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(以下、「GA-SX小麦粉」と称する場合がある)を使用すると、ホットショーケース等の保温器で保管しても食感劣化が起こり難いことを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)を含む、型焼き菓子用小麦粉組成物。
[2]前記GA-SX小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SA小麦粉)である、前記[1]記載の型焼き菓子用小麦粉組成物。
[3]前記型焼き菓子が、加温保管用である、前記[1]又は前記[2]に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物。
[4]前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物を含む型焼き菓子用生地。
[5]前記[4]記載の型焼き菓子用生地を焼成してなる、型焼き菓子。
[6]前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の型焼き菓子用小麦粉組成物を使用することを特徴とする、型焼き菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の型焼き菓子用小麦粉組成物を使用すれば、ホットショーケース等の保温器で加温保管した場合の食感劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において「型焼き菓子」とは穀粉を含有するバッター生地を焼成型を用いて焼成した菓子をいい、例えば、大判焼き、たい焼き、今川焼き、回転焼き、人形焼き、ワッフル等が挙げられる。
【0009】
本発明において型焼き菓子は好ましくは加温保管用である。加温保管は、型焼き菓子を65℃以上の温度、好ましくは70~80℃の温度で4時間以上保管することをいう。加温保管は必要により湿度50~60%となるように加湿しても良い。このような加温保管は、例えばホットショーケース等の保温器内で行うことができる。以下特に記載のない限り、温度及び湿度はそれぞれ雰囲気温度及び雰囲気湿度を意味する。
【0010】
本発明において型焼き菓子は焼成後すぐに加温保管しても良く、また加温保管前に常温保存又はチルド保存されていても良い。常温保存又はチルド保存された型焼き菓子は必要により加温保管前に再加熱される。
また、本発明において型焼き菓子は焼成後、加温保管前に冷凍されていても良い。冷凍方法は常法により行うことができる。冷凍再加熱による劣化を防止するため、焼成した型焼き菓子は、放冷後、必要により密封し、-38~-40℃で急速冷凍することが好ましい。冷凍型焼き菓子は、加温保管前に再加熱される。再加熱の手段は特に限定されない。例えば1400~1500Wで40~50秒間電子レンジ加熱することができる。
【0011】
本発明の型焼き菓子用小麦粉組成物は、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)を含んでいる。
普通系コムギは、異質6倍体であり、その染色体には同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムがそれぞれ1~7番まで存在する(1A~7A、1B~7B、1D~7D)。
「GBSSI」とは、アミロースの合成に関与する顆粒結合性澱粉合成酵素であり、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1が、それぞれ7A、4A、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
「SSIIa」とは、アミロペクチンの分岐鎖合成に関与する澱粉合成酵素であり、SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1が、それぞれ7A、7B、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
【0012】
「酵素活性を欠損する」とは、コムギ植物体内で正常な酵素活性を有するタンパク質が機能していないこと、好ましくは正常な酵素活性を有するタンパク質が発現していないことをいう。具体的には、遺伝子配列の変異(一つ又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、逆位、転座などの変異をいい、遺伝子領域全体の欠失も含む)、mRNA転写の欠損、タンパク質翻訳の欠損、コムギ植物体内での酵素活性の阻害などの態様が挙げられ、野生型の酵素活性の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満にまで酵素活性が低下ないし欠失していれば、いずれの態様であってもよい。
【0013】
GA-SX小麦粉としては、酵素活性を欠損した2種類のSSIIaの組み合わせにより、以下の小麦粉が挙げられる。
GA-SA小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉;
GA-SB小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-B1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉;
GA-SD小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-D1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉。
これらのうち、GA-SA小麦粉が好ましい。
GA-SX小麦粉は、公知の方法、例えば、特開2013-188206号記載の方法に従って、製造することができる。
【0014】
型焼き菓子用小麦粉組成物は、GA-SX小麦粉に加え、さらに他の小麦粉を含んでいてもよい。他の小麦粉としてはGA-SX小麦以外の小麦から製粉した小麦粉であれば特に限定はない。例えば、GBSSI(GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1)及びSSIIa(SSIIa-A1,SSIIa-B1及びSSIIa-D1)の6種の酵素活性の欠損の組み合わせ(ただし、GA-SXを除く)で酵素活性を欠損した小麦並びにGBSSI及びSSIIaの何れの酵素活性も欠損していない小麦から製粉した小麦粉が挙げられる。あるいは一般に使用される、強力粉、中力粉、薄力粉、及びそれらの混合物であってよい。
【0015】
GA-SX小麦粉の含有量は、型焼き菓子用小麦粉組成物における小麦粉の全量に対して、好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30~90質量%、最も好ましくは50~90質量%である。
【0016】
本発明の型焼き菓子用生地は、上記型焼き菓子用小麦粉組成物を含む。また本発明の型焼き菓子は、上記型焼き菓子用生地を焼成してなる。本発明の型焼き菓子用生地は、さらに他の原料として、通常型焼き菓子用生地の製造に使用される原料であればいずれも配合することができ、例えば、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉などの穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉などの澱粉類及びこれらのα化や、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った化学変性澱粉類、乾熱処理、湿熱処理した物理変性澱粉類;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;牛乳、粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;小麦蛋白、大豆蛋白、乳蛋白、緑豆蛋白等の蛋白類;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;ベーキングパウダー等の発泡剤;乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤、水などを配合することができる。
【0017】
本発明の型焼き菓子は、GA-SX小麦粉を含む、前記型焼き菓子用小麦粉組成物を使用する以外は常法に従って製造することが出来る。例えば前記型焼き菓子用小麦粉組成物を含む前記焼成菓子用生地を調製し、必要により具材を加え、鉄板や焼き型を用いて焼成して製造することができる。
【実施例
【0018】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0019】
<製造例1:たい焼きの製造>
(1)薄力粉(日本製粉株式会社製ハート)100質量部、卵10質量部、ブドウ糖10質量部、ベーキングパウダー6質量部、サラダ油3質量部、グアーガム0.3質量部、水130質量部を縦型ミキサー(関東混合機工業社製CS型10)に投入し、ホイッパーを使用し低速1分、中速1分混合してたい焼き用バッター生地を得た。
(2)電熱式たい焼き焼成機(タニコー(株)社製たい焼き器3連)を180℃に予熱し、薄く液油を塗り片側にたい焼き用バッター生地30gを入れ、30秒後に餡を入れ4分間焼成した。その上にたい焼き用バッター生地30gをまんべんなくかけ、型を合わせたまま反転し、4分間焼成し、型を開いてたい焼きを得た。
(3)網の上で15分放冷し、-38℃で急速冷凍し、冷凍たい焼きを得た。
【0020】
<評価例1:たい焼きの評価>
1.水分飛散量の測定
製造例1に従って製造した冷凍たい焼きを接触しないように皿に2個置き、皿全体をラップで覆い、1400Wで70秒間電子レンジ加熱し、中心温度50℃になるよう調製した(中心温度は株式会社佐藤計量器製作所製DIGITAL THERMOMETER SK-250WPで測定した)。ラップから取り出し、たい焼きを保湿機能付きホットショーケース(西山工業(株)社製Hotters HW-3FM)に包装することなく裸のまま入れ、湿度50~60%、70℃で6時間保管した。保管後、たい焼きの皮を分取して餡をそぎ落とし、重量測定した後、110℃に予熱した乾燥機(エスペック(株)社製PH-102)に投入して30分間乾燥した。(乾燥前の重量-乾燥後の重量)/乾燥前の重量×100により水分含量を求めた。
【0021】
2.食感評価
上記同様、冷凍たい焼きを電子レンジ加熱し、未包装で保湿機能付きホットショーケースに入れて湿度50~60%、70℃で10時間保管したたい焼きを熟練パネラー10名により評価基準表1に従って食感評価した。
なお、従来の保温中の水分飛散を低減することができる冷凍たい焼きとして、油脂を増量し乳化剤を添加したもの、具体的には製造例1においてサラダ油を3質量部から5質量部に増量し、且つ、乳化剤(モノグリセリン脂肪酸エステル、KERRY社製マイバテックス マイティーソフトK)1質量部添加した以外は製造例1に従って製造した冷凍たい焼き(対照例1)を製造した。この冷凍たい焼きをレンジアップした後直ちにホットショーケースに入れて湿度50~60%、70℃で10時間保管した際の食感を3点(許容範囲)とした。
【0022】
評価基準表1
【0023】
<試験例1:GA-SA小麦粉によるたい焼きのホットケース耐性の検討>
薄力粉(日本製粉株式会社製ハート)とGA-SA小麦粉の配合割合を表1記載の割合にした以外は製造例1に従って冷凍たい焼きを製造し、評価例に従って水分含量と官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0024】
*油脂を3質量部から5質量部に増量し、乳化剤1質量部を添加したもの
【0025】
その結果、型焼き菓子用小麦粉組成物においてGA-SA小麦粉と薄力粉を使用した実施例1~4では、型焼き菓子用小麦粉組成物の全量に対するGA-SA小麦粉の使用量の増加に伴って水分飛散が少なくなり、ソフト感及び口溶け共に良好になった。型焼き菓子用小麦粉組成物において使用する小麦粉がGA-SA小麦粉のみの実施例5では、非常にソフト感が優れていたが、口溶けは薄力粉のみを使用した比較例1と同等であった。
GA-SA小麦粉を使用しない比較例1では、乳化剤添加及び油脂増量して水分飛散を低減した対照例1よりもソフト感が劣っていたが、口溶けはやや良好になっていた。これは、水分飛散を抑制するに足る乳化剤を添加すると、かえって咀嚼中にダンゴ感が出る傾向にあるためである。
【0026】
<製造例2:アメリカンワッフルの製造>
(1)小麦粉(日本製粉社製ハート)100質量部、卵100質量部、牛乳50質量部、砂糖30質量部、溶かし無塩マーガリン25質量部、ベーキングパウダー6質量部、塩1質量部を用意し、小麦粉、ベーキングパウダー、塩は合わせて篩っておく。またこれをミックスとしてもよい。
(2)縦型ミキサー(関東混合機工業社製CS型10)に卵及び砂糖を投入し、ホイッパーを使用し低速1分、中速1分混合して均質化した。
(3)篩った小麦粉、ベーキングパウダー及び塩をミキサーに投入し、更に低速1分、中速1分混合して均質化した。
(4)溶かしマーガリンをミキサーに投入し、低速1分混合して均質化してワッフルバッター生地を得た。
(5)電熱式ワッフルベーカー(サンテック社製)を180℃に予熱し、薄く油を塗り、ワッフルバッター生地110gを入れて蓋を閉じ、2分間焼成した。
(6)焼成後、網の上で15分放冷し、-38℃で急速冷凍して冷凍ワッフルを得た。
【0027】
<評価例2:ワッフルの評価>
1.水分飛散量の測定
製造例2に従って製造した冷凍ワッフルにラップをかけることなく2枚を皿に置き、1400Wで20秒間電子レンジ加熱し、中心温度40℃になるよう調製した。保湿機能付きホットショーケース(西山工業(株)社製Hotters HW-3FM)に入れ、湿度50~60%、70℃で4時間保管した。
保管したワッフルの重量を測定した後、110℃に予熱した乾燥機に投入して30分間乾燥した。(乾燥前の重量-乾燥後の重量)/乾燥前の重量×100により水分含量を求めた。
【0028】
2.食感評価
上記同様、冷凍ワッフルを電子レンジ加熱し、未包装で保湿機能付きホットショーケースに入れて70℃で8時間保管したワッフルを熟練パネラー10名により評価基準1に従って評価した。
なお、従来の保温中の水分飛散を低減することができる冷凍ワッフルとして、油脂を増量し乳化剤を添加したもの、具体的には製造例2の(1)にサラダ油5質量部、乳化剤(モノグリセリン脂肪酸エステル、KERRY社製マイバテックス マイティーソフトK)1質量部添加した以外は製造例2に従って製造した冷凍ワッフル(対照例2)を製造した。この冷凍ワッフルをレンジアップした後、直ちにホットショーケースに入れて湿度50~60%、70℃で8時間保管したものの食感を3点(許容範囲)とした。
【0029】
<試験例2:GA-SA小麦粉によるワッフルのホットケース耐性の検討>
薄力粉とGA-SA小麦粉の配合割合を表2記載の割合にした以外は製造例2に従って冷凍ワッフルを製造し、評価例に従って水分含量と官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0030】
*油脂を3質量部から5質量部に増量し、乳化剤1質量部を添加したもの
【0031】
その結果、4時間ホットショーケースで保管した場合、薄力粉のみで製造した比較例2では保管0時間と比較して18.1質量%の水が飛散したのに対し、型焼き菓子用小麦粉組成物の全量に対するGA-SA小麦粉の割合が増加するに従って水分飛散は減少し、GA-SA小麦粉のみを使用した実施例10では12.6質量%まで水分飛散が低減された。
GA-SA小麦粉を型焼き菓子用小麦粉組成物の全量に対し20質量%使用した実施例6では、サラダ油と乳化剤とを添加することにより食感劣化が抑制される標準的な薄力粉のみのワッフル(対照例2)を8時間ホットショーケース保管した際の食感よりもやや良好であった。実施例7~9では、GA-SA小麦粉の使用量の増加に伴ってソフト感が強くなり、口溶けは良好であった。GA-SA小麦粉のみを使用した実施例10では、ソフト感は非常に良かったものの、口溶けは油脂増量及び乳化剤添加した対照例2とほぼ同等であった。
比較例2では、水分飛散量が多く、そのためソフト感が劣っていた。口溶けは、乳化剤の影響がないために基準のワッフルよりもわずかに上回るものであった。